説明

敷料、堆肥、敷料の製造方法、及び堆肥の製造方法

【課題】 殺虫効果、殺菌効果を有する敷料、該敷料を再利用できる堆肥、前記敷料及び堆肥の製造方法を提供する。
【解決手段】 バーク堆肥60〜90体積%と、木炭10〜30体積%とを配合し(ステップS10)、1〜3ヶ月の間、堆積させた状態で放置して予備発酵させ(ステップS11)、予備発酵させた配合物を50〜80℃で、8〜24時間撹拌して一次発酵させ(ステップS12)、一次発酵させた配合物を常温で3〜12ヶ月の間放置して二次発酵させ(ステップS13)、二次発酵させた配合物に、食酢又は食塩を含む調味用原液に梅干を漬けた後の調味液1〜10体積%を配合し撹拌する(ステップS14)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜の床敷として使用する敷料、該敷料の特定の性質を専ら利用する堆肥、前記敷料の製造方法、及び該敷料を使用する堆肥の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鶏、牛、豚などの家畜の飼育は、畜舎の床におが屑又は麦わらなどの敷料を敷いて、家畜の糞を敷料に吸収させることにより行われていた。しかし、糞から発生する悪臭は、畜舎の近隣の住居環境に悪影響を与え、住民からの苦情が家畜の飼育者に多く寄せられていた。また、糞の中に、雑菌、うじ虫などの害虫が発生し、家畜の育成を阻害するという問題があった。
【0003】
家畜の糞の堆肥化は、糞を畜舎外部の場所で約半年から1年放置することにより行われるため、堆肥化の場所を必要とするとともに、堆肥化に長期間を要した。また、堆肥化の初期段階においては、糞から生じる悪臭の問題があった。また、糞から生じる悪臭を防止するために、糞を焼却した場合でも、焼却後の廃棄処分には環境上の問題があり、糞の廃棄処分は容易ではなかった。
【0004】
糞から発生する悪臭を防止するために、おが屑、細粒化した木材チップ、及び麦わらなどの敷料に炭を添加し、添加された炭の吸湿性により、悪臭成分であるアンモニアの発生を抑えるものが提案されている。また、糞を処理する方法として、糞混じりの使用済敷料を炭化装置で炭化して、再度敷料に添加する炭として利用するものが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−292651号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の例にあっては、敷料に添加した炭により、悪臭成分であるアンモニアの発生を抑止し、カビ毒をもたらすカビの発生を抑えるものの、畜舎内の糞混じりの敷料に発生する虫(例えば、うじ虫など)を抑えることができず、殺虫効果を有する敷料が望まれていた。また、使用済の敷料を再利用するためには、敷料を炭化装置で炭化する必要があり、さらに簡便に処理することが望まれていた。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、バーク堆肥と、木炭と、食酢又は食塩を含む調味用原液に梅干を漬けた後の調味液とを配合してあることにより、家畜の糞から発生する悪臭を防止するとともに、殺虫効果及び殺菌効果を有する敷料を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明の他の目的は、前記バーク堆肥60〜90体積%と、木炭10〜30体積%と、調味液1〜10体積%とを配合してあることにより、さらに良好な殺虫効果及び殺菌効果を有する敷料を提供することにある。
【0008】
また、本発明の他の目的は、弱アルカリ性低張性温泉水を配合してあることにより、家畜が敷料を食べた場合であっても、家畜の飼育に好適な敷料を提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の目的は、バーク堆肥60〜90体積%と、木炭10〜30体積%とを配合し、1〜3ヶ月の間予備発酵させる第1の工程と、該第1の工程で予備発酵させた配合物を、50〜80℃で、8〜24時間撹拌して一次発酵させる第2の工程と、該第2の工程で一次発酵させた配合物を、常温で3〜12ヶ月の間二次発酵させる第3の工程と、該第3の工程で二次発酵させた配合物と、食酢又は食塩を含む調味用原液に梅干を漬けた後の調味液1〜10体積%とを配合し撹拌する第4の工程とを含むことにより、家畜の糞から発生する悪臭を防止するとともに、殺虫効果及び殺菌効果を有する敷料の製造方法を提供することにある。
【0010】
また、本発明の他の目的は、バーク堆肥60〜90体積%と、木炭10〜30体積%と、食酢又は食塩を含む調味用原液に梅干を漬けた後の調味液1〜10体積%とを配合してなる敷料と家畜糞とを配合してあることにより、肥料としてのみならず、土壌改良剤として使用できる堆肥を提供することにある。
【0011】
また、本発明の他の目的は、前記敷料50〜80体積%と、家畜糞20〜50体積%とを配合してあることにより、さらに良好な土壌改良剤として使用できる堆肥を提供することにある。
【0012】
また、本発明の他の目的は、バーク堆肥60〜90体積%と、木炭10〜30体積%と、食酢又は食塩を含む調味用原液に梅干を漬けた後の調味液1〜10体積%とを配合してなる敷料を家畜の床敷として使用して、前記敷料と家畜糞とを混合する第1の工程と、前記敷料及び家畜糞夫々の体積割合を50〜80体積%及び20〜50体積%に配合する第2の工程と、該第2の工程で配合した配合物を、50〜70℃で、1〜8時間撹拌する第3の工程とを含むことにより、炭化装置による炭化処理を必要とせず、又は家畜糞を堆肥化するための後処理を必要とせず、使用済敷料をすべて再利用できる堆肥の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1発明に係る敷料は、家畜の床敷として使用する敷料であって、バーク堆肥と、木炭と、食酢又は食塩を含む調味用原液に梅干を漬けた後の調味液とを配合してなることを特徴とする。
【0014】
第2発明に係る敷料は、第1発明において、前記バーク堆肥60〜90体積%と、前記木炭10〜30体積%と、前記調味液1〜10体積%とを配合してなることを特徴とする。
【0015】
第3発明に係る敷料は、第1発明において、弱アルカリ性低張性温泉水をさらに配合してなることを特徴とする。
【0016】
第4発明に係る敷料の製造方法は、家畜の床敷として使用する敷料の製造方法であって、バーク堆肥60〜90体積%と、木炭10〜30体積%とを配合し、1〜3ヶ月の間予備発酵させる第1の工程と、該第1の工程で予備発酵させた配合物を、50〜80℃で、8〜24時間攪拌して一次発酵させる第2の工程と、該第2の工程で一次発酵させた配合物を、常温で3〜12ヶ月の間二次発酵させる第3の工程と、該第3の工程で二次発酵させた配合物と、食酢又は食塩を含む調味用原液に梅干を漬けた後の調味液1〜10体積%とを配合し攪拌する第4の工程とを含むことを特徴とする。
【0017】
第5発明に係る堆肥は、家畜の床敷として使用する敷料と家畜糞とを配合した堆肥において、前記敷料は、バーク堆肥60〜90体積%と、木炭10〜30体積%と、食酢又は食塩を含む調味用原液に梅干を漬けた後の調味液1〜10体積%とを配合してなる敷料であることを特徴とする。
【0018】
第6発明に係る堆肥は、第5発明において、前記敷料50〜80体積%と、前記家畜糞20〜50体積%とを配合してなることを特徴とする。
【0019】
第7発明に係る堆肥の製造方法は、堆肥の製造方法であって、バーク堆肥60〜90体積%と、木炭10〜30体積%と、食酢又は食塩を含む調味用原液に梅干を漬けた後の調味液1〜10体積%とを配合してなる敷料を家畜の床敷として使用して、前記敷料と家畜糞とを混合する第1の工程と、前記敷料及び家畜糞夫々の体積割合を50〜80体積%及び20〜50体積%に配合する第2の工程と、該第2の工程で配合した配合物を、50〜70℃で、1〜8時間攪拌する第3の工程とを含むことを特徴とする。
【0020】
第1発明にあっては、間伐材、又は剪定材などの廃棄物から発生する樹皮(バーク)を堆積し発酵させたバーク堆肥と、伐採木、剪定枝、又は伐根などの廃棄物を破砕し、炭化装置で炭化した木炭と、食酢又は食塩を含む調味用原液に梅干を漬けた後に廃棄物として生じる調味液とを配合することにより、バーク堆肥を敷料の基材として使用する。木炭は、水分をほとんど含んでおらず、ミクロ単位の微細孔を有するため、消臭作用があり、畜舎の床敷として使用した場合に、家畜糞から発生する悪臭成分であるアンモニア、又はメタンガスなどを吸着する。また、木炭は、湿度調節作用、及び遠赤外線作用があり、夏場の畜舎内の湿気を除去するとともに、冬場には畜舎内を暖める。また、前記調味液は、梅干を漬けた後の梅エキス(クエン酸、リンゴ酸などの有機酸)、食酢、又は食塩などの有効成分に含まれる殺虫効果及び殺菌効果により、家畜を飼育する際に家畜糞に発生するカビ類、雑菌、又はうじ虫などの害虫の繁殖を防止する。
【0021】
第2発明にあっては、バーク堆肥60〜90体積%と、木炭10〜30体積%と、梅干を漬けた後の調味液1〜10体積%とを配合してある。バーク堆肥の体積比率を、90体積%を超えて配合した場合には、木炭の体積比率が10体積%より少なくなり、木炭が有する消臭作用、湿度調節作用、及び遠赤外線作用などの効果が減少する。一方、バーク堆肥の体積比率を、60体積%より少なく配合した場合には、敷料の基材としてのバーク堆肥の量が少なくなり、同じ畜舎床面積に対して多くの敷料が必要になる。また、調味液の体積比率を、1体積%より少なくした場合には、調味液が有する殺虫効果及び殺菌効果が減少し、カビ類、雑菌、又はうじ虫などの害虫の繁殖を防止することができない。調味液の体積比率を、10体積%より多くした場合には、調味液は酸性であるため、調味液を含む敷料を家畜が食べた場合に、家畜の体質を体内に尿酸が蓄積される酸性体質にして、家畜の育成上好ましくない。バーク堆肥60〜90体積%と、木炭10〜30体積%と、調味液1〜10体積%とを配合することにより、調味液の酸性が木炭により中和され、敷料は、弱アルカリ性になり家畜の育成上好ましく、また、消臭作用及び殺虫効果を持続して有する。
【0022】
第3発明にあっては、弱アルカリ性低張性温泉なる泉質を有する温泉水を配合することにより、敷料は、陽イオン成分として、ナトリウムイオン、カリウムイオン、又はマグネシウムイオン、陰イオンとして、塩素イオン、又は炭酸水素イオンなどの成分による、胃液分泌、又は胃腸運動促進などの薬理作用を有する。家畜が敷料を食べた場合でも、家畜の育成に好ましい。
【0023】
第4発明にあっては、バーク堆肥60〜90体積%と、木炭10〜30体積%とを配合し、1〜3ヶ月の間予備発酵させ、好気性菌の働きにより配合物に含まれる有機物を二酸化炭素と水に分解する。予備発酵の期間が1ヶ月未満である場合は、配合物に含まれる有機物の分解が十分でなく、また、予備発酵の期間が3ヶ月を超える場合は、製造期間が長期化する。予備発酵された配合物を、50〜80℃で、8〜24時間撹拌して一次発酵させ、空気の供給を増加して発酵を促進させる。攪拌時の温度を50℃より低くした場合は、水分の蒸散が不十分となり、また、病原菌などを死滅させるのに十分ではない。また、攪拌時の温度をあまり高温にすることは、発酵により配合物の内部温度も上昇するため、思わぬ高温になる場合がある。このため、一次発酵時の温度は50〜80℃に設定することが好ましい。撹拌時間は、撹拌する配合物の量に応じて設定する。一次発酵された配合物を、常温で3〜12ヶ月の間二次発酵させ、後熟をして好気的に腐熟する。二次発酵の期間が3ヶ月未満である場合は、配合物の後熟が十分でなく、また、二次発酵の期間が12ヶ月を超える場合は、後塾の度合いが向上するが製造期間が長期化する。二次発酵させた配合物と、梅干を漬けた後の調味液1〜10体積%とを配合し撹拌し、酸性の強い前記調味液を木炭と混ぜることにより弱アルカリ性にする。前記木炭は、ミクロ単位の微細孔を有するため、消臭作用を有し、また、湿度調節作用、及び遠赤外線作用を有する。前記調味液は、梅干を漬けた後の梅エキス、食酢、又は食塩などの有効成分により殺虫効果及び殺菌効果を持続して有する。
【0024】
第5発明にあっては、バーク堆肥60〜90体積%と、木炭10〜30体積%と、食酢又は食塩を含む調味用原液に梅干を漬けた後の調味液1〜10体積%とを配合してなる敷料と家畜糞とを配合して、前記敷料に含まれる木炭により、堆肥の炭素成分と家畜糞(特に鶏糞、豚糞)に多く含まれる窒素成分との比率を調整する。
【0025】
第6発明にあっては、前記敷料50〜80体積%と、家畜糞20〜50体積%とを配合する。前記敷料の体積割合が50体積%より少ない場合は、家畜糞に含まれる窒素量が多いため、堆肥を果樹などの作物に使用した場合に、果実の色付き又は糖度に悪影響を及ぼす場合があるとともに、養分過剰となり作物生育が不良になることがある。また、前記敷料の体積割合が80体積%を超えた場合は、窒素量が少なくなり、肥料としての効果が小さくなる。
【0026】
第7発明にあっては、バーク堆肥60〜90体積%と、木炭10〜30体積%と、食酢又は食塩を含む調味用原液に梅干を漬けた後の調味液1〜10体積%とを配合してなる敷料を家畜の床敷として使用して、家畜が敷料の上を動くことにより前記敷料と家畜がする糞とを混合し、家畜糞から発生する悪臭を吸収し、家畜糞及び敷料に発生する害虫を殺虫し、害虫の発生を抑止する。また、家畜が敷料の上を動くことにより、前記敷料と家畜糞とは適度に撹拌され、好気性を保ちながら発酵する。また、前記敷料は、弱アルカリ性を有するため、家畜糞と混同して微生物活性が最大化し、堆肥化を促進する。家畜の飼育期間における家畜の糞の量に応じて、前記敷料を追加配合することにより、前記敷料及び家畜糞夫々の体積割合を50〜80体積%及び20〜50体積%に配合し、50〜70℃で、1〜8時間撹拌して家畜糞に含まれる水分を取り除き乾燥させて堆肥を作る。攪拌時の温度を50℃より低くした場合には、十分に水分を取り除くことができない。また、攪拌時の温度を70度以上にした場合には、高温になりすぎて注意を要する。家畜糞(特に鶏糞、豚糞)は窒素を多く含むため、前記敷料に含まれる木炭により、堆肥の炭素成分と窒素成分との比率を調整する。前記敷料の体積割合が50体積%より少ない場合は、家畜糞に含まれる窒素量が多いため、堆肥を果樹などの作物に使用した場合に、果実の色付き又は糖度に悪影響を及ぼす場合があるとともに、養分過剰となり作物生育が不良になる場合がある。また、前記敷料の体積割合が80体積%を超えた場合は、窒素量が少なくなり、肥料としての効果が小さくなる。床敷として使用した敷料は、家畜の飼育期間使用することにより、畜舎内で家畜糞と混合され、家畜の飼育を行いながら肥料及び土壌改良材として利用できる堆肥になる。
【発明の効果】
【0027】
第1発明にあっては、木炭の消臭作用により、家畜糞から発生するアンモニア、メタンガスなどの悪臭成分を吸収し、畜舎の近隣の住居環境に与える悪影響を防止できる。また、木炭の湿度調節作用及び遠赤外線作用により、夏場の畜舎内の湿気を除去して畜舎内環境を良好にするとともに、冬場には床敷が温まり家畜の育成環境を良好にすることができる。また、調味液に含まれる有効成分により、家畜糞に発生するカビ類、雑菌、うじ虫などの害虫の繁殖を防止することができる。また、バーク堆肥、木炭、梅干を漬けた後の調味液は産業廃棄物であるため、これらの産業廃棄物を有効に再利用することができる。
【0028】
第2発明及び第4発明にあっては、家畜が敷料を食べた場合でも、家畜の育成上好ましく、また、畜舎内の床に敷料を施設した場合に、家畜糞に含まれるうじ虫又は畜舎外から入ってくる害虫などを駆除することができ、家畜の飼育の間、殺虫効果及び殺菌効果を持続することができる。
【0029】
第3発明にあっては、温泉水に含まれる有効成分により、家畜の育成を促進することができる。
【0030】
第5発明にあっては、家畜糞単体の場合に比較して炭素窒素比を増加させることにより、肥料及び土壌改良剤として使用することができる。
【0031】
第6発明にあっては、さらに良好な肥料及び土壌改良剤として使用することができる。
【0032】
第7発明にあっては、敷料を畜舎内で使用する間に、家畜糞と混合されて堆肥化を促進して堆肥にすることができ、敷料として使用した後は、炭化装置で炭化することなく堆肥として再利用でき、堆肥化に要する時間も省略することができる。また、家畜糞の後処理をする必要もなく家畜糞の廃棄処分の必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
実施の形態1
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて説明する。本発明に係る敷料は、バーク堆肥60〜90体積%と、木炭10〜30体積%とを配合し発酵させ、さらに食酢又は食塩を含む調味用原液に梅干を漬けた後の調味液1〜10体積%を配合して撹拌することにより得られるものである。
【0034】
バーク堆肥は、間伐材、又は剪定材などの廃棄物から発生する樹皮(バーク)を堆積し発酵させたものであり、敷料の基材となるものである。
【0035】
木炭は、伐採木、剪定枝、又は伐根などの廃棄物を破砕して乾燥させ、乾燥した前記廃棄物を炭化装置により800〜1000℃の温度で炭化したものである。木炭は、ミクロ単位の微細孔を有するため消臭作用があり、湿度調節作用、遠赤外線作用などの性質を有する。
【0036】
梅干を漬けるための調味用原液は、食酢、食塩、酸味料、酒精などの有効成分にアミノ酸を含む調味液、甘味料などを加えたものである。調味用原液に梅干を漬けた後に廃棄物として生じる調味液は、上述の食酢、食塩、酸味料、酒精などの成分に、梅エキス(クエン酸、リンゴ酸などの有機酸)が混合した有効成分を含有する。梅干を漬けた後に廃棄物として生じる調味液に含まれる上述の有効成分により、家畜の育成を阻害する害虫、雑菌、カビ類などの繁殖を防止する。
【0037】
図1は、本発明に係る敷料の製造方法を示すフローチャートである。バーク堆肥60〜90体積%と、木炭10〜30体積%とを配合し(ステップS10)、1〜3ヶ月の間、堆積させた状態で放置して予備発酵させる(ステップS11)。このとき、好気性菌の働きを活発化して有機物の分解を促進するための酸素を十分に供給するために、最初の1ヶ月は1週間に1回程度、その後は月に1回程度、切り返しを行う。
【0038】
次に、予備発酵させた配合物を50〜80℃で、8〜24時間撹拌して一次発酵させる(ステップS12)。このとき、高速撹拌機を使用し、空気を配合物に送り込みながら撹拌し、配合物内部の空気及び水分が均一になるようにして発酵を促進する。なお、撹拌時間は、撹拌する配合物の量に応じて設定でき、配合物の量が少ない場合には、8時間程度の撹拌で十分である。また、攪拌時の温度を50℃より低くした場合は、水分の蒸散が不十分となり、また、病原菌などを死滅させるのに十分ではない。また、攪拌時の温度をあまり高温にすることは、発酵により配合物の内部温度も上昇するため、思わぬ高温になる場合がある。
【0039】
一次発酵させた配合物を常温で3〜12ヶ月の間放置して二次発酵させ(ステップS13)、配合物を後熟して好気的に腐熟する。このときに、月に1回程度切り返しを行う。二次発酵させた配合物に、梅干を漬けた後の調味液1〜10体積%を配合し撹拌する(ステップS14)。これにより、本発明に係る敷料が得られる。
【0040】
表1に、この敷料の組成を調べた結果を示す。この敷料は、バーク堆肥を78.0体積%、木炭を19.5体積%、梅干を漬けた後の調味液を2.5体積%配合して得られたものである。
【0041】
【表1】

【0042】
表1に示すように、本発明の敷料は、木炭によって炭素の含有量が多く、消臭作用、湿度調節作用、遠赤外線作用などの性質を有する。さらに、梅干を漬けた後の調味液は、梅エキス(クエン酸、リンゴ酸)、食酢、食塩、酸味料、酒精などの有効成分を含有する。
【0043】
以上のように、本発明の敷料は、敷料の基材としてのバーク堆肥に木炭及び梅干を漬けた後の調味液を含むので、殺虫効果、殺菌効果などの性質を持続して有する。畜舎の床敷として、本発明の敷料を使用した場合には、家畜糞に混入したうじ虫、害虫などの繁殖を抑止し、また、カビ類、雑菌などの繁殖も防止できる。略100坪の敷地面積を有する鶏舎に、本発明の敷料を平均高さ約5cmで敷設したところ、敷設後1日以内に鶏糞に混入した害虫を殺虫することができ、約80日間に亘る鶏の飼育期間の間、害虫の発生を防止することができた。
【0044】
また、本発明の敷料は、炭素窒素比(C/N)が「51」と大きい値を示し、土壌改良剤としての性質も有する。
【0045】
また、本発明の敷料は、産業廃棄物であるバーク堆肥、木炭、梅干を漬けた後の調味液を配合したものであるため、産業廃棄物の廃棄処理が不要となり、廃棄処理に要する費用を低減できるとともに、産業廃棄物を有効に再利用することができる。
【0046】
上述の実施の形態においては、バーク堆肥を78.0体積%、木炭を19.5体積%、梅干を漬けた後の調味液を2.5体積%配合した場合について説明しているが、これに限定されるものではない。但し、バーク堆肥60〜90体積%と、木炭10〜30体積%と、調味液1〜10体積%とを配合した場合、敷料は、調味液の酸性が木炭により中和され、弱アルカリ性になり家畜の育成上好ましく、また、消臭作用及び殺虫効果を持続して有するので、この割合で配合するのが好ましい。
【0047】
上述の実施の形態においては、鶏舎に使用した場合について説明しているが、これに限定されるものではなく、豚、牛などの家畜用の敷料としても使用することができる。
【0048】
実施の形態2
上述の実施の形態においては、バーク堆肥と、木炭と、梅干を漬けた後の調味液とを配合するものであるが、さらに、弱アルカリ性低張性温泉水を配合することにより、陽イオン成分として、ナトリウムイオン、カリウムイオン、又はマグネシウムイオン、陰イオンとして、塩素イオン、又は炭酸水素イオンなどの成分が含まれ、胃液分泌、又は胃腸運動促進などの薬理作用を有し、家畜が敷料を食べた場合であっても、家畜の飼育に好適な敷料を得ることができる。
【0049】
表2乃至表4に、弱アルカリ性低張性温泉水1kg中に含まれる陽イオン成分の一例、陰イオン成分の一例、及び遊離成分の一例を示す。なお、温泉水は、バーク堆肥と、木炭と、梅干を漬けた後の調味液とを配合した配合物に対して、前記調味液と同程度の量を加えることができる。
【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【0052】
【表4】

【0053】
表2、3に示すように、本発明の弱アルカリ性低張性温泉水では、特に、ナトリウムイオン、塩素イオン、炭酸水素イオンが多く含まれ、また、表4に示すように、遊離成分総計は、約2.9g/kgである。なお、陽イオン及び陰イオンの成分量は、これに限定されるものではない。
【0054】
実施の形態3
次に、実施の形態1における敷料の性質を利用した堆肥について説明する。本発明に係る堆肥は、バーク堆肥60〜90体積%と、木炭10〜30体積%と、梅干を漬けた後の調味液1〜10体積%とを配合してなる敷料50〜80体積%と、鶏糞20〜50体積%とを配合して得られるものである。
【0055】
図2は、本発明に係る堆肥の製造方法を示すフローチャートである。バーク堆肥60〜90体積%と、木炭10〜30体積%と、梅干を漬けた後の調味液1〜10体積%とを配合してなる敷料を鶏舎の床敷として敷設し、前記敷料と鶏がする鶏糞を混合させ(ステップS20)、鶏が敷料の上を動くことにより前記敷料と鶏糞とを撹拌させる(ステップS21)。このとき、飼育する鶏の数に応じて、前記敷料を平均高さ3〜7cmとなるように敷設する。
【0056】
鶏の飼育期間が長くなるに応じて前記敷料と混合される鶏がする鶏糞の量は増加するため、前記敷料を追加配合することにより、前記敷料と鶏糞との体積割合を50〜80体積%及び20〜50体積%に配合する(ステップS22)。
【0057】
前記敷料が使用済である場合は(ステップS23でYES)、鶏舎から鶏糞が混じった敷料を取り出し、50〜70℃で、1〜8時間撹拌し(ステップS24)、鶏糞及び前記敷料に含まれる水分を取り除き乾燥させる。これにより、本発明の堆肥が得られる。なお、攪拌時の温度を50℃より低くした場合には、十分に水分を取り除くことができない。また、攪拌時の温度を70度以上にした場合には、高温になりすぎて注意を要する。
【0058】
ステップS23において、敷料が使用済でない場合(ステップS23でNO)は、ステップS20以降の処理を続ける。
【0059】
表5に、この堆肥の組成を調べた結果を示す。この堆肥は、バーク堆肥を78.0体積%、木炭を19.5体積%、梅干を漬けた後の調味液を2.5体積%配合した敷料を約80日間鶏舎に敷設し、敷料70体積%と鶏糞30体積%とを配合して得られたものである。
【0060】
【表5】

【0061】
表5に示すように、窒素、りん酸、酸化カリウム夫々の乾物当たりの値は、1%以上あり、肥料としての効果を有する。また、鶏糞単体の堆肥の炭素窒素比が6〜8であるのに対し、本発明の堆肥の炭素窒素比は18であり、鶏糞単体を堆肥化した場合に比較して、炭素窒素比が大きく、土壌改良剤としも有効な堆肥が得られ、前記敷料を堆肥として利用することができる。
【0062】
次に、本発明の堆肥に使用した敷料を用いて小松菜の栽培試験をした結果を示す。この敷料は、バーク堆肥を78.0体積%、木炭を19.5体積%、梅干を漬けた後の調味液を2.5体積%配合して得られたものである。土壌は、千葉県八街市で採取した表層腐植質黒ボク土で、土性SiLの洪積土、pH5.8、交換酸度0.6、電気伝導度0.08dS/m、陽イオン変換容量28.0meq/乾土100g、容積重0.69g/ml、最大容水量101重量%/乾土のものを用いた。
【0063】
表6は、試験区及び施肥の設計を示した表である。
【0064】
【表6】

【0065】
本発明の敷料に含まれるNは、乾物換算値で2%以下であるため、本発明の敷料の施用量は、その乾物重量を基準に設定してある。本発明の敷料の無施肥として設けた無機基礎量区においては、N、P25 、K2 Oとして、それぞれ25mgに相当する量の硫酸アンモニア、過りん酸石灰及び塩化カリウムを施用した。表6の施用量欄中の括弧内の数字は、有姿(含水物)量を示す。
【0066】
表7は、表6の各試験区の発芽調査成績及び生育調査成績を調べた結果を示す。
【0067】
【表7】

【0068】
表7より、本発明の敷料を施肥した各試験区においては、無機基礎量区と比較して、発芽については発芽開始日及び発芽率とも同等の成績を示し、発芽後の生育においては、同等あるいは同等以上の成績を示し、植物の成長を良好に促進できることが判った。また、小松菜の生育上の異常症状は認められなかった。
【0069】
以上のように、本発明の堆肥は、本発明の敷料を鶏舎の敷料として使用する間に、前記敷料と、鶏がする鶏糞とを混合し、前記敷料及び鶏糞夫々の体積割合を70体積%及び30体積%に配合して堆肥化し、50〜70℃で、1〜8時間撹拌することにより得られる。このため、前記敷料をすべて堆肥として再利用することができるとともに、敷料として使用する間に堆肥化することができるため、使用済の敷料を後処理する必要がなく、堆肥化に要する時間を低減することができ、また堆肥化をするための場所も不要である。
【0070】
また、本発明の敷料と鶏糞とを配合することにより、鶏糞単体を堆肥化した場合に得られる炭素窒素比が小さい堆肥に比べて、本発明の堆肥は、炭素窒素比が大きく、肥料としてのみならず、土壌改良剤としても使用できる堆肥が得られる。前記敷料の体積割合が50体積%より少ない場合は、鶏糞に含まれる窒素量が多いため、堆肥を果樹などの作物に使用した場合に、果実の色付き又は糖度に悪影響を及ぼす場合があるとともに、養分過剰となり作物生育が不良になる場合がある。また、前記敷料の体積割合が80体積%を超えた場合は、窒素量が少なくなり、肥料としての効果が小さくなる。
【0071】
また、本発明の堆肥に含まれる敷料は、植物の成長を良好に促進できるとともに、植物に対する害が無いことも認められた。
【0072】
上述の実施の形態においては、敷料を70体積%、鶏糞を30体積%配合した場合について説明しているが、これに限定されるものではない。但し、前記敷料と鶏糞との体積割合を50〜80体積%及び20〜50体積%に配合した場合、作物生育に良好であるとともに、肥料としての効果を有するので、この割合で配合するのが好ましい。
【0073】
上述の実施の形態においては、本発明の敷料を鶏糞と配合した場合について説明しているが、これに限定されるものではなく、豚、牛などの家畜糞と配合することができる。なお、この場合には、各家畜糞に応じて、前記敷料と家畜糞との配合を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明に係る敷料の製造方法を示すフローチャートである。
【図2】本発明に係る堆肥の製造方法を示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
家畜の床敷として使用する敷料であって、
バーク堆肥と、木炭と、食酢又は食塩を含む調味用原液に梅干を漬けた後の調味液とを配合してなることを特徴とする敷料。
【請求項2】
前記バーク堆肥60〜90体積%と、前記木炭10〜30体積%と、前記調味液1〜10体積%とを配合してなることを特徴とする請求項1に記載された敷料。
【請求項3】
弱アルカリ性低張性温泉水をさらに配合してなることを特徴とする請求項1に記載された敷料。
【請求項4】
家畜の床敷として使用する敷料の製造方法であって、
バーク堆肥60〜90体積%と、木炭10〜30体積%とを配合し、1〜3ヶ月の間予備発酵させる第1の工程と、
該第1の工程で予備発酵させた配合物を、50〜80℃で、8〜24時間攪拌して一次発酵させる第2の工程と、
該第2の工程で一次発酵させた配合物を、常温で3〜12ヶ月の間二次発酵させる第3の工程と、
該第3の工程で二次発酵させた配合物と、食酢又は食塩を含む調味用原液に梅干を漬けた後の調味液1〜10体積%とを配合し攪拌する第4の工程と
を含むことを特徴とする敷料の製造方法。
【請求項5】
家畜の床敷として使用する敷料と家畜糞とを配合した堆肥において、
前記敷料は、バーク堆肥60〜90体積%と、木炭10〜30体積%と、食酢又は食塩を含む調味用原液に梅干を漬けた後の調味液1〜10体積%とを配合してなる敷料であることを特徴とする堆肥。
【請求項6】
前記敷料50〜80体積%と、前記家畜糞20〜50体積%とを配合してなることを特徴とする請求項5に記載された堆肥。
【請求項7】
堆肥の製造方法であって、
バーク堆肥60〜90体積%と、木炭10〜30体積%と、食酢又は食塩を含む調味用原液に梅干を漬けた後の調味液1〜10体積%とを配合してなる敷料を家畜の床敷として使用して、前記敷料と家畜糞とを混合する第1の工程と、
前記敷料及び家畜糞夫々の体積割合を50〜80体積%及び20〜50体積%に配合する第2の工程と、
該第2の工程で配合した配合物を、50〜70℃で、1〜8時間攪拌する第3の工程と
を含むことを特徴とする堆肥の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−50947(P2006−50947A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−234510(P2004−234510)
【出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【特許番号】特許第3605679号(P3605679)
【特許公報発行日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(302060801)株式会社清本組 (3)
【Fターム(参考)】