説明

断熱容器

【課題】別部材の剥がれ難い断熱容器を提供する。
【解決手段】内容器3と外容器6とを真空断熱空間8を隔てて配設し、内容器3と外容器6の互いの口部7を接合することにより一体化した断熱容器において、断熱容器と別部材である保護板15を合成樹脂製熱接着剤16で密着したことにより、合成樹脂製熱接着剤16が加熱溶融と加圧により、合成樹脂製熱接着剤16が外容器6と保護板15との隙間を埋め、保護板15を外容器6に密着させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱マグや魔法瓶などの断熱容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のものは、内容器と外容器とを空間を隔てて配設し、前記内容器と前記外容器の互いの端部を接合することにより一体化した断熱容器があり、排気孔をろう材で封止した封止部に別部材であるカバーシートを貼着したり(例えば、特許文献1)、または別部材である保護板を接着剤を用いて貼り付けて、ろう材の保護と、外観性の向上を図っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−316729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のシールや接着剤では、実際の使用や洗浄において接着不足や耐久性の問題により、剥がれが発生していた。なお、接着剤の接着力や耐久性を向上させるためプラズマ処理、UV処理、コロナ処理などの活性ガスによる表面処理、酸浸漬や陽極酸化などの薬品処理、シランカップリング剤やチオール系カップリング剤などのプライマー処理といった種々の方法が取られる。しかし、活性ガスによる表面処理では十分な改善が見られなかったり、また、いずれの方法も工程追加による製造コストの上昇があった。
【0005】
そこで、本願発明は上記した問題点に鑑み、別部材の剥がれ難い断熱容器を安価で提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明の断熱容器では、内容器と外容器とを空間を隔てて配設し、前記内容器と前記外容器の互いの端部を接合することにより一体化した断熱容器において、
前記断熱容器と別部材を合成樹脂製熱接着剤で密着したことを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明の断熱容器では、前記合成樹脂製熱接着剤が変性ポリオレフィンであることを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明の断熱容器では、前記合成樹脂製熱接着剤の熱処理温度が90〜220℃であることを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明の断熱容器では、前記合成樹脂製熱接着剤の厚みが30〜200μmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1記載の発明によれば、合成樹脂製熱接着剤が加熱溶融と加圧により、合成樹脂製熱接着剤が容器と別部材との隙間を埋め、別部材を密着させることができる。
【0011】
本発明の請求項2記載の発明によれば、合成樹脂製熱接着剤に変性ポリオレフィンを用いているので樹脂もしくは金属を、優れた耐久性で強力に接着することができる。
【0012】
本発明の請求項3記載の発明によれば、断熱容器、別部材またはそれらを構成する材料に影響のない温度で処理することができる。
【0013】
本発明の請求項4記載の発明によれば、被着体の間に合成樹脂製熱接着剤を配置して加熱するだけで接着できるので作業性がよい。また合成樹脂製熱接着剤は断熱容器または別部材の変形を吸収できる十分な厚さを持っているので、断熱容器と別部材の隙間を埋め密着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の断熱容器の実施例1を示す断面図である。
【図2】同上、容器の底側を上向きとした断面図である。
【図3】同上、外容器を底側から見た分解斜視図である。
【図4】本発明の断熱容器の実施例2を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【実施例1】
【0016】
図1〜図3は本発明の断熱容器の実施例1を示しており、同図において真空構造体としてのマグや魔法瓶などの断熱二重容器は、内筒部1の底に内底板部2を有する内容器3と、外筒部4の底に外底板部5を有する外容器6とを、それぞれの上部開口7を接合したものであり、内容器3と外容器6はそれぞれステンレス鋼、例えば18−8ステンレス鋼によって形成されている。そして、内容器3と外容器6との間隙は真空断熱空間8が形成されているものであり、これは外筒部4の中央に形成し内外を連通した排気孔9を介して真空断熱空間8の間隙を排気した後、ろう材10によって封止したものである。尚、内容器3の真空断熱空間8側の面又は及び外容器6の真空断熱空間8側の面にはゲッター(図示せず)が装着している。
【0017】
外底板部5に小孔状の排気孔9が形成されており、この排気孔9の周囲は平面を円形として断熱空間8側に凹に形成されている。そして上下に二段状の凹部は、最深部に排気孔9が形成された幅狭凹部である小径の円筒凹部11(以下、小径円筒凹部11と呼称する)と、この小径円筒凹部11及びと外底板部5の表面との間に形成される幅大凹部である大径の円筒凹部12(以下、大径円筒凹部12と呼称する)を有する二段状の円筒からなる。
【0018】
小径円筒凹部11に充填されたろう材10によって、排気孔9を封止した封止部13が形成されている。前記ろう材10は、金属もしくはガラス製ろう材である。
【0019】
大径円筒凹部12には、底面視略ドーナツ状の底面14(以下、大径底面14と呼称する)に遊嵌するように円板状に形成された保護板15が変性ポリオレフィン等の合成樹脂製熱接着剤16を介して接着面である大径底面14に接着されている。前記保護板15は、内容器3と外容器6同様のステンレス鋼、例えば18−8ステンレス鋼等の金属製である。
【0020】
以上の構成の金属製真空断熱容器において、厚さDを30〜200μmのフィルム状に形成された合成樹脂製熱接着剤16は、90〜220℃の熱処理により加熱溶融と加圧により、合成樹脂製熱接着剤16が大径底面14と保護板15の隙間を完全に埋めて、保護板15を大径底面14に密着させることができるため、保護板15と断熱容器間に水が浸入せず、金属腐食や、金属腐食による断熱性能の低下がない。
【0021】
合成樹脂性熱接着剤16に変性ポリオレフィンを用いているので樹脂もしくは金属を、優れた耐久性で強力に接着させることができる。
【0022】
さらに、断熱容器の外容器6と、別部材である保護板15のうちどちらかが樹脂製の場合には、合成樹脂製熱接着剤16と断熱容器及び保護板15との相溶性がよく、強力に接着することができる。
【0023】
さらに、断熱容器の内容器3、外容器6、および保護板15を金属製としても、熱処理温度を90〜220℃とすることで、断熱容器、保護板15またはそれらを構成する材料に影響のない温度で処理することができる。
【0024】
また、接着された合成樹脂製熱接着剤16は、再加熱することにより簡単に剥がすことができる。そのため再加熱による容易な再処理が可能となる。
【0025】
以上のように本実施例は請求項1に対応しており、内容器3と外容器6とを真空断熱空間8を隔てて配設し、内容器3と外容器6の互いの端部たる口部7を接合することにより一体化した断熱容器において、断熱容器と別部材である保護板15を合成樹脂製熱接着剤16で密着している。この場合、合成樹脂製熱接着剤16が加熱溶融と加圧により、接着剤16が外容器6と保護板15との隙間を埋め、保護板15を外容器6に密着させることができる。
【0026】
また、本実施例は請求項2に対応しており、合成樹脂製熱接着剤16が変性ポリオレフィンであることにより、樹脂もしくは金属を、優れた耐久性で強力に接着することができる。
【0027】
さらに、本実施例は請求項3に対応しており、合成樹脂製熱接着剤16の熱処理温度が90〜220℃であることにより、断熱容器、保護板15またはそれらを構成する材料に影響のない温度で処理することができる。尚、合成樹脂製熱接着剤16の熱処理温度が90℃より低いと、合成樹脂製熱接着剤16が溶けず十分な接着力が得られないという問題がある。また、前記熱処理温度が220℃より高いと、ろう材10への熱影響による封止不良が生じたり、断熱容器もしくは保護板15のどちらかが樹脂製の場合には熱による変形や歪みが生じるという問題がある。断熱容器や別部材への熱影響を小さくし、十分な接着力を得るという観点から、熱処理温度は好ましくは100〜180℃である。
【0028】
また、本実施例は請求項4に対応しており、合成樹脂製熱接着剤16の厚みDが30〜200μmであることにより、被着体である断熱容器の外容器6と保護板15の間に合成樹脂製熱接着剤16を配置して加熱するだけで接着できるので作業性がよい。また合成樹脂製熱接着剤16は断熱容器または別部材の変形を吸収できる十分な厚さDを持っているので、断熱容器の外容器6と保護板15の隙間を埋め密着させることができる。尚、合成樹脂製熱接着剤16の厚みDが30μmより小さいと、断熱容器の外容器あるいは保護板15の歪みによって生じる隙間を埋めることができず密着させることができないという問題がある。また、前記厚みDが200μmより大きいと、溶けた合成樹脂製熱接着剤16が断熱容器の外容器と保護板15の間から押し出され外観をきれいに保てないという問題がある。
【実施例2】
【0029】
図4は、実施例2を示しており、前記実施例1と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。実施例2では、断熱容器の外筒部4に別部材としてすべり止め材17を合成樹脂製接着剤16を介して接着したものである。
【0030】
すべり止め材17は、外面にすべり止め用の凹凸部18を有する合成樹脂製の帯状部材からなり、外筒部4の全周を覆うように装着されている。
【0031】
本実施例では、合成樹脂製接着剤16を変性ポリオレフィンとすることで、外容器6を金属製とし、すべり止め材17を樹脂製とする異素材同士を強力に接着することができる。
【0032】
以上のように本実施例では請求項1に対応しており、内容器3と外容器6とを真空断熱空間8を隔てて配設し、内容器3と外容器6の互いの端部たる口部7を接合することにより一体化した断熱容器において、断熱容器と別部材であるすべり止め材17を合成樹脂製熱接着剤16で密着したことにより、合成樹脂製熱接着剤16が加熱溶融と加圧により、接着剤16が外容器6とすべり止め材17との隙間を埋め、すべり止め材17を外容器6に密着させることができる。
【0033】
本発明は、上記各実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、外容器6の外筒部4や外底板部5に装飾用に樹脂製又は金属製からなる別部材を本発明の合成樹脂製熱接着剤16により接着するものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上のように本発明に係る断熱容器は、各種の用途に適用できる。
【符号の説明】
【0035】
3 内容器
6 外容器
7 端部
15 保護板(別部材)
16 合成樹脂製熱接着剤
17 すべり止め材(別部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容器と外容器とを空間を隔てて配設し、前記内容器と前記外容器の互いの端部を接合することにより一体化した断熱容器において、
前記断熱容器と別部材を合成樹脂製熱接着剤で密着したことを特徴とする断熱容器。
【請求項2】
前記合成樹脂製熱接着剤が変性ポリオレフィンであることを特徴とする請求項1記載の断熱容器。
【請求項3】
前記合成樹脂製熱接着剤の熱処理温度が90〜220℃であることを特徴とする請求項2記載の断熱容器。
【請求項4】
前記合成樹脂製熱接着剤の厚みが30〜200μmであることを特徴とする請求項2又は3に記載の断熱容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−219126(P2011−219126A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89795(P2010−89795)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(591261602)サーモス株式会社 (76)
【Fターム(参考)】