説明

断熱材複合タイル及びその製造方法

【課題】断熱材の露出端面の吸水及びそれによる断熱性能の低下の問題がなく、また、施工時の目地詰めを不要とすることができる断熱材複合タイルを提供する。
【解決手段】中空部1Aを有したタイル本体1とこの中空部1A内に設けられた断熱材2とを有する断熱材複合タイル10。タイル本体1の端部に露呈している断熱材2の端部が、緻密質部2Bとなっている。緻密質部2Bは、断熱材2のそれ以外の発泡質部2Aよりも低発泡倍率又は非発泡とされることにより緻密質となっていても良い。また、樹脂が含浸されることにより緻密質部2Bとなっているものであっても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空部を有したタイル本体と、この中空部内に設けられた断熱材とを有する断熱材複合タイル及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4(a),(b)に示す如く、中空部1A,3Aを有した中空のタイル本体1,3の該中空部1A,3A内に発泡樹脂よりなる断熱材2を設けることにより、タイルの断熱性を向上させた断熱材複合タイル10A,10Bが提供されている。また、図4(c)に示す如く、断面コ字形のタイル本体11の裏側、即ち、コ字形の凹溝部11Aに断熱材12を設けた断熱材複合タイル20Aも提供されている。この断熱材複合タイル20Aは、裏側の断熱材12の板面12Mを施工面に当接して取り付けられる。
【0003】
特開2002−30786号公報の第[0020]段落には、中空のタイル本体の中空部内に発泡用樹脂液を注入し、タイルの左右の開口部をパネルで閉鎖した後、該樹脂液を発泡させることにより、中空部内に発泡樹脂を直接充填することが記載されている。なお、このパネルとしては、通常金属製のものが用いられている。
【0004】
このような断熱材複合タイルにあっては、両端面に露出した断熱材が雨水等に晒されて吸水することで断熱性能が低下するという問題がある。上記特開2002−30786号公報では、この断熱材複合タイルを壁面に取り付ける際に、断熱材複合タイル同士の間の隙間(目地部)にモルタル等の目地材を充填して、この断熱材露出端面を被覆することにより、雨水の浸入を防止することが記載されている。
【特許文献1】特開2002−30786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特開2002−30786号公報に記載されるような目地詰めを行っても、断熱材の吸水を十分に防止することはできない場合がある上に、目地詰めのための手間と時間を要し、施工面においても不利であった。
【0006】
本発明は、断熱材の露出端面の吸水及びそれによる断熱性能の低下の問題がなく、また、施工時の目地詰めを不要とすることができる断熱材複合タイルと、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明(請求項1)の断熱材複合タイルは、中空部を有したタイル本体と、該中空部内に設けられた断熱材とを有し、該断熱材の端部がタイル本体の端部に露呈している断熱材複合タイルにおいて、該断熱材の端部が緻密質となっていることを特徴とする。
【0008】
本発明(請求項2)の断熱材複合タイルは、タイル本体と、該タイル本体の裏側に設けられた断熱材とを有し、該断熱材の端部がタイル本体の端部に露呈している断熱材複合タイルにおいて、該断熱材の端部が緻密質となっていることを特徴とする。
【0009】
請求項3の断熱材複合タイルは、請求項1又は2において、前記断熱材の端部がそれ以外の部分よりも低発泡倍率又は非発泡とされることにより緻密質となっていることを特徴とする。
【0010】
請求項4の断熱材複合タイルは、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記断熱材の端部は、樹脂が含浸されることにより緻密質となっていることを特徴とする。
【0011】
請求項5の断熱材複合タイルは、請求項4において、前記タイル本体の端部にも樹脂が含浸されていることを特徴とする。
【0012】
請求項6の断熱材複合タイルの製造方法は、請求項3に記載の断熱材複合タイルを製造する方法において、該タイル本体の端部に発泡中の断熱材と非親和性の平滑体を当てた状態で、該タイル本体内で前記断熱材の発泡・成形を行い、その後、該平滑体を除去することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の断熱材複合タイルでは、断熱材の端部が緻密質となっているため、雨水等に晒されてもこの部分での吸水が防止され、吸水による断熱性能の低下が防止される。
【0014】
請求項3の断熱材複合タイルによれば、断熱材の発泡成形時に断熱材の端部をそれ以外の部分よりも低発泡倍率又は非発泡とすることにより緻密質とすることができるため、断熱材の端部を緻密質とするための特別の作業が不要である。
【0015】
請求項4の断熱材複合タイルによれば、断熱材の端部に樹脂を含浸することにより、容易に断熱材端部を所望の程度の緻密質とすることができ、施工現場において、断熱材複合タイルの切断端面への対応も容易である。
【0016】
請求項5によれば、タイル本体の端部にも樹脂を含浸させることにより、タイル本体と断熱材との界面からの水の浸入をも防止することができる。
【0017】
断熱材の端部を、それ以外の部分よりも低発泡倍率又は非発泡とすることにより緻密質とした断熱材複合タイルは、請求項6の方法により、タイル本体の端部に発泡中の断熱材と非親和性の平滑体を当てた状態で、タイル本体内で断熱材の発泡・成形を行い、その後、該平滑体を除去することにより製造することができる。この場合、平滑体が発泡成形途中の断熱材と接触することにより、この平滑体表面近傍での発泡が阻害され、この結果として端部が緻密質の断熱材が成形される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に図面を参照して本発明の断熱材複合タイル及びその製造方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0019】
図1,2は本発明の断熱材複合タイルの実施の形態を示す図であり、各々、(a)図は斜視図、(b)図は(a)図のB−B線に沿う断面図である。図3は本発明の断熱材複合タイルの他の実施の形態を示す断面図である。
【0020】
図1の断熱材複合タイル10は、中空部1Aを有したタイル本体1とこの中空部1A内に設けられた断熱材2とを有し、タイル本体1の両端部に露呈している断熱材2の両端部が、緻密質部2Bとなっているものである。
【0021】
図2の断熱材複合タイル20は、断面コ字形のタイル本体11と、このコ字形の凹溝部11Aに設けられた断熱材12とを有し、タイル本体11の両端部に露呈している断熱材12の両端部が緻密質部12Bとなっているものである。
【0022】
この緻密質部2B,12Bは、断熱材2,12のそれ以外の発泡質部2A,12Aよりも低発泡倍率又は非発泡とされることにより緻密質となっていても良い。また、樹脂が含浸されることにより緻密質部2B,12Bとなっているものであっても良い。更に、低発泡倍率の部分に樹脂を含浸することにより緻密質部2B,12Bとなっているものであっても良い。また、このように断熱材の端部に樹脂を含浸させる場合、図3に示す如く、タイル本体1の端部にも樹脂を含浸してタイル本体1の端部を樹脂含浸部1Bとしても良い。また、図2において凹溝を形成しているタイル本体11から露呈している断熱材12の全ての外面層が緻密質となっていても良い。即ち、断熱材12のタイル本体11と反対側の板面にも所定の厚さで緻密質層が形成されていても良い。
【0023】
断熱材の端部を、それ以外の部分よりも低発泡倍率又は非発泡とすることにより緻密質とした断熱材複合タイルは、常法に従って、タイル本体1の中空部1A内に発泡用樹脂液を注入して、この中空部1A内で断熱材2を発泡成形するに当たり、タイル本体1の中空部1A内に発泡用樹脂液を注入した後、タイル本体1の端部に発泡中の断熱材と非親和性の平滑体を当てた状態で断熱材の発泡・成形を行い、その後、この平滑体を除去することにより製造することができる。前述の如く、この平滑体を設けることにより、平滑体が発泡成形途中の断熱材と接触することにより、この平滑体表面近傍での発泡が阻害され、この結果として端部が緻密質の断熱材が成形される。
【0024】
ここで、発泡中の断熱材と非親和性の平滑体としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン等の無極性の合成樹脂体等を用いることができる。より簡便には、従来、通常の断熱材の発泡成形時にタイル本体の両端に当接される金属製のパネルの表面を、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン等の樹脂フィルムで覆い、この樹脂フィルム面をタイル本体の端面に当接して断熱材の発泡成形を行うことにより、上記緻密質部を形成することができる。
【0025】
また、予め、タイル本体1の中空部1A内で発泡成形させた断熱材2の端部、更にはタイル本体1の端部に樹脂を含浸させる場合、この含浸用樹脂としては、ウレタン系塗料やシリコン系等の各種シーリング剤を用いることができる。
【0026】
本発明において、断熱材2,12の緻密質部2B,12Bの厚さ(図1(b),図2(b)のW)は、断熱材複合タイルの形状や寸法、緻密質部2B,12Bの形成方法によっても異なるが、通常の場合、0.5〜5mm程度とするのが好ましい。この緻密質部2B,12Bの厚さWが薄過ぎると緻密質部2B,12Bを設けたことによる断熱材2,12の端面の吸水防止効果を十分に得ることができず、厚過ぎると、相対的に発泡質部2A,12Aの部分が減り、断熱性能が低下し、また緻密質部2B,12Bが増加することにより、断熱材複合タイルの重量が増加したり、材料費が高くついたりして好ましくない。
【0027】
更に、タイル本体1の端部にも樹脂を含浸させる場合、このタイル本体1の樹脂含浸部1Bの幅も上記緻密質部2Bの幅と同程度とすることが好ましい。
【0028】
なお、本発明の断熱材複合タイルにあっては、断熱材の緻密質部の端面はタイル本体の端面と面一となるように構成されていることが好ましい。
【0029】
本発明の断熱材複合タイルは、従来の断熱材複合タイルと同様に施工面に張り付けて施工することができる。その際、断熱材の端部が緻密となっていることにより、この部分での吸水が防止されるため、一般的には目地詰めは不要である。ただし、目地詰めを行っても良いことは言うまでもない。
【0030】
目地詰めを行わずに本発明の断熱材複合タイルを施工した場合、断熱材の露出端面がタイル本体の施工時の前面側の色と同色ないし同系色(同色系で淡い色或いは濃い色)であると、この端面がタイル本体と一体として視認され、施工面において断熱材部分が目立たなくなる。断熱材の露出端面は黒色等の暗色系としても良い。
【0031】
なお、本発明の断熱材複合タイルは、断熱材の端部を緻密質部としたこと以外は従来の断熱材複合タイルと同様の構成とすることができ、例えば、中空のタイル本体の形状についても、図1,3に示すような略正四角筒形状のものの他、図4(b)に示すような略長四角筒形状のものであっても良い。また、断面コ字形のタイル本体についても図2に示す形状に何ら限定されるものではない。
【0032】
断熱材の材料としても、従来の断熱材複合タイルに用いられているもので良く、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂等を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の断熱材複合タイルの実施の形態を示す図であり、(a)図は斜視図、(b)図は(a)図のB−B線に沿う断面図である。
【図2】本発明の別の実施の形態を示す図であり、(a)図は斜視図、(b)図は(a)図のB−B線に沿う断面図である。
【図3】本発明の断熱材複合タイルの他の実施の形態を示す断面図である。
【図4】従来の断熱材複合タイルを示す断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1,3,11 タイル本体
1B 樹脂含浸部
2,12B 断熱材
2A,12A 発泡質部
2B,12B 緻密質部
1A,3A 中空部
11A 凹溝部
10,10a,10A,10B,20,20A 断熱材複合タイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部を有したタイル本体と、該中空部内に設けられた断熱材とを有し、
該断熱材の端部がタイル本体の端部に露呈している断熱材複合タイルにおいて、
該断熱材の端部が緻密質となっていることを特徴とする断熱材複合タイル。
【請求項2】
タイル本体と、該タイル本体の裏側に設けられた断熱材とを有し、
該断熱材の端部がタイル本体の端部に露呈している断熱材複合タイルにおいて、
該断熱材の端部が緻密質となっていることを特徴とする断熱材複合タイル。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記断熱材の端部がそれ以外の部分よりも低発泡倍率又は非発泡とされることにより緻密質となっていることを特徴とする断熱材複合タイル。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記断熱材の端部は、樹脂が含浸されることにより緻密質となっていることを特徴とする断熱材複合タイル。
【請求項5】
請求項4において、前記タイル本体の端部にも樹脂が含浸されていることを特徴とする断熱材複合タイル。
【請求項6】
請求項3に記載の断熱材複合タイルを製造する方法において、
該タイル本体の端部に発泡中の断熱材と非親和性の平滑体を当てた状態で、該タイル本体内で前記断熱材の発泡・成形を行い、その後、該平滑体を除去することを特徴とする断熱材複合タイルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−45974(P2006−45974A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−230456(P2004−230456)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】