説明

断熱複合パネルの壁面などへの施工法およびこれに用いるクシ目こて

【課題】 コンクリート面に不陸があっても対応できるとともに、コンクリート面の内部結露を防止することができる断熱複合パネルの壁面などへの施工法を提供すること。
【解決手段】 断熱複合パネル1をコンクリートの壁面2などに圧着して施工するに際し、断熱複合パネル1の圧着すべき表面の全体に、コンクリートの壁面2などの不陸を吸収し得る高さで、交差する2方向3a,3bに接着剤3を畝状に塗布した後、コンクリートの壁面2などに圧着して接着剤3を押し拡げるようにして施工する。これにより、コンクリートの壁面2などの不陸に対しても表面全体の接着剤3を高くすることで吸収して確実に接着でき、畝状の接着剤3を交差する2方向3a,3bとして押し拡げることで断熱複合パネル1とコンクリートの壁面2などとの隙間4を減少させるとともに、僅かに残る隙間4の空気の移動を阻止することで、内部結露を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、断熱複合パネルの壁面などへの施工法およびこれに用いるクシ目こてに関し、断熱材と他のボードとからなる複合パネルをコンクリートの壁面などに直接取り付ける場合のコンクリートの壁面などの不陸の影響を緩和でき、取り付けにともなう空間内部の結露を防止できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート造りの集合住宅などの建築物の断熱工法として、硬質ウレタンフォームや押出しポリスチレンフォームなどの断熱材と、石膏ボード、ケイカル板、フレキシブルボード、セメント板などの硬質面材を接着した断熱複合パネルを用い、コンクリートの壁面など(壁、柱、梁底、梁側など)に接着によって直接貼り付ける工法があり、接着剤を使用した圧着工法(例えば特許文献1参照)や硫化カルシウム水塩を主成分とする無機系の接着剤を団子状に点在させて接着する団子張り工法(例えば特許文献2参照)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−9291号公報
【特許文献2】特開平07−82807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記断熱材の圧着工法では、施工するコンクリート面に不陸があり平滑性が悪い場合には、そのまま断熱材を直接圧着することができず、通常、1.8mあたり2mm以内の不陸には対応できるもののそれ以上の場合には、モルタルを塗布することで平滑性を向上する均しモルタルの施工が必要となり、施工に要する日数が増大し施工期間が長くなるなどの問題がある。
【0005】
また、圧着工法では、接着剤の塗布をクシ目へらを用いて行われるが、塗布時、へらの角度が施工者の姿勢、感覚の影響を受けて不安定になりやすく、接着剤の塗布量や塗布厚さがバラツキ、接着品質が大きく変化するという問題がある。
【0006】
一方、いわゆる団子張り工法では、団子状に接着剤を点在させるため、コンクリート面の不陸に対する適用性を向上できるものの、断熱材とコンクリート面との間に隙間ができ、この隙間による空間の空気層がコンクリート表面で結露しやすく、その水分によって壁や床面がぬれたり、カビ発生の原因となるなどの問題があり、あまり施工されていないのが現状である。
【0007】
この発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、コンクリート面に不陸があっても対応できるとともに、コンクリート面の内部結露を防止することができる断熱複合パネルの壁面などへの施工法および接着剤の塗布を安定して行うことができる断熱複合パネルの壁面などへの施工法に用いるクシ目こてを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記従来技術が有する課題を解決するこの発明の請求項1記載の断熱複合パネルの壁面などへの施工法は、断熱複合パネルをコンクリートの壁面などに圧着して施工するに際し、断熱複合パネルの圧着すべき表面の全体に、コンクリートの壁面などの不陸を吸収し得る高さで、交差する2方向に接着剤を畝状に塗布した後、コンクリートの壁面などに圧着して前記接着剤を押し拡げるようにして施工することを特徴とするものである。
【0009】
また、この発明の請求項2記載の断熱複合パネルの壁面などへの施工法は、請求項1記載の構成に加え、前記接着剤を、塗布方向の両側に側板を備えたクシ目こてを用いて塗布するようにしたことを特徴とするものである。
【0010】
さらに、この発明の請求項3記載の断熱複合パネルの壁面などへの施工法は、請求項1または2記載の構成に加え、前記接着剤を、前記断熱複合パネルの両側縁と平行な方向と、少なくともこの両端部で前記方向と直交する方向とに塗布するようにしたことを特徴とするものである。
【0011】
また、この発明の請求項4記載の断熱複合パネルの壁面などへの施工法は、請求項1〜3のいずれかに記載の構成に加え、前記接着剤の塗布高さを、断熱複合パネルの少なくとも外周端側を高くして圧着力を高めるようにしたことを特徴とするものである。
【0012】
さらに、この発明の請求項5記載の断熱複合パネルの壁面などへの施工法は、請求項1〜4のいずれかに記載の構成に加え、前記接着剤に加えて断熱複合パネルの少なくとも外周端部では、環状に連続させて塗布した環状接着部を設けるようにしたことを特徴とするものである。
【0013】
また、この発明の請求項6記載の断熱複合パネルの壁面などへの施工法は、請求項1〜5のいずれかに記載の構成に加え、前記接着剤の塗布横断面形状を、矩形上部に三角形を備えた形状として初期圧着力を高めるようにしたことを特徴とするものである。
【0014】
さらに、この発明の請求項7記載の断熱複合パネルの壁面などへの施工法は、請求項1〜6のいずれかに記載の構成に加え、前記接着剤を、不陸が1.8mあたり5mm以内のコンクリートの壁面などに塗布するようにしたことを特徴とするものである。
【0015】
また、この発明の請求項8記載の断熱複合パネルの壁面などへの施工用のクシ目こては、クシ目が形成されたこて板部の両側に、このこて板部の角度を規制するとともに、接着剤のはみだしを防止する側板部を設けたことを特徴とするものである。
【0016】
さらに、この発明の請求項9記載の断熱複合パネルの壁面などへの施工用のクシ目こては、請求項8記載の構成に加え、前記こて板部を、塗布面に対して45〜70度の角度に保持可能な前記側板部を設けて構成したことを特徴とするものである。
【0017】
また、この発明の請求項10記載の断熱複合パネルの壁面などへの施工用のクシ目こては、請求項8または9記載の構成に加え、前記こて板部の上端部に、前記角度より小さい角度の連結板部を設けて構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
この発明の請求項1記載の断熱複合パネルの壁面などへの施工法によれば、断熱複合パネルをコンクリートの壁面などに圧着して施工するに際し、断熱複合パネルの圧着すべき表面の全体に、コンクリートの壁面などの不陸を吸収し得る高さで、交差する2方向に接着剤を畝状に塗布した後、コンクリートの壁面などに圧着して前記接着剤を押し拡げるようにして施工するので、コンクリートの壁面などの不陸に対しても表面全体の接着剤を高くすることで吸収して確実に接着でき、畝状の接着剤を交差する2方向として押し拡げることで断熱複合パネルとコンクリートの壁面などとの隙間を減少させるとともに、僅かに残る隙間の空気の移動を阻止することで、内部結露を防止することができる。
【0019】
また、この発明の請求項2記載の断熱複合パネルの壁面などへの施工法によれば、前記接着剤を、塗布方向の両側に側板を備えたクシ目こてを用いて塗布するようにしたので、接着剤を畝状に塗布する場合に接着剤がこての端部より漏れ出すことを防止でき、接着剤を所望の高さおよびピッチで安定して塗布することができる。これにより、こてから漏れ出る接着剤で断熱複合パネルの小口部やパネル表面を汚すこともなく、施工効率も良く、接着品質を向上することができる。
【0020】
さらに、この発明の請求項3記載の断熱複合パネルの壁面などへの施工法によれば、前記接着剤を、前記断熱複合パネルの両側縁と平行な方向と、少なくともこの両端部で前記方向と直交する方向とに塗布するようにしたので、畝状の接着剤の断熱複合パネルの両側縁と平行な両端部を直交する畝状の接着剤で塞ぐことができ、一層確実に断熱複合パネルとコンクリートの壁面などとの隙間に、僅かに残る空気の移動を阻止して内部結露を防止することができる。
【0021】
また、この発明の請求項4記載の断熱複合パネルの壁面などへの施工法によれば、前記接着剤の塗布高さを、断熱複合パネルの少なくとも外周端側を高くして圧着力を高めるようにしたので、畝状の外周端側の塗布高さを高くした接着剤が、より高い圧着力で押し拡げられ、これによって一層確実に断熱複合パネルをコンクリートの壁面などに接着することができる。
【0022】
さらに、この発明の請求項5記載の断熱複合パネルの壁面などへの施工法によれば、前記接着剤に加えて断熱複合パネルの少なくとも外周端部では、環状に連続させて塗布した環状接着部を設けるようにしたので、環状接着部により断熱複合パネルごとにコンクリートの壁面などとの隙間を閉じられた状態にすることができ、僅かに残る空気の移動を阻止して一層確実に内部結露を防止することができる。
【0023】
また、この発明の請求項6記載の断熱複合パネルの壁面などへの施工法によれば、前記接着剤の塗布横断面形状を、矩形上部に三角形を備えた形状として初期圧着力を高めるようにしたので、接着剤上部の三角形の頂部は押し拡げやすく、こうすることで、より高い圧着力で一層確実に断熱複合パネルをコンクリートの壁面などに接着することができる。
【0024】
さらに、この発明の請求項7記載の断熱複合パネルの壁面などへの施工法によれば、前記接着剤を、不陸が1.8mあたり5mm以内のコンクリートの壁面などに塗布するようにしたので、この範囲の不陸であればその影響を受けることなく、押し拡げた畝状の接着剤で高い圧着力で確実に断熱複合パネルをコンクリートの壁面などに接着することができる。
【0025】
また、この発明の請求項8記載の断熱複合パネルの壁面などへの施工用のクシ目こてによれば、クシ目が形成されたこて板部の両側に、このこて板部の角度を規制するとともに、接着剤のはみだしを防止する側板部を設けたので、固定板部の両側の側板部を接着剤の塗布面に倣うようにすることで、こて板部の角度を安定させることができるとともに、接着剤のはみだしを防止することができる。
【0026】
さらに、この発明の請求項9記載の断熱複合パネルの壁面などへの施工用のクシ目こてによれば、前記こて板部を、塗布面に対して45〜70度の角度に保持可能な前記側板部を設けて構成したので、こて板部を塗布面に対して45〜70度に保持しながら塗布することができ、接着剤の塗布高さや塗布量を一定にすることができる。
【0027】
また、この発明の請求項10記載の断熱複合パネルの壁面などへの施工用のクシ目こてによれば、前記こて板部の上端部に、前記角度より小さい角度の連結板部を設けて構成したので、連結板部を把持して塗布作業を行うことで、一層小さな角度に保持して作業ができ、安定した状態で接着剤を塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の断熱複合パネルの壁面などへの施工法の一実施の形態にかかる施工工程の一部分の横断面図である。
【図2】この発明の断熱複合パネルの壁面などへの施工法の一実施の形態にかかる接着剤の塗布パターンの説明図である。
【図3】この発明の断熱複合パネルの壁面などへの施工用のクシ目こての一実施の形態にかかる外観斜視図、側面図、クシ目の説明図である。
【図4】この発明の断熱複合パネルの壁面などへの施工用のクシ目こての一実施の形態にかかる塗布状態の説明図である。
【図5】この発明の断熱複合パネルの壁面などへの施工用のクシ目こての他の一実施の形態にかかる側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、この発明の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0030】
この発明の断熱複合パネルの壁面などへの施工法は、断熱複合パネル1を例えば、鉄筋コンクリート造りなどの建築物のコンクリートの壁面2などに直接接着剤3で圧着する場合に適用されるものであり、コンクリート壁面2への不陸対応性とコンクリート壁面2の内部結露の問題を同時に解決するものである。
【0031】
この断熱複合パネルの壁面などへの施工法(以下、単に施工法とする。)が適用されるコンクリートの壁面2などは、壁、柱、梁底、梁側などのコンクリート面であれば、どのようなものであっても良く、コンクリートの壁面2には、モルタル壁面を含むものである。
また、断熱複合パネル1は、硬質ウレタンフォームまたは押出しポリスチレンフォームの断熱材1aと、石膏ボード、ケイカル板、フレキシブルボード、セメント板などの硬質面材1bとを一体とした複合パネルのいずれであっても良く、断熱材1aの表面に防湿材、例えば炭酸カルシウム紙などが設けられたものが望ましい。
【0032】
この施工法では、断熱複合パネル1をコンクリートの壁面2などに接着剤3を介して圧着して施工する場合に、図1(a)に示すように、断熱複合パネル1の圧着すべき表面である断熱材1aの表面全体(防湿材が設けられる場合には、防湿材の表面全体)に、コンクリートの壁面などの不陸を吸収し得る高さで、交差する2方向、例えば図2(a),(b)に示すように、断熱複合パネル1の側縁部(長辺部)と平行な方向3aとこれに直交する方向(短辺部と平行)3bとに接着剤3を盛り上げるようにして畝状に塗布した後、図1(b)に示すように、コンクリートの壁面2などに圧着して接着剤3を押し拡げるようにして施工するようにしている。
これまでの圧着工法においては大きな不陸を接着剤で吸収することは、使用する接着剤の物性やコストの面から実用的ではなかったが、この施工法では、接着剤3を多量に塗布することで、不陸によるコンクリートの壁面2と断熱複合パネル1との間の隙間4を接着剤3で埋める(不陸対応性)ようにしており、接着剤3として不陸を吸収し得る高さに盛り上げることができるものを使用するとともに、断熱複合パネル1の表面全体に畝状に塗布し、これを圧着して押し拡げるようにすることで、直交する2方向の畝状の接着剤3同士の間の空間をできるだけ減少させ、隙間空間4を縮小・細分化して内部結露を防止する。
【0033】
このような畝状に嵩を盛ることができる接着剤3としては、無機系のGLボンド(登録商標)、CAボンド(登録商標)などの硫化カルシウム水塩を主成分とした接着剤や補修用既調合モルタル(JISA6916のセメント系下地調整厚塗剤該当品)、または有機系のウレタン、変性シリコーン、アクリルエマルジョンなどの接着剤を挙げることができる。
なお、無機系接着剤を用いる場合は、一般的には被接着体に水分が急速に奪われることで発生するドライアウト現象による接着不良を回避するため保水剤などを添加するが、断熱複合パネル1に塗布する場合、発泡樹脂の断熱材または防湿材の防湿性が高いことから、特に保水剤を添加しなくともドライアウト現象が発生しない。
【0034】
このような接着剤3を断熱複合パネル1の圧着すべき表面である断熱材1aの表面全体(防湿材が設けられる場合には、防湿材の表面全体)に、コンクリートの壁面2などの不陸を吸収し得る高さで、交差する2方向、例えば図2(a)に示すように、断熱複合パネル1の側縁部(長辺部)と平行な方向3aと、この長辺部と平行な接着剤3aの両端部でこれに直交する方向(短辺部と平行)3b、3bとに接着剤3を盛り上げるようにして畝状に塗布したり、あるいは図2(b)に示すように、長辺部と平行な接着剤3aの両端部の直交する接着剤3b、3bに加えて中間部にも直交する方向(短辺部と平行)の接着剤3bを盛り上げるようにして畝状に塗布するようにする。
【0035】
このような直交する2方向に接着剤3a,3bを塗布するため、クシ目こてを用いることで、クシ目の数に応じた畝を一度に塗布することができる。
この施工法では、図3に示すように、専用のクシ目こて10を用いるようにしており、クシ目11aが複数条形成されたこて板部11の両側に、このこて板部11の角度を規制するとともに、接着剤のはみだしを防止する側板部12を設けて構成してあり、こて板部11の外側には、把持部13が設けてある。
そして、側板部12の1つの頂角を塗布面に対して60度の角度としてあり、これにより、図4に示すように、側板部12の底辺を塗布面に倣わせるようにすることで、こて板部11を塗布面に対して60度の角度に保持した状態で塗布作業を行うことができるようにしてある。
【0036】
なお、専用のクシ目こて10Aとして、例えば図5に示すように、クシ目11aが形成されたこて板部11の上端部であるクシ目11aと反対側の端部に、こて板部11を保持する角度(例えば60度)より小さい角度の連結板部14を連結して構成したものであっても良く、この連結板部14に把持部13を設けることで、塗布作業の際のクシ目こて10Aの角度を小さくして作業することができる。
【0037】
これら専用のクシ目こて10,10Aに形成するクシ目11aとしては、例えば図3(c)に示すように、矩形の上部に三角形を載せた野球のホームベース状のクシ目としたり、あるいは矩形の上部に半円形を載せたクシ目や矩形のみのクシ目とすることもでき、畝状に盛り上げて接着剤3を塗布できれば良い。
【0038】
このようなクシ目11aの大きさとピッチは、コンクリートの壁面2の不陸の範囲が1.8mあたり凹凸差で5mmでも均しモルタル施工を行うことなく直接圧着することを可能とするため、これまでの格子状に接着剤を塗布する圧着工法や団子状に接着剤を点在させる団子張り工法での接着面積、例えば0.4〜0.44m2/m2以上を確保するようにすれば良い。
そこで、例えば、クシ目11aの幅Bを、例えば17mm程度、高さHを11〜15mm、隣接するクシ目11aとの間隔P(ピッチ)を28mm程度として、接着剤3の塗布量を4.2kg/m2とした場合に、不陸がないとした場合の試算によれば、接着剤3の圧着後の厚さを5mmとすれば、接着面積を約0.75m2/m2確保でき、接着剤3の圧着後の厚さを9mmとしても接着面積を約0.41m2/m2確保することができ、さらに接着剤3の圧着後の厚さを3.75mmまで圧着すれば、接着面積を100%とすることができる。
【0039】
このような専用のクシ目こて10,10Aによれば、これまでのクシ目こてでは、タイルなどの施工における接着剤塗布や左官仕上げや塗装仕上げにおける意匠パターン付けに使用されていたに過ぎず、積極的な接着面の不陸調整や接着剤形状の確保、塗布量安定化などの施工品質向上を目的とするものでないが、クシ目こて10,10Aでは、積極的な不陸調整を目的とし、不陸を調整した状態で接着ができる範囲を設定し、これに基づき塗布量により決まる最小接着厚さ、最低接着必要面積により決まる最大接着厚さの関係を検討してクシ目11aの形状を設定してあり、確実に接着することができる。
【0040】
また、接着面であるコンクリートの壁面2の不陸の大きさによって接着面積は変化するが、従来工法よりも広い接着面積で接着することと、接着剤3を直交する2方向3a,3bに畝状に塗布して押し拡げるようにすることで、接着剤3同士の隙間空間4を縮小・細分化することで内部結露の発生を抑制でき、例え内部結露が発生しても細分化された結露水が密閉状態となり、壁や床面の濡れやカビなどの実害の発生を防止することができる。
【0041】
さらに、このような専用のクシ目こて10,10Aによれば、こて板部11の両側に側板部12を設けたので、接着剤3を断熱複合パネル1に塗布する場合に、こて板部11の端部から接着剤3が漏れ出すことがなく、断熱複合パネル1の小口部や断熱複合パネル1の表面などを汚すことがなく、施工効率を向上することができる。また、側板部12を断熱複合パネル1の表面に沿って倣わせて接着剤3を塗布することで、クシ目こて10,10Aの角度を一定に保って塗布することができ、接着剤3の塗布幅や塗布高さが安定し、適正な塗布量とすることで、接着品質の安定化を図ることができる。
【0042】
次に、コンクリートの壁面2への断熱複合パネル1の具体的な施工方法について説明する。
まず、施工するコンクリート壁面2の平滑性を確認し、1.8mあたり5mm以内である場合には、特に補修を必要とせず、直接断熱複合パネル1を施工する。なお、平滑性が悪い場合には、均しモルタルを施工して上記範囲内の平滑性を確保する。
次に、墨出しを行い、断熱複合パネル1の仕上げ面位置を決める。例えば、垂直壁面に断熱複合パネル1を施工する場合には、これと垂直な水平床面および/または垂直な側壁面に墨出しを行って仕上げ面位置を決める。
この後、接着剤3をそれぞれの接着剤の使用に応じて水などと混練する。例えば接着剤3と規定量の水(モルタル系の接着剤の場合には、混和剤も付加する)を混練してクシ目こて10,10Aでの塗布に適した粘度に調整する。
専用のクシ目こて10(10A)を用い、断熱複合パネル1の圧着すべき表面である断熱材1a(防湿材を備える場合には、防湿材)の全面に接着剤3を塗布する。
この接着剤3の塗布は、既に説明したように、交差する2方向に塗布するようにし、断熱複合パネル1の長辺と平行な方向の接着剤3aを両端部にクシ目こて10の一回分程度の幅を残して塗布した後、接着剤3aの両端部を塞ぐように直交するとともに、断熱複合パネル1の短辺と平行な方向の接着剤3bを塗布する。なお、断熱複合パネル1の長辺と平行な方向の接着剤3aの中間部にも短辺と平行な方向の接着剤3bを塗布するようにしても良い。また、各畝状の接着剤3a,3bは、押し広げた場合にはみ出すことがないよう、断熱複合パネル1の端面から所定の間隔をあけて塗布するようにし、接着剤の塗布量や塗布高さによっても異なるが、例えば端面から10〜15mm程度の間隔を確保するようにする。
接着剤3を塗布した断熱複合パネル1を墨出しした位置に合せてコンクリート壁面2に貼り付ける。
そして、断熱複合パネル1の表面を定木などで叩くようにして上下・左右のレベルを調整しながら圧着していく。こすることで、接着剤3が押し拡げられて接着剤3同士の隙間4がほとんどない状態となり、コンクリート壁面2に接着される。
【0043】
このような断熱複合パネル1へのクシ目こて10による接着剤3の塗布、コンクリート壁面2への貼付け、断熱複合パネル1のレベル調整および圧着を繰り返すことで、断熱複合パネル1を一枚ずつ接着する。
こうしてコンクリート壁面2への全ての断熱複合パネル1の接着が完了した後、接着剤3が乾燥・硬化するまで十分に養生し、目地部のパテ処理などを行い、クロス張りなどの内装材を施工する。
【0044】
このような施工法によれば、コンクリートの壁面2などに不陸があっても、モルタル均し施工工程を削減することができ、効率的に施工でき工期を短縮することができる。
また、専用クシ目こてを使用することで、容易に接着剤の塗布量や塗布面積を確保することができ、接着品質の安定化を図ることができる。
さらに、接着剤の充填度や密閉度を高めることができ、断熱複合パネルの内部結露の防止・抑制効果を高めることができる。
また、接着剤として無機系接着剤を使用するようにすれば、施工後の片付けが水洗いだけで済み簡単となるとともに、有機系接着剤の使用にともなう問題(VOCなど)がなく、安全に施工することができる。
【0045】
なお、上記実施の形態では、接着剤の塗布を断熱複合パネルの長辺および短辺と平行な直交する2方向としたが、これに限らず、断熱複合パネルの辺に対して斜め方向の交差する2方向としても良い。
また、接着剤の塗布高さを等しくする場合に限らず、断熱複合パネルの少なくとも外周端側を高くして圧着力を高めるようにしても良く、畝状の外周端側の塗布高さを高くした接着剤が、より高い圧着力で押し拡げられ、これによって一層確実に断熱複合パネルをコンクリートの壁面などに接着することができる。
さらに、交差する2方向の接着剤に加えて断熱複合パネルの少なくとも外周端部では、環状に連続させて塗布した環状接着部を設けるようにしても良く、環状接着部により断熱複合パネルごとにコンクリートの壁面などとの隙間を閉じられた状態にすることができ、僅かに残る空気の移動を阻止して一層確実に内部結露を防止することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 断熱複合パネル
1a 断熱材
1b 硬質面材
2 コンクリートの壁面
3 接着剤
3a 長辺と平行な方向の接着剤
3b 短辺と平行な方向の接着剤
4 隙間
10 クシ目こて
10A クシ目こて
11 こて板部
11a クシ目
12 側板部
13 把持部
14 連結板部
B クシ目の幅
H クシ目の高さ
P クシ目のピッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱複合パネルをコンクリートの壁面などに圧着して施工するに際し、
断熱複合パネルの圧着すべき表面の全体に、コンクリートの壁面などの不陸を吸収し得る高さで、交差する2方向に接着剤を畝状に塗布した後、コンクリートの壁面などに圧着して前記接着剤を押し拡げるようにして施工することを特徴とする断熱複合パネルの壁面などへの施工法。
【請求項2】
前記接着剤を、塗布方向の両側に側板を備えたクシ目こてを用いて塗布するようにしたことを特徴とする請求項1記載の断熱複合パネルの壁面などへの施工法。
【請求項3】
前記接着剤を、前記断熱複合パネルの両側縁と平行な方向と、少なくともこの両端部で前記方向と直交する方向とに塗布するようにしたことを特徴とする請求項1または2記載の断熱複合パネルの壁面などへの施工法。
【請求項4】
前記接着剤の塗布高さを、断熱複合パネルの少なくとも外周端側を高くして圧着力を高めるようにしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の断熱複合パネルの壁面などへの施工法。
【請求項5】
前記接着剤に加えて断熱複合パネルの少なくとも外周端部では、環状に連続させて塗布した環状接着部を設けるようにしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の断熱複合パネルの壁面などへの施工法。
【請求項6】
前記接着剤の塗布横断面形状を、矩形上部に三角形を備えた形状として初期圧着力を高めるようにしたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の断熱複合パネルの壁面などへの施工法。
【請求項7】
前記接着剤を、不陸が1.8mあたり5mm以内のコンクリートの壁面などに塗布するようにしたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の断熱複合パネルの壁面などへの施工法。
【請求項8】
クシ目が形成されたこて板部の両側に、このこて板部の角度を規制するとともに、接着剤のはみだしを防止する側板部を設けたことを特徴とする断熱複合パネルの壁面などへの施工用のクシ目こて。
【請求項9】
前記こて板部を、塗布面に対して45〜70度の角度に保持可能な前記側板部を設けて構成したことを特徴とする請求項8記載の断熱複合パネルの壁面などへの施工用のクシ目こて。
【請求項10】
前記こて板部の上端部に、前記角度より小さい角度の連結板部を設けて構成したことを特徴とする請求項8または9記載の断熱複合パネルの壁面などへの施工用のクシ目こて。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−174503(P2010−174503A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17837(P2009−17837)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】