説明

新規ビフェノール誘導体

【課題】抗菌作用および抗酸化作用を有し、広いpHにおいて薬剤活性を維持できる新規化合物を提供すること。
【解決手段】下記式(1);


式中、R〜Rは、各々独立して、ハロゲン原子で置換された、または非置換の炭素数1〜4の炭化水素基を表す;
で表されるビフェノール誘導体、その薬学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規ビフェノール誘導体、およびそれを含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の抗生物質に対して耐性を有する細菌による院内感染が顕著な問題になってきている。バンコマイシンは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に有効な薬剤として使用されているが、近年このバンコマイシンに対する耐性菌(バンコマイシン耐性腸球菌:Vancomycin−Resistant Enterococci)が出現し、この耐性菌に対して有効な薬剤が求められている。
【0003】
バンコマイシン耐性腸球菌に対する薬剤として、リネゾリド(特許文献1参照)が臨床応用されている。
【0004】
非特許文献1には、バンコマイシン耐性腸球菌に有効な新規薬剤として、ジプロポフォール(Dipropofol;2,2’,6,6’−テトライソプロピル−4,4’−ビフェノール)が提案されている。ジプロポフォールはバンコマイシンと同様にグラム陽性菌に対して有効であると同時にバンコマイシン耐性腸球菌に対しても優れた抗菌作用を有する。また、ジプロポフォールは抗菌作用と同時に抗酸化作用を有することも知られており、各種応用が期待されている(非特許文献2参照)。
【0005】
ジプロポフォールと同様にビフェノール誘導体である抗酸化剤としては、特許文献2および3で提案されているビフェノール誘導体が知られている。
【特許文献1】国際公開第95/7271号パンフレット
【特許文献2】特開平6−65136号公報
【特許文献3】特開平7−179853号公報
【非特許文献1】Masahiro Ogata,et al.,Biol.Pharm.Bull.28(6)1120−1122(2005)
【非特許文献2】Masahiro Ogata,et al.,Chem.Pharm.Bull.53(3)344−346(2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記ジプロポフォールは、優れた抗菌作用を有するものの、製剤のpHによっては薬剤が分解劣化するなどの安定性に問題が生ずることがあり、製剤化において制約があった。また、現在臨床応用されているリネゾリドは既に耐性菌が出現しており、バンコマイシン耐性腸球菌に対する有効な新規薬剤の開発が急がれている。
【0007】
したがって、本発明の目的は、抗菌作用および抗酸化作用を有し、広いpH範囲において薬剤活性を維持できる新規化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決する薬剤のスクリーニングを行い、鋭意検討した結果、本発明の化合物が抗菌作用および抗酸化作用を有し、広いpH範囲において分解劣化することなく薬剤活性を維持できることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0009】
すなわち、本発明は、下記式(1);
【0010】
【化1】

【0011】
式中、R〜Rは、各々独立して、ハロゲン原子で置換された、または非置換の炭素数1〜4の炭化水素基を表す;
で表されるビフェノール誘導体、その薬学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のビフェノール誘導体は、抗菌作用および抗酸化作用を有し、薬剤pHの広範囲にわたって薬剤活性を維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の第一は、下記式(1)で表されるビフェノール誘導体に関する。
【0014】
【化2】

【0015】
式中、R〜Rは、各々独立して、ハロゲン原子で置換された、または非置換の炭素数1〜4の炭化水素基を表す。炭素数1〜4の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基またはtert−ブチル基が挙げられる。中でも、抗菌および抗酸化活性の点から、エチル基、イソプロピル基、またはハロゲン原子で置換されたメチル基が好ましい。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素が挙げられる。
【0016】
好ましくは、上記式(1)中、RおよびRは、各々独立して、エチル基、イソプロピル基、またはハロゲン原子で置換されたメチル基である。ハロゲン原子で置換されたメチル基として具体的には、CHF基、CHCl基、CHBr基、CHI基、CHF基、CHCl基、CHBr基、CHI基、CF基、CCl基、CBr基、またはCI基が挙げられる。より好ましくは、上記式(1)中、RおよびRは、各々独立して、エチル基、イソプロピル基、CF基である。RとRとは互いに異なる基であってもよいが、同一の基であることが好ましい。
【0017】
また、好ましくは、上記(1)中、RおよびRは、各々独立して、エチル基、イソプロピル基、またはハロゲン原子で置換されたメチル基である。ハロゲン原子で置換されたメチル基として具体的には、CHF基、CHCl基、CHBr基、CHI基、CHF基、CHCl基、CHBr基、CHI基、CF基、CCl基、CBr基、またはCI基が挙げられる。より好ましくは、上記式(1)中、RおよびRは、各々独立して、エチル基、イソプロピル基、CFである。RとRとは互いに異なる基であってもよいが、同一の基であることが好ましい。
【0018】
上記式(1)で表される化合物の中で最も好ましい形態は、R〜Rのすべてがイソプロピル基である化合物である。該化合物は、製剤のpHに依ることなく薬剤活性が安定であるという点で好ましい。
【0019】
一般式(1)で表されるビフェノール誘導体は、遊離の形又は薬学的に許容される塩とすることができる。薬学的に許容される塩としては、具体的には、好適な酸付加塩として、フッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩等のハロゲン化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、燐酸塩、過酸化水素酸塩、炭酸塩等のような製薬学的に許容できる無機酸との塩、また、酢酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、ヒドロキシ酢酸塩、乳酸塩、酪酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、安息香酸塩、マレイン酸塩、プロピオン酸塩、蟻酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩、ステアリン酸塩、ニコチン酸塩等のような製薬学的に許容できる有機カルボン酸との塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、1−カンファースルホン酸塩等のアルキルスルホン酸またはアリールスルホン酸との塩、さらには、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩等の酸性アミノ酸との塩等が挙げられ、また、好適なアルカリ付加塩として、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩等の無機アルカリ塩、またはエタノールアミン塩、N,N-ジアルキルエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、モルホリン塩、チオモルホリン塩、ピペリジン塩、ピペラジン塩等の有機塩基との塩等が挙げられる。
【0020】
一般式(1)で表されるビフェノール誘導体またはその塩は、製造条件により任意の結晶形として存在することができ、また、任意の水和物または溶媒和物として存在することもできる。これらの結晶形、水和物および溶媒和物並びにそれらの混合物も本発明の範囲に包含される。
【0021】
本発明のビフェノール誘導体は、特に限定されないが、以下の製造方法により製造可能である。
【0022】
まず、下記式(2)および下記式(3)で示されるフェノール誘導体;
【0023】
【化3】

【0024】
【化4】

【0025】
上記式(2)、(3)中のR〜Rは、上記式(1)中のR〜Rと同様の定義である;を準備する。次に、式(2)および式(3)で示されるフェノール誘導体合計1モル(好ましくは、式(2)で示されるフェノール誘導体と式(3)で示されるフェノール誘導体とは等モル)をジクロロメタン等の溶媒中、CuCl(OH)・テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)等のアミン触媒0.01〜0.1モル存在下で、4〜20℃で通常18〜36時間反応させた後、通常の精製処理を行うことによって、式(1)で表される本発明のビフェノール誘導体を得ることができる。
【0026】
上記の方法以外にも、上記式(2)および式(3)で示されるフェノール誘導体を酸化触媒と酸化剤とを用いて酸化縮合した後、還元反応を行う方法(例えば、特開2002−30014号公報)などを用いて、本発明のビフェノール誘導体を製造することができる。
【0027】
本発明の第二は、第一のビフェノール誘導体を有効成分とした医薬組成物に関する。
【0028】
本発明の医薬剤組成物は、ビフェノール誘導体、その薬学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物を単独で含むものであってもよいし、2種以上を併用して含むものであってもよい。また、製薬上許容される担体と配合して、または製薬上許容される溶剤に溶解もしくは懸濁した組成物として、経口的または非経口的に患者に投与できる。また、製剤としては、錠剤、散剤(粉末)、丸剤、および顆粒剤等の固型製剤や、シロップ剤、注射剤、点眼剤等の液剤、眼軟膏剤、外皮用剤等の軟膏剤や貼付剤が挙げられる。
【0029】
本発明の医薬組成物を固型製剤とする場合には、ビフェノール誘導体を適当な添加剤、例えば、乳糖、ショ糖、マンニット、トウモロコシデンプン、合成もしくは天然ガム、結晶セルロース等の賦形剤、デンプン、セルロース誘導体、アラビアゴム、ゼラチン、ポリビニルピロリドン等の結合剤、カルボシキメチルセルーロースカルシウム、カルボシキメチルセルーロースナトリウム、デンプン、コーンスターチ、アルギン酸ナトリウム等の崩壊剤、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム等の滑沢剤、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸ナトリウム等の充填剤または希釈剤等と適宜混合して、錠剤、散剤(粉末)、丸剤、および顆粒剤等の固型製剤にすることができる。また、硬質または軟質のゼラチンカプセル等を用いてカプセル剤としてもよい。これらの固型製剤には、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、セルロースアセテートフタレート、メタアクリレートコポリマー等の被覆用基剤を用いて腸溶性被覆を施してもよい。
【0030】
また、本発明の医薬組成物を液剤とする場合には、精製水、生理食塩水、またはオリーブオイル等の油剤等の一般的に用いられる溶解剤にビフェノール誘導体を溶解/懸濁して、必要に応じて、この溶液に浸潤剤、乳化剤、分散助剤、界面活性剤、pH調製剤、等張化剤、甘味料、フレーバー、芳香物質等を適宜添加することにより、シロップ剤、注射剤、点眼剤等の液状製剤とすることもできる。
【0031】
さらに軟膏剤として使用する場合には、乳化剤や油剤(白色ワセリン、流動パラフィン)等を適宜添加することができる。
【0032】
本発明の化合物は、製剤の広いpHで安定であり、pH3〜10の範囲で製剤化が可能であるが、pH6〜8であることが好ましい。
【0033】
上述したうち、好ましい投与形態や製剤等は、担当の医師によって選択される。
【0034】
本発明の医薬組成物に含まれる、ビフェノール誘導体の濃度は、投与形態、疾病の種類や重篤度や目的とする投与量等によって様々であるが、一般的には、原料の全質量に対して0.1〜100質量%、好ましくは1〜90質量%である。特に、本発明の製剤が経口投与される場合には、原料の全質量に対して1〜100質量%、好ましくは5〜90質量%であり、非経口投与される場合には、原料の全体積に対して0.1〜90体積%、好ましくは1〜80体積%であることが好ましい。
【0035】
本発明の医薬組成物は、有効成分であるビフェノール誘導体が抗菌作用や抗酸化作用を有するため、ヒトを含む哺乳類の感染症や活性酸素に関する疾患(炎症、老化など)の治療または予防や消毒・殺菌の用途で用いることができる。
【0036】
本発明の医薬組成物の投与量は、患者の年齢、体重及び症状、目的とする投与形態や方法、治療効果、および処置期間等によって異なり、正確な量は医師により決定されるものであるが、本剤が経口投与される場合には、ビフェノール誘導体の投与量換算で、通常、0.01〜200mg/kg体重/日の投与量の範囲であり、1日1〜3回に分けて投与される。この際、1日当たりの経口投与量が多い場合には、1回に複数個の錠剤等の製剤を投与してもよい。また、本発明の医薬組成物を非経口投与する場合には、ビフェノール誘導体の投与量換算で、通常、0.01〜200mg/kg体重/日の投与量になるように1日1〜3回に分けて投与される。
【0037】
本発明の第三は、第一のビフェノール誘導体を有効成分とした抗菌剤に関する。本発明の抗菌剤は、ヒトを含む哺乳類への使用に適した抗菌剤として有用であり、加工食品製造業、外食産業、医療産業、医療福祉産業、家庭内において、殺菌、消毒、除菌の用途で用いられる。
【0038】
本発明の抗菌剤に含まれる、ビフェノール誘導体の濃度は、目的によって適宜設定すればよいが、一般的には、原料の全質量に対して0.1〜100質量%、好ましくは1〜90質量%である。
【0039】
本発明の第四は、第一のビフェノール誘導体を有効成分とした抗酸化剤に関する。本発明の抗酸化剤は、ヒトを含む哺乳類への使用に適した抗酸化剤として有用であり、上記医薬品用途の他、抗酸化作用を有する健康食品または食品自体の酸化を防止できる食品等の種々の食品、あるいは活性酸素の影響を抑制できる化粧品等の用途に使用することができる。
【0040】
本発明の抗酸化剤に含まれる、ビフェノール誘導体の濃度は、目的によって適宜設定すればよいが、一般的には、原料の全質量に対して0.1〜100質量%、好ましくは1〜90質量%である。
【実施例】
【0041】
以下、実施例を用いて、より具体的に本発明を説明する。なお、本発明が下記実施例に
限定されることはない。
【0042】
(実施例1)
(4,4’,6,6’−テトライソプロピル−2,2’−ビフェノールの合成)
2,4−ジイソプロピルフェノール1gをジクロロメタン200mlに溶かし、アミン触媒であるCuCl(OH)TMEDA50mgを加え、氷中で24時間撹拌した。反応後、濃縮し、酢酸エチルと水で分配した。酢酸エチル層を濃縮し、薄層クロマトグラフィー(TLC)(展開溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=20:1)を行った。展開後、最初の黄色いバンドの直下のUV吸収のあるバンドを掻きとり、酢酸エチルで抽出し、ろ過後濃縮した。次いで、ヘキサンで再結晶を行い、薄黄色の結晶200mgを得た。H−NMR、C13−NMR、MSにより4,4’,6,6’−テトライソプロピル−2,2’−ビフェノールであることを確認した。
【0043】
−NMR(CDCl);1.25(d,12H,J=6.7,−CH−5,5’),1.32(d,12H,J=6.7,−CH−3,3’),2.83(dd,2H,J=6.7,−CH−5,5’),3,32(dd,2H,J=6.7,−CH−3,3’),5.10(s,2H,Ar−OH−2,2’),6.91(s,2H,Ar−H−6,6’),7.04(s,2H,Ar−H−4,4’).Mass spectrum,Mbase peak m/e=354,calcd.354。
【0044】
(試験例1)
(TBA法を用いた抗酸化活性の測定)
実施例1の4,4’,6,6’−テトライソプロピル−2,2’−ビフェノール、対照としてα−トコフェロール、オイゲノール(2−メトキシ−4−アリルフェノール)、ジオイゲノール、2,4−ジイソプロピルフェノールを用いて抗酸化活性を測定した。
【0045】
EggPC(phosphatidyl choline)200μlを蓋付試験管にとり、クロロホルムに溶解した試料またはα−トコフェロール溶液を試験管に加え、窒素ガスを吹き付けクロロホルムを溜去した。そこに0.2mMアスコルビン酸100μlと0.2mM硫化鉄100μlとを加え、PCをよく溶かした後、37℃で30分間放置した。次に5mM EDTA 500μl、0.7% TBA 1ml、および1%リン酸緩衝液3mlを加えて30秒間撹拌した後、沸騰水中で45分間加熱発色させた。氷冷後、赤色物質をn−ブタノール4mlに転溶し、遠心分離(3000rpm,10分間,4℃)により水層とブタノール層とに分け、上清について、ブタノールをコントロールとして波長535nmで吸光度の測定を行った。その結果を図1に示した。4,4’,6,6’−テトライソプロピル−2,2’−ビフェノールはオイゲノール、ジオイゲノール、2,4−ジイソプロピルフェノールより抗酸化活性が高く、α−トコフェロールに匹敵する抗酸化活性であった。
【0046】
(試験例2)
(抗菌活性の測定)
実施例1で得られた4,4’,6,6’−テトライソプロピル−2,2’−ビフェノール、対照として、バンコマイシン、4,4’,6,6’−テトライソプロピル−2,2’−ビフェノールと構造類似体である2,4−ジイソプロピルフェノールおよびオイゲノールを用いて、微量液体希釈法で抗菌活性を測定した。
【0047】
バンコマイシンは生理食塩水に、その他の試料はメタノールに溶解し、ブレインハートインフュージョン培地(ディフコ社製)で希釈濃度を1μg/mLを中心とした2倍希釈系列を作製した。メタノールの最終濃度は5%とした。接種菌量は約10cfu/ウェルとし、好気性菌は37℃、24時間、嫌気性菌は嫌気チャンバー内で37℃、48時間培養し判定した。結果を表1に示した。
【0048】
【表1】

【0049】
実施例1の4,4’,6,6’−テトライソプロピル−2,2’−ビフェノールは、グラム陽性菌(Staphylococcus aureus IFO 13276、Enterococcus faecium JCM 5804、Clostridium difficile JCM 1296、Clostridium perfringens JCM 3816)に対して、2,4−ジイソプロピルフェノール、口腔内殺菌薬として使用されているオイゲノールに比べ強い抗菌活性を示した。また、実施例1の4,4’,6,6’−テトライソプロピル−2,2’−ビフェノールは、バンコマイシン耐性腸球菌であるVanA、VanBおよびVanCのすべてに対して強い抗菌活性を示した。
【0050】
(試験例3)
(pH安定性試験)
VREに対して抗菌活性を有する既知類似化合物であるジプロポフォール(2,2’,6,6’−テトライソプロピル−4,4’−ビフェノール)と実施例1で得られた本発明の化合物のpH安定性を比較した。ジプロポフォールは、Biol.Pharm.Bull.28(6)1120−1122に記載の方法で製造した。本化合物またはジプロポフォールのメタノール溶液を作製し、pHを3、7、10に調整後、色調を観察した。さらに、4時間放置した後、TLCでの展開(展開溶媒 ヘキサン:酢酸エチル=5:1)およびUV吸収スペクトルの測定を行った。表2に色調変化の結果を、図2にTLCでの結果を、図3にUV吸収スペクトルでの測定結果を示した。
【0051】
【表2】

【0052】
ジプロポフォールはアルカリ溶液中ですぐに色調に変化が認められ(表2)、TLCで上方に新たなスポットが確認された(図2)。一方、2,2’,6,6’−テトライソプロピル−4,4’−ビフェノールは変化が認められなかった。また、UV吸収スペクトルにおいて、ジプロポフォールはpH10で明らかな吸収シフトが認められたが、2,2’,6,6’−テトライソプロピル−4,4’−ビフェノールでは大きな吸収シフトは認められなかった(図3)。以上の結果から、2,2’,6,6’−テトライソプロピル−4,4’−ビフェノールはジプロポフォールに比べpH安定性が高いことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】試験例1の抗酸化活性の結果を示す図である。
【図2】試験例3のTLCでの測定結果を示す図である。
【図3】試験例3のUV吸収スペクトでの測定結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1);
【化1】

式中、R〜Rは、各々独立して、ハロゲン原子で置換された、または非置換の炭素数1〜4の炭化水素基を表す;
で表されるビフェノール誘導体、その薬学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物。
【請求項2】
前記RおよびRは、各々独立して、エチル基、イソプロピル基、またはハロゲン原子で置換されたメチル基である請求項1に記載のビフェノール誘導体、その薬学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物。
【請求項3】
前記RおよびRは、各々独立して、エチル基、イソプロピル基、またはハロゲン原子で置換されたメチル基である請求項1または2に記載のビフェノール誘導体、その薬学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物。
【請求項4】
前記R〜Rが、イソプロピル基である、請求項1に記載のビフェノール誘導体、その薬学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のビフェノール誘導体、その薬学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物を有効成分として含む医薬組成物。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のビフェノール誘導体、その薬学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物を有効成分として含む抗菌剤。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のビフェノール誘導体、その薬学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物を有効成分として含む抗酸化剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−143793(P2008−143793A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−329584(P2006−329584)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(000114282)ミヤリサン製薬株式会社 (8)
【Fターム(参考)】