説明

新規ポリアミック酸、新規ポリイミド及び新規ジアミン化合物

【課題】溶液調製時の粘度が低く、ハンドリング性に優れる新規ポリアミック酸、製膜時のクラックが少なく、耐熱性の高い新規ポリイミド、及び該ポリアミック酸及び該ポリイミドを製造する際の原料モノマーとして有用な新規ジアミン化合物を提供すること。
【解決手段】ポリアミック酸及びポリイミドを製造する際の原料モノマーとして下記一般式(I)で表されるジアミン化合物を用いる。


(式中、X、Y及びZは、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基等を表し、kは0〜4の数を表し、pは0〜8の数を表し、rは0〜4の数を表し、xは0〜4の数を表し、yは0〜4の数を表し、xとyの数の合計は2〜4である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドリング性に優れる新規ポリアミック酸、耐熱性と製膜性に優れる新規ポリイミド、及び該ポリアミック酸と該ポリイミドの原料となる新規ジアミン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリイミド系材料は、耐熱性、透明性、物理的強度、絶縁性、耐溶剤性、電気絶縁性に優れていることから、接着剤、保護材料、シート材料、封止材料、電子回路の絶縁材料、層配線基板の層間絶縁材料(層間絶縁膜)、半導体素子の表層の保護膜、カラーフィルター等の電子材料向けに使用されている。
【0003】
上記の条件を満たすような耐熱性が良好なポリイミドの前駆体となるジアミン化合物としては、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン及びその骨格に置換基を導入した誘導体の検討が数多く行われており、例えば、特許文献1〜3が開示されている。
【0004】
通常、ポリイミドは溶剤に溶解させ、基材に直接塗布し保護膜を形成させて使用するため、溶剤溶解時の粘度が低いことが求められる。しかし、特許文献1〜3に記載されているようなフルオレン骨格を有するジアミン化合物から得られるポリイミドは、樹脂組成物において、ポリアミック酸溶液調製時に粘度が高く、ハンドリング性が悪いという問題があった。また、フルオレン骨格を有するポリイミドは製法によってはクラックが発生し易いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−31341号号公報
【特許文献2】特表2004−500463号公報
【特許文献3】特開2008−81418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、溶液調製時の粘度が低く、ハンドリング性に優れる新規ポリアミック酸、製膜時のクラックが少なく、耐熱性の高い新規ポリイミド、及び該ポリアミック酸及び該ポリイミドを製造する際の原料モノマーとして有用な新規ジアミン化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、特定のジアミン化合物と特定のテトラカルボン酸類を重縮合してなるポリアミック酸及びポリイミドが上記目的を達成し得ることを知見した。
【0008】
即ち、本発明は、上記知見に基づきなされたもので、下記一般式(I)で表されるジアミン化合物と炭素原子数6〜24のテトラカルボン酸又はテトラカルボン酸二無水物を重縮合してなる新規ポリアミック酸を提供するものである。
【化1】

(式中、X、Y及びZは、それぞれ独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリール基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリールオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリールチオ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数8〜20のアリールアルケニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数2〜20の複素環基又はハロゲン原子を表し、
該アルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン基並びに該アリール基中の直接結合は、不飽和結合、−O−又は−S−で中断されていてもよく、Xは、隣接するX同士で環を形成していてもよく、
kは0〜4の数を表し、pは0〜8の数を表し、rは0〜4の数を表し、xは0〜4の数を表し、yは0〜4の数を表し、xとyの数の合計は2〜4であり、光学異性体が存在する場合、どの異性体でもよい。)
【0009】
また、本発明は、下記一般式(IV)で表されるユニットを有する新規ポリイミドを提供するものである。
【化2】

(式中、X、Y、Z、k、p、r、x、及びyは上記一般式(I)と同じであり、Aは炭素原子数2〜20のテトラカルボン酸残基である。)
【0010】
また、本発明は、上記ポリイミドを使用して形成されるフィルム又はシートを提供するものである。
【0011】
また、本発明は、下記一般式(I')で表わされる新規ジアミン化合物を提供するものである。
【化3】

(式中、X、Y及びZは、それぞれ独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリール基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリールオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリールチオ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数8〜20のアリールアルケニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数2〜20の複素環基又はハロゲン原子を表し、
該アルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン基並びに該アリール基中の直接結合は、不飽和結合、−O−又は−S−で中断されていてもよく、Xは、隣接するX同士で環を形成していてもよく、
kは0〜4の数を表し、pは0〜8の数を表し、rは1〜4の数を表し、xは0〜4の数を表し、yは0〜4の数を表し、xとyの数の合計は2〜4であり、光学異性体が存在する場合、どの異性体でもよい。)
【発明の効果】
【0012】
本発明の新規ジアミン化合物は、低粘度且つハンドリング性に優れる新規ポリアミック酸、及び高耐熱性且つ製膜性に優れる新規ポリイミドを与える。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の新規ポリアミック酸、新規ポリイミド、並びに該ポリアミック酸及びポリイミドの原料モノマーとして好適な新規ジアミン化合物について好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
先ず、本発明の新規ポリアミック酸及び新規ポリイミドを製造するための原料である上記一般式(I)で表わされるジアミン化合物について説明する。
【0014】
上記一般式(I)におけるX、Y及びZで表されるハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、t−アミル、ヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、t−ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、t−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、モノフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、テトラフルオロエチル、トリフルオロエチル、ジフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、ヘキサフルオロプロピル、ペンタフルオロプロピル、テトラフルオロプロピル、トリフルオロプロピル、パーフルオロブチル、トリクロロメチル、ジクロロメチル、モノクロロメチル、トリクロロエチル、ジクロロエチル、テトラクロロプロピル、トリクロロプロピル、トリブロモメチル、ジブロモメチル、モノブロモメチル、トリブロモエチル、ジブロモエチル、トリブロモプロピル、ジヨードメチル、モノヨードメチル、メトキシ、メトキシメチル、メトキシエチル、メトキシエトキシ、メトキシエトキシエトキシ、メチルチオ、エトキシ、エトキシメチル、エトキシエチル、エチルチオ、ビニルオキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、ブチルチオ、イソブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシ、ペンチルチオ、イソペンチルオキシ、t−ペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘキシルチオ、シクロヘキシルオキシ、イソヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル等の直鎖、分岐及び環状のアルキル基が挙げられる。
【0015】
上記一般式(I)におけるX、Y及びZで表されるハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリール基としては、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、1−アントリル、1−フェナントリル、o−トリル、m−トリル、p−トリル、3−フルオレニル、9−フルオレニル、1−テトラヒドロナフチル、2−テトラヒドロナフチル、1−アセナフテニル、1−インダニル、2−インダニル、4−ビニルフェニル、3−イソプロピルフェニル、4−イソプロピルフェニル、4−ブチルフェニル、4−イソブチルフェニル、4−t−ブチルフェニル、4−ヘキシルフェニル、4−シクロヘキシルフェニル、4−オクチルフェニル、4−(2−エチルヘキシル)フェニル、2,3−ジメチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,5−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、3,4−ジメチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、2,4−ジ−t−ブチルフェニル、2,5−ジ−t−ブチルフェニル、2,6−ジ−t−ブチルフェニル、2,4−ジ−t−ペンチルフェニル、2,5−ジ−t−アミルフェニル、シクロヘキシルフェニル、ビフェニル、2,4,5−トリメチルフェニル、4−クロロフェニル、3,4−ジクロロフェニル、4−トリクロロフェニル、4−トリフルオロフェニル、パーフルオロフェニル等が挙げられる。
【0016】
上記一般式(I)におけるX、Y及びZで表されるハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、3−メチルフェノキシ、4−メチルフェノキシ、2,3−ジメチルフェノキシ、2,4−ジメチルフェノキシ、2,5−ジメチルフェノキシ、2,6−ジメチルフェノキシ、3,4−ジメチルフェノキシ、3,5−ジメチルフェノキシ、2,3,4−トリメチルフェノキシ、2,3,5−トリメチルフェノキシ、2,3,6−トリメチルフェノキシ、2,4,5−トリメチルフェノキシ、2,4,6−トリメチルフェノキシ、3,4,5−トリメチルフェノキシ、2,3,4,5−テトラメチルフェノキシ、2,3,4,6−テトラメチルフェノキシ、2,3,5,6−テトラメチルフェノキシ、ペンタメチルフェノキシ、エチルフェノキシ、n−プロピルフェノキシ、イソプロピルフェノキシ、n−ブチルフェノキシ、sec−ブチルフェノキシ、tert−ブチルフェノキシ、n−ヘキシルフェノキシ、n−オクチルフェノキシ、n−デシルフェノキシ、n−テトラデシルフェノキシ、1−ナフトキシ、2−ナフトキシ、1−アントリルオキシ、1−フェナントリルオキシ、o−トリルオキシ、m−トリルオキシ、p−トリルオキシ、9−フルオレニルオキシ、1−テトラヒドロナフトキシ、2−テトラヒドロナフトキシ、1−アセナフテニルオキシ、1−インダニルオキシ、2−インダニルオキシ等が挙げられる。
【0017】
上記一般式(I)におけるX、Y及びZで表されるハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ、2−メチルフェニルチオ、3−メチルフェニルチオ、4−メチルフェニルチオ、2,3−ジメチルフェニルチオ、2,4−ジメチルフェニルチオ、2,5−ジメチルフェニルチオ、2,6−ジメチルフェニルチオ、3,4−ジメチルフェニルチオ、3,5−ジメチルフェニルチオ、2,3,4−トリメチルフェニルチオ、2,3,5−トリメチルフェニルチオ、2,3,6−トリメチルフェニルチオ、2,4,5−トリメチルフェニルチオ、2,4,6−トリメチルフェニルチオ、3,4,5−トリメチルフェニルチオ、2,3,4,5−テトラメチルフェニルチオ、2,3,4,6−テトラメチルフェニルチオ、2,3,5,6−テトラメチルフェニルチオ、ペンタメチルフェニルチオ、エチルフェニルチオ、n−プロピルフェニルチオ、イソプロピルフェニルチオ、n−ブチルフェニルチオ、sec−ブチルフェニルチオ、tert−ブチルフェニルチオ、n−ヘキシルフェニルチオ、n−オクチルフェニルチオ、n−デシルフェニルチオ、n−テトラデシルフェニルチオ、1−ナフチルチオ、2−ナフチルチオ、1−アントリルチオ、1−フェナントリルチオ、o−トリルチオ、m−トリルチオ、p−トリルチオ、9−フルオレニルチオ、1−テトラヒドロナフチルチオ、2−テトラヒドロナフチルチオ、1−アセナフテニルチオ、1−インダニルチオ、2−インダニルチオ等が挙げられる。
【0018】
上記一般式(I)におけるX、Y及びZで表されるハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数8〜20のアリールアルケニル基としては、例えば、スチリル、4−フルオロスチリル等が挙げられる。
【0019】
上記一般式(I)におけるX、Y及びZで表されるハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数7〜20のアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル、フェネチル、2−フェニルプロピル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、4−クロロフェニルメチル、ベンジルオキシ、1−ナフチルメトキシ、2−ナフチルメトキシ、1−アントリルメトキシ等が挙げられる。
【0020】
上記一般式(I)におけるX、Y及びZで表されるハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数2〜20の複素環基としては、例えば、ピロリル、ピリジル、ピリミジル、ピリダジル、ピペラジル、ピペリジル、ピラニル、ピラゾリル、トリアジル、ピロリジル、キノリル、イソキノリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、トリアゾリル、フリル、フラニル、ベンゾフラニル、チエニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、チアジアゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、オキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、インドリル、ユロリジル、モルフォリニル、チオモルフォリニル、2−ピロリジノン−1−イル、2−ピペリドン−1−イル、2,4−ジオキシイミダゾリジン−3−イル、2,4−ジオキシオキサゾリジン−3−イル等が挙げられる。
【0021】
上記一般式(I)における隣接するX同士で形成される環構造としては、例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロペンテン環、ベンゼン環、ピペリジン環、モルホリン環、ラクトン環、ラクタム環等の5〜7員環及びナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、アセナフテン環、インダン環、テトラリン環等の縮合環が挙げられる。
【0022】
上記一般式(I)におけるX、Y及びZで表されるハロゲン原子、並びに上記一般式(I)におけるX、Y及びZで表されるアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルケニル基及び複素環基を置換してもよいハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
尚、上記一般式(I)におけるX、Y及びZで表されるアルキル基等の基を置換してもよいハロゲン原子の置換数及び置換位置は任意である。
【0023】
上記一般(I)におけるアルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン基並びにアリール基中の直接結合は、不飽和結合、−O−又は−S−で中断されていてもよく、不飽和結合、−O−又は−S−の中断位置は任意であり、−O−又は−S−が各環と直接結合するものも含む。
【0024】
上記一般式(I)で表されるジアミン化合物において、光学異性体が存在する場合があるが、どの異性体であってもよく、以下の本文中に示す化合物は、特定の光学異性体に制限するものではない。
【0025】
上記一般式(I)で表されるジアミン化合物のうち、r=0の化合物としては、例えば、下記の化合物No.1、No.2、No.5〜No.28が挙げられ、r=1の化合物としては、No.3、No.4、No.29〜No.47が挙げられるが、これらの化合物に制限されない。
【0026】
【化4】

【0027】
【化5】

【0028】
【化6】

【0029】
【化7】

【0030】
【化8】

【0031】
【化9】

【0032】
【化10】

【0033】
【化11】

【0034】
これらのジアミン化合物の中でも、上記一般式(I)における各基が以下の条件を満たす化合物が、原料が入手容易であり生産性が良く、保存安定性に優れるため好ましい。
xが2又は3、好ましくは2である化合物;yが0である化合物;kが0〜2、好ましくは0又は1、より好ましくは0である化合物、kが1以上の場合、Xが炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基又はX同士で形成した環が芳香環である化合物;pが0〜2、好ましくは1又は2である化合物、pが1以上の場合、Yが炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数6〜20のアリール基、好ましくは炭素原子数1〜10のアルキル基又はフェニル基、より好ましくはメチル基又はフェニル基である化合物;rが0〜2、好ましくは0又は1、より好ましくは1である化合物、rが1以上の場合、Zが炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数6〜20のアリール基、好ましくは炭素原子数1〜10のアルキル基、より好ましくはメチル基である化合物。
【0035】
更に、上述のジアミン化合物の中でも、下記一般式(II)で表わされる化合物がより一層好ましい。該一般式(II)におけるZ及びrの好ましい範囲は、上記一般式(I)と同様である。
また、下記一般式(II)におけるY1及びY2の組み合わせとしては、(1)Y1及びY2が水素原子である;(2)Y1が水素原子であり、Y2が炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数6〜20のアリール基である;(3)Y1とY2がそれぞれ独立して炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数6〜20のアリール基である;が挙げられるが、Y1及びY2の組み合わせとしては、上記(2)又は(3)が好ましい。Y1及びY2の組み合わせが上記(2)又は(3)の場合、Y1及びY2が炭素原子数1〜10のアルキル基又はフェニル基であることが好ましく、メチル基又はフェニル基であることがより好ましい。尚、Y1及びY2の組み合わせが上記(3)の場合、Y1及びY2は同一でも異なる置換基でもよい。
【0036】
【化12】

(式中、Z及びrは上記一般式(I)と同じであり、Y1及びY2はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数6〜20のアリール基である。)
【0037】
上記一般式(I)で表わされるジアミン化合物の製造方法は特に制限されるものではないが、例えば、J.Org.Chem.1981,46,2974に記載されている方法に準拠して製造した3,3−ジメチル−1−インダノンと市販されているアニリンを反応させる方法が挙げられる。
【0038】
本発明のポリアミック酸は、上述した上記一般式(I)で表わされるジアミン化合物と、炭素原子数6〜24のテトラカルボン酸又はテトラカルボン酸二無水物の重縮合反応により得られる化合物であり、下記一般式(III)で表わされるユニットを有するポリアミック酸である。尚、本明細書では、テトラカルボン酸及びテトラカルボン酸二無水物をテトラカルボン酸類と表記する。
【0039】
【化13】

(式中、X、Y、Z、k、p、r、x及びyは上記一般式(I)と同じであり、Aは炭素原子数2〜20のテトラカルボン酸残基である。)
【0040】
上記炭素原子数6〜24のテトラカルボン酸類(上記一般式(III)におけるAで表わされる炭素原子数2〜20のカルボン酸残基におけるカルボン酸)(以下、テトラカルボン酸類ともいう)としては、例えば、ピロメリット酸、ピロメリット酸二無水物、2,2’,3,3’‐ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’‐ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’‐ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’‐ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6‐ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3 ,5,6‐ピリジンテトラカルボン酸二無水物、1 ,4 ,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4 ,9,10‐ペリレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’‐スルホニルジフタル酸二無水物、m‐ターフェニル‐3,3,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、エチレンテトラカルボン酸、4,4'-オキシジフタル酸二無水物、ビス(2,3‐ジカルボキシフェニル)メタン酸二無水物、1,1,1,3,3,3 -ヘキサフルオロ-2,2‐ビス(2,3‐又は3,4‐ジカルボキシフェニル) プロパン二無水物、2,2 -ビス( 2,3‐又は3,4‐ジカルボキシフェニル) プロパン二無水物、2,2 -ビス[ 4‐(2,3‐又は3,4‐ジカルボキシフェノキシ) フェニル] プロパン二無水物、1,1,1,3,3,3‐ヘキサフルオロ-2,2‐ビス[ 4‐( 2,3 ‐又は3,4‐ジカルボキシフェノキシ) フェニル] プロパン二無水物、1,3 -ビス(3,4 -ジカルボキシフェニル)‐1,1,3,3‐テトラメチルジシロキサン二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ‐[2,2,2]‐オクト‐7‐エン‐2,3,5,6‐テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0041】
上記テトラカルボン酸類としては、原料が入手容易であり、ポリアミック酸とした時の溶解性が高く、生産性が良いため、分子内に環構造を有するテトラカルボン酸類が好ましく、分子内に芳香族環を有するテトラカルボン酸類がより好ましく、ピロメリット酸、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸又は3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が更に好ましく、ピロメリット酸又はピロメリット酸二無水物が最も好ましい。つまり、上記一般式(III)におけるAは下記式(V)又は(VI)が好ましく、下記式(V)がより好ましい。
【化14】

【化15】

【0042】
上記一般式(III)で表わされるユニットを有するポリアミック酸としては、原料が入手容易であり、溶解性が高く、生産性が良く、また保存安定性に優れるため、上記一般式(III)におけるX、Y、Z、k、p、r、x及びyが上記一般式(I)と同様の範囲であるポリアミック酸が好ましく、下記一般式(III−I)で表されるユニットを有するポリアミック酸がより好ましい。尚、下記一般式(III−I)におけるY1及びY2の好ましい組み合わせは、上記一般式(II)と同様である。
【化16】

(式中、Z、r、Y1及びY2は上記一般式(II)と同じであり、Aは上記一般式(III)と同じである。)
【0043】
また、本発明のポリアミック酸は、複数のジアミン化合物を用いることにより製造することができる。例えば、上記一般式(I)で表されるジアミン化合物のうち、2種以上を
併用することができる。また、使用するジアミン化合物が1種であるか2種以上であるかにかかわらず、上記テトラカルボン酸類についても1種又は2種以上用いることができる。
【0044】
本発明のポリアミック酸の平均重合度は特に限定されないが、好ましくは2〜5000の数である。また重量平均分子量は上述した平均重合度の範囲内ならば特に制限されないが、低すぎると耐熱性が不十分となる場合があり、高すぎると溶剤溶解性が悪くなる場合があるため、5000〜1000000が好ましく、10000〜500000がより好ましい。
【0045】
本発明のポリアミック酸を製造する時のジアミン化合物とテトラカルボン酸類の使用量は、特に限定されないが、該ジアミン化合物に対して、該テトラカルボン酸類の使用量が90〜110モル%であることが好ましい。テトラカルボン酸類の使用量が90モル%未満、又は110モル%超の場合は、物理的強度が大幅に低下する場合がある。
【0046】
本発明のポリアミック酸を製造する時の反応温度(重縮合反応の温度)は、使用するジアミン化合物及びテトラカルボン酸類の種類により異なるが、有機溶媒中で15〜40℃で攪拌し、製造することが好ましい。
【0047】
本発明のポリアミック酸を製造する時の上記有機溶媒は特に限定されないが、例えば、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、ジエチルケトン、アセトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;エチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル等のエステル系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のセルソルブ系溶媒;メタノール、エタノール、イソ−又はn−プロパノール、イソ−又はn−ブタノール、アミルアルコール等のアルコール系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等のBTX系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;テレピン油、D−リモネン、ピネン等のテルペン系炭化水素油;ミネラルスピリット、スワゾール#310(コスモ松山石油(株))、ソルベッソ#100(エクソン化学(株))等のパラフィン系溶媒;四塩化炭素、クロロホルム、トリクロロエチレン、塩化メチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素系溶媒;クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒;カルビトール系溶媒、アニリン、トリエチルアミン、ピリジン、酢酸、アセトニトリル、二硫化炭素、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられ、中でも、γ−ブチロラクトン又はN−メチルピロリドンが好ましい。
【0048】
次に、本発明のポリイミドについて説明する。尚、特に説明しない点については、本発明のポリアミック酸における説明が適宜適用される。
本発明のポリイミドは、(A)上述した本発明のポリアミック酸を脱水縮合させることにより、又は(B)上述した上記一般式(I)で表わされるジアミン化合物と上記テトラカルボン酸類とから、本発明のポリアミック酸を単離することなく反応させることにより、好ましくは(A)上述した本発明のポリアミック酸を脱水縮合させることにより製造される化合物であり、下記一般式(IV)で表されるユニットを有するポリイミドである。
【0049】
【化17】

(式中、X、Y、Z、k、p、r、x及びyは上記一般式(I)と同じであり、Aは上記一般式(III)と同じである。)
【0050】
本発明のポリイミドとしては、上記一般式(IV)におけるX、Y、Z、k、p、r、x及びyが上記一般式(I)と同様の範囲であるポリイミドが好ましく、下記一般式(IV−I)で表されるユニットを有するポリイミドがより好ましい。また、Aは上記一般式(III)と同様の範囲が好ましい。
【化18】

(式中、Z、r、Y1及びY2は上記一般式(II)と同じであり、Aは上記一般式(IV)と同じである。)
【0051】
本発明のポリイミドは、本発明のポリアミック酸と同様に、複数のジアミン化合物を用いることにより製造することができる。例えば、上記一般式(I)で表されるジアミン化
合物のうち、2種以上を併用することができる。また、使用するジアミン化合物が1種であるか2種以上であるかにかかわらず、上記テトラカルボン酸類についても1種又は2種以上用いることができる。
【0052】
本発明のポリイミドを製造する時のジアミン化合物とテトラカルボン酸類の使用量は、特に限定されないが、該ジアミン化合物に対して、該テトラカルボン酸類の使用量が90〜110モル%であることが好ましい。テトラカルボン酸類の使用量が90モル%未満、又は110モル%超の場合は、物理的強度が大幅に低下する場合がある。
【0053】
本発明のポリイミドを製造する具体的な方法としては、例えば、上記(A)の方法として、有機溶剤中でテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを反応させ、ポリアミック酸にした後に、脱水剤存在下の有機溶剤中で化学的に脱水閉環させてイミド化する方法等が挙げられ、上記(B)の方法として、有機溶媒中でテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを反応させた後に、反応物を加熱することにより脱水閉環させてイミド化する方法等が挙げられる。
【0054】
本発明のポリイミドを製造する時の上記有機溶媒は特に限定されないが、例えば、上述した本発明のポリアミック酸を製造する時に例示した有機溶媒が挙げられる。
【0055】
本発明のポリイミドを製造する時の反応温度(上記(A)又は(B)の方法において、ポリアミック酸を脱水閉環させるための加熱温度)は、使用するジアミン化合物及びテトラカルボン酸類により異なるが、製造したポリアミック酸を150〜250℃で攪拌し、製造することが好ましい。
【0056】
本発明のポリイミドの平均重合度は特に限定されないが、好ましくは2〜5000の数である。また重量平均分子量は上述した平均重合度の範囲内ならば特に制限されないが、低すぎると耐熱性が不十分となる場合があり、高すぎると溶剤溶解性が悪くなる場合があるため、5000〜1000000が好ましく、10000〜500000がより好ましい。
【0057】
本発明のポリアミック酸及び本発明のポリイミドに使用するジアミン化合物としては、上記一般式(I)で表わされるジアミン化合物以外のアミン化合物を併用してもよく、例えば、特開2010−189578号公報の段落〔0023〕〜〔0026〕や特開2010−235859号公報の段落〔0018〕に記載されている脂肪族ジアミン化合物、芳香族ジアミン化合物及び9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、並びに該9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン骨格に置換基を導入した誘導体を併用しても良い。
上記一般式(I)で表わされるジアミン化合物と、上記一般式(I)で表わされるジアミン化合物以外のアミン化合物を併用する場合、上記一般式(I)で表わされるジアミン化合物の使用量は、上記一般式(I)で表わされるジアミン化合物が少量添加でもポリアミック酸の低粘度化に効果が高いため使用量は特に限定されないが、使用量が少なすぎるとポリアミック酸の粘度が高くなる場合やポリイミドの強度が弱くなる場合があるため、上記一般式(I)で表わされるジアミン化合物の使用量は50質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が更に好ましく、100質量%が最も好ましい。
【0058】
本発明のポリイミドは、耐熱性が高く、透明性が高く、強度が高いため、フィルム成型又はシート成型によく用いられる溶液流延、プレス、射出成型等の各種成型法により製膜することが可能である。このため、本発明のポリイミドは、例えば、層間絶縁材料(層間絶縁膜)、封止材料、カラーフィルター及び電子回路の絶縁材料等のフィルム又はシート等の用途に好ましく使用することが可能であり、これらの中でも、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等の各種ディスプレイの表示材料として使用される光学フィルム又は光学シートとしてより好ましく使用することが出来る。また、フィルム又はシート以外の用途として、繊維強化複合材料、接着剤等に使用することが可能である。
【0059】
次に、本発明の新規ジアミン化合物について説明する。尚、特に説明しない点については、本発明のポリアミック酸及びポリアミドにおける説明が適宜適用される。
本発明の新規ジアミン化合物は、上記一般式(I')で表わされる化合物であり、上述した上記一般式(I)で表わされる化合物のうち、r=1〜4である化合物が該当する。
【0060】
上記一般式(I')で表わされる本発明の新規ジアミン化合物としては、上記一般式(I)で表わされる化合物のうち、r=1の化合物として例示した上記化合物No.3、No.4、No.29〜No.47が挙げられるが、これらの化合物に制限されない。
【0061】
これらのジアミン化合物の中でも、原料が入手容易であり生産性が良く、保存安定性に優れるため、上記一般式(I')におけるX、Y、Z、k、p、x及びyが上記一般式(I)と同様の範囲であるジアミン化合物が好ましい。尚、上記一般式(I')におけるrとしては、1又は2、特に1が好ましい。rが1以上の場合、Zが炭素原子数1〜10のアルキル基又は炭素原子数6〜20のアリール基、好ましくは炭素原子数1〜10のアルキル基、より好ましくはメチル基であることが好ましい。
【実施例】
【0062】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。尚、実施例及び比較例中、「部」とは「質量部」を意味する。実施例1−1〜1−4は、上記一般式(I)で表わされるジアミン化合物の製造例を示した(実施例1−3及び実施例1−4は、新規ジアミン化合物の製造例である。)。実施例2−1〜2−5は、上記一般式(I)で表わされるジアミン化合物を用いた本発明のポリアミック酸の製造例を示した。比較例2−1〜2−3は、比較ポリアミック酸の製造例を示した。実施例3−1〜3−5及び比較例3−1及び3−2は、それぞれ本発明のポリイミドの製造例及び比較ポリイミドの製造例を示した。実施例4−1〜4−5及び比較例4−2は、それぞれ本発明のポリイミドの性能試験及び比較ポリイミドの性能試験を示した。
【0063】
[実施例1−1]1,1−ビス(4−アミノフェニル)−3,3−ジメチルインダン(化合物No.1)の製造:
攪拌機、温度計、窒素導入管及びディーンスターク型共沸蒸留装置を備えた300ml4つ口フラスコに、3,3−ジメチル−1−インダノン10.0g、アニリン塩酸塩16.1g及びアニリン34.9gを仕込み、窒素フロー下、120〜185℃で攪拌し、アニリンを還流させながら、生成する水を系外に排出し、10時間反応させた。反応終了後、25℃まで冷却し、48%水酸化ナトリウム水溶液10.3g、水50gを加えて中和し、酢酸エチル100gを加えた後、この有機層に水層が中性になるまで水100gを使用し、3回水洗を行った。有機層を減圧蒸留にて酢酸エチルと未反応のアニリンを留去したのち、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;酢酸エチル:n−ヘキサン=1:1)にて分離精製を行い、溶媒を減圧留去し、80℃で4時間乾燥したところ、4.02gの赤褐色固体が得られた。各種分析の結果、該固体は目的の化合物No.1であることを確認した(収率20%)。
【0064】
(分析結果)
(1)1H−NMR(DMSO−d6:35℃)のケミカルシフト(ppm)
1.14(s:6H),2.68(s:2H),4.71−4.90(m:4H),6.44(d:4H),6.70(d:4H),6.79(d:1H),7.08−7.28(m:3H)
(2)IRスペクトル(cm-1
3433,3349,3216,3026,2953,2861,1621,1511,1475,1449,1381,1361,1283,1185,1131,1079,1015,828,763
【0065】
[実施例1−2]1,1−ビス(4−アミノフェニル)−3−フェニルインダン(化合物No.2)の製造:
攪拌機、温度計、窒素導入管及びディーンスターク型共沸蒸留装置を備えた300ml4つ口フラスコに3−フェニル−1−インダノン10.0g、35%塩酸10.0g及びアニリン35.8gを仕込み、窒素フロー下、120〜185℃で攪拌し、アニリンを還流させながら生成する水を系外に排出し、10時間反応させた。反応終了後、25℃まで冷却し、48%水酸化ナトリウム水溶液7.9g、水50gを加えて中和し、酢酸エチル100gを加えた後、水層が中性になるまで水100gを使用し、3回水洗を行った。有機相を減圧蒸留にて酢酸エチルと未反応のアニリンを留去したのち、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;酢酸エチル:n−ヘキサン=1:1)にて分離精製を行い、溶媒を減圧留去し、80℃で4時間乾燥したところ、2.60gの赤褐色固体が得られた。各種分析の結果、該固体は目的の化合物No.2であることを確認した(収率14%)。
【0066】
(分析結果)
(1)1H−NMR(DMSO−d6:35℃)のケミカルシフト(ppm)
2.54−2.71(m:1H),2.97−3.14(m:1H),3.85−4.17(m:1H),4.76−5.02(m:4H),6.36−7.40(m:17H)
(2)IRスペクトル(cm-1
3438,3360,3217,3025,2972,2867,1728,1621,1512,1469,1454,1372,1279,1184,1155,1129,1082,1043,827,758,702
【0067】
[実施例1−3]1,1−ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)−3,3−ジメチルインダン(化合物No.3)の製造:
攪拌機、温度計、窒素導入管、ディーンスターク型共沸蒸留装置を備えた300ml4つ口フラスコに3,3−ジメチル−1−インダノン13.1g、o−トルイジン52.7g及び35%塩酸17.0gを仕込み、窒素フロー下、125〜200℃で攪拌し、o−トルイジンを還流させながら生成する水を系外に排出し、15時間反応させた。25℃まで冷却した後、48%水酸化ナトリウム水溶液13.5gと水50gを加え中和し、トルエン100gを加えた後、この有機層に水層が中性になるまで水100gを使用し、3回水洗を行った。有機層を減圧蒸留にてトルエンと未反応のトルイジンを留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;酢酸エチル:n−ヘキサン=1:1)にて分離精製を行ったところ、4.40g の透明褐色固体が得られた。各種分析の結果、該固体は目的の化合物No.3であることを確認した(収率20%)。
【0068】
(分析結果)
(1)1H−NMR(DMSO−d6:35℃)のケミカルシフト(ppm)
1.10(s:6H),1.95(s:6H),2.66(s:2H),4.57(br:4H),6.42−6.48(m:2H),6.52−6.58(m:2H),6.68(s:2H),6.80(d:1H),7.09−7.20(m:3H)
(2)IRスペクトル(cm-1
3446,3365,3281,3015,2952,2893,1622,1504,1475,1449,1406,1380,1361,1286,1154,1079,1079,1031,999,977,890,821,761,741
【0069】
[実施例1−4]1,1−ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)−3−フェニルインダン(化合物No.4)の製造 :
攪拌機、温度計、窒素導入管及びディーンスターク型共沸蒸留装置を備えた300ml4つ口フラスコに3−フェニル−1−インダノン10.0g、o−トルイジン30.9g及び35%塩酸10.0gを仕込み、窒素フロー下、125〜200℃で攪拌し、o−トルイジンを還流させながら15時間反応させた。室温まで冷却した後、48%水酸化ナトリウム水溶液8.0g、水50gを加え中和し、トルエン100gを加えた後、水層が中性になるまで水100gを使用し、3回水洗を行った。この有機層を減圧蒸留にてトルエンと未反応のトルイジンを留去し、シリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒;酢酸エチル:n−ヘキサン=1:1)にて分離精製を行ったところ、2.11gの褐色透明固体が得られた。各種分析の結果、該固体は目的の化合物No.4であることを確認した。(収率11%)
【0070】
(分析結果)
(1)1H−NMR(DMSO−d6:35℃)のケミカルシフト(ppm)
1.85−2.01(m:6H),2.53−2.74(m:1H),2.93−3.14(m:1H),3.79−4.13(m:1H),4.53−4.70(m:4H),6.43−7.37(m:15H)
(2)IRスペクトル(cm-1
3449,3372,3219,3058,3020,2968,1732,1623,1505,1469,1454,1407,1377,1286,1154,1077,1032,994,889,819,756,702
【0071】
[実施例2−1〜2−4及び比較例2−1、2−2]ポリアミック酸溶液A−1〜A−4、並びに比較ポリアミック酸溶液a−1及びa−2の製造と評価:
実施例1−1〜4で得られたジアミン化合物No.1〜4、市販の9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(以下、比較化合物No.1とする)及び市販の4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン(以下、比較化合物No.2とする)について、それぞれγ−ブチロラクトン及びN−メチルピロリジノンに、下記表1記載の量(単位:質量部)で配合し、25℃で2時間攪拌し溶解させた後に、ピロメリット酸無水物(以下PMDAとする)を、下記表1記載の量(単位:質量部)加え、25℃で2時間攪拌し、溶液状のポリアミック酸A−1〜A−4、比較ポリアミック酸a−1及びa−2を製造した。
【0072】
[実施例2−5及び比較例2−3]ポリアミック酸溶液A−5及び比較ポリアミック酸溶液a−3の製造と評価:
ジアミン化合物No.3及び比較化合物No.1について、それぞれγ−ブチロラクトン及びN−メチルピロリジノンに、下記表1記載の配合量(単位:質量部)で調製し、25℃で2時間攪拌し溶解させた後に、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下BPDAとする)を下記表1記載の量(単位:質量部)加え、25℃で6時間攪拌し、溶液状のポリアミック酸の製造を試みたところ、実施例2−5では、BPDAが完全に溶解しポリアミック酸A−5が得られたが、比較例2−3では著しく溶液が増粘したためBPDAが完全に溶解せず、ポリアミック酸が得られなかった。
【0073】
・粘度
実施例2−1〜2−5並びに比較例2−1及び2−2で得られた溶液状のポリアミック酸について東機産業株式会社製TV−20型粘度計にて25℃における粘度(mPa・s)を測定した。それぞれの結果を表1に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
上記表1の結果から、テトラカルボン酸類として、PMDAを使用し得られる本発明のポリアミック酸A−1〜A−4と比較ポリアミック酸a−1とを比較すると、本発明のポリアミック酸は、比較ポリアミック酸に比して、粘度が低くハンドリング性に優れることが分かる。特に上記一般式(III)のrが1である本発明のポリアミック酸はrが0である本発明のポリアミック酸よりも低粘度であった。
同様に、テトラカルボン酸類として、BPDAを使用した場合について対比すると、比較化合物を用いた溶液a−3では粘度が高すぎたため、ポリアミック酸を得られなかったのに対して、本発明のジアミン化合物を用いた溶液(A−5)では、所望のポリアミック酸A−5が得られた。
【0076】
[実施例3−1〜3−4及び比較例3−1、3−2]ポリイミドフィルムB−1〜B−5並びに比較ポリイミドフィルムb−1及びb−2の作製及び評価:
実施例2−1〜2−5並びに比較例2−1及び2−2で得られたポリアミック酸溶液(A−1〜A−5、a−1及びa−2)を10cm×10cmのガラス板にアプリケーターを用いて塗布し、100℃で1時間、150℃で1時間、更に300℃で1時間焼成した後、ガラスから剥離させてポリイミドフィルムB−1〜B−5、並びに比較ポリイミドフィルムb−1及びb−2を製造した。フィルムが得られたものについては、ミツトヨ株式会社製リニヤゲージLGF−0110Lを使用して膜厚を測定し、膜厚が58〜62μmの均一なフィルムであることを確認した。
【0077】
得られたポリイミドフィルムについての製膜性と耐熱性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0078】
・製膜性
各々のポリイミドの製膜性について製造したポリイミドを目視で確認し、下記の<評価基準>で評価した。
<評価基準>
○ :濁りや発泡がなく均一なフィルムが得られたもの
△ :濁りや発泡があるフィルムが得られたもの
× :フィルムが製膜できなかったもの
【0079】
・耐熱性
SIIナノテクノロジー社製「TG/DTA6200」を用い、窒素100ml/分フロー下、昇温速度10℃/分にて加熱重量減少測定を行い、5.0%重量減少温度(Td5)を各ポリイミドフィルムについて求めた。
【0080】
【表2】

【0081】
実施例4−1〜4−5では、良好なフィルム(ポリイミドフィルムB−1〜B−5)が得られたが、比較例4−1では、150℃で1時間の加熱後に濁りとひび割れが生じて破損したため、ポリイミドフィルム(比較ポリイミドフィルムb−1)を得ることができなかった。比較例4−2では、ポリイミドフィルムの製膜(比較ポリイミドフィルムb−2)はできたが、所々に発泡が確認され良好なフィルムを得ることができなかった。
また、実施例4−1〜4−5で得られたポリイミドフィルムB−1〜B−5は、Td5が高く、耐熱性に優れていた一方、比較ポリイミドフィルムb−2は、Td5が劣っているため、強度が必要とされる用途では問題が懸念される場合がある。
【0082】
以上より本発明のポリイミドは、製膜性、耐熱性に優れ、その前駆体となるポリアミック酸はハンドリング性に優れ、その原料となるジアミン化合物は産業上有用であることは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるジアミン化合物と炭素原子数6〜24のテトラカルボン酸又はテトラカルボン酸二無水物を重縮合してなるポリアミック酸。
【化1】

(式中、X、Y及びZは、それぞれ独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリール基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリールオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリールチオ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数8〜20のアリールアルケニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数2〜20の複素環基又はハロゲン原子を表し、
該アルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン基並びに該アリール基中の直接結合は、不飽和結合、−O−又は−S−で中断されていてもよく、Xは、隣接するX同士で環を形成していてもよく、
kは0〜4の数を表し、pは0〜8の数を表し、rは0〜4の数を表し、xは0〜4の数を表し、yは0〜4の数を表し、xとyの数の合計は2〜4であり、光学異性体が存在する場合、どの異性体でもよい。)
【請求項2】
下記一般式(III)で表されるユニットを有する請求項1に記載のポリアミック酸。
【化2】

(式中、X、Y、Z、k、p、r、x及びyは上記一般式(I)と同じであり、A
は炭素原子数2〜20のテトラカルボン酸残基である。)
【請求項3】
下記一般式(IV)で表されるユニットを有するポリイミド。
【化3】

(式中、X、Y、Z、k、p、r、x、y及びAは上記一般式(III)と同じである
。)
【請求項4】
請求項3に記載のポリイミドを使用して形成されるフィルム又はシート。
【請求項5】
下記一般式(I')で表されるジアミン化合物。
【化4】

(式中、X、Y及びZは、それぞれ独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリール基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリールオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6〜20のアリールチオ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数8〜20のアリールアルケニル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数2〜20の複素環基又はハロゲン原子を表し、
該アルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン基並びに該アリール基中の直接結合は、不飽和結合、−O−又は−S−で中断されていてもよく、Xは、隣接するX同士で環を形成していてもよく、
kは0〜4の数を表し、pは0〜8の数を表し、rは1〜4の数を表し、xは0〜4の数を表し、yは0〜4の数を表し、xとyの数の合計は2〜4であり、光学異性体が存在する場合、どの異性体でもよい。)

【公開番号】特開2012−140517(P2012−140517A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293218(P2010−293218)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】