説明

新規化合物ステレニン及びその製造方法

【課題】新規メタボリックシンドローム改善薬の提供。
【解決手段】11β−HSD1阻害活性を有する化合物である一般式(I)[式中、Rは−CHCHOH、−CH(COH)CHCHCOH、−H、または、−CHCOOH]で表わされる化合物またはその塩、並びに該化合物の製造方法の提供。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖尿病、肥満、高脂血症、高血圧症及びこれらの病態を複合的に発症したメタボリックシンドロームからなる群から選択される少なくとも一つの疾患の、治療及び又は予防薬として有効な11β−hydroxysteroid dehydrogenase type1(以下、「11β-HSD1」ともいう。)阻害作用を有し、またそれらの作用を増強せしめる目的で導かれる関連誘導体の合成原料として利用可能な新規化合物、該化合物を有効成分として含有する医薬、該化合物の製造方法、および該化合物を生産する新規微生物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食生活、生活習慣および生活環境の変化に伴って、肥満、高血糖、高脂血、高血圧、およびこれらの複数の危険因子が重複したメタボリックシンドローム患者が世界的に増加しており、社会的な問題となっている(非特許文献1)。いずれの治療においてもまず食事療法や運動療法が用いられ、効果が少ないか、または重度の場合に薬物療法が併用される。
【0003】
糖尿病は、インスリン依存性(I型、IDDM)とインスリン非依存性(II型、NIDDM)とに分類され、糖尿病患者の90%以上は後者である。IDDMの治療にはインスリン注射が用いられ、NIDDMの治療には、インスリン分泌を促進するスルホニルウレア剤、インスリン抵抗性を改善するチアゾリジンジオン系薬剤、糖の消化吸収を抑制するグリコシダーゼ阻害剤、肝臓での糖新生を抑制するビグアナイド系薬剤などが用いられる(非特許文献2)。しかし、いずれの薬剤も必ずしも十分な効果は得られず、また長期間の使用により有効性が減弱することから、重篤な合併症に至る患者が増えている。
【0004】
肥満治療では重度の患者において中枢性摂食抑制剤が用いられるが、使用限度期間がありリバウンドがおこることから、十分な効果は得られていない。
【0005】
高血圧症の治療薬として、血管を拡張させるカルシウム拮抗薬、塩分の排泄を促す利尿薬、交感神経を抑えて心拍数を低下させるβ遮断薬、交感神経を抑えて末梢血管を拡張させるα遮断薬、アンジオテンシンによる血管収縮を抑えるためのアンジオテンシン変換酵素阻害薬およびアンジオテンシン受容体拮抗薬などが挙げられる。しかし、脳卒中の最多発生時間帯である早朝の血圧コントロールが難しく降圧療法の現状はまだ十分とは言えない。
【0006】
高脂血症の治療薬としては、肝臓でのコレステロール合成を阻害するHMG−CoA還元酵素阻害剤、肝臓での中性脂肪の合成を阻害するフィブラート系薬剤、胆汁酸の排泄を促す陰イオン交換樹脂などが用いられる。高脂血症治療の最終的な目的は冠動脈疾患や脳梗塞をはじめとする動脈硬化性疾患の予防であるが、動脈硬化という病態は高脂血症のみならず、高血圧、糖尿病、肥満、加齢など,さまざまな危険因子が重なり合って発症するため、常にこうしたその他の危険因子にも目を配ることが重要であり、多面的な取り組みが求められる(非特許文献3)。
【0007】
糖質コルチコイド(ヒトにおけるコルチゾール、げっ歯類におけるコルチコステロン)は種々蛋白質の発現を介して筋肉からのアミノ酸を放出および脂肪組織からの脂肪酸とグリセロールの血中への放出を促進し、これらの基質を用いた肝臓での糖新生を促進させ、ひいては血糖の上昇を促す。また、脂肪組織での未成熟な脂肪細胞を成熟させて肥満へと導き、腎臓では鉱質コルチコイド受容体に作用して、血圧を上昇させる活性を有する。糖質コルチコイドによる活性制御機序としては、視床下部−脳下垂体−副腎皮質経路における産生・分泌による制御の他に、肝臓、脂肪組織、肺などの標的臓器における11β−HSD1によるリサイクリング(不活性型から活性型への変換)機構が存在する(非特許文献4)。11β−HSD1阻害剤はこれらの組織での糖質コルチコイドの作用を抑えることで、高血糖、肥満、高脂血症、及び/又は高血圧を抑制し、メタボリックシンドロームに対して多面的な効果を発揮することが期待される。脂肪組織特異的11β−HSD1高発現マウスにおいて、内臓脂肪型肥満、耐糖能の悪化、インスリン抵抗性および血圧の上昇が報告され、これらの可能性を支持している(非特許文献5または非特許文献6参照。)。このような物質としてアミノチアゾ−ルスルホンアミド誘導体(人居文献7)、トリアゾール誘導体(WO03/065983)が知られているが、実用化には至っていない。
【非特許文献1】「ネイチャー(Nature)」、2001年、第414巻、p782−787
【非特許文献2】「ザ・アメリカン・ジャーナル・オブ・メディスン(The American Journal of Medicine)」、2000年、第108巻、p238−245
【非特許文献3】「ザ・ジャーナル・オブ・クリニカル・エンドクライノロジー・アンド・メタボリズム(The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism)」、2004年、第89巻、p.2601−2607
【非特許文献4】「エンドクライノロジー(Endocrinology)」、2001年、第142巻、p.1371−1376
【非特許文献5】「サイエンス(Science)」、2001年、第294巻、p.2166−2170
【非特許文献6】「ザ・ジャーナル・ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション(The Journal of Clinical Investigation)」、2003年、第112巻、p.83−90
【非特許文献7】「ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(Journal of medicinal chemistry)」、2002年、第45巻、p.3813−3815
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、糖尿病、肥満、高脂血症、高血圧症及びこれらの病態を複合的に発症したメタボリックシンドロームからなる群から選択される少なくとも一つの疾患の、治療及び/又は予防薬として有効な11β−hydroxysteroid dehydrogenase type1(以下、「11β-HSD1」ともいう。)阻害作用を有し、またそれらの作用を増強せしめる目的で導かれる関連誘導体の合成原料として利用可能な新規化合物、該化合物を有効成分として含有する医薬、該化合物の製造方法、および該化合物を生産する新規微生物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は;
【0010】
(1) 下記、一般式 (I):

【化1】



【0011】
[式中、Rは
−CHCHOH
−CH(COH)CHCHCO
−H、または、
−CHCOOH]で表わされる化合物またはその塩、
(2) 下記の物理化学的性状を有する化合物又はその塩。
1)物質の性状:無色酸性脂溶性物質
2)溶解性:メタノール、ジメチルスルホキシド、酢酸エチルに可溶
3)分子式:C2325NO
4)分子量:427(TOFマススペクトル法により測定)
5)高分解能TOFマススペクトル法により測定した精密質量、[M+Na]は次に示す通りである。
実測値:450.1526
計算値:450.1529
6)紫外部吸収スペクトル:
メタノール中で測定した紫外部吸収スペクトルは、次に示す極大吸収を示す:
212nm(ε58600), 265nm(ε24400), 297nm(ε10900)
7)赤外吸収スペクトル:
KBr pellet法で測定した赤外吸収スペクトルは以下に示す極大吸収を示す。
3357,3231,2973,2931,1662,1623,1602,1456,1376,1311,1255,1199,1164,1084,1064,1035,990cm−1
8)H−核磁気共鳴スペクトル:
重メタノール中、その残存プロトンシグナル(3.31ppm)を内部標準として測定したH−核磁気共鳴スペクトルは、以下に示すとおりである。
1.50(3H,s),1.56(3H,s),2.60(3H,s),3.37(2H,m),3.75(2H,t,J=5.1Hz),3.83(2H,t,J=5.1Hz),4.58(2H,s),5.03(1H,m),6.23(1H,br, s),6.31(1H,br, s),7.08(1H,s)ppm
9)13C−核磁気共鳴スペクトル:
重メタノール中、重メタノール(49.15ppm)を内部標準として測定した13C−核磁気共鳴スペクトルは、以下に示すとおりである。
17.9(q),24.7(q),24.7(t),25.9(q),46.5(t),50.9(t),61.3(t),102.0(d),105.3(s),110.1(d),113.1(d),122.7(d),127.1(s),127.2(s),132.7(s),133.3(s),145.1(s),151.3(s),152.2(s),164.9(s),167.1(s),170.7(s),171.8(s)ppm、
(3) 下記の物理化学的性状を有する化合物又はその塩。
1)物質の性状:無色酸性脂溶性物質
2)溶解性:メタノール、ジメチルスルホキシド、酢酸エチルに可溶
3)分子式:C2627NO10
4)分子量:513(TOFマススペクトル法により測定)
5)高分解能TOFマススペクトル法により測定した精密質量、[M+H]は次に示す通りである。
実測値:514.1697
計算値:514.1713
6)紫外部吸収スペクトル:
メタノール中で測定した紫外部吸収スペクトルは、次に示す極大吸収を示す:
214nm(ε58100), 265nm(ε26500), 296nm(ε11100)
7)赤外吸収スペクトル:
KBr pellet法で測定した赤外吸収スペクトルは以下に示す極大吸収を示す。
3348,3264,2973,2928,2858,1718,1662,1624,1603,1450,1413,1377,1310,1254,1198,1162,1087,1063,1035,991cm−1
8)H−核磁気共鳴スペクトル:
重メタノール中、その残存プロトンシグナル(3.31ppm)を内部標準として測定したH−核磁気共鳴スペクトルは、以下に示すとおりである。
1.52(3H,s),1.57(3H,s),2.25(1H,m),2.40(2H,m),2.49(1H,m),2.60(3H,s),3.39(2H,m),4.46(1H,d,J=16.9Hz),4.58(1H,d,J=16.9Hz),4.99(1H,m),5.04(1H,m),6.24(1H,br, s),6.31(1H,br, s),7.09(1H,s)ppm
9)13C−核磁気共鳴スペクトル:
重メタノール中、重メタノール(49.15ppm)を内部標準として測定した13C−核磁気共鳴スペクトルは、以下に示すとおりである。
17.9(q),24.7(q),24.8(t),25.9(q),26.3(t),31.9(t),46.9(t),55.5(d),102.0(d),105.3(s),110.4(d),113.1(d),122.7(d),127.3(s),127.5(s),132.0(s),133.3(s),145.1(s),151.4(s),152.4(s),164.9(s),167.1(s),171.3(s),171.8(s),173.9(s),176.3(s)ppm、
(4) 下記の物理化学的性状を有する化合物又はその塩。
1)物質の性状:無色酸性脂溶性物質
2)溶解性:メタノール、ジメチルスルホキシド、酢酸エチルに可溶
3)分子式:C2121NO
4)分子量:383(TOFマススペクトル法により測定)
5)高分解能TOFマススペクトル法により測定した精密質量、[M+Na]は次に示す通りである。
実測値:406.1273
計算値:406.1267
6)紫外部吸収スペクトル
メタノール中で測定した紫外部吸収スペクトルは、次に示す極大吸収を示す:
213nm(ε66700), 268nm(ε23000), 297nm(ε12000)
7)赤外吸収スペクトル
KBr pellet法で測定した赤外吸収スペクトルは以下に示す極大吸収を示す。
3409,3267,2974,2931,1669,1653,1623,1599,1504,1446,1413,1374,1349,1313,1255,1193,1173,1161,1100,1063,1038,998,989cm−1
8)H−核磁気共鳴スペクトル
重メタノール中、その残存プロトンシグナル(3.31ppm)を内部標準として測定したH−核磁気共鳴スペクトルは、以下に示すとおりである。
1.50(3H,s),1.57(3H,s),2.60(3H,s),3.38(2H,m),4.40(2H,s),5.03(1H,m),6.22(1H,br,s),6.30(1H,br,s),7.08(1H,s)ppm
9)13C−核磁気共鳴スペクトル
重メタノール中、重メタノール(49.15ppm)を内部標準として測定した13C−核磁気共鳴スペクトルは、以下に示すとおりである。
17.9(q),24.7(q),24.7(t),25.9(q),45.0(t),102.0(d),105.3(s),110.2(d),113.1(d),122.7(d),127.3(s),129.3(s),132.5(s),133.3(s),145.1(s),151.4(s),152.6(s),164.9(s),167.1(s),171.8(s),173.4(s)ppm、
(5) 下記の物理化学的性状を有する化合物又はその塩
1)物質の性状:無色酸性脂溶性物質
2)溶解性:メタノール、ジメチルスルホキシド、酢酸エチルに可溶
3)分子式:C2323NO
4)分子量:441(TOFマススペクトル法により測定)
5)高分解能TOFマススペクトル法により測定した精密質量、[M+H]は次に示す通りである。
実測値:442.1495
計算値:442.1502
6)紫外部吸収スペクトル:
メタノール中で測定した紫外部吸収スペクトルは、次に示す極大吸収を示す:
213nm(ε96200), 265nm(ε41300), 297nm(ε17500)
7)赤外吸収スペクトル:
KBr pellet法で測定した赤外吸収スペクトルは以下に示す極大吸収を示す。
3366,3245,2973,2929,2733,1662,1624,1601,1458,1448,1401,1377,1311,1254,1201,1165,1103,1081,1035,995,946cm−1
8)H−核磁気共鳴スペクトル:
重メタノール中、その残存プロトンシグナル(3.31ppm)を内部標準として測定したH−核磁気共鳴スペクトルは、以下に示すとおりである。
1.50(3H,s),1.57(3H,s),2.61(3H,s),3.39(2H,m),4.38(2H,s),4.54(2H,s),5.04(1H,m),6.23(1H,br,s),6.30(1H,br,s),7.08(1H,s)ppm
9)13C−核磁気共鳴スペクトル:
重メタノール中、重メタノール(49.15ppm)を内部標準として測定した13C−核磁気共鳴スペクトルは、以下に示すとおりである。
17.9(q),24.7(q),24.8(t),25.9(q),45.1(t),50.3(t),102.0(d),105.3(s),110.4(d),113.1(d),122.7(d),127.3(s),127.5(s),132.1(s),133.3(s),145.1(s),151.4(s),152.4(s),164.9(s),167.1(s),170.8(s),171.8(s),172.8ppm、
(6) ステレウム(Stereum)属に属する、(1)乃至(5)のいずれか1項に記載の化合物の生産菌を培養し、その培養物より(1)乃至(5)のいずれか1項に記載の化合物を採取することを特徴とする、(1)乃至(5)のいずれか1項に記載の化合物の製造方法、
(7) ステレウム エスピー(Stereum sp.)SANK21205株(FERM BP−10465)または、ステレウム エスピー(Stereum sp.)SANK21105株(FERM BP−10464)を培養し、その培養物より(1)乃至(5)のいずれか1項に記載の化合物を採取することを特徴とする、(1)乃至(5)のいずれか1項に記載の化合物の製造方法、
(8) ステレウム(Stereum)属に属し、(1)乃至(5)のいずれか1項に記載の化合物を生産することを特徴とする微生物、
(9) ステレウム エスピー(Stereum sp.)SANK21205株(FERM BP−10465)、
(10)ステレウム エスピー(Stereum sp.)SANK21105株(FERM BP−10464)、
(11) (1)乃至(5)のいずれか1項に記載の化合物またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬組成物、
(12) 糖尿病、肥満、高脂血症、高血圧及びメタボリックシンドロームからなる群から選択される少なくとも一つの疾患の治療及び/又は予防薬である(11)に記載の医薬組成物、
(13) (1)乃至(5)のいずれか1項に記載の化合物もしくはその塩を含有してなる11β−hydroxysteroid dehydrogenase type1(11β−HSD1)阻害剤、
に関する。
【0012】
また、本発明は、以下に記載の化合物に関する。
(i)下記の物理化学的性状を有する化合物又はその塩。
1)物質の性状:無色酸性脂溶性物質
2)溶解性:メタノール、ジメチルスルホキシド、酢酸エチルに可溶
3)分子式:C2325NO
4)分子量:427(TOFマススペクトル法により測定)
5)高分解能TOFマススペクトル法により測定した精密質量、[M+Na]は次に示す通りである。
実測値:450.1526
計算値:450.1529
6)紫外部吸収スペクトル:
メタノール中で測定した紫外部吸収スペクトルは、次に示す極大吸収を示す:
212nm(ε58610), 265nm(ε24385), 297nm(ε10909),
7)赤外吸収スペクトル:
KBr pellet法で測定した赤外吸収スペクトルは以下に示す極大吸収を示す。
3357,3231,2973,2931,1662,1623,1602,1456,1376,1311,1255,1199,1164,1084.1064,1035,990cm−1
8)H−核磁気共鳴スペクトル:
重メタノール中、その残存プロトンシグナル(3.31ppm)を内部標準として測定したH−核磁気共鳴スペクトルは、以下に示すとおりである。
1.50(3H,s),1.56(3H,s),2.60(3H,s),3.37(2H,m),3.75(2H,t,J=5.1Hz),3.83(2H,t,J=5.1Hz),4.58(2H,s),5.03(1H,m),6.23(1H,s, br),6.31(1H,s, br),7.08(1H,s)ppm
9)13C−核磁気共鳴スペクトル:
重メタノール中、重メタノール(49.15ppm)を内部標準として測定した13C−核磁気共鳴スペクトルは、以下に示すとおりである。
17.9(q),24.7(q),24.7(t),25.9(q),46.5(t),50.9(t),61.3(t),102.0(d),105.3(s),110.1(d),113.1(d),122.7(d),127.1(s),127.2(s),132.7(s),133.3(s),145.1(s),151.3(s),152.2(s),164.9(s),167.1(s),170.7(s),171.8(s)ppm
(ii)下記の物理化学的性状を有する化合物又はその塩。
1)物質の性状:無色酸性脂溶性物質
2)溶解性:メタノール、ジメチルスルホキシド、酢酸エチルに可溶
3)分子式:C2627NO10
4)分子量:513(TOFマススペクトル法により測定)
5)高分解能TOFマススペクトル法により測定した精密質量、[M+H]は次に示す通りである。
実測値:514.1697
計算値:514.1713
6)紫外部吸収スペクトル:
メタノール中で測定した紫外部吸収スペクトルは、次に示す極大吸収を示す:
214nm(ε58133), 265nm(ε26506), 296nm(ε11145)
7)赤外吸収スペクトル:
KBr pellet法で測定した赤外吸収スペクトルは以下に示す極大吸収を示す。
3348,3264,2973,2928,2858,1718,1662,1624,1603,1450,1413,1377,1310,1254,1198,1162,1087,1063,1035,991cm−1
8)H−核磁気共鳴スペクトル:
重メタノール中、その残存プロトンシグナル(3.31ppm)を内部標準として測定したH−核磁気共鳴スペクトルは、以下に示すとおりである。
1.52(3H,s),1.57(3H,s),2.25(1H,m),2.40(2H,m),2.49(1H,m),2.60(3H,s),3.39(2H,m),4.46(1H,d,J=16.9Hz),4.58(1H,d,J=16.9Hz),4.99(1H,m),5.04(1H,m),6.24(1H,s, br),6.31(1H,s, br),7.09(1H,s)ppm
9)13C−核磁気共鳴スペクトル:
重メタノール中、重メタノール(49.15ppm)を内部標準として測定した13C−核磁気共鳴スペクトルは、以下に示すとおりである。
17.9(q),24.7(q),24.8(t),25.9(q),26.3(t),31.9(t),46.9(t),55.5(d),102.0(d),105.3(s),110.4(d),113.1(d),122.7(d),127.3(s),127.5(s),132.0(s),133.3(s),145.1(s),151.4(s),152.4(s),164.9(s),167.1(s),171.3(s),171.8(s),173.9(s),176.3(s)ppm
(iii)下記の物理化学的性状を有する化合物又はその塩;
1)物質の性状:無色酸性脂溶性物質
2)溶解性:メタノール、ジメチルスルホキシド、酢酸エチルに可溶
3)分子式:C2121NO
4)分子量:383(TOFマススペクトル法により測定)
5)高分解能TOFマススペクトル法により測定した精密質量、[M+Na]は次に示す通りである。
実測値:406.1273
計算値:406.1267
6)紫外部吸収スペクトル:
メタノール中で測定した紫外部吸収スペクトルは、次に示す極大吸収を示す:
213nm(ε66746), 268nm(ε22967), 297nm(ε11962)
7)赤外吸収スペクトル:
KBr pellet法で測定した赤外吸収スペクトルは以下に示す極大吸収を示す。
3409,3267,2974,2931,1669,1653,1623,1599,1504,1446,1413,1374,1349,1313,1255,1193,1173,1161,1100,1063,1038,998,989cm−1
8)H−核磁気共鳴スペクトル:
重メタノール中、その残存プロトンシグナル(3.31ppm)を内部標準として測定したH−核磁気共鳴スペクトルは、以下に示すとおりである。
1.50(3H,s),1.57(3H,s),2.60(3H,s),3.38(2H,m),4.40(2H,s),5.03(1H,m),6.22(1H,s, br),6.30(1H,s, br),7.08(1H,s)ppm
9)13C−核磁気共鳴スペクトル:
重メタノール中、重メタノール(49.15ppm)を内部標準として測定した13C−核磁気共鳴スペクトルは、以下に示すとおりである。
17.9(q),24.7(q),24.7(t),25.9(q),45.0(t),102.0(d),105.3(s),110.2(d),113.1(d),122.7(d),127.3(s),129.3(s),132.5(s),133.3(s),145.1(s),151.4(s),152.6(s),164.9(s),167.1(s),171.8(s),173.4(s)ppm
(iv) 下記の物理化学的性状を有する化合物又はその塩。
1)物質の性状:無色酸性脂溶性物質
2)溶解性:メタノール、ジメチルスルホキシド、酢酸エチルに可溶
3)分子式:C2323NO
4)分子量:441(TOFマススペクトル法により測定)
5)高分解能TOFマススペクトル法により測定した精密質量、[M+H]は次に示す通りである。
実測値:442.1495
計算値:442.1502
6)紫外部吸収スペクトル:
メタノール中で測定した紫外部吸収スペクトルは、次に示す極大吸収を示す:
213nm(ε96167), 265nm(ε41250), 297nm(ε17500)
7)赤外吸収スペクトル:
KBr pellet法で測定した赤外吸収スペクトルは以下に示す極大吸収を示す。
3366,3245,2973,2929,2733,1662,1624,1601,1458,1448,1401,1377,1311,1254,1201,1165,1103,1081,1035,995,946cm−1
8)H−核磁気共鳴スペクトル:
重メタノール中、その残存プロトンシグナル(3.31ppm)を内部標準として測定したH−核磁気共鳴スペクトルは、以下に示すとおりである。
1.50(3H,s),1.57(3H,s),2.61(3H,s),3.39(2H,m),4.38(2H,s),4.54(2H,s),5.04(1H,m),6.23(1H,s, br),6.30(1H,s, br),7.08(1H,s)ppm
9)13C−核磁気共鳴スペクトル:
重メタノール中、重メタノール(49.15ppm)を内部標準として測定した13C−核磁気共鳴スペクトルは、以下に示すとおりである。
17.9(q),24.7(q),24.8(t),25.9(q),45.1(t),50.3(t),102.0(d),105.3(s),110.4(d),113.1(d),122.7(d),127.3(s),127.5(s),132.1(s),133.3(s),145.1(s),151.4(s),152.4(s),164.9(s),167.1(s),170.8(s),171.8(s),172.8ppm。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、11β−HSD1阻害活性を有する化合物である、ステレニンA、ステレニンB、ステレニンC及びステレニンDが提供された。さらに、本発明により、該化合物を製造する微生物、及び該微生物を用いた該化合物の製造方法が提供された。本発明の化合物は、糖尿病、肥満、高脂血、高血圧及びこれらの病態を複合的に発症したメタボリックシンドロームからなる群から選択される少なくとも一つの疾患の治療及び/又は予防に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
1.ステレニンA、ステレニンB、ステレニンC及びステレニンD
本明細書中において、ステレニンA(Sterenin A)とは、以下の一般式(I):
【0015】
【化2】

【0016】
においてRが−CHCHOHである化合物または上記(i)に記載の物理化学的性状を有する化合物を示す。同様に、ステレニンB(Sterenin B)とは、RがCH(COH)CHCHCOHである化合物または上記(ii)に記載の物理化学的性状を有する化合物を示し、ステレニンC(Sterenin C)とは、Rが−Hである化合物または上記(iii)に記載の物理化学的性状を有する化合物を示し、ステレニンD(Sterenin D)とは、Rが−CHCOOHである化合物または上記(iv)に記載の物理化学的性状を有する化合物を示す。
【0017】
本発明の化合物は、より優れた血糖値低下作用、肥満改善作用、血中脂質低下作用、血圧低下作用からなる群から選択される少なくとも一つの作用、及び/またはメタボリックシンドローム改善作用を有する誘導体を合成する際の出発原料とすることも可能である。
【0018】
本発明の化合物は、塩基を用いて当業者に周知の方法により塩にすることができる。本発明はこれらの塩も包含する。本発明の化合物の塩を医薬として使用する場合、医学的に使用され、薬理学的に許容されるものであれば特に限定はなく、また、医薬以外の用途に用いる場合、例えば中間体として用いる場合には、該用途に用いることのできるものであれば特に限定されない。
【0019】
そのような塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、のようなアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩、のようなアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、ニッケル塩、コバルト塩等の金属塩;アンモニウム塩のような無機塩;t−オクチルアミン塩、ジベンジルアミン塩、モルホリン塩、グルコサミン塩、フェニルグリシンアルキルエステル塩、エチレンジアミン塩、N−メチルグルカミン塩、グアニジン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩、クロロプロカイン塩、プロカイン塩、ジエタノールアミン塩、N−ベンジル−フェネチルアミン塩、ピペラジン塩、テトラメチルアンモニア塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩のような有機アミン塩;グリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、アスパラギン塩のようなアミノ酸塩、好適には、薬理学的に許容される塩であり、より好適には、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩である。
【0020】
また、本発明の化合物およびその塩は、大気中に放置したり、水又は有機溶媒と混和することによって水又は溶媒と結合し、水和物又は溶媒和物を形成する場合があるが、これらの水和物及び溶媒和物も本発明に含まれる。
【0021】
更に、ステレニンBは不斉炭素原子を有するため、2つの光学異性体が存在する。一般式(I)において、これらの異性体は単一の式で示されているが、本発明はラセミ化合物を含むこれらの異性体、およびこれらの異性体の混合物をもすべて含む。これらの異性体は、立体特異的合成法により、若しくは光学活性化合物を原料化合物とした合成により、製造することができる。
【0022】
2.ステレニンA,ステレニンB、ステレニンCおよびステレニンDの製造方法に用いられる微生物
ステレニンA,ステレニンB、ステレニンCおよびステレニンDの製造方法において用いられる、ステレウム(キウロコタケ)(Stereum)属に属する菌株としては、例えばステレウム エスピー(Stereum sp.)SANK21205株(以下、「SANK21205株」とする。)、またはステレウム エスピー(Stereum sp.)SANK21105株(以下、「SANK21105株」とする)を挙げることができる。SANK21205株は、群馬県で採集した担子菌子実体の担子胞子より分離された。また、SANK21105株は、静岡県で採集した担子菌子実体の担子胞子より分離された。
【0023】
本菌の菌学的性状を観察するため、次の各培地上で培養を行った。使用した各培地の組成を以下に記載する。

<PDA培地(ポテトデキストロース寒天(Potato Dextrose Agar)培地)>
ポテトデキストロース寒天培地「ニッスイ」(日水製薬(株)製) 39g
寒天 5g
蒸留水 1000ml
<MEA培地(マルトエキス寒天培地)>
マルトエキス 12.5g
寒天 20g
蒸留水 1000ml
色調の表示は「メチューン・ハンドブック・オブ・カラー」 (Kornerup A. & Wanscher J. H. (1978) Methuen handbook of colour(3rd. edition). Erye Methuen, London)に従った。

SANK21205株の培養下での菌学的性状は次の通りである。
【0024】
PDA培地上での成長は、23℃、1週間の培養で41乃至49mmである。菌そうは綿毛状、中心部でイエロイッシュホワイト(4A2)を呈する。裏面は中心部でペールイエロー(4A3)を呈する。気菌糸は幅1.5乃至8μm、薄壁、平滑である。かすがい連結は隔壁あたり0乃至4個形成される。分生子は形成されない。菌そう中心部で不溶性の細かい油滴を付着した菌糸が観察される。MEA培地上での成長は、23℃、1週間の培養で34乃至40mmである。菌そうは薄く、白色である。裏面は変化なし。
【0025】
SANK21105株の培養下での菌学的性状は次の通りである。
【0026】
PDA培地上での成長は、23℃、1週間の培養で50乃至56mmである。菌そうは綿毛状、中心部でパステルイエロー(3A4)乃至ライトイエロー(4A4)を呈する。裏面は中心部でペールイエロー(4A3)を呈する。気菌糸は幅1.5乃至8μm、薄壁、平滑である。かすがい連結は隔壁あたり0乃至3個形成される。菌そう中心部で不溶性の細かい油滴を付着した菌糸が観察される。MEA培地上での成長は、23℃、1週間の培養で37乃至42mmである。菌そうは薄く、白色である。裏面は変化なし。
【0027】
SANK21205株及びSANK21105株を同定するため、分離に供試した子実体乾燥標本の菌学的性状を観察した。その乾燥標本の菌学的性状は次の通りである。
【0028】
子実体は背着生乃至半背着生である。傘は幅5mm以下、厚さ0.4mm以下、貝殻形乃至扇形、横に連なり、堅い。表面は粗長毛状、灰白色を呈する。傘の縁は薄く、鋭角である。子実層面は平滑乃至ややこぶ状、淡橙色である。下皮が毛被と肉の間に存在する。下皮は厚さ25μm以下、褐色を呈する。
【0029】
担子胞子は8乃至12×3乃至4μm、円筒形でやや湾曲することもあり、薄壁、平滑、アミロイドである。担子器は40乃至50×5乃至6μm、狭棍棒形、4胞子性。小柄は長さ4μm。偽シスチジアは幅4.5乃至6μm、円筒形、基部で厚壁(2μm以下)、先端で薄壁、先端に小さい突起を有することがある。菌糸は1菌糸型、幅2乃至6μm、薄壁乃至厚壁、隔壁にかすがい連結は観察されない。アカントハイフィディアや偽アカントハイフィディアは観察されない。
【0030】
以上のような菌学的性状は、チャムリス(1988年)「ノンスティピテイト ステレオイド ファンジャイ イン ザ ノースイースタン ユナイテッド ステーツ アンド アジャセント カナダ」J クリマー、ベルリン(Chamuris G. P. (1988) The non−stipitate stereoid fungi in the northeastern United States and adjacent Canada. J. Cramer, Berlin)のステレウム(キウロコタケ)(Stereum)属の記載に一致した。SANK21205株及びSANK21105株は同種であり、SANK21205株及びSANK21105株を、ステレウム エスピー(Stereum sp.)と同定した。
なお、SANK21205株はステレウム エスピー SANK21205株として、SANK21105株は、ステレウム エスピー SANK21105株として、平成17年12月6日付けで日本国茨城県つくば市東1−1−1の独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに国際寄託され、それぞれ受託番号FERM BP−10465及びFERM BP−10464を付与された。
【0031】
周知の通り、真菌類は自然界において、又は人工的な操作(例えば、紫外線照射、放射線照射、化学薬品処理等)により、変異を起こしやすく、本発明のSANK21205株及びSANK21105株もその点は同じである。本発明にいうSANK21205株及びSANK21105株はその全ての変異株を包含する。
【0032】
また、これらの変異株の中には、遺伝的方法、たとえば組み換え、形質導入、形質転換等によりえられたものも包含される。即ち、ステレニンA,ステレニンB、ステレニンCおよびステレニンDを生産するSANK21205株及びSANK21105株、それらの変異株およびそれらと明確に区別されない菌株は全てSANK21205株及びSANK21105株に包含される。
【0033】
3.ステレニンA,ステレニンB、ステレニンCおよびステレニンDを生産する微生物の培養方法及びステレニンA,ステレニンB、ステレニンCおよびステレニンDの精製方法
(1)培養方法
本発明のステレニンA,ステレニンB、ステレニンCおよびステレニンDを得るための、これらの微生物の培養は一般に他の発酵生成物を生産するために用いられる培地と同様の培地を用いて行なわれる。このような培地は、微生物が資化出来る炭素源、窒素源および無機塩を含有する。
【0034】
炭素源としては、例えば、グルコース、フラクトース、マルトース、シュークロース、マンニトール、グリセリン、デキストリン、オート麦、ライ麦、大麦、玄米、トウモロコシデンプン、ジャガイモ、トウモロコシ粉、大豆油、綿実油、糖蜜、クエン酸、酒石酸等をあげることができる。これらの炭素源は単独または組み合わせて用いることができる。
培地に加える炭素源の量は、培地中の他の成分により異なるが、通常、培地量の1乃至10重量%である。
【0035】
窒素源としては、例えば、大豆粉、フスマ、落花しょう粉、綿実紛、カゼイン加水分解物、ファーマミン、コーンスチープリカー、ペプトン、肉エキス、イースト、イーストエキス、マルトエキス、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、L−グルタミン酸ナトリウム等をあげることができる。これらの炭素源は単独または組み合わせて用いることができる。
【0036】
培地に加える窒素源の量は、培地中の他の成分により異なるが、通常、0.2乃至6重量%である。
【0037】
炭素源および窒素源は、一般に組み合わせて用いるが、純粋な形態である必要はなく、微量の生育因子、ビタミンおよび無機栄養を含むより純度の低いものを用いてもよい。
【0038】
無機塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、アンモニウム、カルシウム、リン酸、硫酸、塩酸、炭酸等のイオンを生じる塩類をあげることができる。
【0039】
また、菌の資化しうるビタミンB1、ビオチンのようなビタミン類、チアミンのような菌体増殖促進物質等も必要に応じて添加してもよい。
【0040】
更に、マンガン、モリブデン、その他の金属塩を必要に応じて添加してもよい。
【0041】
栄養培地が泡立つ場合などは必要に応じて、シリコンオイル、ポリアルキレングリコールエーテル、植物油、動物油、界面活性剤のような消泡剤を培地に添加してもよい。特に、液体培養に際しては、これらの消泡剤を添加することが好適である。
【0042】
培地のpHは、培地の成分、生育温度等により異なるが、通常発酵生成物を生産するために用いられるpHであればよい。
【0043】
菌の生育温度は、培地の成分、pH等により異なるが、通常、15℃乃至30℃であり、20乃至28℃の範囲が生育に良好である。ステレニンA,ステレニンB、ステレニンCおよびステレニンDの生産には、20乃至26℃が好適である。
【0044】
培養方法としては、特に制限はなく、微生物一般に用いられる培養法であればよく、固形培地を用いた培養法、攪拌培養法、振とう培養法、通気培養法等を使用することができ、好適には、固形培地を用いた培養である。
【0045】
培養においては、好適には20乃至26℃、更に好適には23℃で10日以上固体培養を行なう。培養は三角フラスコ中で、1または2段階の種の発育工程により開始させる。種の発育段階の培地には、炭素源、窒素源、微量の生育因子、無機塩類および微量金属類を併用できる。種培養用三角フラスコはロータリー振とう培養機中で20乃至26℃(好適には23℃)、5乃至10日間(好適には7日間)振とうするか、又は充分に生育するまで振とうする。生育した種培養液は、第二の種培養培地又は生産培養培地に接種するために用いられる。中間の発育工程を用いる場合には、本質的に第一の種培養と同様の方法で生育させ、その種培養液を三角フラスコなどの固体培地培養容器中の生産培養培地に接種する。接種した固体培地培養容器を一定温度で静置して、生産培養を行なう。
【0046】
(2)ステレニンA,ステレニンB、ステレニンCおよびステレニンDの精製方法
培養終了後、固体培養の場合、固体培養物中に存在するステレニンA,ステレニンB、ステレニンCおよびステレニンDは、50乃至90%の含水アセトンまたは含水メタノールにより抽出し、濃縮操作により有機溶剤を除去した後、酸性条件下で、水と混和しない有機溶剤、例えば、酢酸エチル、クロロホルム、塩化エチレン、塩化メチレン、ブタノール等の単独または、それらの組み合わせにより抽出精製することができる。または、吸着剤として、例えば、活性炭または吸着用樹脂であるアンバーライトXAD−2、XAD−4(ローム・アンド・ハース(株)製)等や、ダイアイオンHP−10、HP−20、CHP20P、HP−50、セパビーズSP−207(三菱化学(株)製)等を使用して抽出精製することもできる。吸着剤を使用して抽出精製する場合、目的化合物を含む液を、吸着剤の層を通過させ、不純物を吸着剤に吸着させることにより取り除くか、または、目的化合物を吸着させて不純物を洗い流した後、メタノール水、アセトン水、ブタノ−ル水等を用いて目的化合物を溶出させることにより、目的化合物を抽出精製することができる。
【0047】
液体培養の場合、培養液中の液体部分および菌体内、またはその双方に存在するステレニンA,ステレニンB、ステレニンCおよびステレニンDは、培養終了液の全て、あるいは菌体、その他の固形部分を、珪藻土をろ過助剤とするろ過操作または遠心分離によって分別し、得られたろ液または上清および菌体中から、11β−HSD1阻害活性または高速液体クロマトグラフィーを指標にして、その物理化学的性状を利用し抽出精製することができる。
【0048】
ろ液または上清中に存在するステレニンA,ステレニンB、ステレニンCおよびステレニンDは、水と混和しない有機溶剤、例えば、酢酸エチル、クロロホルム、塩化エチレン、塩化メチレン、ブタノール等の単独または、それらの組み合わせにより抽出することができる。これらの抽出液は、固体培養と同様な抽出精製操作を行うことにより目的の化合物を抽出精製することができる。
【0049】
菌体内に存在するステレニンA,ステレニンB、ステレニンCおよびステレニンDは、50乃至90%の含水アセトンまたは含水メタノールにより抽出し、濃縮操作により有機溶剤を除去した後、上記と同様に抽出精製操作を行うことにより得ることができる。例えば、培養終了後に適当量(好ましくは終濃度50%)の、アセトンまたはメタノールを添加することにより目的の化合物を抽出することができる。抽出終了後、珪藻土をろ過助剤とするろ過操作を行ない、得られた抽出液を固体培養と同様な抽出精製操作を行うことにより目的の化合物を抽出精製することができる。
【0050】
上記の方法により抽出精製されたステレニンA,ステレニンB、ステレニンCおよびステレニンDを含む溶液は、シリカゲル、セファデックスLH−20(アマシャムバイオサイエンス(株)製)、フロリジル、コスモシル(ナカライテスク(株)製)のような担体を用いた分配カラムクロマトグラフィー;ダイヤイオンHP−20、CHP20P(三菱化学(株)製)のような担体を用いた吸着カラムクロマトグラフィー;セファデックスG−10(アマシャムバイオサイエンス(株)製)、トヨパールHW40F(トーソー(株)製)などを用いたゲルろ過クロマトグラフィー;ダウエックス1(ダウケミカル(株)製)、ダイヤイオンPA316(三菱化学(株)製)、DEAEセファデックスA−25(アマシャムバイオサイエンス(株)製)などを用いたイオン交換クロマトグラフィー;および順相、逆相カラムを用いた高速液体クロマトグラフィー等により更に精製することができる。
【0051】
以上の分離、精製の手段を単独または適宜組み合わせ、場合によっては反復して用いることにより、本発明のステレニンA,ステレニンB、ステレニンCおよびステレニンDを分離精製することができる。
【0052】
以上、ステレニンA,ステレニンB、ステレニンCおよびステレニンDの製造法の代表的な方法を説明したが、製造方法はこれらに限定されず、既に当業者に知られているこれら以外の製造方法を用いることもできる。
【0053】
4.ステレニンA,ステレニンB、ステレニンCおよびステレニンDからなる群から選択される少なくとも1つの化合物またはその薬理学的に許容される塩を有効成分とする医薬
本発明のステレニンA,ステレニンB、ステレニンCおよびステレニンDからなる群から選択される少なくとも1つの化合物またはその薬理学的に許容される塩は、種々の形態で投与することができる。その投与形態としては、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、乳剤、丸剤、散剤、シロップ剤(液剤)等による経口投与、または注射剤(静脈内、筋肉内、皮下または腹腔内投与)、点滴剤、坐剤(直腸投与)等による非経口投与を挙げることができる。これらの各種製剤は、常法に従って主薬に賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味矯臭剤、溶解補助剤、懸濁剤、コーティング剤等の医薬の製剤技術分野において通常使用し得る補助剤を用いて製剤化することができる。
【0054】
錠剤として使用する場合、担体として、例えば、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、グルコース、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸等の賦形剤;水、エタノール、プロパノール、単シロップ、グルコース液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、セラック、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドン等の結合剤;乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、寒天末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、乳糖等の崩壊剤;白糖、ステアリン、カカオバター、水素添加油等の崩壊抑制剤;第4級アンモニウム塩類、ラウリル硫酸ナトリウム等の吸収促進剤;グリセリン、デンプン等の保湿剤;デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸等の吸着剤;精製タルク、ステアリン酸塩、硼酸末、ポリエチレングリコール等の潤沢剤等を使用することができる。また、必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーティング錠あるいは二重錠、多層錠とすることができる。
【0055】
丸剤として使用する場合、担体として、例えば、グルコース、乳糖、カカオバター、デンプン、硬化植物油、カオリン、タルク等の賦形剤;アラビアゴム末、トラガント末、ゼラチン、エタノール等の結合剤;ラミナラン寒天等の崩壊剤等を使用することができる。
【0056】
坐剤として使用する場合、担体としてこの分野で従来公知のものを広く使用でき、例えばポリエチレングリコール、カカオバター、高級アルコール、高級アルコールのエステル類、ゼラチン、半合成グリセリド等を挙げることができる。
【0057】
注射剤として使用する場合、液剤、乳剤または懸濁剤として使用することができる。これらの液剤、乳剤または懸濁剤は、殺菌され、血液と等張であることが好ましい。これら液剤、乳剤または懸濁剤の製造に用いる溶液は、医療用の希釈剤として使用できるものであれば特に限定はなく、例えば、水、エタノール、プロピレングリコール、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等を挙げることができる。なお、この場合、等張性の溶液を調製するのに充分な量の食塩、グルコースまたはグリセリンを製剤中に含んでいてもよく、また通常の溶解補助剤、緩衝剤、無痛化剤等を含んでいてもよい。
【0058】
また、上記の製剤には、必要に応じて、着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤等を含めることもでき、更に、他の医薬品を含めることもできる。
【0059】
上記製剤に含まれる有効成分化合物の量は、特に限定されず広範囲に適宜選択されるが、通常、全組成物中1乃至70重量%、好ましくは1乃至30重量%含む。
【0060】
使用量としては、症状、年齢、体重、投与方法および剤形等によって異なるが、通常は成人に対して1日あたり、上限として2000mg(好ましくは100mg)であり、下限として0.1mg(好ましくは1mg、さらに好ましくは10mg)を症状に応じて、一日1回または数回に分けて投与することができる。
【実施例】
【0061】
次に、実施例をあげて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)SANK21205株の培養
SANK21205株のスラントより約1cm角の菌糸片を切り取り、あらかじめ滅菌水約3mlで満たしたガラスポッターに懸濁した。ガラスポッターを用いて菌糸片をホモジナイズし、全量を滅菌(121℃、20分間)した後述の組成からなる種培養培地(表1)30mlを含む100ml容三角フラスコに接種した。同様の操作を行い、15本の種培養フラスコを用意した。23℃で210rpmのロータリー振とう培養機中で7日間培養した。このようにして得られた種培養液を、滅菌(121℃、40分間)した後述の生産培養培地(表2)の培地組成を含む500ml容固体培地培養容器(アグリフレックス、藤森工業(株)社製)15本にそれぞれ30ml接種し、23℃で静置して14日間培養した。
【0062】
(表1)種培養培地の培地組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
グルコース 4g
マルトエキス(Difco) 10g
イーストエキス(Difco) 4g
寒天 3g
消泡剤* 0.05ml
蒸留水 1000ml
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
*ニッサン・ディスフォームCB−442(登録商標、日本油脂(株)社製)
【0063】
(表2)生産培養培地の培地組成(500ml容固体培地培養容器1本あたり)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
玄米 90g
NaNO3 0.05g
KH2PO4 0.05g
MgSO4・7H2O 0.05g
蒸留水 100ml
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

(実施例2)ステレニンA,ステレニンB、ステレニンCおよびステレニンDの単離・精製
以下の精製においては、活性画分を以下の条件でHPLCを用い、モニターした。
【0064】
カラム:カプセルパック(CAPCELL PAK)C18UG120:
4.6φ×150mm (資生堂(株)製)
溶媒:0.05%ギ酸を含有する35%アセトニトリル水
流速:1.0ml/分
検出:紫外部吸収210nm
保持時間:8.49分(ステレニンA)
9.60分(ステレニンB)
9.65分(ステレニンC)
10.71分(ステレニンD)
実施例1で得られた培養終了物(3L)にアセトン(3L)を添加し、攪拌しながら30分間放置した後、抽出液にセライト545(150g)を加え、ろ過した。得られたろ液を6N HClでpH3に調整し、酢酸エチル(2L)を加えて抽出を行った。得られた水層に再度酢酸エチル(1.5L)を加えて抽出し、2度の抽出操作で得られた有機層を合併した。この有機層(3.5L)を飽和食塩水(2L)で洗浄後、無水硫酸ナトリウム(400g)を加えて1時間脱水した。ろ過により無水硫酸ナトリウムを除去した後、ろ液を減圧濃縮乾固し、油状物質(13g)が得られた。この油状物質を、メタノール(50ml)に溶解した後、コスモシル140C18(60g:ナカライテスク(株)製)に攪拌しながら添加し、メタノールを留去した。油状物質がコーティングされたコスモシル140C18に、0.3% トリエチルアミン−リン酸を含有する、pH3に調整した水溶液(400ml)を加えて懸濁させた後、0.3% トリエチルアミン−リン酸を含有する、pH3に調整した10%アセトニトリル水で平衡化したコスモシル140C18カラム(600ml)に供与した。カラムを同一溶媒(1L)で洗浄した後、同様に、0.3% トリエチルアミン−リン酸を含有する、pH3に調整した20%アセトニトリル水(1L)で展開し、溶出液を17ml毎に分画した(Fr.1乃至62)。その後、0.3% トリエチルアミン−リン酸を含有する、pH3に調整した25%アセトニトリル水(1.6L、Fr.63乃至159)、0.3% トリエチルアミン−リン酸を含有する、pH3に調整した30%アセトニトリル水(3L、Fr.160乃至335)の順で展開し、ステレニンA,ステレニンB、ステレニンCおよびステレニンDを主成分とするFr.265乃至294の画分(500ml)が得られた。得られた画分を濃縮してアセトニトリルを留去した後、酢酸エチル(400ml)を加えて抽出を行った。水層に再度酢酸エチル(300ml)を加えて抽出し、2度の抽出操作で得られた有機層を合併した。この有機層(700ml)を飽和食塩水(600ml)で洗浄後、無水硫酸ナトリウム(80g)を加えて1時間脱水した。ろ過により無水硫酸ナトリウムを除去した後、ろ液を減圧濃縮乾固し、粗精製物(335mg)が得られた。この粗精製物の一部(130mg)をメタノール(2ml)に溶解した後、この溶液を200μlずつ10回に分け、0.05%ギ酸を含有する37%アセトニトリル水で平衡化したHPLCカラム(CAPCELL PAK C18 UG120,20φ×250 mm(資生堂(株)製)に供与した。カラムを流速10.0ml/分で展開し、210nmでの紫外部吸収を検出して、保持時間25.0分(ステレニンA)、26.5分(ステレニンB)、29.0分(ステレニンC)および30.2分(ステレニンD)に溶出される活性画分を各々分取した。得られた同一保持時間の画分をあわせ、別個に減圧濃縮後、凍結乾燥し、ステレニンA(24mg)、ステレニンB(25mg)、ステレニンC(11mg)およびステレニンD(10mg)が得られた
(試験例)11β−HSD1酵素阻害実験
(1)酵素源
ヒト11β−HSD1(GenBank Accession番号:NM_005525、 VERSION:NM_005525.2に配列が記載されている。)の全長をコードするcDNAを、哺乳類細胞発現ベクターpCIneo(Promega社)に組み込んだプラスミドをLipofectaminプラス試薬(Invitrogen社)を用いて添付文書に従ってHEK293細胞に導入し、48時間後の細胞を回収して−80℃で凍結した。コントロールとしてpCIneoベクターを導入した細胞を同様に準備した。細胞を融解し、終濃度20mMのヘペス、1mMのエチレンジアミン四酢酸、2mMの塩化マグネシウム、およびプロテアーゼインヒビターカクテル(ロシュ社)を含む緩衝液で懸濁し、窒素ガス封入により氷上で4.1MPaの圧力を30分間かけ、細胞を破砕した。細胞破砕液を4℃で10分間、1,000×gにて遠心分離し、その上清を回収した。得られた上清を更に4℃で30分間、105,000×gで超遠心し、得られた沈殿をミクロソーム画分としてアッセイバッファー(50mM トリス緩衝液、10% グリセロール)に懸濁し、酵素源とした。
【0065】
(2)酵素阻害実験
反応は96ウェルPCRプレート(パーキンエルマー社)上、反応用量20μLで行ない、いずれの試料もアッセイバッファー(50mM トリス緩衝液,10% グリセロール)に希釈して用いた。終濃度5mMとなるNADPH、50mMとなるグルコース6リン酸、10ユニット/mLとなるグルコース6リン酸デヒドロゲナーゼ(シグマ社)、20mMとなる塩化マグネシウムおよび1ウェルあたり蛋白量5μgとなるミクロソーム画分をプレートに添加し、ジメチルスルフォキシドに溶解した被検化合物(ステレニンA 、ステレニンB 、ステレニンC及びステレニンD のいずれか1種類)、を含む溶液を終濃度0.1%となるよう加えて、室温で15分間プレインキュベートした。プレインキュベーション終了後、終濃度500nMとなるコルチゾンを添加して反応を開始し、室温で60分間反応を行った。プレートを99℃で10分間熱して反応を止め、生成したコルチゾール量をコルチゾールプロトタイプキット(CISバイオインターナショナル社)を用い、添付文書に従ってDiscovery(パッカード社)にて測定した。同様に処理したコントロール細胞由来のミクロソーム画分では見られない、11β−HSD1発現細胞依存的なコルチゾール生成に対し、ステレニンAは10μMで86%の阻害を、ステレニンBは10μMで61%の阻害を、ステレニンCは10μMで93%の阻害を、ステレニンDは10μMで83%の阻害を各々示した。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明により、11β−HSD1阻害活性を有する化合物、ステレニンA、ステレニンB、ステレニンC及びステレニンDが提供された。さらに、本発明により、該化合物を製造する微生物、及び該微生物を用いた該化合物の製造方法が提供された。本発明の化合物は、糖尿病、肥満、高脂血症、高血圧症からなる群から選択される少なくとも一つの疾患及び/又はこれらの病態を複合的に発症したメタボリックシンドロームの予防および/又は治療に有用である。





【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記、一般式 (I):
【化1】



[式中、Rは
−CHCHOH
−CH(COH)CHCHCO
−H、または、
−CHCOOH]で表わされる化合物またはその塩。
【請求項2】
下記の物理化学的性状を有する化合物又はその塩
1)物質の性状:無色酸性脂溶性物質
2)溶解性:メタノール、ジメチルスルホキシド、酢酸エチルに可溶
3)分子式:C2325NO
4)分子量:427(TOFマススペクトル法により測定)
5)高分解能TOFマススペクトル法により測定した精密質量、[M+Na]は次に示す通りである。
実測値:450.1526
計算値:450.1529
6)紫外部吸収スペクトル:
メタノール中で測定した紫外部吸収スペクトルは、次に示す極大吸収を示す:
212nm(ε58600), 265nm(ε24400), 297nm(ε10900)
7)赤外吸収スペクトル:
KBr pellet法で測定した赤外吸収スペクトルは以下に示す極大吸収を示す。
3357,3231,2973,2931,1662,1623,1602,1456,1376,1311,1255,1199,1164,1084,1064,1035,990cm−1
8)H−核磁気共鳴スペクトル:
重メタノール中、その残存プロトンシグナル(3.31ppm)を内部標準として測定したH−核磁気共鳴スペクトルは、以下に示すとおりである。
1.50(3H,s),1.56(3H,s),2.60(3H,s),3.37(2H,m),3.75(2H,t,J=5.1Hz),3.83(2H,t,J=5.1Hz),4.58(2H,s),5.03(1H,m),6.23(1H,br, s),6.31(1H,br, s),7.08(1H,s)ppm
9)13C−核磁気共鳴スペクトル:
重メタノール中、重メタノール(49.15ppm)を内部標準として測定した13C−核磁気共鳴スペクトルは、以下に示すとおりである。
17.9(q),24.7(q),24.7(t),25.9(q),46.5(t),50.9(t),61.3(t),102.0(d),105.3(s),110.1(d),113.1(d),122.7(d),127.1(s),127.2(s),132.7(s),133.3(s),145.1(s),151.3(s),152.2(s),164.9(s),167.1(s),170.7(s),171.8(s)ppm。
【請求項3】
下記の物理化学的性状を有する化合物又はその塩
1)物質の性状:無色酸性脂溶性物質
2)溶解性:メタノール、ジメチルスルホキシド、酢酸エチルに可溶
3)分子式:C2627NO10
4)分子量:513(TOFマススペクトル法により測定)
5)高分解能TOFマススペクトル法により測定した精密質量、[M+H]は次に示す通りである。
実測値:514.1697
計算値:514.1713
6)紫外部吸収スペクトル:
メタノール中で測定した紫外部吸収スペクトルは、次に示す極大吸収を示す:
214nm(ε58100), 265nm(ε26500), 296nm(ε11100)
7)赤外吸収スペクトル:
KBr pellet法で測定した赤外吸収スペクトルは以下に示す極大吸収を示す。
3348,3264,2973,2928,2858,1718,1662,1624,1603,1450,1413,1377,1310,1254,1198,1162,1087,1063,1035,991cm−1
8)H−核磁気共鳴スペクトル:
重メタノール中、その残存プロトンシグナル(3.31ppm)を内部標準として測定したH−核磁気共鳴スペクトルは、以下に示すとおりである。
1.52(3H,s),1.57(3H,s),2.25(1H,m),2.40(2H,m),2.49(1H,m),2.60(3H,s),3.39(2H,m),4.46(1H,d,J=16.9Hz),4.58(1H,d,J=16.9Hz),4.99(1H,m),5.04(1H,m),6.24(1H,br, s),6.31(1H,br, s),7.09(1H,s)ppm
9)13C−核磁気共鳴スペクトル:
重メタノール中、重メタノール(49.15ppm)を内部標準として測定した13C−核磁気共鳴スペクトルは、以下に示すとおりである。
17.9(q),24.7(q),24.8(t),25.9(q),26.3(t),31.9(t),46.9(t),55.5(d),102.0(d),105.3(s),110.4(d),113.1(d),122.7(d),127.3(s),127.5(s),132.0(s),133.3(s),145.1(s),151.4(s),152.4(s),164.9(s),167.1(s),171.3(s),171.8(s),173.9(s),176.3(s)ppm。
【請求項4】
下記の物理化学的性状を有する化合物又はその塩
1)物質の性状:無色酸性脂溶性物質
2)溶解性:メタノール、ジメチルスルホキシド、酢酸エチルに可溶
3)分子式:C2121NO
4)分子量:383(TOFマススペクトル法により測定)
5)高分解能TOFマススペクトル法により測定した精密質量、[M+Na]は次に示す通りである。
実測値:406.1273
計算値:406.1267
6)紫外部吸収スペクトル:
メタノール中で測定した紫外部吸収スペクトルは、次に示す極大吸収を示す:
213nm(ε66700), 268nm(ε23000), 297nm(ε12000)
7)赤外吸収スペクトル:
KBr pellet法で測定した赤外吸収スペクトルは以下に示す極大吸収を示す。
3409,3267,2974,2931,1669,1653,1623,1599,1504,1446,1413,1374,1349,1313,1255,1193,1173,1161,1100,1063,1038,998,989cm−1
8)H−核磁気共鳴スペクトル:
重メタノール中、その残存プロトンシグナル(3.31ppm)を内部標準として測定したH−核磁気共鳴スペクトルは、以下に示すとおりである。
1.50(3H,s),1.57(3H,s),2.60(3H,s),3.38(2H,m),4.40(2H,s),5.03(1H,m),6.22(1H,br,s),6.30(1H,br,s),7.08(1H,s)ppm
9)13C−核磁気共鳴スペクトル:
重メタノール中、重メタノール(49.15ppm)を内部標準として測定した13C−核磁気共鳴スペクトルは、以下に示すとおりである。
17.9(q),24.7(q),24.7(t),25.9(q),45.0(t),102.0(d),105.3(s),110.2(d),113.1(d),122.7(d),127.3(s),129.3(s),132.5(s),133.3(s),145.1(s),151.4(s),152.6(s),164.9(s),167.1(s),171.8(s),173.4(s)ppm。
【請求項5】
下記の物理化学的性状を有する化合物又はその塩
1)物質の性状:無色酸性脂溶性物質
2)溶解性:メタノール、ジメチルスルホキシド、酢酸エチルに可溶
3)分子式:C2323NO
4)分子量:441(TOFマススペクトル法により測定)
5)高分解能TOFマススペクトル法により測定した精密質量、[M+H]は次に示す通りである。
実測値:442.1495
計算値:442.1502
6)紫外部吸収スペクトル:
メタノール中で測定した紫外部吸収スペクトルは、次に示す極大吸収を示す:
213nm(ε96200), 265nm(ε41300), 297nm(ε17500)
7)赤外吸収スペクトル:
KBr pellet法で測定した赤外吸収スペクトルは以下に示す極大吸収を示す。
3366,3245,2973,2929,2733,1662,1624,1601,1458,1448,1401,1377,1311,1254,1201,1165,1103,1081,1035,995,946cm−1
8)H−核磁気共鳴スペクトル:
重メタノール中、その残存プロトンシグナル(3.31ppm)を内部標準として測定したH−核磁気共鳴スペクトルは、以下に示すとおりである。
1.50(3H,s),1.57(3H,s),2.61(3H,s),3.39(2H,m),4.38(2H,s),4.54(2H,s),5.04(1H,m),6.23(1H,br,s),6.30(1H,br,s),7.08(1H,s)ppm
9)13C−核磁気共鳴スペクトル:
重メタノール中、重メタノール(49.15ppm)を内部標準として測定した13C−核磁気共鳴スペクトルは、以下に示すとおりである。
17.9(q),24.7(q),24.8(t),25.9(q),45.1(t),50.3(t),102.0(d),105.3(s),110.4(d),113.1(d),122.7(d),127.3(s),127.5(s),132.1(s),133.3(s),145.1(s),151.4(s),152.4(s),164.9(s),167.1(s),170.8(s),171.8(s),172.8ppm。
【請求項6】
ステレウム(Stereum)属に属する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の化合物の生産菌を培養し、その培養物より請求項1乃至5のいずれか1項に記載の化合物を採取することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の化合物の製造方法。
【請求項7】
ステレウム エスピー(Stereum sp.)SANK21205株(FERM BP−10465)または、ステレウム エスピー(Stereum sp.)SANK21105株(FERM BP−10464)を培養し、その培養物より請求項1乃至5のいずれか1項に記載の化合物を採取することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の化合物の製造方法。
【請求項8】
ステレウム(Stereum)属に属し、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の化合物を生産することを特徴とする微生物。
【請求項9】
ステレウム エスピー(Stereum sp.)SANK21205株(FERM BP−10465)。
【請求項10】
ステレウム エスピー(Stereum sp.)SANK21105株(FERM BP−10464)。
【請求項11】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の化合物またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬組成物。
【請求項12】
糖尿病、肥満、高脂血症、高血圧症及びメタボリックシンドロームからなる群から選択される少なくとも一つの疾患の治療及び/又は予防薬である、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の化合物もしくはその塩を含有してなる11β−hydroxysteroid dehydrogenase type1(11β−HSD1)阻害剤。

【公開番号】特開2007−291075(P2007−291075A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−69104(P2007−69104)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000001856)三共株式会社 (98)
【Fターム(参考)】