説明

新規多糖およびオリゴ糖

【課題】種々の増殖因子との結合作用、神経突起伸長促進作用を有する、多糖およびオリゴ糖、ならびにそれらを含む神経性疾患治療用組成物、炎症性疾患治療用組成物または創傷治療用組成物の提供。
【解決手段】コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖、コンドロイチン硫酸Cならびにそれらに由来するオリゴ糖。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規多糖およびオリゴ糖、特にサメ由来の多糖およびオリゴ糖に関する。
【背景技術】
【0002】
動物組織にはグリコサミノグリカンと呼ばれる一群の硫酸化糖鎖が存在しており、タンパク質に共有結合したプロテオグリカン分子として存在し、細胞の増殖および分化、組織の形態形成などに必須の役割を演じている(非特許文献1〜4を参照)。
【0003】
グリコサミノグリカンの中で、コンドロイチン硫酸はD-グルクロン酸とN-アセチル-D-ガラクトサミンの2糖と硫酸残基で構成されている。なお、コンドロイチン硫酸は硫酸基の結合位置によって、A、C、D、E、Kなどのタイプに分類されている。コンドロイチン硫酸BはD-グルクロン酸の代わりにL-イズロン酸が構成糖であり、デルマタン硫酸と呼ばれている。
【0004】
コンドロイチン硫酸とデルマタン硫酸には、異なるパターンの硫酸化を受けた二糖ユニットで構築される多数の重複配列が含まれ、ヘパラン硫酸に匹敵する巨大な構造上の多様性を示す。
【0005】
本発明者は、神経発達において種々の多硫酸化コンドロイチン硫酸およびデルマタン硫酸鎖が関与していることの解明を手がけてきた。そして、さまざまな生体機能を有するコンドロイチン硫酸およびデルマタン硫酸における、多硫酸化された二糖ユニットである「D」ユニット[ GlcUA(2S)-GalNAc(6S)]、「iD」ユニット[ IdoUA(2S)-GalNAc(6S)]、「E」ユニット[ GlcUA-GalNAc(4S,6S)]と「iE」ユニット[ IdoUA-GalNAc(4S,6S)]の重要性に注目した(ここで、IdoUAはL-イズロン酸を、GlcUAはD-グルクロン酸を、GalNAcはN-アセチル-D-ガラクトサミンを表す。また2S、4S、6Sは硫酸基の結合部位がC-2位、C-4位、C-6位に結合していることを表す)。
【0006】
神経回路の形成過程において、各神経細胞は特徴的な形態を発達させると共に、その軸索を特異的な経路に沿って伸長させることにより、正しい標的細胞を見出し、シナプスを形成する。これまで多くの研究者が、発達期脳組織をコンドロイチナーゼABCで処理し、組織中に含まれるコンドロイチン硫酸を分解除去すると、神経細胞の形態形成および軸索走行に大きな異常が生じることを見出している。このような観察から、コンドロイチン硫酸は、神経突起の軸索誘導に関与する、あるいは神経細胞の形態分化に関与すると考えられてきた。
【0007】
本発明者は、マウス16日目胚より調製した海馬神経細胞を、各種コンドロイチン硫酸(デルマタン硫酸)標品を塗布した基質上で培養することにより、特定の構造を有する糖鎖が神経突起伸長促進作用を示すことを見出した。なかでもDまたはiDユニットを多く含むものは樹状突起様の突起を伸展させ、EまたはiEユニットに富むものは、長い軸索様の突起を伸長させることを見出した(特許文献1ならびに非特許文献5および6を参照)。
【0008】
このような、多硫酸化されたコンドロイチン硫酸およびデルマタン硫酸は、多くのヘパリン結合性成長因子と結合することが知られており、これらの情報伝達が海馬神経細胞の形態形成に関与することが示唆されている。
【0009】
以上のような事実から、神経性疾患の治療薬としての使用に有用な、ユニークな構造と顕著な活性を有するグリコサミノグリカンの供給源を探索することが期待されている。海洋生物、例えばサメなどの皮から、ムコ多糖が精製されたことは既に報告されている(非特許文献7を参照)。
【0010】
【特許文献1】国際公開第WO2005/103089号国際公開パンフレット
【非特許文献1】Lewandowska, K., Choi, H. U., Rosenberg, L. C., Zardi, L., and Culp, L. A. (1987) J. Cell Biol. 105, 1443-1454
【非特許文献2】Yamaguchi, Y., Mann, D. M., and Ruoslahti, E. (1990) Nature, 346, 281-284
【非特許文献3】Lyon, M., Deakin, J. A., Rahmoune, H., Fernig, D. G., Nakamura, T., and Gallagher, J. T. (1998) J. Biol. Chem. 273, 271-278
【非特許文献4】Trowbridge, J. M., and Gallo, R. L. (2002) Glycobiology 12, 117R-125R
【非特許文献5】Hikino, M., Mikami, T., Faissner, A., Vilela-Silva, A. C., Pavao, M. S., and Sugahara, K. (2003) J. Biol. Chem. 278, 43744-43754
【非特許文献6】Sugahara, K and Yamada, S., Trends in Glycoscinence and Glycotechnology vol. 12 No.67 pp.321-349
【非特許文献7】Seno, N. and Meyer, K., Biochim. Biophys. Acta. 78 (1963) 258-264
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
種々の増殖因子との結合作用、神経突起伸長促進作用を有する、多糖およびオリゴ糖を提供し、さらに神経性疾患治療用組成物、炎症性疾患治療用組成物または創傷治療用組成物を提供することが、本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は多糖およびオリゴ糖画分を、サメの一部の組織より分離・精製し、該画分が、種々の増殖因子と結合すること、さらに神経突起伸長促進作用および抗凝血作用を有していることを見出し、さらに神経性疾患治療用組成物、炎症性疾患治療用組成物および創傷治療用組成物としての効果があることを見出し、本発明を完成させるに至った。したがって、本発明は以下の態様:
1.コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド由来のオリゴ糖であり、硫酸化六糖構造を有し、コンドロイチナーゼAC-Iに耐性であるコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖由来のオリゴ糖、
2.サメ皮から抽出されたコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド由来である、上記1記載のオリゴ糖
3.プレイオトロフィンに結合し、神経突起伸張促進作用を有する上記1または2に記載のコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖由来のオリゴ糖、
4.ΔHexUAα1-3GalNAc(4S)β1-4IdoUA(2S)α1-3GalNAc(4S)β1-4IdoUA(2S)α1-3GalNAc(4S)で表わされるコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖由来のオリゴ糖、
5.ΔHexUAα1-3GalNAc(4S)β1-4IdoUA(2S)α1-3GalNAc(4S)β1-4IdoUA(2S)α1-3GalNAc(4S)で表わされる構造を含むコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖、
6.コンドロイチン硫酸C由来のオリゴ糖であり、硫酸化六糖構造を有し、コンドロイチナーゼAC-Iに耐性であるコンドロイチン硫酸C由来のオリゴ糖、
7.サメ軟骨から抽出されたコンドロイチン硫酸C由来である、上記6記載のオリゴ糖、
8.肝細胞増殖因子、ミッドカイン、プレイオトロピンおよびRANTESに結合する上記6または7に記載のコンドロイチン硫酸C由来のオリゴ糖、
9.ΔHexUAα1-3GalNAc(4S)β1-4GlcUAβ1-3GalNAc(4S)β1-4GlcUA(2S)β1-3GalNAc(6S)(ΔA-A-D)、ΔHexUAα1-3GalNAc(6S)β1-4GlcUA(2S)β1-3GalNAc(6S)β1-4GlcUAβ1-3GalNAc(6S) (ΔC-D-C)、ΔHexUAα1-3GalNAc(4S)β1-4GlcUA(2S)β1-3GalNAc(6S)β1-4GlcUAβ1-3GalNAc(4S) (ΔA-D-A)、ΔHexUAα1-3GalNAc(4S)β1-4GlcUA(2S)β1-3GalNAc(6S)β1-4GlcUA(2S)β1-3GalNAc(6S) (ΔA-D-D)、ΔHexUAα1-3GalNAc(6S)β1-4GlcUA(2S)β1-3GalNAc(6S)β1-4GlcUA(2S)β1-3GalNAc(6S) (ΔC-D-D)、ΔHexUAα1-3GalNAc(4S)β1-4GlcUA(2S)β1-3GalNAc(6S)β1-4GlcUAβ1-3GalNAc(6S) (ΔA-D-C)、ΔHexUAα1-3GalNAc(4S,6S)β1-4GlcUAβ1-3GalNAc(4S)β1-4GlcUA(2S)β1-3GalNAc(6S) (ΔE-A-D)、ΔHexUA(2S)α1-3GalNAc(6S)β1-4GlcUA(2S)β1-3GalNAc(6S)β1-4GlcUAβ1-3GalNAc(6S) (ΔD-D-C)、ΔHexUAα1-3GalNAc(4S,6S)β1-4GlcUA(2S)β1-3GalNAc(6S)β1-4GlcUAβ1-3GalNAc(6S) (ΔE-D-C)、ΔHexUAα1-3GalNAc(6S)β1-4GlcUAβ1-3GalNAc(4S)β1-4GlcUA(2S)β1-3GalNAc(6S) (ΔC-A-D)、ΔHexUAα1-3GalNAc(4S)β1-4GlcUAβ1-3GalNAc(4S,6S)β1-4GlcUA(2S)β1-3GalNAc(6S) (ΔA-E-D)、ΔHexUAα1-3GalNAc(4S)β1-4GlcUA(2S)β1-3GalNAc(4S)β1-4GlcUA(2S)β1-3GalNAc(6S) (ΔA-B-D)、ΔHexUA(2S)α1-3GalNAc(6S)β1-4GlcUA(2S)β1-3GalNAc(6S)β1-4GlcUA(2S)β1-3GalNAc(6S) (ΔD-D-D)、ΔHexUAα1-3GalNAc(4S,6S)β1-4GlcUA(2S)β1-3GalNAc(6S)β1-4GlcUA(2S)β1-3GalNAc(6S) (ΔE-D-D)、ならびにΔHexUAα1-3GalNAc(4S)β1-4GlcUA(2S)β1-3GalNAc(6S)β1-4GlcUA(2S)β1-3GalNAc(4S,6S) (ΔA-D-T)もしくはΔHexUA(2S)α1-3GalNAc(6S)β1-4GlcUAβ1-3GalNAc(4S)β1-4GlcUA(2S)β1-3GalNAc(4S,6S) (ΔD-A-T)からなる群から選択される構造を有する、コンドロイチン硫酸C由来のオリゴ糖、
10.上記9記載の構造を含むコンドロイチン硫酸C由来のオリゴ糖の構造を含むコンドロイチン硫酸C、
11.Δ4,5HexUAα1-3GalNAc(ΔO)、GlcUAβ1-3GalNAc(O)、Δ4,5HexUAα1-3GalNAc(4S)(ΔA), GlcUAβ1-3GalNAc(4S)(A)、Δ4,5HexUAα1-3GalNAc(6S)(ΔC)、GlcUAβ1-3GalNAc(6S)(C)、IdoUAα1-3GalNAc(6S)(iC)、Δ4,5HexUA(2S)α1-3GalNAc(4S)(ΔB)、GlcUA(2S)β1-3GalNAc(4S)(B)、IdoUA(2S)α1-3GalNAc(4S)(iB)、Δ4,5HexUA(2S)α1-3GalNAc(6S)(ΔD)、GlcUA(2S)β1-3GalNAc(6S)(D)、IdoUA(2S)α1-3GalNAc(6S)(iD)、Δ4,5HexUAα1-3GalNAc(4S,6S)(ΔE)、GlcUAβ1-3GalNAc(4S,6S)(E)、IdoUAα1-3GalNAc(4S,6S)(iE)、Δ4,5HexUA(2S)α1-3GalNAc(4S,6S)(ΔT)およびGlcUA(2S)β1-3GalNAc(4S,6S)(T)からなる群から選択される少なくともひとつのユニットを含むコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖、
12.サメ肝臓由来である上記11記載のコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖、
13.繊維芽細胞増殖因子-2、繊維芽細胞増殖因子-7、ヘパリン結合性上皮細胞増殖因子、血管内皮増殖因子、肝細胞増殖因子、ミッドカインおよびプレイオトロフィンに結合し、神経突起伸張促進作用を有する上記11または12に記載のコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖、
14.上記1〜4のいずれかに記載のオリゴ糖、上記5に記載のコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖、上記6〜9のいずれかに記載のオリゴ糖、上記10に記載のコンドロイチン硫酸C、および上記11〜13のいずれかに記載のコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖からなる群から選択される少なくとも1つのオリゴ糖、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖またはコンドロイチン硫酸Cを活性成分として含む、成長因子またはサイトカイン結合剤、
15.上記1〜4のいずれかに記載のオリゴ糖、上記5に記載のコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖、上記6〜9のいずれかに記載のオリゴ糖、上記10に記載のコンドロイチン硫酸C、および上記11〜13のいずれかに記載のコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖からなる群から選択される少なくとも1つのオリゴ糖、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖またはコンドロイチン硫酸Cを活性成分として含む、成長因子またはサイトカイン活性促進剤、
16.上記1〜4のいずれかに記載のオリゴ糖、上記5に記載のコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖、上記6〜9のいずれかに記載のオリゴ糖、上記10に記載のコンドロイチン硫酸C、および上記11〜13のいずれかに記載のコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖からなる群から選択される少なくとも1つのオリゴ糖、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖またはコンドロイチン硫酸Cを活性成分として含む、神経突起伸長促進剤、
17.上記1〜4のいずれかに記載のオリゴ糖、上記5に記載のコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖、上記6〜9のいずれかに記載のオリゴ糖、上記10に記載のコンドロイチン硫酸C、および上記11〜13のいずれかに記載のコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖からなる群から選択される少なくとも1つのオリゴ糖、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖またはコンドロイチン硫酸Cを活性成分として含む、医薬組成物、
18.上記1〜4のいずれかに記載のオリゴ糖、上記5に記載のコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖、上記6〜9のいずれかに記載のオリゴ糖、上記10に記載のコンドロイチン硫酸C、および上記11〜13のいずれかに記載のコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖からなる群から選択される少なくとも1つのオリゴ糖、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖またはコンドロイチン硫酸Cを活性成分として含む、神経性疾患、炎症性疾患または創傷を予防または治療するための医薬組成物、ならびに
19.増殖因子結合剤、神経突起伸長促進剤、神経性疾患治療用組成物、炎症性疾患治療用組成物または創傷治療用組成物を製造するための上記1〜4のいずれかに記載のオリゴ糖、上記5に記載のコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖、上記6〜9のいずれかに記載のオリゴ糖、上記10に記載のコンドロイチン硫酸C、および上記11〜13のいずれかに記載のコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖からなる群から選択される少なくとも1つのオリゴ糖、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖またはコンドロイチン硫酸Cの使用、
20.増殖因子活性促進剤を製造するための請求項1〜4のいずれか1項に記載のオリゴ糖、請求項5に記載のコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖、請求項6〜9のいずれか1項に記載のオリゴ糖、請求項10に記載のコンドロイチン硫酸C、および請求項11〜13のいずれか1項に記載のコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖からなる群から選択される少なくとも1つのオリゴ糖、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖またはコンドロイチン硫酸Cの使用、
に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、種々の増殖因子に結合し、神経突起伸長促進作用を示す、オリゴ糖、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖またはコンドロイチン硫酸Cが提供され、さらに、それを含んだ神経性疾患治療用組成物、炎症性疾患治療用組成物または創傷治療用組成物が提供される。また、本発明のオリゴ糖、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖またはコンドロイチン硫酸Cはサメ由来であり、魚類の有用な用途が本発明により見出された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、新規オリゴ糖、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖またはコンドロイチン硫酸Cに関する。本発明において、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖およびコンドロイチン硫酸Cを多糖ということがある。本発明のオリゴ糖、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖またはコンドロイチン硫酸Cの由来動物種は限定されず、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、脊索動物、軟体動物、節足動物等の動物由来のものを含む。
【0015】
好ましくは、本発明のオリゴ糖は、サメ由来のコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖またはコンドロイチン硫酸Cから得ることができる。好ましくは、本発明のオリゴ糖はサメ皮由来のコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖またはサメ軟骨由来のコンドロイチン硫酸Cから上記方法により得ることができるオリゴ糖である。また、本発明のコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖は、好ましくはサメ肝臓から得ることができるコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖であり、本発明のコンドロイチン硫酸Cは、サメ軟骨から得ることのできるコンドロイチン硫酸Cである。
【0016】
本発明のオリゴ糖は、硫酸化オリゴ糖であり、好ましくは六糖構造を有するオリゴ糖である。本発明のオリゴ糖の一例として、ΔHeXUAα1-3GalNAc(4S)β1-4IdoUA(2S)α1-3GalNAc(4S)β1-4IdoUA(2S)α1-3GalNAc(4S)で示されるサメ皮由来のコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖から得られる硫酸化六糖が挙げられる。本発明は、このオリゴ糖構造を含むコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖をも包含する。
【0017】
また、本発明のオリゴ糖の一例として、サメ軟骨由来のコンドロイチン硫酸Cから得られる硫酸化六糖であって、A [GlcUAβ1- 3GalNAc(4S)]、B [GlcUA(2S)β1-3GalNAc(4S)]、C [GlcUAβ1-3GalNAc(6S)]、D [GlcUA(2S)β1-3GalNAc(4S)]またはE [GlcUAβ1-3GalNAc(4S,6S)]で示される2糖構造を含む硫酸化六糖が挙げられる。具体的には、上記の2糖構造A〜Eを用いて以下のように表わされる4硫化六糖、5硫化六糖または6硫化六糖が挙げられる。
ΔA-A-D、ΔC-D-C、ΔA-D-A、ΔA-D-CまたはΔC-A-Dで表わされる4硫化六糖。
ΔA-D-D、ΔC-D-D、ΔA-B-D、ΔE-A-D、ΔD-D-C、ΔE-D-CまたはΔA-E-Dで表わされる5硫化六糖。
ΔD-D-D、ΔE-D-DまたはΔA-D-TもしくはΔD-A-Tで表わされる6硫化六糖。
【0018】
本発明は、これらのオリゴ糖構造を含むコンドロイチン硫酸Cをも包含する。
本発明のオリゴ糖は、コンドロイチナーゼAC-Iで分解されないコンドロイチナーゼ耐性オリゴ糖である。
【0019】
さらに、本発明のコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖は、Δ4,5HexUAα1-3GalNAc(ΔO)、GlcUAβ1-3GalNAc(O)、Δ4,5HexUAα1-3GalNAc(4S)(ΔA), GlcUAβ1-3GalNAc(4S)(A)、Δ4,5HexUAα1-3GalNAc(6S)(ΔC)、GlcUAβ1-3GalNAc(6S)(C)、IdoUAα1-3GalNAc(6S)(iC)、Δ4,5HexUA(2S)α1-3GalNAc(4S)(ΔB)、GlcUA(2S)β1-3GalNAc(4S)(B)、IdoUA(2S)α1-3GalNAc(4S)(iB)、Δ4,5HexUA(2S)α1-3GalNAc(6S)(ΔD)、GlcUA(2S)β1-3GalNAc(6S)(D)、IdoUA(2S)α1-3GalNAc(6S)(iD)、Δ4,5HexUAα1-3GalNAc(4S,6S)(ΔE)、GlcUAβ1-3GalNAc(4S,6S)(E)、IdoUAα1-3GalNAc(4S,6S)(iE)、Δ4,5HexUA(2S)α1-3GalNAc(4S,6S)(ΔT)およびGlcUA(2S)β1-3GalNAc(4S,6S)(T)で表わされる2糖ユニット構造の少なくともひとつのユニットを含むコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖である。本発明のコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖は、上記の2糖ユニット構造の少なくとも1つを含んでいればよく、上記2糖ユニットの種類数や総数には限定はないが、好ましくはIdoUA(2S)α1-3GalNAc(4S)やGlcUA/IdoUAα1-3GalNAc(4S,6S)を多量に含む。また、本発明のコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖には、サメ肝臓よりヒアルロニダーゼ消化、亜硝酸処理、脱塩後に得られた画分を陰イオン交換樹脂に供し、NaCl含有溶出剤で溶出した場合に、約1.0MのNaClで溶出されてくる画分に含まれるコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖と約1.5MのNaClで溶出されてくる画分に含まれるコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖がある。ゲルろ過により測定した平均分子量は、前者は約75.7kDaであり、後者は約3.8〜38.9kDaである。また、本発明のコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖の2糖分子当たりの硫酸化度は、1.2未満、すなわち、好ましくは約0.70以上1.20未満、より好ましくは約0.80以上約1.20未満、特に好ましくは約0.87〜1.17の範囲内である。
【0020】
上記のサメ由来のオリゴ糖、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖またはコンドロイチン硫酸Cは、サメ魚体から分離・精製することができる。魚体は限定されないが、魚体の種類により、オリゴ糖、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖またはコンドロイチン硫酸Cの含量や分離・精製処理のし易さにより適宜選択することができる。例えばサメ皮、サメ軟骨あるいはサメ肝臓を用いることができる。試料より、アセトン抽出、プロテアーゼ処理、トリクロロ酢酸抽出により得られたグリコサミノグリカン画分を、さらにCPC(塩化セチルピリジニウム)沈殿、ヒアルロニダーゼ消化、亜硝酸処理、脱塩の工程を経て、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖画分またはコンドロイチン硫酸C画分が得られる。さらに、最終的に得られたコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖画分またはコンドロイチン硫酸C画分を陰イオン交換樹脂を用いて、樹脂に吸着したコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖またはコンドロイチン硫酸C画分をNaCl含有溶出剤により溶出することによりさらに分画することができる。本発明のコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖には、溶出に用いるNaCl濃度により異なるコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖がある。例えば、1MのNaClを含む溶出剤で溶出される画分に含まれるコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖、1.5MのNaClを含む溶出剤で溶出される画分に含まれるコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖がある。得られたコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖画分またはコンドロイチン硫酸C画分を種々コンドロイチン硫酸分解酵素、たとえばコンドロイチナーゼAC-Iにて酵素消化を行い、その消化物をヘパリン結合性増殖因子プレイオトロフィン(PTN)をカップリングさせたHiTrap N-Hydroxysuccinimide-activatedカラム(PTNカラム)にアプライし、溶出させることによって、PTN結合性の高い硫酸化六糖画分を得ることができる。
【0021】
サメ以外の動物からのコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖画分あるいはコンドロイチン硫酸C画分の分離・精製、また、それらに由来するオリゴ糖画分の分離・精製の各工程は当業者に公知の方法にて実施すればよい。例として、一連の工程の実施態様を実施例の欄に後述するが、記載の方法に限定されるわけではない。
【0022】
本発明のオリゴ糖、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖およびコンドロイチン硫酸Cは種々の増殖因子(成長因子)やサイトカイン(肝細胞増殖因子(HGF)、RANTES(Regulated upon Activation, Normal T cell Expressed and Secreted)、繊維芽細胞増殖因子(FGF)-7、FGF-1、FGF-2、ヘパリン結合性上皮細胞増殖因子(HB-EGF)、ミッドカイン(MK)、プレイオトロフィン(PTN)、血管内皮増殖因子(VEGF)等)と高い親和性をもって結合した。
【0023】
さらに、本発明のオリゴ糖、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖およびコンドロイチン硫酸Cは、神経突起伸長促進作用を示す。
【0024】
すなわち、本発明のオリゴ糖、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖およびコンドロイチン硫酸Cは内因性の上記成長因子やサイトカインと結合し、これらの成長因子やサイトカインの活性を調節し得る。すなわち、本発明のオリゴ糖、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖およびコンドロイチン硫酸Cは内因性の上記成長因子やサイトカインと結合することにより、上記成長因子やサイトカインのシグナル伝達系におけるシグナル伝達を調節することにより、成長因子やサイトカインの活性を促進する。
【0025】
かかる特性より、本発明のオリゴ糖、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖およびコンドロイチン硫酸Cは、神経性疾患、神経系発達の促進に対する治療または予防薬として有用である。さらに、炎症性疾患や創傷の治療または予防薬としても有用である。
【0026】
したがって、本発明は、上記のオリゴ糖、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖またはコンドロイチン硫酸Cを含む、成長因子またはサイトカイン(肝細胞増殖因子(HGF)、RANTES(Regulated upon Activation, Normal T cell Expressed and Secreted)、繊維芽細胞増殖因子(FGF)-7、FGF-1、FGF-2、ヘパリン結合性上皮細胞増殖因子(HB-EGF)、ミッドカイン(MK)、プレイオトロフィン(PTN)、血管内皮増殖因子(VEGF)等)結合剤、神経突起伸長促進剤、および抗凝血剤をも包含する。これらの剤の製造方法は当業者であれば、容易に想到し得る。例えば、サメ皮等の動物体の一部から上述の通りオリゴ糖、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖またはコンドロイチン硫酸Cを完全にまたは部分的に精製し、得られた画分を必要に応じて、これを適切な担体および/または溶媒と混合するとよい。
【0027】
上記オリゴ糖、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖またはコンドロイチン硫酸Cは医薬組成物として利用され得る。
【0028】
特に、上記オリゴ糖、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖およびコンドロイチン硫酸Cの神経突起伸長促進作用により、該オリゴ糖、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖またはコンドロイチン硫酸Cは神経性疾患、炎症性疾患または創傷の予防または治療用の医薬組成物となり得る。神経性疾患は、神経細胞の神経突起の変性・脱落を伴うため、該オリゴ糖、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖またはコンドロイチン硫酸Cは、これを予防し得るか、または新規神経突起の伸長を促進し得るために疾患による症状の進行もしくは症状の軽減をもたらし得る。神経性疾患として、アルツハイマーやパーキンソンなどの神経変性疾患が例示できる。
【0029】
これらの製剤または医薬組成物は、上記オリゴ糖、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖またはコンドロイチン硫酸Cを、最終的に1〜20μg/ml、好ましくは1〜10μg/ml、より好ましくは1〜5μg/mlの濃度で、作用させることが好ましい。
【0030】
例えば、上記オリゴ糖、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖もしくはコンドロイチン硫酸Cまたはそれを含む画分を、神経突起伸長促進剤として適用する場合は、サメ魚体から上述の通りオリゴ糖、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖またはコンドロイチン硫酸Cを完全にまたは部分的に精製して得られた画分を、これが神経突起の伸長を促進する必要のある対象とする個体の神経細胞と接触することが可能な方法で投与することができる。投与方法は適切な方法を当業者が選択することができるが、突起伸長が望ましい神経細胞またはその細胞の周辺に送達し得るように、局所投与するとよい。送達される際の濃度が、1〜10μg/ml、より好ましくは1〜5μg/ml、さらに好ましくは2μg/ml程度になるよう、投与することが好ましい。
【0031】
また、上記オリゴ糖、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖もしくはコンドロイチン硫酸Cまたはそれを含む画分を、成長因子またはサイトカイン結合剤として適用する場合、目的に応じて適切な量(対象とする成長因子またはサイトカインに応じて異なる)の上記オリゴ糖、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖もしくはコンドロイチン硫酸Cまたはそれを含む画分を増殖因子と混合し、接触させるとよい。
【0032】
さらにまた、上記オリゴ糖、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖もしくはコンドロイチン硫酸Cまたはそれを含む画分を、抗凝血剤として適用する場合、目的に応じて適切な量の上記オリゴ糖、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖もしくはコンドロイチン硫酸Cまたはそれを含む画分を増殖因子と混合し、接触させるとよい。
【0033】
上記オリゴ糖、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖もしくはコンドロイチン硫酸Cを、0.1μg以上、好ましくは1〜10μg/mlの濃度で血液と混合し、接触させることにより、抗凝血活性が発揮される。
【0034】
さらにまた、上記オリゴ糖、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖もしくはコンドロイチン硫酸Cまたはそれを含む画分は、内因性増殖因子、内因性サイトカインを利用できる可能性があるので、上記オリゴ糖、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖もしくはコンドロイチン硫酸Cまたはそれを含む画分のみを投与してもよい。
これらの適用の対象となるのは任意の哺乳動物であってよい。
【実施例】
【0035】
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0036】
実施例1 サメからの多糖、オリゴ糖の分離
サメ皮からの多糖、オリゴ糖の分離
サメ皮からのコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖の精製は既報(Nadini CD et al. (2005) J. Biol. Chem. 280, 4058-4069)に従って行った。すなわちヨシキリザメPrionace glaucaの皮を、アセトン抽出によって3回脱脂し、完全に風乾した。水に懸濁後、タンパク質分解酵素を失活させるために30分間、沸騰水中に保持した。
【0037】
懸濁液に、ホウ酸塩-NaOHバッファーと塩化カルシウムを、それぞれ0.1Mと10mMの終濃度となるように加え、24時間の間60℃でプロテアーゼ(アクチナーゼ:サンプルの2重量%)で消化した。そして24時間および48時間後に、新たにアクチナーゼ(サンプルの1重量%)を加え消化後、50%のトリクロロ酢酸を5%終濃度になるように加えて遠心分離し、タンパク質を沈殿させ、5%のトリクロロ酢酸で再懸濁して再度遠心分離により、それぞれの上清を回収した。
【0038】
上清中の過剰なトリクロロ酢酸はジエチルエーテル抽出によって除去し、4倍容量の5%酢酸ナトリウム含有80%エタノールを加えて一晩4℃に放置して、グリコサミノグリカンを沈殿させ、さらに遠心によって回収し乾燥させた。
【0039】
グリコサミノグリカンの精製
上記のグリコサミノグリカン含有沈殿物を、0.02MのNa2SO4で可溶化し、10%(w/v)塩化セチルピリジニウム(CPC)/0.02M Na2SO4を添加して室温で一晩放置した。得られた綿状沈降物は、100:15(v/v)2M NaCl/エタノール溶液で再溶解させて、3倍容量の99.5%のエタノールを加え再度沈殿させた。上記のステップを3度繰り返して、最後に水中で沈殿させて乾燥させた。同様のCPC沈殿工程を、臨界電解質濃度を0.5MのNaClに保ちつつ実施し、ヒアルロン酸を除去して、グリコサミノグリカンを濃縮した。
【0040】
ヒアルロニダーゼ消化
上記で得られたCPC沈殿物を0.15M NaCl含有0.02M酢酸バッファー(pH6)に溶解し、60℃で振盪しながら50TRU(turbidity reducing units)のストレプトマイセス属ヒアルロニダーゼで5時間消化した。50TRUのヒアルロニダーゼを更に添加し、12時間消化させた。セルロースアセテート膜電気泳動法によって、ヒアルロン酸の消化を確認した後に、タンパク質を除去するために消化物をTCAで処理し、エタノールを64%になるように添加してグリコサミノグリカンを沈殿させた。
【0041】
亜硝酸処理
ヒアルロニダーゼ消化後得られた沈殿物は、同量の0.5mmole硫酸と0.5mmole亜硝酸バリウムとを混合して得られる亜硝酸で40分間室温静置して処理した。新たに調製した亜硝酸のアリコートを再び添加し、更に40分間静置した。処理したサンプルを、0.5MのNa2CO3で中和して、セファデックスG-50カラム(1x56cm)で脱塩した(溶出剤:0.2Mの重炭酸アンモニウム、流速0.6ml/分)。溶出は210nmでモニターし、溶出画分を回収して、凍結乾燥しては水で戻す作業を繰り返した。
【0042】
C18および陰イオン交換カラムによるコンドロイチン硫酸C画分の精製
脱塩したグリコサミノグリカンを、Sep-Pak C18カートリッジカラムに通して、水で溶出した後、100%のメタノールで溶出した。さらに、陰イオン交換体カートリッジに通して、0.15、0.5、1.0、1.5または2.0M NaCl含有300mMリン酸塩緩衝液にてステップワイズに溶出後、PD-10カラムを用い50mMピリジン酢酸塩バッファー(pH 5.0;溶出剤)で脱塩した。
【0043】
精製の結果、NaClを含むバッファーで溶出された画分に、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖が含まれていた。
【0044】
得られたコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖をヘパリン結合性増殖因子プレイオトロフィンをカップリングさせたHiTrap N-Hydroxysuccinimide-activatedカラム(PTNカラム)にアプライした。
【0045】
溶出した4つの画分についてコンドロイチナーゼABC消化物を分析することにより二糖組成分析を行なった。結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
表1の4つの画分のうちプレイオトロフィンの結合性が中程度の画分(M-SS-CS/DS)についてコンドロイチナーゼAC-Iにて酵素消化を行いその消化物をPTNカラムにアプライした。0.15M NaCl Tris-HClバッファーで溶出されてくるコンドロイチナーゼAC-I耐性画分について糖組成分析を行った。結果を表2に示す。
【0048】
【表2】

【0049】
さらにサメ皮からコンドロイチナーゼAC-Iで消化後に精製したコンドロイチナーゼAC-I耐性の六糖画分について、その構造をanion-exchange HPLCと500-MHz H-NMR spectroscopyにより分析した。
【0050】
その結果、ΔHexUAα1-3GalNAc(4S)β1-4IdoUA(2S)α1-3GalNAc(4S)β1-4IdoUA(2S)α1- 3GalNAc(4S)からなる新規構造を持つ硫酸化六糖が見出された。
【0051】
サメ軟骨からの多糖、オリゴ糖の分離
また、同様の分離、精製、糖分析を、サメ軟骨由来コンドロイチン硫酸C画分由来オリゴ糖で実施した。
【0052】
その結果、六糖を構成する2糖はA [GlcUAβ1- 3GalNAc(4S)]、B [GlcUA(2S)β1-3GalNAc(4S)]、C [GlcUAβ1-3GalNAc(6S)]、D [GlcUA(2S)β1-3GalNAc(4S)]またはE [GlcUAβ1-3GalNAc(4S,6S)]であり、以下の構造を持つ4硫化六糖、5硫化六糖および6硫化六糖が見出された。
ΔA-A-D、ΔC-D-C、ΔA-D-A、ΔA-D-CまたはΔC-A-Dの構造を持つ4硫化六糖。
ΔA-D-D、ΔC-D-D、ΔA-B-D、ΔE-A-D、ΔD-D-C、ΔE-D-CまたはΔA-E-Dの構造を持つ5硫化六糖。
ΔD-D-D、ΔE-D-DまたはΔA-D-TもしくはΔD-A-Tの構造を持つ6硫化六糖。
【0053】
サメ肝臓からの多糖の分離
サメ肝臓より前記と同様の方法を用いて、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド画分を分離精製した(陰イオン交換樹脂を用いて分離精製する際に、1.0MNaClバッファーで溶出される画分をSL-CS/DS (1.0 M)とし、1.5MNaClバッファーで溶出される画分をSL-CS/DS (1.5 M)とした。)
【0054】
コンドロイチナーゼABC、BおよびAC-Iを用いてコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッドを酵素消化し、構成する2糖を分析した結果を表3に示す。
【0055】
【表3】

【0056】
表3の通り、IdoUA(2S)α1-3GalNAc(4S) とGlcUA/IdoUAα1-3GalNAc(4S,6S)に富んだ2糖組成を有することが示された。
【0057】
実施例2 種々の増殖因子によるオリゴ糖、多糖の相互作用分析
オリゴ糖の種々の増殖因子との相互作用
コンドロイチナーゼAC-I耐性を持つ前記サメ軟骨コンドロイチン硫酸C由来硫酸化六糖の成長因子あるいはサイトカインとの相互作用を分析した。分析には、BIAcore J systemを用いて、硫酸化六糖による成長因子またはサイトカインとCS-Dまたは豚胎児脳由来CS/DS (E-CS/DS)との結合阻害活性で評価した。コンドロイチナーゼAC-I耐性硫酸化六糖をHGF ( hepatocyte growth factor), MK, PTN, RANTES(Regulated upon Activation, Normal T cell Expressed and Secreted)と混合し37℃、30分インキュベートした。CS-DまたはE-CS/DSを結合させたセンサーチップに混合溶液を反応させ、その反応阻害率を検討した。結果を図1〜5に示す。図1〜5に示す通り、硫酸化六糖はいずれの成長因子またはサイトカインのCS-DもしくはE-CS/DSとの結合性に対しても、強い結合阻害活性を持つことが示された。
【0058】
多糖およびその酵素消化物の種々の増殖因子との相互作用
前記と同様の方法を用いて、サメ肝臓より分離精製したコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド画分の各種成長因子、サイトカイン(FGF-2, -7, HB-EGF, VEGF, HGF, PTN, MK)に対する相互作用について検討を行った。結果を図6に示す。
【0059】
図6に示す通り、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッドのコンドロイチナーゼ分解物は、各種成長因子、サイトカイン類と高い親和性を有することが示された。
【0060】
多糖およびその酵素消化物のPTNとの相互作用
サメ皮由来コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖およびそのコンドロイチナーゼAC-I消化物のPTNとの相互作用を分析した。分析には、前記と同様、BIAcore J systemを用いて、サメ皮由来コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖およびそのコンドロイチナーゼAC-I消化物によるPTNとE-CS/DSとの結合阻害活性で評価した。結果を図7に示す。図7に示す通り、サメ皮由来コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖およびそのコンドロイチナーゼAC-I消化物中の耐性オリゴ糖はPTNのE-CS/DSとの結合性に対して、強い結合阻害活性を持つことが示された。
【0061】
実施例3 コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖の神経突起成長促進作用の検討
既報(Hikinoら2003 J. Biol Chem 278, 43744-43754)の方法に従い、神経培養細胞を用いた神経突起伸長促進活性を検証した。
【0062】
即ち、標品をコンドロイチナーゼABC、AC-IまたはBで消化し、消化物を培養液に添加した。24時間37℃で培養後、細胞を固定し、特異抗体にて免疫染色を施し、顕微鏡下で神経突起の長さを計測した。結果を図8および9に示す。
【0063】
図8に示すとおり、肝臓由来コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖は高い神経突起伸長促進活性を示し、またコンドロイチナーゼ酵素消化物中の耐性オリゴ糖もその活性を維持していた。特にAC-I,II消化物は多糖と同等の活性を示していた。
【0064】
また、図9に示すとおり皮由来コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖は高い神経突起伸長促進活性を示し、また、コンドロイチナーゼAC-1消化物中の耐性オリゴ糖もその活性を維持していた。
【0065】
実施例4 SL-CS/DS(1.5M)の神経成長促進活性調節機構の検討
poly-DL-ornithine (P-ORN) (Sigma)で予めコーティングしたカバースリップをマイクロプレートに設置し、1ウエルあたり2μgとなるようにSL-CS/DS(1.5M)を固相化した。
【0066】
E16マウスから樹立した海馬神経細胞をイーグルMEMに分散させ、10,000 cells/cm2の密度でカバースリップ上に幡種し37℃ 、5% CO2下で培養した。
【0067】
中和活性測定には、抗PTN抗体、抗MK抗体、抗bFGF抗体、抗HGF抗体、抗BDNF抗体、抗GDNF抗体を用い、各々10μg/ml、10μg/ml、10μg/ml、3μg/ml、5μg/ml、5μg/mlとなるように、細胞幡種2時間後に培養液中に添加した。
【0068】
一晩培養後、4%(w/v)のパラフォルムアルデヒドを用い各カバースリップ上の細胞を室温で30分間固定した。固定された神経細胞は、ニューロフィラメントと微小管関連タンパク質に対するモノクローナル抗体を用いて免疫染色を行った。
【0069】
各カバースリップ上の免疫染色された細胞を光学顕微鏡下でデジタル撮影し、無作為に選択した細胞の最長神経突起の長さと神経突起の数を画像解析ソフトウエア(Mac SCOPE;三谷商事(株)、東京、日本)を使用して測定した。
【0070】
HGF, MK, PTN 、bFGF、BDNFおよびGDNFはオートクラインまたはパラクラインの仕組みで細胞に作用することが知られている。これら栄養因子とCS/DSの結合能の高さから、CS/DSは神経細胞自身の分泌する栄養因子と相互作用することにより、神経成長に関与することが推測されていた(J. Biol. Chem. 279, 50799-50809, 2004)。
【0071】
各種栄養因子に対する抗体を用いて中和試験を行った結果、抗HGF抗体、抗PTN抗体、抗BDNF抗体および抗GDNF抗体を添加した細胞では、抗体を添加しない群に比べてSL-CS/DS(1.5M)の神経成長促進(neurite outgrowth promotion: NOP)活性が明らかに抑制された。対照的に、抗MKポリクローナル抗体および抗bFGFモノクローナル抗体ではNOP抑制効果は認められなかった(図9A、10A)。
【0072】
さらに、HGFレセプターであるc-Met、PTNレセプターであるALKおよびBDNFレセプターであるTrkBに対する抗体を添加した場合においても抗体を添加しない群に比べてSL-CS/DS(1.5M)のNOP活性が明らかに抑制された(図10A、11A)。
【0073】
また、ブタ胚由来CS/DS鎖(E-CS/DS)についてSL-CS/DS(1.5M)と同様試験を実施した結果やはりSL-CS/DS(1.5M)と同様の結果が得られた(図10B、11B)。
【0074】
以上の結果から、SL-CS/DS(1.5M)の神経成長促進活性はHGF、PTN、BDNFおよびGDNFのシグナル伝達系を選択的に介して調節されていることが示唆された。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明のオリゴ糖の肝細胞増殖因子(HGF)と豚胎児脳由来CS/DS(E-CS/DS)との結合阻害活性を示す図である。
【図2】本発明のオリゴ糖のミッドカイン(MK)とE-CS/DSとの結合阻害活性を示す図である。
【図3】本発明のオリゴ糖のRNATESとE-CS/DSとの結合阻害活性を示す図である。
【図4】本発明のオリゴ糖のRNATESとサメ軟骨由来CS-Dとの結合阻害活性を示す図である。
【図5】本発明のオリゴ糖のプレイオトロフィン(PTN)とサメ軟骨由来CS-Dとの結合阻害活性を示す図である。
【図6】本発明の多糖およびその酵素消化物の種々の増殖因子との相互作用を示す図である。
【図7】本発明の多糖およびその酵素消化物のプレイオトロフィン(PTN)との相互作用を示す図である。
【図8】本発明の肝臓由来コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖およびその酵素消化物の神経突起成長促進作用を示す図である。
【図9】本発明の皮由来コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖およびその酵素消化物の神経突起成長促進作用を示す図である。
【図10】各種栄養因子(HGF、PTN、MK、bFGF)およびそれらのレセプターに対する抗体の神経成長促進活性に与える効果を示す図である。AはSL-CS/DSを、BはE-CS/DSを示す。
【図11】各種栄養因子(BDNF、GDNF)およびそれらのレセプターに対する抗体の神経成長促進活性に与える効果を示す図である。AはSL-CS/DSを、BはE-CS/DSを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド由来のオリゴ糖であり、硫酸化六糖構造を有し、コンドロイチナーゼAC-Iに耐性であるコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖由来のオリゴ糖。
【請求項2】
サメ皮から抽出されたコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド由来である、請求項1記載のオリゴ糖。
【請求項3】
プレイオトロフィンに結合し、神経突起伸張促進作用を有する請求項1または2に記載のコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖由来のオリゴ糖。
【請求項4】
ΔHexUAα1-3GalNAc(4S)β1-4IdoUA(2S)α1-3GalNAc(4S)β1-4IdoUA(2S)α1-3GalNAc(4S)で表わされる、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖由来のオリゴ糖。
【請求項5】
ΔHexUAα1-3GalNAc(4S)β1-4IdoUA(2S)α1-3GalNAc(4S)β1-4IdoUA(2S)α1-3GalNAc(4S)で表わされる構造を含むコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖。
【請求項6】
コンドロイチン硫酸C由来のオリゴ糖であり、硫酸化六糖構造を有し、コンドロイチナーゼAC-Iに耐性であるコンドロイチン硫酸C由来のオリゴ糖。
【請求項7】
サメ軟骨から抽出されたコンドロイチン硫酸C由来である、請求項6記載のオリゴ糖。
【請求項8】
肝細胞増殖因子、ミッドカイン、プレイオトロフィンおよびRANTESに結合する請求項6または7に記載のコンドロイチン硫酸C由来のオリゴ糖。
【請求項9】
ΔHexUAα1-3GalNAc(4S)β1-4GlcUAβ1-3GalNAc(4S)β1-4GlcUA(2S)β1-3GalNAc(6S)(ΔA-A-D)、ΔHexUAα1-3GalNAc(6S)β1-4GlcUA(2S)β1-3GalNAc(6S)β1-4GlcUAβ1-3GalNAc(6S) (ΔC-D-C)、ΔHexUAα1-3GalNAc(4S)β1-4GlcUA(2S)β1-3GalNAc(6S)β1-4GlcUAβ1-3GalNAc(4S) (ΔA-D-A)、ΔHexUAα1-3GalNAc(4S)β1-4GlcUA(2S)β1-3GalNAc(6S)β1-4GlcUA(2S)β1-3GalNAc(6S) (ΔA-D-D)、ΔHexUAα1-3GalNAc(6S)β1-4GlcUA(2S)β1-3GalNAc(6S)β1-4GlcUA(2S)β1-3GalNAc(6S) (ΔC-D-D)、ΔHexUAα1-3GalNAc(4S)β1-4GlcUA(2S)β1-3GalNAc(6S)β1-4GlcUAβ1-3GalNAc(6S) (ΔA-D-C)、ΔHexUAα1-3GalNAc(4S,6S)β1-4GlcUAβ1-3GalNAc(4S)β1-4GlcUA(2S)β1-3GalNAc(6S) (ΔE-A-D)、ΔHexUA(2S)α1-3GalNAc(6S)β1-4GlcUA(2S)β1-3GalNAc(6S)β1-4GlcUAβ1-3GalNAc(6S) (ΔD-D-C)、ΔHexUAα1-3GalNAc(4S,6S)β1-4GlcUA(2S)β1-3GalNAc(6S)β1-4GlcUAβ1-3GalNAc(6S) (ΔE-D-C)、ΔHexUAα1-3GalNAc(6S)β1-4GlcUAβ1-3GalNAc(4S)β1-4GlcUA(2S)β1-3GalNAc(6S) (ΔC-A-D)、ΔHexUAα1-3GalNAc(4S)β1-4GlcUAβ1-3GalNAc(4S,6S)β1-4GlcUA(2S)β1-3GalNAc(6S) (ΔA-E-D)、ΔHexUAα1-3GalNAc(4S)β1-4GlcUA(2S)β1-3GalNAc(4S)β1-4GlcUA(2S)β1-3GalNAc(6S) (ΔA-B-D)、ΔHexUA(2S)α1-3GalNAc(6S)β1-4GlcUA(2S)β1-3GalNAc(6S)β1-4GlcUA(2S)β1-3GalNAc(6S) (ΔD-D-D)、ΔHexUAα1-3GalNAc(4S,6S)β1-4GlcUA(2S)β1-3GalNAc(6S)β1-4GlcUA(2S)β1-3GalNAc(6S) (ΔE-D-D)、ならびにΔHexUAα1-3GalNAc(4S)β1-4GlcUA(2S)β1-3GalNAc(6S)β1-4GlcUA(2S)β1-3GalNAc(4S,6S) (ΔA-D-T)もしくはΔHexUA(2S)α1-3GalNAc(6S)β1-4GlcUAβ1-3GalNAc(4S)β1-4GlcUA(2S)β1-3GalNAc(4S,6S) (ΔD-A-T)からなる群から選択される構造を有する、コンドロイチン硫酸C由来のオリゴ糖。
【請求項10】
請求項9に記載のコンドロイチン硫酸C由来のオリゴ糖の構造を含むコンドロイチン硫酸C。
【請求項11】
Δ4,5HexUAα1-3GalNAc(ΔO)、GlcUAβ1-3GalNAc(O)、Δ4,5HexUAα1-3GalNAc(4S)(ΔA), GlcUAβ1-3GalNAc(4S)(A)、Δ4,5HexUAα1-3GalNAc(6S)(ΔC)、GlcUAβ1-3GalNAc(6S)(C)、IdoUAα1-3GalNAc(6S)(iC)、Δ4,5HexUA(2S)α1-3GalNAc(4S)(ΔB)、GlcUA(2S)β1-3GalNAc(4S)(B)、IdoUA(2S)α1-3GalNAc(4S)(iB)、Δ4,5HexUA(2S)α1-3GalNAc(6S)(ΔD)、GlcUA(2S)β1-3GalNAc(6S)(D)、IdoUA(2S)α1-3GalNAc(6S)(iD)、Δ4,5HexUAα1-3GalNAc(4S,6S)(ΔE)、GlcUAβ1-3GalNAc(4S,6S)(E)、IdoUAα1-3GalNAc(4S,6S)(iE)、Δ4,5HexUA(2S)α1-3GalNAc(4S,6S)(ΔT)およびGlcUA(2S)β1-3GalNAc(4S,6S)(T)からなる群から選択される少なくともひとつのユニットを含むコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖。
【請求項12】
サメ肝臓由来である請求項11記載のコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖。
【請求項13】
繊維芽細胞増殖因子-2、繊維芽細胞増殖因子-7、ヘパリン結合性上皮細胞増殖因子、血管内皮増殖因子、肝細胞増殖因子、ミッドカインおよびプレイオトロフィンに結合し、神経突起伸張促進作用を有する請求項11または12に記載のコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖。
【請求項14】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のオリゴ糖、請求項5に記載のコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖、請求項6〜9のいずれか1項に記載のオリゴ糖、請求項10に記載のコンドロイチン硫酸C、および請求項11〜13のいずれか1項に記載のコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖からなる群から選択される少なくとも1つのオリゴ糖、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖またはコンドロイチン硫酸Cを活性成分として含む、成長因子またはサイトカイン結合剤。
【請求項15】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のオリゴ糖、請求項5に記載のコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖、請求項6〜9のいずれか1項に記載のオリゴ糖、請求項10に記載のコンドロイチン硫酸C、および請求項11〜13のいずれか1項に記載のコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖からなる群から選択される少なくとも1つのオリゴ糖、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖またはコンドロイチン硫酸Cを活性成分として含む、成長因子またはサイトカイン活性促進剤。
【請求項16】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のオリゴ糖、請求項5に記載のコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖、請求項6〜9のいずれか1項に記載のオリゴ糖、請求項10に記載のコンドロイチン硫酸C、および請求項11〜13のいずれか1項に記載のコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖からなる群から選択される少なくとも1つのオリゴ糖、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖またはコンドロイチン硫酸Cを活性成分として含む、神経突起伸長促進剤。
【請求項17】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のオリゴ糖、請求項5に記載のコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖、請求項6〜9のいずれか1項に記載のオリゴ糖、請求項10に記載のコンドロイチン硫酸C、および請求項11〜13のいずれか1項に記載のコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖からなる群から選択される少なくとも1つのオリゴ糖、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖またはコンドロイチン硫酸Cを活性成分として含む、医薬組成物。
【請求項18】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のオリゴ糖、請求項5に記載のコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖、請求項6〜9のいずれか1項に記載のオリゴ糖、請求項10に記載のコンドロイチン硫酸C、および請求項11〜13のいずれか1項に記載のコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖からなる群から選択される少なくとも1つのオリゴ糖、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖またはコンドロイチン硫酸Cを活性成分として含む、神経性疾患、炎症性疾患または創傷を予防または治療するための医薬組成物。
【請求項19】
増殖因子結合剤、神経突起伸長促進剤、または神経性疾患治療用組成物、炎症性疾患治療用組成物または創傷治療用組成物を製造するための請求項1〜4のいずれか1項に記載のオリゴ糖、請求項5に記載のコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖、請求項6〜9のいずれか1項に記載のオリゴ糖、請求項10に記載のコンドロイチン硫酸C、および請求項11〜13のいずれか1項に記載のコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖からなる群から選択される少なくとも1つのオリゴ糖、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖またはコンドロイチン硫酸Cの使用。
【請求項20】
増殖因子活性促進剤を製造するための請求項1〜4のいずれか1項に記載のオリゴ糖、請求項5に記載のコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖、請求項6〜9のいずれか1項に記載のオリゴ糖、請求項10に記載のコンドロイチン硫酸C、および請求項11〜13のいずれか1項に記載のコンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖からなる群から選択される少なくとも1つのオリゴ糖、コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸ハイブリッド鎖またはコンドロイチン硫酸Cの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−291322(P2007−291322A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−270911(P2006−270911)
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【出願人】(000003274)マルハ株式会社 (13)
【出願人】(504395028)
【Fターム(参考)】