説明

施肥装置付作業機

【課題】肥料ホッパから繰り出す粒状体(肥料又は種子)の量が変化することなく、多量の粒状体を安定した量で散布できる苗移植機などの施肥装置付作業機を提供する。
【解決手段】肥料ホッパの下方に、繰出部61を内装する繰出しカバー59を設け、繰出しカバー59内に、繰出部61に接触して付着した夾雑物を除去する清掃ブラシ76を設け、繰出しカバー59のうち、繰出部61の非繰出し位置に清掃用のエアが通過する通風路58を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施肥又は播種装置を備えた苗移植機等の作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
施肥装置付苗移植機は苗の植付時に、施肥又は播種を行うことができる作業機であり、例えば特開平11−253011号公報又は特開2011−30432号公報記載の苗移植機が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−253011号公報
【特許文献2】特開2011−30432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1、2記載の苗移植機では、粒状体からなる肥料又は種子の施肥装置の繰出しロールにブラシを当てて、繰出しロールに付着した肥料の粒子やコーティング剤の粒子等の夾雑物を除去しているものの、ブラシの長さが一定であるため、繰出しロールの溝部、特にその奥部に付着した夾雑物にはブラシが届きにくく、繰出し溝に夾雑物が詰まって容量が変化し、設定した量の肥料や種子の撒布が妨げられる問題があった。
特に、粒状体が肥料の場合、苗に供給される肥料が不足したり、過剰になったりするため、生育不良を起こしたり、病害虫に弱い軟弱な苗になったりする問題がある。
【0005】
また、粒状体が種子の場合、播種量が少ないと台風などの強風によって成長した苗が倒れてしまい、収穫作業の際に余分な手間が増える問題があると共に、播種量が多過ぎると圃場の風通しが悪くなり、病害虫による被害が生じやすくなる問題がある。
さらに、ブラシの長さや硬度が一定であることにより、ブラシと繰出しロールに挟まれた粒状体が割れることがあり、割れた夾雑物により繰出しロールの繰出し溝の容量が変化してしまい、設定したとおりの撒布量にならない問題がある。
【0006】
特に、粒状体が種子の場合、種子が鳥等に食べられないようにしたり、播種後の生育をサポートするコーティング剤が減少したりすることにより、種子が食べられてしまう問題や、生育不良を起こす問題がある。
本発明の課題は、施肥装置から繰り出す粒状体(肥料又は種子)の量が変化することなく、多量の粒状体を安定した量で散布できる苗移植機などの施肥装置付作業機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記課題は次の解決手段で解決される。
請求項1記載の発明は、走行輪(10,11)を備えた走行車体(2)と、粒状体を投入する粒状体貯留部(60)と、粒状体貯留部(60)から粒状体を受けて所定量ずつ放出する繰出し装置(61)を備えた苗移植機において、粉流体貯留部(60)の下方に、繰出し装置(61)を内装する繰出しカバー(59)と繰出し装置(61)から繰出される粉流体を送風搬送するための送風装置(67)を設け、繰出しカバー(59)内に、繰出し装置(61)に接触して付着した夾雑物を除去する清掃部材(76)を設け、繰出しカバー(59)のうち、繰出し装置(61)の非繰出し位置に清掃用のエアが通過する通風路(58)を形成したことを特徴とする苗移植機である。
【0008】
請求項2記載の発明は、繰出し装置(60)を各条分ごとに並列配置し、前記各条の繰出し装置(60)に送風装置(67)からエアを供給する各条の通風路(58)を連結したことを特徴とする請求項1記載の苗移植機である。
【0009】
請求項3記載の発明は、送風装置(67)に分岐風路(81)を装着し、分岐風路(81)の一側に通風用流路(68)を設け、分岐風路(81)の他側に、繰出し装置(61)から放出された粒状体を下方に案内すると共に、粒状体の排出口に泥土や水が進入することを防止するエアを送る排出風路(85)を設け、分岐風路(81)の分岐部に、エアの行き先を変更する切替弁(86)を配置し、該切替弁(86)は、繰出し装置(61)の入切を操作すると連動して切り替わる構成を備えたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機である。
【0010】
請求項4記載の発明は、清掃部材(76)の先端部に、繰出し装置(61)の表面に接触する複数のブラシ体をまとめて構成し、清掃部材(76)のうち、先に繰出し装置(61)に接触する複数のブラシ体からなる第1ブラシ部(76a)と後で繰出し装置(61)に接触する複数のブラシ体からなる第2ブラシ部(76b)を設け、先に繰出し装置(61)に接触する側の第1ブラシ部(76a)と後で繰出し装置(61)に接触する側の第2ブラシ部(76b)のそれぞれの複数のブラシ体を互いに間隔を空けて並列に配置し、さらに第2ブラシ部(76b)の並列配置される複数のブラシ体を第1ブラシ部(76a)の並列配置される複数のブラシ体の間に位置するように配置したことを特徴とする請求項3記載の苗移植機である。
【0011】
請求項5記載の発明は、清掃部材(76)を繰出し装置(61)の粉粒体繰出し位置近傍に配置し、第2ブラシ部(76b)の複数のブラシ体を、第1ブラシ部(76a)の複数のブラシ体よりも硬いブラシ体で構成したことを特徴とする請求項3記載の苗移植機である。
【0012】
請求項6記載の発明は、第2ブラシ部(76b)の複数のブラシ体を、第1ブラシ部(76a)の複数のブラシ体よりも短いブラシ体で構成したことを特徴とする請求項3記載の苗移植機である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、繰出しカバー59に、繰出し装置61の非繰出し部に当たるエアを通過させる通風路58を形成したことにより、繰出し装置61に付着した夾雑物(肥料の破片や、コーティング剤の粒子など)を吹き飛ばして除去することができるので、繰出し装置61が繰り出す粒状体の量が変化することが防止され、適切な粒状体の散布作業が行える。
粒状体が肥料である場合、肥料の不足、あるいは過剰施肥を防止することができるので、苗の生育にムラが生じることが防止され、生育が良好になり、粒状体が種子である場合、播種量にバラつきが生じることを防止できるので、苗の過不足が生じにくく、病害虫や風害による被害が抑えられる。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、複数条の通風路を連結し、この通風路58へのエアを送風装置(ブロア)67から供給可能に構成したことにより、各条の繰出し装置61への送風経路を簡潔に構成することができる。これにより、各条分ごとに送風装置67やエアの供給路を形成する必要がないため、部品点数の削減や低コスト化が図られる。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、作業状態に合わせて切替弁86が操作され、エアが通風用通路(エアチャンバ)68又は排出風路(肥料回収管)85のいずれか一方に供給される構成としたことにより、繰出し装置61に付着した夾雑物の除去に必要な風量を確保することができるので、繰出し装置61が繰り出す粒状体の量が一定に保たれるため、作物の生育が安定する。
また、粒状体の排出口への泥土や水の進入を防止に必要な風量を確保することができるので、粒状体の排出口に付着した泥土や水に粒状体が貼り付き、肥料の供給量や種子の播種量が減少することが防止される。
さらに繰出し装置61の入切に合わせて切替弁86が作動する構成としたことにより、風が必要な風路方向に送られるため、上記の効果が一層向上する。
【0016】
請求項4記載の発明によれば、請求項3記載の発明の効果に加えて、先に繰出し装置61に接触する側の第1ブラシ部76aと後で繰出し装置61に接触する側の第2ブラシ部76bのそれぞれの複数のブラシ体を互いに間隔を空けて並列に配置したことにより、掻き取った夾雑物を、前記間隔を通過させて排出することができるので、清掃部材76に夾雑物が溜まり、夾雑物が除去できなくなることが防止される。
また、第2ブラシ部76bの並列配置される複数のブラシ体を第1ブラシ部76aの並列配置される複数のブラシ体の間に位置するように配置したことにより、第2ブラシ部76bに接触した夾雑物は分岐して排出されるので、いっそう夾雑物が清掃部材に接触して塊となり、清掃部材に夾雑物が溜まることを防止できる。
【0017】
請求項5記載の発明によれば、請求項3記載の発明の効果に加えて、繰出し装置61に清掃部材76の第1ブラシ部76aと第2ブラシ部76bが接触することにより、粒状体が繰出し装置61の繰出し位置に到達するまでは第1,第2ブラシ部76a,76bが粒状体の落下を規制することができるので、粒状体の繰り出しタイミングが一定に保たれ、粒状体が必要以上に拡散されて放出されることが防止される。
粒状体が肥料の場合、肥料が広域に拡散すると養分が不足して生育不良を起こす箇所が生じると共に、肥料が集中して肥料過多になり、風や病害虫に対して弱くなる箇所が生じるが、本構成では放出される肥料が収束されているので、上記の問題が解消される。
【0018】
粒状体が種子の場合、種子が広域に拡散すると苗同士のまとまりが弱く、強風に倒されやすくなる箇所が生じると共に、苗が集中してまとまり過ぎ、風通しが悪く病害虫に弱くなる箇所が生じるが、本構成では放出される種子が収束されているので、上記の問題が解消される。
後から繰出し装置61に接触する第2ブラシ部76bのブラシ体を、先に接触する第1ブラシ部76aのブラシ体よりも硬くしたことにより、繰出し装置61に粒状体を押さえつける際に粒状体が割れることを防止できるので、粒状体が無駄になることを防止できると共に、繰出し装置61の繰出し位置の直前まで粒状体を確実に保持することができるので、粒状体の拡散が防止される。
【0019】
請求項6記載の発明によれば、請求項3記載の発明の効果に加えて、繰出し装置61に後から接触する側の第2ブラシ部76bを、先に接触する側の第1ブラシ部76aよりも短いブラシ体で構成したことにより、粒状体の放出位置の近傍で粒状体が繰出し装置61に押し付けられて割れることを防止できるので、粒状体が無駄になることを防止できると共に、繰出し位置の直前まで粒状体を確実に保持することができるので、粒状体の拡散が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の乗用型苗移植機の側面図である。
【図2】図1の乗用型苗移植機の平面図である。
【図3】図1の乗用型苗移植機の整地装置の支持構造の要部背面図である。
【図4】図1の乗用型苗移植機の整地装置の駆動系統の構成図である。
【図5】図1の乗用型苗移植機の施肥装置の(a)肥料回収管部分を省略した背面図、及び(b)伝動関係を省略した背面図である。
【図6】図1の乗用型苗移植機の施肥装置の平面図である。
【図7】図1の乗用型苗移植機の施肥装置の一断面の側面図である。
【図8】図1の乗用型苗移植機の施肥装置の粉粒体繰出部の側面断面図である。
【図9】図8のS−S断面図である。
【図10】図1の乗用型苗移植機の施肥装置の肥料回収レバー及びその関連部材の側面図である。
【図11】図1の乗用型苗移植機の施肥装置の各繰出部の底部に接続した接続管を接続した清掃用のエアが通過する通風路(連結管)58を形成した場合の斜視図である。
【図12】図1の乗用型苗移植機の施肥装置の各繰出し装置の清掃用ブラシの配置状態を示す平面図である。
【図13】図8の粉粒体繰出部に種籾取出シュートを取り付けた一部側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を実施例は施肥又は播種を行うことができる作業機の例として施肥装置付乗用型苗移植機を図面と共に説明する。
図1及び図2は本発明を用いた一実施例である乗用型苗移植機の側面図と平面図である。この乗用型苗移植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4が昇降可能に装着されている。
【0022】
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10,10及び左右一対の後輪11,11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13,13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右前輪10,10が各々取り付けられている。
【0023】
また、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
さらに、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸(図示せず)を支点にして後輪ギアケース18,18がローリング自在に支持され、その後輪ギアケース18,18から外向きに突出する後輪車軸11aに後輪11,11が取り付けられている。
【0024】
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、静油圧式無段変速装置(HST)23などを介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。
そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが後輪ギアケース18,18に伝達されて後輪11,11を駆動する。また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース(図示せず)に伝達され、それから植付伝動軸26によって苗植付部4へ伝動される。
【0025】
エンジン20の上部に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10,10を操向操作するハンドル34が設けられている。フロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35は多数の穴が設けられており(図2参照)、該ステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。フロアステップ35上の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ36となっている。
【0026】
また、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく予備苗載台38を設けても良い。昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これらリンク40,41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。
【0027】
そして、縦リンク43の下端部に苗植付部4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部との間に昇降用油圧シリンダ46が設けられており、該シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0028】
苗植付部4は4条植の構成で、フレームを兼ねる伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分ずつ各条の苗取出口51a,…に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51a,…に供給すると苗送りベルト54,…により苗を下方に移送する苗載台51、苗取出口51a,…に供給された苗を圃場に植付ける苗植付装置52,…、次行程における機体進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ(図示せず)等を備えている。苗植付部4の下部には中央にセンターフロート55、その左右両側にサイドフロート56,56がそれぞれ設けられている。
【0029】
これらフロート55,56,56を、圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55,56,56が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52,…により苗が植付けられる。各フロート55,56,56は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動がフロート傾斜角センサ(図示せず)により検出され、その検出結果に応じ前記昇降用油圧シリンダ46を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0030】
苗植付部4には整地装置の一例であるロータ27(27a,27b)が取り付けられている。また、苗載台51は苗植付部4の全体を支持する左右方向と上下方向に幅一杯の矩形の支持枠体65の支持ローラ65a(図1)をレールとして左右方向にスライドする構成である。
【0031】
施肥装置5は、肥料ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61,…によって一定量ずつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62,…でフロート55,56,56の左右両側に取り付けた施肥ガイド(図示せず),…まで導き、施肥ガイド,…の前側に設けた作溝体64(図1),…によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥溝内に落とし込むようになっている。ブロア用電動モータ53で駆動するブロア67で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバ68を経由して施肥ホース62,…に吹き込まれ、施肥ホース62,…内の肥料を風圧で強制的に搬送するようになっている。
【0032】
整地ロータ27a,27bの支持構造を図3(背面図)に示し、整地ロータ27a,27bの駆動部の概略構成図を図4に示す。
ロータ駆動部には、苗載台51の前記支持枠体65の両側辺部材65bに上端を回動自在に支持された梁部材106と該梁部材106の両端に固着した支持アーム107と該支持アーム107に回動自在に取り付けられたロータ支持フレーム108が設けられている。また、ロータ昇降用モータ63(図3)が梁部材106の軸方向延長線上に設けられている。ロータ支持フレーム108の下端には整地ロータ27(27a,27b)の駆動軸105(105a,105b)が取り付けられている。また、該ロータ支持フレーム108の下端部近くは伝動ケース50に回動自在に取り付けられた連結部材111(図1)に連結している。
【0033】
なお、畦クラッチレバー110L,110C,110Rの操作により、該畦クラッチレバー110L,110C,110Rのセンサ110aが作動すると、制御部100がロータ昇降用モータ63を駆動させ、支持アーム107を介してロータ支持フレーム108を上下動させる。また、図3に示すロータ昇降用モータ63に代えて支持アーム107に支持されたロータ高さ調節レバー109(図1)の操作により支持アーム107を前後方向に回動させてロータ支持フレーム108を上下動させても良い。
【0034】
苗植付部4を昇降自在にするリンク機構3をリンクベースフレーム42に装着するが、リンク機構3のリンクベースフレーム42への取付支点を後輪11の車軸11aよりも機体前側に配置した。これにより、苗植付部4を上昇させると苗植付部4が後退しつつ上昇する構成となるため、苗植付部4の昇降により整地伝動軸112a,112bの連結状態または非連結状態が切り替わるため、苗植付部4が所定高さ以下になると整地装置27a,27bが作動する構成とすることができるので、旋回の開始及び終了時、苗植付作業の開始及び終了時等に整地装置27a,27bの操作が不要となり、作業能率と操作性が従来より向上する。
【0035】
図4に示すように、フロート55,56との配置位置の関係でセンターフロート55の前方にある中央整地ロータ27bは、サイドフロート56の前方にある整地ロータ27aより前方に配置されている。そのため、左側の整地ロータ27aの駆動軸105aへの動力は後輪ギアケース18内のギア(図示せず)から整地伝動シャフト112等を介して伝達される。また、整地ロータ27bのロータ駆動軸105bには左側の整地ロータ27aの駆動軸105aの車体内側の端部から動力が伝達され、右側の駆動軸105aにはロータ伝動軸ケース113内の駆動チェーン(図示せず)を介して動力伝達される。
また、整地ロータ27bはロータ伝動軸ケース113を橋渡しする補強部材114を介して梁部材106に上端部が支持された一対のリンク部材116,117によりスプリング118を介して吊り下げられている。
【0036】
図3に示すように、該一対のリンク部材116,117は梁部材106に一端部が固着支持された第一リンク部材116と該第一リンク116の他端部に一端が回動自在に連結した第二リンク部材117からなり、該第二リンク部材117の他端部と両方のロータ伝動軸ケース113を橋渡しする補強部材114に支持された取付片114a(図4参照)との間に前記スプリング118が接続している。
【0037】
ロータ昇降用モータ63の作動により、第一リンク部材116を上方へ回動する向きに梁部材106が回動し、該梁部材106の回動に伴って、ロータ支持フレーム108を介して第一リンク部材116と第二リンク部材117とスプリング118に吊り下げられた整地ロータ27a,27bを上方に上げることができる。整地ロータ27a,27bを上方に移動させると、ロータ駆動軸105bを介して一対の整地ロータ27b,27bも同時に上方に移動する。
【0038】
本実施例では、標準位置で圃場面より40mmの高さにある整地ロータ27a,27bをロータ昇降用モータ63の回動で標準位置より最大15mm高くでき、またロータ昇降用モータ63の逆向きの回動で標準位置より最大15mm低くできるように設定している。
【0039】
図3に示すように、上記整地ロータ27a,27bをロータ昇降用モータ63で上下動ができる構成にしているので、整地ロータ27a,27bで畦際を整地しながら苗の植付を行う場合に、梁部材106の軸を回動可能にした整地ロータ27a,27bの作業状態から整地ロータ27a,27bの収納状態への切替えを苗植付部4の上昇に連動させてロータ昇降用モータ63で自動的に行う構成とすることができる。
苗植付部4の上昇時に整地ロータ27bが昇降リンク装置3の下リンク41,41から逃げるように苗植付部4に対してスプリング118などを介して支持されているので、整地ロータ27aが融通性をもって苗植付部4に支持される。
【0040】
以下、図5〜図12に示す施肥装置本体部の各部の構成について説明する。
粉粒体ホッパ60は各条共用で、上部に開閉可能な蓋60aが取り付けられている。粉粒体ホッパ60の下部は施肥条数分に分岐して漏斗状になっており、その下部が繰出部61,…の上端に接続されている。粉粒体ホッパ60は、左右方向に長い施肥フレーム70に支持された左右2箇所の回動アーム(図示せず)に取り付けられていて、この回動アームの下端部を支点に後方に回動させて繰出部61,…から分離させられるようになっている。回動アームは外側から1条目の繰出部と2条目の繰出部との間に配置されている(左右対称位置に2つ設けられている)。粉粒体ホッパ60の下部を肥料繰出部61,…の上端に接続した通常位置では、係止具72により粉粒体ホッパ60を固定しておく。
【0041】
繰出部61は、粉粒体ホッパ60内の肥料を下方に繰り出す2個の繰出ロール73A、73Bを内蔵している。これらの繰出ロール73A,73Bは、外周部に溝状の凹部74,…が形成された回転体で、左右方向に設けた共通の繰出軸75の角軸部75a(図示例は四角軸)にそれぞれ一体回転するように嵌合している。繰出ロール73A,73Bが図8の矢印方向に回転することにより、粉粒体ホッパ60から落下供給される肥料が凹部74に収容されて下方に繰り出される。両繰出ロール73A,73Bにより繰り出された肥料は、下端の繰出口61aから吐出される。
【0042】
図示例の繰出ロール73A,73Bの凹部74の数は6個であり、両者の凹部74の位相が異ならせてある。このため、両繰出ロール73A,73Bの凹部が交互に肥料を繰り出すこととなり、繰出口61aから吐出される肥料の量が時間的に均等化されている。いずれかの繰出ロール73A又は73Bを繰出軸75から外して位相を適当に変更して付け直すことにより、両繰出ロール73A,73Bの凹部の位相を等しくすることもできる。これで、圃場に点状に肥料を散布する場合に適用可能となる。
【0043】
また、繰出部61の内部には、凹部74が下方に移動する側(前側)の繰出ロール73の外周面に摺接するブラシ76が着脱自在に設けられている。このブラシ76によって繰出ロール73A,73Bの凹部74に肥料が摺り切り状態で収容され、繰出ロール73A,73Bによる肥料繰出量が一定に保たれる。
【0044】
さらに、ブラシ76の上側には、繰出ロール73A,73Bの上方に突出して粉粒体ホッパ60から繰出部61に肥料が落下供給されないようにする繰出停止シャッタ77A,77B(図9)が設けられている。繰出停止シャッタ77A,77Bは、繰出部ケース78のスライド支持部79(図8)にスライド自在に支持されていて、ケース外の前端部に形成された把手77aをつかんでスライドさせるようになっている。
【0045】
繰出部61の繰出口61aには、前後方向に連通する接続管80(図5,図11)が接続されている。そして、この接続管80の後端部に施肥ホース62(図7)が接続されている。施肥ホース62の外周螺旋溝に施肥フレーム70の下端部が係合しているので、施肥ホース62が接続管80から抜けにくい。一方、各条の接続管80の前端部はエアチャンバ68(図6,図7)の背面部に挿入連結されている。エアチャンバ68の左端部はエア切替管81を介してブロア67(図5,図6)に接続されており、該ブロア67からのエアがエアチャンバ68を経由し接続管80から施肥ホース62に吹き込まれるようになっている。なお、ブロア67は、図5,図6に仮想線で示すように、そのエア吐出口67aをエア切替管81から外して機体内方に回動収納できる構成としている。
【0046】
図11に各繰出部61の底部に接続した接続管80を接続して繰出ロール73A,73Bの最下方位置から繰出し方向下流部に位置する繰出し部ケース78の内側に清掃用のエアが通過する通風路(連結管)58を形成した斜視図を示す。
該連結管58を形成したことにより、繰出し部ケース78の内壁に付着した夾雑物(肥料の破片や、コーティング剤の粒子など)を通風で吹き飛ばして除去することができるので、繰出部61が繰り出す粒状体の量が変化することが防止され、適切な粒状体の散布作業が行える。
また、粒状体が肥料である場合、肥料の不足、あるいは過剰施肥を防止することができるので、苗の生育にムラが生じることが防止され、生育が良好になる。
【0047】
さらに上記した連結管58からの通風と清掃ブラシ76の作用により繰出部61から繰り出す粒状体が種子である場合、播種量にバラつきが生じることを防止できるので、苗の過不足が生じにくく、病害虫や風害による被害が抑えられる。これは一箇所当たりの播種苗の数が少なすぎると、強風に負けて倒れてしまい、育ちが悪くなり、コンバインでの穀稈の刈り取り作業時に手間がかかり、一方、一箇所当たりの播種苗の数が多過ぎると養分の取り合いになって全体的に生育不良になり、また風通しが悪くなるため、病気や害虫の被害を受けやすくなるためである。
【0048】
図11の斜視図に示すように繰出部61は各植付条ごとに配置されており、この複数条の繰出部61からの各施肥ホース62への接続管80を連結管58で連結し、ブロア67からエアを各接続管80に供給可能に連結する。
こうして、連結管58へのエアをブロア67から供給可能に構成したことにより、各条の繰出部61への送風経路を簡潔に構成することができ、各条にブロア67やエアの供給路を形成する必要がないため、部品点数の削減や低コスト化を図ることができる。
【0049】
図6に示すようにブロア67に分岐風路であるエア切替管81を装着し、該エア切替管81の一側にエアチャンバ(通風路)68を設け、エア切替管81の他側に、繰出部61から放出された粒状体を下方に案内すると共に、粒状体の排出口に泥土や水が進入することを防止するエアを送る肥料回収管(排出風路)85を設け、エア切替管81の分岐部に、エアの行き先を変更するエア切替シャッタ(切替弁)86を配置し、該エア切替シャッタ86は、繰出部61の入切を操作すると連動して切り替わる構成としている。
【0050】
作業状態に合わせてエア切替管81が操作され、エアがエアチャンバ68と肥料回収管85のいずれか一方の風路に供給される構成としたことにより、繰出部61に付着した夾雑物の除去に必要な風量を確保することができるので、繰出部61が繰り出す粒状体の量が一定に保たれるため、作物の生育が安定する。
【0051】
また、粒状体の排出口への泥土や水の進入を防止に必要な風量を確保することができるので、粒状体の排出口に付着した泥土や水に粒状体が貼り付き、肥料の供給量や種子の播種量が減少することが防止される。
繰出部61の入切に合わせてエア切替管85が作動する構成としたことにより、風路が必要な方向に送られるため、上記の効果が一層向上する。
【0052】
清掃用ブラシ76は、図12に示すように該ブラシ76の先端側からの平面視で少なくとも2列からなるそれぞれ複数のブラシ体を束ねた第1ブラシ部76aと第2ブラシ部76bとし、第1ブラシ部76aと第2ブラシ部76bのそれぞれの列にある複数個のブラシ体を、ロール73A,73Bの回転軸方向に互いに離して配置し、さらに先に繰出部61に接触する第1ブラシ部76aの並列配置された複数個のブラシ体は、ロール73A,73Bの回転方向に対して後方に配置される第2ブラシ部76bの並列配置される複数個のブラシ体より回転方向前方に配置される。さらに第2のブラシ部76bの並列配置される複数の各ブラシ体は、第1ブラシ部76aの並列配置される複数の各ブラシ体の間にそれぞれ位置するように配置される。
【0053】
こうして、繰出部61の回転方向に対して前後方向に配置される第1ブラシ部76aと第2ブラシ部76bの並列配置される複数のブラシ体同士をそれぞれ左右間隔を空けて配置したことにより、掻き取った夾雑物をこの左右間隔を通過させて排出することができるので、清掃用ブラシ76に夾雑物が溜まり、夾雑物が除去できなくなることが防止される。
【0054】
また、第1ブラシ部76aと第2ブラシ部76bの各ブラシ体は、ロール73A,73Bの回転軸方向に互いに離して配置され、ロール73A,73Bに第1ブラシ部76aより後から接触するように第2ブラシ部76bを配置したことにより、ロール73A,73Bの回転方向後側の第2ブラシ部76bに接触した夾雑物はロール73A,73Bの回転軸方向に分岐して排出されるので、一層、夾雑物が前記2つのブラシ部76a,76bに接触して塊となり、清掃ブラシ76に夾雑物が溜まることを防止できる。
【0055】
図12に示す第1ブラシ部76aより後からロール73A,73Bに接触する第2ブラシ部76bはロール73A,73Bから粒状体が繰出す位置(凹部74から下方に向けて落下する位置)の直前部で繰出部61(ロール73A,73B)と接触する位置に配置し、かつ先に繰出部61に接触する第1ブラシ部76aより硬いブラシ体で構成することが望ましい。
【0056】
こうして、第1ブラシ部76aと第2ブラシ部76bの複数のブラシ体が繰出ロール73A,73Bに接触することにより、粒状体の繰出し位置に到達するまでは第1ブラシ部76aと第2ブラシ部76bが粒状体の落下を規制することができるので、粒状体の繰り出しタイミングが一定に保たれ、粒状体が必要以上に拡散されて放出されることが防止される。
【0057】
また、粒状体が肥料の場合、肥料が広域に拡散すると養分が不足して生育不良を起こす箇所が生じると共に、肥料が集中して肥料過多になり、風や病害虫に対して弱くなる箇所が生じるが、本構成では放出される肥料が収束されているので、上記の問題が解消される。
【0058】
粒状体が種子の場合、種子が広域に拡散すると苗同士のまとまりが弱く、強風に倒されやすくなる箇所が生じると共に、苗が集中してまとまり過ぎ、風通しが悪く病害虫に弱くなる箇所が生じるが、本構成では放出される種子が収束されているので、上記の問題が解消される。
【0059】
また、第2ブラシ部76bを、第1ブラシ部76aよりも硬くすることにより、繰出ロール73A,73Bに粒状体を押さえつける際に粒状体が割れることを防止できるので、粒状体が無駄になることを防止できると共に、繰出し位置の直前まで粒状体を確実に保持することができるので、粒状体の拡散が防止される。
【0060】
さらに、繰出部61のロール73A,73Bに第1ブラシ部76aよりも後から接触する第2ブラシ部76bを、第1ブラシ部76aよりも短いブラシ体で構成すると、繰出部61の繰出し位置(放出位置)の近傍で粒状体が繰出ロール73A,73Bに押し付けられて割れることを防止できるので、粒状体が無駄になることを防止できると共に、繰出し位置の直前まで粒状体を確実に保持することができるので、粒状体の拡散が防止される。
【0061】
エアチャンバ68は、接続管80が取り付けられたゴム管68aと、中間部分の樹脂管68bとを交互に繋ぎ合わせて構成されている。この構成とすると、エアチャンバ68を簡単に分解、組み立てできるので、繰出部61を一体的に取り外してのメンテナンスが容易である。ゴム管68aの長さを一対の繰出部の間隔よりも長くしておくと、樹脂管68bからゴム管68aを抜きやすい。
【0062】
また、繰出部ケース78の背面部には、粉粒体ホッパ60内の肥料を取り出すための肥料排出口83(図8)が形成されている。この肥料排出口83には、上端側を支点にして開閉自在な排出シャッタ84が取り付けられている。各繰出部の肥料排出口83は、繰出部61の後方に設けた左右方向に長い肥料回収管85に接続されている。肥料回収管85の左端部は、前記エア切替管81を介してブロア67に接続されている。エア切替管81は二股状の管であって、一方にエアチャンバ68が接続され、他方に肥料回収管85が接続されている。エア切替管81にはエア切替部としてのエア切替シャッタ86(図6)が設けられ、ブロア67から吹き出されるエアをエアチャンバ68側に供給する状態と肥料回収管85側に供給する状態とに切り替えられようになっている。エア切替シャッタ86はエアチャンバ68と肥料回収管85の間の前後中央部にあるので、両者へのエア供給が安定している。肥料回収管85の右端部は肥料回収口87になっている。
【0063】
肥料回収口87に肥料袋88を装着できるようにしておくと、雨の日等において回収した肥料が吸湿するおそれがなくなる。また回収肥料を地面において受けることも無くなるので、肥料が汚れない。
【0064】
図10は上記各シャッタ84,…、86の開閉機構を示す図である。肥料回収口87の近傍に肥料回収レバー90が回動自在に設けられている。この肥料回収レバー90の回動支点軸90aと同軸上に、繰出部61の前側に配置された左右方向に長いシャッタ開閉伝達軸91(図8)が設けられている。シャッタ開閉伝達軸91には扇形プレート92が取り付けられており、この扇形プレート92に形成された円弧状の長穴92aに、肥料回収レバー90に固着されたピン90bが遊嵌している。シャッタ開閉伝達軸91には各繰出部ごとに開閉ギヤ93(図8)が取り付けられ、該ギヤ93が排出シャッタ84の回動軸84aに取り付けた半円形ギヤ94と噛み合っている。なお、半円形ギヤ94の端部には当該ギヤ94の歯よりも径の大きいストッパ部94aが形成されているので、両ギヤ93,94の噛み合いが外れることはない。また、肥料回収レバー90には、エア切替ワイヤ95の一端が繋がれている。エア切替ワイヤ95の他端は、エア切替シャッタ86の回動軸86aに取り付けたアーム96に付勢手段である引張りスプリング97を介して繋がれている。
【0065】
肥料回収レバー90を回動操作すると、エア切替ワイヤ95が引かれてエア切替シャッタ86を切り替え、ブロア67から引き出されるエアが肥料回収管85に供給されるようになる。肥料回収レバー90の回動操作量が少ないうちは、ピン90bが長穴92aの中を移動するだけにすぎないので、シャッタ開閉伝達軸91は回動しない。しかしながら、肥料回収レバー90を一定量以上回動操作すると、ピン90bが扇形プレート92に係合し、シャッタ開閉伝達軸91が回動する。これにより、排出シャッタ84,…が開き、粉粒体ホッパ60内の肥料が肥料回収管85に排出される。つまり、1本のレバー90の操作だけでエア切替シャッタ86及び排出シャッタ84,…を操作することができる。しかも、必然的に、始めにエアが肥料回収管85に供給され、その後で肥料が肥料回収管85に排出されるのである。このため、肥料回収管85での肥料の搬送が円滑に行われ、肥料回収管85での肥料詰まりが生じない。また、肥料回収レバー90が肥料回収口87の近傍に設けられているので、肥料回収容器等を肥料回収口87の下側に容易に確保でき、さらに肥料回収の状況を確認しながら作業を行へ好都合である。
【0066】
肥料回収レバー90はレバーガイド98に沿って回動操作するようになっている。このレバーガイド98にはガイド穴98a,98bが形成されており、肥料回収レバー90の撓みを利用して肥料回収レバー90の係合部(図示せず)をガイド穴98a,98bに係合させることにより、肥料回収レバー90をエア切替シャッタ86だけが切り替えられる位置P1(図10)と、エア切替シャッタ86及び排出シャッタ84,…の両方が切り替えられる位置P2とに固定することができるようになっている。肥料回収レバー90を上記以外の位置にも停止させられるようにし、排出シャッタ84の開度を無段階又は段階的に調節できるようにしてもよい。
従って、肥料回収時にはブロア67より気流搬送される肥料は肥料回収管85を流れ、排出口87からスムーズに肥料が排出される。
【0067】
なお、エア切替シャッタ86は上下方向を向く回動軸86aを中心に回動するので、エア切替シャッタ86の開閉操作時の抵抗が変動しない。また、肥料回収時には引張りスプリング97の張力に抗して強制的にエア切替シャッタ86を切り替えるようにしているので、肥料回収時におけるエア切替シャッタ86の気密性が良好である。
【0068】
図6に示す開閉ギヤ93と半円形ギヤ94との噛み合いに予め融通性を持たせておくと、各条のギヤの組み付けに多少の誤差があっても、各条の排出シャッタ84の動作タイミングに狂いが出ず、確実に排出シャッタ84が閉じるようにすることができる。
【0069】
一方、肥料回収レバー90を図10に示す施肥作業位置にすると「ON」になるスイッチを設けると共に、各畦クラッチレバー110L,110C,110R(図6)をクラッチ入り位置にすると「ON」になるスイッチを各々設けて、これらスイッチの検出により、肥料回収レバー90が肥料排出位置(肥料回収レバー90が施肥作業位置でない時)で全ての畦クラッチレバー110L,110C,110Rがクラッチ入りの時(施肥作業時)に、肥料回収レバー90が施肥作業位置でないことを警報するハンドル34下方のモニター部に設けたランプを点灯するか若しくはブザーを鳴らすように制御装置で制御している。これは、肥料回収レバー90を図10のP2位置にして肥料回収作業をした後、肥料回収レバー90をP2位置にしたまま、メインスイッチを切って作業を中断し、後に(後日)、施肥・植付け作業を行う時に肥料回収レバー90をP2位置にしたまま施肥・植付け作業をすると施肥作業が行えないまま植付け作業をしてしまう不具合を防止するためで、肥料回収レバー90をP2位置にしたままでメインスイッチを入れるとランプが点灯するか若しくはブザーが鳴って作業者に肥料回収レバー90が施肥作業位置になっていないことを知らせ、即座に作業者は肥料回収レバー90を施肥作業位置に操作して前記のような不具合を未然に防止でき作業性が良い。
【0070】
繰出部ケース78は、側面視で前下がりに傾斜した分割面F−F(図7)で、下側の固定部分78aと上側の離脱部分78bとに分割されている。繰出ロール73A,73B及び排出シャッタ84(肥料排出口83)は固定部分78aに設けられている。一方、ブラシ76及び繰出停止シャッタ77は離脱部分78bに設けられている。粉粒体ホッパ60が接続される上部開口部及び繰出口61aは分割されていないので、両者の気密性が良好に保たれる。
【0071】
粉粒体ホッパ60を最も後方に回動させると、側面視で前記離脱部分78bを離脱させる方向に投影した区域外に粉粒体ホッパ60が位置するようになっている。このため、離脱部分78bを無理なく離脱させられる。また、分割面F−F(図7)の延長先はエアチャンバ68の上端よりも下側に位置するとともに、側面視で離脱部分78bを離脱させる方向に投影した区域外にエアチャンバ68が位置している。このため、離脱部分78bを取り外した状態で、走行車体2上から繰出ロール73A,73Bのメンテナンスを行いやすい。
なお、図示しないが、 繰出ロール73A,73Bの下に繰出ロール73A,73Bの凹部74に噛み合うロールまたは掃除用ブラシを設け、凹部74を掃除することもできる。
【0072】
また、肥料排出口83に設ける排出シャッタ84はシャッタ本体84bの他にL字状に折れ曲がった丸棒84c(図8)を追加することで肥料排出口83に肥料が詰まることを防ぐことができる。
【0073】
従来は、肥料が圧縮されたり、湿気を含むために、排出シャッタ84の回りの肥料排出口83の壁面に固着し、肥料が排出されないことがあったが、回動軸84aを中心にシャッタ本体84bを開けた際に、シャッタ本体84bと同時に動く丸棒84cが肥料排出口83の壁面に固着した肥料を掻き落としながら回動するので、肥料排出口83が肥料で詰まることが無くなる。このとき、丸棒84cは、その回動する範囲を肥料排出口83の最大径に対応するような大きさにすると、効果的に肥料排出口83に残った肥料を丸棒84cで掻き落とすことができる。
また、シャッタ本体84bに対して図8に示す位置とは反対側に丸棒84cを設けると、丸棒84cで掻き取った肥料が肥料排出口83の肥料排出側に落ちやすくなり、丸棒84cが肥料の排出ガイドの役割を果たすことができる。
図13に示すように肥料排出口83に後方に開口部を有する種籾取出シュート119を取り付けた構成を採用してもよい。この種籾取出シュート119を肥料排出口83に差し込むと泥等の汚れから種籾を守ることができる。また簡単に肥料排出口83に差し込んだり、引き抜いたりすることができるので、作業の切り替えに手間を要することが無く、作業能率が従来以上に向上する。
【0074】
また、図2に示すように畦越えアーム22にエンジン20を駆動出来るスイッチ(図示せず)を設け、また畦越えアーム22に人の把持を認識出来るセンサ(図示せず)を設けておくと、畦越えアーム22から手を離すとエンジン20が切れるので、田植機に搭乗していなくてもエンジン20の入り切りが可能となり、作業の安全性が従来以上に向上する。
【符号の説明】
【0075】
1 施肥装置付き乗用型苗移植機 2 走行車体
3 昇降リンク装置 4 苗植付部
5 施肥装置 10 前輪
11 後輪 11a 後輪車軸
12 ミッションケース 13 前輪ファイナルケース
15 メインフレーム 18 後輪ギアケース
20 エンジン 22 畦越えアーム
23 静油圧式無段変速装置(HST)
26 植付伝動軸
27(27a,27b) 整地ロータ
31 座席 32 フロントカバー
34 ハンドル 35 フロアステップ
36 リヤステップ 38 予備苗載台
40 上リンク 41 下リンク
42 リンクベースフレーム 43 縦リンク
44 連結軸 46 昇降用油圧シリンダ
50 伝動ケース 51 苗載台
51a 苗取出口 52 苗植付装置
53 ブロア用電動モータ 54 苗送りベルト
55 センターフロート 56 サイドフロート
58 通風路(連結管) 59 繰出しカバー
60 肥料ホッパ 60a 蓋
61 繰出部 61a 繰出口
62 施肥ホース 63 ロータ昇降用モータ
64 作溝体 65 苗植付部支持枠体
65a 支持ローラ 65b 両側辺部材
67 ブロア 67a エア吐出口
68 エアチャンバ 68a ゴム管
68b 樹脂管 70 施肥フレーム
72 係止具
73(73A,73B) 繰出ロール
74 凹部 75 繰出軸
75a 角軸部 76 清掃ブラシ
76a 第1ブラシ部 76b 第2ブラシ部
77(77A,77B) 繰出停止シャッタ
77a 把手 78 繰出部ケース
78a 固定部分 78b 離脱部分
79 スライド支持部 80 接続管
81 エア切替管 83 肥料排出口
84 排出シャッタ 84a 回動軸
84b シャッタ本体 84c 丸棒
85 肥料回収管 86 切替弁(エア切替シャッタ)
86a 回動軸 87 肥料回収口
88 肥料袋 90 肥料回収レバー
90a 回動支点軸 90b ピン
91 シャッタ開閉伝達軸 92 扇型プレート
92a 長穴 93 開閉ギヤ
94 半円形ギヤ 94a ストッパ部
95 エア切替ワイヤ 96 アーム
97 引張りスプリング 98 レバーガイド
98a,98b ガイド穴 100 制御部
105(105a,105b) ロータ駆動軸
106 梁部材 107 支持アーム
108 ロータ支持フレーム 109 ロータ高さ調節レバー
110L、110C、110R 畦クラッチレバー
110a 畦クラッチレバーセンサ
111 連結部材 112 整地伝動軸
113 ロータ駆動軸ケース 114 補強部材
114a 取付片 116 第一リンク部材
117 第二リンク部材 118 スプリング
119 種籾取出シュート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行輪(10,11)を備えた走行車体(2)と、粒状体を投入する粒状体貯留部(60)と、粒状体貯留部(60)から粒状体を受けて所定量ずつ放出する繰出し装置(61)を備えた苗移植機において、
粉流体貯留部(60)の下方に、繰出し装置(61)を内装する繰出しカバー(59)と繰出し装置(61)から繰出される粉流体を送風搬送するための送風装置(67)を設け、
繰出しカバー(59)内に、繰出し装置(61)に接触して付着した夾雑物を除去する清掃部材(76)を設け、
繰出しカバー(59)のうち、繰出し装置(61)の非繰出し位置に清掃用のエアが通過する通風路(58)を形成したことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
繰出し装置(60)を各条分ごとに並列配置し、前記各条の繰出し装置(60)に送風装置(67)からエアを供給する各条の通風路(58)を連結したことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項3】
送風装置(67)に分岐風路(81)を装着し、
分岐風路(81)の一側に通風用流路(68)を設け、
分岐風路(81)の他側に、繰出し装置(61)から放出された粒状体を下方に案内すると共に、粒状体の排出口に泥土や水が進入することを防止するエアを送る排出風路(85)を設け、
分岐風路(81)の分岐部に、エアの行き先を変更する切替弁(86)を配置し、
該切替弁(86)は、繰出し装置(61)の入切を操作すると連動して切り替わる構成
を備えたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項4】
清掃部材(76)の先端部に、繰出し装置(61)の表面に接触する複数のブラシ体をまとめて構成し、
清掃部材(76)のうち、先に繰出し装置(61)に接触する複数のブラシ体からなる第1ブラシ部(76a)と後で繰出し装置(61)に接触する複数のブラシ体からなる第2ブラシ部(76b)を設け、
先に繰出し装置(61)に接触する側の第1ブラシ部(76a)と後で繰出し装置(61)に接触する側の第2ブラシ部(76b)のそれぞれの複数のブラシ体を互いに間隔を空けて並列に配置し、
さらに第2ブラシ部(76b)の並列配置される複数のブラシ体を第1ブラシ部(76a)の並列配置される複数のブラシ体の間に位置するように配置した
ことを特徴とする請求項3記載の苗移植機。
【請求項5】
清掃部材(76)を繰出し装置(61)の粉粒体繰出し位置近傍に配置し、
第2ブラシ部(76b)の複数のブラシ体を、第1ブラシ部(76a)の複数のブラシ体よりも硬いブラシ体で構成した
ことを特徴とする請求項3記載の苗移植機。
【請求項6】
第2ブラシ部(76b)の複数のブラシ体を、第1ブラシ部(76a)の複数のブラシ体よりも短いブラシ体で構成したことを特徴とする請求項3記載の苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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