施錠装置、および、キャビネット
【課題】符号錠の装置構成が複雑化してコストが上昇するのを抑制しつつ符号が盗み見されるのを防止することが可能な施錠装置およびキャビネットを提供する。
【解決手段】キャビネットの開口周縁側に係止されて扉の開閉方向への変位を規制する係止位置と、当該係止を解除する係止解除位置との間で変位可能とされ、作動片部13が施錠位置から開錠位置に変位された場合に、該作動片部13に連動して係止位置から係止解除位置に変位されるロック部材22と、作動片部13を施錠位置側に常時付勢する作動片部付勢機構部30とを有するロック機構部20とを備える。
【解決手段】キャビネットの開口周縁側に係止されて扉の開閉方向への変位を規制する係止位置と、当該係止を解除する係止解除位置との間で変位可能とされ、作動片部13が施錠位置から開錠位置に変位された場合に、該作動片部13に連動して係止位置から係止解除位置に変位されるロック部材22と、作動片部13を施錠位置側に常時付勢する作動片部付勢機構部30とを有するロック機構部20とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、施錠装置、および、該施錠装置を有するキャビネットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、オフィスなどに設置され、様々な物品を収納するキャビネットにあっては、収納した物品を安全に保管するために扉の開放を規制する施錠装置を設けたものが知られている。施錠装置としては、ダイヤルやテンキーなどを介して符号を操作入力するいわゆる符号錠を備えたものがあり、このような符号錠を備えた施錠装置を用いることで、鍵を用いずに開錠可能であることから、鍵管理が不要となり、利用者が多数存在する場合の利便性を向上できる点で好評を得ている。
【0003】
しかし、ダイヤル式の符号錠の場合、扉の開放後も符号を並べた状態が維持されたり、テンキー式の符号錠の場合、扉の開放後も押しボタンが没入されている状態が維持されてしまう場合があるため、開錠可能な符号の組み合わせを他人に盗み見られてしまう虞があった。
そこで近年、他人への符号情報の漏洩を防止するために、開錠動作後の扉の開放操作や、操作ノブ等の回動操作に連動して、ダイヤルやテンキーをリセットして未入力状態に戻す機構が組み込まれた施錠装置が提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−281156号公報
【特許文献2】特開2010−248840号公報
【特許文献3】特開2010−248839号公報
【特許文献4】特公平06−060544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の施錠装置の場合、符号錠自体に符号の盗み見を防止する機構を追加しているため、符号錠の装置構成が複雑化して、符号錠の加工工数や組立工数などが増加し、コストが上昇してしまうという課題がある。
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、符号錠の装置構成が複雑化してコストが上昇するのを抑制しつつ符号が盗み見されるのを防止することが可能な施錠装置およびキャビネットを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用する。
本発明に係る施錠装置は、施錠操作位置と開錠操作位置との間で変位可能な施錠操作部と、該施錠操作部に連動して施錠位置と開錠位置との間で変位可能な作動片部とを備え、符号を入力可能であり、入力された符号と、予め設定された開錠符号とを照合し、前記符号が前記開錠符号と一致しない場合には、前記施錠操作部を施錠位置で保持し、入力された前記符号が前記開錠符号と一致した場合には、前記施錠操作部の施錠位置での保持を解除して開錠位置への変位を可能とし、前記作動片部が開錠位置から施錠位置まで変位された場合には、入力された符号を未入力状態にリセットする符号錠部と、前記キャビネットの開口周縁に係止されて前記扉の開閉方向への変位を規制する係止位置と、当該係止を解除する係止解除位置との間で変位可能とされ、前記作動片部が施錠位置から開錠位置に変位された場合に、該作動片部に連動して係止位置から係止解除位置に変位されるロック部材と、前記作動片部を施錠位置側に常時付勢する作動片部付勢手段とを有するロック機構部とを備えることを特徴としている。
このように構成することで、例えば、施錠されている扉を開錠して開放する際に、施錠部に開錠符号を入力して施錠操作部を閉塞操作位置から開錠操作位置に変位させると、作動片部が施錠位置から開錠位置へと変位し、この変位に伴い、ロック部材による係止状態が解除され、扉が開放可能となる。そして、利用者が施錠操作部から手を離すなど操作入力が無くなった時点で、作動片部付勢手段により作動片部が閉塞位置まで戻され、この作動片部の変位に連動して施錠操作部が施錠操作位置まで戻されることとなる。したがって、施錠操作部への操作入力が無くなった時点で、即座に、作動片部付勢手段により作動片部を閉塞位置に戻して入力された符号を未入力状態にリセットすることができるため、符号錠部の装置構成が複雑化してコストが上昇するのを抑制しつつ、開錠符号が盗み見されるのを防止することが可能になる。
【0007】
さらに、本発明に係る施錠装置は、上記施錠装置において、前記ロック機構部が、前記扉を閉塞した際に、前記ロック部材を係止解除位置から係止位置に復帰させる復帰手段を備えるようにしてもよい。
このように構成することで、作動片部が閉塞位置に変位されて符号が未入力状態にリセットされるタイミングに対して、ロック部材が係止位置に復帰するタイミングを遅らせて、扉が閉塞位置にされたときに、ロック部材を係止位置に復帰させることができるため、利用者が特別な操作を行うことなしに扉を施錠することができる。
【0008】
さらに、本発明に係る施錠装置は、上記施錠装置において、前記復帰手段が、前記ロック部材を施錠位置側に付勢するロック部材付勢手段と、前記扉が開放されているときに、前記ロック部材付勢手段により付勢された前記ロック部材が揺動するのを規制する揺動規制状態に保持する一方、前記扉が閉塞されたときに、前記揺動規制状態を解除する揺動規制機構とを備えるようにしてもよい。
このように構成することで、扉が開放されているときには、ロック部材付勢手段により付勢されたロック部材が揺動されない揺動規制状態になり、この揺動規制状態を、扉が閉塞されたときに解除できる。そのため、符号が未入力状態にリセットされた後も、ロック部材を係止解除位置に保持して、扉が閉塞されたタイミングでロック部材を係止位置に変位させることができる。したがって、簡単な構成で復帰手段を構成できるため、部品数増加や組立工数の増加を抑制することができる。
【0009】
本発明に係るキャビネットは、上記施錠装置を具備することを特徴としている。
このように構成することで、オフィス等において利用者が多数存在するキャビネットの利便性を向上することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る施錠装置およびキャビネットによれば、既存の符号錠にロック機構部を追加することで、符号の照合による開錠操作が完了した直後に作動片部13を施錠位置に戻して符号を未入力状態にリセットすることができるため、符号錠の構造が複雑化することによるコスト上昇を抑制しつつ、扉を開放してキャビネット内の物品を出し入れしている最中などに入力された符号が盗み見されるのを防止することができる。
さらに、オフィス等において利用者が多数存在するキャビネットの利便性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態におけるキャビネットの斜視図である。
【図2】本発明の実施形態における符号錠本体部の操作面の拡大斜視図である。
【図3】本発明の実施形態における施錠装置の斜視図である。
【図4】作動片部が開錠位置の場合の上記施錠装置の部分断面図である。
【図5】作動片部が施錠位置の図4に相当する部分断面図である。
【図6】図4のA方向から見た側面図である。
【図7】図5のB方向から見た側面図である。
【図8】作動片部が施錠位置の場合のロック機構部を上方から見た部分断面図である。
【図9】作動片部が開錠位置の場合の図8に相当する断面図である。
【図10】作動片部が施錠位置で且つロック部材が係止解除位置の場合の図8に相当する断面図である。
【図11】本発明の実施形態の変形例における図8に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、この発明の実施形態における施錠装置について図面を参照して説明する。
図1に示すように、この実施形態に係る施錠装置1が取り付けられるキャビネット2は、4つの収納庫3を備えて構成されており、これら収納庫3にはそれぞれヒンジhを介して扉4が揺動可能に支持されている。これらの扉4には、それぞれ扉4の端縁4a側の上下方向略中央に、上記施錠装置1を構成する符号錠本体部5が取り付けられ、この符号錠本体部5の操作面6が扉4の外面側に露出するようになっている。
【0013】
図2に示すように、操作面6には、それぞれ「0」〜「9」までの数字と「#」とからなる符号、ならびに「C」(クリア)がそれぞれ割り振られた複数の押しボタン10が設けられており、押しボタン10の下側には、開錠(OPEN)位置から施錠(Lock)位置まで回動可能な施錠操作ノブ11が配置されている。
【0014】
図3、図4に示すように、符号錠本体部5は、その主要部の殆どが扉4の内面側に配置されたケーシング内に収容されており、上述した施錠操作ノブ11の回動軸12には、施錠操作ノブ11と連動して開錠位置から施錠位置まで揺動する鎌型の作動片部13が固定されている。
【0015】
ここで、符号錠本体部5には、所定の数字および「#」の組み合わせが開錠符号として予め設定できるようになっており、この予め設定された開錠符号と同じ組み合わせの押しボタン10が押し込まれて没入すると、この押しボタン10が没入されている間だけ、施錠操作ノブ11が施錠位置から開錠位置へと回動可能となる。それ以外の場合例えば、間違った組み合わせの押しボタン10が押し込まれた場合には、施錠操作ノブ11の施錠位置から開錠位置方向への回動が規制されて、作動片部13が揺動しないようになっている。
【0016】
符号錠本体部5は、押しボタン10の押し込み操作が行われると、押しボタン10が没入された没入状態を保持するようになっており、施錠操作ノブ11が開錠位置にある場合には、予め設定された組み合わせの押しボタン10が没入状態になる。そして、符号錠本体部5は、施錠操作ノブ11が開錠位置から施錠位置へと戻されたときに、全ての押しボタン10を没入されていない初期状態(以下、単に未入力状態と称す)へ復帰させる。また、符号錠本体部5は、押し間違えによる操作をキャンセルするためのクリア「C」ボタンが操作されたときにも、押しボタン10を未入力状態に復帰させるようになっている。そして、上述したように、施錠操作ノブ11が作動片部13と連動するようになっているため、作動片部13が開錠位置から施錠位置まで揺動されたときにも、押しボタン10が未入力状態へ復帰されることとなる。
【0017】
作動片部13は、主に、先細り形状の平板部15と、この平板部15の先端から、回動軸12に沿って、操作面6とは反対側に向かって突出する略円柱状の突部16とを備えて構成される。平板部15は、その前後面が操作面6と略平行に延在され、先端に向かうほど閉塞位置側に湾曲して形成されている。
【0018】
上述した符号錠本体部5の下側には、ロック機構部20が、扉4の内面側に対して固定的に取り付けられている。
ロック機構部20は、箱状のケーシング21を有しており、このケーシング21内には、扉4の端縁4a側に、ロック部材22が設けられている。このロック部材22は、扉4の内外方向に延びる回動軸23まわりに揺動可能に取り付けられ、回動軸23から略径方向外側に延出するアーム部24と、このアーム部24の先端において屈曲形成された鉤状部25とを備えて構成される。アーム部24は、ケーシング21の外部に向かって延びており、鉤状部25は、常にケーシング21の外部に配置される。
【0019】
ロック部材22は、各収納庫3の開口縁に形成されたスリット状の孔(図示せず)に係止されて扉4の開閉方向への変位を規制する係止位置(図5参照)と、当該係止を解除する係止解除位置(図4参照)との間で変位可能とされる。ロック部材22が係止解除位置の場合には、アーム部24は略鉛直上方に延在される一方、係止位置の場合には、アーム部24は略水平方向に延在される。そして、ケーシング21には、塵埃等が入り込むのを防止するために、係止解除位置にあるロック部材22の鉤状部25を覆うカバー部材26を備えている。
【0020】
図6を併せて参照し、ロック部材22には、回動軸23からみてアーム部24とは反対側に、延出部27が設けられている。この延出部27は、回動軸23に支持されるアーム部24の基部から回動軸23に沿うように扉4側に屈曲形成されるとともに、ロック部材22が、係止位置とされた場合に(図5参照)、アーム部24の延在方向とは略垂直な上方向に延出して形成される。延出部27は、作動片部13が施錠位置(図5参照)から開錠位置(図4参照)に揺動された場合に、作動片部13の突部16によってアーム部24側から押圧されるようになっており、この突部16による延出部27の押圧によって、ロック部材22が係止位置(図5参照)から係止解除位置(図4参照)に揺動される。
【0021】
図4、図5に示すように、ロック機構部20には、作動片部13を施錠位置側に常時付勢する作動片部付勢機構部30が設けられている。この作動片部付勢機構部30は、ケーシング21の上辺近傍に配置され、ケーシング21の上辺に沿うと共に扉4に沿って形成されたガイド31と、このガイド31に対して摺動可能に取り付けられたスライド片32と、このスライド片32を扉4の基部側から端縁4a側に向かって常時付勢するコイルバネ33とを備えて構成される。
【0022】
図8を参照し、上記スライド片32は、扉4側とは反対側に延出して形成され、この延出して形成された部位の作動片部13側の面が、作動片部13のアーム部24を常時押圧する押圧面34になっている。さらに、スライド片32は、アーム部24を押圧する押圧面34とは反対側に、スライド片32のスライド方向に延びる突部35を備えている。
【0023】
図8〜図11に示すように、ロック機構部20には、ロック部材22を施錠位置側に常時付勢するロック部材付勢機構部40が設けられている。このロック部材付勢機構部40は、ケーシング21の上辺近傍に配置され、上述した作動片部付勢機構部30に対して、扉4の内外方向の内側に配置されている。ロック部材付勢機構部40は、ケーシング21の上辺に沿って形成されるガイド(図示せず)に対して摺動可能に取り付けられたスライド片42と、このスライド片42をロック部材22側に常時付勢するコイルバネ43とを備えて構成される。
【0024】
スライド片42は、コイルバネ43側に突出しコイルバネ43の端部43aを支持する支持部44と、ケーシング21の側壁に沿って支持部44とは反対側に延出する押圧部45とを備えて構成される。ロック部材付勢機構部40は、コイルバネ43によりスライド片42がロック部材22側に付勢されるので、押圧部45がロック部材22のアーム部24を押圧し、この押圧部45によりロック部材22が係止位置側に付勢される。
また、スライド片42は、ロック部材22が係止位置にあるときに、当該ロック部材22のアーム部24の上方に、押圧部45が延在されるようになっており、これにより、正規の開錠操作以外のロック部材22の係止解除位置への回動動作、例えば、扉4とキャビネット2の開口縁との隙間から金具等を用いてロック部材22を回動させるいわゆるピッキングなどによる開錠を防止することができるようになっている。
【0025】
図6、図7を参照し、ロック機構部20は、扉4の内外方向にスライド可能なスライド片52と、このスライド片52を扉4の内外方向の内側に向かって付勢するコイルバネ53とを備える揺動規制機構50を備えている。
【0026】
スライド片52は、コイルバネ53により押圧される押圧部54と、この押圧部54の上側に形成されてロック部材22側に延びるスライド本体部55とを一体的に形成して備えている。スライド片52は、ロック部材22が係止解除位置にある場合にロック部材22のアーム部24が係止位置側へ揺動するのを規制する規制位置(図6参照)と、ロック部材22が係止位置の場合に、ロック部材22のアーム部24が揺動するのを許容する許容位置(図7参照)との間で変位可能となっている。
【0027】
図6、図9を参照し、ロック部材22が係止解除位置にあり、スライド片52が規制位置にある場合、スライド本体部55の端部55aは、コイルバネ53の付勢力によりアーム部24の揺動軌跡内に保持され、ロック部材付勢機構部40のコイルバネ43により押圧されたアーム部24が、端部55aに突き当たって、ロック部材22が係止位置まで揺動されない揺動規制状態になる。
【0028】
一方、スライド片52の押圧部54は、扉4が閉塞状態のときに、キャビネット2の開口周縁に形成された突起T(図3参照)によって押圧されるようになっており、この突起Tによる押圧でコイルバネ53が縮退する方向に変位される。この際、コイルバネ53が縮退してスライド片52の端部55aがアーム部24の揺動軌跡内から外れた位置に配置される。これにより、ロック部材付勢機構部40のコイルバネ43により押圧されたアーム部24が、コイルバネ43の付勢力により係止位置まで揺動されて保持される(図7参照)。なお、本発明の復帰手段は、上述したロック部材付勢機構部40と、スライド片52と、コイルバネ53と、突起Tとによって構成される。
【0029】
図4〜図7を参照し、ロック機構部20には、さらに、ロック部材22の下側に、キャビネット2の開口縁側に向かって突出される先細り形状のラッチ部60が配置されている。このラッチ部60は、いわゆる一般的な扉に設けられたラッチ機構と同様の構成であり、コイルバネ63により突出方向に付勢され、扉4を開閉する際の操作力によって没入可能とされる。
【0030】
この実施形態の施錠装置1は、上述した構成を備えており、次に、この施錠装置1の動作について図面を参照しながら説明する。なお、この動作の説明では、扉4が施錠された状態から開錠されて開放され、再度施錠されるまでの一連の動作を説明する。
【0031】
まず、図2に示すように、予め設定された開錠符号を押しボタン10の押し込みにより入力して、施錠操作ノブ11を施錠位置(図2中、実線で示す)から開錠位置(図2中、二点差線で示す)まで回動操作する。
【0032】
この施錠操作ノブ11の回動操作によって、作動片部13が施錠位置(図5参照)から開錠位置(図4参照)まで揺動される。
この作動片部13の揺動により、図8に示す施錠状態から、図9に示す状態とされる。具体的には、作動片部13の平板部15により押圧されることで、スライド片32がコイルバネ33の圧縮方向に変位される。さらに、スライド片32の変位に伴い、突部35によってスライド片42が押圧されて、コイルバネ43の圧縮方向にスライド片42が変位される。さらに、これと並行して、作動片部13の突部16により、ロック部材22の延出部27が押圧されて、ロック部材22が係止解除位置まで変位される。なお、通常は、この状態で利用者により扉4が開動される。
【0033】
扉4が開動されると、突起T(図2参照)がスライド片52の押圧部54から離間して、コイルバネ53を圧縮する入力がなくなる。すると、コイルバネ53が伸び方向に変位して、スライド片52の端部55aがアーム部24の揺動軌跡内に変位する。これにより、ロック部材22の係止位置側への揺動が規制される状態となる。
【0034】
次いで、扉4が開放された状態で、施錠操作ノブ11への操作入力が無くなると、コイルバネ33の弾性力により、スライド片32が押し戻されて、このスライド片32により作動片部13が押圧されて、作動片部13が施錠位置まで揺動される。これにより、操作面6の押しボタン10が未入力状態に復帰される。なお、通常は、この状態で利用者によりキャビネット2の収納庫3に対する物品の出し入れ作業が行われる。
【0035】
ここで、上記の説明では、扉4が開放された後に施錠操作ノブ11への操作入力が無くなる場合について説明したが、扉4を開放する前に施錠操作ノブ11を施錠位置に戻した場合には、スライド片52が揺動可能であるので、施錠操作ノブ11が施錠位置まで揺動されるのと略同時に、ロック部材22が係止位置まで揺動されて、扉4が施錠されることとなる。
【0036】
次いで、扉4が閉塞されると、スライド片52の押圧部54が、コイルバネ53の弾性力に抗する方向に、突起Tにより押圧されて、スライド片52の端部55aがアーム部24の揺動軌跡内から外れた位置に移動する。すると、ロック部材付勢機構部40のコイルバネ43の付勢力によりロック部材22が係止位置まで揺動され、扉4が施錠されることとなる。
【0037】
したがって、上述した実施形態の施錠装置1によれば、利用者が施錠操作ノブ11から手を離すなど操作入力が無くなった時点で、作動片部付勢機構部30により作動片部13が閉塞位置まで戻され、この作動片部13の変位に連動して施錠操作ノブ11が施錠操作位置まで戻されることとなる。そして、施錠操作ノブ11への操作入力が無くなった時点で、即座に、作動片部付勢機構部30により作動片部13を閉塞位置に戻して、入力された符号を未入力状態にリセットすることができる。そのため、符号錠本体部5の装置構成が複雑化してコストが上昇するのを抑制しつつ、開錠符号が盗み見されるのを防止することが可能になる。
【0038】
さらに、作動片部13が閉塞位置に変位されて符号が未入力状態にリセットされるタイミングに対して、ロック部材22が係止位置に復帰するタイミングを遅らせて、扉4が閉塞位置にされたときに、ロック部材22を係止位置に復帰させることができるため、利用者が特別な操作を行うことなしに扉4を施錠することができる。
【0039】
さらに、扉4が開放されているときには、ロック部材付勢機構部40による付勢力によりロック部材22が揺動されない揺動規制状態になり、この揺動規制状態を、扉4が閉塞されたときに解除するようにできるため、押しボタン10が未入力状態にリセットされた後も、ロック部材22を係止解除位置に保持して、扉4が閉塞されたタイミングでロック部材22を係止位置に変位させることができる。その結果、簡単な構成で復帰手段を構成できるため、部品数増加や組立工数の増加を抑制することができる。
【0040】
さらに、上記ロック機構部20を設けることで、オフィス等において利用者が多数存在するキャビネット2の利便性を向上することができる。
【0041】
なお、この発明は上述した各実施形態の構成に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。
例えば、上述した実施形態における施錠装置1の場合、作動片部13に突部16を形成して、スライド片32と延出部27とを押圧可能にする場合を一例に説明したが、この構成に限られず、例えば、図11に示すように、ロック部材付勢機構部40のスライド片132から延出部27のアーム部24側に向かって突出する突出部132aを形成するようにしてもよい。このように構成することで、作動片部13の平板部15によりスライド片132を押圧すると、スライド片132により延出部27を押圧することが可能となるため、上述した実施形態の突部16を省略することができる。
【0042】
さらに、上述した実施形態の施錠装置においては、付勢手段としてそれぞれコイルバネ33,43,53を用いる場合について説明したが、作動片部13、ロック部材22、スライド片52を付勢可能な弾性体であれば、コイルバネに限られるものではない。
【符号の説明】
【0043】
11 施錠操作ノブ(施錠操作部)
13 作動片部
22 ロック部材
30 作動片部付勢機構部(作動片部付勢手段)
20 ロック機構部
40 ロック部材付勢機構部(復帰手段)
52 スライド片(復帰手段、揺動規制機構)
53 コイルバネ(復帰手段、揺動規制機構)
T 突起(復帰手段)
【技術分野】
【0001】
この発明は、施錠装置、および、該施錠装置を有するキャビネットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、オフィスなどに設置され、様々な物品を収納するキャビネットにあっては、収納した物品を安全に保管するために扉の開放を規制する施錠装置を設けたものが知られている。施錠装置としては、ダイヤルやテンキーなどを介して符号を操作入力するいわゆる符号錠を備えたものがあり、このような符号錠を備えた施錠装置を用いることで、鍵を用いずに開錠可能であることから、鍵管理が不要となり、利用者が多数存在する場合の利便性を向上できる点で好評を得ている。
【0003】
しかし、ダイヤル式の符号錠の場合、扉の開放後も符号を並べた状態が維持されたり、テンキー式の符号錠の場合、扉の開放後も押しボタンが没入されている状態が維持されてしまう場合があるため、開錠可能な符号の組み合わせを他人に盗み見られてしまう虞があった。
そこで近年、他人への符号情報の漏洩を防止するために、開錠動作後の扉の開放操作や、操作ノブ等の回動操作に連動して、ダイヤルやテンキーをリセットして未入力状態に戻す機構が組み込まれた施錠装置が提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−281156号公報
【特許文献2】特開2010−248840号公報
【特許文献3】特開2010−248839号公報
【特許文献4】特公平06−060544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の施錠装置の場合、符号錠自体に符号の盗み見を防止する機構を追加しているため、符号錠の装置構成が複雑化して、符号錠の加工工数や組立工数などが増加し、コストが上昇してしまうという課題がある。
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、符号錠の装置構成が複雑化してコストが上昇するのを抑制しつつ符号が盗み見されるのを防止することが可能な施錠装置およびキャビネットを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用する。
本発明に係る施錠装置は、施錠操作位置と開錠操作位置との間で変位可能な施錠操作部と、該施錠操作部に連動して施錠位置と開錠位置との間で変位可能な作動片部とを備え、符号を入力可能であり、入力された符号と、予め設定された開錠符号とを照合し、前記符号が前記開錠符号と一致しない場合には、前記施錠操作部を施錠位置で保持し、入力された前記符号が前記開錠符号と一致した場合には、前記施錠操作部の施錠位置での保持を解除して開錠位置への変位を可能とし、前記作動片部が開錠位置から施錠位置まで変位された場合には、入力された符号を未入力状態にリセットする符号錠部と、前記キャビネットの開口周縁に係止されて前記扉の開閉方向への変位を規制する係止位置と、当該係止を解除する係止解除位置との間で変位可能とされ、前記作動片部が施錠位置から開錠位置に変位された場合に、該作動片部に連動して係止位置から係止解除位置に変位されるロック部材と、前記作動片部を施錠位置側に常時付勢する作動片部付勢手段とを有するロック機構部とを備えることを特徴としている。
このように構成することで、例えば、施錠されている扉を開錠して開放する際に、施錠部に開錠符号を入力して施錠操作部を閉塞操作位置から開錠操作位置に変位させると、作動片部が施錠位置から開錠位置へと変位し、この変位に伴い、ロック部材による係止状態が解除され、扉が開放可能となる。そして、利用者が施錠操作部から手を離すなど操作入力が無くなった時点で、作動片部付勢手段により作動片部が閉塞位置まで戻され、この作動片部の変位に連動して施錠操作部が施錠操作位置まで戻されることとなる。したがって、施錠操作部への操作入力が無くなった時点で、即座に、作動片部付勢手段により作動片部を閉塞位置に戻して入力された符号を未入力状態にリセットすることができるため、符号錠部の装置構成が複雑化してコストが上昇するのを抑制しつつ、開錠符号が盗み見されるのを防止することが可能になる。
【0007】
さらに、本発明に係る施錠装置は、上記施錠装置において、前記ロック機構部が、前記扉を閉塞した際に、前記ロック部材を係止解除位置から係止位置に復帰させる復帰手段を備えるようにしてもよい。
このように構成することで、作動片部が閉塞位置に変位されて符号が未入力状態にリセットされるタイミングに対して、ロック部材が係止位置に復帰するタイミングを遅らせて、扉が閉塞位置にされたときに、ロック部材を係止位置に復帰させることができるため、利用者が特別な操作を行うことなしに扉を施錠することができる。
【0008】
さらに、本発明に係る施錠装置は、上記施錠装置において、前記復帰手段が、前記ロック部材を施錠位置側に付勢するロック部材付勢手段と、前記扉が開放されているときに、前記ロック部材付勢手段により付勢された前記ロック部材が揺動するのを規制する揺動規制状態に保持する一方、前記扉が閉塞されたときに、前記揺動規制状態を解除する揺動規制機構とを備えるようにしてもよい。
このように構成することで、扉が開放されているときには、ロック部材付勢手段により付勢されたロック部材が揺動されない揺動規制状態になり、この揺動規制状態を、扉が閉塞されたときに解除できる。そのため、符号が未入力状態にリセットされた後も、ロック部材を係止解除位置に保持して、扉が閉塞されたタイミングでロック部材を係止位置に変位させることができる。したがって、簡単な構成で復帰手段を構成できるため、部品数増加や組立工数の増加を抑制することができる。
【0009】
本発明に係るキャビネットは、上記施錠装置を具備することを特徴としている。
このように構成することで、オフィス等において利用者が多数存在するキャビネットの利便性を向上することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る施錠装置およびキャビネットによれば、既存の符号錠にロック機構部を追加することで、符号の照合による開錠操作が完了した直後に作動片部13を施錠位置に戻して符号を未入力状態にリセットすることができるため、符号錠の構造が複雑化することによるコスト上昇を抑制しつつ、扉を開放してキャビネット内の物品を出し入れしている最中などに入力された符号が盗み見されるのを防止することができる。
さらに、オフィス等において利用者が多数存在するキャビネットの利便性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態におけるキャビネットの斜視図である。
【図2】本発明の実施形態における符号錠本体部の操作面の拡大斜視図である。
【図3】本発明の実施形態における施錠装置の斜視図である。
【図4】作動片部が開錠位置の場合の上記施錠装置の部分断面図である。
【図5】作動片部が施錠位置の図4に相当する部分断面図である。
【図6】図4のA方向から見た側面図である。
【図7】図5のB方向から見た側面図である。
【図8】作動片部が施錠位置の場合のロック機構部を上方から見た部分断面図である。
【図9】作動片部が開錠位置の場合の図8に相当する断面図である。
【図10】作動片部が施錠位置で且つロック部材が係止解除位置の場合の図8に相当する断面図である。
【図11】本発明の実施形態の変形例における図8に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、この発明の実施形態における施錠装置について図面を参照して説明する。
図1に示すように、この実施形態に係る施錠装置1が取り付けられるキャビネット2は、4つの収納庫3を備えて構成されており、これら収納庫3にはそれぞれヒンジhを介して扉4が揺動可能に支持されている。これらの扉4には、それぞれ扉4の端縁4a側の上下方向略中央に、上記施錠装置1を構成する符号錠本体部5が取り付けられ、この符号錠本体部5の操作面6が扉4の外面側に露出するようになっている。
【0013】
図2に示すように、操作面6には、それぞれ「0」〜「9」までの数字と「#」とからなる符号、ならびに「C」(クリア)がそれぞれ割り振られた複数の押しボタン10が設けられており、押しボタン10の下側には、開錠(OPEN)位置から施錠(Lock)位置まで回動可能な施錠操作ノブ11が配置されている。
【0014】
図3、図4に示すように、符号錠本体部5は、その主要部の殆どが扉4の内面側に配置されたケーシング内に収容されており、上述した施錠操作ノブ11の回動軸12には、施錠操作ノブ11と連動して開錠位置から施錠位置まで揺動する鎌型の作動片部13が固定されている。
【0015】
ここで、符号錠本体部5には、所定の数字および「#」の組み合わせが開錠符号として予め設定できるようになっており、この予め設定された開錠符号と同じ組み合わせの押しボタン10が押し込まれて没入すると、この押しボタン10が没入されている間だけ、施錠操作ノブ11が施錠位置から開錠位置へと回動可能となる。それ以外の場合例えば、間違った組み合わせの押しボタン10が押し込まれた場合には、施錠操作ノブ11の施錠位置から開錠位置方向への回動が規制されて、作動片部13が揺動しないようになっている。
【0016】
符号錠本体部5は、押しボタン10の押し込み操作が行われると、押しボタン10が没入された没入状態を保持するようになっており、施錠操作ノブ11が開錠位置にある場合には、予め設定された組み合わせの押しボタン10が没入状態になる。そして、符号錠本体部5は、施錠操作ノブ11が開錠位置から施錠位置へと戻されたときに、全ての押しボタン10を没入されていない初期状態(以下、単に未入力状態と称す)へ復帰させる。また、符号錠本体部5は、押し間違えによる操作をキャンセルするためのクリア「C」ボタンが操作されたときにも、押しボタン10を未入力状態に復帰させるようになっている。そして、上述したように、施錠操作ノブ11が作動片部13と連動するようになっているため、作動片部13が開錠位置から施錠位置まで揺動されたときにも、押しボタン10が未入力状態へ復帰されることとなる。
【0017】
作動片部13は、主に、先細り形状の平板部15と、この平板部15の先端から、回動軸12に沿って、操作面6とは反対側に向かって突出する略円柱状の突部16とを備えて構成される。平板部15は、その前後面が操作面6と略平行に延在され、先端に向かうほど閉塞位置側に湾曲して形成されている。
【0018】
上述した符号錠本体部5の下側には、ロック機構部20が、扉4の内面側に対して固定的に取り付けられている。
ロック機構部20は、箱状のケーシング21を有しており、このケーシング21内には、扉4の端縁4a側に、ロック部材22が設けられている。このロック部材22は、扉4の内外方向に延びる回動軸23まわりに揺動可能に取り付けられ、回動軸23から略径方向外側に延出するアーム部24と、このアーム部24の先端において屈曲形成された鉤状部25とを備えて構成される。アーム部24は、ケーシング21の外部に向かって延びており、鉤状部25は、常にケーシング21の外部に配置される。
【0019】
ロック部材22は、各収納庫3の開口縁に形成されたスリット状の孔(図示せず)に係止されて扉4の開閉方向への変位を規制する係止位置(図5参照)と、当該係止を解除する係止解除位置(図4参照)との間で変位可能とされる。ロック部材22が係止解除位置の場合には、アーム部24は略鉛直上方に延在される一方、係止位置の場合には、アーム部24は略水平方向に延在される。そして、ケーシング21には、塵埃等が入り込むのを防止するために、係止解除位置にあるロック部材22の鉤状部25を覆うカバー部材26を備えている。
【0020】
図6を併せて参照し、ロック部材22には、回動軸23からみてアーム部24とは反対側に、延出部27が設けられている。この延出部27は、回動軸23に支持されるアーム部24の基部から回動軸23に沿うように扉4側に屈曲形成されるとともに、ロック部材22が、係止位置とされた場合に(図5参照)、アーム部24の延在方向とは略垂直な上方向に延出して形成される。延出部27は、作動片部13が施錠位置(図5参照)から開錠位置(図4参照)に揺動された場合に、作動片部13の突部16によってアーム部24側から押圧されるようになっており、この突部16による延出部27の押圧によって、ロック部材22が係止位置(図5参照)から係止解除位置(図4参照)に揺動される。
【0021】
図4、図5に示すように、ロック機構部20には、作動片部13を施錠位置側に常時付勢する作動片部付勢機構部30が設けられている。この作動片部付勢機構部30は、ケーシング21の上辺近傍に配置され、ケーシング21の上辺に沿うと共に扉4に沿って形成されたガイド31と、このガイド31に対して摺動可能に取り付けられたスライド片32と、このスライド片32を扉4の基部側から端縁4a側に向かって常時付勢するコイルバネ33とを備えて構成される。
【0022】
図8を参照し、上記スライド片32は、扉4側とは反対側に延出して形成され、この延出して形成された部位の作動片部13側の面が、作動片部13のアーム部24を常時押圧する押圧面34になっている。さらに、スライド片32は、アーム部24を押圧する押圧面34とは反対側に、スライド片32のスライド方向に延びる突部35を備えている。
【0023】
図8〜図11に示すように、ロック機構部20には、ロック部材22を施錠位置側に常時付勢するロック部材付勢機構部40が設けられている。このロック部材付勢機構部40は、ケーシング21の上辺近傍に配置され、上述した作動片部付勢機構部30に対して、扉4の内外方向の内側に配置されている。ロック部材付勢機構部40は、ケーシング21の上辺に沿って形成されるガイド(図示せず)に対して摺動可能に取り付けられたスライド片42と、このスライド片42をロック部材22側に常時付勢するコイルバネ43とを備えて構成される。
【0024】
スライド片42は、コイルバネ43側に突出しコイルバネ43の端部43aを支持する支持部44と、ケーシング21の側壁に沿って支持部44とは反対側に延出する押圧部45とを備えて構成される。ロック部材付勢機構部40は、コイルバネ43によりスライド片42がロック部材22側に付勢されるので、押圧部45がロック部材22のアーム部24を押圧し、この押圧部45によりロック部材22が係止位置側に付勢される。
また、スライド片42は、ロック部材22が係止位置にあるときに、当該ロック部材22のアーム部24の上方に、押圧部45が延在されるようになっており、これにより、正規の開錠操作以外のロック部材22の係止解除位置への回動動作、例えば、扉4とキャビネット2の開口縁との隙間から金具等を用いてロック部材22を回動させるいわゆるピッキングなどによる開錠を防止することができるようになっている。
【0025】
図6、図7を参照し、ロック機構部20は、扉4の内外方向にスライド可能なスライド片52と、このスライド片52を扉4の内外方向の内側に向かって付勢するコイルバネ53とを備える揺動規制機構50を備えている。
【0026】
スライド片52は、コイルバネ53により押圧される押圧部54と、この押圧部54の上側に形成されてロック部材22側に延びるスライド本体部55とを一体的に形成して備えている。スライド片52は、ロック部材22が係止解除位置にある場合にロック部材22のアーム部24が係止位置側へ揺動するのを規制する規制位置(図6参照)と、ロック部材22が係止位置の場合に、ロック部材22のアーム部24が揺動するのを許容する許容位置(図7参照)との間で変位可能となっている。
【0027】
図6、図9を参照し、ロック部材22が係止解除位置にあり、スライド片52が規制位置にある場合、スライド本体部55の端部55aは、コイルバネ53の付勢力によりアーム部24の揺動軌跡内に保持され、ロック部材付勢機構部40のコイルバネ43により押圧されたアーム部24が、端部55aに突き当たって、ロック部材22が係止位置まで揺動されない揺動規制状態になる。
【0028】
一方、スライド片52の押圧部54は、扉4が閉塞状態のときに、キャビネット2の開口周縁に形成された突起T(図3参照)によって押圧されるようになっており、この突起Tによる押圧でコイルバネ53が縮退する方向に変位される。この際、コイルバネ53が縮退してスライド片52の端部55aがアーム部24の揺動軌跡内から外れた位置に配置される。これにより、ロック部材付勢機構部40のコイルバネ43により押圧されたアーム部24が、コイルバネ43の付勢力により係止位置まで揺動されて保持される(図7参照)。なお、本発明の復帰手段は、上述したロック部材付勢機構部40と、スライド片52と、コイルバネ53と、突起Tとによって構成される。
【0029】
図4〜図7を参照し、ロック機構部20には、さらに、ロック部材22の下側に、キャビネット2の開口縁側に向かって突出される先細り形状のラッチ部60が配置されている。このラッチ部60は、いわゆる一般的な扉に設けられたラッチ機構と同様の構成であり、コイルバネ63により突出方向に付勢され、扉4を開閉する際の操作力によって没入可能とされる。
【0030】
この実施形態の施錠装置1は、上述した構成を備えており、次に、この施錠装置1の動作について図面を参照しながら説明する。なお、この動作の説明では、扉4が施錠された状態から開錠されて開放され、再度施錠されるまでの一連の動作を説明する。
【0031】
まず、図2に示すように、予め設定された開錠符号を押しボタン10の押し込みにより入力して、施錠操作ノブ11を施錠位置(図2中、実線で示す)から開錠位置(図2中、二点差線で示す)まで回動操作する。
【0032】
この施錠操作ノブ11の回動操作によって、作動片部13が施錠位置(図5参照)から開錠位置(図4参照)まで揺動される。
この作動片部13の揺動により、図8に示す施錠状態から、図9に示す状態とされる。具体的には、作動片部13の平板部15により押圧されることで、スライド片32がコイルバネ33の圧縮方向に変位される。さらに、スライド片32の変位に伴い、突部35によってスライド片42が押圧されて、コイルバネ43の圧縮方向にスライド片42が変位される。さらに、これと並行して、作動片部13の突部16により、ロック部材22の延出部27が押圧されて、ロック部材22が係止解除位置まで変位される。なお、通常は、この状態で利用者により扉4が開動される。
【0033】
扉4が開動されると、突起T(図2参照)がスライド片52の押圧部54から離間して、コイルバネ53を圧縮する入力がなくなる。すると、コイルバネ53が伸び方向に変位して、スライド片52の端部55aがアーム部24の揺動軌跡内に変位する。これにより、ロック部材22の係止位置側への揺動が規制される状態となる。
【0034】
次いで、扉4が開放された状態で、施錠操作ノブ11への操作入力が無くなると、コイルバネ33の弾性力により、スライド片32が押し戻されて、このスライド片32により作動片部13が押圧されて、作動片部13が施錠位置まで揺動される。これにより、操作面6の押しボタン10が未入力状態に復帰される。なお、通常は、この状態で利用者によりキャビネット2の収納庫3に対する物品の出し入れ作業が行われる。
【0035】
ここで、上記の説明では、扉4が開放された後に施錠操作ノブ11への操作入力が無くなる場合について説明したが、扉4を開放する前に施錠操作ノブ11を施錠位置に戻した場合には、スライド片52が揺動可能であるので、施錠操作ノブ11が施錠位置まで揺動されるのと略同時に、ロック部材22が係止位置まで揺動されて、扉4が施錠されることとなる。
【0036】
次いで、扉4が閉塞されると、スライド片52の押圧部54が、コイルバネ53の弾性力に抗する方向に、突起Tにより押圧されて、スライド片52の端部55aがアーム部24の揺動軌跡内から外れた位置に移動する。すると、ロック部材付勢機構部40のコイルバネ43の付勢力によりロック部材22が係止位置まで揺動され、扉4が施錠されることとなる。
【0037】
したがって、上述した実施形態の施錠装置1によれば、利用者が施錠操作ノブ11から手を離すなど操作入力が無くなった時点で、作動片部付勢機構部30により作動片部13が閉塞位置まで戻され、この作動片部13の変位に連動して施錠操作ノブ11が施錠操作位置まで戻されることとなる。そして、施錠操作ノブ11への操作入力が無くなった時点で、即座に、作動片部付勢機構部30により作動片部13を閉塞位置に戻して、入力された符号を未入力状態にリセットすることができる。そのため、符号錠本体部5の装置構成が複雑化してコストが上昇するのを抑制しつつ、開錠符号が盗み見されるのを防止することが可能になる。
【0038】
さらに、作動片部13が閉塞位置に変位されて符号が未入力状態にリセットされるタイミングに対して、ロック部材22が係止位置に復帰するタイミングを遅らせて、扉4が閉塞位置にされたときに、ロック部材22を係止位置に復帰させることができるため、利用者が特別な操作を行うことなしに扉4を施錠することができる。
【0039】
さらに、扉4が開放されているときには、ロック部材付勢機構部40による付勢力によりロック部材22が揺動されない揺動規制状態になり、この揺動規制状態を、扉4が閉塞されたときに解除するようにできるため、押しボタン10が未入力状態にリセットされた後も、ロック部材22を係止解除位置に保持して、扉4が閉塞されたタイミングでロック部材22を係止位置に変位させることができる。その結果、簡単な構成で復帰手段を構成できるため、部品数増加や組立工数の増加を抑制することができる。
【0040】
さらに、上記ロック機構部20を設けることで、オフィス等において利用者が多数存在するキャビネット2の利便性を向上することができる。
【0041】
なお、この発明は上述した各実施形態の構成に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。
例えば、上述した実施形態における施錠装置1の場合、作動片部13に突部16を形成して、スライド片32と延出部27とを押圧可能にする場合を一例に説明したが、この構成に限られず、例えば、図11に示すように、ロック部材付勢機構部40のスライド片132から延出部27のアーム部24側に向かって突出する突出部132aを形成するようにしてもよい。このように構成することで、作動片部13の平板部15によりスライド片132を押圧すると、スライド片132により延出部27を押圧することが可能となるため、上述した実施形態の突部16を省略することができる。
【0042】
さらに、上述した実施形態の施錠装置においては、付勢手段としてそれぞれコイルバネ33,43,53を用いる場合について説明したが、作動片部13、ロック部材22、スライド片52を付勢可能な弾性体であれば、コイルバネに限られるものではない。
【符号の説明】
【0043】
11 施錠操作ノブ(施錠操作部)
13 作動片部
22 ロック部材
30 作動片部付勢機構部(作動片部付勢手段)
20 ロック機構部
40 ロック部材付勢機構部(復帰手段)
52 スライド片(復帰手段、揺動規制機構)
53 コイルバネ(復帰手段、揺動規制機構)
T 突起(復帰手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施錠操作位置と開錠操作位置との間で変位可能な施錠操作部と、
該施錠操作部に連動して施錠位置と開錠位置との間で変位可能な作動片部とを備え、
符号を入力可能であり、入力された符号と、予め設定された開錠符号とを照合し、前記符号が前記開錠符号と一致しない場合には、前記施錠操作部を施錠位置で保持し、入力された前記符号が前記開錠符号と一致した場合には、前記施錠操作部の施錠位置での保持を解除して開錠位置への変位を可能とし、前記作動片部が開錠位置から施錠位置まで変位された場合には、入力された符号を未入力状態にリセットする符号錠部と、
前記キャビネットの開口周縁に係止されて前記扉の開閉方向への変位を規制する係止位置と、当該係止を解除する係止解除位置との間で変位可能とされ、前記作動片部が施錠位置から開錠位置に変位された場合に、該作動片部に連動して係止位置から係止解除位置に変位されるロック部材と、
前記作動片部を施錠位置側に常時付勢する作動片部付勢手段とを有するロック機構部とを備えることを特徴とする施錠装置。
【請求項2】
前記ロック機構部は、
前記扉を閉塞した際に、前記ロック部材を係止解除位置から係止位置に復帰させる復帰手段を備える請求項1に記載の施錠装置。
【請求項3】
前記復帰手段は、
前記ロック部材を施錠位置側に付勢するロック部材付勢手段と、
前記扉が開放されているときに、前記ロック部材付勢手段により付勢された前記ロック部材が揺動するのを規制する揺動規制状態に保持する一方、前記扉が閉塞されたときに、前記揺動規制状態を解除する揺動規制機構とを備える請求項1又は2に記載の施錠装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3に記載の施錠装置を具備することを特徴とするキャビネット。
【請求項1】
施錠操作位置と開錠操作位置との間で変位可能な施錠操作部と、
該施錠操作部に連動して施錠位置と開錠位置との間で変位可能な作動片部とを備え、
符号を入力可能であり、入力された符号と、予め設定された開錠符号とを照合し、前記符号が前記開錠符号と一致しない場合には、前記施錠操作部を施錠位置で保持し、入力された前記符号が前記開錠符号と一致した場合には、前記施錠操作部の施錠位置での保持を解除して開錠位置への変位を可能とし、前記作動片部が開錠位置から施錠位置まで変位された場合には、入力された符号を未入力状態にリセットする符号錠部と、
前記キャビネットの開口周縁に係止されて前記扉の開閉方向への変位を規制する係止位置と、当該係止を解除する係止解除位置との間で変位可能とされ、前記作動片部が施錠位置から開錠位置に変位された場合に、該作動片部に連動して係止位置から係止解除位置に変位されるロック部材と、
前記作動片部を施錠位置側に常時付勢する作動片部付勢手段とを有するロック機構部とを備えることを特徴とする施錠装置。
【請求項2】
前記ロック機構部は、
前記扉を閉塞した際に、前記ロック部材を係止解除位置から係止位置に復帰させる復帰手段を備える請求項1に記載の施錠装置。
【請求項3】
前記復帰手段は、
前記ロック部材を施錠位置側に付勢するロック部材付勢手段と、
前記扉が開放されているときに、前記ロック部材付勢手段により付勢された前記ロック部材が揺動するのを規制する揺動規制状態に保持する一方、前記扉が閉塞されたときに、前記揺動規制状態を解除する揺動規制機構とを備える請求項1又は2に記載の施錠装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3に記載の施錠装置を具備することを特徴とするキャビネット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−96098(P2013−96098A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237829(P2011−237829)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【出願人】(591131486)株式会社日本ロックサービス (3)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【出願人】(591131486)株式会社日本ロックサービス (3)
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