説明

昇華性物質の分離精製装置および昇華性物質の分離精製方法

【課題】昇華した昇華性物質と、この昇華性物質を凝結させる冷却析出面との接触時間を十分に確保することができ、かつ、析出する前の昇華性物質が真空ポンプに吸引されることによるロスを防止することができる昇華性物質の分離精製装置を提供する。
【解決手段】分離精製装置は、容器5内に、昇華性物質を含む固体混合物を加熱して昇華性物質を昇華させる加熱蒸発部1を備えている。容器5内には、加熱蒸発部1より上に、昇華した昇華性物質を析出させる冷却析出部3が設けられている。容器5には、真空ポンプ7が接続され、かつ、キャリアガスを導入するためのガス導入部9が設けられている。冷却析出部3は、互いに間隔をあけて平行に設けられる一対の平板33を備え、一対の平板33の間に冷却水を流せるようになっている。一対の平板33のそれぞれ外側となる面には、昇華した昇華性物質が析出されるフッ素樹脂シートが着脱自在に貼り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望する昇華性物質を含む固体混合物から前記昇華性物質を分離精製するための昇華性物質の分離精製装置および昇華性物質の分離精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物質の分離精製方法の1つとして昇華性物質を分離するための昇華法が知られている。
昇華法においては、昇華性物質を有する固体混合物を昇華させた後(気化させた後)に、冷却することにより固化させて再び固体とすることにより、所望の昇華性物質と、昇華しない物質および前記昇華性物質より昇華する速度の遅い物質とを分離することができる。なお、固体から気体への相転移および気体から固体への相転移の両方を昇華と称するが、ここでは、固体から気体への相転移を昇華(昇華蒸発)と称し、気体から固体への相転移を凝結(昇華凝固)と称するものとする。
【0003】
このような昇華法を用いた分離精製装置は通常、容器内に配置されて、固体混合物を真空状態(減圧状態)で加熱することにより昇華させて気体とする加熱蒸発部と、前記容器とは別の容器内に配置されて、昇華により生じた昇華性物質の気体を冷却して凝結させることにより析出させる冷却析出部と、二つの容器を連通させる流路とを備えている。冷却析出部には、ガラス製もしくはステンレス製の円筒状の冷却析出面(外周面)が設けられているとともに、この円筒状の冷却析出面を構成する部材の内部に、冷却液(冷媒)を流すことが可能な冷却析出ユニットが設けられている。加熱蒸発部で昇華した昇華性物質は、キャリアガスの気流により冷却析出部に運ばれ、冷却析出ユニットの冷却析出面で冷却されて凝結させられる。これにより、冷却析出面に昇華性物質が析出する。
【0004】
ここで、冷却析出ユニットの冷却析出面を円筒にした場合に、精製量を増加するために昇華した昇華性物質との接触面積を広くするには、円筒状の冷却析出面の数を増やすか、長さを長くする必要があるが、内部に冷却液を流す必要があることから、冷却析出部の構造が煩雑となる虞がある。
また、冷却析出面をガラス製あるいはステンレス製にした場合に、析出した昇華性物質が硬い場合、冷却析出面から析出した昇華性物質を剥離する際に、ガラスの破損やステンレスの混入を防ぐために、注意深く剥離作業を行う必要があり、作業員への負荷が大きくなる虞がある。
【0005】
また、キャリアガスを用いる場合に、冷却析出部を備える容器内が真空状態(減圧状態)となっているので、少ない流量でキャリアガスを導入するものとしても、容器内に導入されたキャリアガスの容積が大きくなり、冷却析出部内でのキャリアガスの流速が速くなってしまう虞がある。これにより、昇華した昇華性物質と、冷却析出面との接触時間が短くなり、冷却析出面でキャリアガスの気流中に含まれる昇華性物質を十分に析出できない可能性がある。この場合に、真空ポンプでキャリアガスが吸引されているので、未だ析出していない状態の昇華性物質が真空ポンプに吸引されて排出されてしまい、昇華性物質のロスが多くなってしまう。
【0006】
また、昇華性物質の分離精製装置の冷却析出部の構造として、円筒状や直方体状の容器で、この容器の外部に容器の内面を冷却する手段を設け、容器の内面を冷却析出面とした場合には、構造が簡単でスケールアップは伝熱面積(例えば、冷却水等で冷却されている冷却析出面の面積)を増やすこと(例えば、容器を大きくすること)により行うことができる。しかし、大きな容器を真空にした場合に、空気またはキャリアガスの容積が膨大となり、冷却析出面と昇華性物質を含むキャリアガスとの間の伝熱に必要な熱移動速度と、冷却析出面に対する前記気体の接触時間との調整が難しい。但し、析出した昇華性物質の回収は、分離精製装置の容器の部分を分解することにより容易に行うことができる。
【0007】
また、上述の円筒状の冷却析出ユニットを多数設けた場合のように、冷却析出部を多重構造とし、各冷却析出ユニットの内部に冷媒(冷却水)を流す方式がある。この方式の場合に、構造が複雑となるが、上述の伝熱に必要な前記熱移動速度と前記接触時間との調整が、上述の容器状の冷却析出部の内面を冷却析出面とした場合より容易となる。
【0008】
しかし、上述のように冷却析出部を多重構造としたことで、冷却析出部の構造が複雑になっているため、析出した昇華性物質を冷却析出ユニットから分離することが難しい。例えば、冷却析出部の冷却析出ユニットを分解して回収する場合も、構造が複雑なため分解に手間がかかり、効率的に析出した昇華性物質を回収できない。
【0009】
また、いずれの昇華法による昇華性物質の分離精製においても、上述の熱移動速度と接触時間との調整で、接触時間が十分でない場合に、冷却析出部内のキャリアガス中に昇華性物質が残ってしまい、これが真空ポンプにより吸引されてしまって昇華性物質をロスすることになる。
【0010】
ここで、冷却析出ユニットとしてメッシュ状のフィルタを使用する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この方法では、昇華性物質の蒸気を冷風と混合し、フィルタ上に昇華性物質を析出させ、その後エアでフィルタを逆洗するとともに、エアでフィルタを撓ませてフィルタから昇華性物質を分離している。
【0011】
また、上述のように、加熱蒸発部と、冷却析出部とを備え、これらからなる系を真空ポンプで吸引し、加熱蒸発部で昇華した昇華性物質をキャリアガスで冷却析出部に送り、前記冷却析出部の冷媒が循環した析出管の外周面(冷却析出面)に昇華性物質を析出させ、その後、析出管内に冷媒に代えて熱媒を循環させ、析出管を暖めることで昇華性物質を分離して、析出管の下方で昇華性物質を回収する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2004−141777号公報
【特許文献2】特開2009−106917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、特許文献1に記載の昇華性物質の分離精製装置においては、フィルタから析出した昇華性物質を完全に分離することが難しく、フィルタで目詰まりが生じる虞があり、フィルタの洗浄等の手間が必要となってしまう。
また、特許文献2の方法では、昇華性物質の析出量の増加には、例えば、析出管を増やす必要があり、構造が複雑になる。構造が複雑になっても、熱媒を用いることで、析出した昇華性物質の分離が難しくなるのを防止することができるが、冷媒と熱媒の切替を行う構造等により、構造がさらに複雑になり、設備コストが高くなるとともに、メンテナンス等の作業の手間が多くなってしまう。
【0014】
本発明は、前記事情に鑑みて為されたもので、昇華性物質の析出量を増加させる際に容易に対応可能な構造で、昇華した昇華性物質とこの昇華性物質を凝結させる冷却析出面との接触時間を十分に確保することができ、かつ、析出する前の昇華性物質が真空ポンプに吸引されることによる昇華性物質のロスの発生を防止することができる昇華性物質の分離精製装置および昇華性物質の分離精製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の昇華性物質の分離精製装置は、
容器と、
前記容器内に設けられ、昇華性物質を含む固体混合物を加熱して昇華性物質を昇華蒸発させる加熱蒸発部と、
前記容器内の前記加熱蒸発部より上に設けられ、昇華蒸発した昇華性物質を冷却して凝結させることにより昇華性物質を析出させる冷却析出部と、
前記容器内の気体を吸引する真空ポンプとを備え、
前記冷却析出部は、互いに間隔をあけて平行に設けられる一対の平板と、一対の前記平板の間に設けられて前記平板を冷却する冷却手段と、一対の前記平板のそれぞれ外側となる面に設けられ、昇華蒸発した昇華性物質が析出される冷却析出面とを有する一つ以上の冷却析出ユニットを備えていることを特徴とする。
【0016】
請求項1に記載の発明においては、一対の平板を有する冷却析出ユニットを、少しだけ間隔をあけて平板の直交方向に沿って並べた状態に配置することが可能なので、容器内で冷却析出ユニットの数を容易に増やすことが可能である。これにより、容易に冷却析出面を増やして、昇華性物質の分離精製量を増やすことができる。
【0017】
また、冷却析出ユニットを容器から取り出して分解し、各平板の平面状の冷却析出面から析出した昇華性物質を剥離することができる。
また、容器内では、相対的に温度が高い加熱蒸発部の上に加熱蒸発部より相対的に温度が低い冷却析出部が配置されており、内部の気体は、真空ポンプの吸引とキャリアガスの導入等により気流を発生させなくても、上述の温度差により容器内を上下に循環する気流が生じる。この循環気流により、加熱蒸発部で昇華した昇華性物質を冷却析出面に沿って流すことが可能となり、冷却析出面に昇華性物質を析出させることができる。
【0018】
また、温度差による循環気流の速度は、真空ポンプで真空状態(減圧状態)に保ちながらキャリアガスを導入した場合に生じるキャリアガスの気流に比較してかなり遅くすることが可能であり、昇華した昇華性物質の冷却析出面との接触時間を十分に確保することができる。さらに、前記平板を有する冷却析出ユニットどうしの間隔を調整することで、冷却析出面近傍の昇華性物質を含む気体の循環量を調整可能であり、この循環量の調整により冷却析出部における析出条件(例えば、冷却析出面近傍の気流の流速等)を変更することができる。
【0019】
請求項2に記載の昇華性物質の分離精製装置は、請求項1に記載の発明において、前記冷却析出ユニットを前記平板に直交する方向に並べて複数配置するとともに、隣り合う冷却析出ユニットの平板どうしの間にスペーサを介在させていることを特徴とする。
【0020】
請求項2に記載の発明においては、スペーサの厚さを調整することにより、容易に冷却析出ユニットどうしの間隔を調整することができ、上述のように、冷却析出面近傍の昇華性物質を含む気体の循環量を調整して、この循環量の調整により析出条件を変更することができる。
【0021】
請求項3に記載の昇華性物質の分離精製装置は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記冷却析出面が、前記冷却析出ユニットの一対の前記平板の外側となる面に着脱自在に貼り付けられたフッ素樹脂シートにより構成されていることを特徴とする。
【0022】
請求項3に記載の発明においては、前記冷却析出面を構成するフッ素樹脂シートを冷却析出ユニットから取り外して、析出した昇華性物質を容易に剥離して回収することができる。また、フッ素樹脂シートは、その表面が剥離性(低付着性)を有し、かつ、柔軟性を有して撓ませることが可能なことから、冷却析出面に付着した状態の析出物をフッ素樹脂シートから容易に剥離させて、回収することができる。
【0023】
請求項4に記載の昇華性物質の分離精製装置は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の発明において、
前記容器にキャリアガスを導入するガス導入部を設けたことを特徴とする。
【0024】
請求項4に記載の発明においては、例えば容器内に残留する空気ではなく、分離精製すべき昇華性物質に適した気体をキャリアガスとして容器内に導入することができる。なお、上述のように冷却析出面への昇華した昇華性物質の誘導は、温度差による循環気流により行うことができるので、キャリアガスの気流を生じさせるために、容器内の気体を真空ポンプで吸引しながらキャリアガスを導入しつづける必要はなく、容器内の気体がキャリアガスに置換されたところで、吸引ポンプの吸引を停止するとともに、キャリアガスの導入を停止することができる。したがって、キャリアガスを導入するものとしても、昇華した昇華性物質が真空ポンプに吸引されてしまうのを防止することができる。
【0025】
請求項5に記載の昇華性物質の分離精製方法は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の昇華性物質の分離精製装置を用いた昇華性物質の分離精製方法であって、
前記容器内を前記真空ポンプで吸引して分離精製すべき昇華性物質の昇華に適した圧力とした後に前記真空ポンプを停止し、
かつ、前記加熱蒸発部で昇華性物質を含む固体混合物を加熱して昇華させ、
前記冷却析出部で、前記冷却手段により前記平板に設けられた前記冷却析出面を冷却し、
前記加熱蒸発部と前記冷却析出部との温度差に基づく残存気体の循環気流を発生させ、
この循環気流により、前記加熱蒸発部で昇華した昇華性物質を前記冷却析出部の前記冷却析出面に送り、前記加熱蒸発部で昇華した昇華性物質を、前記冷却析出面に析出させることを特徴とする。
【0026】
請求項5に記載の発明においては、容器内の相対的に温度が高い加熱蒸発部の上に加熱蒸発部より相対的に温度が低い冷却析出部が配置されており、内部の残留空気(またはキャリアガス)は、温度差により容器内を上下に循環する気流が生じる。この気流により、昇華した昇華性物質を冷却析出面に沿って流すことが可能であり、昇華性物質を冷却析出面に接触させて、冷却析出面に昇華性物質を析出させることができる。
【0027】
この際に、温度差による循環気流の速度は、真空ポンプで真空状態(減圧状態)に保ちながらキャリアガスを導入した場合の気流に比較してかなり遅くすることが可能であり、昇華した昇華性物質の冷却析出面との接触時間を十分に確保することができる。また、分離精製中に、真空ポンプが停止していることから、未だ析出していない昇華性物質の気体が真空ポンプに吸引されてしまうのを防止できる。
【0028】
請求項6に記載の昇華性物質の分離精製方法は、請求項3に記載の昇華性物質の分離精製装置を用いた昇華性物質の分離精製方法であって、
前記加熱蒸発部で昇華蒸発した昇華性物質を、前記冷却析出部で凝結させることにより、前記フッ素樹脂シートからなる前記冷却析出面に昇華性物質を析出させた後に、
前記フッ素樹脂シートを前記冷却析出部の前記冷却析出ユニットから取り外し、取り外された前記フッ素樹脂シートの前記冷却析出面から、析出した昇華性物質を剥離して回収することを特徴とする。
【0029】
請求項6に記載の昇華性物質の分離精製方法によれば、冷却析出部の冷却析出ユニットから取り外したフッ素樹脂シートの冷却析出面から容易に析出した昇華性物質を回収することができる。
すなわち、フッ素樹脂シートは、剥離性がよいことから、析出した昇華性物質を容易に剥離できる。また、フッ素樹脂シートを取り外してから昇華性物質を回収することで、冷却析出部が複数の冷却析出ユニットを有することで複雑な形状となっていても、昇華性物質を容易に回収できる。また、フッ素樹脂シートから昇華性物質を取り外す際に、析出した昇華性物質が硬くとも、フッ素樹脂シートを撓ませることで容易に昇華性物質を取り外すことができる。
【0030】
請求項7に記載の昇華性物質の分離精製方法は、請求項4に記載の昇華性物質の分離精製装置を用いた昇華性物質の分離精製方法であって、
前記容器内を前記真空ポンプで吸引して分離精製すべき昇華性物質の昇華に適した圧力とするとともに、前記ガス導入部からキャリアガスを導入して前記容器内をキャリアガス雰囲気とした後に、
前記真空ポンプを停止するとともに、前記ガス導入部からのキャリアガスの導入を停止し、
前記加熱蒸発部で前記昇華性物質を含む固体混合物を加熱して昇華させ、
前記冷却析出部で、前記冷却手段により前記平板に設けられた冷却析出面を冷却し、
前記加熱蒸発部と前記冷却析出部との温度差に基づくキャリアガスの循環気流を発生させ、
この循環気流により、前記加熱蒸発部で昇華した昇華性物質を前記冷却析出部の前記冷却析出面に送り、前記加熱蒸発部で昇華した昇華性物質を、前記冷却析出面に析出させることを特徴とする。
【0031】
請求項7に記載の昇華性物質の分離精製方法においては、容器内を昇華性物質の分離精製に適した圧力で、かつ、キャリアガス雰囲気とした後に、真空ポンプを停止するとともにガス導入部からのキャリアガスの導入を停止することにより、キャリアガスを用いた場合でも、キャリアガスとともに未析出の昇華性物質が真空ポンプに吸引され排出されるのを防止できる。
【0032】
また、上述のように容器内の相対的に温度が高い加熱蒸発部の上に加熱蒸発部より相対的に温度が低い冷却析出部が配置されており、キャリアガスには、温度差により容器内を上下に循環する気流が生じる。この気流により、昇華性物質を冷却析出面に沿って流すことが可能であり、昇華性物質を冷却析出面に接触させて、冷却析出面に昇華性物質を析出させることができる。
【0033】
この際に、温度差による循環気流の速度は、真空ポンプで真空状態(減圧状態)に保ちながらキャリアガスを導入した場合の気流に比較して、かなり遅くすることが可能であり、昇華した昇華性物質の冷却析出面との接触時間を十分に確保することができる。
【0034】
請求項8に記載の昇華性物質の分離精製方法は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の昇華性物質の分離精製装置を用いた昇華性物質の分離精製方法であって、
前記冷却手段を冷却と加熱との両方を可能とするものとし、
前記加熱蒸発部で昇華蒸発した昇華性物質を、前記冷却析出部で凝結させて、前記冷却析出面に析出させた後に、
前記冷却析出部を分離精製すべき昇華性物質を溶解可能な溶媒に浸漬するとともに、前記冷却手段により前記冷却析出面を加熱することで、前記冷却析出部で析出した昇華性物質を溶媒中に回収することを特徴とする。
【0035】
請求項8に記載の発明においては、昇華法により分離精製した後に昇華性物質を溶媒に溶解させる工程を有する場合に、昇華性物質を溶媒に溶解させた状態で容易に回収することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、昇華性物質の分離精製量を増加させる際に容易に対応することができる。また、昇華した昇華性物質と、この昇華性物質を凝結させる冷却析出面との接触時間を十分に確保することができる。また、析出する前の昇華性物質が真空ポンプに吸引されることによるロスを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態に係る昇華性物質の分離精製装置を示す概略図である。
【図2】前記分離精製装置の冷却析出部を示す概略図である。
【図3】前記冷却析出部の冷却析出ユニットを示す概略分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
図1に示すように、この実施の形態の昇華性物質の分離精製装置は、分離精製すべき昇華性物質を含む固体混合物を加熱して昇華させる加熱蒸発部1と、この加熱蒸発部1で昇華した昇華性物質を冷却して凝結させ、後述の冷却析出面31に昇華した昇華性物質を析出させる冷却析出部3と、これら加熱蒸発部1と冷却析出部3との両方を収容する容器5と、前記容器5内の気体を吸引する真空ポンプ7と、前記容器5内にキャリアガスを導入するガス導入部9とを備えている。
【0039】
加熱蒸発部1は、容器5の下部に配置され、冷却析出部3は、容器5の加熱蒸発部1より上側の上部に配置されている。
容器5は、冷却析出部3を外部に取り出し可能となっており、冷却析出部3を取り出すために容器5が分解可能となっているか、または、容器5に冷却析出部3を取り出すための開閉自在な開口部が設けられている。
【0040】
また、容器5には、真空ポンプ7が接続されており、容器5内を所定の真空度(圧力)とすることが可能となっている。また、真空ポンプ7により容器5内の気体を吸引しながらガス導入部9によりキャリアガスを導入することで、容器5内の気体をキャリアガスに置換することができる。なお、キャリアガスを導入した状態でも、昇華性物質の分離精製に際して、所定の真空度とすることができる。なお、この際に容器5内の気圧は、分離精製すべき昇華性物質の昇華の条件に適したものとすることができる。
【0041】
なお、キャリアガスは、例えば、周知の不活性ガスや、分離精製すべき昇華性物質に対して不活性なガスなどであるが、例えば、昇華性物質を安定化するようなガスがあれば、そのガスをキャリアガスとしてもよい。
【0042】
前記真空ポンプ7としては、周知の各種真空ポンプ7を用いることができる。
また、ガス導入部9は、開閉可能なバルブを有する配管であり、この配管には、キャリアガスのガスボンベが接続されている。
前記加熱蒸発部1は、例えば、分離精製すべき昇華性物質を含む固体混合物が載せられる蒸発皿と、この蒸発皿を加熱するヒータとを備え、蒸発皿上の固体混合物を加熱して昇華させるものとなっている。なお、ヒータは、例えば、温水が供給されて固体混合物を加熱するものであってもよい。また、蒸発皿に温度センサが設けられるとともに、温度センサの計測温度によりヒータが制御され、蒸発皿が設定温度となるように制御されている。
【0043】
冷却析出部3は図2に示すように、前記冷却析出面31を有する複数の冷却析出ユニット32からなっている。冷却析出ユニット32は、二つの矩形状の平板33を互いに平行で、直交する方向から見た場合に重なるように配置したものである。また、冷却析出ユニット32は、二つの平板33から構成される対抗する面を含む略直方体からなる箱状に形成されている。また、冷却析出ユニット32は、二つの平板33の間の距離が短くされることで、略板状の箱となっている。すなわち、冷却析出ユニット32において、二つの平板33の間隔が平板33の縦横のサイズよりかなり小さくなっている。
【0044】
また、冷却析出ユニット32は、内部が中空の箱状であることから、内部に冷媒(例えば、冷却水)を流入することが可能で、かつ、冷媒の導入部と、導出部とが設けられている。これにより、冷却析出ユニット32内に冷媒を流すことが可能となっており、冷媒により二つの平板33を設定された温度に冷却可能となっている。すなわち、冷却析出ユニット32の内部空間が冷媒により平板33(冷却析出面31)を冷却可能な冷却手段となっている。
【0045】
冷媒は、複数の冷却析出ユニット32にそれぞれ個別に循環するように供給される。例えば、冷却析出ユニット32の下側に、ポンプから送られる冷媒を供給する流路21が設けられ、冷却析出ユニットの上側に冷媒を排出する流路22が設けられている。下側の流路21から各冷却析出ユニット32内に冷媒が供給され、冷却析出ユニット32を下側から上側に流れた冷媒が上側の流路22に排出される。なお、図1及び図2において、上下方向に沿う黒い矢印が冷媒の流れを示している。
また、冷却析出面31またはその近傍には、例えば、温度センサが取り付けられ、温度センサの計測温度に基づいて冷媒の温度や流量を調整することにより、冷却析出面31が設定温度となるように制御されている。
【0046】
また、二つの平板33の外面には、それぞれ、フッ素樹脂シート34が着脱自在に貼り付けられている。このフッ素樹脂シート34の平板33に貼り付けられる面の反対側となって露出する表面が、昇華した昇華性物質が冷却されて析出させられる冷却析出面31となっている。
例えば、フッ素樹脂シート34は、フッ素樹脂からなるパッキングやその他の部材で周縁部を平板33に着脱自在に固定されており、容易に取り外し可能となっている。
【0047】
なお、フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリクロロトリフルオロエチレン、クロロトリフルオエチレン・エチレン共重合体等を用いることができる。なお、使用可能なフッ素樹脂は、これらに限られるものではない。
【0048】
また、冷却析出ユニット32は、容器5内に複数配置されるようになっている。図2に示すように、複数の冷却析出ユニット32は、平板33に直交する方向に並んだ状態に配置され、全ての冷却析出ユニット32の各平板33が互いに平行となっている。また、隣り合う冷却析出ユニット32においては、フッ素樹脂シート34からなる冷却析出面31が対向している。
【0049】
ここで、上述のように加熱されることで相対的に温度が高い加熱蒸発部1が容器5の下部に配置され、冷却されることで加熱蒸発部1より相対的に温度が低い冷却析出部3が加熱蒸発部1より上となる容器5の上部に配置されていることから、加熱蒸発部1で加熱されて温度が高くなった昇華性物質を含むキャリアガスが上昇し、冷却析出部3で冷却されたキャリアガスが下降することにより、キャリアガスの循環気流が生じる。すなわち、容器5内の下部と上部との温度差によりキャリアガスが容器内を上下に循環する気流が生じることになる。なお、図1〜図3にキャリアガスの気流を白抜きの矢印で示した。
【0050】
この循環気流により、容器5内では、キャリアガスが加熱蒸発部1から上昇して冷却析出部3に昇華した昇華性物質を導くことになり、加熱蒸発部1で昇華した昇華性物質を冷却析出部3で析出させることができる。
【0051】
このようなキャリアガスの循環気流に対して、前述の隣り合う冷却析出ユニット32の対向する冷却析出面31の間隔を調整することにより、これら冷却析出面31の間を通過するキャリアガスの循環量が調整され、それに基づいて冷却析出面31に沿ったガスの流量(流速)が調整される。なお、この実施形態では、容器5内における加熱蒸発部1と冷却析出部3の配置や、これらのサイズや、加熱蒸発部1と冷却析出部3の温度差等により、冷却析出部3の部分でキャリアガスの循環気流が下降方向となり、その周囲で循環気流が上昇方向となるように設計されている。
【0052】
図3は、冷却析出部3の冷却析出ユニット32のより詳細な例を示すもので、隣り合う冷却析出ユニット32の間には、左右両側部にスペーサ35が配置されており、このスペーサ35の厚みにより、対向する冷却析出面31の間隔が決められている。したがって、異なる厚みのスペーサ35に交換することにより、対向する冷却析出面31の間隔を変更可能となっている。
なお、図3は、二つの冷却析出ユニット32により冷却析出部3が構成されるように図示したが、冷却析出部3における冷却析出ユニット32の数は二つに限定されるものではなく、3つ以上であってもよい。
【0053】
なお、スペーサ35は、対向する冷却析出面31の間の上述のキャリアガスの循環気流を妨げない位置に配置される必要があり、矩形板状の冷却析出ユニット32の左右側縁部か、矩形板状の冷却析出ユニット32の四隅に配置されることが好ましい。
【0054】
また、冷却析出ユニット32の平板33の外面側に冷却析出面31を構成するように取り付けられるフッ素樹脂シート34は、スペーサ35に固定されているパッキングにより着脱可能に取り付けられており、スペーサ35の部分で、隣り合う冷却析出ユニット32を離すことで、フッ素樹脂シート34を冷却析出ユニット32から取り外せるようになっている。
また、複数の冷却析出ユニット32は、例えば、これらを並び方向の両端から挟んだ状態に固定する部材により固定されている。
【0055】
また、スペーサ35やその他の部材の露出する面には、フッ素樹脂がコーティングされているものとしたり、部材がフッ素樹脂からなるものにしたりしてもよい。
また、複数が並んだ状態の冷却析出ユニット32には、これらの下側の角部のうちの一方の角部を貫通した状態に冷媒(冷却水)を供給する流路21(図2に図示)が形成され、かつ、下側の一方の角部の対角の位置となる上側の一方の角部を貫通した状態に冷媒(冷却水)を排出する流路22(図2に図示)が形成されている。
【0056】
上述の冷媒を供給する流路は、前記冷却析出ユニット31の一対の平板33の下側の一方の角部に形成された貫通孔と、この貫通孔に連通するようにスペーサ35およびフッ素樹脂シート31に形成された貫通孔とから構成される。冷媒を排出する流路用は、前記冷却析出ユニット31の一対の平板33の上側の一方の角部(下側の一方の角部の対角となる角部)に形成された貫通孔37と、この貫通孔37に連通するようにスペーサ35およびフッ素樹脂シート31に形成された貫通孔38,39とから構成される。なお、図3において、貫通孔37,38,39は、冷却析出ユニット31の上側の角部のものだけを図示した。
【0057】
また、冷却析出部3で複数並んだ状態の冷却析出ユニット32の一方の端側の冷却析出ユニット32には、前記下側の一方の角部側に冷媒を供給するための配管41が設けられている。また、冷却析出部3で複数並んだ状態の冷却析出ユニット32の他方の端側の冷却析出ユニット32には、前記上側の一方の角部側に冷媒を排出するための配管42が設けられている。
【0058】
このような構造により、配管41からポンプにより供給される冷媒が、冷却析出ユニット32の下側の角部に設けられた流路21を通って各冷却析出ユニット32の下側に供給されることにより、各冷却析出ユニット32内を冷媒が下から上に上昇する。さらに、各冷却析出ユニット32で上側に至った冷媒が、各冷却析出ユニット32の上側の角部に設けられた流路22に至り、この流路22から配管42を介して排出されるようになっている。なお、下側の角部の流路21から各冷却析出ユニット32内に冷媒を流入させる部分には、各冷却析出ユニット32に略均等に冷媒を分流させる周知の装置が設けられている。
【0059】
この昇華性物質の分離精製装置を用いた昇華性物質の分離精製方法においては、まず、複数の冷却析出ユニット32の平板33の外面に、フッ素樹脂シート34を取り付け、隣り合う冷却析出ユニット32の間にスペーサ35を配置した状態で冷却析出部3を組み立てる。
次に、容器5に形成された開口から冷却析出部3を容器5内にセットし、冷媒の供給ホースを前記配管41に取り付けと、冷媒の排出ホースを前記配管42に取り付ける。
【0060】
容器5を密閉した状態で、真空ポンプ7で容器5内の空気を吸引するとともに、ガス導入部9からキャリアガスを導入する。容器5内が所定の気圧となるとともに、容器5内がキャリアガス雰囲気となった際に、ガス導入部9からのガス導入を停止するとともに、真空ポンプ7を停止し、容器5を完全に密閉状態とする。
次に、加熱蒸発部1における固体混合物のヒータによる加熱を開始するとともに、冷却析出部3における冷媒の循環による冷却を開始する。なお、加熱蒸発部1における昇温および冷却析出部3における冷却と、真空ポンプ7による吸引およびキャリアガスの導入とを同時に行うものとしてもよいが、この場合に、加熱蒸発部1の温度が分離精製すべき昇華性物質が昇華可能な温度となる前に真空ポンプ7およびキャリアガスの導入を停止することが好ましい。
【0061】
上述の加熱と冷却とにより、容器5内にキャリアガスの循環気流が生じ、加熱蒸発部1で昇華される昇華性物質がキャリアガスの循環気流により冷却析出部3に送られ、冷却析出部3の各冷却析出面31としてのフッ素樹脂シート34の表面で昇華物質が冷却されて析出する。
【0062】
この際に、温度差によるキャリアガスの循環気流の流速は、例えば、従来のように真空ポンプを作動させながらキャリアガスを導入しつづけた場合のキャリアガスの流速に比較して、かなり遅い流速とすることが可能である。したがって、冷却析出面31に沿って流れるキャリアガスの流速を適切なものとして、冷却析出面31と昇華性物質を含むキャリアガスとの接触時間を十分に長いものとし、キャリアガスと冷却析出面31との間で十分な熱交換が行われ、効率的に冷却析出面31に昇華性物質を析出することができる。
【0063】
次に、加熱蒸発部1において、固体混合物の昇華性物質の略全てが昇華されるとともに、昇華した昇華性物質の略全てが冷却されて析出した状態、すなわち、容器5内の昇華性物質の濃度が十分に低下した際に、加熱蒸発部1における加熱と、冷却析出部3における冷却を停止する。
次に、容器5から冷却析出部3を取り出して、各冷却析出ユニット32に分解して、フッ素樹脂シート34を取り外す。次いで、フッ素樹脂シート34から析出した昇華性物質を剥離して回収する。この際には、フッ素樹脂シート34の付着性が低いことと、フッ素樹脂シート34を撓ませることが可能なことから、容易に昇華性物質をフッ素樹脂シート34から剥離することができる。
【0064】
この昇華性物質の分離精製装置および分離精製方法にあっては、昇華性物質が冷却して析出される平面状の冷却析出面31を有する一対の平板33を備えているとともに、平板33が冷却可能となっている冷却析出ユニット32を平板33の直交方向に並べて配置するものとし、この冷却析出ユニット32の数を増やすことで、比較的容易に分離精製装置をスケールアップすることができる。
【0065】
また、複数の冷却析出ユニット32を複数設けることで、冷却析出部3の構造が複雑化することになるが、例えば、円筒状のユニットを複数配置する場合に比較して簡単な構造となる。すなわち、上述のようにプレート式熱交換器に類似する構造とすることで、複数の板状の冷却析出ユニット32が並んで配置される構造でも比較的簡単な構造となるとともに、冷却析出ユニット32の数を容易に変更可能であり、生産量に対応して容易に冷却析出ユニット32の数を対応させることができる。
【0066】
また、スペーサ35を異なる厚みのスペーサ35に交換することで、隣り合う冷却析出ユニット32間で対向する冷却析出面31の間隔を容易に調整することができる。これにより、対向する冷却析出面31間におけるキャリアガスの循環量を調整して、冷却析出面31近傍におけるキャリアガスの流速を調整することが可能となり、冷却析出面31とキャリアガスとの接触時間を、分離精製すべき昇華性物質の析出に適したものとすることができる。
【0067】
また、冷却析出部3の分解は、上述のように複数の冷却析出部3を例えば挟むように固定している部材を取り外すことで、容易に行うことができ、各冷却析出ユニット32からフッ素樹脂シート34を取り外すことができる。フッ素樹脂シート34は、低付着性であることから、析出した昇華性物質を容易に剥離することが可能であるとともに、昇華性物質が硬くても、フッ素樹脂シート34を撓ませることで容易に昇華性物質を取り出すことができる。
【0068】
また、加熱蒸発部1から冷却析出部3への昇華した昇華性物質の移動をキャリアガスで行う際に、キャリアガスを下側の加熱蒸発部1と上側の冷却析出部3との温度差に基づくキャリアガスの循環で行っているので、キャリアガスの気流の流速を比較的低速のものとすることでき、気体状の昇華性物質と、冷却析出面31との接触時間を十分に取ることができ、キャリアガス中の昇華性物質の多くを冷却析出面31に析出させて、ロスを低減することができる。
【0069】
また、従来のようにキャリアガスの気流を生じさせるために、分離精製中に真空ポンプを作動させる必要はなく、分離精製中に真空ポンプを停止するとともに、キャリアガスの導入を停止できるので、未だ昇華性物質が残った状態のキャリアガスを真空ポンプで吸引してしまうことによる昇華性物質のロスを防止することができる。また、キャリアガスは、容器5内がキャリアガス雰囲気となるまで、例えば、空気のほとんどがキャリアガスに置換されるまで容器5内に導入すればよいので、例えば、真空ポンプに吸引された減圧の状態で、容器5の容積の数倍の体積のキャリアガスを導入すれば容器5内の気体が置換されることになり、従来に比較してキャリアガスの使用量を削減でき、コストダウンを図ることができる。
【0070】
上述の分離精製方法では、冷却析出部3を分解してフッ素樹脂シート34を取り外して、フッ素樹脂シート34から析出した昇華性物質を剥離したが、例えば、昇華性物質の分離精製工程において、昇華法による分離精製後に、昇華性物質を溶媒に溶解させる工程を行う場合がある。
この場合には、例えば、冷却析出部3を取り外して、昇華性物質を溶解可能な溶媒が貯留された槽に、冷却析出部3をそのまま浸漬して、溶媒に昇華性物質を溶解させるものとしてもよい。昇華性物質を溶媒に溶解させる際に上述の冷却水の供給および排出の流路に温水等の熱媒を循環させるものとしてもよい。この場合には、上述の冷却水供給用の配管41に温水供給用のホースを接続し、冷却水排出用の配管42に温水排出用の配管を接続すればよい。
このようにすることにより、溶媒に昇華性物質を容易に回収することができる。
【0071】
なお、上述の実施形態では、キャリアガスを容器5内に導入して用いたが、例えば、空気との反応性に乏しい昇華性物質を扱う場合に、容器5内を真空ポンプで吸引した際に容器内に残存する空気をキャリアガスとして用いてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 加熱蒸発部
3 冷却析出部
5 容器
7 真空ポンプ
9 ガス導入部
31 冷却析出面
32 冷却析出ユニット
33 平板
34 フッ素樹脂シート
35 スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、
前記容器内に設けられ、昇華性物質を含む固体混合物を加熱して昇華性物質を昇華蒸発させる加熱蒸発部と、
前記容器内の前記加熱蒸発部より上に設けられ、昇華蒸発した昇華性物質を冷却して凝結させることにより昇華性物質を析出させる冷却析出部と、
前記容器内の気体を吸引する真空ポンプとを備え、
前記冷却析出部は、互いに間隔をあけて平行に設けられる一対の平板と、一対の前記平板の間に設けられて前記平板を冷却する冷却手段と、一対の前記平板のそれぞれ外側となる面に設けられ、昇華蒸発した昇華性物質が析出される冷却析出面とを有する一つ以上の冷却析出ユニットを備えていることを特徴とする昇華性物質の分離精製装置。
【請求項2】
前記冷却析出ユニットを前記平板に直交する方向に並べて複数配置するとともに、隣り合う冷却析出ユニットの平板どうしの間にスペーサを介在させていることを特徴とする請求項1に記載の昇華性物質の分離精製装置。
【請求項3】
前記冷却析出面が、前記冷却析出ユニットの一対の前記平板の外側となる面に着脱自在に貼り付けられたフッ素樹脂シートにより構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の昇華性物質の分離精製装置。
【請求項4】
前記容器にキャリアガスを導入するガス導入部を設けたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の昇華性物質の分離精製装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の昇華性物質の分離精製装置を用いた昇華性物質の分離精製方法であって、
前記容器内を前記真空ポンプで吸引して分離精製すべき昇華性物質の昇華に適した圧力とした後に、
前記真空ポンプを停止し、
かつ、前記加熱蒸発部で昇華性物質を含む固体混合物を加熱して昇華させ、
前記冷却析出部で、前記冷却手段により前記平板に設けられた前記冷却析出面を冷却し、
前記加熱蒸発部と前記冷却析出部との温度差に基づく残存気体の循環気流を発生させ、
この循環気流により、前記加熱蒸発部で昇華した昇華性物質を前記冷却析出部の前記冷却析出面に送り、前記加熱蒸発部で昇華した昇華性物質を、前記冷却析出面に析出させることを特徴とする昇華性物質の分離精製方法。
【請求項6】
請求項3に記載の昇華性物質の分離精製装置を用いた昇華性物質の分離精製方法であって、
前記加熱蒸発部で昇華蒸発した昇華性物質を、前記冷却析出部で凝結させることにより、前記フッ素樹脂シートからなる前記冷却析出面に昇華性物質を析出させた後に、
前記フッ素樹脂シートを前記冷却析出部の前記冷却析出ユニットから取り外し、取り外された前記フッ素樹脂シートの前記冷却析出面から、析出した昇華性物質を剥離して回収することを特徴とする昇華性物質の分離精製方法。
【請求項7】
請求項4に記載の昇華性物質の分離精製装置を用いた昇華性物質の分離精製方法であって、
前記容器内を前記真空ポンプで吸引して分離精製すべき昇華性物質の昇華に適した圧力とするとともに、前記ガス導入部からキャリアガスを導入して前記容器内をキャリアガス雰囲気とした後に前記真空ポンプを停止するとともに、前記ガス導入部からのキャリアガスの導入を停止し、
前記加熱蒸発部で前記昇華性物質を含む固体混合物を加熱して昇華させ、
前記冷却析出部で、前記冷却手段により前記平板に設けられた冷却析出面を冷却し、
前記加熱蒸発部と前記冷却析出部との温度差に基づくキャリアガスの循環気流を発生させ、
この循環気流により、前記加熱蒸発部で昇華した昇華性物質を前記冷却析出部の前記冷却析出面に送り、前記加熱蒸発部で昇華した昇華性物質を、前記冷却析出面に析出させることを特徴とする昇華性物質の分離精製方法。
【請求項8】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の昇華性物質の分離精製装置を用いた昇華性物質の分離精製方法であって、
前記冷却手段を冷却と加熱との両方を可能とするものとし、
前記加熱蒸発部で昇華蒸発した昇華性物質を、前記冷却析出部で凝結させて、前記冷却析出面に析出させた後に、
前記冷却析出部を分離精製すべき昇華性物質を溶解可能な溶媒に浸漬するとともに、前記冷却手段により前記冷却析出面を加熱することで、前記冷却析出部で析出した昇華性物質を溶媒中に回収することを特徴とする昇華性物質の分離精製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−13873(P2013−13873A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149917(P2011−149917)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000003285)千代田化工建設株式会社 (162)
【出願人】(509352945)田中貴金属工業株式会社 (99)
【Fターム(参考)】