説明

昇降機の停止調整装置とそれを備えた機械式駐車設備

【課題】 昇降体を昇降させる索状体に作用する荷重を適した状態にして昇降機を容易に停止させることができる停止調整装置を提供すること。
【解決手段】 搬器54を吊下げたロープ62の巻上げ/巻下げにより搬器54を昇降させ、前記搬器54を所定の停止位置において保持するように構成した設備における昇降機60の停止調整装置1を、前記ロープ62は、一端が固定構造部に設けられた索状体支持部2に支持されており、前記索状体支持部2は、前記ロープ62に作用する荷重変化を検知する検知部30を有し、前記検知部30は、前記搬器54を前記定位置保持装置で保持した後にロープ62に作用する荷重が所定量に減少したことを検出して昇降機60を停止するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体倉庫や機械式駐車設備等の昇降体を昇降させる昇降機を停止させる停止調整装置と、それを備えた機械式駐車設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、立体倉庫や機械式駐車設備等には、索状体(この明細書及び特許請求の範囲の書類中における「索状体」は、「ワイヤロープ」や「チェーン」等をいう)によって昇降させる昇降体を昇降駆動する昇降機が設けられている。この昇降機は、索状体を巻上げ/巻下げすることによって昇降体を所望の高さに保持し、荷物や車両などの搬入/搬出を行っている。
【0003】
例えば、機械式駐車設備の一例であるエレベータ式駐車設備の場合には、車両を搭載するパレットを所定の格納棚に搬送する搬器(昇降体)が設けられ、この搬器が索状体によって吊下げられ、索状体を巻上げ/巻下げることで所望の格納棚の位置に移動させるようになっている。この索状体を巻上げ/巻下げて昇降させる昇降機としては、駆動モータによる巻取りドラム式、トラクション式などで索状体を巻上げ/巻下げるものがある。
【0004】
そして、索状体の巻上げ/巻下げによって搬器を所望の格納棚の位置に移動させて駐車設備側に保持した後、格納棚との間でパレットの搬入/搬出が行われる。なお、上記立体倉庫の場合も、索状体の巻上げ/巻下げによって昇降体を所望の格納棚の位置に移動させた後、格納棚との間で荷物の搬入/搬出が行われる。
【0005】
なお、この種の先行技術として、例えば、索状体(ワイヤ)の巻上げ/巻下げによって所望の格納棚位置に移動させた搬器の角部4点を個別の直動アクチュエータで駆動する揺動部材によって格納棚側(駐車設備側)に保持し、保持した搬器から下方に移動する索状体(ワイヤ)の端板をセンサで検知して索状体の下降を停止するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−166732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記先行技術の場合、索状体(ワイヤ)の端部に設けた端板の下降をセンサで検知するものであるため、停止時に索状体に作用している荷重が負荷変動(パレットの搬入/搬出)などで変化した場合には、搬器を格納棚側から浮上がらないように索状体に作用している荷重を保つための制御が難しく、安定して搬器の保持状態を保つのが難しい。
【0008】
また、索状体の経年変化などにより、索状体に作用している荷重変化で索状体の伸縮量が変化して搬器と格納棚との間で段差が生じ、スムーズな払出し/引込みが損なわれるおそれがある。
【0009】
さらに、タイマーを使って停止時の索状体に作用する荷重を調整する方法も考えられるが、その場合には、「荷重」を「時間」で間接的に調整するので、負荷状態や経年変化などに応じて昇降速度が変動した場合には、所定の荷重に調整できなくなるおそれがある。しかも、「荷重」を「時間」に換算する作業が必要になり、制御が難しい。
【0010】
そこで、本発明は、昇降体を昇降させる索状体に作用する荷重を適した状態にして昇降機を容易に停止させることができる停止調整装置と、それを備えた機械式駐車設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の停止調整装置は、昇降体を吊下げた索状体の巻上げ/巻下げにより前記昇降体を昇降させ、前記昇降体を所定の停止位置において保持するように構成した設備における昇降機の停止調整装置であって、前記索状体は、少なくとも一端が固定構造部または前記昇降体に設けられた索状体支持部に支持されており、前記索状体支持部は、前記索状体に作用する荷重変化を検知する検知部を具備し、前記検知部は、前記昇降体を前記定位置保持装置で保持した後に索状体に作用する荷重が所定量に減少したことを検出して昇降機を停止するように構成されている。この構成により、昇降体を所定の停止位置で定位置保持装置で保持した後、索状体に作用する荷重が所定量に減少したことを検知部で直接的に検知し、その検知によって昇降機を停止させるので、昇降体の定位置保持状態における索状体は常に作用する荷重が所定量に減少した状態となり、昇降体の荷重が変化したとしても索状体は弛まない所定の荷重が作用した状態が保たれて、昇降体の停止時において索状体に作用する荷重を常に安定させることができる。しかも、これにより昇降体の上昇時に安定した索状体の巻上げ動作を行わせることができる。
【0012】
また、前記索状体支持部は、前記固定構造部または前記昇降体に設けられた固定側支持部材と、前記索状体の一端に連結された可動側支持部材と、前記固定側支持部材と可動側支持部材との間に設けて前記索状体に作用する荷重を支持する弾性体と、を備え、前記検知部は、前記索状体に作用する荷重変化を索状体の変位量で検出する変位検出部を備えていてもよい。このように構成すれば、索状体支持部における可動側支持部材と固定側支持部材との間に設けられた弾性体により、昇降体を所定位置に保持して索状体に作用する荷重が所定量に減少したことを弾性体によって変位する可動側支持部材に連結された索状体の変位量で容易に検知することができできる。
【0013】
また、前記変位検出部は、前記索状体の変位量を示す被検出部材と、前記被検出部材の変位量を検出する変位検出部材と、を備え、前記被検出部材の変位量が所定量に達したことを前記変位検出部材が検出したことで昇降機を停止するように構成されていてもよい。このように構成すれば、変位検出部において被検出部材の変位量を変位検出部材で検出することにより、索状体に作用する荷重が所定量に減少したことを容易に検出することができる。
【0014】
また、前記弾性体は、支持ばねで構成され、前記索状体に作用する荷重が所定量を超えると前記支持ばねの軸線方向の変形を停止させるストッパー部材を有していてもよい。このように構成すれば、昇降体の定位置保持状態において索状体に作用する荷重を、一定のばね定数で製作できる支持ばねで作用させ、経年変化による荷重変化も抑えることができる。しかも、索状体で支持する荷重が大きい場合には、支持ばねの軸線方向の変形をストッパー部材によって止めて、固定側支持部材で索状体に作用する荷重を支持することができる。
【0015】
また、前記ストッパー部材は、前記支持ばねの中空部分に配置され、前記支持ばねの内径に対して所定の隙間を設けて横方向の変形を防止する変形防止部材を有していてもよい。このように構成すれば、支持ばねが軸線方向に伸縮する時の横方向の変形を支持ばねの中空部分に配置した変形抑止部材で防止し、支持ばねの正確な軸線方向の伸縮を安定して行わせることができる。
【0016】
また、前記可動側支持部材は、前記固定側支持部材との間に前記索状体の軸線方向に対して直交する面内の回動を抑止する回り止め部材を有していてもよい。このように構成すれば、回り止め部材によって、螺旋状に巻かれた支持ばねの変形時における回動や、索状体が撚り線である場合に生じる張力による回動を防止し、ばね定数の変動や変位検出部材の誤動作を防止することができる。
【0017】
一方、本発明の機械式駐車設備は、前記いずれかの停止調整装置を備えた機械式駐車設備であって、前記昇降体が搬器であり、前記所定の停止位置が格納棚であり、前記搬器を索状体で巻上げ/巻下げする昇降機と、前記搬器を所定の格納棚の位置で保持する定位置保持装置とを備えたことを特徴とする。この構成により、機械式駐車設備において、搬器を所定の格納棚の位置に定位置保持装置で保持した状態で、索状体を弛ませることなく、索状体に作用する荷重が搬器の保持状態及び上昇時に適した荷重状態にして昇降機を停止させることができる。
【0018】
また、前記索状体支持部は、固定構造部に設けられ、前記搬器は、下部に動滑車を有し、前記索状体は、前記搬器の動滑車に掛けられた後、前記固定構造部の索状体支持部に支持されていてもよい。このように構成すれば、索状体に作用する荷重変化を検知する索状体支持部を固定側に設け、移動側である搬器への電気配線削減や、検知部のより安定した動作を図ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、昇降体の定位置保持状態において、昇降体の負荷変動に関係なく、索状体に作用する荷重が適した状態で昇降機を安定して停止させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る停止調整装置の第1実施形態を示す一部断面した正面図である。
【図2】図1に示す停止調整装置の側面図である。
【図3】図1に示すIII矢視断面図である。
【図4】図1に示す停止調整装置の検知部を示す図面であり、(a) は通常状態を示す正面図、(b) は検知状態を示す正面図、(c) は検知部における各検知位置を示す概略図である。
【図5】図1に示す停止調整装置による索状体の停止状態を示す一部断面した正面図である。
【図6】本発明に係る停止調整装置の第2実施形態を示す一部断面した正面図である。
【図7】図1に示す停止調整装置を備えた機械式駐車設備の一例であるエレベータ式駐車設備の内部を示す全体概略正面図である。
【図8】図7に示すエレベータ式駐車設備の昇降駆動系を示す概略斜視図である。
【図9】図7に示すIX−IX矢視の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態の一例を図面に基づいて説明する。以下の実施形態では、停止調整装置を備えた機械式駐車設備の一例としてエレベータ式駐車設備(図7)を例に説明する。また、この実施形態では、索状体として「ワイヤーロープ」(以下、単に「ロープ62」という)を例に説明する。なお、この明細書及び特許請求の範囲の書類中における前後左右方向の概念は、図7に示すエレベータ式駐車設備50に向かった状態における前後左右方向の概念と一致するものとする。
【0022】
図1,2に示すように、この実施形態の停止調整装置1は、固定構造部である駐車設備50(図7)の駐車塔51を構成する鉄骨構造体の水平梁(固定側支持部)57に索状体支持部2が設けられている。この水平梁57には、索状体支持部2の固定フレーム3が固定されている。
【0023】
固定フレーム3は、上板4と、この上板4の左右位置から下方に延びる側板5と、左右の側板5を連結する背面板6と、この背面板6と側板5の下部に固定された下板7とを有している。上板4は、水平梁57にボルト・ナット等で固定される。
【0024】
上記下板7の中央部には、貫通穴8が設けられている。この貫通穴8は、索状体であるロープ62の端部を支持する索状体結合部材10が入る大きさに形成されている。ロープ62は、端部が索状体結合部材10に支持された連結金具11に吊下げられている。また、下板7の上面中央部には、固定側支持部材12が設けられている。この固定側支持部材12は、中央部にガイド穴13が設けられ、下板7にボルト・ナット14で固定されている。
【0025】
上記索状体結合部材10の中央部には、上方に延びる軸部材18が設けられている。この軸部材18は、上記固定側支持部材12のガイド穴13に挿通され、上端に可動側支持部材15が設けられている。この実施形態の可動側支持部材15は、軸部材18の上端に設けられたネジ部16に螺合するナット17で軸部材18の端部に取り付けられている。
【0026】
上記固定側支持部材12と可動側支持部材15との間には、弾性体である支持ばね(圧縮ばね)20が設けられている。この支持ばね20は、上記固定側支持部材12の上面と、上記可動側支持部材15の下面との間で保持されている。
【0027】
また、上記支持ばね20の中空部分には、上記軸部材18を挿通するガイド穴22が中央部に設けられ、外径が支持ばね20の内径よりも少し小さい筒状のストッパー部材21が設けられている。この実施形態では、ストッパー部材21は固定側支持部材12の上面に固定されている。
【0028】
ストッパー部材21は、外径を支持ばね20の内径よりも少し小さくして支持ばね20の内径と所定の隙間を有するようにすることで、支持ばね20が収縮する時の座屈を防止するようにしている。また、このストッパー部材21の高さを所定の高さに設定することにより、支持ばね20の収縮を所定量で制限している。さらに、このストッパー部材21は、ガイド穴22により、上記固定側支持部材12のガイド穴13に挿通した軸部材18がロープ62の軸線方向に移動するようにガイドしている。
【0029】
また、図3に示すように、固定側支持部材12の下方には、索状体結合部材10の回動を防止する回り止め部材25が設けられている。この回り止め部材25は、固定側支持部材12に下面からボルト部26で固定され、下部が索状体結合部材10に設けられた貫通穴27に挿通されている。この回り止め部材25により、支持ばね20(圧縮ばね)の螺旋形状を圧縮した時に生じる回転や、ロープ62が撚り線である場合に生じる張力による回転で索状体結合部材10が水平方向の面内で回動することを防止でき、支持ばね20のばね定数の変動や、後述する検知部30の誤作動を防止して、ロープ62を軸線方向に真っ直ぐ移動させることができる。
【0030】
従って、ロープ62に作用する搬器(昇降体)54の荷重は、索状体結合部材10を介して軸部材18の上端に設けられた可動側支持部材15を支持する支持ばね20で支持され、この支持ばね20が収縮するときには、ストッパー部材21によって支持ばね20を横方向に変形させることなくロープ62の軸線方向に収縮させるようになっている。この実施形態では、支持ばね20が圧縮ばねであるため、ストッパー部材21によって細長比が大きい(細長い)圧縮ばねを使用した時に生じる座屈現象を防止している。
【0031】
また、ロープ62に作用する荷重が大きい場合、支持ばね20の上端に設けられた可動側支持部材15がストッパー部材21の上面に当接した状態となり、搬器54に作用する荷重が変化したとしても、常に固定フレーム3を介して固定側(水平梁57)でロープ62に作用する荷重を支持した状態となり、安定して搬器54を支持することができる。
【0032】
そして、図1,2に示すように、上記索状体支持部2の固定フレーム3と、索状体結合部材10との間に、ロープ62に作用する荷重が減少したことを検知する検知部30が設けられている。この検知部30は、固定フレーム3から下方に突設され、上記索状体結合部材10に向けて屈曲した支持板31と、この支持板31に設けられた近接スイッチ32と、この近接スイッチ32の前面に位置するように索状体結合部材10に設けられた検知板33とを有している。支持板31に設けられた近接スイッチ32は、索状体結合部材10に設けられた検知板33の開口部34と対向するように配置されている。支持板31は、ビス38によって固定位置の上下方向調整ができるようになっており、この支持板31の位置調整によって近接スイッチ32と検知板33との相対位置が調整ができるようになっている。
【0033】
また、この実施形態では、仮に、近接スイッチ32が故障等によって作動しない場合でも、検知板33が近接スイッチ32の検知位置を超えて上昇したことを検知するリミットスイッチ35が設けられている。このリミットスイッチ35は、上記固定フレーム3から下方に向けて突設された支持板37に設けられ、上記検知板33の開口部34に向けて突設された検知棒36を有している。この検知棒36は、搬器54を吊下げた状態、及び上記近接スイッチ32で停止させた状態では作動しないが、検知板33の開口部34の下端が検知棒36の位置まで上昇すると、このリミットスイッチ35が作動して昇降機60を停止させる。このリミットスイッチ35により、ロープ62に作用する荷重が小さくなりすぎるのを防止している。この支持板37も、ビス38によって固定位置の上下方向調整ができるようになっており、この支持板37の位置調整によってリミットスイッチ35と検知板33との相対位置が調整ができるようになっている。
【0034】
図4(a) 〜(c) に示すように、上記停止調整装置1によれば、以下のようにして、搬器54の重量を所定の格納棚56の位置で固定側で支持した後、ロープ62に作用する荷重が所定量に減少した状態で昇降機60(図7)を停止させることができる。
【0035】
図4(a) に示すように、上記検知部30は、ロープ62に搬器54の重量または搬器54と搭載されたパレット80及び車両V(図7)の重量が作用している状態では、支持ばね20は縮んで可動側支持部材15がストッパー部材21に当接したメカストップの状態(図1)で支持される。この状態では、近接スイッチ32の前面に検知板33の開口部34が位置するため、近接スイッチ32による検知は行われない。
【0036】
そして、図4(b) に示すように、搬器54を所定の格納棚56の位置に保持した後、吊下げているロープ62を巻き下げると、このロープ62に作用している荷重が減少し、支持ばね20のばね力がロープ62に作用している荷重を越えると、ロープ62を支持している索状体結合部材10とともに検知板33がばね力によって上方へ移動させられる。この検知板33の上昇により、近接スイッチ32の前面が検知板33によって塞がれるので、これによって搬器54を格納棚56(後述する、図9の棚柱58に設けられた棚側受けブラケット71,72)で支持した後にロープ62に作用する荷重が所定量に減少したことが検知される。この近接スイッチ32による検知板33の検知によって、搬器54を吊下げている昇降機60が停止させられる。
【0037】
すなわち、図4(c) に示すように、索状体結合部材10は、この索状体結合部材10が固定側支持部材12の下面に当接した最下部の状態から可動側支持部材15がストッパー部材21の上面に当接する最上部の状態までの昇降ストロークAを有している。そして、このストロークAは、可動側支持部材15がストッパー部材21に当接した最下部の状態から、ロープ62に作用する荷重が所定の荷重に減少したことを近接スイッチ32で検知するストロークBと、この位置で上述したように近接スイッチ32の故障等によって近接スイッチ32による検知ができなかった場合に、リミットスイッチ35でロープ62の荷重減少を検知するストロークCとを有している。なお、図4(c) では、更に索状体支持部2を組立てる時に索状体結合部材10が固定側支持部材12の下面に当接したメカストップの状態となるストロークDも最上部に示している。図4(c) ではストロークB、ストロークCの検知をずらして記載しているが、連続的に検知するような構成になっている。
【0038】
例えば、上記図4(b) に示す状態では、図5に示すように、上記ロープ62に作用している荷重が支持ばね20のばね力と釣合う所定の荷重となった状態でロープ62の下降が停止させられて搬器54の下降が停止させられる。この状態では、ロープ62に作用している荷重は支持ばね20のばね力と釣り合った状態となるため、搬器54を格納棚56で保持した後にロープ62が弛むのを防止するとともに、ロープ62に所定のテンションを保つことができる。つまり、ロープ62の端部が連結された可動側支持部材15は、ストッパー部材21から離れ、支持ばね20のばね力による張力でロープ62を支持している。これにより、ロープ62のテンションを好ましい状態に保ち、格納棚56で保持した搬器54を再び上昇させるときにスムーズに上昇させることができる。
【0039】
しかも、支持ばね20のばね定数は一定の精度で製作でき、一般に経年変化も少ないので、予め所定長さに加工されたストッパー部材21を組み込むことで、簡単な調整で検知部30におけるロープ62の荷重減少量検知を、昇降機60の停止時において好ましいロープ62の荷重に合わせることができる。
【0040】
図5に示す状態は上記図4(b) に示す状態であり、上記したように検知板33が近接スイッチ32の前面を塞いで昇降機60が停止させられた状態では、可動側支持部材15がストッパー部材21から離れた状態であり、ロープ62に作用する荷重は支持ばね20のばね力による荷重となって、支持ばね20のばね定数等によって決められたものとなる。従って、搬器(昇降体)54を所定の格納棚56の位置に保持した状態でロープ62に作用する荷重を搬器側の荷重に影響されることなくほぼ一定にすることができる。しかも、支持ばね20のばね定数は経年変化が非常に少ないため、経年変化による荷重変化も抑えることができる。
【0041】
図6は、第2実施形態に係る停止調整装置40の正面図である。上記第1実施形態の停止調整装置1と同一の構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0042】
この実施形態におけるストッパー部材41は、支持ばね20が収縮する時に座屈しないように、支持ばね20の内径と所定の隙間を有する座屈防止部42が上部に設けられ、下部には、固定側支持部材45のガイド穴13に案内される径で形成された軸部43が設けられている。
【0043】
ロープ62の端部が連結された連結金具11は、上記ストッパー部材41の軸部43に設けられた索状体結合部材44に支持されている。これにより、ロープ62と一体的にストッパー部材41が軸線方向に移動するようになっている。
【0044】
また、ストッパー部材41の軸部43と反対側には可動側支持部材46が一体的に設けられている。この可動側支持部材46は、上記座屈防止部42の上部に一体的に形成されており、支持ばね20の上端が係止されるようになっている。支持ばね20は、この可動側支持部材46と上記固定側支持部材45の上面に形成されたばね座との間に設けられている。
【0045】
従って、この実施形態では、ロープ62に作用する荷重が大きい場合には、ストッパー部材41の座屈防止部42の下面が固定側支持部材45の上面に当接した状態となり、ロープ62に作用する荷重が変化したとしても、常にストッパー部材41を介して固定フレーム3でロープ62に作用する荷重を支持した状態となり、安定して搬器54を吊下げることができる。
【0046】
また、この実施形態によれば、支持ばね20の中空部分に設けたストッパー部材41の座屈防止部42によって、支持ばね20の収縮時に支持ばね20が横方向の変形するのを防止し、支持ばね20をロープ62の軸線方向に収縮させることができる。
【0047】
なお、他の構成及び図4(a) 〜(c) に示す作用等は上述した第1実施形態の停止調整装置1と同一であるため、詳細な説明は省略する。
【0048】
図7は、上記停止調整装置1を備えた機械式駐車設備の一例であるエレベータ式駐車設備50である。図示するように、エレベータ式駐車設備50は、鉄骨構造体の外面に外装板を設けた駐車塔51を有している。このエレベータ式駐車設備50では、上記停止調整装置1を備えた例を説明し、停止調整装置1に関する構成には、上述した符号を付して説明する。
【0049】
この実施形態の駐車塔51は、地上1階が乗入れ部52となっており、中央部鉛直方向に平面視が矩形状の昇降路53が設けられている。そして、この昇降路53には、パレット80を搬送する搬器(昇降体)54が設けられている。この搬器54は、駐車塔51の上部から吊下げられたロープ62によって昇降させられる。
【0050】
また、昇降路53を挟んで図の左右両側の鉛直方向に、複数段の格納棚56が設けられている。各格納棚56には、車両を搭載するパレット80が格納され、上記搬器54に設けられたパレット移載機構55によって、パレット80が搬器54と各格納棚56との間で払出し/引込みが行われる。パレット移載機構55は、公知の手段が採用される。
【0051】
この実施形態のエレベータ式駐車設備50の場合、ロープ62によって吊下げられた搬器54を昇降させる昇降機60が、駐車塔51の下部(例えば、乗入れ部)に設けられた下部駆動方式となっている。この下部駆動方式は、駐車塔51の乗入れ部52に昇降機60が設置され、この昇降機60の駆動シーブ61に複数本のロープ(索状体)62が掛けられている。従って、昇降機60の駆動シーブ61を回転駆動することによって、搬器54がロープ62で昇降させられる。
【0052】
図8に示すように、上記搬器54の吊下げは、搬器54の下部に設けた動滑車63に掛けたロープ62の一端を駐車塔51の水平梁57(図7)に設けられた上記停止調整装置1で支持し、他端を昇降機60の駆動シーブ61に巻き掛けた後、動滑車掛けでカウンタウェイト64を吊持する動滑車方式となっている。
【0053】
具体的な動滑車方式による搬器54の吊持は、昇降機60の駆動シーブ61に掛けられた複数本のロープ62が、両端部のいずれもが駆動シーブ61から上方に延び、駐車塔51の最上部に設けられた複数の転向プーリ65によって水平方向に転向させられる。
【0054】
その後、ロープ62の一端は、昇降路53の上方に設けられた吊下げプーリ66によって下方に曲げられて搬器54に向けて垂下し、搬器54の下部に設けられた動滑車63に掛けられた後、駐車塔51の上部まで延ばされて、駐車塔51の水平梁57に設けられた上記停止調整装置1によって支持されている。
【0055】
また、ロープ62の他端は、格納棚56の後方部分に設けられた吊下げプーリ67によって下方に曲げられ、昇降機60による巻上げ力を軽減するカウンタウェイト64を吊持した後、駐車塔51の上部に設けられた支持部68で支持されている。
【0056】
従って、昇降機60でロープ62を巻上げ/巻下げ駆動することにより、搬器54とカウンタウェイト64とはつるべ式に動作し、搬器54を上昇させれば、そのストローク分でカウンタウェイト64が下降するように駆動される。
【0057】
また、図9に示すように、上記エレベータ式駐車設備50には、搬器54を所定の格納棚56の位置で保持する定位置保持装置70が設けられている。この実施形態の定位置保持装置70は、各格納棚56の位置において形鋼の棚柱58に設けられた棚側受けブラケット71,72と、搬器54に設けられて上記棚側受けブラケット71,72に保持される保持部材73,74を有する搬器保持機構75とを備えている。搬器保持機構75は、搬器54の中心に対して対称に配置され、この搬器保持機構75に設けられた保持部材73,74が、上記棚側受けブラケット71,72によって4点で保持される。棚側受けブラケット71,72は、各格納棚56の所定位置(搬器54と格納棚56との間でパレット80のスムーズな払出し/引込みができる高さ位置)にそれぞれ設けられている。
【0058】
搬器保持機構75は、搬器54を昇降させるときには上記保持部材73,74を図9に示す通過状態とし、各格納棚56の棚側受けブラケット71,72で保持するときには保持状態(図示する二点鎖線の保持部材73,74)に変更する駆動軸76を有している。この駆動軸76の両端部に上記保持部材73,74が設けられており、駆動軸76を約90°で回動させることにより(二点鎖線)、棚側受けブラケット71,72によって搬器54を保持するか、通過させるかを選択することができる。
【0059】
この定位置保持装置70は一例であり、他の構成で搬器54を各格納棚56の所定位置に保持するようにしてもよい。
【0060】
以上のように構成されたエレベータ式駐車設備(機械式駐車設備)50によれば、以下のようにして搬器(昇降体)54を所定の格納棚56の位置に保持した状態で、ロープ62に作用する荷重を所定量に減少した荷重に調整することができる。
【0061】
まず、昇降機60によって所望の格納棚56の位置に昇降させた搬器54を、格納棚56の所定位置上方で停止させる。その後、その状態で搬器54を微速で下降させて、定位置保持装置70によって格納棚56の所定位置に保持する。これにより、搬器54の荷重が定位置保持装置70で保持される。
【0062】
そして、昇降機60による更なる搬器54の下降動作によってロープ62に作用している荷重が徐々に減少し、このロープ62に作用している荷重が停止調整装置1の索状体支持部2に設けられた支持ばね20のばね力よりも小さくなると、上記可動側支持部材15が支持ばね20のばね力によって上昇させられる(図5の状態)。
【0063】
この支持ばね20による可動側支持部材15の押上げにより、ロープ62の端部が結合された索状体結合部材10と、この索状体結合部材10に設けられた検知板33とが一体的に上昇し、近接スイッチ32の前面が検知板33によって塞がれる。そして、近接スイッチ32による検知板33の検知により、ロープ62に作用している荷重が所定量に減少したと判断して昇降機60が停止させられる。
【0064】
このように、上記停止調整装置1を備えたエレベータ式駐車設備50によれば、通常運転時には、搬器54の重量、及びその上部にパレット80、車両Vを搭載した場合の大きな重量はロープ62の端部に連結された索状体結合部材10と軸部材18及びストッパー部材21介して固定側支持部材12で支持している。
【0065】
つまり、搬器54によって昇降させるパレット80が空車のときと実車のときでロープ62に作用する荷重が大きく異なっても、また搬器54にパレット80を搭載しない無負荷時でも上記停止調整装置1の部分では、可動側支持部材15が支持ばね20を縮めてストッパー部材21に当接した状態で使用される。
【0066】
そして、搬器(昇降体)54を所定の格納棚56の位置で保持したときには、搬器54の重量を固定側支持部材12で支持した後にロープ62に作用する荷重が減少して所定量に達したことを、支持ばね20が伸びて近接スイッチ32が検知板33を検知したことで検知するため、搬器54を格納棚56で保持した状態でロープ62に作用する荷重は支持ばね20のばね定数等を設定することで、搬器54の保持状態におけるロープ62に作用する荷重を常に安定した荷重に保つことができる。
【0067】
従って、ロープ62に作用する荷重が経年変化等で変化したとしても、支持ばね20のばね力によってロープ62に作用する荷重を常にほぼ一定とすることができ、昇降機60が停止している状態では搬器54を吊下げているロープ62は弛ませることなく常に所定の荷重が作用している状態とすることができ、常に搬器(昇降体)54の安定した昇降駆動を行うことが可能となる。
【0068】
また、ロープ62に所定の荷重が作用している状態で昇降機60を停止させる構成を簡単な構成(例えば、強制的に拘束するための複雑な機構が不要)とすることができ、しかも、検知部30をON/OFFの単純な構成とすることができるので、ロープ62に所定の荷重を作用させた状態で昇降機60を停止させる停止調整装置1の信頼性向上、及びメンテナンス性向上を図ることが可能となる。
【0069】
なお、上記実施形態では、昇降機60の停止調整装置1を備えた設備として機械式駐車設備を例に説明したが、昇降体を昇降させる昇降機を備えた設備であれば同様に適用でき、他の設備においても同様に適用できる。
【0070】
また、上記実施形態では、下部駆動方式のエレベータ式駐車設備50を例に説明したが、機械式駐車設備としては索状体(ロープ、チェーン等)で搬器54を昇降させる駐車設備であればよく、上部駆動方式や他の形式の機械式駐車設備であってもよく、上記実施形態に限定されるものではない。さらに、搬器54が動滑車方式の吊持方法となったエレベータ式駐車設備50例を説明したが、搬器54を昇降させる吊持方法は上記実施形態に限定されるものではなく、他の方式であってもよい。定位置保持装置70も、他の形式であってもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、昇降機60の索状体支持部2を固定構造部である駐車塔51に設けた例を説明したが、索状体支持部2を搬器(昇降体)54に設けるようにしてもよく、索状体支持部2は固定構造部または昇降体のいずれに設けてもよく、上記実施形態に限定されるものではない。
【0072】
さらに、上記実施形態は一例を示しており、本発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明に係る停止調整装置は、昇降体を昇降機で昇降させる設備において利用でき、立体倉庫や機械式駐車設備等に利用することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 停止調整装置
2 索状体支持部
3 固定フレーム
7 下板
8 貫通穴
10 索状体結合部材
11 連結金具
12 固定側支持部材
13 ガイド穴
15 可動側支持部材
18 軸部材
20 支持ばね(圧縮ばね)
21 ストッパー部材
22 ガイド穴
25 回り止め部材
30 検知部
31 支持板
32 近接スイッチ
33 検知板
34 開口部
35 リミットスイッチ
36 検知棒
37 支持板
38 ビス
40 停止調整装置
41 ストッパー部材
42 座屈防止部
43 軸部
44 索状体結合部材
46 可動側支持部材
50 エレベータ式駐車設備(機械式駐車設備)
51 駐車塔
54 搬器(昇降体)
56 格納棚
57 水平梁(固定側支持部)
58 棚柱
60 昇降機
61 駆動シーブ
62 ロープ(索状体)
63 動滑車
70 定位置保持装置
71 棚側受けブラケット
72 棚側受けブラケット
73 保持部材
74 保持部材
75 搬器保持機構
76 駆動軸
80 パレット
V 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降体を吊下げた索状体の巻上げ/巻下げにより前記昇降体を昇降させ、前記昇降体を所定の停止位置において保持するように構成した設備における昇降機の停止調整装置であって、
前記索状体は、少なくとも一端が固定構造部または前記昇降体に設けられた索状体支持部に支持されており、
前記索状体支持部は、前記索状体に作用する荷重変化を検知する検知部を具備し、
前記検知部は、前記昇降体を前記定位置保持装置で保持した後に索状体に作用する荷重が所定量に減少したことを検出して昇降機を停止するように構成されていることを特徴とする昇降機の停止調整装置。
【請求項2】
前記索状体支持部は、前記固定構造部または前記昇降体に設けられた固定側支持部材と、前記索状体の一端に連結された可動側支持部材と、前記固定側支持部材と可動側支持部材との間に設けて前記索状体に作用する荷重を支持する弾性体と、を備え、
前記検知部は、前記索状体に作用する荷重変化を索状体の変位量で検出する変位検出部を備えている請求項1に記載の昇降機の停止調整装置。
【請求項3】
前記変位検出部は、前記索状体の変位量を示す被検出部材と、前記被検出部材の変位量を検出する変位検出部材と、を備え、
前記被検出部材の変位量が所定量に達したことを前記変位検出部材が検出したことで昇降機を停止するように構成されている請求項2に記載の昇降機の停止調整装置。
【請求項4】
前記弾性体は、支持ばねで構成され、
前記索状体に作用する荷重が所定量を超えると前記支持ばねの軸線方向の変形を停止させるストッパー部材を有している請求項2又は3に記載の昇降機の停止調整装置。
【請求項5】
前記ストッパー部材は、前記支持ばねの中空部分に配置され、
前記支持ばねの内径に対して所定の隙間を設けて横方向の変形を防止する変形防止部材を有している請求項4に記載の昇降機の停止調整装置。
【請求項6】
前記可動側支持部材は、前記固定側支持部材との間に前記索状体の軸線方向に対して直交する面内の回動を抑止する回り止め部材を有している請求項1〜5のいずれか1項に記載の昇降機の停止調整装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の停止調整装置を備えた機械式駐車設備であって、
前記昇降体が搬器であり、
前記所定の停止位置が格納棚であり、
前記搬器を索状体で巻上げ/巻下げする昇降機と、
前記搬器を所定の格納棚の位置で保持する定位置保持装置とを備えたことを特徴とする機械式駐車設備。
【請求項8】
前記索状体支持部は、固定構造部に設けられ、
前記搬器は、下部に動滑車を有し、
前記索状体は、前記搬器の動滑車に掛けられた後、前記固定構造部の索状体支持部に支持されている請求項7に記載の機械式駐車設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−87571(P2013−87571A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231410(P2011−231410)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)