説明

映画字幕用ハロゲン化銀写真感光材料

【課題】映画ポジプリントを作成する際に、傷跡が写り込むことが無く、耐久性に優れた映画字幕用ハロゲン化銀感光材料を提供すること。
【解決手段】透過支持体上に少なくとも1層の感光性層と少なくとも1層の非感光性層を有し、該非感光性層にシリコーンオイルの少なくとも1種を含有することを特徴とする映画字幕用ハロゲン化銀写真感光材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハロゲン化銀写真感光材料、特に映画字幕作成用のハロゲン化銀写真感光材料に関する。更には、映画ポジプリントを作成する際に、傷跡が写り込むことが無く、耐久性に優れた字幕作成用感光材料に関する。
【背景技術】
【0002】
ハロゲン化銀写真技術の応用である映画は、1秒間に通常24枚の割合で対象物を撮影し、得られた静止画を撮影時と同じ速度で順次投影し、動画像を再現する方法である。この方法は、100年以上に渡り改良され続けているハロゲン化銀写真技術に立脚しており、他の動画像を再現する方法に比べ圧倒的な高画質を有している。この高画質を原資とした大画面化が容易であり、大人数が同時に動画像を鑑賞するのに適している。それ故、映画館などの大画面への映画映写設備を有する大人数収容可能な劇場が多数作られている。しかしながら、最近の急速な電子技術および情報処理技術の発達は、撮影、編集、および上映に至る映画の全ての過程に、デジタル画像処理技術を基にした画質的に匹敵する代替手段を提案出来るまでに至った。これらデジタル画像処理技術に立脚する手法は、コンピュータの進歩により画像を簡便に取り扱える点と、劣化が少ないというデジタル信号の特徴に基づく再現性が良い点を特徴としている。従って、ハロゲン化銀写真技術に基づく映画に対しても、本来の高画質を維持しつつ簡便性や安定性の付与、特に保存や現像処理液の変動に対する安定性といった現像所における簡便性や安定性の付与が求められている。
【0003】
これら、高画質を維持しつつ簡便性や安定性を付与する因子の一つが、連続多量露光・現像処理における耐傷性である。映画ポジ感材に挿入する字幕を入れる方法は多岐にわたる。インターミディエイトを介して映画の絵情報を接触露光した後に、レーザーを用いて削り取る方法や、絵情報を含むインターミディエイトそのものに文字情報も焼き付けておく方法など様々である。その中でも、最も多く用いられている手法は、字幕を黒文字で作成した白黒感光材料と絵情報インターミディエイトと映画ポジ感材を3枚重ねて露光する方法である。この方法であれば、同一の絵情報に対して、多言語字幕を付与した映画用ポジ感材を作成することが可能になる。
【0004】
映画字幕用感光材料は、微小サイズの文字を拡大して投影する原版となることから、鮮鋭度に優れ、かつ高濃度の発色を有することが性能として求められる。特に鮮鋭度の品質要求から、マイクロフイルム感光材料と類似した処方を元にして処方設計することが可能である。マイクロフイルム処方の詳細については、特開平7-128779に記されているが、本感材をそのまま映画プリントに流用すると、高速露光時に擦り傷等を受けやすく、耐久性に問題があることが判っている。更に文字抜きをするために十分な濃度を有しておらず、滑り性と共に改善が求められるレベルにある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、前記従来における問題を解決するところにある。即ち、映画ポジプリントを作成する際に、傷跡が写り込むことが無く、耐久性に優れた映画字幕用ハロゲン化銀感光材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題に対して鋭意検討した結果、映画ポジプリントを作成する際に、傷跡が写り込むことが無く、耐久性に優れた映画字幕用ハロゲン化銀感光材料を作成する上でオーバーコート層の油溶分組成物が重要であることを見い出し、特定の化合物を用いることにより大幅な改良効果を確認できた。
【0007】
前記課題を解決する手段は以下の通りである。即ち、
(1) 透過支持体上に少なくとも1層の感光性層と少なくとも1層の非感光性層を有し、該非感光性層にシリコーンオイルの少なくとも1種を含有することを特徴とする映画字幕用ハロゲン化銀写真感光材料。
(2) 前記シリコーンオイルが、下記一般式(A)又は/及び一般式(B)で現わされることを特徴とする(1)記載の映画字幕用ハロゲン化銀写真感光材料。
【0008】
【化3】

【0009】
nは1以上の整数を表す。
【0010】
【化4】

【0011】
l、mはそれぞれ、1以上の整数を表す。
【0012】
(3) 前記ハロゲン化銀感光材料中の全塗設銀量が1.70g/m2以上、2.50g/m2以下であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の映画字幕用ハロゲン化銀感光材料。
【発明の効果】
【0013】
本発明の実施により、映画ポジプリントを作成する際に、傷跡が写り込むことが無く、耐久性に優れた効果を創出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
シリコーンオイルについて詳細に説明する。滑剤としてのシリコーンオイルとしては、ストレートシリコーンオイル、および変性シリコーンオイルやその硬化物が使用できる。ストレートシリコーンオイルには、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルがあり、ジメチルシリコーンオイルとしては、KF96−10、KF96−100、KF96−1000、KF96H−10000、KF96H−12500、KF96H−100000(いずれも商品名、信越化学工業(株)製)等を挙げられ、メチルフェニルシリコーンオイルとしては、KF50−100、KF54、KF56(いずれも商品名、信越化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0015】
変性シリコーンオイルは、反応性シリコーンオイルと非反応性シリコーンオイルに分類できる。反応性シリコーンオイルには、本発明のアミノ変性シリコーンオイルやエポキシ変性シリコーンオイルの他に、エポキシ変性、カルボキシル変性、ヒドロキシ変性、メタクリル変性、メルカプト変性、フェノール変性、片末端反応性・異種官能基変性がある。カルボキシル変性シリコーンオイルとしては、X−22−162C(商品名、信越化学工業(株)製)等が挙げられ、ヒドロキシ変性シリコーンオイルとしては、X−22−160AS、KF−6001、KF−6002、KF−6003、X−22−170DX、X−22−176DX、X−22−176D、X−22−176DF(いずれも商品名、信越化学工業(株)製)等が挙げられ、メタクリル変性シリコーンオイルとしては、X−22−164A、X−22−164C、X−24−8201、X−22−174D、X−22−2426(いずれも商品名、信越化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0016】
反応性シリコーンオイルとしては、硬化させて使用することもでき、反応硬化型、光硬化型、触媒硬化型等に分類できる。このなかで反応硬化型のシリコーンオイルが特に好ましく、反応硬化型シリコーンオイルとしては、アミノ変性シリコーンオイルとエポキシ変性シリコーンオイルとを反応硬化させたものが好ましい。また、触媒硬化型あるいは光硬化型シリコーンオイルとしては、KS−705F−PS、KS−705F−PS−1、KS−770−PL−3〔触媒硬化型シリコーンオイル:いずれも商品名、信越化学工業(株)製〕、KS−720、KS−774−PL−3〔光硬化型シリコーンオイル:いずれも商品名、信越化学工業(株)製〕等が挙げられる。これら硬化型シリコーンオイルの添加量は受容層を構成する樹脂の0.5〜30質量%が好ましい。離型剤は、ポリエステル樹脂100質量部に対して2〜4質量%、好ましくは2〜3質量%程度使用する。
【0017】
非反応性シリコーンオイルとしては、ポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、高級脂肪酸エステル変性、親水性特殊変性、高級アルコキシ変性、フッ素変性等がある。ポリエーテル変性シリコーン(KF−6012、商品名、信越化学工業(株)製)が挙げられ、メチルスチル変性シリコーンシリコーンオイルとしては、(24−510、KF41−410、いずれも商品名、信越化学工業(株)製)等が挙げられる。また、下記一般式1〜3のいずれかで表される変性シリコーンも使用することができる。
【0018】
【化5】

【0019】
一般式1中、Rは水素原子、またはアリール基、若しくはシクロアルキル基で置換されても良い直鎖または分岐のアルキル基を表す。m、nは2000以下の整数を表し、a、bは30以下の整数を表す。
【0020】
【化6】

【0021】
一般式2中、Rは水素原子、またはアリール基、若しくはシクロアルキル基で置換されても良い直鎖または分岐のアルキル基を表す。mは2000以下の整数を表し、a、bは30以下の整数を表す。
【0022】
【化7】

【0023】
一般式3中、Rは水素原子、またはアリール基、若しくはシクロアルキル基で置換されても良い直鎖または分岐のアルキル基を表す。m、nは2000以下の整数を表し、a、bは30以下の整数を表す。R1は単結合または2価の連結基を表し、Eは置換基を有し
てもよいエチレン基を表し、Pは置換基を有してもよいプロピレン基を表す。
【0024】
上記のようなシリコーンオイルは「シリコーンハンドブック」(日刊工業新聞社刊)に記載されており、硬化型シリコーンオイルの硬化技術として、特開平8−108636号公報や特開2002−264543号公報に記載の技術が好ましく使用できる。
【0025】
このなかでも、特に好ましいシリコーンオイルは非反応性シリコーンオイルであり、その中でも特に好ましいのはストレートシリコーンオイルである。ストレートシリコーンオイルの中でも更に好ましくは一般式(A)で表されるジメチルシリコーンオイル、一般式(B)で表されるメチルフェニルシリコーンオイルである。
【0026】
【化8】

【0027】
nは1以上の整数を表す。
【0028】
【化9】

【0029】
L、mはそれぞれ、1以上の整数を表す。
更にこの中でも好ましいシリコーンオイルはジメチルシリコーンオイルであり、KF96−10、KF96−100が好ましく、最も好ましいのはKF-96-10である。
【0030】
シリコーンオイルの好ましい塗設量は、5mg/m2以上50mg/m2以下であり、より好ましくは5mg/m2以上30mg/m2以下である。更に好ましくは5mg/m2以上25mg/m2以下である。
【0031】
感光材料中の全塗設銀量の好ましい範囲は、1.70g/m2以上2.50g/m2以下であり、さらに好ましくは2.00g/m2以上2.50g/m2以下であり、さらに好ましくは2.10g/m2以上2.40g/m2以下である。
【0032】
少なくとも1層の感光性ハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀写真感光材料において、特開平7−128779の2頁目33行目から26頁目20行目に記載の化合物によって分光増感されることが好ましく、特にI−7に示される化合物が好ましい。
【0033】
本発明で使用するハロゲン化銀写真乳剤にはハロゲン化銀として、臭化銀、沃臭化銀、沃塩臭化銀、塩臭化銀及び塩化銀のいずれを用いても良い。またハロゲン化銀粒子の晶相はどのようなものでもよい。上記ハロゲン化銀乳剤は、厚みが0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下で、径が好ましくは0.6μm以上であり、そして平均アスペクト比が5以上の粒子が全投影面積の50%以上を占めるような平板粒子であってもよい。また、平均粒径の±40%以内の範囲にある粒子サイズを有する粒子が全粒子個数の95%以上を占めるような単分散の乳剤であってもよい。ハロゲン化銀粒子は内部と表層とが異なる相をもっていても、均一な相からなっていてもよい。また潜像が主として表面に形成されるような粒子(例えばネガ型乳剤)でもよく、粒子内部に主として形成されるような粒子(例えば、内部潜像型乳剤、予めかぶらせた直接反転型乳剤)であってもよい。
【0034】
本発明に用いられる写真乳剤は、ピー・グラフキデス(P.Glafkides)、著「シミー・エ・フィジーク・フォトグラフィーク(Chimie et Physique Photogr aphique)」(ポール・モンテル(Paul Montel)社刊、1967年)、ジー・エフ・ダァフィン(G.F.Duffin) 著「フォトグラフィック・エマルジョン・ケミストリー (Photographic Emulsion Chemistry)」(フォーカルプレス(Focal Press)社刊、1966年)、ヴィ・エル・ツェリクマンら(V.L.Zelikman et al.)著「メイキング・アンド・コーティング・フォトグラフィック・エマルジョン(Making and Coating Photographic Emulsion) 」(フォーカル・プレス(Focal Press)社刊、1964年)などに記載された方法を用いて調製することができる。すなわち、酸性法、中性法、アンモニア法等のいずれでも良く、また可溶性ハロゲン塩を反応させる形式としては片側混合法、同時混合法、それらの組合わせなどのいずれを用いてもよい。また、粒子を銀イオン過剰の下において形成させる方法(いわゆる逆混合法)を用いることもできる。同時混合法の一つの形式としてはハロゲン化銀の生成される液相中のpAgを一定に保つ方法、すなわちいわゆるコントロール・ダブルジェット法を用いることもできる。この方法によると、結晶形が規則的で粒子サイズが均一に近いハロゲン化銀乳剤が得られる。別々に形成した2種以上のハロゲン化銀乳剤を混合して用いても良い。
【0035】
またこのハロゲン化銀粒子の形成時には粒子の成長をコントロールするためにハロゲン化銀溶剤として例えばアンモニア、ロダンカリ、ロダンアンモン、チオエーテル化合物(例えば、米国特許第3,271,157号、同第3,574,628号、同第3,704,130号、同4,297,439号、同第4,276,374号など)、チオン化合物(例えば特開昭53−144319号公報、同第53−82408号公報、同第55−77737号公報など)、アミン化合物(例えば特開昭54−100717号公報など)などを用いることができる。
【0036】
ハロゲン化銀粒子形成または物理熟成の過程においてカドミウム塩、亜鉛塩、タリウム塩、イリジウム塩またはその錯塩、ロジウム塩またはその錯塩、鉄塩または鉄錯塩などを共存させてもよい。また、本発明に用いられる内部潜像型乳剤としては、例えば米国特許第2,592,250号、同3,206,313号、同3,447,927号、同3,761,276号、及び同3,935,014号、等に記載がある異種金属を内蔵させた乳剤等を挙げることができる。
【0037】
ハロゲン化銀乳剤は、通常は化学増感される。化学増感のためには、例えば、エイチ・フリーザー(H.Frieser)著「ディ・グランドラーゲッター・フォトグラフィッシェン・プロツェス・ミット・シルベルハロゲニーデン(Die Grundklagendor Photographischen Prozesse mit Silber halogenlden)(アカデミッシェ・フェアラーク社(Akademische Verlagegegellschaft,1968年刊)675〜734頁に記載の方法を用いることができる。すなわち、活性ゼラチンや銀と反応し得る硫黄を含む化合物(例えば、チオ硫酸塩、チオ尿素類、メルカプト化合物類、ローダニン類)を用いる硫黄増感法;還元性物質(例えば、第一すず塩、アミン類、ヒドラジン誘導体、ホルムアミジンスルフィン酸、シラン化合物)を用いる還元増感法;貴金属化合物(例えば、金錯塩のほか、Pt、Rh、Ir、Pdなどの周期律表VIII族の金属の錯塩)を用いる貴金属増感法などを単独または組合わせて用いることができる。
【0038】
さらに具体的な化学増感剤として、アリルチオカルバミド、チオ尿素、ソジウム・チオサルフェートやシスチンなどの硫黄増感剤;ポタシウム・クロロオーレイト、オーラス・チオサルフェートやポタシウム・クロロパラデートなどの貴金属増感剤;塩化スズ、フェニルヒドラジンやレダクトンなどの還元増感剤等を含む。またセレン増感剤を用いることも有用である。セレン化合物としては、不安定型セレン化合物および/または非不安定型セレン化合物があり、高温、好ましくは40℃以上で乳剤を一定時間攪拌することにより用いられる。不安定型セレン化合物としては特公昭44−15748号、特公昭43−13489号、特願平2−130976号、特願平2−229300号などに記載の化合物を用いることが好ましい。具体的な不安定セレン増感剤としては、イソセレノシアネート類(例えばアリルイソセレノシアネートの如き脂肪族イソセレノシアネート類)、セレノ尿素類、セレノケトン類、セレノアミド類、セレノカルボン酸類(例えば、2−セレノプロピオン酸、2−セレノ酢酸)、セレノエステル類、ジアシルセレニド類(例えば、ビス(3−クロロ−2,6−ジメトキシベンゾイル)セレニド)、セレノホスフェート類、ホスフィンセレニド類、コロイド状金属セレンなどがあげられる。不安定型セレン化合物の好ましい類型を上に述べたがこれらは限定的なものではない。当業技術者には写真尿素の増感剤としての不安定型セレン化合物といえば、セレンが不安定である限りに於いて該化合物の構造はさして重要なものではなく、セレン増感剤分子の有機部分はセレンを担持し、それを不安定な形で乳剤中に存在せしめる以外何らの役割をもたないことが一般に理解されている。本発明においては、かかる広範な概念の不安定セレン化合物が有利に用いられる。非不安定型セレン化合物としては特公昭46−4553号、特公昭52−34492号および特公昭52−34491号に記載の化合物が非不安定型セレン化合物としては例えば亜セレン酸、セレノシアン化カリウム、セレナゾール類、セレナゾール類の四級塩、ジアリールセレニド、ジアリールジセレニド、ジアルキルセレニド、ジアルキルジセレニド、2−セレナゾリジンジオン、2−セレノオキサゾリジンチオンおよびこれらの誘導体等があげられる。またポリオキシエチレン化合物、ポリオキシプロピレン化合物、四級アンモニウム基をもつ化合物などの増感剤も含んでもよい。
【0039】
上記写真乳剤には、感光材料の製造工程、保存中あるいは写真処理中のカブリを防止し、あるいは写真性能を安定化させる目的で、種々の化合物を含有させることができる。すなわちアゾール類、例えばベンゾチアゾリウム塩、ニトロインダゾール流、トリアゾール類、ベンゾトリアゾール類、ベンズイミダゾール類(特にニトロまたはハロゲン置換体);ヘテロ環メルカプト化合物類たとえばメルカプトチアゾール類、メルカプトベンゾチアゾール類、メルカプトベンズイミダゾール類、メルカプトチアジアゾール類、メルカプトテトラゾール類(特に1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール)、メルカプトピリミジン類;カルボキシル基やスルホン基などの水溶性基を有する上記のヘテロ類メルカプト化合物類;チオケト化合物たとえばオキサゾリンチオン;アザインデン類たとえばテトラアザインデン類(特に4−ヒドロキシ置換(1,3,3a,7)テトラアザインデン類);ベンゼンチオスルホン酸類;ベンゼンスルフィン酸;などのようなカブリ防止剤または安定剤として知られた多くの化合物を加えることができる。
【0040】
ハロゲン化銀乳剤は、米国特許第3,411,911号、同3,411,912号、同3,142,568号、同3,325,286号、同3,547,650号、特公昭45−5331号公報に記載されているアルキルアクリレート、アルキルメタアクリレート、アクリル酸、グリシジルアクリレート等のホモ、またはコポリマーからなるポリマーラテックスを写真材料の寸度安定性の向上、膜物性の改良などの目的で含有することができる。
【0041】
ハロゲン化銀乳剤をリス型の印刷用感光材料として用いるときには、伝染現像効果を高めるようなポリアルキレンオキシド化合物を用いることができる。たとえば米国特許第2,400,532号、同第3,294,537号、同第3,294,540号、仏国特許第1,491,805号、同第1,596,673号、特公昭40−234466号公報、特開昭60−156423号公報、同54−18726号公報、同56−161933号公報に記載されているような化合物を用いることができる。好ましい例としては、炭素原子数2〜4のアルキレンオキシド、例えばエチレンオキシド、プロピレン−1,2−オキシド、ブチレン−1,2−オキシドなど好ましくはエチレンオキシドの少なくとも10単位からなるポリアルキレンオキシドと水、脂肪族アルコール、芳香族アルコール、脂肪酸、有機アミン、ヘキシトール誘導体などの活性水素原子を少なくとも一個有する化合物との縮合物あるいは、二種以上のポリアルキレンオキシドのブロックポリマーなどを挙げることができる。すなわち、ポリアルキレンオキシド化合物として、具体的にはポリアルキレングリコールアルキルエーテル類、ポリアルキレングリコールアリールエーテル類、ポリアルキレングリコールアルキルアリールエーテル類、ポリアルキレングリコールエステル類、ポリアリキレングリコール脂肪族アミド類、ポリアルキレングリコールアミン類、ポリアルキレングリコールブロック共重合体、ポリアルキレングリコールグラフト重合物などを用いることができる。使用できるポリアルキレンオキシド化合物は分子量が300〜15,000、好ましくは600〜8,000のものである。これらのポリアルキレンオキシド化合物の添加量はハロゲン化銀1モル当り10mg〜3gが好ましい。添加時期は製造工程中の任意の時期を選ぶことができる。
【0042】
本発明に使用されるハロゲン化銀写真乳剤は、シアン・カプラー、マゼンタ・カプラー、イエロー・カプラーなどのカラー・カプラー及びカプラーを分散する化合物を含むことができる。すなわち発色現像処理において芳香族一級アミン現像液(例えば、フェニレンジアミン誘導体や、アミノフェノール誘導体など)との酸化カップリングによって発色しうる化合物を含んでもい。例えば、マゼンタカプラーとして、5−ピラゾロンカプラー、ピラゾロベンツイミダゾールカプラー、シアノアセチルクマロンカプラー、開鎖アシルアセトニトリルカプラー等があり、イエローカプラーとして、アシルアセトアミドカプラー(例えばベンゾイルアセトアニリド類、ピバロイルアセトアニリド類)、等があり、シアンカプラーとして、ナフトールカプラー、およびフェノールカプラー、等がある。これらのカプラーは分子中にバラスト基と呼ばれる疎水基を有する非拡散のものが望ましい。カプラーは銀イオンに対し四当量性あるいは二当量性のどちらでもよい。また色補正の効果を持つカラードカプラー、あるいは現像にともなって現像抑制剤を放出するカプラー(いわゆるDIRカプラー)であってもよい。またDIRカプラー以外にも、カップリング反応の生成物が無色であって現像抑制剤を放出する無呈色DIRカップリング化合物を含んでいてもよい。
【0043】
ハロゲン化銀乳剤にはフィルター染料として、あるいはイラジェーション防止その他種々の目的で、水溶性染料(例えばオキソノール染料、ヘミオキソ ノール染料及びメロシアニン染料)を含有してもよい。
【0044】
ハロゲン化銀乳剤には塗布助剤、帯電防止、スベリ性改良、乳化分散、接着防止および写真特性改良(たとえば現像促進、硬調化、増感)など種々の目的で種々の界面活性剤を含んでもよい。たとえばサポニン(ステロイド系)、アルキレンオキサイド誘導体(例えばポリエチレングリコール)、ポリエチレングリコールアルキルエーテル類、グリシドール誘導体、多価アルコールの脂肪酸エステル類、糖のアルキルエステル類などの非イオン性界面活性剤;アルキルカルボン酸塩、アルキルスルフォン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキル硫酸エステル類、などのアニオン性界面活性剤;アルキルアミン塩類、脂肪族あるいは芳香族第四級アンモニウム塩類、ビリジニウム、イミダゾリウムなどの複素環第四級アンモニウム塩類、などのカチオン界面活性剤を用いることができる。また、帯電防止として用いる場合には、含フッ素界面活性剤が好ましい。
【0045】
本発明を実施するに際して下記の公知の褪色防止剤を併用することもでき、また本発明に用いる色像安定剤は単独または二種以上併用することもできる。公知の褪色防止剤としては、ハイドロキノン誘導体、没食子酸誘導体、p−アルコキシフェノール類、p−オキシフェノール誘導体及びビスフェノール類糖がある。
【0046】
写真乳剤には無機または有機の硬膜剤を含有してよい。例えばクロム塩(クロムミョウバン、酢酸クロムなど)、アルデヒド類(ホルムアルデヒド、グリオキサール、グルタールアルデヒドなど)、活性ビニル化合物(1,3,4−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、1,3−ビニルスルホニル−2−プロパノールなど)、活性ハロゲン化合物(2,4−ジクロル−6−ヒドロキシ−s−トリアジンなど)、などを単独または組合わせて用いることができる。
【0047】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料は色カブリ防止剤として、ハイドロキノン誘導体、アミノフェノール誘導体、没食子酸誘導体、などを含有していてもよい。
【0048】
本発明の感光材料には、イラジエーション防止、ハレーション防止、特に各感光層の分光感度分布の分離並びにセーフライトに対する安全性確保のために、コロイド銀や染料が用いられる。この様な染料には、例えば米国特許第506,385号、同1,177,429号、同1,131,844号、同1,338,799号、同1,385,371号、同1,467,214号、同1,438,102号、同1,533,516号、特開昭48−85130号公報、同49−114420号公報、同52−117123号公報、同55−161233号公報、同59−111640号公報、特公昭39−22069号公報、同43−13168号公報、同62−273527号、米国特許第3,247,127号、同3,469,985号、同4,078,933号等に記載されたピラゾロン核やビルビツール核やバルビツール酸核を有するオキソノール染料、米国特許第2,533,472号、同3,379,533号、英国特許第1,278,621号、特開平1−134447号公報、同1−183652号公報等に記載されたその他のオキソノール染料、英国特許第575,691号、同680,631号、同599,623号、同786,907号、同907,125号、同1,045,609号、米国特許第4,255,326号、特開昭59−211043号公報等に記載されたアゾ染料、特開昭50−100116号公報、同54−118247号公報、英国特許第2,014,598号、同750,031号等に記載されたアゾメチン染料、米国特許第2,865,752号に記載されたアントラキノン染料、米国特許第2,538,009号、同2,668,541号、同2,538,008号、英国特許第584,609号、同1,210,252号、特開昭50−40625号公報、同51−3623号公報、同51−10927号公報、同54−118247号公報、特公昭48−3286号公報、同59−37303号公報等に記載されたアリーリデン染料、特公昭28−3082号公報、同44−16594号公報、同59−28898号公報等に記載されたスチリル染料、英国特許第446,538号、同1,335,422号、特開昭59−288250号公報等に記載されたトリアリールメタン染料、英国特許第1,075,653号、同1,153,341号、同1,284,730号、同1,475,228号、同1,542,807号等に記載されたメロシアニン色素、米国特許第2,843,486号、同3,294,539号、特開平1−291247号公報等に記載されたシアニン染料などが挙げられる。本発明のメチン化合物を上記染料として使用することができ、その場合、脱色され易いとの利点を有する。
【0049】
これらの染料の拡散を防ぐために、以下の方法が挙げられる。例えば、染料にバラスト基を入れて耐拡散性にする。また、例えば解離したアニオン染料と反対の電荷をもつ親水性ポリマーを媒染剤として層に共存させ、染料分子との相互作用によって染料を特定層中に局在化させる方法が、米国特許第2,548,564号、同4,124,386号、同3,625,694号等に開示させている。また、染料が吸着した金属塩微粒子を用いて特定層の染色する方法が米国特許第2,719,088号、同2,496,841号、同2,496,843号、特開昭60−45237号公報等に開示されている。さらに、水に不溶性の染料の固体分散体を用いて特定層を染色する方法が、特開昭56−12639号公報、同55−155350号公報、同55−155351号公報、同63−27838号公報、同63−197943号公報、欧州特許第15,601号等に開示されている。
【0050】
本発明における固体微粒子分散性の染料とは、ハレーション防止、イラジエーション防止、セーフライト安全性向上、表裏判別性向上などの目的で、ハロゲン化銀乳剤層及び/又はその他の親水性コロイド層に含有させるもので、この染料は下記のような条件を満足することが必要である。
(1) 使用目的に応じた適正な分光吸収を有すること。
(2) 写真化学的に不活性であること。すなわちハロゲン化銀写真乳剤層の性能に化学的な意味での悪影響、たとえば感度の低下、潜像退行、またはカブリなどを与えないこと。
(3) 写真処理過程において脱色されるか、または処理液中もしくは水洗水中に溶出して、処理後の写真感光材料上に有害な着色を残さないこと。
(4) 染着された層から他の層への拡散しないこと。
(5) 溶液中あるいは写真材料中での経時安定性に優れ変退色しないこと。
これらの条件を満たす染料としては、特開昭56−12639、同55−155350、同55−155351、同63−27838、同63−197943、欧州特許第15,601、同274,723、同276,566、同299,435、世界特許(WO)88/04794、特願平1−87367、特開平4−14035等記載の固体分散された染料を用いることができる。
【0051】
次に本発明に用いられる染料の具体例を挙げる。
【0052】
【化10】

【0053】
【化11】

【0054】
【化12】

【0055】
【化13】

【0056】
本発明に用いられる染料は国際公開WO88/04794号、ヨーロッパ特許公開EP0274723A1号、同276,566号、同299,435 号、特開昭52−92716号、同55−155350号、同55−155351号、同61−205934号、同48−68623号、米国特許2527583号、同3486897号、同3746539号、同3933798号、同4130429号、同4040841号、特願平1−50874号、同1−103751号、同1−307363号等に記載された方法およびその方法に準じて容易に合成することができる。本発明における微結晶分散状とは染料自体の溶解度が不足であるため、目的とする着色層中で分子状態で存在することができず、実質的に層中の拡散が不可能なサイズの固体として存在する。調製方法については国際公開(WO)88/04794、ヨーロッパ特許公開(EP)0276566A1、特開昭63−197943等に記載されているが、ボールミル粉砕し、界面活性剤とゼラチンにより安定化するのが一般的である。
【0057】
本発明分散体中の染料は、平均粒径が0.1μmから0.6μmの範囲にあり、粒子サイズ分布の変動係数が50%以下の微細な固体として存在する。ここで特に好ましくは平均粒径が0.1〜0.5μmの範囲の染料であり、さらに好ましくは平均粒径0.1〜0.5μmで変動係数が35%以下の染料分散体である。変動係数は投影面積を円近似したときの直径で表した分布において、標準偏差(S)を平均直径(d)で除した値(S/d)で表される。染料の使用量としては、5mg/m2〜300mg/m2、特に10mg/m2〜150mg/m2であることが好ましい。染料の分散固体をフィルター染料またはアンチハレーション染料として使用するときは、効果のある任意の量を使用できるが、光学濃度が0.05ないし3.5の範囲になるように使用するのが好ましい。添加時期は塗布される前のいかなる工程でも良い。
【0058】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料は、支持体上に設けられた上記乳剤層の上に保護層を設けることが好ましい。また、支持体の裏側(乳剤層を持たない側)にバック層を有していても良い。上記ハロゲン化銀写真感光材料が、バック層、支持体、アンチハレーション層、乳剤層、中間層、紫外線吸収層及び保護層からなる構成を採っても良い。これらの層に、色素又は染料を使用する場合、本発明のメチン化合物を使用することが、脱色が容易であることから好ましい。
【0059】
本発明で用いられるハロゲン化銀写真乳剤には、保護コロイドとしてゼラチンのほかにフタル化ゼラチンやマロン化ゼラチンのようなアシル化ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロースや、カルボキシメチルセルロースのようなセルロース化合物;テキストリンのような可溶性でんぷん;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミドやポリスチレンスルホン酸のような親水性ポリマー;寸度安定化のための可塑剤;ラテックスポリマーやマット剤を加えることができる。完成(finished) 乳剤は、適切な支持体、例えばバライタ紙、レジンコート紙、合成紙、トリアセテートフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、その他のプラスチックベースまたはガラス板の上に塗布される。
【0060】
写真像を得るための露光は通常の方法を用いて行なえば良い。すなわち、自然光(日光)、タングステン電灯、水銀灯、キセノンアーク灯、炭素アーク灯、キセノンフラッシュ灯、レーザー、LED、CRTなどの公知の多種の光源をいずれでも用いることができる。露光時間は通常カメラで用いられる1/1000秒から1秒の露光時間はもちろん、1/1000秒より短い露光、例えばキセノン蛍光灯を用いた1〜104 〜1/108 秒の露光を用いることもできるし、1秒より長い露光を用いることもできる。必要に応じて色フィルターで露光にもちいられる光の分光組成を調節することができる。露光にレーザー光を用いることもできる。また電子線、X線、γ線、α線などによって励起された蛍光体から放出する光によって露光されてもよい。好ましくは、1/5秒から1秒の間のタングステン光源である。
【0061】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料は、映画字幕作成用途であれば露光方法に特に限定はないが、好ましくは、現像処理済みの本発明ハロゲン化銀写真感光材料・画像情報の入ったインターミディエイト感光材料とを2枚重ねて、映画用ポジ感光材料に密着露光することが好ましい。具体的に露光する際に使用するプリンターとしては、Bell & Howell社製C型プリンターを用いてタングステン光源で露光する方法などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0062】
本発明の感光材料の写真処理には、例えば、リサーチ・ディスクロージャー(Research Disclosure)176号第28〜30頁(RD−17643)に記載されているような公知の方法を利用することができ、その処理液には公知のものを用いることができる。また、処理温度は通常、18℃から50℃の間に設定されるが、18℃より低い温度または50℃を超える温度としてもよい。目的に応じて、銀画像を形成する現像処理(黒白写真処理)、或いは、色素像を形成すべき現像処理から成るカラー写真処理のいずれをも適用することができる。
【0063】
黒白現像液には、ジヒドロキシベンゼン類(例えばハイドロキノン)、3−ピラゾリドン類(例えば1−フェニル−3−ピラゾリドン)、アミノフェノール類(例えばN−メチル−p−アミノフェノール)等の公知の現像主薬を単独或は組み合わせて用いることができる。カラー現像液は、一般に、発色現像主薬を含むアルカリ性水溶液からなる。発色現像主薬は公知の一級芳香族アミン現像剤、例えばフェニレンジアミン類(例えば4−アミノ−N−ジエチルアニリン、3−メチル−4−アミノ−N,N−ジエチルアニリン、4−アミノ−N−エチル−N−β−ヒドロキシエチルアニリン、3−メチル−4−アミノ−N−エチル−N−β−ヒドロキシエチルアニリン、3−メチル−4−アミノ−N−エチル−N−β−メタンスルホアミドエチルアニリン、4−アミノ−3−メチル−N−エチル−β−メトキシエチルアニリンなど)を用いることができる。
【0064】
この他L.F.A.メソン著「フォトグラフィック・プロセシン・ケミストリー」、フォーカル・プレス刊(1966年)の226〜229頁、米国特許第2,193,015号、同2,592,364号、特開昭48−64933号公報などに記載のものを用いてもよい。現像液はその他、アルカリ金属の亜硫酸塩、炭酸塩、ホウ酸塩、及びリン酸塩の如きpH緩衝剤、臭化物、及び有機カブリ防止剤の如き現像抑制剤ないし、カブリ防止剤などを含むことができる。又必要に応じて、硬水軟化剤、ヒドロキシルアミンの如き保恒剤、ベンジルアルコール、ジエチレングリコールの如き有機溶剤、ポリエチレングリコール、四級アンモニウム塩、アミン類の如き現像促進剤、色素形成カプラー、競争カプラー、ナトリウムポロンハイドライドの如きかぶらせ剤、1−フェニル−3−ピラゾリドンの如き補助現像薬、粘性付与剤、米国特許第4,083,723号に記載のポリカルボン酸系キレート剤、西独公開(OLS)2,622,950号に記載の酸化防止剤などを含んでもよい。
【0065】
カラー写真処理を施した場合、発色現像後の写真感光材料は通常漂白処理される。漂白処理は、定着処理と同時に行なわれてもよいし、個別に行なわれても良い。漂白剤としては、例えば(III) 、コバルト(III) 、クロム(VI)、銅(II)などの多価金属の化合物、過酸類、キノン類、ニトロソ化合物等が用いられる。例えば、フェリシアン化物、重クロム酸塩、鉄(III) またはコバルト(III) の有機錯塩、例えばエチレンジアミン四錯塩、ニトリロトリ酢酸、1,3−ジアミノ−2−プロパノール四酢酸などのアミノポリカルボン酸類あるいはクエン酸、酒石酸、リンゴ酸などの有機酸の錯塩;過硫酸塩、過マンガン酸塩;ニトロフォフェノールなどを用いることができる。これらのうちフェリシアン化カリ、エチレンジアミン四錯塩鉄(III) ナトリウム及びエチレンジアミン四錯塩鉄(III) アンモニウムは特に有用である。エチレンジアミン四錯塩鉄(III) 錯塩は独立の漂白液においても、一浴漂白定着液においても有用である。漂白又は漂白定着液には、米国特許第3,042,520号、同3,241,966号、特公昭45−8506号公報、同45−8836号公報などに記載の漂白促進剤、特開昭53−65732号公報に記載のチオール化合物の他、種々の添加剤を加えることもできる。又、漂白又は漂白・定着処理後は水洗処理してもよく、安定化浴処理するのみでも良い。
【0066】
これら現像処理の中でも、「H-24 Processing Modules for Motion Picture Films」の中にある 「Processing KODAK Motion Picture Films, Module 15、Processing Black-and-White Films」記載の処理が最も好ましい。
【0067】
本発明の感光材料に用いられる各種添加剤、現像処理方法等に関しては、特に制限は無く、例えば下記箇所に記載されたものを好ましく用いることができる。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
【表3】

【0071】
以下に、実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。
【実施例】
【0072】
実施例1
乳剤の調製
64℃に保たれた表4の1液に2液と3液を攪拌しながら同時に5分間かけて添加し、続いて表4の4液、5液、6液をpAgを7.8になるようにコントロールしながら40分間添加し、最終的に平均粒径0.25μ、平均沃度含量1モル%の単分散立方体沃臭化銀乳剤を得た(変動係数8%)。その後常法に従ってフロキュレーション法によって水洗し、ゼラチンを加えた後、pHを6.8、pAgを8.0に調整し、その後、チオ硫酸ナトリウム13.8mg、塩化金酸4.6mgとチオシアン酸カリウム17mgとベンゼンチオスルホン酸6.5mgを添加し、65℃で最適感度となる様に化学増感を行なった。さらに安定剤として2−メチル−4−ヒドロキシ−1,3,3a,7−テトラアザインデン75mg、防腐剤としてフェノキシエタノールを2g添加し、沃臭化銀立方体乳剤Aを得た。
【0073】
【表4】

【0074】
塗布試料100の作成
上記の乳剤Aに増感色素(化合物−D)を5×10-4mol/Agmolを添加した。さらに化合物−1を100mg、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール29mg、3−(5−メルカプトトラゾール)−ベンゼンスルホン酸ナトリウム10mg、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラアザインデン2.5g、臭化カリウム0.8gを加えた。さらにリン酸を加えpH5.5になるよう調整し、増粘剤としてポリスチレンスルホン酸ナトリウムをゼラチン1gあたり20mg、可塑剤としてポリエチルアクリレートラテックス(平均粒径0.05μm )をゼラチンに対し30重量%、硬膜剤として2−ビス(ビニルスルホニルアセトアミド)エタンを加えた。この液を以下に示す染色層および保護層と共に同時塗布を行なった。なお乳剤層は銀量2.2g/m2、ゼラチン1.9g/m2、硬膜剤175mg/m2となる様塗布した。
【0075】
染色層
ゼラチン 1.5g/m2
* 固体分散染料S−8 80mg/m2
* 固体分散染料S−10 30mg/m2
ポリスチレンスルホン酸ナトリウム 25mg/m2
染料1 40mg/m2
染料2 8mg/m2
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 5mg/m2
リン酸 12mg/m2
防腐剤 3mg/m2
【0076】
保護層
ゼラチン 0.5mg/m2
化合物−2 2mg/m2
化合物−3 1mg/m2
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 2mg/m2
コロイダルシリカ 88mg/m2
化合物−4 2mg/m2
L−アスコルビン酸 20mg/m2
1,5−ジヒドロキシ−2−ベンズアルドキシム 5mg/m2
酢酸ナトリウム 100mg/m2
ポリスチレンスルホン酸ナトリウム 15mg/m2
硫酸ストロンチウム 30mg/m2
化合物−5 17mg/m2
化合物−6 6mg/m2
流動パラフィン 40mg/m2
防腐剤 2mg/m2
【0077】
【化14】

【0078】
【化15】

【0079】
* 固体分散染料の調製方法
本発明における調製法は、特開昭63−197943号の方法に準じた。すなわち、水434ml及びTriton X-200R 、界面活性剤(TX-200R, Rohm & Haas社から販売)の6.7%溶液を53gとを1.5リットルのネジ蓋ビンに入れた。これに染料20gと酸化ジルコニウム(ZrO2) のビーズ(2mm径)を800mlを加え、このビンの蓋をしっかりしめてミル内に置き、内容物を4日間粉砕した。内容物を12.5%のゼラチン水溶液160gに添加し、ロールミルに10分間置いて泡を減少させた。得られた混合物を濾過し、ZrO2ビーズを除去した。このままだと平均粒径が0.3μm であるがまだ粗粒子を含んでいるので、この後遠心分離法によって分級し最大粒子サイズが1μm 以下になる様にした。
【0080】
保護層に、表Aに示すシリコーンオイル種(信越化学工業(株)製)と塗設量を添加した以外は試料100と同じになるように、試料101〜109を厚さ125μmのセルローストリアセテート透明支持体に塗布して作成した。塗布された試料100〜109は、25℃55%RH条件の下で7日間、ロール状に保管してゼラチンバインダーを硬膜させた。
【0081】
<動摩擦係数の測定>
前記試料の滑り性を評価するために、塗布物そのものの表裏、未露光で以下に示す現像処理をFUJIFILM社製「FNCP300II」改造機で行った試料の表裏の動摩擦係数μを測定した。動摩擦係数は、東洋精機(株)社製高速動摩擦測定機を用いて測定し、試料を20m/分で搬送し、SUS304に対する相対値を求めた。動摩擦係数μが低いと、滑りやすく好ましいことを意味する。結果を表Bに示す。
【0082】
現像処理プロセス
<工程>
工程名 処理温度(℃) 処理時間(秒) 補充量
(ml 35mm×30.48m当たり)
1.現像 21.0±0.1 210 650
2.水洗 21 50 1200
3.定着 21 360 600
4.水洗 21 600 1200
5.乾燥
【0083】
<処理>
1リットル当たりの組成を示す。
工程名 薬品名 タンク液 補充液
現像 富士フイルム(株)製モノール 0.5g 0.7g
亜硫酸ナトリウム 40.0g 70.0g
富士フイルム(株)製ハイドロキノン 3.0g 11.0g
炭酸ナトリウム 20.0g 20.0g
臭化ナトリウム 1.75g 1.30g
水酸化ナトリウム −− 2.0g
定着 チオ硫酸ナトリウム 153.0g 153.0g
亜硫酸ナトリウム 15.0g 15.0g
酢酸(28%) 48.0ml 48.0ml
ホウ酸 7.5g 7.5g
カリミョウバン 15.0g 15.0g
【0084】
【表5】

【0085】
【表6】

【0086】
表Bによると、保護層にシリコーンオイルを添加することにより高速搬送時の滑り性が大きく良化していることが判る。特にKF96-10の効果が大きい。KF96シリーズとKF50シリーズの効果を比較するとKF96シリーズの効果が大きく、ジメチルシリコーンオイルタイプの効果が高いことが判る。
【0087】
<高速搬送耐久性の測定>
更に動摩擦係数μが低いことにより、実用性能上の効果を検証するために、現像処理済み試料の映画用ポジ実技作成耐久試験を実施した。MITCHELL社製Model「NC」カメラを用いて文字原版(「富士フィルム」明朝12ポイントの黒色印字を白色A4サイズ紙に出力したもの)を、撮影画面一杯にシャッタースピード 3コマ/秒 50mmレンズ f=5.6の条件で10m撮影した。FUJIFILM社製「FNCP300II」改造機を用いて現像処理し、字幕反転原版を作成した。この試料に対して、同長の新たな同一未露光試料に3コマ/秒にて露光プリントして反転させ字幕原版を作成した。この字幕原版と、富士フイルム社製インターメディエイトフイルムFCIを、未露光で10mの長さをECN-IIで現像処理し、Bell&Howell社製「Model C型」映画用プリンターを用いて、富士フイルム社製映画用ポジフイルムETERNA 3513Diに、180ft/分で10,000m露光した。前記露光済み試料は、オオトモエンジニアリング製自現機で、180ft/分の速度でECP-II現像処理にて字幕を焼き付けた。この様に作成した映画用ポジ字幕プリントのうち、最後に露光した100mをCINEFORD社製映写機を用いて映写し、傷のに対応したプリントスジを、5段階で官能評価を実施した。まったく傷が無い状態を5、傷が多く実用に耐えないレベルを1とした。結果を表Cに示す。
【0088】
【表7】

【0089】
表Cによると、シリコーンオイル、特にKF96-10を用いることによって、大幅に映画用ポジのプリントスジを低下させていることが判る。これは、表Bの結果も勘案すると、バック面の滑り性を良化したことによると推定される。
【0090】
実施例2
塗布に使用したベースを、厚さ125μmのセルローストリアセテート透明支持体に対して、導電層および保護層を有する下記処方の125μポリエチレンナフタレートベースを用いた以外は試料100〜109と同じ構成の試料を作成し、実施例1同様の試験を行ったところ、同様の効果が得られた。
(1) 導電層
ジュリマー ET410(日本純薬K.K.製) 38mg/m2
(ポリアクリル酸エステル)
SnO2 /Sb(9/1重量比、平均粒径0.25μ) 216mg/m2
化合物−7 5mg/m2
化合物−8 5mg/m2
(2) 保護層
ケミパール S120(三井石油化学K.K.製) 33mg/m2
(ポリオレフィン水性分散物)
スノーテックスC(日産化学K.K.製) 17mg/m2
化合物−7 5mg/m2
化合物−9 5mg/m2
ポリスチレンスルホン酸ナトリウム 2mg/m2
【0091】
【化16】


【0092】
本発明により、映画ポジプリントを作成する際に、傷跡が写り込むことが無く、耐久性に優れた映画字幕用ハロゲン化銀感光材料を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過支持体上に少なくとも1層の感光性層と少なくとも1層の非感光性層を有し、該非感光性層にシリコーンオイルの少なくとも1種を含有することを特徴とする映画字幕用ハロゲン化銀写真感光材料。
【請求項2】
前記シリコーンオイルが、下記一般式(A)又は/及び一般式(B)で現わされることを特徴とする映画字幕用ハロゲン化銀写真感光材料。
【化1】

nは1以上の整数を表す。
【化2】

l、mはそれぞれ、1以上の整数を表す。
【請求項3】
前記ハロゲン化銀感光材料中の全塗設銀量が1.70g/m2以上、2.50g/m2以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のハロゲン化銀感光材料。

【公開番号】特開2008−102460(P2008−102460A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−286911(P2006−286911)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】