説明

暖冷房システム

【課題】エネルギーの有効利用を図ることができる暖冷房システムを提供する。
【解決手段】放熱用管部材110を有する暖冷房パネル11と、流体利用部12と、これらの暖冷房パネル11と流体利用部12とにそれぞれ温水を供給する給湯機13と、この給湯機13と暖冷房パネル11とを連通するパネル用連通管14と、給湯機13と流体利用部12とを連通する利用部用連通管15とを備えて暖冷房システム1を構成する。利用部用連通管15の一部を構成する放熱管部150と放熱用管部材110とを軸方向に沿って互いに当接する。そのため、放熱管部150が暖冷房パネル11を兼ねることになり、床下に放熱されていたエネルギーを脱衣室Aの暖房として利用でき、省エネルギー化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖冷房パネルと、浴槽等の流体利用部と、これらの暖冷房パネルと流体利用部とにそれぞれ高温あるいは低温の流体を供給する流体供給源とを備えた暖冷房システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラで沸かした湯を管の内部に通して浴槽や暖房パネルに供給する暖房システムが利用されている。この暖房システムでは、通常、暖房パネルと浴槽とがそれぞれボイラに並列接続されている。
この暖房システムで用いられる暖房パネルの従来例は、放熱用の管部材を複数直列に接続した構造である(特許文献1)。
【0003】
この従来例では、給湯装置から配管を通じて暖房パネルに湯が供給されると、暖房パネルから放熱され、暖房パネルが設置された室の暖房が行われる。暖房パネルに供給された湯は配管を通って給湯装置に戻される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−121907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
給湯装置から供給される湯を利用する設備として、暖房パネル以外にも浴槽等の流体利用部がある。これらの設備や暖房パネルはレイアウトに応じて設置されるものであり、使用時あるいはレイアウトにおいて密接な関連にあるものがある。
例えば、暖房装置が脱衣室に設置されることがあり、この脱衣室に隣接する浴槽に給湯装置から湯を供給することがある。脱衣室に設置される暖房パネルは浴槽に湯が張られた後に使用することが多いので、この暖房パネルと浴槽とは使用時と配置場所において関連性が高い。
【0006】
特許文献1で示される従来例では、暖房パネルと給湯装置とが直接配管で接続されているため、浴槽への給湯と脱衣室の暖房とを行うためには、暖房パネルと浴槽との双方に給湯するための配管工事が必要となる。
しかし、暖房パネルと浴槽との双方に床下部分の配管があるため、この床下の配管から放熱されることで、エネルギーが有効に利用されていないという課題がある。
【0007】
本発明の目的はエネルギーの有効利用を図ることができる暖冷房システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の暖冷房システムは、図面を参照して説明すると、放熱用管部材110を有する暖冷房パネル11と、流体利用部12と、これらの暖冷房パネル11と流体利用部12とにそれぞれ高温あるいは低温の流体を供給する流体供給源13と、この流体供給源13と前記暖冷房パネル11とを連通するパネル用連通管14及び前記流体供給源13と前記流体利用部12とを連通する利用部用連通管15とを備えた暖冷房システムであって、前記利用部用連通管15は放熱管部150を備え、この放熱管部150と前記放熱用管部材110とが軸方向に沿って互いに当接されることを特徴とする。
【0009】
この構成の発明では、流体供給源から流体利用部に高温あるいは低温の流体を供給すると、流体利用部に流体が蓄えられるとともに、途中の流路に設けられた放熱管部から放熱される。この放熱管部は暖冷房用パネルの放熱用管部材と当接されているので、放熱用管部材に流体が流通されていなくても、放熱管部からの放熱により、あるいは、放熱管部から放熱用管部材に伝わった熱により、暖冷房パネルが設置された室の暖冷房を行うことができる。一方、暖冷房パネルのみ使用する場合では、流体供給源からパネル用連通管を通じて暖冷房パネルにのみ高温あるいは低温の流体を供給すればよく、これにより、暖冷房パネルのみから放熱することになり、流体利用部へは流体が供給されない。さらに、流体供給源から暖冷房パネルと流体利用部との双方に同時に高温あるいは低温の流体を供給すると、暖冷房パネルの放熱用管部材と利用部用連通管の放熱管部との双方から放熱されることになり、放熱される熱量が大きなものとなる。
従って、本発明では、利用部用連通管の放熱管部と暖冷房パネルの放熱用管部材とが軸方向に沿って互いに当接される構成であるため、利用部用連通管の放熱管部に流体を流通させることで、暖冷房パネルによって暖房あるいは冷房が行える。つまり、従来、床下に配置されていた利用部用連通管の一部を放熱管部とし、この放熱管部が暖冷房パネルを兼ねることになるので、床下に放熱されていたエネルギーを室内の冷暖房として利用でき、省エネルギー化を図ることができる。
【0010】
本発明では、前記流体利用部は浴槽を備え、前記流体供給源は給湯機を備え、前記暖冷房パネルは前記浴槽に隣接される脱衣室Aに配置される構成が好ましい。
この構成の発明では、浴槽と脱衣室とが使用時並びにレイアウト上の関連性が強く、浴槽に湯を張ると同時に脱衣室の暖房も可能となる。
【0011】
前記放熱管部150は、それぞれ平行配置される複数本の放熱管15Aと、これらの放熱管同士を連結する接続管15B,15Cとを備え、前記放熱用管部材110は互いに平行配置される複数本の放熱管11Aと、これらの放熱管同士を連結する接続管11B,11Cとを備え、前記放熱管部と前記放熱用管部材との放熱管同士が互いに接合し、前記放熱管部と前記放熱用管部材との連通管同士が互いに接合される構成が好ましい。
この構成の発明では、放熱管部と前記放熱用管部材と接続管とが互いに接合する長さが長いので、放熱管部からの放熱が多くなり、熱効率がよいものとなる。
【0012】
前記暖冷房パネルは床パネル31である構成が好ましい。
この構成の発明では、床パネルからの放熱により、脱衣時に居住者の足下から体全体を暖めることが可能となる。
【0013】
前記流体供給源は冷水供給機23を備えた構成が好ましい。
この構成の発明では、冷水供給機から暖冷房パネルに冷水を供給することで、輻射冷房パネルとして暖冷房パネルを用いることができる。
【0014】
前記パネル用連通管及び前記利用部用連通管は、それぞれ往路と環路とを有する構成が好ましい。
この構成の発明では、流体を再利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる暖冷房システムの全体構成を示す概略図。
【図2】第1実施形態の暖冷房システムの要部を示すもので、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は側面図。
【図3】第1実施形態の暖冷房システムの動作を説明する図。
【図4】第1実施形態の暖冷房システムの動作を説明する図。
【図5】本発明の第2実施形態にかかる暖冷房システムの全体構成を示す概略図。
【図6】本発明の第3実施形態にかかる暖冷房システムの全体構成を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。各実施形態の説明において、同一構成要素は同一符号を付して説明を省略もしくは簡略にする。
図1から図4には本発明の第1実施形態が示されている。図1は第1実施形態の全体構成を示す概略図である。
図1において、第1実施形態の暖冷房システム1は、住宅等の建物に設置されるもので、暖冷房パネル11と、浴槽からなる流体利用部12と、これらの暖冷房パネル11と流体利用部12とにそれぞれ温水を供給する流体供給源としての給湯機13と、この給湯機13と暖冷房パネル11とを連通するパネル用連通管14と、給湯機13と流体利用部12とを連通する利用部用連通管15とを備えている。
暖冷房パネル11は、放熱用管部材110と、この放熱用管部材110を取り付けるための設置台(図示せず)とを備え、かつ、脱衣室Aに設置されている。流体利用部12は浴室Bに設置され、給湯機13は屋内又は屋外の設置箇所Cに配置されている。なお、脱衣室A、浴室B及び設置箇所Cの間には仕切り壁Dが設けられている。
【0017】
給湯機13は、給湯設備と、この給湯設備で生じた温水を所定の流路に切り替える図示しない切替部と、流体利用部12から戻される湯を濾過する図示しない濾過装置とを備えている。
給湯設備は温水を暖冷房パネル11と流体利用部12とに温水を送り出す吐出ポンプ(図示せず)と、暖冷房パネル11と流体利用部12とから利用済みの水を吸引する吸引ポンプ(図示せず)とを備える。
切替部は暖冷房パネル11に向けて供給する流路と流体利用部12に向けて供給する流路とのいずれか一方または双方を切り替える構成である。
【0018】
パネル用連通管14は、暖冷房パネル11の放熱用管部材110の一端部と給湯機13とを連通する第一連通管141と、放熱用管部材110の他端部と給湯機13とを連通する第二連通管142とを備えた構造である。これらの第一連通管141と第二連通管142とは脱衣室Aの床下に配置されており、その表面には図示しない断熱材が設けられている。第一連通管141は給湯機13から暖冷房パネル11へ温水を送る往路を構成し、第二連通管142は暖冷房パネル11から給湯機13へ冷めた水を戻す環路を構成する。
【0019】
利用部用連通管15は、放熱用管部材110の軸方向に沿って放熱用管部材110と当接するように配置された放熱管部150と、この放熱管部150の一端部と給湯機13とを連通する第一連通管151と、放熱管部150の他端部と流体利用部12とを連通する第二連通管152と、流体利用部12と給湯機13とを連通する第三連通管153とを備えた構造である。
これらの管部材のうち、放熱管部150は放熱用管部材110とともに脱衣室Aに露出されている。第一連通管151、第二連通管152及び第三連通管153は脱衣室Aの床下に配置されており、その表面には図示しない断熱材が設けられている。
第一連通管151、放熱管部150及び第二連通管152は給湯機13から流体利用部12へ温水を送る往路を構成し、第三連通管153は流体利用部12から給湯機13へ冷めた水を戻す環路を構成する。
【0020】
第1実施形態の要部の構造が図2に示されている。図2(A)は第1実施形態の要部の平面図であり、図2(B)は、その正面図であり、図2(C)は、その側面図である。
図2において、暖冷房パネル11の放熱用管部材110は、互いに平行配置される複数本、図2では4本の放熱管11Aと、これらの放熱管11Aの上部同士を連結する第一接続管11Bと、放熱管11Aの下部同士を連結する第二接続管11Cとを備えている。
放熱管部150は、互いに平行配置される複数本、図2では4本の放熱管15Aと、これらの放熱管15Aの上部同士を連結する第一接続管15Bと、放熱管15Aの下部同士を連結する第二接続管15Cとを備えた構造である。
【0021】
放熱管11A,15Aは、ともにアルミニウムから形成されるものであり、両端部が閉塞された角筒状に形成されている。これらの放熱管11A,15Aは、その一側面同士が長手方向に沿って接合されているように、アルミニウムの押出成形等で互いに抱き合わせて製造される。
第一接続管11B,15Bは、ともにアルミニウムから両端部が閉塞された角筒状に形成されている。これらの第一接続管11B,15Bは、その一側面同士が互いに長手方向に沿って接合されるように互いに抱き合わせて製造されている。
第二接続管11C,15Cは、ともにアルミニウムから両端部が閉塞された角筒状に形成されており、その一側面同士が互いに長手方向に沿って接合されるように、互いに抱き合わせて製造されている。
【0022】
複数本の放熱管11Aと第一接続管11Bと第二接続管11Cとから蛇行した1つの流路を構成するために、複数本の放熱管11Aの上部と第一接続管11Bとの接合部分には連通路11Dが設けられ、複数本の放熱管11Aの下部と第二接続管11Cとの接合部分には連通路11Eが設けられ、第一接続管11Bの内部には堰11Fが設けられ、第二接続管11Cの内部には堰11Gが設けられている。
複数本の放熱管15Aと第一接続管15Bと第二接続管15Cとから蛇行した1つの流路を構成するために、複数本の放熱管15Aの上部と第一接続管15Bとの接合部分には連通路15Dが設けられ、複数本の放熱管15Aの下部と第二接続管15Cとの接合部分には連通路15Eが設けられ、第一接続管15Bの内部には堰15Fが設けられ、第二接続管15Cの内部には堰15Gが設けられている。
これらの放熱用管部材110の流路と放熱管部150の流路との断面積は供給される温水の圧力、放熱量、その他の条件から設定されるが、エア抜きを不要とするために、小さい方が好ましい。
【0023】
次に、第1実施形態の暖冷房システムで暖房・給湯する方法について、図3及び図4に基づいて説明する。
図3に示される通り、流体利用部12に給湯する場合には、給湯機13の給湯設備で湯を沸かすとともに、この給湯設備で生じた温水を流体利用部12に向けて供給する流路に設定する。これにより、給湯機13から供給される温水は、矢印P1で示される通り、第一連通管151から放熱管部150を通って第二連通管152に送られ、この第二連通管152から流体利用部12に供給される。この流体利用部12に蓄えられた湯は、使用後、図示しない栓を抜いて外部に排出してもよいが、給湯機13に環路を構成する第三連通管153を通じて戻すものでもよい(矢印P2参照)。
【0024】
放熱管部150に温水が供給されることで、脱衣室Aが暖房される。つまり、第一連通管151から送られる温水は、最上流側に配置された放熱管15Aの下端部から放熱管15Aに流入され、第一接続管15Bの内部を通った後、さらに、最上流に隣接する放熱管15Aの内部に流入され、第二接続管15Cの内部を通った後に、放熱管15Aの内部に流入され、第一接続管15Bの内部を通った後、最下流側の放熱管15Aの内部に流入され、第二連通管152に送られる。これらの放熱管15A、第一接続管15B及び第二接続管15Cから構成される蛇行した流路に温水が通過することで、放熱管15A、第一接続管15B及び第二接続管15Cの表面から直接放熱され、さらには、放熱管15A、第一接続管15B及び第二接続管15Cと接合される暖冷房パネル11の放熱管11A、第一接続管11B及び第二接続管11Cから放熱される。この放熱によって、暖冷房パネル11に温水が流通しなくても、脱衣室Aの暖房が行われる。
【0025】
図4に示される通り、暖冷房パネル11に給湯する場合には、給湯機13の給湯設備で湯を沸かすとともに、この給湯設備で生じた温水を暖冷房パネル11に向けて供給する流路に設定する。これにより、給湯機13から供給される温水は、矢印Q1で示される通り、第一連通管141から暖冷房パネル11に送られた後、この暖冷房パネル11で利用された水は矢印Q2で示される通り、第二連通管142を通じて給湯機13に戻される。
暖冷房パネル11に温水が供給されることで、脱衣室Aが暖房される。つまり、第一連通管141から送られる温水は、最上流側に配置された放熱管11Aの下端部から放熱管11Aに流入され、第一接続管11Bの内部を通った後、さらに、最上流に隣接する放熱管11Aの内部に流入され、第二接続管11Cの内部を通った後に、放熱管11Aの内部に流入され、第一接続管11Bの内部を通った後、最下流側の放熱管11Aの内部に流入され、第二連通管142に送られる。これらの放熱管11A、第一接続管11B及び第二接続管11Cから構成される蛇行した流路に温水が通過することで、放熱管11A、第一接続管11B及び第二接続管11Cの表面から直接放熱され、さらには、放熱管11A、第一接続管11B及び第二接続管11Cと接合される放熱管部150の放熱管15A、第一接続管15B及び第二接続管15Cから放熱される。この放熱によって、暖冷房パネル11を通じて脱衣室Aの暖房が行われる。
そして、本実施形態では、暖冷房パネル11と流体利用部12との双方に同時に給湯するものであってもよい。
【0026】
従って、第1実施形態では次の作用効果を奏することができる。
(1)本実施形態では、放熱用管部材110を有する暖冷房パネル11と、浴槽からなる流体利用部12と、これらの暖冷房パネル11と流体利用部12とにそれぞれ温水を供給する給湯機13と、この給湯機13と暖冷房パネル11とを連通するパネル用連通管14と、給湯機13と流体利用部12とを連通する利用部用連通管15とを備えて暖冷房システム1を構成する。そして、利用部用連通管15の一部を構成する放熱管部150と放熱用管部材110とを軸方向に沿って互いに当接する。そのため、利用部用連通管15を通じて流体利用部12にのみ給湯する場合、利用部用連通管15の途中に設けられる放熱管部150で放熱することで、暖冷房パネル11に温水を供給しなくても、脱衣室Aの暖房を行うことができる。本実施形態では、放熱管部150が暖冷房パネル11を兼ねることになり、床下に放熱されていたエネルギーを脱衣室Aの暖房として利用でき、省エネルギー化を図ることができる。
【0027】
(2)温水を利用する流体利用部12と、暖冷房パネル11を設置する脱衣室Aとは使用時並びにレイアウト上の関連性が強いので、流体利用部12に湯を張ると同時に脱衣室Aの暖房も可能となるので、居住者にとって便利なものとなる。
【0028】
(3)放熱管部150は、それぞれ平行配置される複数本(4本)の放熱管15Aと、これらの放熱管15Aの上部同士を連結する第一接続管15B及び下部同士を連結する第二接続管15Cとを備えている。放熱用管部材110は互いに平行配置される複数本(4本)の放熱管11Aと、これらの放熱管11Aの上部同士を連結する接続管11B及び下部同士を連結する第二接続管11Cとを備えている。そして、放熱管部150と放熱用管部材110との放熱管15A,11A同士が互いに接合され、第一接続管15B,11B同士が互いに接合され、第二接続管15C,11C同士が互いに接合されている。そのため、放熱管部150と放熱用管部材110とが互いに蛇行した状態で接合することになり、その接合長さを長くすることができるので、熱伝達の効率がよいものとなる。
【0029】
(4)パネル用連通管14及び利用部用連通管15は、それぞれ往路と環路とを有するから、暖冷房パネル11や流体利用部12で使用された冷めた湯を給湯機13に戻して再利用することができる。
【0030】
(5)放熱用管部材110及び放熱管部150をそれぞれアルミ製とした。アルミは他の金属に比べて熱の伝達性がよいから、内部に流通する温水の熱を効率よく脱衣室Aに放熱することができる。そのため、脱衣室Aが短時間に暖まることになる。
【0031】
(6)放熱管部150を構成する放熱管15A、第一接続管15B及び第二接続管15C、並びに放熱用管部材110を構成する放熱管11A、第一接続管11B及び第二接続管11Cは、それぞれ角筒状のパイプから形成され、これらのパイプの一側面が接合されているから、接合面積を大きいものにできるので、伝熱効率がよい。
【0032】
次に、本発明の第2実施形態を図5に基づいて説明する。図5は第2実施形態の暖冷房システム2を示す概略図である。
図5において、暖冷房システム2は、第1実施形態の暖冷房システム1に低温の流体を供給する流体供給源として冷水供給機23を加えた構造である。暖冷房システム2は流体利用部12に温水の他に、冷水を用いる施設、例えば、スポーツジム等で用いることができる。
暖冷房システム2は、暖冷房パネル11と、水槽からなる流体利用部12と、暖冷房パネル11と流体利用部12とにそれぞれ温水を供給する給湯機13と、この給湯機13と暖冷房パネル11とを連通するパネル用連通管14と、給湯機13と流体利用部12とを連通する利用部用連通管15と、暖冷房パネル11と流体利用部12とにそれぞれ冷水を供給する冷水供給機23と、この冷水供給機23とパネル用連通管14とを連通する冷水用のパネル用連通管24と、冷水供給機23と利用部用連通管15とを連通する冷水用の利用部用連通管25とを備えている。
【0033】
冷水供給機23は、冷水を発生させる冷水設備と、この冷水設備で生じた冷水を所定の流路に切り替える図示しない切替部と、流体利用部12から戻される水を濾過する図示しない濾過装置とを備えている。
冷水設備は冷水を暖冷房パネル11と流体利用部12とに温水を送り出す吐出ポンプ(図示せず)と、暖冷房パネル11と流体利用部12とから利用済みの水を吸引する吸引ポンプ(図示せず)とを備える。切替部は暖冷房パネル11に向けて供給する流路と流体利用部12に向けて供給する流路とのいずれか一方または双方を切り替える構成である。
【0034】
冷水用のパネル用連通管24は、第一連通管141と連通する第三連通管241と、第二連通管142と連通する第四連通管242とを備えている。第一連通管141と第三連通管241との間には給湯機13からの温水と冷水供給機23からの冷水の一方のみを暖冷房パネル11に送るための第一切替弁24Aが設けられ、第二連通管142と第四連通管242との間には第二連通管142からの水を給湯機13と冷水供給機23とのいずれか一方に送る第二切替弁24Bが設けられている。第一連通管141及び第三連通管241は給湯機13又は冷水供給機23から暖冷房パネル11へ温水又は冷水を送る往路を構成し、第二連通管142及び第四連通管242は暖冷房パネル11から給湯機13又は冷水供給機23へ冷めた水を戻す環路を構成する。
【0035】
冷水用の利用部用連通管25は、第一連通管151と連通する第四連通管251と、第三連通管153と連通する第五連通管252とを備えている。第一連通管151と第四連通管251との間には給湯機13からの温水と冷水供給機23からの冷水の一方のみを流体利用部12に送るための第三切替弁25Aが設けられ、第三連通管153と第五連通管252との間には第三連通管153からの水を給湯機13と冷水供給機23とのいずれか一方に送る第四切替弁25Bが設けられている。
第一連通管151、第二連通管152、第三連通管153及び第四連通管251は脱衣室Aの床下に配置されており、その表面には図示しない断熱材が設けられている。
第一連通管151、放熱管部150、第二連通管152及び第四連通管251は給湯機13又は冷水供給機23から流体利用部12へ温水又は冷水を送る往路を構成し、第三連通管153及び第五連通管252は流体利用部12から給湯機13又は冷水供給機23へ水を戻す環路を構成する。
【0036】
第2実施形態において、冷水を流体利用部12に供給する場合には、第一切替弁24A、第二切替弁24B、第三切替弁25A及び第四切替弁25Bを操作し、冷水供給機23で生じた冷水のみが暖冷房パネル11と流体利用部12とに供給されるようにし、これらから水が冷水供給機23に戻るように設定する。
流体利用部12に冷水を供給するには、冷水供給機23で冷水を発生させるとともに、この冷水を流体利用部12に向けて供給する流路に設定する。これにより、冷水供給機23から供給される冷水は、第四連通管251から第一連通管151及び放熱管部150を通って第二連通管152に送られ、この第二連通管152から流体利用部12に供給される。
放熱管部150に冷水が供給されることで、脱衣室Aが冷房される。つまり、第一連通管151から送られる冷水は、放熱管15A、第一接続管15B、放熱管15A、第二接続管15Cからなる蛇行した流路に冷水が通過することで、放熱管15A、第一接続管15B及び第二接続管15Cの表面から吸熱され輻射冷房される。
そして、暖冷房パネル11に冷水を供給する場合には、冷水供給機23で生じた冷水を暖冷房パネル11に向けて供給する流路に設定する。暖冷房パネル11に冷水が供給されることで、脱衣室Aが冷房される。
なお、温水を供給して暖房を実施するには第1実施形態と同じ手順による。
【0037】
従って、第2実施形態では、第1実施形態と同様の効果を奏することができる他、次の作用効果を奏することができる。
(7)流体供給源は冷水供給機23を備えているから、冷水供給機23から暖冷房パネル11に冷水を供給することで、この暖冷房パネル11を輻射冷房パネルとして利用することができる。そのため、流体利用部12に冷水を供給すると同時に脱衣室Aが冷房されることになるので、冷水の有効利用を図ることができる。
【0038】
次に、本発明の第3実施形態を図6に基づいて説明する。図6は第3実施形態の暖冷房システム3を示す概略図である。
図6において、暖冷房システム3は第1実施形態の暖冷房システム1に暖冷房パネルとして床パネルを加えた構造である。
暖冷房システム3は、暖冷房パネル11と、流体利用部12と、暖冷房パネル11と流体利用部12とにそれぞれ温水を供給する給湯機13と、床パネル31と、給湯機13と暖冷房パネル11と床パネル31とを連通するパネル用連通管34と、給湯機13と流体利用部12とを連通する利用部用連通管35とを備えている。
【0039】
床パネル31は暖冷房パネル11と同じ構造であり、放熱用管部材110と、この放熱用管部材110を床に取り付けるための設置具(図示せず)とを備えている。
放熱用管部材110は、複数本の放熱管11Aと、これらの放熱管11Aの一端側同士を連結する第一連結管(図示せず)と、放熱管11Aの下他端側を連結する第二接続管11Cとを備えており、放熱管11Aが床に面して配置されている。
パネル用連通管34は、暖冷房パネル11の放熱用管部材110の一端部と給湯機13とを連通する第一連通管141と、放熱用管部材110の他端部と床パネル31の放熱用管部材110の一端部とを連通する第二連通管342と、床パネル31の放熱用管部材110の他端部と給湯機13とを連通する第三連通管343とを備えた構造である。
これらの第一連通管141、第二連通管342及び第三連通管343は脱衣室Aの床下に配置されており、その表面には図示しない断熱材が設けられている。第一連通管141及び第二連通管342は給湯機13から暖冷房パネル11及び床パネル31へ温水を送る往路を構成し、第三連通管343は床パネル31から給湯機13へ冷めた水を戻す環路を構成する。
【0040】
利用部用連通管35は、暖冷房パネル11の放熱管部150と、床パネル31の放熱管部150と、暖冷房パネル11の放熱管部150の一端部と給湯機13とを連通する第一連通管151と、この放熱管部150の他端部と床パネル31の放熱管部150の一端部を連通する第二連通管352Rと、床パネル31の放熱管部150の他端部と流体利用部12とを連通する第二連通管352Lと、流体利用部12と給湯機13とを連通する第三連通管153とを備えた構造である。
これらの管部材のうち、床パネル31の放熱管部150は放熱用管部材110とともに脱衣室Aの床下に設置されている。第一連通管151、第二連通管352R,352L及び第三連通管153は脱衣室Aの床下に配置されており、その表面には図示しない断熱材が設けられている。
【0041】
第一連通管151、放熱管部150及び第二連通管352R,352Lは給湯機13から流体利用部12へ温水を送る往路を構成し、第三連通管153は流体利用部12から給湯機13へ冷めた水を戻す環路を構成する。
放熱管部150は、床パネル31の放熱管11Aと互いに接合する複数本の放熱管15Aと、これらの放熱管15Aの一端側同士を連結するとともに床パネル31の第一接続管と接合する第一接続管(図示せず)と、放熱管15Aの下他端側同士を連結するとともに床パネル31の第二接続管11Cと互いに接合する第二接続管(図示せず)とを備えている。
【0042】
第3実施形態において、流体利用部12への温水の供給や暖房を実施する方法は第1実施形態と同じ手順であるが、第3実施形態では、流体利用部12に給湯すると、暖冷房パネル11の放熱管部150と床パネルの放熱管部150との双方に温水が流通することで、脱衣室Aの室内と床とが同時に暖房される。
脱衣室Aのみ暖房するには、給湯機13で沸かした温水を暖冷房パネル11に向けて供給する。これにより、給湯機13から供給される温水は、暖冷房パネル11に送られた後、床パネル31に送られ、この床パネル31で利用された水は給湯機13に戻される。暖冷房パネル11と床パネル31とに温水が供給されることで、脱衣室Aが暖房される。
そして、第3実施形態では、第1実施形態と同様に、暖冷房パネル11と流体利用部12との双方に同時に給湯するものであってもよい。
【0043】
従って、第3実施形態では、第1実施形態の(1)から(6)と同様の作用効果を奏する他、次の作用効果を奏することができる。
(8)暖冷房パネルとして床パネル31を備えたから、床パネル31からの放熱により、脱衣時に居住者の足下から体全体を暖めることが可能となる。
(9)脱衣室Aの床下に設置した床パネル31と脱衣室Aの室内に設置した暖冷房パネル11との双方を設けたから、脱衣室Aを効率的に暖房することができる。
【0044】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、第1実施形態と第3実施形態において、流体供給源を給湯機13としたが、本発明では、給湯機13に代えて冷水のみを供給する流体供給装置や、温水と冷水とをそれぞれ供給する流体供給装置を用いてもよい。
温水と冷水とをそれぞれ供給する流体供給装置としては、種々の構造を採用することができるが、例えば、燃料ボイラとヒートポンプとを備えた構造でもよい。この燃料ボイラは、灯油等の燃料を燃焼させることにより水を加熱する装置であり、ヒートポンプが十分に能力を発揮する所定温度未満、例えば0℃未満に外気温がなった場合に駆動する。ヒートポンプは、圧縮器、膨張弁及び熱交換器を備えており、圧縮器にて冷媒を圧縮した際の発熱現象、および膨張弁にて冷媒を膨張させた際の吸熱現象を利用して、熱交換器を介して配管内の水を加熱・冷却する装置である。
【0045】
また、第3実施形態では、床パネル31のみを配置した構造であってもよい。
さらに、前記各実施形態では、放熱用管部材110及び放熱管部150は、それぞれアルミニウムから形成される構成としたが、本発明では、熱導電性の高い金属材料から形成されるものであれば、その具体的な材料は問われるものではなく、例えば、銅であってもよい。
そして、本発明では、流体利用部を流体利用部12以外の設備としてもよく、暖冷房パネル11や床パネル31を脱衣室A以外の室、例えば、キッチンやリビングに設置するものでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は住宅、その他の建物の暖冷房システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1,2,3…暖冷房システム、11…暖冷房パネル、11A…放熱管、11B…第一接続管、11C…第二接続管、12…流体利用部、13…給湯機(流体供給源)、14…パネル用連通管、15…利用部用連通管、15A…放熱管、15B…第一接続管、15C…第二接続管、23…冷水供給機(流体供給源)、24…パネル用連通管、25…利用部用連通管、31…床パネル、34…パネル用連通管、35…利用部用連通管、110…放熱用管部材、150…放熱管部、A…脱衣室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放熱用管部材を有する暖冷房パネルと、流体利用部と、これらの暖冷房パネルと流体利用部とにそれぞれ高温あるいは低温の流体を供給する流体供給源と、この流体供給源と前記暖冷房パネルとを連通するパネル用連通管及び前記流体供給源と前記流体利用部とを連通する利用部用連通管とを備えた暖冷房システムであって、
前記利用部用連通管は放熱管部を備え、この放熱管部と前記放熱用管部材とが軸方向に沿って互いに当接されることを特徴とする暖冷房システム。
【請求項2】
請求項1に記載された暖冷房システムにおいて、
前記流体利用部は浴槽を備え、前記流体供給源は給湯機を備え、前記暖冷房パネルは前記浴槽に隣接される脱衣室に配置されることを特徴とする暖冷房システム。
【請求項3】
請求項2に記載された暖冷房システムにおいて、
前記放熱管部は、それぞれ平行配置される複数本の放熱管と、これらの放熱管同士を連結する接続管とを備え、前記放熱用管部材は互いに平行配置される複数本の放熱管と、これらの放熱管同士を連結する接続管とを備え、前記放熱管部と前記放熱用管部材との放熱管同士が互いに接合し、前記放熱管部と前記放熱用管部材との連通管同士が互いに接合されることを特徴とする暖冷房システム。
【請求項4】
請求項3に記載された暖冷房システムにおいて、
前記暖冷房パネルは床パネルであることを特徴とする暖冷房システム。
【請求項5】
請求項1に記載された暖冷房システムにおいて、
前記流体供給源は冷水供給機を備えたことを特徴とする暖冷房システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載された暖冷房システムにおいて、
前記パネル用連通管及び前記利用部用連通管は、それぞれ往路と環路とを有することを特徴とする暖冷房システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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