説明

暖房便座

【課題】省電力化を図りつつ、製造コストの低廉化及び耐久性の向上を実現でき、廃棄する際に断熱材を容易に分別可能な暖房便座を提供する。
【解決手段】暖房便座1は、表面が座面10aとされた座表体10と、座表体10の裏面10bに貼設され、通電によって座面10aを暖めるヒータ20と、ヒータ20を隠蔽するように座表体10に固定される座裏体30とを備える。
この暖房便座1において、ヒータ20の座裏体30側には、座裏体30との間に空洞部10dを確保する厚さの断熱材40が接着手段又は粘着手段を介在させずに配設され、断熱材40と座裏体30との間には、断熱材40がヒータ20に当接するように断熱材40を付勢する付勢部材としてのコイルバネ31が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は暖房便座に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の暖房便座が開示されている。この暖房便座は、表面が座面とされた座表体と、座表体の裏面に貼設され、通電によって座面を暖めるヒータと、ヒータを隠蔽するように座表体に固定される座裏体とを備えている。ヒータは、より具体的には、コード状発熱体とアルミ粘着シート等の均熱体とからなっている。このヒータは、座表体の裏面に均熱体が貼り付けられ、均熱体上に蛇行するようにコード状発熱体が配置されることにより、座表体の裏面に面状に貼設されている。
【0003】
このような構成である従来の暖房便座は、ヒータに通電することによって座面を暖めることが可能となっており、例えば、寒冷時において人が冷たい座面に触れる際の不快感を抑制することができている。
【0004】
ところで、近年、省エネルギーの観点から、上記従来の暖房便座について、一層の省電力化が求められている。このため、特許文献2開示の暖房便座では、ヒータの座裏体側に、所定の厚さの断熱材を接着手段を介在させつつ配設することにより、ヒータから座裏体側に無駄に放熱されることを抑制し、省電力化を図っている。
【0005】
【特許文献1】実開昭63−110298号公報
【特許文献2】特開2000−350678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献2開示の暖房便座では、ヒータの座裏体側と断熱材との間に接着手段を介在させなければならないことから、下記の通り、製造コストの低廉化及び耐久性の向上を両立させることが難しかった。
【0007】
すなわち、特許文献2開示の暖房便座では、例えば、接着手段として、高温時でも接着力が低下し難い高コストの接着剤を使用しなければならない。特に、ウレタンフォーム等の発泡体やグラスウール等の繊維集合体等の断熱材を選定した場合、断熱材自体の材質やその表面性状等を加味しなければならず、安価な接着剤の選定が困難である。このため、この暖房便座では、製造コストの低廉化を実現することが難しかった。
【0008】
また、この暖房便座では、たとえある程度コストが満足できる接着剤を使用した場合であっても、断熱材自体の形状が変化し易い性状に起因して、暖房便座の開閉動作等により、ヒータの座裏体側と断熱材との間の接着力が経時的に低下し易く、断熱材が剥がれる等の耐久性の低下も生じ易かった。
【0009】
さらに、この暖房便座では、廃棄する際に、ヒータの座裏体側に接着手段を介在させて配設された断熱材を分別することが困難であった。
【0010】
このような問題は、接着手段の代わりに粘着手段を用いる場合も同様である。
【0011】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、省電力化を図りつつ、製造コストの低廉化及び耐久性の向上を実現でき、廃棄する際に断熱材を容易に分別可能な暖房便座を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の暖房便座は、表面が座面とされた座表体と、該座表体の裏面に貼設され、通電によって該座面を暖めるヒータと、該ヒータを隠蔽するように該座表体に固定される座裏体とを備えた暖房便座において、
前記ヒータの前記座裏体側には、該座裏体との間に空洞部を確保する厚さの断熱材が接着手段又は粘着手段を介在させずに配設され、
該断熱材と該座裏体との間には、該断熱材が該ヒータに当接するように該断熱材を付勢する付勢部材が設けられていることを特徴とする。
【0013】
このような構成である本発明の暖房便座は、ヒータに通電することによって座面を暖めることが可能となっており、例えば、寒冷時において人が冷たい座面に触れる際の不快感を抑制することができる。また、この暖房便座は、ヒータの座裏体側に断熱材を配設していることにより、ヒータから座裏体側に無駄に放熱されることを抑制し、省電力化を図っている。
【0014】
そして、この暖房便座では、ヒータの座裏体側に接着手段又は粘着手段を介在させずに断熱材を配設し、その断熱材が座裏体との間に空洞部を確保する厚さのものであっても、断熱材と座裏体との間に設けた付勢部材によってその断熱材を付勢し、これによって断熱材をヒータに当接させるため、確実にその断熱材を位置決めし、かつ固定することができる。このため、この暖房便座では、上記従来の暖房便座のように、高温時でも接着力が低下し難い高コストの接着剤を使用する必要がない。また、安価な接着剤の選定が困難なウレタンフォーム等の発泡体やグラスウール等の繊維集合体等、種々の断熱材を選定することもできる。さらに、この暖房便座では、断熱材が座裏体との間に空洞部を確保する厚さであることから薄いため、この点でも低コストを実現している。こうして、この暖房便座は、製造コストの低廉化を実現することができる。
【0015】
また、この暖房便座では、付勢部材によって断熱材を付勢し、断熱材をヒータに当接させていることから、開閉動作等によっても、断熱材をヒータに当接させる力が経時的に低下し難く、その結果として、断熱材が剥がれる等の不具合が生じ難い。このため、この暖房便座は、耐久性の向上も実現することができる。
【0016】
さらに、この暖房便座では、接着手段又は粘着手段を介在させずに、断熱材をヒータに当接させていることから、廃棄する際に断熱材を容易に分別することができる。このため、リサイクルも容易になる。
【0017】
したがって、本発明の暖房便座は、省電力化を図りつつ、製造コストの低廉化及び耐久性の向上を実現でき、廃棄する際に断熱材を容易に分別することができる。
【0018】
断熱材は、アクリルフォーム、ウレタンフォーム等の発泡体、グラスウール等の繊維集合体等から適宜選択することが可能である。
【0019】
座表体及び座裏体の形状に関しては、座表体に座裏体が固定されることにより空間が形成されるのであれば、どのような形状でもかまわない。例えば、座表体及び座裏体は、各々凹部が形成された形状とされたり、略平板状とされ得る。
【0020】
本発明の暖房便座において、前記座表体は前記裏面に前記空洞部を構成する凹部が形成された形状とされ、前記座裏体は略平板状とされ得る。この場合、断熱材は、座表体の凹部内に収納されるため、断熱材の周縁が座表体と座裏体との固定部分に挟まれるという不具合を生じ難くすることができる。
【0021】
本発明の暖房便座において、付勢部材はコイルバネであり得る。この場合、この暖房便座は、コイルバネの線材の材質や巻数等を適宜選定することにより、付勢力を容易に最適化することができる。このため、この暖房便座は、本発明の効果を確実に奏することができる。コイルバネは、バネ鋼等の金属、樹脂、又は繊維強化樹脂等の一般的な材料からなるものを採用できる。
【0022】
本発明の暖房便座において、付勢部材は弾性材料で形成されたチューブであり得る。この場合、この暖房便座は、チューブを構成する弾性材料の材質、直径及び肉厚等を適宜選定することにより、付勢力を容易に最適化することができる。このため、この暖房便座は、本発明の効果を確実に奏することができる。チューブは、各種のゴムや、軟質ナイロン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂その他の樹脂が押出成形されたもの等の比較的低コストなものを採用することができる。
【0023】
本発明の暖房便座において、付勢部材は弾性を有する発泡体であり得る。この場合、この暖房便座は、発泡体を構成する発泡材料の材質、発泡率及び肉厚等を適宜選定することにより、付勢力を容易に最適化することができる。また、発泡体自体も断熱効果を発揮する。このため、この暖房便座は、本発明の効果を確実に奏することができる。発泡体は、軟質ウレタンフォーム、発泡ポリエチレン、発泡ゴムその他の一般的な弾性発泡体を採用することができる。
【0024】
本発明の暖房便座において、付勢部材は、袋体と、袋体内に封入された気体とからなるクッションであり得る。この場合、この暖房便座は、クッションを構成する袋体の材質及び肉厚等や、袋体内に封入された気体の封入圧等を適宜選定することにより、付勢力を容易に最適化することができるとともに、断熱材全体を均一に付勢することを容易に実現できる。また、クッション自体も断熱効果を発揮する。このため、この暖房便座は、本発明の効果を確実に奏することができる。袋体は、ナイロン樹脂又はポリエチレン樹脂等のインフレーション成形や、2枚の樹脂シートが袋状に熱融着されたもの等の一般的なものを採用することができる。気体は、空気等を採用することができる。
【0025】
本発明の暖房便座において、付勢部材は、袋体と、袋体内に封入された弾性を有する発泡体とからなるクッションであり得る。このようなクッションも気体を封入したクッションと同様である。袋体内に封入される発泡体は、軟質ウレタンフォーム、発泡ポリエチレン、発泡ゴムその他の一般的な弾性発泡体を採用することができる。
【0026】
本発明の暖房便座において、袋体はアルミニウム系金属からなる輻射層を有し得る。この場合、この暖房便座は、袋体の輻射層によってクッションが断熱効果を一層発揮することができることから、本発明の効果をより確実に奏することができる。
【0027】
本発明の暖房便座において、付勢部材は、座面に沿った環状又はU字形状の軸線をもつ一体品であり得る。この場合、座面の全体又はほぼ全体で断熱材がヒータに当接するため、高い省電力化を実現できる。なお、付勢部材がコイルバネ又は弾性体からなるチューブであれば、例えば、直線状に成形した後、所定の形状に曲げることにより、簡易に付勢部材を製造できる。また、付勢部材が袋体と、袋体内に封入された気体又は発泡体とからなるクッションであれば、例えば、所定の形状に裁断した2枚の樹脂シートの周囲を熱融着することにより、簡易に袋体を製造できる。
【0028】
本発明の暖房便座において、付勢部材は、複数個が凹部内に点在され得る。この場合、汎用の付勢部材を用いることができるため、製造コストの低廉化を確実に奏することができる。
【0029】
本発明の暖房便座において、座表体又は座裏体は一対のヒンジ部を有し、暖房便座はヒンジ部を介して便座取付ボックスに揺動可能に支持されており、
付勢部材は、座面に沿った環状又はU字形状の軸線をもつ押圧部と、一端側が押圧部に固定され、他端側が各ヒンジ部に係合される一対の付勢部とからなり、
各付勢部は、押圧部を断熱材とともに座面側に付勢するとともに、全体の自重を超えない力で押圧部を介して座表体及び座裏体を便座取付ボックスに向かって近づく方向に付勢するように構成され得る。
【0030】
この場合、この暖房便座では、付勢部材の押圧部が断熱材を座面側に付勢し、これによって断熱材をヒータに当接させるため、確実にその断熱材を位置決めし、かつ固定することができる。また、開閉動作等によっても、断熱体をヒータに当接させる力が経時的に低下し難い。このため、この暖房便座は、本発明の効果を確実に奏することができる。さらに、この暖房便座では、付勢部が全体の自重を超えない力で押圧部を介して座表体及び座裏体を便座取付ボックスに向かって近づく方向、つまり暖房便座を開く方向に付勢するので、暖房便座を開く際には、小さな力で開くことができる。また、暖房便座を閉じる際には、付勢部によるダンパー効果で緩やかに閉じることができる。このため、この暖房便座は、他のバネ等の手段を用いなくても、開閉時において、使用者の取り扱い性を向上させることができる。
【0031】
便座取付ボックスは、洋風便器の水洗タンクを覆うタンクカバーや、局部洗浄装置のカバー等を兼ねるものであってもよい。また、暖房便座及び便座取付ボックスは、別体又は一体の製品であってもよい。
【0032】
本発明の暖房便座において、押圧部は、座面の深さ方向が幅とされ、座面の幅方向が厚さとされ、幅が厚さより大きい板材からなり得る。
【0033】
この場合、暖房便座は、押圧部の厚さを薄くしつつ、押圧部が断熱材を付勢する方向に変形し難くすることをできる。このため、この暖房便座は、軽量化を図りつつ、本発明の効果を確実に奏することができる。なお、ここでいう板材とは、略矩形断面、略長円断面等の一般的に幅よりも厚さが小さい型材をいう。
【0034】
本発明の暖房便座において、断熱材はシート状の発泡体からなることが好ましい。この場合、この暖房便座は、連続成形された独立気泡のウレタンシート等、安価な断熱材を採用することができるので、製造コストの低廉化を一層確実に実現できる。また、このような断熱材は断熱性の点でも優れている。
【0035】
断熱材がシート状の発泡体からなる場合、断熱材は、発泡体が半円弧形状に裁断された2枚の断熱片からなり得る。この場合、この暖房便座は、シート状の発泡体から多数の断熱片を裁断する際の配列を最適化することにより、断熱材の材料収率を大幅に向上させることができる。このため、この暖房便座は、製造コストの低廉化をさらに確実に実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明を具体化した実施例1〜6を図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0037】
図1〜図3に示すように、実施例1の暖房便座1は、座表体10と、ヒータ20と、座裏体30とを備えている。
【0038】
座表体10は、図1に示すように、中央に開口10eを有する円環形状の樹脂成形体であり、図2に示すように、断面が逆「U」字状とされている。また、この座表体10は、表面が座面10aとされ、裏面10bに凹部10cが形成されている。
【0039】
ヒータ20は、開口10eを囲むように座表体10の裏面10bに貼設されている。より具体的には、ヒータ20は、コード状発熱体21とアルミ粘着シート製の均熱体22とからなっている。このヒータ20は、座表体10の裏面10bに均熱体22が貼り付けられ、均熱体22上に蛇行するようにコード状発熱体21が配置されることにより、座表体10の裏面10bに面状に貼設されている。
【0040】
座裏体30は、図3に示すように、座表体10と同様の円環形状の樹脂成形体である。この座裏体30は、図2に示すように、断面が平板状とされており、座表体10の逆「U」字状断面の各稜線10f、10gに座裏体30の外縁30f及び内縁30gが固定されることにより、ヒータ20を隠蔽している。
【0041】
ヒータ20の座裏体30側には、断熱材40が接着手段又は粘着手段を介在させずに配設されている。この断熱材40は、図3に示すように、発泡体であるシート状ウレタンフォームが半円弧形状に裁断された2枚の断熱片40a、40bからなる。また、断熱材40は、図2に示すように、座裏体30との間に空洞部10dを確保する厚さ(実施例1の場合、3〜5mm程度の厚さ)を有している。ここで、空洞部10dとは、裏面10bに形成される凹部10cによって構成されるものであり、凹部10cから、ヒータ20及び断熱材40を除いた空間のことである。
【0042】
断熱材40と座裏体30との間には、付勢部材としてコイルバネ31が設けられている。このコイルバネ31は、座面10aに沿った環状の軸線をもつ一体品であり、図2に示すように、断熱材40がヒータ20に当接するように断熱材40を付勢することが可能とされている。また、このコイルバネ31は、例えば、バネ鋼の線材を直線状のコイルに成形した後、環状に曲げることにより、簡易に製造することが可能である。さらに、このコイルバネ31は、コイルバネ31の線材の材質や巻数等を適宜選定することにより、付勢力が最適化されている。
【0043】
このような構成である実施例1の暖房便座1は、ヒータ20に通電することによって座面10aを暖めることが可能となっており、例えば、寒冷時において人が冷たい座面10aに触れる際の不快感を抑制することができる。また、この暖房便座1は、ヒータ20の座裏体30側に断熱材40を配設していることにより、ヒータ20から座裏体30側に無駄に放熱されることを抑制し、省電力化を図っている。
【0044】
そして、この暖房便座1では、ヒータ20の座裏体30側に接着手段又は粘着手段を介在させずに断熱材40を配設し、その断熱材40が座裏体30との間に空洞部10dを確保する厚さのものであっても、断熱材40と座裏体30との間に設けたコイルバネ31によってその断熱材40を付勢し、これによって断熱材40をヒータ20に当接させている。このため、確実にその断熱材40を位置決めし、かつ固定することができている。
【0045】
このため、この暖房便座1では、従来の暖房便座のように、高温時でも接着力が低下し難い高コストの接着剤を使用する必要がなくなっており、安価な接着剤の選定が困難なウレタンフォームを選定することもできている。また、この暖房便座1では、断熱材40が座裏体30との間に空洞部10dを確保する厚さであることから薄いため、この点でも低コストを実現している。こうして、この暖房便座1は、製造コストの低廉化を実現することができている。
【0046】
また、この暖房便座1では、コイルバネ31によって断熱材40を付勢し、断熱材40をヒータ20に当接させていることから、開閉動作等によっても、断熱材40をヒータ20に当接させる力が経時的に低下し難く、その結果として、断熱材40が剥がれる等の不具合が生じ難くなっている。このため、この暖房便座1は、耐久性の向上も実現することができている。
【0047】
さらに、この暖房便座1では、接着手段又は粘着手段を介在させずに、断熱材40をヒータ20に当接させていることから、廃棄する際に断熱材40を容易に分別することが可能となっている。
【0048】
したがって、実施例1の暖房便座1は、省電力化を図りつつ、製造コストの低廉化及び耐久性の向上を実現できており、廃棄する際に断熱材を容易に分別することが可能となっている。
【0049】
また、この暖房便座1では、付勢部材としてコイルバネ31を採用していることから、コイルバネ31の線材の材質や巻数等を適宜選定することにより、付勢力を容易に最適化することができている。このため、この暖房便座1は、本発明の効果を確実に奏することができている。
【0050】
さらに、この暖房便座1において、コイルバネ31は、座面10aに沿った環状の軸線をもつ一体品であることから、座面10aの全体で断熱材40がヒータ20に当接しているため、高い省電力化を実現できている。また、このコイルバネ31は、直線状に成形した後、環状に曲げることにより、簡易に製造できるので、製造コストの低廉化を図ることもできる。
【0051】
また、この暖房便座1において、断熱材40は安価なシート状ウレタンフォームを採用していることから、製造コストの低廉化を一層確実に実現できている。また、このような断熱材40は断熱性の点でも優れている。
【0052】
さらに、断熱材40は、発泡体であるシート状ウレタンフォームが半円弧形状に裁断された2枚の断熱片40a、40bからなっている。このため、この暖房便座1は、シート状ウレタンフォームから多数の断熱片40a、40bを裁断する際の配列を裁断屑を少なくするように最適化することにより、断熱材40の材料収率を大幅に向上させることができている。このため、この暖房便座1は、製造コストの低廉化をさらに確実に実現できている。
【実施例2】
【0053】
図4及び図5に示すように、実施例2の暖房便座2は、実施例1の暖房便座1のコイルバネ31の代わりに、付勢部材として弾性材料で形成されたチューブ32を採用したものである。他の構成は実施例1の暖房便座1と同様であるので、説明は省く。
【0054】
チューブ32は、弾性材料であるウレタン製であり、図5に示すように、座面10aに沿ったU字状の軸線をもつ一体品である。このチューブ32は、図4に示すように、断熱材40がヒータ20に当接するように断熱材40を付勢することが可能とされている。また、このチューブ32は、例えば、弾性材料を押出成形して直線状の中空管とした後、U字状に折り曲げることにより簡易に製造することが可能である。さらに、このチューブ32は、チューブ32を構成する弾性材料の材質、直径及び肉厚等を適宜選定することにより、付勢力が最適化されている。
【0055】
このような構成である実施例2の暖房便座2も、実施例1の暖房便座1と同様な作用効果を奏することができている。
【実施例3】
【0056】
図6及び図7に示すように、実施例3の暖房便座3は、実施例1の暖房便座1のコイルバネ31の代わりに、付勢部材として弾性を有する発泡体33を採用したものである。他の構成は実施例1の暖房便座1と同様であるので、説明は省く。
【0057】
発泡体33は、弾性を有する発泡材料であるウレタン製であり、図7に示すように、各々同一形状である複数個の発泡体33が座面10aに沿った環状の軸線状に並べられて、凹部10c内に点在されている。この発泡体33は、図6に示すように、断熱材40がヒータ20に当接するように断熱材40を付勢することが可能とされている。また、この発泡体33は、例えば、発泡材料が成形用上下型内に形成されたキャビティ内に注入発泡されることにより、同一形状のものを数多く簡易に製造することが可能である。特に、発泡体33は、各々同一形状である複数個に分割されて小さくなっていることから、環状の一体品とされる場合よりも成形用上下型を小さくできており、製造コストの低廉化を図ることができている。さらに、この発泡体33は、発泡体33を構成する発泡材料の材質、発泡率及び肉厚等を適宜選定することにより、付勢力が最適化されている。また、発泡体33自体も断熱効果を発揮することが可能である。
【0058】
このような構成である実施例3の暖房便座3も、実施例1、2の暖房便座1、2と同様な作用効果を奏することができている。
【実施例4】
【0059】
図8及び図9に示すように、実施例4の暖房便座4は、実施例1の暖房便座1のコイルバネ31の代わりに、付勢部材としてクッション34を採用したものである。他の構成は実施例1の暖房便座1と同様であるので、説明は省く。
【0060】
クッション34は、袋体34aと、袋体34a内に封入された気体としての空気34bとからなる。袋体34aは、図9に示すように、浮き輪のように袋状とされた樹脂製のものであり、座面10aに沿った環状の軸線をもつ一体品である。このクッション34は、図8に示すように、アルミニウム系金属からなる輻射層34cを外表面に有しており、袋体34a内には空気34bが封入されている。このクッション34は、図4に示すように、断熱材40がヒータ20に当接するように断熱材40全体を均一に付勢することが可能とされている。また、このクッション34は、例えば、所定の形状に裁断された2枚の樹脂シートの周囲を熱融着することにより簡易に製造することが可能である。さらに、このクッション34は、クッション34を構成する袋体34aの材質及び肉厚等や、袋体34a内に封入された空気34bの封入圧等を適宜選定することにより、付勢力が最適化されている。また、クッション34自体も、輻射層34cを有することにより、断熱効果を一層発揮することが可能である。
【0061】
このような構成である実施例4の暖房便座4も、実施例1〜3の暖房便座1〜3と同様な作用効果を奏することができている。
【実施例5】
【0062】
図10に示すように、実施例5の暖房便座5は、実施例4の暖房便座4の空気34bが封入されたクッション34の代わりに、弾性を有する発泡体35bが封入されたクッション35を採用したものである。他の構成は実施例4の暖房便座4と同様であるので、説明は省く。
【0063】
クッション35は、弾性を有する発泡材料であるウレタンを袋体34a内に注入発泡することによって、簡易に製造される。また、このクッション35は、発泡体35bを構成する発泡材料の材質、発泡率及び肉厚等を適宜選定することにより、付勢力が最適化されている。
【0064】
このような構成である実施例5の暖房便座5も、実施例1〜4の暖房便座1〜4と同様な作用効果を奏することができている。
【実施例6】
【0065】
図11及び図12に示すように、実施例6の暖房便座6は、実施例1の暖房便座1のコイルバネ31の代わりに、付勢部材36を採用したものである。その他の構成は実施例1の暖房便座1と同様であるので、説明は省く。
【0066】
図1及び図13に示すように、暖房便座6の座表体10は一対のヒンジ部60を有している。そして、暖房便座6は、ヒンジ部60及びヒンジピン61を介して、便座取付ボックス90に揺動可能に支持されている。
【0067】
付勢部材36は、図12に示すように、押圧部36aと、一対の付勢部36bとからなっている。
【0068】
押圧部36aは、座面10aに沿った環状の軸線をもち、図11に示すように、座面10aの深さ方向が幅wとされ、座面10aの幅方向が厚さtとされ、幅wが厚さtより大きい板材からなっている。
【0069】
各付勢部36bは、図12に示すように、一端側が押圧部36aに固定され、他端側が弦巻バネ状に折り曲げ加工されている。他端側は、先端部36cがAの位置からBの位置まで弾性変形された状態で、図13に示すように、各ヒンジピン61を介して、各ヒンジ部60に係合され、先端部36cが便座取付ボックス90の固定孔90aに挿入固定されている。このような構成である各付勢部36bは、先端部36cがBの位置からAの位置に戻ろうとする復元力によって、押圧部36aを断熱材40とともに座面10a側に付勢することが可能とされている。また、各付勢部36bは、先端部36cの弾性変形量やバネ定数を最適化することにより、全体の自重を超えない力で押圧部36aを介して座表体10及び座裏体30を便座取付ボックス90に向かって近づく方向、つまり暖房便座6を開く方向に付勢するように構成されている。
【0070】
このような構成である実施例6の暖房便座6では、付勢部材36の押圧部36aが断熱材40を座面10a側に付勢し、これによって断熱材40をヒータ20に当接させている。このため、この暖房便座6は、確実にその断熱材40を位置決めし、かつ固定することができている。
【0071】
また、この暖房便座6は、開閉動作等によっても、断熱体40をヒータ20に当接させる力が経時的に低下し難い。このため、この暖房便座6は、本発明の効果を確実に奏することができている。さらに、この暖房便座6では、付勢部36bが全体の自重を超えない力で押圧部36aを介して座表体10及び座裏体30を便座取付ボックス90に向かって近づく方向に付勢しているので、暖房便座6を開く際には、小さな力で開くことができる。また、暖房便座6を閉じる際には、付勢部36bによるダンパー効果で緩やかに閉じることができる。このため、この暖房便座6は、他のバネ等の手段を用いなくても、開閉時において、使用者の取り扱い性を向上させることができている。
【0072】
さらに、この暖房便座6は、押圧部36aの厚さtを薄くしつつ、押圧部36aが断熱材を付勢する方向に変形し難くしていることから、軽量化を図りつつ、本発明の効果を確実に奏することができている。
【0073】
以上において、本発明を実施例1〜6に即して説明したが、本発明は上記実施例1〜6に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は暖房便座に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】実施例1〜6の暖房便座の概略斜視図である。
【図2】実施例1の暖房便座に係り、図1のII−II断面を示す断面図である。
【図3】実施例1の暖房便座の分解斜視図である。
【図4】実施例2の暖房便座に係り、図1のII−II断面を示す断面図である。
【図5】実施例2の暖房便座に係り、チューブを示す概略斜視図である。
【図6】実施例3の暖房便座に係り、図1のII−II断面を示す断面図である。
【図7】実施例3の暖房便座に係り、発泡体を示す概略斜視図である。
【図8】実施例4の暖房便座に係り、図1のII−II断面を示す断面図である。
【図9】実施例4の暖房便座に係り、クッションを示す概略斜視図である。
【図10】実施例5の暖房便座に係り、図1のII−II断面を示す断面図である。
【図11】実施例6の暖房便座に係り、図1のII−II断面を示す断面図である。
【図12】実施例6の暖房便座に係り、付勢部材を示す概略斜視図である。
【図13】実施例6の暖房便座に係り、図1のZ部を示す要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0076】
1、2、3、4、5、6…暖房便座
10…座表体
10a…座面
10b…裏面
10c…凹部
10d…空洞部
20…ヒータ
30…座裏体
31、32、33、34、35、36…付勢部材(31…コイルバネ、32…チューブ、33…発泡体、34、35…クッション)
34a…袋体
34b…気体(空気)
34c…輻射層
33、35b…発泡体
36a…押圧部
36b…付勢部
40…断熱材
40a、40b…断熱片
60…ヒンジ部
90…便座取付ボックス
t…板材の厚さ
w…板材の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が座面とされた座表体と、該座表体の裏面に貼設され、通電によって該座面を暖めるヒータと、該ヒータを隠蔽するように該座表体に固定される座裏体とを備えた暖房便座において、
前記ヒータの前記座裏体側には、該座裏体との間に空洞部を確保する厚さの断熱材が接着手段又は粘着手段を介在させずに配設され、
該断熱材と該座裏体との間には、該断熱材が該ヒータに当接するように該断熱材を付勢する付勢部材が設けられていることを特徴とする暖房便座。
【請求項2】
前記座表体は前記裏面に前記空洞部を構成する凹部が形成された形状とされ、前記座裏体は略平板状とされている請求項1記載の暖房便座。
【請求項3】
前記付勢部材はコイルバネである請求項1又は2記載の暖房便座。
【請求項4】
前記付勢部材は弾性材料で形成されたチューブである請求項1又は2記載の暖房便座。
【請求項5】
前記付勢部材は弾性を有する発泡体である請求項1又は2記載の暖房便座。
【請求項6】
前記付勢部材は、袋体と、該袋体内に封入された気体とからなるクッションである請求項1又は2記載の暖房便座。
【請求項7】
前記付勢部材は、袋体と、該袋体内に封入された弾性を有する発泡体とからなるクッションである請求項1又は2記載の暖房便座。
【請求項8】
前記袋体はアルミニウム系金属からなる輻射層を有する請求項6又は7記載の暖房便座。
【請求項9】
前記付勢部材は、前記座面に沿った環状又はU字形状の軸線をもつ一体品である請求項3乃至8のいずれか1項記載の暖房便座。
【請求項10】
前記付勢部材は、複数個が前記凹部内に点在されている請求項3乃至8のいずれか1項記載の暖房便座。
【請求項11】
前記座表体又は前記座裏体は一対のヒンジ部を有し、前記暖房便座は該ヒンジ部を介して便座取付ボックスに揺動可能に支持されており、
前記付勢部材は、前記座面に沿った環状又はU字形状の軸線をもつ押圧部と、一端側が該押圧部に固定され、他端側が各該ヒンジ部に係合される一対の付勢部とからなり、
各該付勢部は、該押圧部を前記断熱材とともに該座面側に付勢するとともに、全体の自重を超えない力で該押圧部を介して該座表体及び該座裏体を該便座取付ボックスに向かって近づく方向に付勢するように構成されている請求項1又は2記載の暖房便座。
【請求項12】
前記押圧部は、前記座面の深さ方向が幅とされ、該座面の幅方向が厚さとされ、該幅が該厚さより大きい板材からなる請求項11記載の暖房便座。
【請求項13】
前記断熱材はシート状の発泡体からなる請求項1乃至12のいずれか1項記載の暖房便座。
【請求項14】
前記断熱材は、前記発泡体が半円弧形状に裁断された2枚の断熱片からなる請求項13記載の暖房便座。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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