説明

曲げ加工品の検査装置

【課題】導電体材料で構成された長尺金属体から成る曲げ加工品の割れの有無を自動的に、かつ簡単に検査できるようにした曲げ加工品の検査装置を提供する。
【解決手段】導電体材料で構成された長尺金属体からなる曲げ加工品1が搬送される検査台2を有し、この検査台2には曲げ加工品1の基準部位1Aを位置決めする位置決め部材4と、曲げ加工品の比較部位の位置ずれを検知する検知部材5、6とが設けられ、この検知部材5、6が曲げ加工品1の比較部位1Bの位置ずれを検知したときに警報を発する制御手段12を備えたことを特徴とし、曲げ加工装置による曲げが強すぎて割れが発生して比較部位1Bの位置が公差から外れたときには検知部材5、6でこれを検出し、制御手段12で警報を発することにより、曲げ加工品1の割れの有無が自動的に、かつ簡単に検査できるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電体材料で構成された長尺金属体から成る曲げ加工品の割れの有無を検出する曲げ加工品の検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等に使用されるビームパイプ等のパイプやロッド等の長尺金属体はベンダーと呼ばれる曲げ加工装置によって曲げ加工品とされ、種々の用途に利用されている。また、曲げ加工装置での曲げ工程間の移動や曲げ加工装置から外部への搬送はロボットアームで行われ、自動化が図られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3704781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ビームパイプのように硬い材質のものを曲げ加工装置を用いて曲げ加工を行うと割れが発生することがあるため、曲げ加工品を全数目視で確認して不良品を除外しなければならず、この作業が煩わしいものであった。
【0005】
そこで本発明は、導電体材料で構成された長尺金属体からなる曲げ加工品の割れの有無を自動的に、かつ簡単に検査できるようにした曲げ加工品の検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため第1の発明の曲げ加工品の検査装置は、導電体材料で構成された長尺金属体から成る曲げ加工品が搬送される検査台を有し、この検査台には前記曲げ加工品の比較部位の位置ずれを検知する検知部材が設けられ、この検知部材が前記曲げ加工品の比較部位の位置ずれを検知したときに警報を発する制御手段を備えたことを特徴とする。
【0007】
すなわち、曲げ加工装置による曲げが強すぎて曲げ加工品に割れが発生している場合には、曲げ角度が通常とは異なるので、検知部材でこれを検出し、制御手段で警報を発することにより、曲げ加工品の割れの有無が自動的に、かつ簡単に検査できるようにしている。
【0008】
第2の発明の曲げ加工品の検査装置は、導電体材料で構成された長尺金属体から成る曲げ加工品が搬送される検査台を有し、この検査台には前記曲げ加工品の基準部位を位置決めする位置決め部材と、前記曲げ加工品の比較部位の位置ずれを検知する検知部材とが設けられ、この検知部材が前記曲げ加工品の比較部位の位置ずれを検知したときに警報を発する制御手段を備えたことを特徴とする。
【0009】
すなわち、曲げ加工装置による曲げが強すぎて曲げ加工品に割れが発生している場合には曲げ加工品を検査台上に基準部位で位置決めして載置したときに曲げ加工品の比較部位が公差より大きな位置ずれを起こすことに着目し、曲げ加工品の比較部位の位置が公差から外れたときには検知部材でこれを検出し、制御手段で警報を発することにより、曲げ加工品の割れの有無が自動的に、かつ簡単に検査できるようにしている。
【0010】
また第3の発明の曲げ加工品の検査装置は、第1又は第2の発明において、前記曲げ加工品はロボットアームによって搬送されるものであって、前記検知部材がこの曲げ加工品の比較部位の位置ずれを検知したときに、前記制御手段によってこの曲げ加工品がロボットアームから外され、前記検査台に放置されるようにしたことを特徴とし、曲げ加工品に割れが発生したことを警報するとともに、曲げ加工品を検査台にそのまま残し、異常のある曲げ加工品が外部に搬送されないようにしている。
【0011】
第4の発明の曲げ加工品の検査装置は、第1又は第2の発明のものにおいて、前記検知部材を構成する一対の検知ロッドを対向するように前記曲げ加工品の比較部位に近接して設け、この比較部位の位置ずれによってこの曲げ加工品と接触したときに電流が流れるようにしたことを特徴とし、検知部材と曲げ加工品との間で電流が流れるかどうかで、曲げ加工品の割れの有無が自動的に、かつ簡単に検出できるようにしている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、導電体材料で構成された長尺金属体からなる曲げ加工品の割れの有無を目視によらずに、自動的に、かつ簡単に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】正常時における曲げ加工品の検査装置の平面図である。
【図2】正常時における曲げ加工品と検知部材との関係を示す説明図である。
【図3】異常時における曲げ加工品の検査装置の平面図である。
【図4】異常時における曲げ加工品と検知部材との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図1乃至図4に基づいて説明する。先ず、図1及び図2において、1は適度な剛性と靭性を有して自動車などに使用される中空の筒体であるビームパイプ、中実の棒体であるロッド等の長尺金属体から成る曲げ加工品であり、この曲げ加工品1は電気導電体材料で構成されるとともに磁性体材料で構成され、図示しないベンダー(曲げ加工装置)により4か所に曲げ加工が施されている。従って、曲げ加工により曲げ加工品1に割れが発生しやすい場所はR1乃至R4とr1乃至r4であり、従来はこれらの曲げ個所を作業者が目視で全数検査していた。
【0015】
前記曲げ加工品1はベンダーからロボットアーム(図示せず)の電磁石により吸着されて検査台2に搬送され、吸着されたまま検査台2の所定位置に載置されるが、載置しなくともよい。前記ロボットアームの電磁石接地部3は曲げ加工品1の一端部1Aの上面にあり、この一端部1Aが検査台2上に設けられた位置決め部材4により位置が規制されて位置決めされ、前記曲げ加工品1の割れの有無の検査上の基準部位となっている。前記位置決め部材4は、例えば一対の位置規制体間に曲げ加工品1の一端部1Aを位置させるようにして、位置規制して位置決めさせる。
【0016】
なお、前記ロボットアーム(図示せず)は電磁石により前記曲げ加工品1を吸着して保持するようにしたが、このような構造に限らず、一対の爪などで把持するような構造や、その他の保持手段で保持して搬送できるものであればよい。即ち、保持手段を備えた搬送手段である。
【0017】
また、前記検査台2には曲げ加工品1の他端部(比較部位)1Bの両側に対峙するように一対の検知部材5、6が設けられている。この検知部材5、6は導電部材からなり、電気絶縁材1で作られた検査台2の対向する両側立上り部2A、2Bにそれぞれ取り付けられた端子部材5A、6Aと、バネ部材5B、6Bと、検知ロッド5C、6Cとを図示のように順次連結したものである。図2に示すように、この検知ロッド5C、6Cの先端と曲げ加工品1の他端部(部位)1Bの両側部との間の距離Sは曲げ加工で許容される最大公差よりも僅かに大きく設定されている。
【0018】
前記検知部材5、6の端子部材5A、6Aは電気配線7、8、9により制御手段としての制御装置12に接続されている。また、検査台2には曲げ加工品1の中間部下面と接触して載置する導電部材10が設けられ、この導電部材10は電気配線11を介して前記制御装置12に接続されている。
【0019】
検知部材5又は6の検知ロッド5C又は6Cが曲げ加工品1に接触して、直流電源が印加されて電気配線7及び11を介して電流が流れたときに、この制御装置12は聴覚又は視覚で作業者に訴えて警報を発する警報手段であるランプやブザー等で警報を発するように制御するとともに、ロボットアームの電磁石への通電を解除してロボットアームを曲げ加工品1から切り離し、曲げ加工品1が検査台2から外部に搬送されないようにして検査台2の導電部材10上に放置(載置)するように制御する。この場合、導電部材10上だけでなく、その他の載置部材(図示しない)上にも放置するようにしてもよく、しかも検査台2の底壁2Cと空間を存してこの底壁2Cと離れた位置において載置するようにしてもよい。
【0020】
実験によれば、ベンダーによる曲げが強すぎて曲げ箇所R1乃至R4、またはr1乃至r4のいずれかに割れが発生している場合には、曲げ加工品1を検査台2上に基準部位となる一端部1Aで前記位置決め部材4により位置決めして載置したときに曲げ加工品1の比較部位となる他端部1Bが最大公差より大きな位置ずれを起こすことが確認された。
【0021】
そこで、検知ロッド5C、6Cの先端と曲げ加工品1の他端部(比較部位)1Bの両側部との間の距離Sを曲げ加工で許容される最大公差より大きくなるようにミリメートル単位で設定しておくことにより、図3に示すようにベンダーによる曲げが強すぎて曲げ加工品1に割れが発生した場合には、曲げ加工品1の比較部位となる他端部1Bが公差から外れて検知部材5又は検知部材6(図3の例では、曲げ箇所R3にて割れ13が発生して検知部材6)と接触することになる。
【0022】
このとき、図3及び図4に示すように、曲げ加工品1の他端部1Bが検知部材6の検知ロッド6Cと接触し、バネ部材6Bが圧縮されるため、制御装置12、電気配線7、電気配線9、端子部材6A、バネ部材6B、検知ロッド6C、曲げ加工品1、導電部材10、電気配線11及び制御装置12の経路で電流が流れるため、制御装置12は警報手段であるランプやブザー等で警報を発して曲げ加工品1に割れがあることを報知するとともに、ロボットアームの電磁石への通電を解除してロボットアームを曲げ加工品1から切り離し、曲げ加工品1を検査台2から外部に搬送せずに検査台2に放置する。
【0023】
また、曲げ加工品1に割れがない場合には、検査が済んだ曲げ加工品1はロボットアームで外部へ搬送され、次の曲げ加工品1が検査台2に搬送されてくる。
【0024】
なお、以上の実施形態では、前記位置決め部材4により位置決めした状態で、曲げ加工品1の割れの有無を検査するようにしたが、ロボットアームで曲げ加工品1をいつも定位置で保持できるような構造にすれば、必ずしも位置決め部材4が無くとも、割れの有無の検査をすることができる。
【0025】
以上のように本実施態様によれば、曲げ加工品1の曲げ箇所R1乃至R4またはr1乃至r4のいずれかに割れが発生すると、検知部材5または検知部材6の検知ロッド5Cまたは検知ロッド6Cと曲げ加工品1の他端部1Bとが接触し、制御装置12が警報を発するので、曲げ加工品1の割れの有無を目視によらずに、自動的に、かつ簡単に検出することができる。
【0026】
また、ロボットアームの電磁石への通電を解除して、曲げ加工品1がロボットアームから切り離されて検査台1にそのまま残されるため、割れのある曲げ加工品1を良品として外部へ搬送しないようにするから、作業者は検査台2上で曲げ加工品1の異常個所を確認することができる。
【0027】
以上本発明の実施態様について説明したが、上述の説明に基づいて当業者にとって種々の代替例、修正又は変形が可能であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で前述の種々の代替例、修正又は変形を包含するものである。
【符号の説明】
【0028】
1 曲げ加工品
1A 一端部(基準部位)
1B 他端部(比較部位)
2 検査台
4 位置決め部材
5、6 検知部材
12 制御装置(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電体材料で構成された長尺金属体から成る曲げ加工品が搬送される検査台を有し、この検査台には前記曲げ加工品の比較部位の位置ずれを検知する検知部材が設けられ、この検知部材が前記曲げ加工品の比較部位の位置ずれを検知したときに警報を発する制御手段を備えたことを特徴とする曲げ加工品の検査装置。
【請求項2】
導電体材料で構成された長尺金属体から成る曲げ加工品が搬送される検査台を有し、この検査台には前記曲げ加工品の基準部位を位置決めする位置決め部材と、前記曲げ加工品の比較部位の位置ずれを検知する検知部材とが設けられ、この検知部材が前記曲げ加工品の比較部位の位置ずれを検知したときに警報を発する制御手段を備えたことを特徴とする曲げ加工品の検査装置。
【請求項3】
前記曲げ加工品はロボットアームによって搬送されるものであって、前記検知部材がこの曲げ加工品の比較部位の位置ずれを検知したときに、前記制御手段によってこの曲げ加工品がロボットアームから外され、前記検査台に放置されるようにしたことを特徴する請求項1又は請求項2に記載の曲げ加工品の検査装置。
【請求項4】
前記検知部材を構成する一対の検知ロッドを対向するように前記曲げ加工品の比較部位に近接して設け、この比較部位の位置ずれによってこの曲げ加工品と接触したときに電流が流れるようにしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の曲げ加工品の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−235310(P2011−235310A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108841(P2010−108841)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000100366)しげる工業株式会社 (95)
【Fターム(参考)】