説明

曲りタイルの成形法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は曲りタイルの成形法に係り、特に曲面の湾曲方向に沿う溝や切り欠きを有する曲りタイルであっても高い生産効率にて容易に製造することができる曲りタイルの成形法に関する。
【0002】
【従来の技術】建築物のコーナー部等においては、第6図に示すような曲りタイル1が施工される場合がある。従来、このような曲りタイル1は、原料坏土を押出成形機より押出して成形体とする際、第7図に示す如く、押出方向Aに直交する方向に湾曲した成形体2を連続押出成形し、これを一定の長さに切断(第7図の破線位置)した後、焼成することにより製造されている。
【0003】ところで、タイルは、その施工面から、角縁部に切り欠きを設けたり、また、装飾等の目的で表面に溝等を形成する場合がある。そして、第8図の如く、曲りタイル3においても、その角縁部に切り欠き3a、3bや表面に溝3c、3dを形成することがある。
【0004】第7図に示した曲りタイルの製造方法は、第6図に示すような切り欠きや溝のない曲りタイル1の製造には好適であるが、第8図に示すような曲面の湾曲方向に沿う切り欠き3a、3bや溝3c、3dを有する曲りタイル13の製造には極めて不向である。
【0005】即ち、第7図に示すような押出成形方法では、押出成形時に曲りタイルの曲面の湾曲方向に沿う切り欠きや溝を形成することはできない。このため、押出成形により得られた成形体に切り欠きや溝を形成するための切除作業を施す必要があるが、曲りタイルの曲面の湾曲方向に沿って、切り欠きや溝を形成することは非常に手間がかかる上に高度な熟練を要することから、生産性が非常に悪い。
【0006】 このような問題点を解決するために、本出願人は、特願平2−110928号(特開平4−8502号公報)において、坏土の押出成形機からの押出物を押出方向が長手方向となるように切断して直状体とし、この直状体を曲面に押し当て長手方向に沿って湾曲させることを特徴とする曲りタイルの成形法を提案した。
【0007】かかる曲りタイルの成形法では、成形体は、坏土の押出成形機からの押出方向が湾曲方向となる。このため、溝や切り欠きを、予め押出成形により形成しておき、これを押出方向が長手方向となるように切断して直状体とし、この直状体を曲面に押し当てて該長手方向に沿って湾曲させることにより、容易に湾曲面に沿う溝や切り欠きを有する曲りタイルを得ることができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】特願平2−110928号の方法においては、直状の押出成形物を押し曲げるため、成形物に与えられる変形量が大きい。そのため、湾曲の度合いの大きい曲りタイルを製造する場合、成形体に曲げ加工中にひびが入るおそれがあった。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の曲りタイルの成形法は、坏土を押出成形機の押出口から押出し、この押出物を押出方向が長手方向となるように切断してタイル成形体を得る方法において、該押出口の押出方向と直交する面内において、該押出口の一辺縁側の押出速度が大きくなるように押出速度分布を調整し、これによって押出口から押出される押出物を反らせて湾曲押出物とし、この湾曲押出物を切断して曲がりタイルを得るようにしたことを特徴とするものである。
【0010】
【作用】押出口からの材料の押出速度が押出方向と直交する面(以下、押出断面ということがある。)内において押出口の一辺縁側で速くなるようにすると、押出物は反りながら押出されるようになる。
【0011】一般のタイル成形工程においては、このような反りが発生しないように押出断面内における材料の押出速度をなるべく均一又は対称になるように調整するのであるが、本発明では、逆に、この押出断面内における押出速度分布の不均一さを助長して反りを積極的に発生させ、反った押出成形物をつくり出すようにしたものである。
【0012】
【実施例】以下実施例について説明する。第1図は押出成形機の先端部の斜視図、第2図は押出速度調整機能を有する成形ダイスの裏側からの斜視図である。
【0013】第1図において押出成形機10の先端に成形ダイス12が取り付けられている。成形ダイス12は製品用の押出口14と、仕切板によって仕切られた両端の捨て部(耳部)分離用の押出口16とを有しており、押出成形体は押出すると同時に両端の耳部が分離されるようになっている。
【0014】第2図の通り、成形ダイス12の裏面側の内部には、二対の抵抗体(バッフル)18、20が押出し、引込み可能に設けられている。これら抵抗体18、20は、ボルト22の操作によって移動される。抵抗体18、20を押出口14に近接させると、その抵抗体に直近の押出口辺縁部では材料の押出速度が小さくなる。逆に、抵抗体18、20を後退させて押出口14から遠ざけると、その抵抗体の直近の押出口辺縁部からの押出速度が大きくなる。
【0015】この成形ダイス12において、押出口14の一方の長側辺140側からの押出速度が他方の長側辺141側よりも大きくなるように抵抗体20の位置決めを行なって押出成形を行なうと、第3図に示す如く、押出口14から押出された押出物24が長側辺141側へ凹曲するように反って押出される。なお、第3図において、26は押出口16から押出された捨て部、28、30、32はガイドローラである。
【0016】このように反った状態で押出された成形物24を所定長さに切断すると、第4図に示す湾曲した成形体34が得られる。この成形体34を必要に応じ第5図に示す仕上げ湾曲型36、38の成形面36a、38a間に挟持して規定の湾曲度に仕上げる。なお、この場合、成形体34は既に所要程度にまで湾曲しているため、湾曲型36、38によって付与される湾曲変形量は小さい。従って、この湾曲型36、38によって仕上げ湾曲されるときに成形体34にひびが入ったりすることはない。
【0017】このようにして得られた成形体34を乾燥、焼成することにより、曲りタイルが製造される。なお、本実施例ではタイルは2ツ割りタイルとなっているため、焼成後、中央空洞部34a及びスリット34bに反って割ることにより2個の曲がりタイル34A、34Bの製品が得られる。
【0018】なお、本発明において、前記第8図の如く製造される曲りタイルに湾曲面に沿う溝や切り欠きを設ける必要がある場合には、押出成形機に溝や切り欠き形成用の凸部を設けておき、予め溝や切り欠きのある押出成形体とする。
【0019】第5図においては、凸曲面形成用湾曲型38と凹曲面形成用湾曲型36との一対の型を用いているが、一方のみを用いても良い。
【0020】本発明の曲りタイルの成形法は、特に曲面の湾曲方向に沿う溝や切り欠きを有する曲りタイルの製造に極めて有効であるが、このような溝や切り欠きのない曲りタイルの製造にも適用できることは言うまでもない。
【0021】
【発明の効果】以上詳述した通り、本発明の曲りタイルの成形法によれば、曲面の湾曲方向に沿う溝や切り欠きを有する曲りタイルであっても、曲面の煩雑な溝加工や切り欠き加工を要することなく、容易かつ効率的に高い生産性にて製造することが可能とされる。また、湾曲の度合いの大きな曲がりタイルであっても、ひびを生じさせることなく成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の曲りタイルの成形法に用いられる押出成形機の斜視図である。
【図2】成形ダイスの斜視図である。
【図3】押出成形状態を示す斜視図である。
【図4】湾曲した成形物の斜視図である。
【図5】仕上げ型の斜視図である。
【図6】曲りタイルの斜視図である。
【図7】従来法を示す斜視図である。
【図8】曲りタイルの斜視図である。
【符号の説明】
10 押出成形機
12 成形ダイス
14、16 押出口
18、20 抵抗体
24 押出物
34 成形体
36、38 湾曲型

【特許請求の範囲】
【請求項1】 坏土を押出成形機の押出口から押出し、この押出物を押出方向が長手方向となるように切断してタイル成形体を得る方法において、該押出口の押出方向と直交する面内において、該押出口の一辺縁側の押出速度が大きくなるように押出速度分布を調整し、これによって押出口から押出される押出物を反らせて湾曲押出物とし、この湾曲押出物を切断して曲がりタイルを得るようにしたことを特徴とする曲りタイルの成形法。

【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図1】
image rotate


【図6】
image rotate


【図8】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図7】
image rotate


【特許番号】第2630167号
【登録日】平成9年(1997)4月18日
【発行日】平成9年(1997)7月16日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−149404
【出願日】平成4年(1992)6月9日
【公開番号】特開平5−337917
【公開日】平成5年(1993)12月21日
【出願人】(000000479)株式会社イナックス (1,429)
【参考文献】
【文献】特開 平4−8502(JP,A)
【文献】特開 平1−154709(JP,A)
【文献】特開 平3−147806(JP,A)