説明

書棚

【課題】地震等の不測の外力によっても書物等が棚板から落下し難いといった人的物的被害を防止する安定性を有しているとともに、且つ書棚利用者にとって書物の検索がし易いといった書物等の視認性が棚板の上下方向に亘って良い書棚を提供する。
【解決手段】奥行方向の手前側から奥側に向かって下方に傾斜する載置面10aを有する棚板10を上下方向に複数備えた書棚1であって、上下方向に並ぶ全ての棚板10の載置面10aを、水平に対して略2〜6度の範囲内の傾斜角度に傾斜させたことで、載置面10aに載置した書物等の視認性が棚板10の上下方向に亘って良好であり、且つ地震等の不測の外力によっても書物等が棚板10から落下し難く安定性を有しており、地震等の不測の外力による人的物的被害を防止出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、奥行方向の手前側から奥側に向かって下方に傾斜する載置面を有する棚板を備えた書棚に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、書物等の商品を陳列する書棚においては、上下方向に複数の載置棚板が設けられており、地震等の不測の外力による書物の落下防止のため、載置棚板が前方斜め上方を向いて傾斜されている。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
【特許文献1】特開2006−130176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の書棚にあっては、不測の外力によっても書物が落下し難く、人的物的被害を防止出来るものの、書物も載置棚板に傾斜状態で陳列されるため、書棚利用者にとって書物の検索がし辛いといった問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、書物等の視認性が棚板の上下方向に亘って良く、且つ地震等の不測の外力によっても書物等が棚板から落下することを防止する書棚を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の書棚は、
奥行方向の手前側から奥側に向かって下方に傾斜する載置面を有する棚板を上下方向に複数備えた書棚であって、
上下方向に並ぶ全ての棚板の載置面を、水平に対して略2〜6度の範囲内の傾斜角度に傾斜させたことを特徴としている。
この特徴によれば、上下方向に並ぶ全ての棚板の載置面を、略2〜6度の範囲内の傾斜角度に傾斜させたため、載置面に載置した書物等の視認性が棚板の上下方向に亘って良好であり、且つ地震等の不測の外力によっても書物等が棚板から落下し難く安定性を有しており、地震等の不測の外力による人的物的被害を防止出来る。
【0007】
本発明の請求項2に記載の書棚は、請求項1に記載の書棚であって、
前記全ての棚板の載置面を、等しい傾斜角度に傾斜させたことを特徴としている。
この特徴によれば、上下方向に並ぶ全ての棚板の載置面を等しい傾斜角度に傾斜させたため、棚板の製造や組付けのコストを低減して作業手間が容易になるばかりか、書物等を棚板に載置した書棚の外観体裁が上下方向に亘って良い。
【0008】
本発明の請求項3に記載の書棚は、請求項1または2に記載の書棚であって、
前記棚板を、側面視中央を境として左右両側に備えたことを特徴としている。
この特徴によれば、左右両側に備えた棚板に載置した書物の重心が、奥行方向の奥側に向かって、即ち側面視中央側に向かって寄るため、書棚が左右方向に安定的となるばかりか、より多くの書物等を棚板に載置出来る。
【0009】
本発明の請求項4に記載の書棚は、請求項3に記載の書棚であって、
前記棚板を、側面視中央を境として左右両側に略対称に備えたことを特徴としている。
この特徴によれば、棚板を、側面視中央を境として左右両側に略対称に備えたため、書棚が左右方向にバランスが高まり、更に安定的とすることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0011】
本発明の実施例を図面に基づいて説明すると、先ず図1は、本発明の実施例1における書棚の全体像を示す斜視図である。図2(a)は、書棚の正面図であり、(b)は、書棚の側面図である。図3は、棚板の載置面の傾斜角度を示した側面図である。図4は、棚板の載置面を所定に傾斜させて行った加震実験の結果を示した表である。
【0012】
図1及び図2(a)、(b)に示されるように、本実施例の書棚1は、上下方向に並ぶ複数段(本実施例では4段)の棚板10と、この棚板10を後述のように支持する上下方向に立設された中空構造を有する複数の柱部材3と、この柱部材3の下端に一体に接続された脚部材2とから主に構成されており、これらを補強する接続部材として柱部材3、3の間に幅方向に上梁部5及び下梁部6が架設され、柱部材3、3の間に設けたそれぞれの棚板10の載置面10a上には書物B等を載置出来るように成っている。上記した書棚1を構成する各部材は、薄板のスチールを折曲げ加工して形成されるとともに、脚部材2の両端等には適宜樹脂製のキャップを取付けている。
【0013】
尚、本実施例の書棚1では、幅方向に合計3本の柱部材3を設け、各柱部材3間に幅方向に2列で上下方向に4段になるように棚板10を設置しているが、棚板の幅方向に設置する列数は本実施例に限られず何列でもよく、また棚板の上下方向に設置する段数は、少なくとも2段以上あれば何段でもよいものとする。
【0014】
図3に示されるように、書棚1は、棚板10を側面視中央を境として左右両側に略対称に備えている。ここで、前記略対称とは、棚板10が、上下方向の取付数や載置面10aの傾斜角度を、側面視中央を境として左右両側に等しく設けられている状態のことである。棚板10は、奥行方向の手前側から奥側に向かって下方に傾斜する載置面10aを有している。また、全ての棚板10の載置面を等しく、且つ水平に対して略2〜6度の範囲内である略4度の傾斜角度に傾斜させている。
【0015】
また、脚部材2の側面と接続される正面視L字状の支持部材7が、書棚1を設置する床面とアンカーボルトにより固定接続され、後述する地震等の不測の外力により書棚1本体が横倒することを防止している。
【0016】
棚板10は、その両側端部において上下方向に形成されたブラケット8、8と接続されており、ブラケット8後端に形成された複数の鉤部8aが、柱部材3の前後面に上下方向に複数形成された嵌合孔(図示略)内に嵌合することで、柱部材3に対し支持されている。
【0017】
また、棚板10の下面には幅方向に所定間隔で孔部(図示略)が設けられており、この孔部にサポート部材9を適宜係合することで、下方の棚板10に載置した書物等のブックエンドとして機能している。
【0018】
次に、棚板の載置面を所定の傾斜角度に傾斜させて行った加震実験について説明する。
【0019】
加震実験は、上記構成の書棚1を設置した床面に、免震建物の加震条件であって平成16年(2004年)新潟県中越地震程度の震動であるx、y方向に約150galでz方向に約500gal相当の震動を所定時間加え、棚板10の載置面10aの傾斜角度別(水平に対し2度、4度、6度、10度)に書棚10に載置した書物の視認性と書物の安定性とをそれぞれ3段階で評価したものである。
【0020】
ここで書物の視認性とは、書物の背表紙等に表示された題目などが書棚1の利用者の目線で見え易いか否かの度合いを判断したものであって、書物の安定性とは、加震後に書物が棚板10の載置面10aに所定に載置されているか否かの度合いを判断したものである。尚、比較のため棚板10の載置面10aを傾斜させない条件(傾斜角度0度)においても、同様の実験を行った。
【0021】
図4に示されるように、加震実験の実験結果を見ると、一般的な傾向として棚板10の載置面10aの傾斜角度が小さくなる程、書物の視認性が良好となる一方、書物の安定性は棚板10から落下し易く成り好ましくなかった。そして棚板10の載置面10aの傾斜角度が大きくなる程、書物の安定性は棚板10から落下し難く成り良好となる一方、書物の視認性は悪化した。上記実験では、棚板10の載置面10aの傾斜角度が2〜6度の範囲内において、書物の視認性及び安定性ともに、概ね良好以上の結果が得られた。
【0022】
具体的には、棚板10の載置面10aの傾斜角度が2度において、書物の視認性は非常に良好であり、書物の安定性は書物の大きさ(書物の重心高さ)若しくは重量等にもよるが概ね良好であった。また、棚板10の載置面10aの傾斜角度が4度において、書物の視認性、書物の安定性ともに非常に良好の結果が得られた。更に、棚板10の載置面10aの傾斜角度が6度において、書物の視認性は書物に表示される題目の大きさ等にもよるが概ね良好であり、書物の安定性は非常に良好であった。
【0023】
上記した構成を備えた書棚1の特徴によれば、上下方向に並ぶ全ての棚板10の載置面10aを略2〜6度の範囲内の傾斜角度に傾斜させたため、載置面10aに載置した書物等の視認性が棚板10の上下方向に亘って良好であり、且つ地震等の不測の外力によっても書物等が棚板10から落下し難く安定性を有しており、地震等の不測の外力による人的物的被害を防止出来る。
【0024】
また、上記した書棚1の特徴によれば、上下方向に並ぶ全ての棚板10の載置面10aを等しい傾斜角度に傾斜させたため、全ての棚板10を同様の構成とし、組付部品を共通化して柱部材3に組付けることが出来、棚板10の製造や組付けのコストを低減して作業手間が容易になるばかりか、書物等を棚板10に載置した書棚1の外観体裁が上下方向に亘って良い。
【0025】
また、上記した書棚1の特徴によれば、左右両側に備えた棚板10に載置した書物の重心が、奥行方向の奥側に向かって、即ち側面視中央側に向かって寄るため、書棚1が左右方向に安定的となるばかりか、より多くの書物等を棚板10の載置面10aに載置出来る。
【0026】
更に、上記した書棚1の特徴によれば、棚板10を、側面視中央を境として左右両側に略対称に備えたため、書棚1が左右方向にバランスが高まり、更に安定的とすることが出来る。
【0027】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0028】
例えば、上記実施例では、書棚1における全ての棚板10の載置面10aを等しい傾斜角度(水平に対し略4度)に傾斜させているが、全ての棚板の載置面を水平に対して略2〜6度の範囲内の傾斜角度に傾斜させていれば、棚板の載置面の傾斜角度は、必ずしも本実施例に限られず、例えば書棚における上方の棚板の載置面を水平に比較的近い略2度の傾斜角度に傾斜させ、下方に向かって棚板の載置面を順次略6度の傾斜角度に近付けていくように、上下方向に備えた棚板の傾斜角度を略2〜6度の範囲内で変化させて傾斜させてもよい。
【0029】
このようにすることで、人の目線が比較的上向きに成りがちな上方の棚板から、人の目線が比較的下向きに成りがちな下方の棚板まで、載置面に載置した書物等が見易い角度を維持できるため、上下方向に亘って更に良好な視認性が確保出来るとともに、地震等の不測の外力による書物等の落下を防止して安定性も維持出来る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例1における書棚の全体像を示す斜視図である。
【図2】(a)は、書棚の正面図であり、(b)は、書棚の側面図である。
【図3】棚板の載置面の傾斜角度を示した側面図である。
【図4】棚板の載置面を所定に傾斜させて行った加震実験の結果を示した表である。
【符号の説明】
【0031】
1 書棚
2 脚部材
3 柱部材
5 上梁部
6 下梁部
7 支持部材
8 ブラケット
8a 鉤部
9 サポート部材
10 棚板
10a 載置面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
奥行方向の手前側から奥側に向かって下方に傾斜する載置面を有する棚板を上下方向に複数備えた書棚であって、
上下方向に並ぶ全ての棚板の載置面を、水平に対して略2〜6度の範囲内の傾斜角度に傾斜させたことを特徴とする書棚。
【請求項2】
前記全ての棚板の載置面を、等しい傾斜角度に傾斜させたことを特徴とする請求項1に記載の書棚。
【請求項3】
前記棚板を、側面視中央を境として左右両側に備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の書棚。
【請求項4】
前記棚板を、側面視中央を境として左右両側に略対称に備えたことを特徴とする請求項3に記載の書棚。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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