説明

有孔プラスチックシートおよびその製造方法

【課題】 簡素な設備で製造することができ、シート材料としての十分な強度を有しつつも、形状の安定した孔部を簡単かつ確実に成形することができる有孔プラスチックシートおよびその製造方法を提供すること。
【解決手段】 押出機Eにより連続的に押出成形してシート体1を製造するにあたり、
前記押出機Eのダイ2のリップ形状として、複数の細幅部21・21…と溝部22・22…とを所定間隔で交互かつ一連に形成する一方、
前記ダイ2から軟化状態の樹脂材料Mを連続的に押し出すことによって薄膜部11と突条部12とを備えたシート体1を形成するとき、前記細幅部21における押出方向の前方を間欠的に遮断することにより、各薄膜部11に複数の孔部11a・11a…を成形せしめるという技術的手段を採用した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート材料の改良、更に詳しくは、簡素な設備で製造することができ、シート材料としての十分な強度を有しつつも、形状の安定した孔部を簡単かつ確実に成形することができる有孔プラスチックシートおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、建築や土木、園芸などの資材として、様々なシート材料が用いられており、特にプラスチック製のものは広く用いられ、更に、通気性や通水性を付与するために有孔のものがある。
【0003】
従来、かかる有孔のシートを製造する方法としては、押出成形機によって一旦シート状に押し出された材料に対し、パンチングマシーンを用いて開孔せしめるものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、かかる方法で製造しようとする場合、シート材料には十分な剛性が必要であり、柔らかくて薄い材料に孔を開けようとすると、うまく打抜き成形ができなかったり、またはシート材料が伸びてしまうという不満があった。
【0005】
また、スリット刃などでシート材料にスリットを入れる方法も存在するけれども、十分な大きさの開孔部分が得られず、要求される通気性や通水性を満足させることができなかったり、また、スリットには不可避的に応力が集中し易いため、其処から裂け易いという問題もあった。
【特許文献1】特開平8−71996号公報(第2−3頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、有孔のシート材料を製造するにあたり、上記のような問題があったことに鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、簡素な設備で製造することができ、シート材料としての十分な強度を有しつつも、形状の安定した孔部を簡単かつ確実に成形することができる有孔プラスチックシートおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者が上記課題を解決するために採用した手段を添付図面を参照して説明すれば次のとおりである。
【0008】
即ち、本発明は、押出機Eにより連続的に押出成形してシート体1を製造するにあた
り、
前記押出機Eのダイ2のリップ形状として、複数の細幅部21・21…と溝部22・22…とを所定間隔で交互かつ一連に形成する一方、
前記ダイ2から軟化状態の樹脂材料Mを連続的に押し出すことによって薄膜部11と突条部12とを備えたシート体1を形成するとき、前記細幅部21における押出方向の前方を間欠的に遮断することにより、各薄膜部11に複数の孔部11a・11a…を成形せしめるという技術的手段を採用することによって、有孔プラスチックシートの製造方法を完成させた。
【0009】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、押出機Eのダイ2のリップの側傍に沿って、当該ダイ2の細幅部21・21…に対応する所要間隔の突起31a・31a…を並設して成る櫛歯部材31を備えたシャッター体3を配設し、
前記ダイ2から連続的に押し出される軟化状態の樹脂材料Mに対し、前記シャッター体3の櫛歯部材31を移動せしめて、突起31a・31a…が対応する各細幅部21・21…における押出方向の前方を間欠的に遮断するという技術的手段を採用した。
【0010】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、シャッター体3の櫛歯部材31を刺入方向に往復動自在な駆動機構32を備えるという技術的手段を採用した。
【0011】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、シャッター体3の櫛歯部材31の突起31aの先端部を、尖端形状にするという技術的手段を採用した。
【0012】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、シャッター体3の櫛歯部材31の突起31a・31a…の間隔を、ダイ2の細幅部21・21…の1条おきに設ける一方、
一対の櫛歯部材31A・31Bを、前記ダイ2のリップの両側傍に対向的に配設して、これらの櫛歯部材31を移動させて、リップを片方ずつ交互に遮断することにより、シート体1の孔部11aを千鳥状にして、ネット状に成形するという技術的手段を採用した。
【0013】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、ダイ2から連続的に押し出される軟化状態の樹脂材料Mを、リップから10mm以内に水中に入れて冷却固化せしめた後、巻き取るという技術的手段を採用した。
【0014】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、シャッター体3の櫛歯部材31の突起31aをそれぞれ独立に動作可能にする一方、
各突起31aを動作せしめることによって、シート体1の所要位置に、孔部11a・11a…を形成することにより、模様を作出せしめるという技術的手段を採用した。
【0015】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、押し出したシート体1を、長手方向および/または幅方向に延伸するという技術的手段を採用した。
【0016】
また、本発明は、押出機Eによってシート状に連続成形されるプラスチック製のシート体1であって、幅方向の断面形状は、薄膜部11と突条部12とを交互かつ一連に有しており、かつ、当該各薄膜部11において、複数の孔部11a・11a…を有するようにするという技術的手段を採用することによって、有孔プラスチックシートを完成させた。
【0017】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、シート体1の薄膜部11における孔部11aを、幅方向の1条おきに形成され、かつ、長手方向の先後に交互に形成されて千鳥状をなし、幅方向に伸縮性を有するネット状に構成するという技術的手段を採用することによって、有孔プラスチックシートを完成させた。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、押出機により連続的に押出成形してシート体を製造するにあたり、前記押出機のダイのリップ形状として、複数の細幅部と溝部とを所定間隔で交互かつ一連に形成する一方、前記ダイから軟化状態の樹脂材料を連続的に押し出すことによって薄膜部と突条部とを備えたシート体を形成するとき、前記細幅部における押出方向の前方を間欠的に遮断することによって、各薄膜部に複数の孔部を成形せしめることができる。
【0019】
したがって、本発明の製造方法によれば、簡素な設備で製造することができ、シート材料としての十分な強度を有しつつも、形状の安定した孔部を簡単かつ確実に成形することができる。
【0020】
また、必要に応じて、水槽内で冷却することにより、サイジング装置に接触させて冷却させる場合と異なり、タック性の強い樹脂であっても成形が可能であり、また、製品全体を均一に冷却固化させることによって、成形体内部に残留ひずみが残り難く、曲がりや反りなどの問題を起こり難くすることができることから、実用的利用価値は頗る高いものがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明を実施するための最良の形態を具体的に図示した図面に基づいて更に詳細に説明すると、次のとおりである。
【0022】
『第1実施形態』
本発明の第1実施形態を図1から図5に基づいて説明する。図中、符号1で指示するものはシート体であり、このシート体1は、常用の樹脂成形押出機Eによってシート状に連続成形される部材である。
【0023】
また、符号2で指示するものはダイであり、このダイ2は、押出機Eの押出口に配設されている。更にまた、符号3で指示するものはシャッター体であり、このシャッター体3は、前記ダイ2のリップ部の前方を遮断可能な部材である。
【0024】
しかして、本発明は、押出機Eによってシート状に連続成形されるプラスチック製のシート体1であって、その具体的な構成として、幅方向の断面形状は、薄膜部11と突条部12とを交互かつ一連に有しており、かつ、当該各薄膜部11において、複数の孔部11a・11a…を有するものである(図1参照)。
【0025】
以下、押出機Eにより連続的に押出成形してシート体1を製造する方法について説明する。まず、前記押出機Eのダイ2のリップ形状として、複数の細幅部21・21…と溝部22・22…とを所定間隔で交互かつ一連に形成する(図2および図3参照)。
【0026】
次いで、このダイ2から軟化状態の樹脂材料Mを連続的に押し出すことによって薄膜部11と突条部12とを備えたシート体1を形成する。そして、この際、前記細幅部21における押出方向の前方を間欠的に遮断する(図4参照)。
【0027】
具体的には、押出機Eのダイ2のリップの側傍に沿って、当該ダイ2の細幅部21・21…に対応する所要間隔の突起31a・31a…(本実施形態では、先端部が尖端形状)を並設して成る櫛歯部材31を備えたシャッター体3を配設することができる。
【0028】
そして、前記ダイ2から連続的に押し出される軟化状態の樹脂材料Mに対し、前記シャッター体3の櫛歯部材31を移動せしめて、突起31a・31a…が対応する各細幅部21・21…における押出方向の前方を間欠的に遮断する。
【0029】
こうすることにより、当該遮断部分には樹脂材料Mが押し出されないため、各薄膜部11に複数の孔部11a・11a…を成形せしめることができるのである(図5参照)。この孔部11aを薄膜部11に成形したことにより、開孔がし易く、また、樹脂がまだ溶融状態であるので、樹脂の溶融張力の作用により孔部が拡張するのであるが、突条部12が堤になることにより、孔部11aが拡がり過ぎるのを抑え、均一な形状にすることができる。
【0030】
この際、シャッター体3において、櫛歯部材31を刺入方向に往復動自在な駆動機構32を備えることが好ましく、より迅速かつ正確な動作を行うことができる。
【0031】
また、本実施形態では、図6に示すように、ダイ2から連続的に押し出される軟化状態の樹脂材料Mを、リップから10mm以内(更に好ましくは5mm以内)に水中に入れて冷却固化せしめた後、巻き取ることができる。この際、水槽に対しての金型の傾斜は、垂直に近いほど理想的である。
【0032】
また、水槽内の水の表面張力によって接触境界が不安定になって横縞が発生するおそれがある場合には、この水槽内の水に界面活性剤を添加しておくこともできる。このように水槽内で冷却することにより、溶融粘度の低い樹脂であっても成形が可能である。なお、水槽中における水冷式に限らず、空冷式を採用することによって急速に冷却することもできる。
【0033】
更に、上記のように押し出したシート体1を、長手方向および/または幅方向に延伸することもでき、所要の強度およびサイズに作製することができる。
【0034】
『第2実施形態』
次に、本発明の第2実施形態を図7から図9に基づいて説明する。本実施形態では、まず、シャッター体3の櫛歯部材31の突起31a・31a…の間隔を、ダイ2の細幅部21・21…の1条おきに設ける。
【0035】
そして、一対の櫛歯部材31A・31Bを、前記ダイ2のリップの両側傍に対向的に配設して、これらの櫛歯部材31を移動させて、リップを片方ずつ交互に遮断する。このとき、各櫛歯部材31は、一方のみが細幅部21を遮断している場合と、両先端部が同時に細幅部21を遮断している場合とがあり、このオーバーラップ部分を有するために幅方向への伸縮を可能にしている。
【0036】
このようにしてネット状に成形することができるのは、樹脂が溶融状態であるので、薄膜部11における孔部11aは溶融張力により拡張しようとする一方、孔部11aを設けない薄膜部11は収縮しようと変形するために、突条部12が蛇行する程度にまで前記孔部12aがより顕著に拡張されるからである。こうして、シート体1の孔部11aを千鳥状にして、ネット状に成形することができる(図8参照)。
【0037】
『第3実施形態』
次に、本発明の第3実施形態を図10に基づいて説明する。本実施形態では、シャッター体3の櫛歯部材31の突起31aをそれぞれ独立に動作可能にする。
【0038】
そして、各突起31aを動作せしめることによって、シート体1の所要位置に、孔部11a・11a…を形成することにより、模様を作出せしめることができる。
【0039】
本発明は概ね上記のように構成されるが、図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、図11に示すように、シート体1の薄膜部11に成形する孔部11aの形状は、用途に応じて、長孔にすることができる。
【0040】
また、図12および図13に示すように、押出機Eのダイ2のリップ形状として、溝部22・22…を上側または下側の何れか一方、あるいは上下交互に成形することもでき、シート体1における突条部12を片面にのみ成形したものや、両面交互に成形したものにすることもできる。
【0041】
また、シート体1は、平面状のものに限らず、ダイ2のリップ形状を円形などの筒型にすることにより、筒型シートや筒型ネットを作製することもできる。更にまた、シート体1の使用材料に生分解性樹脂を採用することによって、環境に優しい製品にすることもでき、これら何れのものも、本発明の技術的範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態のシート体を表わす正面図である。
【図2】本発明の実施形態の製造装置を表わす正面図である。
【図3】本発明の実施形態の製造装置のダイのリップ部を表わす拡大正面図である。
【図4】本発明の実施形態の製造装置を表わす側面図である。
【図5】本発明の実施形態の製造状態を表わす斜視図である。
【図6】本発明の実施形態の製造装置を表わす側面概略図である。
【図7】本発明の実施形態の製造装置の変形例を表わす正面図である。
【図8】本発明の実施形態の製造装置の変形例を表わす側面図である。
【図9】本発明の実施形態のシート体の変形例を表わす正面図である。
【図10】本発明の実施形態のシート体の変形例を表わす正面図である。
【図11】本発明の実施形態のシート体の変形例を表わす正面図である。
【図12】本発明の実施形態の製造装置のダイのリップ部の変形例を表わす拡大正面図である。
【図13】本発明の実施形態の製造装置のダイのリップ部の変形例を表わす拡大正面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 シート体
11 薄膜部
11a 孔部
12 突条部
2 ダイ
21 細幅部
22 溝部
3 シャッター体
31(31A・31B) 櫛歯部材
31a 突起
32 駆動機構
E 押出機
M 樹脂材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機Eにより連続的に押出成形してシート体1を製造するにあたり、
前記押出機Eのダイ2のリップ形状として、複数の細幅部21・21…と溝部22・22…とを所定間隔で交互かつ一連に形成する一方、
前記ダイ2から軟化状態の樹脂材料Mを連続的に押し出すことによって薄膜部11と突条部12とを備えたシート体1を形成するとき、前記細幅部21における押出方向の前方を間欠的に遮断することにより、各薄膜部11に複数の孔部11a・11a…を成形せしめることを特徴とする有孔プラスチックシートの製造方法。
【請求項2】
押出機Eのダイ2のリップの側傍に沿って、当該ダイ2の細幅部21・21…に対応する所要間隔の突起31a・31a…を並設して成る櫛歯部材31を備えたシャッター体3を配設し、
前記ダイ2から連続的に押し出される軟化状態の樹脂材料Mに対し、前記シャッター体3の櫛歯部材31を移動せしめて、突起31a・31a…が対応する各細幅部21・21…における押出方向の前方を間欠的に遮断することを特徴とする請求項1記載の有孔プラスチックシートの製造方法。
【請求項3】
シャッター体3の櫛歯部材31を刺入方向に往復動自在な駆動機構32を備えることを特徴とする請求項1または2記載の有孔プラスチックシートの製造方法。
【請求項4】
シャッター体3の櫛歯部材31の突起31aの先端部を、尖端形状にすることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の有孔プラスチックシートの製造方法。
【請求項5】
シャッター体3の櫛歯部材31の突起31a・31a…の間隔を、ダイ2の細幅部21・21…の1条おきに設ける一方、
一対の櫛歯部材31A・31Bを、前記ダイ2のリップの両側傍に対向的に配設して、これらの櫛歯部材31を移動させて、リップを片方ずつ交互に遮断することにより、シート体1の孔部11aを千鳥状にして、ネット状に成形することを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載の有孔プラスチックシートの製造方法。
【請求項6】
ダイ2から連続的に押し出される軟化状態の樹脂材料Mを、リップから10mm以内に水中に入れて冷却固化せしめた後、巻き取ることを特徴とする請求項1〜5の何れか一つに記載の有孔プラスチックシートの製造方法。
【請求項7】
シャッター体3の櫛歯部材31の突起31aをそれぞれ独立に動作可能にする一方、
各突起31aを動作せしめることによって、シート体1の所要位置に、孔部11a・11a…を形成することにより、模様を作出せしめることを特徴とする請求項1〜6の何れか一つに記載の有孔プラスチックシートの製造方法。
【請求項8】
押し出したシート体1を、長手方向および/または幅方向に延伸することを特徴とする請求項1〜7の何れか一つに記載の有孔プラスチックシートの製造方法。
【請求項9】
押出機Eによってシート状に連続成形されるプラスチック製のシート体1であって、幅方向の断面形状は、薄膜部11と突条部12とを交互かつ一連に有しており、かつ、当該各薄膜部11において、複数の孔部11a・11a…を有することを特徴とする有孔プラスチックシート。
【請求項10】
シート体1の薄膜部11における孔部11aが、幅方向の1条おきに形成され、かつ、長手方向の先後に交互に形成されて千鳥状をなし、幅方向に伸縮性を有するネット状に構成されていることを特徴とする請求項9記載の有孔プラスチックシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−105200(P2008−105200A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−288211(P2006−288211)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【出願人】(000010065)フクビ化学工業株式会社 (150)
【出願人】(000219912)東京インキ株式会社 (120)
【Fターム(参考)】