説明

有機性廃水の処理方法及びその装置

【課題】 有機物、窒素、リンを含有する廃水の、省エネルギー化、有用物質の回収とその資源化を考慮し、しかも排水処理プラントのランニングコストも最小化する排水処理方法を提供する。
【解決手段】 流入SS固液分離工程2において分離した汚泥3の一部を脱水工程8により脱水処理し、微生物固液分離工程5において分離した汚泥7を嫌気性醗酵工程11において消化し、嫌気性醗酵工程11により発生する汚泥12と、前記流入SS固液分離工程2において分離した汚泥の一部10を混合し、その混合汚泥17を脱水する工程18を組み入れ、更に汚泥3の脱水ケーキ9と混合汚泥17の脱水ケーキ19を混合燃焼させる工程20を含む有機性廃水の処理方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術】本発明は、下水処理場や各種廃水処理施設等において有機性廃水を処理する方法に係わり、更に詳しくは、下水、し尿、産業廃水などの有機物、窒素、リンを含有する有機性廃水を、活性汚泥法に代表される微生物の生物代謝反応を排水処理方法を介して処理するシステムにおいて、省エネルギー化、有用物質の回収とその資源化を考慮した有機性廃水の処理方法およびその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の有機性廃水の処理方法において、例えば活性汚泥法に嫌気性消化処理、好気性消化処理、消化脱窒処理、凝集処理、膜分離処理、脱水処理、焼却処理、MAP処理、オゾン処理、活性炭処理等を組み合わせた方法では、処理プラントの建設費、ランニングコスト、環境に対する影響等を総合的に考慮したシステムは、非常に少なかった。
【0003】すなわち、従来の有機性廃水の処理方法においては、非常に大きな建設費を費やして嫌気性消化処理、膜分離処理、焼却処理等を行ったり、非常に大きなエネルギーを消費して好気性消化、オゾン処理、膜分離処理、焼却処理等を行ったり、非常に大きな薬品コストをかけて凝集処理、脱水処理、MAP処理、活性炭処理等を行ったりする場合が多かった。このように、従来の有機性廃水の処理方法は、省エネルギー的にも、ランニングコスト的にも大きな問題点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述した従来技術の問題点を解決することを目的とする。すなわち、有機性廃水処理方法の中で、特に有機物、窒素、リンを含有する排水を、活性汚泥法に代表される微生物の生物代謝反応を利用した排水処理方法を用いて処理する方法において、排水中の処理対象成分の形態とその特性をできるだけ生かした処理フローを構成することで、省エネルギー化、有用物質の回収とその資源化を考慮した排水方法及び装置を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記課題を解決するために、排水中の処理対象成分の形態とその特性について検討を行い、流入SS固液分離工程において分離した汚泥(最初汚泥またはその濃縮汚泥)は、脱水性が比較的良いため、凝集剤添加率が低くてよく、高カロリーで、窒素とリンの含有率が低い、すなわち、焼却に適しているといえる。また、生物反応工程の後の微生物固液分離工程で分離される汚泥(余剰汚泥またはその濃縮汚泥)は脱水性が悪く、さらにその汚泥を減量化などの目的で嫌気性醗酵工程を行った際に生成する消化汚泥またはリンおよび窒素を回収する工程から排出された汚泥も、脱水性が悪いものであるが、この消化汚泥または前記排出汚泥に、前記の最初汚泥またはその濃縮汚泥の一部を混合することにより、意外にもその混合汚泥を脱水する際の薬注率が低下し、その脱水ケーキの含水率が低下し、および脱水ケーキの燃焼発熱量を向上できることを見出した。すなわち、本発明は、このような知見に基づいてなされたものであり、次の構成からなるものである。
【0006】本発明は、次の手段により上記課題を解決した。
(1)好気性微生物の代謝を使用した生物反応工程、生物反応工程の前段の流入SS固液分離工程、生物反応工程の後段の微生物固液分離工程の3つの工程を組み込んだ有機性廃水の処理方法において、前記流入SS固液分離工程において分離した汚泥の一部を脱水装置により脱水処理し、前記微生物固液分離工程において分離した汚泥を嫌気性醗酵工程において消化し、嫌気性醗酵工程により発生する汚泥と、前記流入SS固液分離工程において分離した汚泥の一部を混合し、その混合汚泥を脱水する工程を組み入れたことを特徴とする有機性廃水の処理方法。
【0007】(2)流入SS固液分離工程により発生する汚泥と、嫌気性醗酵工程により発生する汚泥を、脱水時の薬注率および脱水ケーキの含水率を最小化し、燃焼時の発熱量を最大化する割合で混合することを特徴とする前記(1)記載の有機性廃水の処理方法。
(3)流入SS固液分離工程において分離した汚泥の一部を脱水装置により脱水処理した脱水ケーキと、混合汚泥を脱水装置により脱水処理した脱水ケーキとを混合し燃焼させる工程を有することを特徴とする前記(1)または(2)記載の有機性廃水の処理方法。
(4)嫌気性醗酵工程で生成する汚泥からリン酸マグネシウムアンモニウムの形態でリンと窒素を回収する工程を組み込むことを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1項記載の有機性廃水の処理方法。
【0008】(5)被処理水を流入する流入SS固液分離槽と、被処理水を処理する生物反応槽と、生物反応槽からの液を固液分離する微生物固液分離槽とを有する有機性廃水の処理装置において、前記流入SS固液分離槽からの濃縮汚泥の一部を流入する脱水装置、前記微生物固液分離槽の汚泥を流入する嫌気性醗酵槽、前記嫌気性醗酵槽の汚泥と前記流入SS固液分離槽の汚泥の一部とをそれぞれ流入して汚泥を混合する汚泥混合装置、及び前記汚泥混合装置で形成される混合汚泥を脱水する脱水装置を有することを特徴とする有機性廃水の処理装置。
【0009】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の有機性廃水の処理方法を示すブロック図である。すなわち、好気性微生物の代謝を利用した生物反応工程4、生物反応工程4の前段の固液分離工程である流入SS固液分離工程2、生物反応工程4の後段の固液分離工程である微生物固液分離工程5の3つの工程を組み込んだ有機性廃水の処理方法において、最初に、流入SS固液分離工程2において分離した好気的生物処理前の汚泥である最初汚泥またはその濃縮汚泥3の一部を脱水工程8により脱水処理し、低薬注率、低含水率、高発熱量の脱水ケーキ9を得る。このプロセスは、好気的生物処理前のSS成分が、凝集剤添加率が低く、脱水性が比較的良く、高カロリーで、窒素とリンの含有率が低いという性質をもつ点を考慮している。
【0010】次に、微生物固液分離工程5において分離したリン及び窒素の含有率が比較的高い汚泥である余剰汚泥またはその濃縮汚泥7を、嫌気性醗酵工程11において消化し、嫌気性醗酵工程11により発生する汚泥(消化汚泥またはその濃縮汚泥)12から、リン酸マグネシウムアンモニウム等の形態でリンと窒素を回収する工程14を組み込むことにより、効率的にリン及び窒素を回収する。次に、汚泥混合工程16で消化汚泥12(リン及び窒素を回収する工程14から排出された汚泥15も含む)に、最初汚泥またはその濃縮汚泥の一部10を特定の割合で混合することにより、その混合汚泥17を脱水工程18で脱水する際の薬注率の低下、該脱水ケーキ19の含水率の低下、及び該脱水ケーキ19の高位発熱量の向上をはかる。
【0011】最後に、脱水ケーキ9と脱水ケーキ19を特定の比率で混合することにより、燃焼工程20で脱水ケーキを焼却する場合等に消費するA重油等のエネルギーコストの低減をはかり、プラント全体のランニングコストを軽減するという排水処理方法を提案するものである。燃焼工程20で生成した熱はエネルギー回収工程21で回収し、嫌気性醗酵工程11への加温に使用することができる。
【0012】
【実施例】以下実施例により本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこの実施例のみに限定されるものではない。
【0013】実施例次に、本発明を実際に組み込んだ実験プラントの運転結果の一例について詳細に説明する。図1に実験プラントのフローを示す。この実施例では、実際の下水処理場に流入する汚水を使用した。その汚水の水質は第1表に示す。この汚水を、流入SS固液分離工程2で固液分離し、生物反応工程4で活性汚泥法により処理した。生物反応工程4の活性汚泥スラリを微生物固液分離工程5へ送り、固液分離し、処理水6と濃縮汚泥7を得た。濃縮汚泥7を嫌気性醗酵工程11に送り、90〜150℃で嫌気性醗酵を行わせて、消化汚泥12を得る。嫌気性醗酵工程11の液13の一部をリン、窒素回収工程14に送り、そこで水酸化マグネシウム及び数種類の添加剤を使用することによりマグネシウムリン酸アンモニウム(MAP)を生成させ、液を嫌気性醗酵工程11へ循環させている。処理水6の水質と、流入SS固液分離工程2での濃縮汚泥3、微生物固液分離工程5での濃縮汚泥7及び嫌気性醗酵工程11での消化汚泥12の組成を第2表に示す。
【0014】
【表1】


【0015】
【表2】


【0016】濃縮汚泥3の一部が送られる脱水工程8での脱水装置としてはスクリュープレス型の脱水機を使用した。嫌気性醗酵工程11では、脱水ケーキ燃焼工程20において発生したエネルギーの一部と嫌気性醗酵工程11から回収したメタンガスの発熱エネルギーを利用して、嫌気性消化を行った。流入水量900m3 /日で、濃縮汚泥3を直接脱水工程8に約80kg/日(固形物として)送り、濃縮汚泥3の一部である濃縮汚泥10(約20kg/日)と消化汚泥12(約80kg/日)とを汚泥混合工程16へ送り、混合汚泥17を脱水工程18へ送って脱水し、得られた脱水ケーキ19(約100kg/日)を燃焼工程20に送り、先の脱水工程8からの脱水ケーキ9と一緒に燃焼させて、その熱をエネルギー回収工程21で回収する。濃縮汚泥10と消化汚泥12との混合割合は、固形分の重量比でおよそ1:4であった。また、MAPの生成量は約10kg/日であった。
【0017】前記混合汚泥17の組成、脱水ケーキ19の含水率を第3表に示す。なお、比較のために、消化汚泥単独を脱水した場合の脱水ケーキの含水率も第3表に示す。消化汚泥単独で脱水した場合の脱水ケーキの含水率は、83.5〜86.7%で最初汚泥の一部と混合した混合汚泥の脱水ケーキの含水率は、75.3〜79.2%で、混合することにより、脱水性の向上がみられた。なお、図2に最初汚泥の混合比とケーキ含水率の関係を示す。最初汚泥を12.5%添加することにより、含水率が急激に低下し、79.1%まで低下が見られた。一方、これよりも混合比を高めてもそれほどの含水率の低下はみられなかった。
【0018】
【表3】


【0019】
【発明の効果】以上に詳細に説明したように、本発明によれば、有機性廃水処理システムの中で、特に有機物、窒素、リンを含有する廃水を、活性汚泥法に代表される微生物の生物代謝反応を利用した排水処理方法を介して処理するシステムにおいて、排水中の処理対象成分の形態とその特性をできるだけ生かした処理フローを構成することで、省エネルギー化、有用物質の回収とその資源化を考慮した排水方法を提供することができた。
【0020】すなわち、本発明によれば、嫌気性醗酵工程により発生する消化汚泥またはその濃縮汚泥(MAP処理法において効率的にリンおよび窒素を回収した汚泥も含む)と、最初汚泥またはその濃縮汚泥の一部を特定の割合で混合することにより、その混合汚泥を脱水する際の薬注率の低下、脱水ケーキの含水率の低下、および脱水ケーキの燃焼発熱量を向上させることができる。更に、この脱水ケーキと焼却に適している最初汚泥またはその濃縮汚泥の脱水ケーキを特定の比率で混合することにより、脱水ケーキの焼却の際のA重油等のエネルギーコストの低減が実現でき、排水処理プラント全体のランニングコストの低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の有機性廃水の処理方法を示すブロック図である。
【図2】最初汚泥の混合比とケーキ含水率の関係を表わすグラフを示す。
【符号の説明】
1 流入水
2 流入SS固液分離工程
3 濃縮汚泥
4 生物反応工程
5 微生物固液分離工程
6 汚泥混合工程
7 処理水
8 脱水工程
9 脱水ケーキ
11 嫌気性醗酵工程
12 消化汚泥
13 液
14 リン、窒素回収工程
15 MAP処理後汚泥
16 汚泥混合工程
17 混合汚泥
18 脱水工程
19 脱水ケーキ
20 燃焼工程
21 エネルギー回収工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】 好気性微生物の代謝を使用した生物反応工程、生物反応工程の前段の流入SS固液分離工程、生物反応工程の後段の微生物固液分離工程の3つの工程を組み込んだ有機性廃水の処理方法において、前記流入SS固液分離工程において分離した汚泥の一部を脱水装置により脱水処理し、前記微生物固液分離工程において分離した汚泥を嫌気性醗酵工程において消化し、嫌気性醗酵工程により発生する汚泥と、前記流入SS固液分離工程において分離した汚泥の一部とを混合し、その混合汚泥を脱水する工程を組み入れたことを特徴とする有機性廃水の処理方法。
【請求項2】 流入SS固液分離工程により発生する汚泥と、嫌気性醗酵工程により発生する汚泥を、脱水時の薬注率および脱水ケーキの含水率を最小化し、燃焼時の発熱量を最大化する割合で混合することを特徴とする請求項1記載の有機性廃水の処理方法。
【請求項3】 流入SS固液分離工程において分離した汚泥の一部を脱水装置により脱水処理した脱水ケーキと、混合汚泥を脱水装置により脱水処理した脱水ケーキとを混合し燃焼させる工程を有することを特徴とする請求項1または2記載の有機性廃水の処理方法。
【請求項4】 嫌気性醗酵工程で生成する汚泥からリン酸マグネシウムアンモニウムの形態でリンと窒素を回収する工程を組み込むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の有機性廃水の処理方法。
【請求項5】 被処理水を流入する流入SS固液分離槽と、被処理水を処理する生物反応槽と、生物反応槽からの液を固液分離する微生物固液分離槽とを有する有機性廃水の処理装置において、前記流入SS固液分離槽からの汚泥の一部を流入する脱水装置、前記微生物固液分離槽の汚泥を流入する嫌気性醗酵槽、前記嫌気性醗酵槽の汚泥と前記流入SS固液分離槽の汚泥の一部とをそれぞれ流入して汚泥を混合する汚泥混合装置、及び前記汚泥混合装置で形成される混合汚泥を脱水する脱水装置を有することを特徴とする有機性廃水の処理装置。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2001−137896(P2001−137896A)
【公開日】平成13年5月22日(2001.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−325730
【出願日】平成11年11月16日(1999.11.16)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】