説明

有機物漁礁

【課題】
未利用資源である竹材や木質有機物を活用し、中古或いは廃船となった繊維強化プラスチック船を利用して漁礁を作り、里山の再生と里海の復活を課題とする。
【解決手段】
2艘の繊維強化プラスチック船を、浮力付与手段を持つ第一船舶と容器として利用する第二船舶とし、所定間隔を有して牽引手段で接続し、第二船舶の上部に外枠を形成し、外枠の内部空間に固体の植物性有機物を挿入して有機物漁礁を形成し、有機物が微生物や水棲生物によって分解され、水棲生物は魚の餌となり、有機物の小空間が稚魚や幼魚の餌場となり住処となって食物連鎖が形成され、漁業資源が復活し、里海に活気が蘇る。
里山でも廃竹材や間伐材の有効利用によって、豊かな自然と収入が蘇るのである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮力付与装置を取付けた上方の船と比重が1より重い下方の船が所定間隔を設けて接続されており、所定間隔内に外枠が形成され、外枠の内部空間に個体の植物性有機物が挿入されている有機物漁礁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の有機物を利用した漁礁は、コンクリート等と併用した漁礁がある(例えば特許文献1参照)。
特定魚種を養殖する浮沈機能を持たせた生簀がある(例えば特許文献2参照)。
例えば、特許文献(原木を利用した四角錐漁礁)がある。
例えば、特許文献(捨石混成型間伐材漁礁)がある。
例えば、特許文献(水中植生工法及び水中植生施設)がある。
例えば、特許文献(FRP廃船と中古魚網を利用した人工漁礁)がある。
例えば、山口県では数種類の間伐材漁礁が試験施設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−048687号
【特許文献2】特開2007−135429号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、間伐材を利用した漁礁や繊維強化プラスチック船の廃船を利用した浮体があっても、有機物から水棲生物を介して魚類に至る食物連鎖の関係と、その食物連鎖により破壊される有機物漁礁を、廃棄物を出さず簡単に再生する方法が考慮されていない。
【0005】
従って、廃船処理が困難な繊維強化プラスチック船舶を利用し、竹材、人工林の間伐材、街路樹や植木の選定廃材、製材過程で生じる端材や廃木材などの未利用有機物を、貧栄養の沿岸海域に安価に提供する事を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するため本発明は、繊維強化プラスチックを少なくとも一部に使用した船舶が利用されている有機物漁礁であって、船舶は、鉛直方向の上部にある第一船舶と下部にある第二船舶とがあり、第一船舶は、浮力付与手段として船底を上にした逆転姿勢で使用されており、船体内部に、給排気口と排気専用口を有する袋状部材が取付けられ、或いは給排気口を有し少なくとも下部の一部が解放された空洞部材が取付けられ、或いは給排気口と排気専用口を有するシート状部材が船体下面を除く開口部を封鎖した船体下面に密着させて取付けられて浮力付与手段として形成され、第二船舶は、有機物を入れる容器として船底を下にした順姿勢で使用されており、船体と船体内に充填する物体の和が、嵩比重が1より大きく第一船舶の最大浮力より小さい範囲内で、船体内に重量物が充填され、第一船舶と第二船舶は、船舶間に所定間隔を設けて牽引手段によって接続されており、第二船舶の鉛直方向上方で、所定間隔の範囲内に外枠形成部材でもって外枠側面が形成されており、外枠の内部空間に所定体積を持つ固体の植物性有機物が挿入されて、外枠上面が外枠形成部材でもって閉鎖された有機物漁礁を提供する。
【0007】
前記の第一船舶と第二船舶間に設けた所定間隔とは、水深や潮流により異なるが、第一船舶或いは第二船舶の船体長さの略2分の1から3倍程度であって、牽引手段によって鉛直方向に接続する船体を含む船舶間の間隔である。
【0008】
前記の外枠形成部材とは、外枠の内部空間に挿入する所定体積の植物性有機物の離散を防ぎ、稚魚や小型魚が通過できる空隙を有するネット状弾性部材、ロープ部材、パイプ或いはホース状の中空部材、発泡樹脂が充填された棒状部材、船舶、の少なくとも1種以上で構成されている。
【0009】
前記の稚魚や小型魚が通過できる空隙とは、外枠側面の一部を構成する開口部の間隔であって、稚魚や幼魚など小型魚の通過が自由に行われ、かつ挿入初期の固体の植物性有機物が離散しない網状或いは枡状の空間部の大きさで、概略3cm〜20cm程度の間隔である。
【0010】
前記の排気専用口とは、設置される袋状部材或いはシート状部材の内圧が水圧より高くなった時にのみ排気し、逆止弁で水の浸入が防止できる開口部である。
【0011】
前記の所定体積を持つ固体の植物性有機物とは、粉末や顆粒状の物質を除き、単体で或いは束にして前記の稚魚や小型魚が通過できる空隙から容易に離散しない体積を持つ有機物であって、主に竹類や木質系有機物である。
【0012】
前記の第一船舶で形成する浮力付与手段は、船底部と底板の間及び凹凸部分を発泡樹脂で充填した、或いは覆った定常浮力部と、加圧空気が給排気できる変動浮力部材とが混在している浮力部材である。
【0013】
前記の外枠側面は、第一船舶から独立した定常浮力部、或いは第一船舶から独立した変動浮力部と接続した、或いは第一船舶と第二船舶を接続する牽引手段に接続した。
【0014】
前記の外枠側面は、第二船舶の上方に外枠側面を直立して形成する必要があり、外枠側面上部に第一船舶から独立した定常浮力部、或いは第一船舶から独立した変動浮力部材と接続して直立させ、或いは第一船舶と第二船舶間を接続する牽引手段に接続して直立させた、有機物漁礁を提供する。
【0015】
前記の第一船舶から独立した定常浮力部とは、内部に発泡樹脂を充填した一定の浮力を有する浮力部であり、第一船舶から独立した変動浮力部とは、加圧空気が給排気できる中空部材からなる変動浮力部材であって、第一船舶とは別個の独立した浮力部材である。
【0016】
前記の第二船舶は、漁礁再生時に加圧空気を注入する事によって浮上を容易にさせる手段として、第二船舶の周縁部に、第一船舶から独立している別個の変動浮力部が取付けられた有機物漁礁を提供する。
【0017】
前記の第一船舶は、海底或いは海底に設置された装置との係留手段を有し、係留手段は離脱と接続を繰返す事ができる有機物漁礁であって、単独或いは集団で係留する。
【0018】
前記の第二船舶が複数の第一船舶と連結された、或いは、第一船舶が複数の第二船舶と連結された、或いは、複数の第一船舶と複数の第二船舶が連結された有機物漁礁がある。
【0019】
水面或いは水面直下にある第一船舶は、波の影響を大きく受け上下左右に揺れる為、第一第二船舶共に2個から略120個の複数個の船舶と連結する事が有利であり、並列方向に連続した有機物漁礁群を形成する。
【0020】
第一船舶は海底或いは海底に設置された装置との係留手段によって安定するが、第二船舶の動きを制限する必要があり、隣接する第二船舶同士を外枠連結手段でもって接続する事によって移動を制限し、安定させる。
【0021】
前記の有機物漁礁が並列方向に連続した有機物漁礁群を形成し、水面から吊下げられて或いは海底或いは湖底に設置されて、定置網の一部として使用されている、或いは定置網と合体している、或いは集魚施設の一部として使用されている、或いは集魚施設と合体して集魚効果の高い有機物漁礁群を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明を利用する事によって、貧栄養の海洋に竹材や木質有機物を個体の形状で提供する事は、微生物や水棲生物によって有機物が徐々に分解され、水棲生物は魚類の餌となり、持続的な食物連鎖が完成し、稚魚や幼魚に住処が提供され、同時に廃竹材や間伐材の有効利用が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第一船舶と第二船舶からなる有機物漁礁の概念図である。
【図2】第一船舶と第二船舶の正面から見た有機物漁礁の側面図(円内は外枠内部を透視した断面図)である。
【図3】箱型作業船に袋状部材を取付けた第一船舶の斜視図である。
【図4】箱型作業船にシート状部材を密着させて取付けた第一船舶の斜視図である。
【図5】プレジャーボートに空洞部材を取付け、船底と底板の間、及び船体と空洞部材間を発泡樹脂で埋めた第一船舶の断面図である。
【図6】第二船舶の周縁部に第一船舶から独立した変動浮力部を取付けた有機物漁礁の斜視図である。
【図7】複数の有機物漁礁を接続し、有機物漁礁群として設置するイメージ図である。
【図8】複数の漁礁を連結し、漁獲目的で大型漁礁群として設置する平面図の1例である。
【図9】定置網と有機物漁礁群を組合せた捕獲システムの1例である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
前記の課題は安価な有機物漁礁の提供する事にあり、よって本発明では、繊維強化プラスチック船の中古船或いは廃船を利用し、未利用資源を活用し、安価な有機物漁礁を目指した。
繊維強化プラスチック船舶は、14万隻と推定される放置艇に加え毎年1万隻を越える隻数が廃船時期を迎えているが、軽量で高強度、高耐久性である優れた製品特性が解体時になって災いし、安価で有効なリサイクル技術、新たなエネルギーを消費しないリユースが課題とされている。
繊維強化プラスチック船以外では、例えば木造船舶を利用すると微生物や水棲生物にとっては船舶自体が餌であり、早々に分解されて漁礁機能が成立たなくなってしまう為適当でない。
鉄製の沈没船にも多くの魚類が住着いてはいるが、鉄製船舶はあまりにも大型であって本発明の有機物漁礁としては使用できない、同時に鉄は再生が容易であり、貴重な資源として再生されるべきである。
【実施例1】
【0025】
本発明の図1に示す実施例に基づき記述する。
第一船舶(10)の浮力付与手段(20)は、繊維強化プラスチック製の小型プレジャーボート(長さ6m、巾1.9m、深さ1.6m)から、エンジン、操舵装置、その他の付属部品を取除き、船底(12)と底板(13)の間、及び船腹の空洞部に発泡樹脂(26)を充填して定常浮力部(21)とし、前後部のバランスを考慮し、なだらかな曲線を描く様に凹凸部を発泡樹脂で埋め、排気専用口(16)と片側が水面上に達している給排気ホース(18)が接続された給排気口(17)を取付けた袋状部材(14)を防水シートで製作して変動浮力部材(23)とし、船体の前後2箇所に取付けた。
【0026】
第一船舶(10)と第二船舶(30)間は、所定間隔(図2−82)として16mを設けて牽引手段(60)で接続した。
牽引手段(60)は第一船舶と第二船舶間の一部分で1箇所にまとめられ、上下は分離して第一船舶の周縁部(11)と第二船舶の周縁部(31)に接続した。
第一船舶の周縁部(11)は第一船舶の下面と同一部分であり、第二船舶の周縁部(31)は第二船舶の上面と同一部分である。
【0027】
第二船舶(30)は、繊維強化プラスチック製の漁船(長さ13m、巾2.5m、深さ1m)からデッキや付属部品を取除いた船体を利用し、第二船舶周縁部(31)上方の所定間隔の範囲内で外枠用ロープ(46)を伸ばし、先端を外枠上面(43)の周囲を周回する外枠用ロープ(46)に接続した。
【0028】
第二船舶の周縁部(31)から外枠上面の外枠用ロープ(46)間に外枠形成部材(40)である外枠用ネット(44)を張り、稚魚や小型魚が通過可能な空隙(図2−83)を設けた外枠側面(42)が完成した。
【0029】
本実施例の外枠側面に設けた稚魚や小型魚が通過可能な空隙は、短辺側6cm長辺側12cmの菱形をしており、稚魚や幼魚が大型魚から身を守り、有機物を分解する微生物や虫類を食する為の通路であり、有機物漁礁の重要な要素である。
【0030】
第二船舶の船底(32)に、砂(図2−55)を入れ、第二船舶(30)の嵩比重が1より重くなる様にした。
【0031】
外枠内部に挿入する所定体積を有する固体の植物性有機物(図2−50)は、実施例7において記述する。
【0032】
有機物を挿入した外枠は、上面を外枠形成部材(40)である外枠用ネット(44)で塞ぎ、図1に示す有機物漁礁が完成した。
【実施例2】
【0033】
図2は、第一船舶(10)と第二船舶(30)を船首側から見た側面図で、主に図1実施例との相違点について記述する。
【0034】
図2は、外枠上部を閉鎖した塩化ビニルパイプからなる中空部材(25)に接続し、中空部材が持つ浮力を利用して外枠側面(42)を直立させ、塩化ビニルパイプを横方向に広げる事によって外枠内部の上部空間が拡大し、固体の有機物(50)の投入が容易になると同時に、大量の有機物を収納する事が出来た。
【0035】
外枠形成部材(40)の外枠用ネット(44)は、所定間隔(82)の範囲内で第二船舶の船底(32)部から形成した。
【実施例3】
【0036】
図3に示す実施例は、繊維強化プラスチック船の内で最も簡単な長方型をした海苔摘み取り作業船(外寸=巾1.4m×長さ3m×深さ0.4m)を用いて第一船舶(10)とし、その内寸(1.3m×2.7m×0.38m)に略合致する袋状部材(14)を防水テント用シートで製作し、第一船舶の外周縁部(11)に取付けた。
【0037】
袋状部材(14)は、片側が水面上に達する給排気ホース(18)と接続した給排気口(17)と、排気専用口(16)を取付けた。
【0038】
牽引手段(60)としてロープを使用し、第一船舶の周縁部(11)の外側を周回して結束し、さらに船底と下面(逆転姿勢で使用するので船体の上面が下面になる)を周回するロープと交差させて結束し、牽引用ロープを接続して牽引手段(60)とした。
【実施例4】
【0039】
図4に示す実施例は、上記の海苔摘み取り作業船(外寸=巾1.4m×長さ3m×深さ0.4m)を用いて第一船舶(10)とし、給排気口(17)と排気専用口(16)を有する凹状のシート状部材(15)(巾1300mm×2700mm×深さ380mm)を第一船舶の周縁部(11)に密着させて取付け、第一船舶の周縁部(11)に牽引手段(60)を取付けた。
【実施例5】
【0040】
図5に示す実施例は、繊維強化プラスチック製プレジャーボート(長さ4.2m、幅1.5m、深さ0.6m)から推進装置や操舵装置等の部品を取除き、第一船舶の船底(12)と第一船舶の底板(13)の間及び船腹空洞部は、発泡樹脂(26)を充填して第一船舶(10)の定常浮力部(21)とした。
【0041】
第一船舶の前部側に、内容積1300リットルの空洞部材(27)と、後部側に内容量2000リットルの空洞部材(27)を船体に固定し、変動浮力部材(23)とした。
【0042】
空洞部材(27)と船体の間は発泡樹脂(26)を充填したが、前部と後部の空洞部材(27)には容量差があり、容量差を考慮に入れ、定常浮力部(21)と変動浮力部(23)の和が略同浮力を持つよう、前部に多く発泡樹脂(26)を充填した。
船体の前後で両側の4箇所から、牽引手段(60)を接続し、図5の実施例が完了した。
【実施例6】
【0043】
図6に示す実施例は、第二船舶の周縁部(31)上方に内容量200リットルの空洞部材(27)を6個取付け、水面(63)上に達する給排気ホース(18)で連結し、第一船舶から独立した変動浮力部(24)が出現する。
【0044】
外枠(41)の内部空間に挿入する固体の植物性有機物は、微生物や水棲生物によって1年〜数年で崩壊し消失する為補充しなければならないが、第二船舶(30)に取付けた6個の第一船舶から独立した変動浮力部(24)に、水面上から加圧空気を注入する事によって簡単に浮上できる有機物漁礁が完了した。
【実施例7】
【0045】
実施例7は、外枠(図6−41)の内部空間に投入する所定体積を持つ固体の植物性有機物(図2−50)であり、有機物が微生物や水棲生物によって分解され、その水棲生物が魚類の餌となって食物連鎖を形成する基本物質であるものの、未利用の竹材或いは木材全般にわたり、形状が定まらない為図面は省略する。
【0046】
竹林を伐採した廃竹材(図2−52)は、枝部をそぎ落とし、主幹部を3m〜5mに切断し、2〜4分割にして中空構造を破壊し、10本〜30本を纏めて荒縄で結束した。
中空構造を破壊した伐採直後の孟宗竹は、嵩比重が1.3で水中に沈むが、時間の経過に伴い繊維内の水分が蒸発して軽くなるため、切出し直後に使用する。
枝部は枝部だけで結束した。
【0047】
人工林の間伐材(図2−53)や街路樹の選定廃材は、水分を持った伐採直後は比重が1.3〜1.5ある為早急に使用すると何らの加工も必要でなく、運搬が容易な主幹部と枝部に分割し、主幹部は1〜3m前後に切断するだけで使用する。
【0048】
未利用資源のこれら廃材は、植物が二酸化炭素を吸収して作り上げた貴重な有機物であり、水分を含んだまま化石燃料を使用して焼却しているのが現状であり、本発明は可能な限り原型で利用した。
【0049】
本発明で使用する固体の植物性有機物は、竹類、葉や樹皮を含む木材、葦などの大型の草類に限定し、粉体や顆粒状の種子、草、落葉、或いは食品廃棄物などは使用しない。
【実施例8】
【0050】
図7に示す実施例は、複数の第一船舶と複数の第二船舶との組合せからなる連結した有機物漁礁(70)であって、互いに複数の船舶と連結し、集団で係留する係留手段(61)を有し、漁獲に直結する目的の基本形を現す。
【0051】
連結した有機物漁礁(70)の第一船舶は、係留手段(61)によって海底(64)に固定されるが、第二船舶は横方向に回転できる状態にあって安定しない為、隣接する第二船舶同士を外枠連結手段(62)でもって連結する。
或いは、係留手段(61)を用いて海底(64)に係留しても良い。
【0052】
図7に示す4個の第二船舶と外枠が異なる図7中の符号(35)(36)(37)(38)は、外枠形成部材(40)或いは外枠を鉛直方向に引上げる方式が異なる4例を示した。
【0053】
第二船舶と外枠−1(35)は、第二船舶の上面(33)から外枠用ネット(44)が形成され、外枠側面(42)の上部に第一船舶から独立した定常浮力部(22)と第一船舶から独立した変動浮力部(24)を接続し、その変動浮力部に給排気ホース(18)を接続した1例を示した。
【0054】
第二船舶と外枠−2(36)は、第二船舶の船底(32)から外枠用ネット(44)が形成され、外枠側面(42)の上部に第一船舶から独立した定常浮力部(22)と第一船舶から独立した変動浮力部(24)を接続し、給排気ホース(18)を接続した1例を示した。
【0055】
第二船舶と外枠−3(37)は、第二船舶の船底(32)から柵状ネット(45)が形成され、外枠側面(42)の上部に第一船舶から独立した定常浮力部(22)を接続した1例を示した。
【0056】
第二船舶と外枠−4(38)は、第二船舶の上面(33)から柵状ネット(45)が形成され、外枠側面(42)の上部を牽引手段(60)に接続する事によって外枠を鉛直方向に引上げる方式を示した。
【0057】
有機物漁礁は、台風などの荒天時に水中深く沈めて安全を保つ必要があり、係留手段(61)は離脱と接続を繰返す事ができる構造にした。
【0058】
図8は、連結した有機物漁礁(70)を組合せた漁礁群が中央部から外側に向かって放射状に延び、潮流(65)にのって移動してきた魚類を中央部に誘導する漁礁集団の平面図で、有機物漁礁を連結して漁獲に結びつける設置方法の1例である。
【0059】
図9は、定置網(71)と連結した有機物漁礁(70)の平面図で、定置網に誘導する魚道を有機物漁礁で置き換えるものである。
漁獲対象となる大型の魚類は、餌となる水棲生物や小型魚を求めて有機物漁礁に群がり、連結した有機物漁礁に沿って定置網に誘導する設置方法の1例である。
【0060】
以上述べてきた如く、本発明は廃棄物を利用し、新たなエネルギーの投入を最小限にとどめ、里山と里海を復活させる方法を提起する。
森が海を育てる、この重要課題が再認識され、植林を行う漁業者が現れ始めているが、人工林は3倍の幼木を植林し、間伐を繰返す事によって立派な針葉樹林に成長するが、山村の過疎化と高齢化によって放置され、超過密に陥った人工林は生物の本能に従って最後の力を振り絞り、数倍もの花粉をばら撒いている。
間伐をして豊かな森林に育て上げる事は、花粉症対策の医療費削減にも寄与する。
【0061】
街路樹や植木の選定廃材は、水分を含んだまま化石燃料を浪費して焼却処分されており、その有効利用が切望されている。
【0062】
また、竹の進出によって森林が破壊されている地域がある。
昔の竹林被害は、地下茎を延ばして隣地に進出する程度であったが、現在の竹林被害は道路等の境界域に忽然と現れた数本の竹が、1〜2ヶ月で成長して樹木の上空を覆い、地下茎を縦横に張り巡らせて樹木の根を絞め殺し、瞬く間に森林を破壊しながら竹林へと姿を変え、野生動物でさえ立ち入ることが出来ない荒廃した竹林に変貌している。
照葉樹林は、地中深くに根を下ろし、緑のダムとして雨水を蓄え、多様な生物を育む豊かな森林を形成するのに反し、竹林は表層にのみ根を張って貧栄養な単一の生物層を形成し、枯れた竹はぽっかりと地中に穴を開け、大規模な地滑りの要因をはらんでいる。
森林に進出した貧栄養の竹を伐採する事は、植林して森を育てるよりも簡単で効果的な方法であり、豊かな森林の復元が切望さている。
これらの現象は、九州・四国を含む本州の南部地方で顕著に見られる現象で、まだ里山近くの出来事であるものの、数年先には山奥にまで達する勢いで拡大し、進行しており、近い将来、日本中の森林が再生不可能となる事態が充分予測され、早急な対策が差し迫っている。
【0063】
一方海では、コンブ・ワカメ・カジメ・ホンダワラなど、かっては多くの海藻が繁茂していた日本の沿岸海域は、背後に展開する豊かな森林によって支えられていた。
森林が失われ、開発によって土砂が流入し、垂直護岸によって浄化機能に満ちた浅瀬や干潟が失われ、有機物の供給がダム湖によって分断され、海底ではサンゴモによる石灰層の拡大で磯焼けが蔓延し、海藻が消失して魚群が姿を消し、里海は壊滅的打撃を受けている。
海藻やサンゴ礁の減少は、海藻にしか産卵しない魚類、海藻によって育まれる魚類が枯渇するのは当然であり、途切れた食物連鎖を復活させねばならない。
【0064】
大都市近郊の限られた海域は、水に溶けた窒素やリンの大量の養分が供給され、微生物が爆発的に増殖して赤潮などの弊害が生まれているが、その反面で多くの沿岸海域が有機物やミネラルの供給不足にあえいでいる。
森林が育んだ貴重な有機物資源を海洋に運ぶ河川には、多くのダムが横たわって水が澱み、有機物が堰き止められ、低酸素状態の湖底で無気分解され、里海が貧栄養に曝されている。
里海は豊かな森林と繋がって初めて生きるのであり、ダム湖で遮断された河川に替わり、本発明が固体の有機物を海洋に提供する事によって食物連鎖を完成させる。
【0065】
しかし、里海に恒久的な漁業資源が復活する事は大きな経済効果であっても、高額の漁礁では費用に対する経済効果が伴わず、実効性が無い。
本発明は、持続的な食物連鎖の原点である固体の有機物を大量に供給する事に主眼を置き、繊維強化プラスチック船の中古や廃船を利用する事によって安価な漁礁を可能にし、安価な有機物漁礁が連結した大規模漁礁群によって恒久的な漁業資源が確保され、或いは既存の定置網漁と合体させ、里海が復活し、外洋に進出しなくとも生計が成り立つ事は漁村の活性化に繋がる。
里山においても、廃竹材や木質有機物の未利用資源が活用される事は、新たな雇用と活気が蘇り、漁村と山村を結びつけた大きな経済効果が期待できる。
【符号の説明】
【0066】
1 有機物漁礁
10 第一船舶
11 第一船舶の周縁部
12 第一船舶の船底
13 第一船舶の底板
14 袋状部材
15 シート状部材
16 排気専用口
17 給排気口
18 給排気ホース
20 浮力付与手段
21 定常浮力部
22 第一船舶から独立した定常浮力部
23 変動浮力部材
24 第一船舶から独立した変動浮力部
25 中空部材
26 発泡樹脂
27 空洞部材
30 第二船舶
31 第二船舶の周縁部
32 第二船舶の船底
33 第二船舶の上面
35 第二船舶と外枠−1
36 第二船舶と外枠−2
37 第二船舶と外枠−3
38 第二船舶と外枠−4
40 外枠形成部材
41 外枠
42 外枠側面
43 外枠上面
44 外枠用ネット
45 柵状ネット
46 外枠用ロープ
47 外枠内部の透視図(円内)
50 固体の植物性有機物
52 廃竹材の有機物
53 木質系有機物
55 砂
60 牽引手段
61 係留手段
62 外枠連結手段
63 水面
64 海底
65 潮流
70 連結した有機物漁礁
71 定置網
82 所定間隔
83 稚魚や小型魚が通過可能な空隙














【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化プラスチックを少なくとも一部に使用した船舶が利用されている有機物漁礁であって、
船舶は、鉛直方向の上部にある第一船舶と下部にある第二船舶とがあり、
第一船舶は、浮力付与手段として船底を上にした逆転姿勢で使用されており、船体内部に、給排気口と排気専用口を有する袋状部材が取付けられ、或いは給排気口を有し少なくとも下部の一部が解放された空洞部材が取付けられ、或いは給排気口と排気専用口を有するシート状部材が船体下面を除く開口部を封鎖した船体下面に密着させて取付けられて浮力付与手段として形成され、
第二船舶は、有機物を入れる容器として船底を下にした順姿勢で使用されており、船体と船体内に充填する物体の和が、嵩比重が1より大きく第一船舶の最大浮力より小さい範囲内で、船体内に重量物が充填され、
第一船舶と第二船舶は、船舶間に所定間隔を設けて牽引手段によって接続されており、
第二船舶の鉛直方向上方で、所定間隔の範囲内に外枠形成部材でもって外枠側面が形成されており、
外枠の内部空間に所定体積を持つ固体の植物性有機物が挿入されて、
外枠上面が外枠形成部材でもって閉鎖された
有機物漁礁。
【請求項2】
前記の第一船舶で形成する浮力付与手段は、
船底部と底板の間及び凹凸部分を発泡樹脂で充填した、或いは覆った定常浮力部と、
加圧空気が給排気できる変動浮力部材とが混在している
請求項1に記載の有機物漁礁。
【請求項3】
前記の外枠側面は、
第一船舶から独立した定常浮力部、或いは第一船舶から独立した変動浮力部と接続した、
或いは第一船舶と第二船舶を接続する牽引手段に接続した
請求項1に記載の有機物漁礁。
【請求項4】
前記の第二船舶は、
周縁部に、第一船舶から独立している別個の変動浮力部が取付けられた
請求項1に記載の有機物漁礁。
【請求項5】
前記の第一船舶は、海底或いは海底に設置された装置との係留手段を有し、
係留手段は離脱と接続を繰返す事ができる
請求項1に記載の有機物漁礁。
【請求項6】
前記の第二船舶が複数の第一船舶と連結された、
或いは、第一船舶が複数の第二船舶と連結された、或いは、複数の第一船舶と複数の第二船舶が連結された
請求項1に記載の有機物漁礁。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の有機物漁礁が、
水面から吊下げられて、或いは海底或いは湖底に設置されて、
定置網の一部として使用されている、或いは定置網と合体している、
或いは集魚施設の一部として使用されている、或いは集魚施設と合体している
有機物漁礁集合体。





































【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−200743(P2010−200743A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111703(P2009−111703)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【特許番号】特許第4423511号(P4423511)
【特許公報発行日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(304049248)株式会社 宮田エンジニアリング (10)
【Fターム(参考)】