説明

有機金属化合物

【課題】カルボニル含有配位子を含む特定の有機金属化合物を使用する金属含有膜を蒸着する方法を提供する。
【解決手段】蒸着反応器内に基体を提供し;式[R2R1N(CO)]nM+mL1(m−n)/pL2q(式中、R1およびR2は独立して選択され、;X=NまたはP;M=第7族〜第10族金属;L1=負の電荷pを有するアニオン性配位子;L2=中性配位子;m=Mの価数;n=1〜6;p=1〜2;q=0〜4;並びにm≧nである)の有機金属化合物を気相で反応器に運び;並びに、有機金属化合物を分解させて、基体上に金属含有膜を堆積させる;ことを含む、金属含有膜を堆積させる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、有機金属化合物の分野に関する。特に、本発明は、薄膜の蒸着に有用な有機金属化合物の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
化学蒸着(CVD)のような蒸着技術は基体上に薄膜を堆積させるのに使用される。このような技術においては、反応物質(または前駆体)はガス(または気)相でソースから、基体を収容している堆積反応器に運ばれる。金属有機化学蒸着(MOCVD)は、高温、すなわち室温より高い温度で、大気圧または減圧下で、有機金属前駆体化合物を分解することによって金属含有層が堆積される1つの技術である。原子層堆積(ALD)は、複数種の化学反応物質蒸気が同時に提供されるMOCVDプロセスとは異なり、2種以上の化学反応物質の蒸気に交互に表面を曝すことにより一体化薄膜が堆積される別の技術である。ALDにおいては、第1の前駆体(または反応物質)からの蒸気が、所望の薄膜が堆積されるべき表面にもたらされる。次いで、未反応の蒸気が真空下でそのシステムから取り除かれる。次いで、第2の前駆体からの蒸気がその表面にもたらされ、第1の前駆体を反応させられて、過剰な第2の前駆体蒸気が除かれる。ALDにおける各工程は、一度に1つの原子層の薄膜を堆積させるために使用される自己限定的な方法である。所望の膜厚が得られるまで、この工程のシークエンスが繰り返される。ALDプロセスは一般に、かなり低い温度、例えば、200〜400℃で行われる。正確な温度範囲は、堆積されるべき具体的な膜および使用される具体的な前駆体に依存する。純粋な金属だけでなく、金属酸化物、金属窒化物、金属炭窒化物、および金属ケイ窒化物を堆積させるために、ALDプロセスは使用されてきた。
【0003】
ALD前駆体をはじめとするCVD前駆体は、妥当な期間内で基体表面上に膜層を堆積させるために、反応器内での前駆体蒸気の充分な濃度を確実にするのに充分揮発性でなければならない。前駆体は、また、速すぎる分解および望まれない副反応なしに気化されるのに充分安定でなければならないが、基体上に望まれる膜を形成するのに充分反応性でもなければならない。このような揮発性と安定性との必要とされるバランスをとる、様々な有機金属前駆体が提案されてきた。
【0004】
従来の前駆体はホモレプティック(すなわち、前駆体は中心原子の周りに単一種の配位子群を有する)である。ホモレプティック前駆体は均一な化学的特性を提供し、よって、配位子の官能基と堆積プロセスとを適合させおよび調和させる固有の利点を提供する。例えば、国際公開2004/46417号(ゴードン(Gordon)ら)は、ALDに好適な前駆体として、特定のホモレプティックアミジナート化合物を開示する。しかし、単一種の配位子群のみの使用は、他の最重要な前駆体特性、例えば、金属中心の遮蔽、表面反応および気相反応を管理すること(例えば、第1の前駆体と第2の相補的前駆体との反応)、前駆体の揮発性を調節すること、並びに前駆体に必要な熱安定性を達成することについて、より劣った制御を提供する。ヘテロレプティック前駆体(すなわち、金属中心の周りに2種以上の異なる配位子群を有する前駆体)も報告されてきた。しかし、市場は、揮発性、熱安定性および電気的性能の適切なバランスを提供する最も好適な種類の前駆体を未だ決めかねており、これらの必要性を満たす好適な有機金属前駆体についての必要性が継続して存在している。
【0005】
CVDプロセスは、直接液体注入(DLI;direct liquid injection)のような非従来の送達技術を使用することができるか、または原子蒸着におけるような霧化噴霧技術を組み込むように改変されうる。DLIプロセスにおいては、所望の前駆体は好適な溶媒中に溶解され、次いでその溶液が正確な量で気化器にポンプ移送され、次いで蒸気が堆積反応器に運ばれ、次いでそこで気化前駆体が分解されて、基体上に膜を提供する。新たな前駆体の増大した分子の複雑さ、およびより大きな立体的嵩高さは、有機溶媒中でのその溶解性を非常に低減させ、それにより、このような前駆体の蒸着における適用を制限する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開2004/46417号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
よって、DLI送達技術の要件を満たす好適な有機溶媒可溶性前駆体についての必要性が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、蒸着反応器内に基体を提供し;式[RX(CO)]+m(m−n)/p(式中、RおよびRは独立して、H、(C−C12)アルキル、(C−C12)アルケニル、(C−C12)アルキニル、ジ(C−C12)アルキルアミノ、ジ(シリル(C−C12)アルキル)アミノ、ジシリルアミノ、ジ((C−C12)アルキルシリル)アミノ、(C−C12)アルキルイミニル、(C−C12)アルキルホスフィニル、ジ(C−C12)アルキルアミノ(C−C12)アルキル、ジ(C−C12)アルキルアミノ(C−C12)アルケニル、ジ(C−C12)アルキルアミノ(C−C12)アルキニル、ジ(C−C12)アルキルホスフィノ(C−C12)アルキル、ジ(C−C12)アルキルホスフィノ(C−C12)アルケニル、ジ(C−C12)アルキルホスフィノ(C−C12)アルキニル、(C−C12)アルコキシル(C−C12)アルキル、およびアリールから選択され;X=NまたはP;M=第7族〜第10族金属;L=負の電荷pを有するアニオン性配位子;L=中性配位子;m=Mの価数;n=1〜6;p=1〜2;q=0〜4;並びにm≧nである)の有機金属化合物を気相で反応器に運び;並びに、有機金属化合物を分解させて、基体上に金属含有膜を堆積させる;ことを含む、金属含有膜を堆積させる方法を提供する。本発明の有機金属化合物は、DLI技術において使用される典型的な有機溶媒中で、アミジナート化合物のようなALDにおいて使用するための多くの従来の前駆体よりも可溶性である。
本発明は、式[RP(CO)]+m(m−n)/p(式中、RおよびRは独立して、H、(C−C12)アルキル、(C−C12)アルケニル、(C−C12)アルキニル、ジ(C−C12)アルキルアミノ、ジ(シリル(C−C12)アルキル)アミノ、ジシリルアミノ、ジ((C−C12)アルキルシリル)アミノ、(C−C12)アルキルイミニル、(C−C12)アルキルホスフィニル、ジ(C−C12)アルキルアミノ(C−C12)アルキル、ジ(C−C12)アルキルアミノ(C−C12)アルケニル、ジ(C−C12)アルキルアミノ(C−C12)アルキニル、ジ(C−C12)アルキルホスフィノ(C−C12)アルキル、ジ(C−C12)アルキルホスフィノ(C−C12)アルケニル、ジ(C−C12)アルキルホスフィノ(C−C12)アルキニル、(C−C12)アルコキシル(C−C12)アルキル、およびアリールから選択され;M=第7族〜第10族金属;L=負の電荷pを有するアニオン性配位子;L=中性配位子;m=Mの価数;n=1〜6;p=1〜2;q=0〜4;並びにm≧nである)の有機金属化合物も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において使用される場合、文脈が他のことを明らかに示さない限りは、以下の略語は以下の意味を有する:℃=摂氏度;NMR=各磁気共鳴;TGA=サーモグラビメトリック分析;ICP−MS=誘導結合プラズマ−質量分析;b.p.=沸点;g=グラム;v/v=体積対体積;L=リットル;ca.=約;s=秒;nm=ナノメートル;Å=オングストローム;sccm=標準立方センチメートル/分;M=モル濃度;およびmL=ミリリットル。他に示されない限りは、全ての量は重量パーセントであり、全ての比率はモル比である。全ての数値範囲は境界値を含み、このような数値範囲が合計100%になることに制約されることが明らかな場合を除いて、任意に組み合わせ可能である。
【0010】
用語「アルキル」は直鎖、分岐および環式アルキルを含む。同様に、用語「アルケニル」および「アルキニル」はそれぞれ、直鎖、分岐および環式アルケニル、並びに直鎖、分岐および環式アルキニルを含む。用語「アルケン」は、1以上のオレフィン結合を有する化合物、例えば、ジエンおよびトリエンを含む。用語「アルキン」は、1以上のアセチレン結合を有する化合物、例えば、ジインおよびトリインを含む。「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素をいい、「ハロ」とはフルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードをいう。本明細書において使用される場合、「アリール」とは、芳香族炭化水素基をいう。アルキル、アルケニル、アルキニルおよびアリール基のそれぞれは、場合によっては、その水素の1以上が置換基、例えば、これに限定されないが、(C−C)アルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルコキシおよびハロで置き換えられていても良い。
【0011】
本発明において有用な有機金属化合物は、式[RX(CO)]+m(m−n)/p(式中、RおよびRは独立して、H、(C−C12)アルキル、(C−C12)アルケニル、(C−C12)アルキニル、ジ(C−C12)アルキルアミノ、ジ(シリル(C−C12)アルキル)アミノ、ジシリルアミノ、ジ((C−C12)アルキルシリル)アミノ、(C−C12)アルキルイミニル、(C−C12)アルキルホスフィニル、ジ(C−C12)アルキルアミノ(C−C12)アルキル、ジ(C−C12)アルキルアミノ(C−C12)アルケニル、ジ(C−C12)アルキルアミノ(C−C12)アルキニル、ジ(C−C12)アルキルホスフィノ(C−C12)アルキル、ジ(C−C12)アルキルホスフィノ(C−C12)アルケニル、ジ(C−C12)アルキルホスフィノ(C−C12)アルキニル、(C−C12)アルコキシル(C−C12)アルキル、およびアリールから選択され;X=NまたはP;M=第7族〜第10族金属;L=負の電荷pを有するアニオン性配位子;L=中性配位子;m=Mの価数;n=1〜6;p=1〜2;q=0〜4;並びにm≧nである)を有するものである。本有機金属化合物は式:RX(CO)(式中、R、RおよびXは上述の通りである)の1種以上のカルボニル含有配位子を含む。下付き文字「n」は本有機金属化合物中のカルボニル含有配位子の数を表す。好ましくは、n=1〜5、より好ましくはn=1〜4、さらにより好ましくはn=1〜3である。m=nの場合には、有機金属化合物はホモレプティックであり、すなわち、カルボニル含有配位子が有機金属化合物中に存在する唯一種の配位子であるが、中性配位子が存在してもよい。本有機金属化合物を形成するために、様々な金属が好適に使用されうる。好ましくは、M=Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、またはPtである。より好ましくは、Mは第8族〜第10族金属から選択される。さらにより好ましくは、Mは第8族金属である。さらにより好ましくは、M=Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Ir、またはPtであり、最も好ましくはM=Ruである。
【0012】
本有機金属化合物においては、好ましくは、RおよびRは独立して、H、(C−C)アルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、(C−C10)アルキルイミニル、(C−C10)アルキルホスフィニル、ジ(C−C)アルキルアミノ(C−C12)アルキル、ジ(C−C12)アルキルアミノ(C−C12)アルケニル、ジ(C−C12)アルキルアミノ(C−C12)アルキニル、ジ(C−C)アルキルホスフィノ(C−C12)アルキル、ジ(C−C)アルキルホスフィノ(C−C12)アルケニル、ジ(C−C)アルキルホスフィノ(C−C12)アルキニル、(C−C)アルコキシル(C−C12)アルキル、およびアリールから選択される。より好ましくは、RおよびRは独立して、H、(C−C)アルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、(C−C)アルキルイミニル、(C−C)アルキルホスフィニル、ジ(C−C)アルキルアミノ(C−C)アルキル、ジ(C−C)アルキルアミノ(C−C)アルケニル、ジ(C−C)アルキルアミノ(C−C)アルキニル、ジ(C−C)アルキルホスフィノ(C−C)アルキル、ジ(C−C)アルキルホスフィノ(C−C)アルケニル、ジ(C−C)アルキルホスフィノ(C−C)アルキニル、(C−C)アルコキシル(C−C)アルキル、およびアリールから選択される。さらにより好ましくは、RおよびRは独立して、H、(C−C)アルキル、(C−C)アルケニル、(C−C10)アルキルイミニル、(C−C10)アルキルホスフィニル、ジ(C−C)アルキルアミノ(C−C)アルキル、ジ(C−C)アルキルホスフィノ(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシル(C−C)アルキル、およびアリールから選択される。
【0013】
典型的には、(C−C12)アルキル基には、限定されないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロプロピル、シクロペンチル、メチルシクロペンチル、ジメチルシクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシルおよびジメチルシクロヘキシルが挙げられる。好ましい(C−C12)アルキル基は、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロプロピル、シクロペンチル、メチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルである。典型的には、(C−C12)アルケニル基には、エテニル、アリル、ブテニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、メチルシクロペンタジエニル、ペンタメチルシクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、メチルシクロヘキセニル、およびシクロオクタジエニルが挙げられる。好ましい(C−C12)アルケニルはエテニル、アリル、ブテニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニルおよびメチルシクロペンタジエニルである。好適な(C−C12)アルキニル基には、限定されないが、アセチレニルおよびプロピニルが挙げられる。好適なジ(C−C12)アルキルアミノ(C−C12)アルキル基には、ジメチルアミノメチル、ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノプロピル、ジエチルアミノメチル、ジエチルアミノエチル、ジエチルアミノプロピル、エチルメチルアミノエチルおよびエチルアミノプロピルが挙げられる。典型的には、ジ(C−C12)アルキルホスフィノ(C−C12)アルキル基には、これに限定されないが、ジメチルホスフィノメチル、ジメチルホスフィノエチル、ジメチルホスフィノプロピル、ジメチルホスフィノブチル、ジエチルホスフィノメチル、ジエチルホスフィノプロピル、ジエチルホスフィノブチル、ジプロピルホスフィノエチル、ジプロピルホスフィノプロピル、エチルメチルホスフィノメチル、エチルメチルホスフィノエチルおよびエチルメチルホスフィノプロピルが挙げられる。好適なジ(C−C12)アルキルアミノ(C−C12)アルケニル基には、限定されないが、ジメチルアリル、ジエチルアリルおよびエチルメチルアリルが挙げられる。典型的には、(C−C12)アルコキシ(C−C12)アルキル基には、これに限定されないが、メトキシメチル、メトキシエチル、メトキシプロピル、メトキシブチル、ジメトキシエチル、ジメトキシプロピル、エトキシメチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、プロポキシエチル、プロポキシプロピル、プロポキシブチル、ジメトキシペンチルおよびジエトキシペンチルが挙げられる。好適なアリール基には、(C−C18)アリール、および好ましくは(C−C12)アリールが挙げられる。本明細書において使用される場合、用語「アリール」はアルアルキル、例えば、アリール(C−C)アルキルを含む。典型的には、アリール基には、限定されないが、フェニル、ベンジル、フェネチル、トリル、キシリル、エチルフェニル、イソ−プロピルフェニル、エチル−メチル−フェニル、ジエチルフェニルおよびナフチルが挙げられる。好ましいアリール基は、フェニル、トリル、キシリル、ナフチル、ベンジルおよびフェネチルである。
【0014】
好ましい実施形態においては、RおよびRの少なくとも一方は、金属と配位することができる原子、例えば、O、NおよびP、より好ましくはNまたはPを含む基である。金属配位性原子を含むRおよびRについての好適な基には、(C−C12)アルキルイミニル、(C−C12)アルキルホスフィニル、ジ(C−C12)アルキルアミノ(C−C12)アルキル、ジ(C−C12)アルキルアミノ(C−C12)アルケニル、ジ(C−C12)アルキルアミノ(C−C12)アルキニル、ジ(C−C12)アルキルホスフィノ(C−C12)アルキル、ジ(C−C12)アルキルホスフィノ(C−C12)アルケニル、ジ(C−C12)アルキルホスフィノ(C−C12)アルキニル、および(C−C12)アルコキシル(C−C12)アルキルが挙げられる。RおよびRについての好ましい金属配位性原子含有基には、(C−C10)アルキルイミニル、(C−C10)アルキルホスフィニル、ジ(C−C)アルキルアミノ(C−C12)アルキル、ジ(C−C12)アルキルアミノ(C−C12)アルケニル、ジ(C−C12)アルキルアミノ(C−C12)アルキニル、ジ(C−C)アルキルホスフィノ(C−C12)アルキル、ジ(C−C)アルキルホスフィノ(C−C12)アルケニル、ジ(C−C)アルキルホスフィノ(C−C12)アルキニル、および(C−C)アルコキシル(C−C12)アルキルが挙げられる。RおよびRの少なくとも一方が金属配位性原子を含み、金属と一緒になった場合に、下記式:
【化1】

[式中、M、X、R、L、L、m、n、pおよびqは上記定義の通りであり、ZはOR、NRおよびPRから選択され、RおよびRのそれぞれは独立して、水素および(C−C12)アルキルから選択される]
に示されるような5〜7員環を形成することがさらに好ましい。好ましくは、RおよびRは独立して、水素および(C−C)アルキルから選択される。ZがNまたはPの場合、RおよびRは、それらが結合している原子と一緒になって、5〜10員環を形成することができ、例えば、二環式アミジナート基を含む下記式:
【化2】

[式中、Mは上述の通りである]
に示されるものを形成することができる。
【0015】
およびRの少なくとも一方が(C−C12)アルキルイミニルおよび(C−C12)アルキルホスフィニル基から選択される場合には、このようなカルボニル含有配位子は一般式:
【化3】

[式中、X、MおよびRは上記定義の通りであり、RはH、(C−C12)アルキル、(C−C12)アルケニル、(C−C12)アルキニル、ジアルキルアミノ、ジ(シリルアルキル)アミノ、ジシリルアミノ、ジ(アルキルシリル)アミノおよびアリールから選択され;RはH、(C−C12)アルキル、(C−C12)アルケニル、(C−C12)アルキニルおよびアリールから選択され;YはN(アルキルイミニル基)およびP(アルキルホスフィニル基)から選択される]
を有する。好ましくは、RはH、(C−C)アルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、ジ(C−C)アルキルアミノ、ジ(シリルアルキル)アミノ、ジシリルアミノ、ジ((C−C)アルキルシリル)アミノおよび(C−C12)アリールから選択される。好ましくは、RはH、(C−C)アルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニルおよび(C−C12)アリールから選択される。好適な(C−C12)アルキルイミニルおよび(C−C12)アルキルホスフィニル基には、限定されないが、アミジナート、ホルムアミジナート、ホスホアミジナート、グアニジナート、β−ジケチミナート、二環式アミジナートおよび二環式グアニジナートが挙げられる。
【0016】
本発明は、式[RP(CO)]+m(m−n)/p(式中、RおよびRは独立して、H、(C−C12)アルキル、(C−C12)アルケニル、(C−C12)アルキニル、ジ(C−C12)アルキルアミノ、ジ(シリル(C−C12)アルキル)アミノ、ジシリルアミノ、ジ((C−C12)アルキルシリル)アミノ、(C−C12)アルキルイミニル、(C−C12)アルキルホスフィニル、ジ(C−C12)アルキルアミノ(C−C12)アルキル、ジ(C−C12)アルキルアミノ(C−C12)アルケニル、ジ(C−C12)アルキルアミノ(C−C12)アルキニル、ジ(C−C12)アルキルホスフィノ(C−C12)アルキル、ジ(C−C12)アルキルホスフィノ(C−C12)アルケニル、ジ(C−C12)アルキルホスフィノ(C−C12)アルキニル、(C−C12)アルコキシル(C−C12)アルキル、およびアリールから選択され;M、L、L、m、n、pおよびqは上記定義の通りであり;並びにm≧nである)の有機金属化合物も提供する。好ましくは、RおよびRは独立して、H、(C−C)アルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、(C−C10)アルキルイミニル、(C−C10)アルキルホスフィニル、ジ(C−C)アルキルアミノ(C−C12)アルキル、ジ(C−C12)アルキルアミノ(C−C12)アルケニル、ジ(C−C12)アルキルアミノ(C−C12)アルキニル、ジ(C−C)アルキルホスフィノ(C−C12)アルキル、ジ(C−C)アルキルホスフィノ(C−C12)アルケニル、ジ(C−C)アルキルホスフィノ(C−C12)アルキニル、(C−C)アルコキシル(C−C12)アルキル、およびアリールから選択される。より好ましくは、RおよびRは独立して、H、(C−C)アルキル、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、(C−C)アルキルイミニル、(C−C)アルキルホスフィニル、ジ(C−C)アルキルアミノ(C−C)アルキル、ジ(C−C)アルキルアミノ(C−C)アルケニル、ジ(C−C)アルキルアミノ(C−C)アルキニル、ジ(C−C)アルキルホスフィノ(C−C)アルキル、ジ(C−C)アルキルホスフィノ(C−C)アルケニル、ジ(C−C)アルキルホスフィノ(C−C)アルキニル、(C−C)アルコキシル(C−C)アルキル、およびアリールから選択される。さらにより好ましくは、RおよびRは独立して、H、(C−C)アルキル、(C−C)アルケニル、(C−C10)アルキルイミニル、(C−C10)アルキルホスフィニル、ジ(C−C)アルキルアミノ(C−C)アルキル、ジ(C−C)アルキルホスフィノ(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシル(C−C)アルキル、およびアリールから選択される。
【0017】
様々なアニオン性配位子(L)が本有機金属化合物において使用されうる。このようなアニオン性配位子は1または2の負電荷を有し、これに限定されないが、水素化物、ハロゲン化物、アジド、アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボニル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ジ(シリルアルキル)アミノ、ジシリルアミノ、ジ(アルキルシリル)アミノ、イミノ、アルキルイミノ、アリールイミノ、ジアルキルアミノアルキル、ヒドラジド、ホスフィド、アルキルホスフィド、アリールホスフィド、ニトロシル、ニトロイル(nitryl)、ニトラート、ニトリル、アルコキシ、ジアルキルアミノアルコキシ、アルコキシアルキルジアルキルアミノ、シロキシ、ジケトナート、シクロペンタジエニル、シリル、ピラゾラート、アミジナート、ホルムアミジナート、ホスホアミジナート、グアニジナート、β−ジケトナート、β−ジケチミナート、二環式アミジナート、二環式グアニジナート、並びにNおよびOから選択される少なくとも2つの配位部位を有する二座配位子、例えば、1−メトキシ−2−メチル−2−プロポキシド、ジメチルアミノエトキシド、ジメチルアミノイソプロポキシド、アルコキシアルキルアミノアルキルおよびアルキルアミノアルコキシ配位子が挙げられる。アニオン性配位子は場合によっては、1以上の水素を別の置換基、例えば、ハロ、アミノ、ジシリルアミノおよびシリルなどで置き換えることによるなどして、置換されていても良い。
【0018】
典型的には、アニオン性配位子には、これに限定されないが、(C−C12)アルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロプロピル、シクロペンチルおよびシクロヘキシル;(C−C12)アルケニル、例えば、エテニル、アリルおよびブテニル;(C−C12)アルキニル、例えば、アセチレニルおよびプロピニル;(C−C12)アルコキシ、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシおよびブトキシ;(C−C12)アルキルアミノ、例えば、メチルアミノ、エチルアミノおよびプロピルアミノ;ジ(C−C12)アルキルアミノ、例えば、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、エチルメチルアミノおよびジプロピルアミノ;シクロペンタジエニル類、例えば、シクロペンタジエニル、メチルシクロペンタジエニルおよびペンタメチルシクロペンタジエニル;ジ(C−C12)アルキルアミノ(C−C12)アルコキシ、例えば、ジメチルアミノエトキシ、ジエチルアミノエトキシ、ジメチルアミノプロポキシ、エチルメチルアミノプロポキシおよびジエチルアミノプロポキシ;シリル、例えば、(C−C12)アルキルシリル、および(C−C12)アルキルアミノシリル;グアニジナート、例えば、テトラメチルグアニジナートおよびテトラエチルグアニジナート;並びに、ホスホアミジナート、例えば、N,P−ジメチル−メチルホスホアミジナト、N,P−ジエチル−メチルホスホアミジナト、N,P−ジエチル−エチルホスホアミジナト、N,P−ジ−イソ−プロピル−メチルホスホアミジナト、N,P−ジ−イソ−プロピル−イソ−プロピルホスホアミジナト、およびN,P−ジメチル−フェニルホスホアミジナトが挙げられる。2以上のアニオン性配位子が存在する場合には、このような配位子は同じであることができ、または異なっていることができる。
【0019】
本有機金属化合物は、場合によっては、1以上の中性配位子(L)を含むことができる。このような中性配位子は全体的な電荷を有しない。中性配位子は安定化剤として機能しうる。中性配位子には、これに限定されないが、CO、NO、窒素、アミン、エーテル、ホスフィン、アルキルホスフィン、アリールホスフィン、ニトリル、アルケン、ジエン、トリエン、アルキンおよび芳香族化合物が挙げられる。典型的には、中性配位子には、これに限定されないが、(C−C12)アルケン、例えば、エテン、プロペン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、ノルボルネン、ビニルアミン、アリルアミン、ビニルトリ(C−C12)アルキルシラン、ジビニルジ(C−C12)アルキルシラン、ビニルトリ(C−C)アルコキシシラン、およびジビニルジ(C−C12)アルコキシシラン;(C−C12)ジエン、例えば、ブタジエン、シクロペンタジエン、イソプレン、ヘキサジエン、オクタジエン、シクロオクタジエン、ノルボルナジエンおよびα−テルピネン;(C−C16)トリエン;(C−C12)アルキン、例えば、アセチレンおよびプロピン;芳香族化合物、例えば、ベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、トルエン、o−シメン、m−シメン、p−シメン、ピリジン、フランおよびチオフェン;並びに、(C−C12)エーテル、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、グリム(またはグリコールエーテル)が挙げられる。中性配位子の数はMとして選択される具体的な金属に依存する。2以上の中性配位子が存在する場合には、このような配位子は同じであることができ、または異なっていることができる。
【0020】
本有機金属化合物は文献に公知の様々な方法によって調製されうる。例えば、金属カルバモイル化合物は、対応するアミン化合物を金属カルボニルと反応させることにより調製されうる。例えば、アンジェリシ(Angelici)らのInorganic Chemistry第12巻、No.5(1973)1067〜1071ページ;およびM.ノノヤマ(Nonoyama)のInorganica Chimica Acta,115(1986)169〜172ページを参照、これらは金属カルバモイル化合物の調製を開示する。同様に、対応するホスフィンRPH、またはそのホスフィド形態RPM’(M’=Li、Na、またはK)は金属カルボニルと反応することができ、RP(CO)含有化合物を生じさせることができる。
【0021】
本有機金属化合物の1つの特徴は、上述のようなカルボニル含有配位子、例えば、カルバモイル基またはそのホスホラスアナログの存在であり、そこでは、カルボニル炭素はσ結合またはπ結合を介するなどして金属中心に結合されている。本有機金属化合物において、金属と窒素との間、または金属とリンとの間にカルボニル(C=O)を挿入することは、アミド、イミド、ジアルキルアミド、アミジナト、ピラゾラトおよびベータ−ジケチミナト有機金属化合物におけるような金属−窒素結合、またはホスフィノおよびジアルキルホスフィノ有機金属化合物におけるような金属−リン結合を含む対応する有機金属化合物と比較して、その揮発性、熱安定性および溶解性を有意に高めることが見いだされた。例えば、ルテニウムカルバモイル化合物である、N,N’−ジ−tert−ブチルアセトアミジナト−N,N’−ジ−tert−ブチルアセトアミジナトカルバモイルジカルボニルルテニウム(II)(Ru−Cbm)の溶解性は、ビス(N,N’−ジ−tert−N,N’−ジ−tert−ブチルアセトアミジナト)ジカルボニルルテニウム(II)(Ru−AMD)の溶解性よりも有意に大きいことが見いだされた。核磁気共鳴(NMR)分光法および直接溶解法によって決定される場合、Ru−Cbmの溶解性はRu−AMDと比較してテトラヒドロフラン中で62倍増大し、そして、Ru−AMDがほとんどまたは全く溶解性を示さないトルエンおよびテトラリンのような芳香族溶媒中で可溶性であった。
【0022】
本有機金属化合物は、蒸着によって基体上に金属含有膜を堆積させるのに有用である。このような化合物は、CVDおよびALDのような任意の好適な蒸着プロセスにおいて使用されうる。好適な基体は半導体基体であり、半導体基体には、これに限定されないが、ケイ素、ケイ素ゲルマニウム、炭化ケイ素、窒化ガリウム、ガリウムヒ素およびインジウムホスフィドが挙げられ得る。このような基体は集積回路、発光ダイオードおよびメモリデバイスの製造に特に有用である。ある実施形態においては、2種以上の本有機金属化合物がCVDまたはALDのような蒸着プロセスに使用されることができる。2種以上の有機金属化合物が使用される場合には、これら化合物は異なる配位子を有する同じ金属を含むことができるか、または異なる金属を含むことができる。別の実施形態においては、1種以上の本有機金属化合物が、1種以上の他の前駆体化合物と共に使用されうる。
【0023】
本発明は、蒸着反応器内に基体を提供し;式[RX(CO)]+m(m−n)/p(式中、RおよびRは独立して、H、(C−C12)アルキル、(C−C12)アルケニル、(C−C12)アルキニル、ジ(C−C12)アルキルアミノ、ジ(シリル(C−C12)アルキル)アミノ、ジシリルアミノ、ジ((C−C12)アルキルシリル)アミノ、(C−C12)アルキルイミニル、(C−C12)アルキルホスフィニル、ジ(C−C12)アルキルアミノ(C−C12)アルキル、ジ(C−C12)アルキルアミノ(C−C12)アルケニル、ジ(C−C12)アルキルアミノ(C−C12)アルキニル、ジ(C−C12)アルキルホスフィノ(C−C12)アルキル、ジ(C−C12)アルキルホスフィノ(C−C12)アルケニル、ジ(C−C12)アルキルホスフィノ(C−C12)アルキニル、(C−C12)アルコキシル(C−C12)アルキル、およびアリールから選択され;X=NまたはP;M=第7族〜第10族金属;L=負の電荷pを有するアニオン性配位子;L=中性配位子;m=Mの価数;n=1〜6;p=1〜2;q=0〜4;並びにm≧nである)の有機金属化合物を気相で反応器に運び;並びに、有機金属化合物を分解させて、基体上に金属含有膜を堆積させる;ことを含む、金属含有膜を堆積させる方法を提供する。
【0024】
ALDプロセスにおいては、機体の表面を、2種以上の化学反応物質(または前駆体)の蒸気に交互に曝露することによって一体化薄膜が堆積される。上述の有機金属化合物はALDプロセスにおける第1の前駆体として有用である。第2の前駆体は、第1の前駆体と反応して所望の膜を形成する好適な前駆体であることができる。このような第2の前駆体は場合によっては別の金属を含むことができる。典型的には、第2の前駆体には、これに限定されないが、酸素、オゾン、水、ペルオキシド、アルコール、亜酸化窒素、アンモニア、水素、シラン、ジアルキルシラン形成ガス、およびこれらのいずれかの混合物、例えば、アンモニアと水素との混合物が挙げられる。ALDプロセスにおいて使用される場合には、本発明は、(a)反応器内に基体を提供する工程;(b)上述の有機金属化合物である第1の前駆体化合物を気体の形態で反応器に運ぶ工程;(c)第1の前駆体化合物を基体の表面上に化学吸着させる工程;(d)化学吸着されていない第1の前駆体化合物を反応器から除去する工程;(e)第2の前駆体を気体の形態で反応器に運ぶ工程;(f)第1および第2の前駆体を反応させて、基体上に金属含有膜を形成し;および未反応の第2の前駆体を除去する工程;を含む、金属含有膜を基体上に堆積させる方法も提供する。上述の工程(b)〜(f)は、所望の厚みの金属含有膜を提供するために、任意の回数繰り返されうる。反応器から前駆体を除去する工程は、真空下で反応器を排気させること、および反応物質でないガスおよび/または溶媒蒸気を用いて反応器をパージすることの1以上を含むことができる。
【0025】
ALDによって生産される薄い金属含有膜は、ほとんど完全な化学量論を有し、膜を形成する各元素の前駆体化合物の蒸気で、一度に1種で、基体を交互に処理することにより得られる。ALDプロセスにおいては、基体は、基体の表面と反応しうる第1の前駆体の蒸気で、このような反応が起こるのに充分高い温度で処理され、それにより、第1の前駆体(またはその中に含まれる金属)の単一の原子層が基体の表面上に形成され、第1の前駆体原子層を表面上に有するこのように形成された表面を、第1の前駆体と反応する第2の前駆体の蒸気で、このような反応が起こるのに充分高い温度で処理し、それにより、所望の金属膜の単一の原子層が基体の表面上に形成される。形成される膜が所望の厚みに到達するまで、第1および第2の前駆体を交互に使用することによって、この手順は続けられ得る。このようなALDプロセスに使用される温度は、MOCVDプロセスに使用される温度よりも典型的には低く、かつ150〜400℃の範囲であり得るが、選択される前駆体、堆積されるべき膜、および当業者に知られた他の基準に応じて、他の好適な温度が使用されうる。
【0026】
バブラー(シリンダーとも称される)は、本有機金属化合物を気相で堆積反応器に提供するために使用される典型的な送達装置である。このようなバブラーは典型的には、充填ポート、ガス入口ポートおよび出口ポートを含み、出口ポートは堆積チャンバーに接続される。キャリアガスは、典型的にガス入口ポートを通ってバブラーに入り、前駆体蒸気を同伴するかまたは補足する。同伴されるまたは運ばれる蒸気は、次いで、出口ポートを通ってバブラーを出て、堆積チャンバーに運ばれる。水素、ヘリウム、窒素、アルゴンおよびこれらの混合物のような様々なキャリアガスが使用されうる。
【0027】
使用される具体的な堆積装置に応じて様々なバブラーが使用されうる。前駆体化合物が固体である場合には、米国特許第6,444,038号(ランガラジャン(Rangarajan)ら)および第6,607,785号(チモンズ(Timmons)ら)に開示されているバブラー、並びに他のデザインが使用されうる。液体前駆体化合物については、米国特許第4,506,815号(メラス(Melas)ら)および第5,755,885号(ミコシバ(Mikoshiba)ら)、並びに他の液体前駆体バブラーが使用されうる。ソース化合物はバブラー内に液体または個体として維持される。固体ソース化合物は典型的には、堆積チャンバーに移送する前に気化されまたは昇華される。ALDプロセスで使用するためのバブラーは、必要な蒸気パルスを提供するために、必要に応じて開閉の便宜を図る、入口および出口ポートでの空気弁を有することができる。
【0028】
従来のCVDプロセスにおいては、液体前駆体を供給するためのバブラー、並びに固体前駆体を供給するための特定のバブラーは、ガス入口ポートに接続されているディップチューブを含むことができる。一般に、キャリアガスは、前駆体またはソース化合物とも称される有機金属化合物の面より下に導入され、そのソース化合物を通って、ソース化合物の蒸気をキャリアガス中に同伴しまたは運びつつ、ソース化合物より上のヘッドスペースまで上方に移動する。
【0029】
ALDプロセスにおいて使用される前駆体は、多くの場合、液体、低融点固体、または溶媒中に配合された固体である。これらの種類の前駆体を取り扱うために、ALDプロセスにおいて使用されるバブラーは、出口ポートに接続されたディップチューブを含むことができる。ガスは入口を通ってこれらのバブラーに入り、バブラーを加圧し、前駆体をディップチューブ上方に上げ、バブラーの外に移動させる。
【0030】
本発明は、上述の有機金属化合物を含む送達装置を提供する。ある実施形態においては、送達装置は、横断面を有する内側面と、頂部閉鎖部分と、底部閉鎖部分とを有する、概して円筒形の部分を有する容器を含み、頂部閉鎖部分はキャリアガス導入のための入口開口部、および出口開口部を有し、概して円筒形の部分は、上述の有機金属化合物を収容するチャンバーを有する。
【0031】
堆積反応器はチャンバーを含み、このチャンバーは典型的には、その中で少なくとも1つの、場合によっては多くの基体が配置される加熱容器である。堆積チャンバーは出口を有し、この出口は、副生成物をチャンバーの外に抜き出し、かつ好適な減圧を提供するために、典型的には真空ポンプに接続されている。MOCVDまたはALDは40Pa〜101kPa(0.3Torr〜760Torr)の範囲の大気圧または減圧下で行われうる。堆積チャンバーは、ソース化合物の分解を誘起するのに充分高い温度で維持される。典型的な堆積チャンバー温度は150℃〜600℃であり、より典型的には150℃〜400℃であり、選択される正確な温度は効率的な堆積を提供するように最適化される。基体が高温で維持される場合には、またはプラズマのような他のエネルギーがラジオ周波数ソースによって発生させられる場合には、場合によっては、堆積チャンバー内の温度は全体として低減されうる。
【0032】
堆積は、所望の特性を有する金属含有膜を生じさせるのに望まれる限り継続される。典型的には、堆積が停止されるときに、膜厚は10〜数千オングストローム以上でありうる。典型的には、金属含有膜には、金属膜、金属窒化物膜、金属酸化物膜および金属炭化物膜が挙げられる。
【0033】
ALD装置は、典型的には、真空雰囲気を提供する真空チャンバー手段と、真空チャンバー手段内に配置される一対の手段であって、この一対の手段は少なくとも1つの基体を支持するための支持手段と2種の異なる前駆体の少なくとも2種の蒸気のためのソースを形成するためのソース手段とをそれぞれ含む一対の手段と、および一対の手段の一方と操作可能に接続され、この一方の手段を、この一対の手段の他方に対して操作し、最初に一方の前駆体の単一種の原子層を、次いで他方の前駆体の単一種の原子層を基体上に提供するための操作手段とを含む。例えば、典型的なALD装置の説明について、米国特許第4,058,430号(サントラ;Suntola)を参照。
【0034】
本有機金属化合物がALDプロセスにおいてまたは直接液体注入プロセスにおいて使用されるべき場合には、有機金属化合物は有機溶媒と一緒にされる。有機金属化合物を可溶性であり、かつ有機金属化合物に対して好適に不活性であり、並びに有機金属化合物の蒸気圧、熱安定性および極性に適合するあらゆる有機溶媒が使用されうる。典型的な有機溶媒には、限定されないが、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、直鎖アルキルベンゼン、ハロゲン化炭化水素、シリル化炭化水素、アルコール、エーテル、グリム、グリコール、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、スルホン酸、フェノール類、エーテル、アミン、アルキルニトリル、チオエーテル、チオアミン、シアナート、イソシアナート、チオシアナート、シリコーン油、ニトロアルキル、アルキルニトラートおよびこれらの混合物が挙げられる。好適な溶媒には、テトラヒドロフラン、ジグリム、酢酸n−ブチル、オクタン、酢酸2−メトキシエチル、乳酸エチル、1,4−ジオキサン、ビニルトリメチルシラン、ピリジン、ペンタメチルジエチレントリアミン、メシチレン、トルエン、キシレン、ジエチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、ビシクロヘキシル、直鎖(C14−C30)アルキル芳香族化合物(直鎖アルキルベンゼン、または「LAB」)、ジフェニルエーテル、ビフェニル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、エチレングリコールジブチルエーテル(ブチルグリム)およびポリエチレングリコールジブチルエーテルが挙げられる。有機溶媒の混合物が使用されうる。直接液体注入プロセスに使用される場合には、有機金属化合物の濃度は典型的には、0.01〜1.5M、より典型的には0.01〜0.15Mの範囲である。有機金属化合物/有機溶媒組成物は溶液、スラリーまたは分散物の形態であり得る。
【0035】
本有機金属化合物および有機溶媒を含む組成物は、直接液体注入を使用する蒸着プロセスにおいて使用するのに好適である。好適な直接液体注入プロセスは米国特許出願公開第2006/0110930号(センザキ;Senzaki)に開示されるものである。
【0036】
本発明によってさらに適用されるのは、上述の方法のいずれか1つを用いて金属含有膜を堆積させる工程を含む電子デバイスを製造する方法である。
【0037】
ホモレプティックまたはヘテロレプティックであり得る本有機金属化合物は、CVDおよびALDをはじめとするあらゆる好適な蒸着プロセスに使用するのに特に適している。これら有機金属化合物は機能、熱安定性および表面反応性のバランス、配位子が金属−窒素結合を有する対応する窒素含有有機金属化合物または配位子が金属−リン結合を有するリン含有有機金属化合物よりも、有機溶媒中でのより高い溶解性、より長い貯蔵寿命および低減された安全問題の所望を有する。本有機金属化合物および方法は、金属−窒素結合または金属−リン結合を含む対応する有機金属化合物と比較して、低減された炭素および他の有機混入物を示し、堆積物、粒子および表面欠陥、例えば、粗さおよび組成の不均一さがない金属含有薄膜を提供する。
【実施例】
【0038】
実施例1
(A)N,N’−ジ−tert−ブチルアセトアミジンが次のように合成された。無水FeCl(1.04mol)がN下、室温で、1LのCHClに懸濁された。懸濁物は−40℃〜−50℃に冷却され、攪拌しつつアセトニトリル(1mol)が素早く添加された。この溶液は−70℃より低く冷却されつつ、tert−ブチルクロリド(1.04mol)が添加され、次いで、tert−ブチルアミン(1.05mol)が添加された。次いで、この溶液は、攪拌しつつ、−70℃に数時間維持され、次いで−20℃まで暖め、次いで、これを希釈NaOH水溶液(12.5重量%、1L)に注いだ。追加の水が添加され、沈殿物の完全な形成を確実にした。有機層が分離されて、次いで、水相が新たなCHClで抽出された。合わせたCHCl画分が水で2回洗浄され、無水MgSOで乾燥させられた。乾燥有機溶液は蒸発させられて、薄黄色の液体を得た。このようにして得られたクルードアミジンは、次いで、分別蒸留により精製された。H NMRおよびICP−MSによって検出した場合に、主たる画分の収率は70%を超えており、有機および金属不純物は含まれていなかった。H NMR(C中、δppm):3.02(br.s,1H)、1.41(s,3H)、δ1.34(s,18H)。
【0039】
(B)リチウムN,N’−ジ−tert−ブチルアセトアミジナートが次のように合成された。−78℃で、N下で、ヘキサン中のn−ブチルリチウム溶液(2.5M、400mL)を、ジエチルエーテル(1.5L)に溶解されたN,N’−ジ−tert−ブチルアセトアミジン(1mol)に滴下方式で添加した。添加後、得られた混合物を室温まで暖めて、次いで、一晩攪拌した。次いで、全ての揮発性溶媒を減圧下で揮発乾燥させ、灰白色の固体物質を得た。これは次の工程に直接使用された。
【0040】
(C)N,N’−ジ−tert−ブチルアセトアミジナト−N,N’−ジ−tert−ブチルアセトアミジナトカルバモイルジカルボニルルテニウム(II)(Ru(AMD)−Cbm)が次のように合成された。リチウムアミジナート(1mol)を含む反応フラスコに、3Lの無水THFを添加し、次いで、化学量論量のRuCl(CO)(THF)を添加し、橙赤色の溶液を生じさせた。次いで、反応系は室温で一晩攪拌された。次いで、全ての溶媒を揮発乾燥させ、次いで、生成物は無水ヘキサンで抽出された。全てのヘキサン抽出物が集められ、乾燥まで揮発させて、橙色の物質を得て、この物質はヘキサンからの再結晶によってさらに精製された。得られた生成物はH NMR分光法およびTGA分析によって分析された。
【0041】
実施例2
N,N’−ジ−tert−ブチルアセトアミジナト−N,N’−ジ−tert−ブチルアセトアミジナトカルバモイルジカルボニルルテニウム(II)(Ru(AMD)−Cbm)の分解温度は、加速熱量測定(Arthur D.Littleから入手可能なARC商標断熱熱量計)を用いて決定された。化合物のサンプルは、密封圧力測定システムに接続された球体ボム中に配置された。熱電対がボムの外側に取り付けられ、ボムは熱力計アセンブリの中心に配置された。熱量計アセンブリは3つのゾーンを有しており、各ゾーンはそれ自体の熱電対およびヒーターを有している。ARC商標熱量計はヒートウエイトサーチ(heat−wait−search)発熱プログラムを使用する。この熱量計およびサンプルは開始温度に加熱された。サンプルおよび熱量計の温度はプログラムのウエイト部分中に平衡化された。次いで、熱量計は、プログラムのサーチ部分中に、自己加熱(0.02℃/分を超える)のサンプルをモニターし、発熱の開始温度を決定した。ALDプロセスにおいて有用であるために、前駆体は140℃以下、好ましくは150℃以下の温度で分解されるべきではない。サンプルは250℃まで安定であったことが見いだされ、これはALDのために有用な化合物を製造する。
【0042】
実施例3
サーモグラビメトリック分析(TGA)を用いて、従来のルテニウムアミジナート化合物である、(ビス(N,N’−ジ−tert−ブチルアセトアミジナト)ジカルボニルルテニウム(II))と、本発明のルテニウムカルバモイル化合物である、(N,N’−ジ−tert−ブチルアセトアミジナト−N,N’−ジ−tert−ブチルアセトアミジナトカルバモイルジカルボニルルテニウム(II))との双方についての気化速度が決定された。 TGAデータは、窒素グローブボックス内のTA Q50サーモグラビメトリック分析器(TAインストルメンツカンパニーから入手可能)を用いて得られた。サンプルのN流速は60mL/分である。サンプル(10〜20mg)が開放白金るつぼ内に入れられた。この測定は、10℃/分の温度勾配速度で行われた。TGAデータは本発明のルテニウムカルバモイル化合物が、従来のルテニウムアミジナート化合物のと類似する気化速度を有することを示す。
【0043】
実施例4
N,N’−ジ−tert−ブチルアセトアミジナト−N,N’−ジ−tert−ブチルアセトアミジナトカルバモイルジカルボニルルテニウム(II)(実施例1からのRu−Cbm−発明)およびビス(N,N’−ジ−tert−ブチルアセトアミジナト)ジカルボニルルテニウム(II)(Ru−AMD−比較)の溶解性が室温で様々な溶媒中で直接溶解法で決定された。固体Ru−AMD−比較化合物はR.ゴードンら、The Open Inorganic Chemistry Journal,2(2008)11に記載された合成径路によって製造された。溶解性データは表1に示される。0.01重量%未満しか溶解しなかった化合物は難溶性であると見なされた。これらのデータは、対応する窒素含有化合物と比較して、本発明のカルバモイル化合物の非常に増大した溶解性を明らかに示す。
【0044】
【表1】

【0045】
実施例5
N,N’−ジ−tert−ブチルホルムアミジナト−N,N’−ジ−tert−ブチルホルムアミジナトカルバモイルジカルボニルルテニウム(II)(Ru(fAMD)−Cbm)は実施例1(C)の手順を用いて、リチウムN,N’−ジ−tert−ブチルホルムアミジナートを使用して合成されると予想される。
【0046】
実施例6
N,N’−ジ−tert−ブチルアセトアミジナトカルバモイルメチルシクロペンタジエニルモノカルボニルルテニウム(II)(Ru(CpMe)−Cbm)は次のように合成されると予想される。リチウムメチルシクロペンタジエニルを含む反応フラスコに、望まれる量の無水THFが添加され、次いで、化学量論量のRuCl(CO)(THF)が添加される。その後、リチウムジ−tert−ブチルアセトアミジナートのTHF溶液が滴下様式で添加される。この反応混合物は、次いで、室温で一晩攪拌される。次いで、全ての溶媒は乾燥まで揮発させられ、反応生成物は無水ヘキサンで抽出される。全てのヘキサン抽出物が一緒にされて、乾燥まで揮発させられて、得られる生成物はヘキサンからの再結晶によってさらに精製されると予想される。
【0047】
実施例7
N,N’−ジ−tert−ブチルホルムアミジナトカルバモイルテトラカルボニルマンガン(I)(Mn−fCbm)は次のように合成されると予想される。リチウムN,N’−ジ−tert−ブチルホルムアミジナートを含む反応フラスコに、望まれる量の無水THFが添加され、次いで、化学量論量のMn(CO)Clが添加される。この反応混合物は、次いで、室温で一晩攪拌される。次いで、全ての溶媒は乾燥まで揮発させられ、次いで、反応生成物は無水ヘキサンで抽出される。全てのヘキサン抽出物が一緒にされて、乾燥まで揮発させられて、得られる生成物はヘキサンからの再結晶によってさらに精製されると予想される。
【0048】
実施例8
N,N’−ジ−tert−ブチルホルムアミジナトカルバモイルメチルシクロペンタジエニルモノカルボニル鉄(II)(Fe(CpMe)−fCbm)は次のように合成されると予想される。好適な量の無水THFに溶解されたメチルシクロペンタジエニルジカルボニル鉄(II)クロリド(CpMeFe(CO)Cl)を含む反応フラスコに、THF中のリチウムジ−tert−ブチルホルムアミジナート1mol当量溶液が滴下様式で室温で添加される。この反応混合物は、次いで、室温で一晩攪拌される。次いで、全ての溶媒は乾燥まで揮発させられ、反応生成物は無水ヘキサンで抽出される。全てのヘキサン抽出物が一緒にされて、溶媒は完全に除去されて、粗生成物を生じさせ、この粗生成物はヘキサンからの再結晶によってさらに精製される。
【0049】
実施例9
以下の表2における組成物は、上述の手順の1以上を用いて製造される。開始物質および手順は表中に提供される。組成物は、本発明のカルボニル含有配位子1種と、必要に応じて、金属価数要求を満たすようにアニオン性配位子を含む。表中において、Cbm−1、Cbm−5およびCbm−6は、それぞれ、実施例1、5および6からのカルボニル含有部分を表す。
【0050】
【表2】

【0051】
上記表における略語は以下の意味を有する:acac=アセトニルアセトナート;bdk=ベータジケトナート;bdki=ベータジケトミナート;EtMeN=エチルメチルアミノ;Et−FAMD=ジエチルホルムアミジナト;s−Bu−AMD=ジ−sec−ブチルアミジナト;t−Bu−AMD=ジ−tert−ブチルアミジナト;t−Bu−FAMD=ジ−tert−ブチルホルムアミジナト;Bz−AMD=ジベンジルアセトアミジナト;i−Pr−AMD(CO)=ジ−イソ−プロピルアセトアミジナトカルバモイル;Bz−AMD(CO)=ジベンジルアセトアミジナトカルバモイル;i−PrN(CO)=ジ−イソ−プロピルアミノカルバモイル;EtMeN(CO)=エチルメチルアミノカルバモイル;BzP(CO)=ジベンジルホスフィドカルバモイル;MeCP=メチルシクロペンタジエニド;MeCp=ペンタメチルシクロペンタジエニド;i−PrCp=イソ−プロピルシクロペンタジエニド;TBP=トリス(tert−ブチル)ホスフィン;およびmmp=メトキシメチルプロポキシド。
【0052】
実施例10
ALDまたはDLIプロセスに使用するのに好適な組成物が、以下の表3に示されるような、本発明のカルボニル含有化合物と1種以上の有機溶媒との組み合わせにより製造される。カルボニル含有化合物は、典型的には、0.1〜0.2Mの濃度で存在する。
【0053】
【表3】

【0054】
実施例11
実施例1からのN,N’−ジ−tert−ブチルアセトアミジナト−N,N’−ジ−tert−ブチルアセトアミジナトカルバモイルジカルボニルルテニウム(II)(Ru(AMD)−Cbm)を用いて、ルテニウム膜を成長させた。Ru(AMD)−Cbm(1g)が、N下で、ASM F−120ALD反応器のソースボートに配置される。ソース温度は140℃に設定される。第2の前駆体としてアンモニアが使用され、ルテニウム膜の原子層堆積に作用する。1次および2次パージガスはNであり、その流速はそれぞれ400および300sccmに設定される。直径10cm(4インチ)のp型シリコンウェハ(Cz、単一面研磨)がALDチャンバー内に配置され、300℃に加熱される。パルスシークエンスは次のように調節される:前駆体/Nパージ 1s/3s、一方、高純度アンモニアソースからのアンモニア流れが堆積中40sccmに維持される。Ru薄膜堆積のために1000サイクルが適用される。
【0055】
1000サイクル後に、滑らかで、非常に均一なRu膜がウェハ上に成長することが予想される。この薄膜は、125nmを超え、よって、約1.25Å/サイクルの最適化されていない薄膜成長速度を提供することが予想される。
【0056】
実施例12
DLIシステムを使用して、溶媒中での実施例1からのルテニウムカルバモイル前駆体の溶液を用いて、ルテニウム膜を成長させた。この溶媒は、不活性窒素ガス雰囲気下で水素化カルシウムからの蒸留によって精製された。ルテニウムカルバモイル前駆体である、N,N’−ジ−tert−ブチルアセトアミジナト−N,N’−ジ−tert−ブチルアセトアミジナトカルバモイルジカルボニルルテニウム(II)の希釈溶液を製造するために、新たに蒸留された溶媒が使用された。好適な溶媒は、THF、トルエン、シクロヘキシルベンゼンとビシクロヘキシルとの(9:1、体積/体積)混合物、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、またはジエチルベンゼンから選択された。1つの実験においては、ルテニウムカルバモイル前駆体の濃度は、シクロヘキシルベンゼンとビシクロヘキシルとの(9:1、体積/体積)混合物中で0.08Mであった。粒子を含まない環境を確実にするために、この溶液はろ過された。この溶液は次いで、その容器からDLIシステムの気化器ユニットに移された。気化温度は100℃〜160℃に設定された。金属ルテニウム膜を堆積させる第2の反応物質として、アンモニアが使用された。いくつかの堆積試験において、第2の試薬として、N中の低濃度のO(0〜30%、体積/体積、好ましくは1〜10%)が使用された。反応器は、ALD、CVD、パルスCVDまたはAVDモードのいずれかにおける堆積を可能にさせた。使用されたキャリアおよびパージングガスはNまたはアルゴンまたはヘリウムであって、その流速はそれぞれ50〜500sccmの範囲であった。直径10cmのp型シリコン(20nmの熱酸化物を有する)が堆積チャンバー内に配置され、250〜325℃の温度範囲に加熱された。その結果、滑らかで、非常に均一で、導電性の金属Ru膜が得られた。
【0057】
実施例13
実施例1のRu(AMD)−Cbmまたは実施例4のRu−AMD−比較化合物のいずれかを使用し、それぞれの場合において、堆積温度が350℃であったことを除いて実施例12の手順を用いて、ルテニウム膜を成長させた。実施例1からのRu(AMD)−Cbmの溶液から成長したRu膜については、固体Ru−AMD−比較を使用したRu膜と比較して、より低いシート抵抗が達成された。このRu膜抵抗は、4点プローブ法を用いて、それぞれ、200μオーム・cmおよび>500μオーム・cmであったことが見いだされた。本発明の化合物から成長したRu膜は、従来のRu有機金属化合物を用いて成長させられたものよりも60%低い抵抗を有すると認められ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸着反応器内に基体を提供し;式[RN(CO)]+m(m−n)/p(式中、RおよびRは独立して、H、(C−C12)アルキル、(C−C12)アルケニル、(C−C12)アルキニル、ジ(C−C12)アルキルアミノ、ジ(シリル(C−C12)アルキル)アミノ、ジシリルアミノ、ジ((C−C12)アルキルシリル)アミノ、(C−C12)アルキルイミニル、(C−C12)アルキルホスフィニル、ジ(C−C12)アルキルアミノ(C−C12)アルキル、ジ(C−C12)アルキルアミノ(C−C12)アルケニル、ジ(C−C12)アルキルアミノ(C−C12)アルキニル、ジ(C−C12)アルキルホスフィノ(C−C12)アルキル、ジ(C−C12)アルキルホスフィノ(C−C12)アルケニル、ジ(C−C12)アルキルホスフィノ(C−C12)アルキニル、(C−C12)アルコキシル(C−C12)アルキル、およびアリールから選択され;X=NまたはP;M=第7族〜第10族金属;L=負の電荷pを有するアニオン性配位子;L=中性配位子;m=Mの価数;n=1〜6;p=1〜2;q=0〜4;並びにm≧nである)の有機金属化合物を気相で反応器に運び;並びに、有機金属化合物を分解させて、基体上に金属含有膜を堆積させる;ことを含む、金属含有膜を堆積させる方法。
【請求項2】
有機金属化合物が、式:
【化1】

[式中、ZはOR、NRおよびPRから選択され、RおよびRのそれぞれは独立して、水素および(C−C12)アルキルから選択される]
を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(C−C12)アルキルイミニルおよび(C−C12)アルキルホスフィニル基が、アミジナート、ホルムアミジナート、ホスホアミジナート、グアニジナート、β−ジケチミナート、二環式アミジナートおよび二環式グアニジナートから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
が、水素化物、ハロゲン化物、アジド、アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボニル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ジ(シリルアルキル)アミノ、ジシリルアミノ、ジ(アルキルシリル)アミノ、ジアルキルアミノアルキル、ヒドラジド、ホスフィド、ニトロシル、ニトロイル、ニトラート、ニトリル、アルコキシ、ジアルキルアミノアルコキシ、アルコキシアルキルジアルキルアミノ、シロキシ、ジケトナート、シクロペンタジエニル、シリル、ピラゾラート、アミジナート、ホルムアミジナート、ホスホアミジナート、グアニジナート、β−ジケトナート、β−ジケチミナート、二環式アミジナート、二環式グアニジナート、並びにNおよびOから選択される少なくとも2つの配位部位を有する二座配位子から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
Mが第8族〜第10族金属から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
MがMn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、PdおよびPtから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
有機金属化合物を気相で反応器に運ぶ工程の前に、有機溶媒中の有機金属化合物を提供する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
(a)反応器内に基体を提供する工程;(b)式[RN(CO)]+m(m−n)/p(式中、RおよびRは独立して、H、(C−C12)アルキル、(C−C12)アルケニル、(C−C12)アルキニル、ジ(C−C12)アルキルアミノ、ジ(シリル(C−C12)アルキル)アミノ、ジシリルアミノ、ジ((C−C12)アルキルシリル)アミノ、(C−C12)アルキルイミニル、(C−C12)アルキルホスフィニル、ジ(C−C12)アルキルアミノ(C−C12)アルキル、ジ(C−C12)アルキルアミノ(C−C12)アルケニル、ジ(C−C12)アルキルアミノ(C−C12)アルキニル、ジ(C−C12)アルキルホスフィノ(C−C12)アルキル、ジ(C−C12)アルキルホスフィノ(C−C12)アルケニル、ジ(C−C12)アルキルホスフィノ(C−C12)アルキニル、(C−C12)アルコキシル(C−C12)アルキル、およびアリールから選択され;X=NまたはP;M=第7族〜第10族金属;L=負の電荷pを有するアニオン性配位子;L=中性配位子;m=Mの価数;n=1〜6;p=1〜2;q=0〜4;並びにm≧nである)の有機金属化合物である第1の前駆体化合物を気体の形態で反応器に運ぶ工程;(c)第1の前駆体化合物を基体の表面上に化学吸着させる工程;(d)化学吸着されていない第1の前駆体化合物を反応器から除去する工程;(e)第2の前駆体を気体の形態で反応器に運ぶ工程;(f)第1および第2の前駆体を反応させて、基体上に金属含有膜を形成し;並びに、未反応の第2の前駆体を除去する工程;を含む、金属含有膜を基体上に堆積させる方法。
【請求項9】
工程(b)の前に、有機溶媒中の有機金属化合物を提供する工程をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
有機溶媒が、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、直鎖アルキルベンゼン、ハロゲン化炭化水素、シリル化炭化水素、アルコール、エーテル、グリム、グリコール、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、スルホン酸、フェノール類、エーテル、アミン、アルキルニトリル、チオエーテル、チオアミン、シアナート、イソシアナート、チオシアナート、シリコーン油、ニトロアルキル、アルキルニトラートおよびこれらの混合物から選択される、請求項9に記載の方法。

【公開番号】特開2011−106026(P2011−106026A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−203859(P2010−203859)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(591016862)ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー. (270)
【Fターム(参考)】