説明

木目認証装置

【課題】 木目をID認証として使用することで認証のための特別な部材の必要性を無くし、また認証装置に近づける等の認証操作を無くす事が可能な木目認証装置を提供する。
【解決手段】 木目で形成される被認証媒体を撮像するカメラ1と、カメラ1の撮像画像から木目の特徴を抽出する画像処理部2と、抽出した木目データを記憶する特徴記憶部3と、特徴記憶部3に記憶されている木目データと新たにカメラ1が撮像して取得した木目データとを比較して、一致すると判断したら認証信号を出力する認証部4とを有し、画像処理部2は画像から木目の少なくとも線データを木目データとして抽出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はID認証技術に係わり、特に天然木の木目をID認証の対象とした木目認証装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のID認証形態としては、認証媒体にバーコードを貼着したり、RFIDタグを装着或いは携行させてIDを管理するものがあった。例えば、特許文献1では、RFIDタグを看護師等に携行させる一方、病室の入り口にID受信装置を設け、解錠操作することなく病室の電気錠を解錠させることでセキュリティの向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−245787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の構成の場合、RFIDタグは多くの情報を記憶できるためID認証には好適であるが、RFIDタグはバーコードに比べて高価であるし認証装置に近づける操作が必要であり操作が面倒であった。また、バーコードを使用する形態は、認証媒体にはバーコードを設けるための一定のスペースが必要であり、媒体自体が小さい場合はデザイン上の制約が発生した。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、2つとして同一のものがない天然木に着目し、木目をID認証に使用することで認証のための特別な部材の必要性を無くし、また認証装置に近づける等の認証操作を無くす事が可能な木目認証装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明に係る木目認証装置は、木目で形成される被認証媒体を撮像するためのカメラと、カメラの撮像画像から木目の特徴を抽出する特徴抽出部と、抽出した木目データを記憶する特徴記憶部と、特徴記憶部に記憶されている木目データと新たにカメラが撮像して取得した木目データとを比較して、一致すると判断したら認証信号を出力する認証部とを有し、特徴抽出部は、画像から木目模様を構成する線情報を木目データとして抽出することを特徴とする。
この構成によれば、天然木の木目模様をIDとして利用するため、普段持ち歩いている天然木製品の年輪模様を使用してID認証することが可能となり、別途RFIDカードやバーコードシール等を用いる必要がなくなる。また、撮像できれば良く認証装置に近づける等の認証操作を必要としない。更に、複数の木目が同時に撮像された場合は、複数の木目を同時に認証することも可能であり、利便性が良い。
そして、自然の素材を利用して認証するため、認証媒体を安らぎを与えるデザインにできる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、特徴記憶部に木目データを登録する際に、タイムスタンプによりデータの有効期限を設定する期限設定部を有し、期限設定部は、登録してからタイムスタンプで設定された期間が経過したら、登録している木目データを消去することを特徴とする。
この構成によれば、登録データに有効期限を設けることで再登録作業が必要となるが、天然木の傷等による経時変化に対してエラーの発生を最小限に止めることができる。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の構成において、認証部は、傷の発生による木目データの差分を認証時に認識し、差分が発生したら特徴記憶部に記憶されている木目データを差分を有するデータにより更新することを特徴とする。
この構成によれば、傷を認識することでエラーとならないし、傷自体を木目データの一部とするため、精度の高い認証が継続できる。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3に記載の構成において、更新された木目データは、期限設定部により新たな有効期限が設定されることを特徴とする。
この構成によれば、データが更新されたら期限も更新されるため、再登録作業を減らすことができる。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1乃至4に記載の構成において、特徴抽出部は木目の色を抽出して線データと合わせて木目データとし、認証部は色と線の双方で判断することを特徴とする。
この構成によれば、線に加えて色も認証情報の一部として使用することで、高精度の認証ができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、天然木の木目模様をIDとして利用するため、普段持ち歩いている天然木製品の年輪模様を使用してID認証することが可能となり、別途RFIDカードやバーコードシール等を用いる必要がなくなる。また、カメラの撮像映像から認証されるため、撮像できれば良く認証装置に近づける等の認証操作を必要としない。更に、複数の木目が同時に撮像された場合は、複数の木目を同時に認証することも可能であり、利便性が良い。
そして、自然の素材を利用して認証するため、認証媒体を安らぎを与えるデザインにできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る木目認証装置の一例を示すブロック図である。
【図2】認証の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明に係る木目認証装置のブロック図を示し、木目を撮像するためのカメラ1、カメラ1が撮像した画像から木目の特徴を抽出する画像処理部2、ID認証のための登録データを記憶する特徴記憶部3、特徴記憶部3に記憶されている画像と新たに取得した画像とを比較し一致するかどうか判定する認証部4、各種操作を行う操作部5、認証結果を報知する報知部6、図示しない外部機器と通信する為の通信部7、認証履歴を記憶する履歴記憶部8等を備えている。
【0014】
カメラ1は、撮像した画像を例えば256階調のカラーデジタル映像信号で出力する。
【0015】
画像処理部2はカメラ1が撮像した画像から木目を認識したら、認識した木目情報を抽出する。画像処理部2には、予め木目独特の線及び色の特徴が記憶されており、この特徴画像に近い画像が撮像画像内に存在したら、木目が撮像されていると判断する。
抽出された木目は、画像処理部2において拡大或いは縮小して一定のサイズにして出力される。こうして木目サイズを統一して出力することで、撮像した対象の撮像距離の違いによる大きさの変化が補正される。
木目情報は、線データと色データとで構成され、線データは例えば特開2006−277315の技術を使用して抽出できる。また、色データは、例えば木目全体を平均化した色がデータ化される。
【0016】
特徴記憶部3には、木目を認証するために登録された木目の線データ及び色データが蓄積される。
【0017】
認証部4は、画像処理部2が抽出した木目の線データ及び色データの登録及び認証を実施する。登録モード状態で読み取った木目データが登録され、認証モード状態において読み取った木目データと登録されているデータとが比較され、一致するデータがあるかどうか判定される。こうして、一致するデータがあれば認証信号を出力する。
【0018】
報知部6は、認証結果を音で報知するためのスピーカ、点滅で通知するLEDを備えている。
【0019】
このように構成された木目認証装置について、以下、動作を説明する。先ず登録操作の流れを説明する。操作部5の所定の操作により登録モード状態となり、登録が可能となる。この状態でカメラ1が登録対象の木目を撮像すると、撮像した映像が画像処理部2に送られ、画像処理が実施される。
【0020】
画像処理部2では、木目の存在を認識すると木目を抽出し、抽出した木目の画像サイズを所定の大きさに調整して線データと色データを生成する。
生成したデータは、認証部4の制御で特徴記憶部3に記憶される。このとき、木目を管理するためのID番号が設定されて自動添付されると共に、後述する期限データ(タイムスタンプデータ)が合わせて添付される。この期限データにより木目データの有効時期が設定される。
【0021】
また、操作部5から木目データを識別するための名称等の入力が行われたら、この情報も合わせて登録される。登録の完了は報知部6及び通信部7に出力され、光や音又は通信にて登録されたことが通知される。
【0022】
尚、登録に際して認証部4にて特徴記憶部3に既に記憶されているデータとの比較処理が行われ、この比較で同じデータがある場合は登録が拒否されてカメラ撮像画像から抽出した木目データは破棄される。
【0023】
次に認証の流れを説明する。操作部5の所定の操作により認証モードに移行することで認証が開始される。図2はこの認証処理の流れを示すフローチャートであり、このフローに基づいて説明する。
カメラ1が撮像(S1)した映像が画像処理部2に伝送され、画像処理が行われる(S2)。まず画像処理部2は、木目が撮像されていることを認識し、木目を認識すると所定のサイズになるよう木目エリアを拡大或いは縮小し、線データと色データに分離生成する。
【0024】
こうして生成した木目データは、認証部4において登録されているデータと比較される。最初に線データと特徴記憶部3に登録されている線データとの比較処理が行われ(S3)、同一のデータがあれば、次に生成した色データと登録されている色データとの比較処理が行われる(S5)。このとき、データは上下方向が不明であるため180度の回転等が行われて比較が実施される。
そして、線データに同一のデータが無ければ、撮像データから抽出した木目データは破棄され(S4)、認証処理は終了となる。また、色データの認証において、一致した線データに関連付けられている色データに一致しなければ、木目データは破棄され(S6)て、認証処理は終了となる。
【0025】
線データに加えて色データも一致したら、木目データは登録されたデータと一致していると認識し、認証部4は認証信号を出力する。また、認証したデータのID番号と認証時刻を履歴記憶部に記録(S7)する。
【0026】
認証信号を受けた報知部6は、音又は光により認証したことを報知する(S8)。また、通信部7から外部へ認証信号が出力される。この信号を受けて、例えば電気錠の解錠等が行われる。
【0027】
但し、上述したように、登録した木目データはタイムスタンプが押下されており、タイムスタンプにより設定された所定の期間が経過したら消去される。これは、天然木は傷の発生により模様に変化が生じるし、経年変化により色も変化するために登録時のデータが永久に使用できないことによる。そのため、記憶されているデータは認証部4が管理し、例えば1ヶ月のタイムスタンプが押下されると、登録されてから1ヶ月が経過すると自動的に消去され、報知部6において音や光で更新のお知らせが行われる。
【0028】
このように、天然木の木目模様をIDとして利用するため、普段持ち歩いている天然木製品の年輪模様を使用してID認証することが可能となり、別途RFIDカードやバーコードシール等を用いる必要がなくなる。また、木目の存在を画像処理部2が把握するため、認証装置に近づける等の認証操作を必要としない。更に、複数の木目が同時に撮像された場合は、複数の木目を同時に認証することも可能であり、利便性が良い。
そして、自然の素材を利用して認証するため、認証媒体を安らぎを与えるデザインにできる
また、登録データに有効期限を設けることで再登録作業が必要となるが、天然木の傷等による経時変化に対してエラーの発生を最小限に止めることができるし、模様に加えて色も認証情報の一部として使用することで、高精度の認証ができる。
【0029】
ここで、認証対象の木目に傷が発生した場合を説明する。画像処理部2において抽出された線データは、木目に傷がある場合は傷もデータ化されて一体に生成される。そのため、認証部4が認証する際にデータが登録されている場合は一致すると判定するが、同時に傷発生による差分も認識される。
認証部4は、この差分の発生を認識したら、差分を含む最新のデータで登録データを更新する。同時にタイムスタンプの時間もリセットされて更新される。
尚、このデータの更新は、必ずしも実施する必要はなく、タイムスタンプによるデータの有効期限が例えば1ヶ月程度であれば、このタイミングでの通常の登録操作で更新しても良い。
【0030】
このように、傷による差分を認識することでエラーとならないし、傷自体を木目データの一部とするため、精度の高い認証が継続できる。また、データが更新されたら期限も更新されるため、再登録作業を減らすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
このような木目認証装置は、無線ナースコール親機を具備するナースコールシステムにて好適に使用できる。例えば、看護師が携行する無線ナースコール親機のケースを天然木製とし、個々の病室毎にID認証するためのカメラを設置して認証をおこなうことができる。こうして看護師が携行する無線ナースコール親機をカメラが撮像するだけで、看護師を認証して関連付けられている患者の情報を病室前に設置された廊下灯に表示させることができ、担当看護師は患者情報の詳細を容易に把握できる。
また、ナースステーションに設置される上記無線ナースコール親機の充電台を撮像するようカメラを設置することで、充電台にセットされる無線ナースコール親機を同時に複数認証する事が可能となり、充電状況と利用状況をモニターする事ができ、無線ナースコール親機の管理がし易くなる。
【0032】
更に、インターホン機器に対しても上記木目認証装置は好適である。玄関に設置されるドアホンや、集合住宅のエントランスに設置される集合玄関機において上記木目認証装置を適用すると、居住者のキーホルダーや携帯電話に天然木を利用すれば、居住者個人を特定することができる。その結果、住宅の電気錠の解錠や集合住宅エントランスのオートドアの解錠等を実施できる。
【0033】
尚、上記実施形態では、線データと色データの双方一致した場合に認証しているが、線データのみ使用して認証しても良い。色データは認証対象の個々の木材において同一の種類の木材を同じように加工した場合、差異は殆ど発生しないが、線データである木目模様は個々に差異が発生するため、線データのみでも良好に認証することができる。
【符号の説明】
【0034】
1・・カメラ、2・・画像処理部(特徴抽出部)、3・・特徴記憶部、4・・認証部、6・・報知部、7・・通信部、8・・履歴記憶部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木目で形成される被認証媒体を撮像するためのカメラと、
前記カメラの撮像画像から木目の特徴を抽出する特徴抽出部と、
抽出した木目データを記憶する特徴記憶部と、
前記特徴記憶部に記憶されている木目データと新たにカメラが撮像して取得した木目データとを比較して、一致すると判断したら認証信号を出力する認証部とを有し、
前記特徴抽出部は、画像から木目模様を構成する線情報を木目データとして抽出することを特徴とする木目認証装置。
【請求項2】
前記特徴記憶部に木目データを登録する際に、タイムスタンプによりデータの有効期限を設定する期限設定部を有し、
前記期限設定部は、登録してからタイムスタンプで設定された期間が経過したら、登録している木目データを消去することを特徴とする請求項1記載の木目認証装置。
【請求項3】
前記認証部は、傷の発生による木目データの差分を認証時に認識し、
差分が発生したら前記特徴記憶部に記憶されている木目データを前記差分を有するデータにより更新することを特徴とする請求項1又は2記載の木目認証装置。
【請求項4】
前記更新された木目データは、前記期限設定部により新たな有効期限が設定されることを特徴とする請求項3記載の木目認証装置。
【請求項5】
前記特徴抽出部は、木目の色を抽出して線データと合わせて木目データとし、
前記認証部は、色と線の双方で判断することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の木目認証装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−97542(P2013−97542A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239259(P2011−239259)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000100908)アイホン株式会社 (777)
【Fターム(参考)】