説明

木製漁礁

【課題】間伐材を利用し、かつ継続利用性を与えて漁礁の集魚効果を長期間発揮できるようにし、漁労用具であるカゴや網の引き上げを妨げることのない木製漁礁を提供する。
【解決手段】木材パネルからなる横桟1a,2aで、それぞれ4辺を構成した上枠体1および下枠体2と、木材パネルからなる4本の支柱3で上枠体1と下枠体2を結合して立方体に組付けた漁礁本体と、漁礁本体の内部空間に着脱自在に配置された間伐材を用いた交換用漁礁材10からなる。漁礁本体が木材を主材とするので、集魚効果が高い。また交換用漁礁材10を間伐材からなる木質であるので、やはり集魚効果が高くなる。しかも間伐材からなる交換用漁礁材10は交換できるので、数年毎に交換することにより集魚効果を長く維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木製漁礁に関する。さらに詳しくは、間伐材を利用しており、長期間集魚効果が持続する木製漁礁に関する。
【背景技術】
【0002】
現在使用されている多くの漁礁は、主要枠材にコンクリートや鋼製のものを使用し、その枠材に間伐材丸木を取付けたものがほとんどである。しかし、その丸木は3〜5年程度で朽ちて消滅する。そして、丸木を取り換えないため、その後のコンクリートや鋼製の枠のみでは、海藻や貝類の定着が、あまり期待できないため、漁礁としての集魚効果が持続できていない。集魚効果は漁礁の設置から5年位経つと高くなってくるが、ちょうどこの時期に集魚効果の高い丸木が朽ちてしまうので、設置した漁礁が無駄になってしまう。しかし、改めて新たな漁礁を設置するのも費用がかかる。
【0003】
一方、山林保護のため間伐の実施と、間伐材の有効利用が要望されている。しかるに漁礁への間伐材の利用は、多くが、丸木を枠材に取付けることに留まっているので、間伐材の充分な活用は行われていない。
【0004】
ところで、従来の漁礁は、大きいものから小さいものまであり、しかも形状は様々であって、結構角張っているものが多い。漁礁に角や突起があると、漁に使うカゴや魚網等が引っ掛かり、上ってこなくなる。
皮肉なことであるが、漁業のための漁礁が漁業を妨げている面があり、この点は何としても解決しなければならない問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−29267号公報
【特許文献2】特開2007−185103号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】魚礁への間伐材利用の手引き 平成18年3月 水産庁漁港漁場整備部
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、間伐材を利用し、かつ継続利用性を与えて漁礁の集魚効果を長期間発揮できるようにし、漁労用具であるカゴや網の引き上げを妨げることのない木製漁礁を提供することを目的とする。
なお、本発明は間伐材の利用を促進して森林を保護涵養することと、汎用の技術を使って製造でき地場産業の活性化にもつなげるという社会経済的な目的を有するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明の木製漁礁は、木材パネルからなる横桟で、それぞれ4辺を構成した上枠体および下枠体と、木材パネルからなる4本の支柱で前記上枠体と前記下枠体を結合して立方体に組付けた漁礁本体と、該漁礁本体の内部空間に着脱自在に配置された間伐材を用いた交換用漁礁材からなることを特徴とする。
第2発明の木製漁礁は、第1発明において、前記交換用集魚材は、金属棒に中空にくり抜いた間伐材を通したものであり、前記金属棒の端部には、前記漁礁本体の係止材に着脱自在に引っ掛けることができる係止部を形成していることを特徴とする。
第3発明の木製漁礁は、第1発明において、前記横桟および前記支柱が、いずれも中心に金属棒を有し、該金属棒の周囲に木材パネルを配置して、金属製のバンドで固定したものであることを特徴とする。
第4発明の木製漁礁は、第1発明において、前記漁礁本体の少なくとも上面側の四隅が、丸みを帯びた形に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
第1発明によれば、漁礁本体が木材を主材とするので、集魚効果が高い。また交換用漁礁材を間伐材からなる木質であるので、やはり集魚効果が高くなる。しかも間伐材は交換できるので、数年毎に新しいものと交換することにより集魚効果を長く維持することができる。
第2発明によれば、交換用漁礁材の金属棒は端部に係止部を有しており、これが漁礁本体側の係止材に自在に着脱できるので、数年おきに実施すべき新しい交換用漁礁材との交換が容易に行える。
第3発明によれば、横桟と支柱が内部に金属棒を有し、比重を大きくしているので、海中に沈置させることが可能である。また、金属棒の周囲の木材パネルは一般的な加工設備で製造できるので、安価に漁礁を製造することができる。
第4発明によれば、漁礁本体の上面の四隅が丸くなっているので、漁労用具であるカゴや魚網等を海中に入れても、それを引き上げるときに引っ掛かることがない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る木製漁礁Aの斜視図である。
【図2】図1の木製漁礁Aの上面図である。
【図3】図1の木製漁礁Aの正面図である。
【図4】図1の木製漁礁Aの側面図である。
【図5】横桟1a,2aと支柱3の縦断面図である。
【図6】図3のVI−VI線矢視縦断面図である。
【図7】(A)は一対の支柱3の拡大断面図、(B)はバンド6と横棒9の拡大斜視図、(C)は交換用漁礁材10の拡大断面図である。
【図8】交換用漁礁材10の補充要領説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明に係る木製漁礁Aの基本構成を図1〜図4に基づいて説明する。
木製漁礁Aは、中空の箱型形状をしている。具体的には四角形に組んだ上枠体1と下枠体2を4本の支柱3で互いに結合した枠組み構造である。
【0012】
上枠体1は4本の横桟1aで構成されており、各横桟1aは木材パネルを主材とするものである。
下枠体2は4本の横桟2aで構成されており、各横桟2aは木材パネルを主材とするものである。
4本の支柱3も木材パネルを主材とするものである。
【0013】
上枠体1を構成する横桟1a同士と支柱3の上部はコーナー部材4で、互いに結合されている。コーナー部材4は一般構造用圧延鋼材または鋳鍛造製等の金属である。
コーナー部材4の角部は、丸みを帯びた形に成形されている。この丸みによって、漁労用具であるカゴや魚網等が引っ掛かることを防止できる。
【0014】
下枠体2を横桟2a同士と支柱3の下部は、コーナー部材5で、互いに結合されている。コーナー部材5は一般構造用圧延鋼材または鋳鍛造製等の金属である。コーナー部材5の角部は、角張ったままで丸みを付ける必要はない。
【0015】
つぎに、横桟1a,2aと支柱3の詳細構造を、図5に基づき説明する。
横桟1a,2aと支柱3は、いずれも木材パネルを主材としている。木材パネルとしては、とくに制限なく様々なものが利用できるが、つぎのものが好ましい。
イ)針葉樹間伐材を薄い単板に切削し、複数の板を繊維方向を交互に接着剤で貼り合せた1枚の合板にしたもの。
ロ)木材チップを熱圧縮成形して1枚のボードにし、これを複数枚積層したもの。
【0016】
上記イ)、ロ)は、更にフナクイムシ防除処理をし、構造材に使える強度をもったものが好ましい。
構造用パネルによるための積層状態は接着剤により固定するが、なお金属製のバンド6で固定すると、海中での耐用年数が高まるので好ましい。また、接着効果が弱まった場合に、木材パネルの浮き上がりを防止することができる。
木材パネル用の針葉樹間伐材合板には、建築資材に必要とされる、大きな強度や色合いを求める必要がない。
上記のような木材パネルは、木材の種類を選ばず、今まで山に捨てられていた間伐C材(小径木、曲り材、枝等)や流木、端材、建設廃材等を利用できるので、間伐材の利用を促進できる。また、日本海や沖縄等で問題となっている、流木等の有効活用が図れる。
【0017】
横桟1a,2aと支柱3の中心には断面四角形の金属棒1b、2b、3bを入れている。金属は、一般構造用圧延鋼材等の角鋼が好ましい。金属棒1b、2b、3bを用いるのは、横桟1a,2aと支柱3の剛性を高めると共に漁礁全体としての比重を大きくして、海中に自沈させるためである。
【0018】
横桟1a,2aと支柱3のコーナー部材4,5への結合は、コーナー部材4,5に形成した穴に、各金属棒1b、2b、3bの端部を嵌入させることと、ボルト7による結合が併用される。ボルト7は、上のコーナー部材4に対しては、横から貫通孔を通して挿入し、金属棒3bの上端の孔を貫通させ、コーナー部材4と金属棒3bを、ねじ結合している。
また、下のコーナー部材5に対しては、横から貫通孔を通して挿入し、金属棒3bの下端の孔を貫通させ、コーナー部材5と金属棒3bを、ねじ結合している。このようにして、横桟1a,2aと支柱3はコーナー部材4,5に対し、ボルト7によって強固に結合される。
【0019】
上述した基本構造により、木製漁礁の内部構造は大きな空間となっており、この内部空間に間伐材製の交換用漁礁材10が着脱自在に配置されるようになっている。
すなわち、図6に示すように、隣接する支柱3,3の間に係止材としての横棒9が取付けられている。そして、2本の平行な横棒9,9の間に、交換用漁礁材10が渡し掛けられている。
また、本実施形態では、交換用漁礁材10は2段に設けられており、その渡し掛け方向は、図3および図4に示すように、互いに直交した向きとなっている。また、交換用漁礁材10は3段以上を設置してもよい。
【0020】
交換用漁礁材10の取付け手段を、図7に基づき説明する。
同図(A)および(B)に示すように、支柱3,3に固定したバンド6にはブラケット8,8が固定されており、2個のブラケット8,8に横棒9が挿入されている。横棒9の両端部は、ブラケット8,8に溶接その他の手段で固定するとよい。
【0021】
交換用漁礁材10は、1本の金属棒11に中空にくり抜いた間伐材丸木13を通したものである。金属棒11は、その両端を湾曲させて係止部12としている。1本の金属棒11には、1本〜数本の間伐材丸木13が通される。図示は2本の例である。
間伐材丸木13は、間伐材のうち、丸木に加工できる大きさのものを選んで用いられる。
【0022】
図7に示すように、交換用漁礁材10の金属棒11の両端は曲げられて係止部12となっているので、横棒9に任意に着脱して交換用漁礁材10を追加したり交換したりすることができる。つまり、構造が簡単で掛け替え作業も容易なので、海中に潜水夫が潜ることにより、交換用漁礁材10の交換が容易に行える。
【0023】
図8は交換用漁礁材10の交換要領を示している。
(A)図において、10aは最初に取付けた交換用漁礁材10aの5本を示している。
通常5年位経過すると、交換用漁礁材10aが朽ちてきて、その状態が(B)図である。このとき、新しい交換用漁礁材10bを補充する。
さらに5年位経過すると、先の交換用漁礁材10bが朽ちてくるので、(C)図に示すように新しい交換用漁礁材10cを補充する。このように、補充交換を繰り返すことで、木製漁礁を継続的に使用し続けることができる。
【0024】
上記の補充交換は一例であって、これに限るものではない。一度に交換するのではなく、崩れたものにつき、その都度交換してもよい。また、古いものを取り除かず、新しいものを補充するだけでもよい。
【0025】
前記実施形態では、下枠体2を構成する4本の横桟2aの間は空洞のままであるが、4本の横桟2aの間に金属棒を渡し掛けたうえで金網を取付け、その金網の上に底質改良材となる割栗石等を置いてもよい。
このようにすると、本発明の木製漁礁の底も集魚効果を発揮することができる。
【0026】
既述のごとく、従来の一般的な漁礁は、コンクリートや鋼製であり、設備のある工場等で製作する必要があり、特定の企業しか製作できない。
しかし、本発明の漁礁の部材は、全て一般市場で調達出来るため、簡易なクレーンがあり、溶接技術があり、適当な広さの製造場所があれば、鉄工所、製材所、建設業者等で製作組立ができる。このため、地場産業の活性化に貢献することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 上枠体
2 下枠体
3 支柱
4,5 コーナー部材
9 横棒
10 交換用漁礁材
13 間伐材丸木

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材パネルからなる横桟で、それぞれ4辺を構成した上枠体および下枠体と、木材パネルからなる4本の支柱で前記上枠体と前記下枠体を結合して立方体に組付けた漁礁本体と、
該漁礁本体の内部空間に着脱自在に配置された間伐材を用いた交換用漁礁材からなる
ことを特徴とする木製漁礁。
【請求項2】
前記交換用集魚材は、金属棒に中空にくり抜いた間伐材を通したものであり、
前記金属棒の端部には、前記漁礁本体の係止材に着脱自在に引っ掛けることができる係止部を形成している
ことを特徴とする請求項1記載の木製漁礁。
【請求項3】
前記横桟および前記支柱が、いずれも中心に金属棒を有し、該金属棒の周囲に木材パネルを配置して、金属製のバンドで固定したものである
ことを特徴とする請求項1記載の木製漁礁。
【請求項4】
前記漁礁本体の少なくとも上面側の四隅が、丸みを帯びた形に形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の木製漁礁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−229519(P2011−229519A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205135(P2010−205135)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【特許番号】特許第4794683号(P4794683)
【特許公報発行日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(510098009)
【Fターム(参考)】