説明

木質感を備えた合成ゴム製まな板

【課題】 硬質合成樹脂製まな板や合成ゴム製まな板が有する欠点を解消し、乾燥性、衛生性、調理作業性、取り扱い性、研磨加工性などに加え、傷の修復性能を備えた、新規な合成ゴム製まな板を提供する。
【解決手段】 NBR:50〜70重量%、SBR:50〜30重量%の割合で混合した合成ゴム主材100重量部に対して、木粉:10〜50重量部、粉末セルロース:20〜50重量部、ゴム補強剤としてのホワイトカーボン:10〜40重量部、ゴム臭吸収剤としてのゼオライト:5〜30重量部、粘着付与剤:1〜10重量部、加硫剤:1〜3重量部、加硫助剤:1〜5重量部、分散剤:1〜10重量部、加工助剤:1〜5重量部、の割合で混合した合成ゴム材料を用いて、加硫成形法によりまな板形状に成型加工して、木質感を備えた合成ゴム製まな板を得た。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として業務用に用いる調理用まな板に関し、詳しくは、NBRとSBRを混合した合成ゴムを主材としながら、木製まな板の質感を有する合成ゴム製のまな板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、乾燥性、衛生性などの点で木製まな板より優れるなどの理由から、ポリエチレン樹脂、ABS樹脂などの硬質合成樹脂や合成ゴムなどからなる合成樹脂製のまな板が用いられるようになっている(例えば特許文献1、2など参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平6−237870号公報
【特許文献2】特開平7−246168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の硬質合成樹脂製まな板は、表面が滑り易い、硬すぎるなどの理由から、包丁とのなじみが悪く、調理がしにくいという問題がある。また、包丁の刃先などが鋭利に深く入り易いので傷付き易く、一旦傷付くと傷口が戻らないばかりか、繰り返しの使用により表面傷部が微細化して割れ易く、その破片が脱落する虞れがあった。
また、合成ゴム製まな板は、表面が軟らかいため、包丁による傷や凹みができ易いばかりか、長期の使用によって表面の平滑度が落ちた際に、各種研削機、研磨機等で研削、研磨して再生することが困難であり、しかも、ゴム臭を発生するので、食品にゴム臭が転移する虞れがあり、業務用としての使用が難しいという問題があった。
【0005】
本発明はこのような従来事情に鑑みてなされたもので、硬質合成樹脂製のまな板や合成ゴム製まな板が有する前述した欠点を解消し、乾燥性、衛生性、調理作業性、取り扱い性、耐久性、研磨加工性などに優れた、新規な合成ゴム製まな板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の目的を達成するために本発明は、NBRとSBRを所定割合で混合した合成ゴム主材100重量部に対して、少なくとも20〜50重量部の粉末セルロースを混合した合成ゴム材料からなる木質感を備えた合成ゴム製まな板であることを特徴とする。
【0007】
まな板表面が適度な硬さであって調理作業性、取り扱い性、耐久性などに優れると共に各種研削機、研磨機等での研削、研磨が可能であり、且つ、包丁等による傷の復元力(弾性復元力)を持たせるために、前記合成ゴム主材におけるNBRの割合を50〜70重量%、SBRの割合を50〜30重量%とすることが好ましい。
【0008】
また、前記した適度な硬さ、研磨加工性、弾性復元力などに加えて、木質感を有し、ゴム臭を発生しないまな板とするために、前記の配合に加えて、10〜50重量部の木粉をさらに混合した合成ゴム材料を用いることが好ましい。
本発明において粉末セルロースとは、セルロースを素材とした粉末繊維素(セルロースパウダー)であって、短繊維状のもの(粒度400メッシュ程度)から微粉状のもの(粒度40メッシュ程度)までを含むが、主として、100メッシュ程度の微粉状のものを用いることが好ましい。より詳しくは、精選パルプを酸加水分解し、これをろ過・水洗し、脱水・乾燥した後に、粉砕・篩別して製造された粉末セルロース、例えば、日本製紙ケミカル社製の粉末セルロース「KCフロック」などを用いることができる。
また、本発明において木粉とは、赤松、米松、つげ、その他の天然木や、建材などの廃材木を素材とし、これを微粉砕して粉状としたものであり、例えば、常陸化工社製の木粉「#200」などを用いることができる。
【0009】
前記した適度な硬さ、研磨加工性、弾性復元力、木質感の発現、ゴム臭の発生防止などの機能をより効果的に発現するために、前記合成ゴム材料が、前記合成ゴム主材100重量部に対して、ゴム補強剤としてのホワイトカーボン:10〜40重量部と、ゴム臭吸収剤としてのゼオライト:10〜40重量部、をさらに含むことが好ましい。
【0010】
本発明における合成ゴム材料の具体的配合として、前記合成ゴム主材100重量部に対して、粘着付与剤:1〜10重量部、加硫剤:1〜3重量部、加硫助剤:1〜5重量部、分散剤:1〜10重量部、加工助剤:1〜5重量部、をさらに含む配合をあげることができる。
これら配合物は、ゴム製品の加硫成形に用いる公知のものを用いることができるが、粘着付与剤としては例えば芳香族石油樹脂を、加硫助剤としては例えば活性亜鉛華を、分散剤としては例えばステアリン酸を、加工助剤としては例えば脂肪酸エステル系加工助剤を、加硫剤としては例えばコロイド硫黄を、夫々用いることが好ましい。
さらに、加硫促進剤、顔料、抗菌剤や、その他、合成ゴム製品に通常含有される添加剤を、必要に応じて所望量含有することもできる。
【0011】
ところで、調理作業を行う際、まな板にある程度の重さがないと、調理の際にまな板が動いてしまうなどの理由から調理がしにくくなる。また、重すぎると取り扱い性に劣るなどの虞れがある。この点を考慮すると、まな板としての適正比重は1.20〜1.30の範囲内である。
【0012】
本発明に係る合成ゴム製まな板は、NBR:50〜70重量%、SBR:50〜30重量%の割合で混合した合成ゴム主材100重量部に対して、木粉:10〜50重量部、粉末セルロース:20〜50重量部、ゴム補強剤としてのホワイトカーボン:10〜40重量部、ゴム臭吸収剤としてのゼオライト:5〜30重量部、粘着付与剤:1〜10重量部、加硫剤:1〜3重量部、加硫助剤:1〜5重量部、分散剤:1〜10重量部、加工助剤:1〜5重量部、の割合で混合した合成ゴム材料を用い、これを加硫成形によりまな板形状に成型加工することで、容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るまな板は以上説明したように、前述した配合の合成ゴム材料を用いてなるので、まな板として好適な適度な硬さと弾性復元力を兼ね備えており、その弾性復元力により傷を復元修正する作用が働き、調理の際に包丁などで表面が傷ついたり凹みが生じたとしても、その傷や凹みなどを浅く小さくすることができる。また、傷が多数付いた後でも、カンナ等で表面を研磨することにより、表面平滑性、衛生性を保持でき、長期にわたり使用することができる。よって、傷や凹みに細菌が繁殖するという木製まな板や従来の合成ゴム製まな板の欠点を解消し、衛生性に優れたまな板として提供することができる。
また、表面が滑り易い、硬すぎるといった従来の硬質合成樹脂製まな板の欠点を解消して、包丁とのなじみが良く、調理がしやすいまな板として提供することができる。
また、合成ゴム特有のゴム臭の発生を防止して、調理素材にゴム臭が転移する虞れを無くすことができる。
したがって、合成ゴムを主成分としながら、木製まな板と同様な木質感を醸し出し、且つ、従来の木製まな板、硬質合成樹脂製まな板、合成ゴム製まな板の有する各種欠点を解消した、多くの効果を有する合成ゴム製まな板として、家庭用としては勿論のこと、業務用としても好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係るまな板の実施形態の一例を示す。
(実施例)
まず、NBR:60重量%、SBR:40重量%の配合割合の合成ゴム主材100重量部に対し、粉末セルロース(日本製紙社製の「KCフロックW−100(粒度100メッシュ程度)」):40重量部、木粉(常陸化工社製の木粉「#200」):20重量部、補強剤(ホワイトカーボン):20重量部、ゴム臭吸収剤(ゼオライト):10重量部、粘着付与剤(芳香族炭化水素樹脂):5重量部、加硫剤(コロイド硫黄):2重量部、加硫促進剤(MBTS+ZnEPDC):2.3重量部、加硫助剤(活性亜鉛華):3重量部、分散剤(ステアリン酸):1重量部、加工助剤(脂肪酸エステル系加工助剤):3重量部、の割合で混合した配合物を、練りロールで攪拌混練して合成ゴム材料を作成した。
そして、この合成ゴム材料を用いてまな板形状に成型加工して、本発明の実施例としての、比重1.26である、木質感を備えた合成ゴム製まな板を得た。この合成ゴム製まな板は幅210mm、長さ297mm、厚さ20mmの試料とした。
【0015】
(比較例1)
実施例における前述の合成ゴム材料において、合成ゴム主材の配合割合をNBR:45重量%、SBR:55重量%とし、それ以外は前記実施例と同様にして、合成ゴム製まな板を得た。この合成ゴム製まな板は実施例と同サイズの試料とした。
【0016】
(比較例2)
実施例における前述の合成ゴム材料において、合成ゴム主材の配合割合をNBR:45重量%、SBR:55重量%とすると共に、粉末セルロースを含有せずに木粉の配合量を60重量部とし、それ以外は前記実施例と同様にして、合成ゴム製まな板を得た。この合成ゴム製まな板も実施例と同サイズの試料とした。
【0017】
これら実施例と各比較例を用いて、以下の測定試験を行った。
(硬さ測定)
ショアA硬度測定器を用いてショアA硬度を測定したところ、実施例:97、比較例1:98、比較例2:98で、概ね同様の結果が得られた。
但し、アスカ社の高硬度測定器を用いてASTM.D.2240に準拠した高硬度測定(ショアD硬度と称する)を行ったところ、実施例:60、比較例1:67、比較例2:62と、配合による差が見られた。調理作業を行う際にある程度の硬さがないと包丁とのなじみが悪い、包丁の滑りが悪いなどの理由から調理がしにくくなる。一方、硬すぎても傷が付きやすく、弾性復元力が低下して傷の修復機能が落ちると共に、まな板自体が滑り易い上、調理素材も滑り易くなり、切れ味が低下し調理がし難くなる。この点を考慮すると、まな板としての適正ショアD硬度範囲は概ね58〜62であることが好ましく、その範囲内にある実施例及び比較例2は問題ないが、その範囲を外れる比較例1は硬すぎて使用に不向きであることが確認できた。
【0018】
(耐傷性)
カッターナイフに200gの定荷重をかけて各試料の表面に傷を入れ、直後の傷の幅を拡大鏡で測定した。同様の試験を数回行い、平均値を算出したところ、実施例1では平均値幅0.01mmであるのに対し、各比較例では、平均値0.02mmであった。これにより、実施例が、各比較例の半分の傷幅で最も傷が入り難く、使用に適していることが確認できた。
【0019】
以上、本発明の合成ゴム製まな板の実施形態の一例について説明したが、本発明に係る木質感を有する合成ゴム製まな板は上記の例に限定されず、各請求項記載の技術的思想の範疇において種々の変更が可能であることは言うまでもない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
NBRとSBRを所定割合で混合した合成ゴム主材100重量部に対して、少なくとも20〜50重量部の粉末セルロースを混合した合成ゴム材料からなる木質感を備えた合成ゴム製まな板。
【請求項2】
前記合成ゴム主材におけるNBRの割合が50〜70重量%、SBRの割合が50〜30重量%である請求項1記載の木質感を備えた合成ゴム製まな板。
【請求項3】
前記20〜50重量部の粉末セルロースに加え、10〜50重量部の木粉をさらに混合した合成ゴム材料からなる請求項1又は2記載の木質感を備えた合成ゴム製まな板。
【請求項4】
前記合成ゴム材料が、前記合成ゴム主材100重量部に対して、ゴム補強剤としてのホワイトカーボン:10〜40重量部と、ゴム臭吸収剤としてのゼオライト:5〜30重量部と、をさらに含む請求項1〜3の何れか1項記載の木質感を備えた合成ゴム製まな板。
【請求項5】
前記合成ゴム材料が、前記合成ゴム主材100重量部に対して、粘着付与剤:1〜10重量部、加硫剤:1〜3重量部、加硫助剤:1〜5重量部、分散剤:1〜10重量部、加工助剤:1〜5重量部、をさらに含む請求項1〜4の何れか1項記載の木質感を備えた合成ゴム製まな板。
【請求項6】
比重が1.20〜1.30の範囲内である請求項1〜5の何れか1項記載の木質感を備えた合成ゴム製まな板。
【請求項7】
NBR:50〜70重量%、SBR:50〜30重量%の割合で混合した合成ゴム主材100重量部に対して、木粉:10〜50重量部、粉末セルロース:20〜50重量部、ゴム補強剤としてのホワイトカーボン:10〜40重量部、ゴム臭吸収剤としてのゼオライト:5〜30重量部、粘着付与剤:1〜10重量部、加硫剤:1〜3重量部、加硫助剤:1〜5重量部、分散剤:1〜10重量部、加工助剤:1〜5重量部、の割合で混合した合成ゴム材料を用いて、加硫成形法によりまな板形状に成型加工することを特徴とする木質感を備えた合成ゴム製まな板の製造方法。

【公開番号】特開2007−117353(P2007−117353A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−312753(P2005−312753)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(000000550)オカモト株式会社 (118)
【Fターム(参考)】