説明

木質材の締結構造

【課題】安価な構成で、低密度木質材の特質を維持しつつ締結強度を確保し得るようにした木質材の締結構造を提供する。
【解決手段】共に低密度の木質材で構成される第1の被締結材Pの締結部と第2の被締結材Qの締結部に、金属材又は樹脂材で構成された第1の補強材11と第2の補強材12をそれぞれ配置し、該第1の補強材11と第2の補強材12を介して第1の被締結材Pと第2の被締結材Qを締結する。係る構成によれば、各補強材11,12によって各被締結材P,Qの締結力に対する耐力が局部的に且つ効果的に補強され、その結果、締結力が上記第1及び第2の補強材11,12によって確実に支持され、これが該各補強材11、12を介して各被締結材P,Qへ適度に分散されることから、該各被締結材P,Qが低密度木質材であるにも拘らず、高い締結強度を確保することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、低密度木質材同士を、又は低密度木質材と高密度木質材とを強固に締結するための締結構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木質材(無垢の木材のほか、積層木材、加圧成形木材等の木材を素材とするものを含む広い概念)は、各種家具の材料として広く用いられている。
【0003】
ところで、このような木質材はその組成上の特性から、低密度の木質材と高密度の木質材に大別され、低密度木質材は例えば、桐材のような「強度は低いが軽量」という特性があり、高密度木質材は例えば、樫材、ケヤキ材のような「強度は高いが重い」という特性がある。このため、木質材の使用に際しては、これら両者の特性と用途等を考慮して何れか一方を選択するのが一般的であるが、これに限らず、これら両者を組み合わせて用いることで両者の利点を生かす技術も提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0004】
特許文献1に示されるものは、低密度木質材と高密度木質材を積層し、該高密度木質材を強度性能の高い芯材として用いることで、軽量性をある程度維持しつつ、積層材全体としての強度性能を高めたものである。
【0005】
特許文献2に示されるものは、合板において、建物等への固定部の強度性能を局部的に高める目的で、該固定部に対応する部分に補強材として強度の高い高密度木質材からなる板材を積層したものである。
【0006】
特許文献3に示されるものは、低密度木質材を負荷がかかる部分にも適用し得るようにするために、低密度木質材を芯材とし、この芯材の対向する二面に強度の高い高密度木質材を積層固着したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭63−66220号公報
【特許文献2】実開2002−54266号公報
【特許文献3】特開2008−126547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、木質材同士をボルト・ナットによる締結接合によって接合して家具等の木質構造体を製作する場合、一般に木質構造体の用途等からして軽量であることが要求されるため、素材として低密度木質材を使用することが多い。しかし、低密度木質材同士を締結する場合、この低密度木質材は軟質であることから、締結力に対する耐力が低く、十分な締結強度が得られないことになる。
【0009】
係る場合に、上掲の各特許文献に記載の技術を適用することも考えられる。
【0010】
しかし、特許文献1に示されるものでは、素材全体として高い強度性能を有するとしても、素材表面部分は軟質であるため、締結力に対する耐力が低く、十分な締結強度は得られにくい。
【0011】
特許文献2に示されるものでは、固定部の内部側での強度性能は高いものの、表面部分は軟質であるため、締結力に対する耐力が低く、特許文献1と同様に、十分な締結強度は得られにくい。
【0012】
特許文献3に示されるものでは、低密度木質材の対向する二面に高密度木質材が積層されているため、締結力に対する耐力は高くなるものの、素材全体が低密度木質材と高密度木質材の積層構造とされることから、製作コスト及び素材コストが共に高くつくという問題がある。
【0013】
そこで本願発明は、安価な構成で、低密度木質材の特質を維持しつつ締結強度を確保し得るようにした木質材の締結構造を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願発明では、上記課題を解決するために以下のような構成を採用している。
【0015】
本願の第1の発明に係る木質材の締結構造では、共に低密度の木質材で構成される第1の被締結材Pと第2の被締結材Q同士を当接させた状態で締結固定するための木質材の締結構造において、上記第1の被締結材Pの締結部と上記第2の被締結材Qの締結部に、金属材又は樹脂材で構成された第1の補強材11と第2の補強材12をそれぞれ配置し、該第1の補強材11と第2の補強材12を介して上記第1の被締結材Pと上記第2の被締結材Qを締結することを特徴としている。
【0016】
本願の第2の発明に係る木質材の締結構造では、低密度の木質材で構成される第1の被締結材Pと高密度の木質材で構成される第2の被締結材Q同士を当接させた状態で締結固定するための木質材の締結構造において、上記第1の被締結材Pの締結部に金属材又は樹脂材で構成された補強材11を配置し、該補強材11と上記第2の被締結材Qを締結することを特徴としている。
【0017】
本願の第3の発明に係る木質材の締結構造では、上記第1又は第2の発明に係る木質材の締結構造において、上記補強材11、12は、これに対応する上記被締結材P、Qに設けた補強材装着部31、32に対して締結力作用方向に掛止状態で嵌合固定したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本願発明では次のような効果が得られる。
【0019】
(a)本願の第1の発明に係る木質材の締結構造によれば、共に低密度の木質材で構成される第1の被締結材Pの締結部と第2の被締結材Qの締結部に、金属材又は樹脂材で構成された第1の補強材11と第2の補強材12をそれぞれ配置し、該第1の補強材11と第2の補強材12を介して上記第1の被締結材Pと上記第2の被締結材Qを締結するようにしているので、上記各補強材11,12によって上記各被締結材P,Qの締結力に対する耐力が局部的に且つ効果的に補強され、その結果、
(イ) 上記締結力が上記第1及び第2の補強材11,12によって確実に支持され、これが該各補強材11、12を介して上記各被締結材P,Qへ適度に分散されることから、該各被締結材P,Qが低密度木質材であるにも拘らず、高い締結強度を確保することが可能となる、
(ロ) 低密度木質材の補強用に高密度木質材を用いた場合、高密度木質材は低密度木質材に比して高価であるため、製品コストが高くつくが、この発明のように低密度木質材の補強用材として高密度木質材よりも安価な樹脂材を用い、且つこの樹脂材を、低密度木質材を主体としてその一部に部分的に使用する構成とすれば、樹脂材の使用に伴うコストアップを最小限に抑えつつ、低密度木質材同士の締結強度の向上を安価に実現することができ、延いてはこの締結構造が適用された低密度木質材を主体とする製品の強度上の信頼性と低コスト化の両立が可能となる、
(ハ) 木質材と樹脂材ではその表面の質感、色合い、模様等が相違するところ、低密度木質材で構成される上記各被締結材P,Qに対して、樹脂材で構成される上記各補強材11,12が上記各被締結材P,Qの締結部のみに局部的に用いられていることから、該各被締結材P,Qの表面上に散在する上記各補強材11,12が意匠の構成要素となり、例えば、上記各被締結材P,Qのみで(即ち、低密度木質材のみで)構成された場合に比して、意匠性が高められ、延いてはこの締結構造が適用された製品の商品価値が向上する、
等の効果が得られる。
【0020】
(b)本願の第2の発明に係る木質材の締結構造よれば、低密度の木質材で構成される第1の被締結材Pの締結部に、金属材又は樹脂材で構成された補強材11を配置し、該補強材11と高密度の木質材で構成された第2の被締結材Qを締結するようにしているので、上記補強材11によって上記第1の被締結材Pの締結力に対する耐力が局部的に且つ効果的に補強され、その結果、
(イ) 上記締結力が上記第1の被締結材P側に設けた上記補強材11と上記第2の被締結材Qによって確実に支持されることから、上記第1の被締結材Pが低密度木質材であるにも拘らず、高い締結強度を確保することが可能となる、
(ロ) 低密度木質材の補強用に高密度木質材を用いた場合、高密度木質材は低密度木質材に比して高価であるため、製品コストが高くつくが、この発明のように低密度木質材の補強用材として高密度木質材よりも安価な樹脂材を用い、且つこの樹脂材を、低密度木質材で構成される上記第1の被締結材Pの一部に部分的に使用する構成とすれば、樹脂材の使用に伴うコストアップを最小限に抑えつつ、低密度木質材と高密度木質材の締結強度の向上を安価に実現することができ、延いてはこの締結構造が適用された製品の強度上の信頼性と低コスト化の両立が可能となる、
(ハ) 木質材と樹脂材ではその表面の質感、色合い、模様等が相違するところ、低密度木質材で構成される上記第1の被締結材Pに対して、樹脂材で構成される上記補強材11が上記第1の被締結材Pの締結部のみに局部的に用いられていることから、該第1の被締結材Pの表面上に散在する上記補強材11が意匠の構成要素となり、この締結構造が適用された製品の商品価値が向上する、
等の効果が得られる。
【0021】
(c)本願の第3の発明に係る木質材の締結構造よれば、上記(a)又は(b)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記補強材11、12を、これに対応する上記被締結材P、Qに設けた補強材装着部31、32に対して締結力作用方向に掛止状態で嵌合固定するように構成しているので、上記第1の被締結材Pと第2の被締結材Qの間にその板厚方向に作用する締結力によって上記各補強材11、12が上記各被締結材P、Qに対してそれぞれ掛止する方向に押圧付勢され該各被締結材P、Qからの抜けが確実に防止されるとともに、上記締結力が上記各補強材11,12によって確実に支持され、これらの相乗作用として、上記各被締結材P、Q相互間の締結強度の確保がより一層確実ならしめられる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本願発明に係る木質材の締結構造が適用された製品例としてのポータブルトイレの全体斜視図である。
【図2】図1のA部の拡大図である。
【図3】図2のIII−III拡大断面図である。
【図4】図2に示した部分の分解斜視図である。
【図5】図1のB部の拡大図である。
【図6】図5のVI−VI拡大断面図である。
【図7】図5に示した部分の分解斜視図である。
【図8】図1のC部の拡大図である。
【図9】図8のIX−IX拡大断面図である。
【図10】図1のB部における締結構造の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本願発明を好適な実施形態に基づいて具体的に説明する。
【0024】
図1には、本願発明に係る締結構造を適用して構成された家具調椅子形のポータブルトイレ1を示している。このポータブルトイレ1は、所定間隔で対向配置された左右一対の側板2、2と、該各側板2、2間に跨ってこれら両者を着脱自在に連結する前後一対の連結材17、17で囲まれる空間内に便器部10を収納配置するとともに、該便器部10の上面側には適度のクッション性をもつ座部9を、その後端側を回動中心として上下方向(矢印U−D方向)に開閉可能に取付けている。
【0025】
上記側板2は、略矩形の板状体でなる本体部2aと、該本体部2aの下縁の前後両端部において下方へ延設された前後一対の脚部2b、2bと、該本体部2aの上縁の後端部において上方へ延設された延設部2cを備えて構成される。そして、上記左右一対の側板2,2の前後一対の脚部2b、2bには、所定長さの板材でなる床板4の前後両端部にそれぞれ立設固定された前後一対の脚板3、3がそれぞれ締結固定されている。
【0026】
また、上記左右一対の側板2,2の上記延設部2c、2cには、接続ブラケットを介して所定長さの延設板5がそれぞれ連結固定されるとともに、この左右一対の延設板5,5間には背受材6が取付けられている。
【0027】
さらに、上記左右一対の延設板5には、上記側板2に沿って前後方向へ延出配置された肘掛板7の後端部7aが固定されるとともに、該肘掛板7の先端部7bは、支持板8を介して上記側板2の本体部2a側に支持されている。なお、上記支持板8は、その上端部8aを上記肘掛板7の先端部7bに貼着固定することで該肘掛板7と一体化される一方、その下端部8bは上記側板2に対して着脱自在に締結固定される。
【0028】
なお、このポータブルトイレ1においては、後述するように、上記座部9及び上記肘掛板7の高さをそれぞれ調整できるように、上記側板2と上記前後一対の脚板3、3の締結位置と、上記側板2と上記支持板8の締結位置を、選択できるようにしている。
【0029】
ところで、上記ポータブルトイレ1は、その用途から考えて、室内で移動させる機会が多く、これを軽量構造としてその可搬性を高める必要があるとともに、室内設置用家具の一種として美観性も要求される。これらの要求を満たすべく、この実施形態では、上記ポータブルトイレ1の各構成部材の素材として、軽量性と表面の美麗性を兼備した桐材(即ち、低密度木質材)を採用している。
【0030】
ところが、低密度木質材には、軽量性というメリットを有する反面、強度性能が低いことから低密度木質材同士を締結固定した場合、その締結力に対する耐力が低く、十分な締結強度を得にくいというデメリットが内在していることは既述の通りである。
【0031】
このため、特に、着座者の体重がかかる上記側板2の各脚部2bとここに締結固定された上記脚板3の締結部、及び肘掛け動作に伴って外側へ開く方向に力がかかる上記側板2の本体部2aと上記支持板8の下端部8aとの締結部、さらに、同様に肘掛け動作に伴って外側へ開く方向に力がかかる上記延設板5と上記肘掛板7の基部7aとの締結部は、その締結強度を十分に確保しておく必要がある。
【0032】
そこで、この実施形態に係る上記ポータブルトイレ1においては、上記三箇所の締結部に本願発明に係る締結構造を適用し、その締結強度を十分に得るようにしている。以下、これら三箇所の締結構造を、それぞれの実施例に基づいて具体的に説明する。
【0033】
なお、この実施形態では、上記ポータブルトイレ1を構成する木質材部分を全て低密度木質材で構成しているので、以下に説明する各締結部は、「低密度木質材同士の締結」とされる(即ち、請求項1に係る構成)。しかし、本願発明は、「低密度木質材と高密度木質材の締結」にも適用できる(即ち、請求項2に係る構成)ものであるが、これについては「低密度木質材同士の締結」と基本構成は同じであるため、「低密度木質材同士の締結」に関する以下の実施例を援用し、その構造の図示及び説明は省略する。
【0034】
A: 第1の実施例
第1の実施例は、図1において符号Aで示した上記側板2の本体部2aと上記支持板8の下端部8aとの締結部における締結構造であり、これを図2〜図4に拡大図示している。
【0035】
A−1:具体的な構成
図2〜図4に示すように、上記支持板8側には、次述する補強材装着部31が、また上記側板2側には次述する補強材装着部32が、それぞれ設けられている。
【0036】
上記支持板8側の上記補強材装着部31は、図4に示すように、略平行四辺形状の平面形状をもつ開口穴で構成され、該支持板8の表面8c側は大径穴部31aとされ、裏面8d側は小径穴部31bとされるとともに、これらの中間部には該大径穴部31aの内縁と小径穴部31bの内縁に跨る棚面31cとされている(即ち、上記補強材装着部31は、段付き穴とされている)。そして、この補強材装着部31には、次述の第1の補強材11が埋設状態で配置される。
【0037】
上記第1の補強材11は、金属材又は樹脂材で一体成形され、その外周面は、上記補強材装着部31の大径穴部31aと小径穴部31b及び棚面31cにそれぞれ対応するように、上記大径穴部31a内に密嵌合可能な大径周面11cと、上記小径穴部31bに密嵌合可能な小径周面11dと、上記棚面31cに当接される棚面11eを備えた段付き周面とされている。
【0038】
さらに、この第1の補強材11には、上下に三段、左右に二段の配置構成で計6個のボルト嵌挿孔15が、該第1の補強材11の表面11aと裏面11bの間に跨って貫通形成されている。このボルト嵌挿孔15は、段付き孔とされ、上記第1の補強材11の表面11a側に座部をもつ段付き孔とされている。そして、これら6個のボルト嵌挿孔15は、左右傾斜方向に並んだ2個のボルト嵌挿孔15で一組の孔群を構成するものであり、この実施例ではこの孔群が上下方向に適宜離間して三組配置されている。なお、これら三組の孔群は、後述のように、上記肘掛板7の高さ調整に合わせて、択一的に選択される。また、このボルト嵌挿孔15には、上記第1の補強材11の表面11a側から締結ボルト14が嵌挿配置される。
【0039】
このように構成された上記第1の補強材11は、その裏面11b側から、上記支持板8の補強材装着部31に対してその表面8c側から嵌合状態で配置され且つ接着固定され、これによって該支持板8と一体化される。なお、この場合、上記第1の補強材11の上記棚面11eが上記補強材装着部31の上記棚面31cに当接されていることから、万一、接着接合強度が低下したとしても、上記第1の補強材11が上記補強材装着部31から上記支持板8の裏面8d側へ抜け出ることが確実に防止される。
【0040】
一方、上記側板2側の上記補強材装着部32は、上記支持板8側の上記補強材装着部31の傾斜方向に対応するように傾斜した長穴状の平面形状を有し、該側板2の表面2d側は小径穴部32bとされ、裏面2e側は大径穴部32aとされるとともに、これらの中間部には該小径穴部32bの内縁と該大径穴部32aの内縁に跨る棚面32cとされている(即ち、上記補強材装着部32は段付き穴で構成されている)。そして、この補強材装着部32には、次述の第2の補強材12が埋設状態で配置される。
【0041】
上記第2の補強材12は、上記第1の補強材11と同様に、金属材又は樹脂材で一体成形され、上記補強材装着部32に嵌合し得るような長円状の平面形体を備えている。そして、この第2の補強材12の外周面は、上記補強材装着部32の大径穴部32aと小径穴部32b及び棚面32cにそれぞれ対応するように、上記大径穴部32a内に密嵌合可能な大径周面12cと、上記小径穴部32bに密嵌合可能な小径周面12dと、上記棚面32cに当接される棚面12eを備えた段付き周面とされている。
【0042】
さらに、この第2の補強材12には、上記第1の補強材11側の一組の孔群に属する左右一対のボルト嵌挿孔15,15に対応するように、一対のナット嵌挿孔16,16が、該第2の補強材12の表面12aと裏面12bの間に跨って貫通形成されている。このナット嵌挿孔16は、直孔とされ、ここには、その内周側に上記締結ボルト14に噛合する螺条が、その外周側には捩じ込み用螺条が、それぞれ設けられたナット材13が螺入固定される。この場合、図3に示すように、上記ナット材13の軸長は上記第2の補強材12の板厚よりも所定寸法だけ短寸に設定されており、従って、上記ナット材13を上記第2の補強材12の裏面12b側から上記ナット嵌挿孔16に捩じ込んでその外側端面を上記第2の補強材12の裏面12bと略面一とした状態においては、該第2の補強材12の表面12a側に未螺入部分が残存しており、この未螺入部分の存在によって、上記ナット材13の上記第2の補強材12の表面12a側への抜け防止効果がより一層高められる。
【0043】
このように構成された上記第2の補強材12は、その表面12a側から、上記側板2の補強材装着部32に対してその裏面2e側から嵌合状態で装置され且つ接着固定され、これによって該側板2と一体化される。なお、この場合、上記第2の補強材12の上記棚面12eが上記補強材装着部32の上記棚面32cに当接されていることから、万一、接着接合強度が低下したとしても、上記第2の補強材12が上記補強材装着部32から上記側板2の表面2d側へ抜け出ることが確実に防止される。
【0044】
A−2:締結状態
図2及び図3には、上記側板2と上記支持板8の締結状態を示している。これらの締結に際しては、図3に示すように、上記側板2の表面2d側に、上記支持板8の裏面8d側を当接させ、該側板2側の上記第2の補強材12の三組の孔群のうちの何れかの孔群に属する一対のナット嵌挿孔16,16と、上記支持板8側の上記第1の補強材11に設けた上記一対のボルト嵌挿孔15,15を同軸上に重合させ、この状態で、上記ボルト嵌挿孔15に締結ボルト14を嵌挿し且つこれを上記ナット嵌挿孔16側の上記ナット材13に螺合させ、これを捩じ込むことで、該締結ボルト14とナット材13の間に発生する軸力により、上記第1の補強材11と第2の補強材12を介して上記側板2と上記支持板8が締結固定される。
【0045】
この場合、この実施例では、上記支持板8の締結部には高密度木質材で構成された上記第1の補強材11を埋設配置し、上記側板2の締結部には高密度木質材で構成された上記第2の補強材12を埋設配置し、これら両者を上記ナット材13と上記締結ボルト14間に働く締結力によって締め付けることで締結固定するようにしているので、上記支持板8と上記側板2は、これが共に低密度木質材で構成されているにも拘らず、該各補強材11,12によって、上記締結力に対する耐力が局部的に且つ効果的に補強されることになる。
【0046】
この結果、上記締結ボルト14の頭部と上記ナット材13の間に働く締結力が上記第1及び第2の補強材11,12によって確実に支持され、これが上記支持板8及び側板2側へ適度に分散して支持され、これら両者間において高い締結強度が確保されることになる。
【0047】
また、低密度木質材でなる上記側板2と上記支持板8との締結部のみに上記各補強材11,12として金属材又は樹脂材を部分的に使用する構成であることから、金属材又は樹脂材の使用に伴うコストアップが最小限に抑えられ、高い締結強度を安価に提供することができ、延いては、この締結構造が適用された上記ポータブルトイレ1の強度上の信頼性と製品コストの低廉化の両立が可能となる。
【0048】
さらに、低密度木質材で構成された上記支持板8及び側板2と、金属材又は樹脂材で構成された上記第1及び第2の補強材11、12は、その表面の質感、色合い、模様等が相違するところ、上記支持板8及び側板2に対して上記各補強材11,12を局部的に用いたことから、該支持板8及び側板2とその表面上に散在する上記各補強材11,12によって、上記ポータブルトイレ1全体としての意匠性が高められ、延いては該ポータブルトイレ1の商品価値が向上することにもなる。
【0049】
また、この実施例においては、上記支持板8の補強材装着部31に棚面31cを設け、この棚面31cに上記第1の補強材11の棚面11eを当接させるとともに、上記側板2の補強材装着部32に棚面32cを設け、この棚面32cに上記第2の補強材12の棚面12eを当接させることで、これらそれぞれが締結力作用方向において掛止状態で嵌合固定するように構成したので、締結力によって上記第1の補強材11が上記支持板8から、上記第2の補強材12が上記側板2から、それぞれ抜け出るのが確実に防止され、その結果、上記締結力が上記各補強材11,12によって確実に支持され、上記支持板8と上記側板2の間の締結強度の確保がより一層確実ならしめられる。
【0050】
なお、この実施例では、上記支持板8及び側板2が、特許請求の範囲中の第1の被締結材P及び第2の被締結材Qに該当する。
【0051】
B:第2の実施例
第2の実施例は、図1において符号Bで示した上記側板2の脚部2bと上記脚板3支持板8との締結部における締結構造であり、これを図5〜図7に拡大図示している。
B−1:具体的な構成
【0052】
この実施例の締結構造は、上記第1の実施例における締結構造と実質的に同じである。即ち、上記脚板3には補強材装着部31が、上記側板2の脚部2bには補強材装着部32が、それぞれ設けられている。
【0053】
上記脚板3側の上記補強材装着部31は、図7に示すように、縦長穴状の平面形状をもつ開口穴で構成され、該脚板3の表面3a側は大径穴部31aとされ、裏面3b側は小径穴部31bとされるとともに、これらの中間部には該大径穴部31aの内縁と小径穴部31bの内縁に跨る棚面31cとされている。そして、この補強材装着部31には、次述の第1の補強材11が埋設状態で配置される。
【0054】
上記第1の補強材11は、金属材又は樹脂材で一体成形され、その外周面は、上記補強材装着部31の大径穴部31aと小径穴部31b及び棚面31cにそれぞれ対応するように、上記大径穴部31a内に密嵌合可能な大径周面11cと、上記小径穴部31bに密嵌合可能な小径周面11dと、上記棚面31cに当接される棚面11eを備えた段付き周面とされている。
【0055】
さらに、この第1の補強材11の上端側と下端側の上下二位置には、それぞれボルト嵌挿孔15が貫通形成されている。このボルト嵌挿孔15は、段付き孔とされ、上記第1の補強材11の表面11a側に座部をもつ段付き孔とされている。このボルト嵌挿孔15には、上記第1の補強材11の表面11a側から締結ボルト14が嵌挿配置される。
【0056】
このように構成された上記第1の補強材11は、上記脚板3の上記補強材装着部31に嵌合され且つ接着固定され、これによって該脚板3と一体化される。なお、この場合、上記第1の補強材11の上記棚面11eが上記補強材装着部31の上記棚面31cに当接されていることから、万一、接着接合強度が低下したとしても、上記第1の補強材11が上記補強材装着部31から上記脚板3の裏面3b側へ抜け出ることが確実に防止される。
【0057】
一方、上記側板2の脚部2b側に設けられた上記補強材装着部32は、上記脚板3側の上記補強材装着部31よりも高さ寸法の大きい長穴状の平面形状を有し、該側板2の表面2d側は小径穴部32bとされ、裏面2e側は大径穴部32aとされるとともに、これらの中間部には該小径穴部32bの内縁と該大径穴部32aの内縁に跨る棚面32cとされている。そして、この補強材装着部32には、次述の第2の補強材12が埋設状態で配置される。
【0058】
上記第2の補強材12は、上記第1の補強材11と同様に、金属材又は樹脂材で一体成形され、上記補強材装着部32に嵌合し得るような長円状の平面形体を備えている。そして、この第2の補強材12の外周面は、上記補強材装着部32の大径穴部32aと小径穴部32b及び棚面32cにそれぞれ対応するように、上記大径穴部32a内に密嵌合可能な大径周面12cと、上記小径穴部32bに密嵌合可能な小径周面12dと、上記棚面32cに当接される棚面12eを備えた段付き周面とされている。
【0059】
さらに、この第2の補強材12には、その長軸方向に適宜離間して5個のナット嵌挿孔16が設けられている。なお、この5個のナット嵌挿孔16は、図7に示すように、一つのナット嵌挿孔16を挟んで隣接する一対のナット嵌挿孔16,16で上記第1の補強材11側の一対のボルト嵌挿孔15,15に対応する一組の孔群を構成する。従って、この第2の補強材12には、三組の穴群が存在し、これら各穴群が択一的に選択される。
【0060】
上記ナット嵌挿孔16は、直孔とされ、ここには、その内周側に上記締結ボルト14に噛合する螺条が、その外周側には捩じ込み用螺条が、それぞれ設けられたナット材13が螺入固定される。この場合、図6に示すように、上記ナット材13の軸長は上記第2の補強材12の板厚よりも所定寸法だけ短寸に設定されており、従って、上記ナット材13を上記第2の補強材12の裏面12b側から上記ナット嵌挿孔16に捩じ込んでその外側端面を上記第2の補強材12の裏面12bと略面一とした状態においては、該第2の補強材12の表面12a側に未螺入部分が残存しており、この未螺入部分の存在によって、上記ナット材13の上記第2の補強材12の表面12a側への抜け防止効果がより一層高められる。
【0061】
このように構成された上記第2の補強材12は、その表面12a側から、上記側板2の補強材装着部32に対してその裏面2e側から嵌合状態で装着され且つ接着固定され、これによって該側板2と一体化される。なお、この場合、上記第2の補強材12の上記棚面12eが上記補強材装着部32の上記棚面32cに当接されていることから、万一、接着接合強度が低下したとしても、上記第2の補強材12が上記補強材装着部32から上記側板2の表面2d側へ抜け出ることが確実に防止される。
【0062】
B−2:締結状態
図5及び図6には、上記側板2の脚部2bと上記脚板3の締結状態を示している。これらの締結に際しては、図6に示すように、上記側板2の表面2d側に、上記脚板3の裏面3b側を当接させ、該側板2側の上記第2の補強材12の三組の孔群のうちの何れかの孔群に属する一対のナット嵌挿孔16,16と、上記脚板3側の上記第1の補強材11に設けた上記一対のボルト嵌挿孔15,15を同軸上に重合させ、この状態で、上記ボルト嵌挿孔15に締結ボルト14を嵌挿し且つこれを上記ナット嵌挿孔16側の上記ナット材13に螺合させ、これを捩じ込むことで、該締結ボルト14とナット材13の間に発生する軸力により、上記第1の補強材11と第2の補強材12を介して上記側板2の脚部2bと上記脚板3が締結固定される。
【0063】
なお、この締結による作用効果は、上記第1の実施例の場合と同様であるため、該第1の実施例の該当説明を援用し、ここでの説明を省略する。
【0064】
また、この実施例では、上記脚板3及び側板2が、特許請求の範囲中の第1の被締結材P及び第2の被締結材Qに該当する。
【0065】
C:第3の実施例
第3の実施例は、図1において符号Cで示した上記延設板5と上記肘掛板7の締結部における締結構造であり、これを図8及び図9に拡大図示している。
【0066】
この実施例の締結構造は、上記第1及び第2の実施例における締結構造と基本構成を同じにするもので、これらと異なる点は、上記肘掛板7はその先端部7b側が上記支持板8によって支持されているため、該肘掛板7の基端部7a側においては該肘掛板7の回り止めを行う必要がなく、そのために該肘掛板7側の補強材装着部31に嵌合状態で固定される第1の補強材11には補強材装着部31を1個だけ設け、一本の締結ボルト14によって締結するようにした点である。
【0067】
なお、上記延設板5側に嵌合固定される第2の補強材12は、上記肘掛板7の高さ調整を行う必要上、ナット嵌挿孔16を上下方向に3個設けている。
【0068】
これら以外の構成及び作用効果は全て上記第1及び第2の実施例の場合と同様であるので、これらの該当説明を援用することとし、ここでの説明は省略する。
【0069】
D:第4の実施例
この第4の実施例は、図1において符号Bで示した上記側板2の脚部2bと上記脚板3支持板8との締結部における締結構造であって、上記側板2を高密度木質材で、上記脚板3を低密度木質材で、それぞれ構成した場合の例であって、これを図10に示している。
【0070】
図10において、上記脚板3側の構成は上記第2の実施例における図6に示す構成と同じであって、該脚板3に設けた上記補強材装着部31には、金属材又は樹脂材で一体成形された上記第1の補強材11が埋設状態で配置される。これに対して、上記側板2側の構成は、該側板2が高密度木質材で構成されていることから、上記第2の実施例におけるような第2の補強材12の使用は不要である。このため、この実施例における上記側板2側には、上記ナット嵌挿孔16を直接形成し、このナット嵌挿孔16に上記ナット材13を捩じ込んで固定する構成を採用している。
【0071】
従って、上記側板2と上記脚板3に締結に際しては、上記締結ボルト14を上記脚板3側の第1の補強材11に設けた上記ボルト嵌挿孔15に挿通し、これを上記側板2側に取付けた上記ナット材13に捩じ込むことで、これら両者を強固に締結することができる。
【0072】
これら以外の構成及び作用効果は全て上記第1〜第3の実施例の場合と同様であるので、これらの該当説明を援用することとし、ここでの説明は省略する。
【0073】
E:その他
(1) この発明の木質材の締結構造は、上記実施例のような上記ポータブルトイレ1における締結部のみならず、種々の木質製品の締結部に広く適用できることは言うまでも無い。
【0074】
(2) 上記各実施例においては、上記補強材装着部31,32を穴状に形成し、ここに上記補強材11,12を埋設状態で装着して固定するようにしているが、本願の他の実施例においては、上記補強材装着部31,32を穴状とせずに、これが設けられる被締結材の表面と略面一の平面状に構成し、該補強材装着部31,32の表面に上記補強材11,12を載置状態で配置するように構成することもできる。
【符号の説明】
【0075】
1 ・・ポータブルトイレ(木質材構造体)
2 ・・側板(第2の被締結材)
3 ・・脚板(第1の被締結材)
4 ・・床板
5 ・・延設板(第2の被締結材)
6 ・・背受材
7 ・・肘掛板(第1の被締結材)
8 ・・支持板(第1の被締結材)
9 ・・座部
10 ・・便器部
11 ・・第1の補強材
12 ・・第2の補強材
13 ・・ナット材
14 ・・締結ボルト
15 ・・ボルト孔
16 ・・ナット嵌挿孔
17 ・・連結材
31 ・・補強材装着部
32 ・・補強材装着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共に低密度の木質材で構成される第1の被締結材(P)と第2の被締結材(Q)同士を当接させた状態で締結固定するための木質材の締結構造であって、
上記第1の被締結材(P)の締結部と上記第2の被締結材(Q)の締結部に、金属材又は樹脂材で構成された第1の補強材(11)と第2の補強材(12)がそれぞれ配置され、該第1の補強材(11)と第2の補強材(12)を介して上記第1の被締結材(P)と上記第2の被締結材(Q)を締結することを特徴とする木質材の締結構造。
【請求項2】
低密度の木質材で構成される第1の被締結材(P)と高密度の木質材で構成される第2の被締結材(Q)同士を当接させた状態で締結固定するための木質材の締結構造であって、
上記第1の被締結材(P)の締結部には金属材又は樹脂材で構成された補強材(11)が配置され、該補強材(11)と上記第2の被締結材(Q)を締結することを特徴とする木質材の締結構造。
【請求項3】
請求項1又は2において、
上記補強材(11)、(12)は、これに対応する上記被締結材(P)、(Q)に設けた補強材装着部(31)、(32)に対して締結力作用方向に掛止状態で嵌合固定されていることを特徴とする木質材の締結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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