木造建物の梁受金物および木造柱・梁の接合構造
【課題】 1スリットタイプでありながら、柱への固定用のボルトの干渉が回避でき、かつ合わせ梁を接合するボルトとの干渉回避が簡素な構成で行える梁受金物と、これを用いた木造柱・梁の接合構造を提供する。
【解決手段】 梁受金物1は、立板部2とその基端から側方に延びる接合板部3とでなり、接合板部3は柱側面に配置し、立板部2は梁端面のスリット内に挿入する。立板部2の先端には、前記梁先端のピン挿通孔に挿通された固定ピンを挿通させる固定ピン挿通孔5を設ける。接合板部3における立板部2の位置する幅方向位置に取付用ボルト挿通孔8を設ける。ボルト突出部分との干渉を回避する切り欠き9を、立板部2の基端から先端側へ延びて設ける。切り欠き9は、前記梁の端部側面に突き合わせる合わせ梁の端面へ前記梁を貫通して進入するボルトが貫通可能な位置まで広げる。
【解決手段】 梁受金物1は、立板部2とその基端から側方に延びる接合板部3とでなり、接合板部3は柱側面に配置し、立板部2は梁端面のスリット内に挿入する。立板部2の先端には、前記梁先端のピン挿通孔に挿通された固定ピンを挿通させる固定ピン挿通孔5を設ける。接合板部3における立板部2の位置する幅方向位置に取付用ボルト挿通孔8を設ける。ボルト突出部分との干渉を回避する切り欠き9を、立板部2の基端から先端側へ延びて設ける。切り欠き9は、前記梁の端部側面に突き合わせる合わせ梁の端面へ前記梁を貫通して進入するボルトが貫通可能な位置まで広げる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、木造建物の柱・梁接合に用いられる梁受金物、およびこの梁受金物を用いた木造柱・梁の接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
木造建物の柱・梁接合に用いられる梁受金物として、図23に示す1スリットタイプののものや、図24に示す2スリットタイプのものが知られている。図23に示す1スリットタイプの梁受金物51は、図23(A)に破断平面図で示すように、1つの立板部52と、この立板部52の基端から両側方に延びる接合板部53とを有する断面T字状の金物である。図23(B)に正面図で示すように、梁受金物51の立板部52には複数の切り欠き54とピン挿通孔55が設けられ、接合板部53には複数のボルト挿通孔(図示せず)が設けられる。また、図23(A)のように、梁80の端面には上下方向に延びる1つのスリット81が設けられる。上記梁受金物51を用いて、木造建物の柱70の一側面に梁80を接合する場合、先ず、柱70の前記側面に梁受金物51の接合板部53をボルト56(図23(B))で固定する。このボルト止めにおいて、梁受金物51の立板部52の切き欠き54は、梁受金物51側へのボルト56の突出を許容する。次に、図23(A)のように梁80の端面に形成されたスリット81内に梁受金物51の立板部52を挿入し、梁80の側面からその幅方向に貫通して設けられるピン挿通孔(図示せず)から、梁受金物51のピン挿通孔55に渡って固定ピン57を挿通する。これにより、梁80を梁受金物51に受けさせる。
【0003】
図24に示す2スリットタイプの梁受金物61は、図24(A)に破断平面図で示すように、互いに平行に並ぶ2つの立板部62,62と、これら両立板部62の基端となる側縁から折れ曲がって両立板部62を連結する接合板部63とを有する断面U字状の金物である。図24(B)に正面図で示すように、梁受金物61の両立板部62には複数のピン挿通孔65が設けられ、接合板部63には複数のボルト挿通孔(図示せず)が設けられる。また、図24(A)のように、梁80 の端面には上下方向に延びる互いに平行な2つのスリット81A,81Aが設けられる。この両スリット81Aの基端側は座彫り部82で連通させてある。上記梁受金物61を用いて、木造建物の柱70の一側面に梁80を接合する場合、先ず、図24(A)のように柱70の前記側面に梁受金物61の接合板部63をボルト56(図24(B))で固定する。次に、図24(A)のように梁80の端面に形成された両スリット81A内に梁受金物61の両立板部62を挿入し、梁80の側面からその幅方向に貫通して設けられるピン挿通孔(図示せず)から、梁受金物61における両立板部62のピン挿通孔65に渡って固定ピン57を挿通する。これにより、梁80を梁受金物61に受けさせる。この接合状態において、梁80の両スリット81Aの基端側を連通させる座彫り部82は、梁受金物61側へのボルト56の突出を許容する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−278027号公報
【特許文献2】特開2006−328709号公報
【特許文献3】特開2008−215057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、従来の梁受金物として1スリットタイプと2スリットタイプのものが知られているが、その多くは2スリットタイプであり、1スリットタイプのものは極めてまれである。2スリットタイプの場合、梁80に2のスリット81Aを形成する必要があるため、梁80の加工工数が増える。
しかし、梁受金物の多くは上記したようにボルトで柱に固定するため、図23に示したような1スリットタイプのものでは、その立板部52と固定用のボルト56が軸心位置に来るように構成すると、ボルト56が立板部52と干渉してしまう。この干渉を避けるためには、ボルト56を軸心から偏心させたり、図23の例のように立板部52にボルト56との干渉を避けるための切り欠き54を設けるなどの処置が必要であり、これらの観点から1スリットタイプのものの採用が少ないと考えられる。
【0006】
また、図25のように、柱70に接合される梁80Bに隣接して、別の合わせ梁80Cを配置する場合、この合わせ梁80Cと直角に配置されて柱70に接合される梁80Aから合わせ梁80Cに向けて梁受金物51を固定するボルト58を貫通させようとすると、そのボルト58が梁80Aを受ける梁受金物51と干渉するため、接合できない。また、柱70に接合される梁80Bと、これに隣接する合わせ梁80Cとを、これらの幅方向に貫通するボルト59で連結しようとしても、これらの梁80B,80Cを受ける梁受金物51の立板部52にボルト59が干渉してしまう。この合わせ梁80Cの受け用ボルト59の干渉については、2スリットタイプでも同じである。そのため、在来工法の接合金物などを併用しなくてはならないなど、複雑な納まりとなる。
【0007】
この発明の目的は、木造柱・梁の接合において、1スリットタイプでありながら、柱または柱上梁への固定用のボルトの干渉が回避でき、かつ合わせ梁を接合するボルトとの干渉回避が簡素な構成で行える梁受金物を提供することである。
この発明の他の目的は、合わせ梁を有する木造柱・梁の接合を、同一形状の1スリットタイプの梁受金物を複数用いて行うことができ、しかも梁受金物が簡素な構成で済む木造柱・梁の接合構造を提供することである。
この発明のさらに他の目的は、柱上梁とこれに突き合わせられる梁との接合が、1スリットタイプ梁受金物で、合わせ梁の接合用のボルトとの干渉を回避して簡素な構成で行える木造柱・梁の接合構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の木造建物の梁受金物は、立板部と、この立板部の基端となる側縁から折れ曲がって前記立板部の両側方または一側方に延びる接合板部とでなり、前記接合板部が、木造建物の柱およびこの柱上の柱上梁のいずれかの側面またはこの側面に設けられた座彫りの底面に沿って配置され、前記立板部が、前記柱または前記柱上梁の前記側面に対して突き合わせ状態となる第1の梁の端面に設けられた上下方向に延びるスリット内に挿入される梁受金物であって、前記立板部の先端に、前記第1の梁の先端に前記スリットを貫通して設けられたピン挿通孔に挿通された固定ピンを挿通させる固定ピン挿通孔および固定ピン挿通切り欠きのいずれか一方または両方を有し、前記接合板部における前記立板部の存在する幅方向位置に、前記柱と接合するボルトを挿通する梁受金物取付用のボルトの挿通孔を設けると共に、このボルトの突出部分が前記立板部と干渉することを回避する切り欠きを、前記立板部に基端から先端側へ延びて設け、この切り欠きの先端位置を、前記第1の梁の端部の側面に先端が当接された合わせ梁の端面へ前記第1の梁を貫通して進入する合わせ梁接合用のボルトが貫通可能な位置まで広げたことを特徴とする。
なお、前記「座彫り」は「座繰り」とも言う。
【0009】
この構成によると、梁のスリットに挿入される立板部と柱に固定する接合板部とを有する梁受金物において、柱または柱上梁へ接合するボルトが立板部と干渉することを回避する切り欠きを前記立板部に設けたため、1スリットタイプでありながら、柱または柱上梁への接合用のボルトの干渉が回避できる。また、この切り欠きの先端位置を、合わせ梁接合用のボルトが貫通可能な位置まで広げたため、合わせ梁の接合用ボルトのとの干渉も回避できる。しかも、柱または柱上梁への接合用のボルトの干渉を回避する切り欠きの先端位置を広げただけで、合わせ梁の接合用のボルトとの干渉も回避でき、前記切り欠きを2種のボルトの干渉回避に兼用できる。そのため、それぞれのボルトに専用の干渉回避部分を形成する必要がなく、梁受金物が簡素な構成となる。切り欠きの先端位置を広げたことに伴い、その切り欠きをボルト締め作業に利用できて、ボルト締め付け用の工具種類の選択や、締め付け方法の選択の自由度も高まる。
【0010】
この発明において、前記切り欠きの先端は、前記立板部の横幅の中央位置よりも先端側であるのが望ましい。前記切り欠きの先端が立板部中央位置よりも先端側であると、合わせ梁の接合用のボルトとの干渉を前記切り欠きで行うにつき、この接合用のボルトの位置を一般的な柱梁の設計においてボルト位置を特に変更することなく回避できる。
【0011】
この発明において、前記立板部における前記切り欠きの先端付近に、他の梁受金物と接合する金物相互接合部材を挿通する相互接合部材挿通孔を設けても良い。
この構成の場合、柱の側面に接合される梁を受ける梁受金物と、前記梁に隣接する合わせ梁を受ける梁受金物とを、これら両梁受金物の立板部の相互接合部材挿通孔に渡って金物相互接合部材を挿通させることにより接合でき、合わせ梁にかかる鉛直荷重を効率よく柱に伝達することができる。
【0012】
この発明において、前記接合板部は、前記立板部の基端から折れ曲がって一側方に延びる接合板部主部と、前記切り欠きの形成により生じて前記接合板部主部と同一平面で延びる切り起こし片とでなるものとしても良い。
このように接合板部の一部を、前記切り欠きの形成により生じた切り起こし片とすることで、溶接などの接続処理を要することなく、1枚の板から梁受金物を形成でき、梁受金物の製造が容易である。
【0013】
この発明の木造柱・梁の接合構造は、木造建物の木質の柱と、この柱の前記側面に対して端面が突き合わせ状態となる第1の梁と、この第1の梁に対して直角方向に延びて前記柱の側面に隣合う側面に端面が突き合わせ状態となる合わせ梁とを接合する木造柱・梁の接合構造であって、前記いずれかの発明の梁受金物における前記接合板部を、前記の柱の側面またはこの側面に設けられた座彫りの底面に沿って配置し、前記立板部を前記第1の梁の端面に設けられた上下方向に延びるスリット内に挿通し、前記梁受金物の接合板部の前記挿通孔に、前記柱に挿通したボルトを挿通させてこのボルトにより前記接合板部を前記柱に固定し、前記第1の梁の前記ピン挿通孔に固定ピンを挿通しこの固定ピンを前記梁受金物の前記固定ピン挿通孔に挿通して前記第1の梁を前記梁受金物に受けさせ、前記第1の梁を貫通して進入する合わせ梁接合用のボルトを、前記梁受金物の前記切り欠きに挿通して前記合わせ梁接合用のボルトを前記合わせ梁の端面へ進入させたことを特徴とする。
【0014】
この構成によると、木造建物の柱の側面に接合される梁と、その梁の側面に先端を突き合わせて接合される合わせ梁とを備える木造柱・梁の接合を、同一形状の1スリットタイプの梁受金物を用いて行うことができる。しかも、梁受金物が簡素な構成で済む。
【0015】
この発明の木造柱・梁の接合構造において、前記梁受金物の他に、この梁受金物と同一形状の第2および第3の梁受金物を用い、第2の梁受金物は、前記柱の第2の梁側を向く側面またはこの側面に設けられた座彫りの底面に沿って配置し、第2の梁受金物の立板部を第2の梁の端面に設けられた上下方向に延びるスリット内に挿入し、第2の梁受金物の接合板部の挿通孔に、前記柱に挿通したボルトを挿通させてこのボルトにより第2の梁受金物の接合板部を前記柱に固定し、前記第2の梁の前記固定ピン挿通孔に固定ピンを挿通しこの固定ピンを前記第2の梁受金物の固定ピン挿通孔および固定ピン挿通切り欠きのいずれか一方または両方に挿通して前記第2の梁を前記梁受金物に受けさせ、第3の梁受金物は、第1の梁の第2の梁側を向く側面またはこの側面に設けられた座彫りの底面に沿って配置し、第3の梁受金物の立板部を前記合わせ梁の端面に設けられた上下方向に延びるスリット内に挿入し、第3の梁受金物の接合板部の挿通孔に、前記第1の梁に挿通したボルトを挿通させてこのボルトにより第3の梁受金物の接合板部を前記第1の梁に固定し、前記合わせ梁の前記ピン挿通孔に固定ピンを挿通しこの固定ピンを前記第3の梁受金物の前記固定ピン挿通孔および固定ピン挿通切り欠きのいずれか一方または両方に挿通して前記合わせ梁を前記第3の梁受金物に受けさせ、前記第2の梁受金物の相互接合部材挿通孔と第3の梁受金物の相互接合部材挿通孔とに渡って金物相互接合部材を挿通させても良い。
【0016】
この構成の場合、柱の側面に接合される第2の梁を受ける第2の梁受金物と、前記第2の梁に隣接する合わせ梁を受ける第3の梁受金物とを、これら両梁受金物の立板部の相互接合部材挿通孔に渡って金物相互接合部材を挿通させることにより接合でき、合わせ梁にかかる鉛直荷重を効率よく柱に伝達することができる。
【0017】
この発明の他の木造柱・梁の接合構造は、木造建物の柱と、この柱の上端面に下面が固定された木質の柱上梁と、この柱上梁の側面における前記柱の上方に位置する部分に対して端面が突き合わせ状態となる第1の梁と、前記柱上梁に沿い前記第1の梁に対して直角方向に延びて端面が前記第1の梁の側面突き合わせ状態となる合わせ梁とを接合する木造柱・梁の接合構造であって、この発明の前記いずれかの構成の梁受金物における前記接合板部を、前記の柱上梁の側面またはこの側面に設けられた座彫りの底面に沿って配置し、前記立板部を前記第1の梁の端面に設けられた上下方向に延びるスリット内に挿通し、前記梁受金物の接合板部の前記挿通孔に、前記柱上梁に挿通したボルトを挿通させてこのボルトにより前記接合板部を前記柱上梁に固定し、前記第1の梁の前記ピン挿通孔に固定ピンを挿通しこの固定ピンを前記梁受金物の前記固定ピン挿通孔に挿通して前記第1の梁を前記梁受金物に受けさせ、前記第1の梁を貫通して進入する合わせ梁接合用のボルトを、前記梁受金物の前記切り欠きに挿通して前記合わせ梁接合用のボルトを前記合わせ梁の端面へ進入させたことを特徴とする。
【0018】
この構成によると、柱上梁とこれに突き合わせられる梁との接合が、1スリットタイプ梁受金物で、合わせ梁の接合用のボルトとの干渉を回避して簡素な構成で行える。
【発明の効果】
【0019】
この発明の木造建物の梁受金物は、立板部と、この立板部の基端となる側縁から折れ曲がって前記立板部の両側方または一側方に延びる接合板部とでなり、前記接合板部が、木造建物の柱およびこの柱上の柱上梁のいずれかの側面またはこの側面に設けられた座彫りの底面に沿って配置され、前記立板部が、前記柱または前記柱上梁の前記側面に対して突き合わせ状態となる第1の梁の端面に設けられた上下方向に延びるスリット内に挿入される梁受金物であって、前記立板部の先端に、前記第1の梁の先端に前記スリットを貫通して設けられたピン挿通孔に挿通された固定ピンを挿通させる固定ピン挿通孔および固定ピン挿通切り欠きのいずれか一方または両方を有し、前記接合板部における前記立板部の存在する幅方向位置に、前記柱と接合するボルトを挿通する梁受金物取付用のボルトの挿通孔を設けると共に、このボルトの突出部分が前記立板部と干渉することを回避する切り欠きを、前記立板部に基端から先端側へ延びて設け、この切り欠きの先端位置を、前記第1の梁の端部の側面に先端が当接された合わせ梁の端面へ前記第1の梁を貫通して進入する合わせ梁接合用のボルトが貫通可能な位置まで広げたため、合わせ梁を備える木造柱・梁の接合構造において、1スリットタイプの梁受金物でありながら、柱または柱上梁への固定用のボルトの干渉が回避でき、かつ合わせ梁を接合するボルトとの干渉回避が簡素な構成で行えるという利点が得られる。
【0020】
この発明の木造柱・梁の接合構造は、木造建物の木質の柱と、この柱の前記側面に対して端面が突き合わせ状態となる第1の梁と、この第1の梁に対して直角方向に延びて前記柱の側面に隣合う側面に端面が突き合わせ状態となる合わせ梁とを接合する木造柱・梁の接合構造であって、前記いずれかの発明の梁受金物における前記接合板部を、前記の柱の側面またはこの側面に設けられた座彫りの底面に沿って配置し、前記立板部を前記第1の梁の端面に設けられた上下方向に延びるスリット内に挿通し、前記梁受金物の接合板部の前記挿通孔に、前記柱に挿通したボルトを挿通させてこのボルトにより前記接合板部を前記柱に固定し、前記第1の梁の前記ピン挿通孔に固定ピンを挿通しこの固定ピンを前記梁受金物の前記固定ピン挿通孔に挿通して前記第1の梁を前記梁受金物に受けさせ、前記第1の梁を貫通して進入する合わせ梁接合用のボルトを、前記梁受金物の前記切り欠きに挿通して前記合わせ梁接合用のボルトを前記合わせ梁の端面へ進入させたため、合わせ梁を有する木造柱・梁の接合を、同一形状の1スリットタイプの梁受金物を複数用いて行うことができ、しかも梁受金物が簡素な構成で済む。
【0021】
この発明の他の木造柱・梁の接合構造は、木造建物の柱と、この柱の上端面に下面が固定された木質の柱上梁と、この柱上梁の側面における前記柱の上方に位置する部分に対して端面が突き合わせ状態となる第1の梁と、前記柱上梁に沿い前記第1の梁に対して直角方向に延びて端面が前記第1の梁の側面突き合わせ状態となる合わせ梁とを接合する木造柱・梁の接合構造であって、この発明の前記いずれかの構成の梁受金物における前記接合板部を、前記の柱上梁の側面またはこの側面に設けられた座彫りの底面に沿って配置し、前記立板部を前記第1の梁の端面に設けられた上下方向に延びるスリット内に挿通し、前記梁受金物の接合板部の前記挿通孔に、前記柱上梁に挿通したボルトを挿通させてこのボルトにより前記接合板部を前記柱上梁に固定し、前記第1の梁の前記ピン挿通孔に固定ピンを挿通しこの固定ピンを前記梁受金物の前記固定ピン挿通孔に挿通して前記第1の梁を前記梁受金物に受けさせ、前記第1の梁を貫通して進入する合わせ梁接合用のボルトを、前記梁受金物の前記切り欠きに挿通して前記合わせ梁接合用のボルトを前記合わせ梁の端面へ進入させたため、柱上梁とこれに突き合わせられる梁との接合が、1スリットタイプ梁受金物で、合わせ梁の接合用のボルトとの干渉を回避して簡素な構成で行える。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の木造建物の梁受金物の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】同梁受金物を用いて柱・梁接合を行う木造建物の架構の一部を示す斜視図である。
【図3】同柱・梁接合構造の一例の分解斜視図である。
【図4】同柱・梁接合構造の他の例の分解斜視図である。
【図5】図3の同柱・梁接合構造の破断平面図である。
【図6】(A)は図5におけるVIa−VIa矢視図として示す梁受金物の正面図、(B)は図5におけるVIb−VIb矢視図として示す梁受金物の正面図である。
【図7】図5の柱・梁接合構造での合わせ梁にかかる鉛直荷重の柱への伝達経路を示す破断平面図である。
【図8】同柱・梁接合構造での合わせ梁にかかる鉛直荷重の柱への伝達経路を示す斜視図である。
【図9】(A)は実施形態の梁受金物の正面図、(B)は同左側面図、(C)は同右側面図、(D)は同底面図である。
【図10】(A)は同梁受金物を正使いした場合の正面図、(B)は同梁受金物を逆使いした場合の正面図である。
【図11】(A)は実施形態の梁受金物の他の構成例の正面図、(B)は同左側面図、(C)は同右側面図、(D)は同底面図である。
【図12】(A)は同梁受金物を正使いした場合の正面図、(B)は同梁受金物を逆使いした場合の正面図である。
【図13】(A)は実施形態の梁受金物のさらに他の構成例の正面図、(B)は同左側面図、(C)は同右側面図、(D)は同底面図である。
【図14】(A)は同梁受金物を正使いした場合の正面図、(B)は同梁受金物を逆使いした場合の正面図である。
【図15】(A)は実施形態の梁受金物のさらに他の構成例の正面図、(B)は同左側面図、(C)は同右側面図、(D)は同底面図である。
【図16】(A)は同梁受金物を正使いした場合の正面図、(B)は同梁受金物を逆使いした場合の正面図である。
【図17】図2の柱・梁接合構造における第2および第4の梁に用いられる梁受金物の配置を示す平面図である。
【図18】同梁受金物の柱へのボルトによる固定の説明図である。
【図19】この実施形態の梁受金物により柱上梁に第1の梁を接合した柱・梁接合が可能な木造柱・梁の接合構造の例を示す斜視図である。
【図20】同木造柱・梁の接合構造の破断平面図である。
【図21】この実施形態の梁受金物による接合が可能なさらに他の木造柱・梁の接合構造の例を示す斜視図である。
【図22】同木造柱・梁の接合構造の破断平面図である。
【図23】(A)は従来例の破断平面図、(B)は同正面図である。
【図24】(A)は他の従来例の破断平面図、(B)は同正面図である。
【図25】従来例の課題の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
この発明の一実施形態を図1ないし図18と共に説明する。図1はこの発明の木造建物の梁受金物の一実施形態の斜視図を示し、図2はその梁受金物を用いて柱・梁接合を行う木造建物の架構の一部の斜視図を示す。この実施形態の梁受金物1は、図9(A),(B),(C),(D)に、正面図,左側面図,右側面図,および底面図で示すように、立板部2と、この立板部2の基端となる側縁から折れ曲がって立板部2の両側方に延びる接合板部3とでなる。なお、接合板部3は立板部2の一側方にのみ延びる構成としても良い。図10(A)はその梁受金物1の正使いの場合の正面図を示し、図10(B)はその梁受金物1の逆使い(正使いの場合と表裏面を逆にした姿勢)の場合の正面図を示している。なお、逆使いとするのは、複数の梁受金物1を互いに近くに配置する場合に、一部の梁受金物1を逆使いとするとすることで、この梁受金物1に設けられる後述の各孔や切欠の位置が互いにずれ、これらに挿通されるピンやボルトが干渉することが回避できるためである。
【0024】
図2の木造建物の架構の分解斜視図を示す図3のように、梁受金物1の接合板部3は、柱20の一側面に沿って配置される。なお、接合板部3は、図19,図20の例と共に後述するように、柱上梁30Eの側面に沿って配置される場合もある。図3において、梁受金物1の立板部2は、柱20の前記側面に対して突き合わせ状態となる第1の梁30Aの端面に設けられた上下方向に延びるスリット31内に挿入される。なお、図3では、第1の梁30Aに対応する梁受金物1のみを図示したが、第2〜第4の梁30B,30C,30Dにも、これらに対応する同じ構造の梁受金物1が配置される。
【0025】
また、図3に示した例では、柱20の側面に梁受金物1の接合板部3を沿わせる座彫りを設けずに、梁30A〜30Dの端面に接合板部3を逃がす座彫り32を設けているが、別の構成例を示す図4のように、柱20の側面に座彫り22を設けても良い。なお、図4の例では、第3の梁である合わせ梁30Cの端面が突き合わせ状態となる第1の梁30Aの側面に、合わせ梁30Cに対応する梁受金物1の接合板部3を沿わせる座彫り33を設けている。なお、合わせ梁30Cは、例えば、階高を抑えたいが、撓み制限上で梁成があげられない場合等に用いられる。すなわち、合わせ梁30Cで撓みを抑える。
【0026】
梁受金物1の立板部2の先端には、第1の梁30Aの先端に前記スリット31を貫通して設けられた複数のピン挿通孔34に挿通された固定ピン4を挿通させる複数(ここでは6つ)の固定ピン挿通孔5および複数(ここでは2つ)の固定ピン挿通切り欠き6が設けられている。複数のピン挿通孔34およびその並びの上下に位置する上向きおよび下向きの固定ピン挿通切り欠き6は、互いに立板部2の同じ幅方向位置で1列に上下に並べて設けられている。梁30Aに設けられるピン挿通孔34は、第2〜第4の梁30B〜30Dにも設けられる。また、梁受金物1の接合板部3における立板部2の存在する幅方向位置には、柱20と接合する梁受金物取付用のボルト7(図5)を挿通する複数(ここでは4つ)のボルト挿通孔8(図1)が設けられている。さらに、梁受金物1の立板部2には、前記ボルト7の柱20からの突出部分が立板部2と干渉することを回避するための複数(ここでは4つ)の切り欠き9が、立板部2の基端から先端側へ延びて設けられている。この切り欠き9の先端位置は、第1の梁30Aの端部の側面に先端が当接された合わせ梁30Cの端面へ、第1の梁30Aを貫通して進入する合わせ梁接合用のボルト10が貫通可能な位置まで広げられている。具体的には、前記切り欠き9の先端位置は、立板部2の横幅の中央位置よりも先端側とされている。
【0027】
さらに、梁受金物1の立板部2における前記切り欠き9の先端付近には、他の梁受金具1と接合する金物相互接合部材11を挿通する複数(ここでは3つ)の相互接合部材挿通孔12が設けられている。金物相互接合部材11として、ここではボルトが用いられるが、ピンであっても良い。
【0028】
梁受金物1の接合板部3は、立板部2の基端から折れ曲がって一側方に延びる接合板部主部3aと、前記切り欠き9の形成により生じて接合板部主部3aと同一平面で延びる切り起こし片3bとでなる。このように切り欠き9の形成で生じる切り起こし片3bを接合板部3の一部とすることで、溶接などの接続処理を要することなく、1枚の板から梁受金物1を形成でき、加工が容易である。
【0029】
次に、前記梁受金物1を用いて、図2に示す柱・梁接合構造を構築する手順を以下に説明する。図5のように、上記した梁受金物1における接合板部3を、第1の梁30Aの端面が突き合わされる柱20の側面に沿って配置し、接合板部3のボルト挿通孔8に、柱20に挿通した梁受金物取付用のボルト7を挿通させて、このボルト7により接合板部3を柱20に固定する。なお、柱20には、前記ボルト7を挿通させるボルト挿通孔21(図3、図4)が予め設けられている。図4のように、柱20の側面に座彫り22が設けられている場合には、その座彫り22の底面に沿って接合板部3を配置し、その接合板部3をボルト7で固定する。このようにして柱20に固定した梁受金物1の立板部2を、第1の梁30Aの端面に設けられた上下方向に延びるスリット31内に挿入し、この梁30Aのピン挿通孔34に固定ピン4(図3,図4)を挿通し、この固定ピン4を梁受金物1の立板部2の固定ピン挿通孔5に挿通して、第1の梁30Aを梁受金物1に受けさせる。このとき、最下部の固定ピン4は、梁30Aのピン挿通孔34に先に通しておき、その固定ピン4を梁受金物1の固定ピン挿通切り欠き6に載せる。その後、他の固定ピン4を固定ピン挿通孔5する。これより、作業時に梁30Aを作業者が支えておく必要がなくなり、施工性が向上する。
【0030】
第1の梁30Aに対して直角方向に延びて、前記柱20の他の側面に突き合わせ状態となる第2の梁30Bについても、第1の梁30Aと同様に第2の梁受金物1を介して柱20の側面に接合する。すなわち、第2の梁受金物1における接合板部3を、第2の梁30Bの端面が突き合わされる柱20の側面に沿って配置し、接合板部3のボルト挿通孔8に、柱20に挿通した梁受金物取付用のボルト7を挿通させて、このボルト7により接合板部3を柱20に固定する。このようにして柱20に固定した第2の梁受金物1の立板部2を、第2の梁30Bの端面に設けられた上下方向に延びるスリット31内に挿入し、この梁30Bのピン挿通孔34に固定ピン4(図3,図4)を挿通し、この固定ピン4を第2の梁受金物1の立板部2の固定ピン挿通孔5や固定ピン挿通切り欠き6に挿通して、第2の梁30Bを第2の梁受金物1に受けさせる。
【0031】
この第2の梁30Bに重ねて配置されて、端面が前記第1の梁30Aの側面に突き合わせ状態となる第3の梁である合わせ梁30Cについては、第1の梁30Aの側面に固定した第3の梁受金物1に受けさせる。すなわち、第3の梁受金物1における接合板部3を、第1の梁30Aの側面に沿って配置し、第1の梁30Aを貫通して進入する合わせ梁接合用のボルト10を、梁30Aを受ける前記第1の梁受金物1における立板部2の切り欠き9に挿通して合わせ梁30Cの端面へ進入させる。この合わせ梁接合用のボルト10を、第1の梁30Aの側面に配置した第3の梁受金物1における接合板部3のボルト挿通孔8に挿通させて、このボルト10により接合板部3を第1の梁30Aの側面に固定する。なお、第1の梁30Aには、前記ボルト10を挿通させるボルト挿通孔35(図3、図4)が予め設けられている。図4のように、第1の梁30Aの側面に座彫り33が設けられている場合には、その座彫り33の底面に沿って接合板部3を配置し、ボルト10で固定する。このようにして第1の梁30Aの側面に固定した第3の梁受金物1の立板部2を、合わせ梁30Cの端面に設けられた上下方向に延びるスリット31内に挿入し、この梁30Cのピン挿通孔34に固定ピン4を挿通し、この固定ピン4を第3の梁受金物1の立板部2の固定ピン挿通孔5や固定ピン挿通切り欠き6に挿通して、合わせ梁30Cを第3の梁受金物1に受けさせる。なお、図5では、固定ピン4を図示していない。
【0032】
第2の梁30Bおよび合わせ梁30Cの先端には、上記した金物相互接合部材11を挿通させる複数の相互接合部材挿通孔36が設けられている。この2つの梁30B,30Cの前記相互接合部材挿通孔36に、金物相互接合部材11を挿通し、この金物相互接合部材11をさらに第2および第3の梁受金物1における立板部2の相互接合部材挿通孔12に渡って挿通することで、第2および第3の梁受金物1が接合される。なお、図6(A)は図5におけるVIa−VIa矢視断面図を示し、図6(B)は図5におけるVIb−VIb矢視断面図を示す。
【0033】
このように構成した柱・梁接合構造では、合わせ梁30Cにかかる鉛直荷重は、図7および図8に矢印で示す伝達経路で柱20に伝達される。すなわち、合わせ梁30Cに入った鉛直荷重は、金物相互接合部材11を通じて、直接柱20に取り合う第2の梁受金物1に伝達される。これとは別に、合わせ梁30Cを受ける第3の梁受金物1から、第1の梁30Aを受ける第1の梁受金物1を通じても、鉛直荷重を柱20に伝達することができ、荷重の伝達効率が向上する。
【0034】
また、この梁受金物1によると、梁30Aのスリット31に挿入される立板部2と柱20に固定する接合板部3とを有し、柱20へ接合するボルト7が立板部2と干渉することを回避する切り欠き9を前記立板部2に設けたため、1スリットタイプでありながら、柱20への接合用のボルト7の干渉が回避できる。また、この切り欠き9の先端位置を、合わせ梁30Cの接合用のボルト10が貫通可能な位置まで広げたため、合わせ梁30Cの接合用ボルト10との干渉も回避できる。しかも、柱20への接合用のボルト7の干渉を回避するための切り欠き9の先端位置を広げただけで、合わせ梁30Cの接合用のボルト10との干渉も回避でき、前記切り欠き9を2種のボルト7,10の干渉回避に兼用できる。そのため、それぞれのボルト7,10に対する専用の干渉回避部分を形成する必要がなく、梁受金物1が簡素な構成となる。切り欠き9の先端位置を広げたことに伴い、その切り欠き9をボルト締め作業に利用できて、図18と共に後述するように、ボルト7の締め付け用の工具種類の選択や、締め付け方法の選択の自由度も高まる。
【0035】
図11(A),(B),(C),(D)は、前記梁受金物1の他の構成例の正面図,左側面図,右側面図,および底面図を示す。この構成例では、ボルト挿通孔8および切り欠き9がそれぞれ1つとされ、固定ピン挿通孔5は一つ、固定ピン挿通切り欠き6は上下の2つとされており、相互接合部材挿通孔12は省略されている。図12(A)はその梁受金物1の正使いの場合の正面図を示し、図12(B)はその梁受金物1の逆使いの場合の正面図を示している。
【0036】
図13(A),(B),(C),(D)は、前記梁受金物1のさらに他の構成例の正面図,左側面図,右側面図,および底面図を示す。この構成例では、ボルト挿通孔8および切り欠き9がそれぞれ3つ、固定ピン挿通孔5が4つ、固定ピン挿通切り欠き6が2つとされており、相互接合部材挿通孔12は省略されている。図14(A)はその梁受金物1の正使いの場合の正面図を示し、図14(B)はその梁受金物1の逆使いの場合の正面図を示している。
【0037】
図15(A),(B),(C),(D)は、前記梁受金物1のさらに他の構成例の正面図,左側面図,右側面図,および底面図を示す。この構成例では、ボルト挿通孔8および切り欠き9がそれぞれ2つ、固定ピン挿通孔5および固定ピン挿通切り欠き6がそれぞれ2つとされており、さらに2つの相互接合部材挿通孔12が設けられている。図16(A)はその梁受金物1の正使いの場合の正面図を示し、図16(B)はその梁受金物1の逆使いの場合の正面図を示している。
【0038】
図5では、図2〜図4における第4の梁30Dが無い場合の接合構造を示したので、第2の梁30Bを受ける第2の梁受金物1を柱20の側面に固定するのに、梁受金物取付用のボルト7を、第2の梁30Bの配置側とは反対側から柱20に設けたボルト挿通孔21に挿通させた。しかし、第4の梁30Dも柱20の側面に接合する場合には、図17に示すように、柱20を挟んで直線上に並ぶ第2の梁30Bと第4の梁30Dを受ける第2および第4の梁受金物1は、柱20の互いに背面合わせとなる側面に固定されることになる。この場合、ここで用いられる梁受金物1は、接合板部3の各ボルト挿通孔8に対応して、立板部2にその基端から先端側に延びる切り欠き9が設けられているので、図18に示すように梁受金物取付用のボルト7として片引きボルトを使用することにより、柱20における梁受金物1の配置側から、立板部2と干渉することなく接合板部3のボルト挿通孔8にボルト7を挿入して接合板部3を柱20の側面に固定することができる。ボルト7の締付けにおいては、ボルト7の頭部にユニバーサルジョイント40を取付け、インパクトで施工することができる。
【0039】
このように、上記構成の梁受金物1によると、木造建物の柱20の側面に接合される梁30Aと、その梁30Aの側面に先端を突き合わせて接合される合わせ梁30Cとを備える木造柱・梁の接合を、同一の1スリットタイプの梁受金物1を複数用いて行うことができる。
【0040】
なお、この実施形態では、柱20を挟んで互いに直角方向に延びる第1および第2の梁30A,30Bのほか、第2の梁30Bに重ねて配置され端面が第1の梁30Aの側面に突き合わせ状態となる合わせ梁30Cを接合する場合の柱・梁接合構造について示した。しかし、上記梁受金物1を用いた柱・梁接合構造は、これに限らず他の接合構造にも適用できる。その例を以下に説明する。
【0041】
図19,図20は、さらに他の実施形態に係る木造柱・梁の接合構造を示す。この例は木造建物の木質の柱20の上端面に木質の柱上梁30Eを固定し、この柱上梁30Eに対して第1の梁30Aを梁受金物1で固定した例を示す。図1〜図5と共に説明した例とは、第1の梁30Aを柱20に接合するか、柱上梁30Eに接合するかの点の他は同様であり、一応説明するが、対応部分は同一符号を付して説明を省略する場合がある。合わせ梁30Cは柱上梁30Eに沿って配置される。柱20の上端面へ柱上梁30Eを固定する構造は、いずれの構造であっても良く、ここでは説明を省略する。この例では2個の梁受金物1を用いるが、この梁受金物1は、上記いずれの構成のものであっても良い。
【0042】
柱上梁30Eと第1の梁30Aとの接合については、梁受金物1における接合板部3を柱上梁30Eの側面に沿って配置する。なお、柱上梁30Eの側面に座彫り(図示せず)を設けて底面に沿って配置しても良い。立板部2を第1の梁30Aの端面に設けられた上下方向に延びるスリット31内に挿通する。梁受金物1の接合板部3の挿通孔8(図1)に、柱上梁30Eに挿通したボルト7(図20)を挿通させ、このボルト7により接合板部3を柱上梁30Eに固定する。第1の梁30Aのピン挿通孔34に固定ピン4を挿通し、この固定ピン4を梁受金物1の固定ピン挿通孔5に挿通して第1の梁30Aを梁受金物1に受けさせる。
【0043】
合わせ梁30Cは柱上梁30Eに沿って配置し、他の梁受金物1によって第1の梁30Aに接合する。この場合に、第1の梁30Aを貫通して進入する合わせ梁接合用のボルト10は、柱上梁30Eに対して第1の梁30Aを固定する梁受金物1の切り欠き9(図1)に挿通して、合わせ梁30Cの端面へ進入させ、前記他の梁受金物1に固定する。
【0044】
このように、柱上梁30Eに第1の梁30Aを接合する場合も、1スリットタイプ梁受金物1で、合わせ梁30Cの接合用のボルト10との干渉を回避し、簡素な構成で行うことができる。
【0045】
図21,図22は、前記接合金物1を利用する造柱・梁の接合構造の応用例を示す。この例は、木質の柱20と、この柱20の上に木質の柱上梁30E′を設け、この柱上梁30E′に対して直角方向に延びて柱上梁30E′の側面に端面が突き合わせ状態となる直交側の梁30Fを設け、かつ合わせ梁30Gを設けた木造柱・梁の接合構造である。これら直交側の梁30Fおよび合わせ梁30Gは、いずれも、一端の端面が柱上梁30E′に突き合わせ状態とされ、図1または前記いずれかの実施形態に係る梁受金物1で柱上梁30E′に接合される。直交側の梁30Fおよび合わせ梁30Gの下方には、前記柱20とその隣の柱20Aとの間で、耐力壁45が設けられている。耐力壁45は、例えば合板等からなる。耐力壁45の柱20と反対側の端部には、別の柱20′が設けられている。
【0046】
各梁受金物1は、その接合板部3(図1)を、柱上梁30E′の側面またはこの側面に設けられた座彫りの底面に沿って配置し、直交側の梁30Fおよび合わせ梁30Gの端面に設けられた上下方向に延びるスリット31内に挿通する。また、接合板部3の前記ボルト挿通孔8(図1)に、柱上梁30Eに挿通したボルト10を挿通させてこのボルト10により接合板部3を柱上梁30E′に固定する。直交側の梁30Fおよび合わせ梁30Gには、ピン挿通孔34が設けられ、このピン挿通孔34と梁受金物1の固定ピン挿通孔5とに渡って固定ピン4を挿通し、これら直交側の梁30Fおよび合わせ梁30Gを梁受金物1に受けさせる。
【0047】
また、直交側の梁30Fおよび合わせ梁30Gには、合わせ梁接合用のボルト10を挿通するボルト挿通孔35が設けられ、これら2本の梁30F,30Gと、各梁受金物1の立板部2に設けられた相互接合部材挿通孔12とに渡ってピンからなる金物相互接合部材11を挿通し、2つの梁受金物1,1を相互に接合する。
【0048】
このように、上記実施形態の梁受金物1は、柱上梁30Eとこれに突き合わせられる直交側の梁30Fおよび合わせ梁30Gの接合にも利用することができる。
【0049】
以上のように、この発明の各実施形態により、次の効果を得ることができる。
・ 梁受金物1の柱20への固定において、梁受金物取付用のボルト7として片引きボルトを挿入できるので、柱20の互いに背面合わせとなる両側面に梁受金物1を固定する場合でも、無理なく固定することができる。この場合に、ユニバーサルジョイント40を用いてボルト・ナットを取り付けることができるので、施工が簡単になる。
・ 梁受金物1における立板部2の切り欠き9の大きさをコントロールすることで、地震時に金属部分である立板部2を変形させて潰すことができる。したがって、木部である梁で破壊させるよりも性状が安定する。
・ 施工現場などへ梁受金物1を搬入するとき、梁受金物1を重ねやすいので、梱包が小さくて済む。
・ 同一構面に壁線を2つ設けることができ、少ない壁長で効率良く有効な耐力壁を形成できる。
・ 鉛直荷重を受けるために梁せいが上がる場合、合わせ梁を使うことで、建物の階高を抑えることができ、コストダウンできる。
・ 合わせ梁30Cの場合に、梁端部同士を接続することができるので、梁端部にかかる鉛直せん断力を効率良く柱20に伝達できる。
【符号の説明】
【0050】
1…梁受金物
2…立板部
3…接合板部
3a…接合板部主部
3b…切り起こし片
4…固定ピン
5…固定ピン挿通孔
6…固定ピン挿通切り欠き
7…梁受金物取付用のボルト
8…ボルト挿通孔
9…切り欠き
10…合わせ梁接合用のボルト
11…金物相互接合部材
12…相互接合部材挿通孔
20…柱
22…座彫り
30A…第1の梁
30B…第2の梁
30C…合わせ梁
30E…柱上梁
31…スリット
33…合わせ梁の座彫り
34…ピン挿通孔
【技術分野】
【0001】
この発明は、木造建物の柱・梁接合に用いられる梁受金物、およびこの梁受金物を用いた木造柱・梁の接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
木造建物の柱・梁接合に用いられる梁受金物として、図23に示す1スリットタイプののものや、図24に示す2スリットタイプのものが知られている。図23に示す1スリットタイプの梁受金物51は、図23(A)に破断平面図で示すように、1つの立板部52と、この立板部52の基端から両側方に延びる接合板部53とを有する断面T字状の金物である。図23(B)に正面図で示すように、梁受金物51の立板部52には複数の切り欠き54とピン挿通孔55が設けられ、接合板部53には複数のボルト挿通孔(図示せず)が設けられる。また、図23(A)のように、梁80の端面には上下方向に延びる1つのスリット81が設けられる。上記梁受金物51を用いて、木造建物の柱70の一側面に梁80を接合する場合、先ず、柱70の前記側面に梁受金物51の接合板部53をボルト56(図23(B))で固定する。このボルト止めにおいて、梁受金物51の立板部52の切き欠き54は、梁受金物51側へのボルト56の突出を許容する。次に、図23(A)のように梁80の端面に形成されたスリット81内に梁受金物51の立板部52を挿入し、梁80の側面からその幅方向に貫通して設けられるピン挿通孔(図示せず)から、梁受金物51のピン挿通孔55に渡って固定ピン57を挿通する。これにより、梁80を梁受金物51に受けさせる。
【0003】
図24に示す2スリットタイプの梁受金物61は、図24(A)に破断平面図で示すように、互いに平行に並ぶ2つの立板部62,62と、これら両立板部62の基端となる側縁から折れ曲がって両立板部62を連結する接合板部63とを有する断面U字状の金物である。図24(B)に正面図で示すように、梁受金物61の両立板部62には複数のピン挿通孔65が設けられ、接合板部63には複数のボルト挿通孔(図示せず)が設けられる。また、図24(A)のように、梁80 の端面には上下方向に延びる互いに平行な2つのスリット81A,81Aが設けられる。この両スリット81Aの基端側は座彫り部82で連通させてある。上記梁受金物61を用いて、木造建物の柱70の一側面に梁80を接合する場合、先ず、図24(A)のように柱70の前記側面に梁受金物61の接合板部63をボルト56(図24(B))で固定する。次に、図24(A)のように梁80の端面に形成された両スリット81A内に梁受金物61の両立板部62を挿入し、梁80の側面からその幅方向に貫通して設けられるピン挿通孔(図示せず)から、梁受金物61における両立板部62のピン挿通孔65に渡って固定ピン57を挿通する。これにより、梁80を梁受金物61に受けさせる。この接合状態において、梁80の両スリット81Aの基端側を連通させる座彫り部82は、梁受金物61側へのボルト56の突出を許容する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−278027号公報
【特許文献2】特開2006−328709号公報
【特許文献3】特開2008−215057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、従来の梁受金物として1スリットタイプと2スリットタイプのものが知られているが、その多くは2スリットタイプであり、1スリットタイプのものは極めてまれである。2スリットタイプの場合、梁80に2のスリット81Aを形成する必要があるため、梁80の加工工数が増える。
しかし、梁受金物の多くは上記したようにボルトで柱に固定するため、図23に示したような1スリットタイプのものでは、その立板部52と固定用のボルト56が軸心位置に来るように構成すると、ボルト56が立板部52と干渉してしまう。この干渉を避けるためには、ボルト56を軸心から偏心させたり、図23の例のように立板部52にボルト56との干渉を避けるための切り欠き54を設けるなどの処置が必要であり、これらの観点から1スリットタイプのものの採用が少ないと考えられる。
【0006】
また、図25のように、柱70に接合される梁80Bに隣接して、別の合わせ梁80Cを配置する場合、この合わせ梁80Cと直角に配置されて柱70に接合される梁80Aから合わせ梁80Cに向けて梁受金物51を固定するボルト58を貫通させようとすると、そのボルト58が梁80Aを受ける梁受金物51と干渉するため、接合できない。また、柱70に接合される梁80Bと、これに隣接する合わせ梁80Cとを、これらの幅方向に貫通するボルト59で連結しようとしても、これらの梁80B,80Cを受ける梁受金物51の立板部52にボルト59が干渉してしまう。この合わせ梁80Cの受け用ボルト59の干渉については、2スリットタイプでも同じである。そのため、在来工法の接合金物などを併用しなくてはならないなど、複雑な納まりとなる。
【0007】
この発明の目的は、木造柱・梁の接合において、1スリットタイプでありながら、柱または柱上梁への固定用のボルトの干渉が回避でき、かつ合わせ梁を接合するボルトとの干渉回避が簡素な構成で行える梁受金物を提供することである。
この発明の他の目的は、合わせ梁を有する木造柱・梁の接合を、同一形状の1スリットタイプの梁受金物を複数用いて行うことができ、しかも梁受金物が簡素な構成で済む木造柱・梁の接合構造を提供することである。
この発明のさらに他の目的は、柱上梁とこれに突き合わせられる梁との接合が、1スリットタイプ梁受金物で、合わせ梁の接合用のボルトとの干渉を回避して簡素な構成で行える木造柱・梁の接合構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の木造建物の梁受金物は、立板部と、この立板部の基端となる側縁から折れ曲がって前記立板部の両側方または一側方に延びる接合板部とでなり、前記接合板部が、木造建物の柱およびこの柱上の柱上梁のいずれかの側面またはこの側面に設けられた座彫りの底面に沿って配置され、前記立板部が、前記柱または前記柱上梁の前記側面に対して突き合わせ状態となる第1の梁の端面に設けられた上下方向に延びるスリット内に挿入される梁受金物であって、前記立板部の先端に、前記第1の梁の先端に前記スリットを貫通して設けられたピン挿通孔に挿通された固定ピンを挿通させる固定ピン挿通孔および固定ピン挿通切り欠きのいずれか一方または両方を有し、前記接合板部における前記立板部の存在する幅方向位置に、前記柱と接合するボルトを挿通する梁受金物取付用のボルトの挿通孔を設けると共に、このボルトの突出部分が前記立板部と干渉することを回避する切り欠きを、前記立板部に基端から先端側へ延びて設け、この切り欠きの先端位置を、前記第1の梁の端部の側面に先端が当接された合わせ梁の端面へ前記第1の梁を貫通して進入する合わせ梁接合用のボルトが貫通可能な位置まで広げたことを特徴とする。
なお、前記「座彫り」は「座繰り」とも言う。
【0009】
この構成によると、梁のスリットに挿入される立板部と柱に固定する接合板部とを有する梁受金物において、柱または柱上梁へ接合するボルトが立板部と干渉することを回避する切り欠きを前記立板部に設けたため、1スリットタイプでありながら、柱または柱上梁への接合用のボルトの干渉が回避できる。また、この切り欠きの先端位置を、合わせ梁接合用のボルトが貫通可能な位置まで広げたため、合わせ梁の接合用ボルトのとの干渉も回避できる。しかも、柱または柱上梁への接合用のボルトの干渉を回避する切り欠きの先端位置を広げただけで、合わせ梁の接合用のボルトとの干渉も回避でき、前記切り欠きを2種のボルトの干渉回避に兼用できる。そのため、それぞれのボルトに専用の干渉回避部分を形成する必要がなく、梁受金物が簡素な構成となる。切り欠きの先端位置を広げたことに伴い、その切り欠きをボルト締め作業に利用できて、ボルト締め付け用の工具種類の選択や、締め付け方法の選択の自由度も高まる。
【0010】
この発明において、前記切り欠きの先端は、前記立板部の横幅の中央位置よりも先端側であるのが望ましい。前記切り欠きの先端が立板部中央位置よりも先端側であると、合わせ梁の接合用のボルトとの干渉を前記切り欠きで行うにつき、この接合用のボルトの位置を一般的な柱梁の設計においてボルト位置を特に変更することなく回避できる。
【0011】
この発明において、前記立板部における前記切り欠きの先端付近に、他の梁受金物と接合する金物相互接合部材を挿通する相互接合部材挿通孔を設けても良い。
この構成の場合、柱の側面に接合される梁を受ける梁受金物と、前記梁に隣接する合わせ梁を受ける梁受金物とを、これら両梁受金物の立板部の相互接合部材挿通孔に渡って金物相互接合部材を挿通させることにより接合でき、合わせ梁にかかる鉛直荷重を効率よく柱に伝達することができる。
【0012】
この発明において、前記接合板部は、前記立板部の基端から折れ曲がって一側方に延びる接合板部主部と、前記切り欠きの形成により生じて前記接合板部主部と同一平面で延びる切り起こし片とでなるものとしても良い。
このように接合板部の一部を、前記切り欠きの形成により生じた切り起こし片とすることで、溶接などの接続処理を要することなく、1枚の板から梁受金物を形成でき、梁受金物の製造が容易である。
【0013】
この発明の木造柱・梁の接合構造は、木造建物の木質の柱と、この柱の前記側面に対して端面が突き合わせ状態となる第1の梁と、この第1の梁に対して直角方向に延びて前記柱の側面に隣合う側面に端面が突き合わせ状態となる合わせ梁とを接合する木造柱・梁の接合構造であって、前記いずれかの発明の梁受金物における前記接合板部を、前記の柱の側面またはこの側面に設けられた座彫りの底面に沿って配置し、前記立板部を前記第1の梁の端面に設けられた上下方向に延びるスリット内に挿通し、前記梁受金物の接合板部の前記挿通孔に、前記柱に挿通したボルトを挿通させてこのボルトにより前記接合板部を前記柱に固定し、前記第1の梁の前記ピン挿通孔に固定ピンを挿通しこの固定ピンを前記梁受金物の前記固定ピン挿通孔に挿通して前記第1の梁を前記梁受金物に受けさせ、前記第1の梁を貫通して進入する合わせ梁接合用のボルトを、前記梁受金物の前記切り欠きに挿通して前記合わせ梁接合用のボルトを前記合わせ梁の端面へ進入させたことを特徴とする。
【0014】
この構成によると、木造建物の柱の側面に接合される梁と、その梁の側面に先端を突き合わせて接合される合わせ梁とを備える木造柱・梁の接合を、同一形状の1スリットタイプの梁受金物を用いて行うことができる。しかも、梁受金物が簡素な構成で済む。
【0015】
この発明の木造柱・梁の接合構造において、前記梁受金物の他に、この梁受金物と同一形状の第2および第3の梁受金物を用い、第2の梁受金物は、前記柱の第2の梁側を向く側面またはこの側面に設けられた座彫りの底面に沿って配置し、第2の梁受金物の立板部を第2の梁の端面に設けられた上下方向に延びるスリット内に挿入し、第2の梁受金物の接合板部の挿通孔に、前記柱に挿通したボルトを挿通させてこのボルトにより第2の梁受金物の接合板部を前記柱に固定し、前記第2の梁の前記固定ピン挿通孔に固定ピンを挿通しこの固定ピンを前記第2の梁受金物の固定ピン挿通孔および固定ピン挿通切り欠きのいずれか一方または両方に挿通して前記第2の梁を前記梁受金物に受けさせ、第3の梁受金物は、第1の梁の第2の梁側を向く側面またはこの側面に設けられた座彫りの底面に沿って配置し、第3の梁受金物の立板部を前記合わせ梁の端面に設けられた上下方向に延びるスリット内に挿入し、第3の梁受金物の接合板部の挿通孔に、前記第1の梁に挿通したボルトを挿通させてこのボルトにより第3の梁受金物の接合板部を前記第1の梁に固定し、前記合わせ梁の前記ピン挿通孔に固定ピンを挿通しこの固定ピンを前記第3の梁受金物の前記固定ピン挿通孔および固定ピン挿通切り欠きのいずれか一方または両方に挿通して前記合わせ梁を前記第3の梁受金物に受けさせ、前記第2の梁受金物の相互接合部材挿通孔と第3の梁受金物の相互接合部材挿通孔とに渡って金物相互接合部材を挿通させても良い。
【0016】
この構成の場合、柱の側面に接合される第2の梁を受ける第2の梁受金物と、前記第2の梁に隣接する合わせ梁を受ける第3の梁受金物とを、これら両梁受金物の立板部の相互接合部材挿通孔に渡って金物相互接合部材を挿通させることにより接合でき、合わせ梁にかかる鉛直荷重を効率よく柱に伝達することができる。
【0017】
この発明の他の木造柱・梁の接合構造は、木造建物の柱と、この柱の上端面に下面が固定された木質の柱上梁と、この柱上梁の側面における前記柱の上方に位置する部分に対して端面が突き合わせ状態となる第1の梁と、前記柱上梁に沿い前記第1の梁に対して直角方向に延びて端面が前記第1の梁の側面突き合わせ状態となる合わせ梁とを接合する木造柱・梁の接合構造であって、この発明の前記いずれかの構成の梁受金物における前記接合板部を、前記の柱上梁の側面またはこの側面に設けられた座彫りの底面に沿って配置し、前記立板部を前記第1の梁の端面に設けられた上下方向に延びるスリット内に挿通し、前記梁受金物の接合板部の前記挿通孔に、前記柱上梁に挿通したボルトを挿通させてこのボルトにより前記接合板部を前記柱上梁に固定し、前記第1の梁の前記ピン挿通孔に固定ピンを挿通しこの固定ピンを前記梁受金物の前記固定ピン挿通孔に挿通して前記第1の梁を前記梁受金物に受けさせ、前記第1の梁を貫通して進入する合わせ梁接合用のボルトを、前記梁受金物の前記切り欠きに挿通して前記合わせ梁接合用のボルトを前記合わせ梁の端面へ進入させたことを特徴とする。
【0018】
この構成によると、柱上梁とこれに突き合わせられる梁との接合が、1スリットタイプ梁受金物で、合わせ梁の接合用のボルトとの干渉を回避して簡素な構成で行える。
【発明の効果】
【0019】
この発明の木造建物の梁受金物は、立板部と、この立板部の基端となる側縁から折れ曲がって前記立板部の両側方または一側方に延びる接合板部とでなり、前記接合板部が、木造建物の柱およびこの柱上の柱上梁のいずれかの側面またはこの側面に設けられた座彫りの底面に沿って配置され、前記立板部が、前記柱または前記柱上梁の前記側面に対して突き合わせ状態となる第1の梁の端面に設けられた上下方向に延びるスリット内に挿入される梁受金物であって、前記立板部の先端に、前記第1の梁の先端に前記スリットを貫通して設けられたピン挿通孔に挿通された固定ピンを挿通させる固定ピン挿通孔および固定ピン挿通切り欠きのいずれか一方または両方を有し、前記接合板部における前記立板部の存在する幅方向位置に、前記柱と接合するボルトを挿通する梁受金物取付用のボルトの挿通孔を設けると共に、このボルトの突出部分が前記立板部と干渉することを回避する切り欠きを、前記立板部に基端から先端側へ延びて設け、この切り欠きの先端位置を、前記第1の梁の端部の側面に先端が当接された合わせ梁の端面へ前記第1の梁を貫通して進入する合わせ梁接合用のボルトが貫通可能な位置まで広げたため、合わせ梁を備える木造柱・梁の接合構造において、1スリットタイプの梁受金物でありながら、柱または柱上梁への固定用のボルトの干渉が回避でき、かつ合わせ梁を接合するボルトとの干渉回避が簡素な構成で行えるという利点が得られる。
【0020】
この発明の木造柱・梁の接合構造は、木造建物の木質の柱と、この柱の前記側面に対して端面が突き合わせ状態となる第1の梁と、この第1の梁に対して直角方向に延びて前記柱の側面に隣合う側面に端面が突き合わせ状態となる合わせ梁とを接合する木造柱・梁の接合構造であって、前記いずれかの発明の梁受金物における前記接合板部を、前記の柱の側面またはこの側面に設けられた座彫りの底面に沿って配置し、前記立板部を前記第1の梁の端面に設けられた上下方向に延びるスリット内に挿通し、前記梁受金物の接合板部の前記挿通孔に、前記柱に挿通したボルトを挿通させてこのボルトにより前記接合板部を前記柱に固定し、前記第1の梁の前記ピン挿通孔に固定ピンを挿通しこの固定ピンを前記梁受金物の前記固定ピン挿通孔に挿通して前記第1の梁を前記梁受金物に受けさせ、前記第1の梁を貫通して進入する合わせ梁接合用のボルトを、前記梁受金物の前記切り欠きに挿通して前記合わせ梁接合用のボルトを前記合わせ梁の端面へ進入させたため、合わせ梁を有する木造柱・梁の接合を、同一形状の1スリットタイプの梁受金物を複数用いて行うことができ、しかも梁受金物が簡素な構成で済む。
【0021】
この発明の他の木造柱・梁の接合構造は、木造建物の柱と、この柱の上端面に下面が固定された木質の柱上梁と、この柱上梁の側面における前記柱の上方に位置する部分に対して端面が突き合わせ状態となる第1の梁と、前記柱上梁に沿い前記第1の梁に対して直角方向に延びて端面が前記第1の梁の側面突き合わせ状態となる合わせ梁とを接合する木造柱・梁の接合構造であって、この発明の前記いずれかの構成の梁受金物における前記接合板部を、前記の柱上梁の側面またはこの側面に設けられた座彫りの底面に沿って配置し、前記立板部を前記第1の梁の端面に設けられた上下方向に延びるスリット内に挿通し、前記梁受金物の接合板部の前記挿通孔に、前記柱上梁に挿通したボルトを挿通させてこのボルトにより前記接合板部を前記柱上梁に固定し、前記第1の梁の前記ピン挿通孔に固定ピンを挿通しこの固定ピンを前記梁受金物の前記固定ピン挿通孔に挿通して前記第1の梁を前記梁受金物に受けさせ、前記第1の梁を貫通して進入する合わせ梁接合用のボルトを、前記梁受金物の前記切り欠きに挿通して前記合わせ梁接合用のボルトを前記合わせ梁の端面へ進入させたため、柱上梁とこれに突き合わせられる梁との接合が、1スリットタイプ梁受金物で、合わせ梁の接合用のボルトとの干渉を回避して簡素な構成で行える。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の木造建物の梁受金物の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】同梁受金物を用いて柱・梁接合を行う木造建物の架構の一部を示す斜視図である。
【図3】同柱・梁接合構造の一例の分解斜視図である。
【図4】同柱・梁接合構造の他の例の分解斜視図である。
【図5】図3の同柱・梁接合構造の破断平面図である。
【図6】(A)は図5におけるVIa−VIa矢視図として示す梁受金物の正面図、(B)は図5におけるVIb−VIb矢視図として示す梁受金物の正面図である。
【図7】図5の柱・梁接合構造での合わせ梁にかかる鉛直荷重の柱への伝達経路を示す破断平面図である。
【図8】同柱・梁接合構造での合わせ梁にかかる鉛直荷重の柱への伝達経路を示す斜視図である。
【図9】(A)は実施形態の梁受金物の正面図、(B)は同左側面図、(C)は同右側面図、(D)は同底面図である。
【図10】(A)は同梁受金物を正使いした場合の正面図、(B)は同梁受金物を逆使いした場合の正面図である。
【図11】(A)は実施形態の梁受金物の他の構成例の正面図、(B)は同左側面図、(C)は同右側面図、(D)は同底面図である。
【図12】(A)は同梁受金物を正使いした場合の正面図、(B)は同梁受金物を逆使いした場合の正面図である。
【図13】(A)は実施形態の梁受金物のさらに他の構成例の正面図、(B)は同左側面図、(C)は同右側面図、(D)は同底面図である。
【図14】(A)は同梁受金物を正使いした場合の正面図、(B)は同梁受金物を逆使いした場合の正面図である。
【図15】(A)は実施形態の梁受金物のさらに他の構成例の正面図、(B)は同左側面図、(C)は同右側面図、(D)は同底面図である。
【図16】(A)は同梁受金物を正使いした場合の正面図、(B)は同梁受金物を逆使いした場合の正面図である。
【図17】図2の柱・梁接合構造における第2および第4の梁に用いられる梁受金物の配置を示す平面図である。
【図18】同梁受金物の柱へのボルトによる固定の説明図である。
【図19】この実施形態の梁受金物により柱上梁に第1の梁を接合した柱・梁接合が可能な木造柱・梁の接合構造の例を示す斜視図である。
【図20】同木造柱・梁の接合構造の破断平面図である。
【図21】この実施形態の梁受金物による接合が可能なさらに他の木造柱・梁の接合構造の例を示す斜視図である。
【図22】同木造柱・梁の接合構造の破断平面図である。
【図23】(A)は従来例の破断平面図、(B)は同正面図である。
【図24】(A)は他の従来例の破断平面図、(B)は同正面図である。
【図25】従来例の課題の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
この発明の一実施形態を図1ないし図18と共に説明する。図1はこの発明の木造建物の梁受金物の一実施形態の斜視図を示し、図2はその梁受金物を用いて柱・梁接合を行う木造建物の架構の一部の斜視図を示す。この実施形態の梁受金物1は、図9(A),(B),(C),(D)に、正面図,左側面図,右側面図,および底面図で示すように、立板部2と、この立板部2の基端となる側縁から折れ曲がって立板部2の両側方に延びる接合板部3とでなる。なお、接合板部3は立板部2の一側方にのみ延びる構成としても良い。図10(A)はその梁受金物1の正使いの場合の正面図を示し、図10(B)はその梁受金物1の逆使い(正使いの場合と表裏面を逆にした姿勢)の場合の正面図を示している。なお、逆使いとするのは、複数の梁受金物1を互いに近くに配置する場合に、一部の梁受金物1を逆使いとするとすることで、この梁受金物1に設けられる後述の各孔や切欠の位置が互いにずれ、これらに挿通されるピンやボルトが干渉することが回避できるためである。
【0024】
図2の木造建物の架構の分解斜視図を示す図3のように、梁受金物1の接合板部3は、柱20の一側面に沿って配置される。なお、接合板部3は、図19,図20の例と共に後述するように、柱上梁30Eの側面に沿って配置される場合もある。図3において、梁受金物1の立板部2は、柱20の前記側面に対して突き合わせ状態となる第1の梁30Aの端面に設けられた上下方向に延びるスリット31内に挿入される。なお、図3では、第1の梁30Aに対応する梁受金物1のみを図示したが、第2〜第4の梁30B,30C,30Dにも、これらに対応する同じ構造の梁受金物1が配置される。
【0025】
また、図3に示した例では、柱20の側面に梁受金物1の接合板部3を沿わせる座彫りを設けずに、梁30A〜30Dの端面に接合板部3を逃がす座彫り32を設けているが、別の構成例を示す図4のように、柱20の側面に座彫り22を設けても良い。なお、図4の例では、第3の梁である合わせ梁30Cの端面が突き合わせ状態となる第1の梁30Aの側面に、合わせ梁30Cに対応する梁受金物1の接合板部3を沿わせる座彫り33を設けている。なお、合わせ梁30Cは、例えば、階高を抑えたいが、撓み制限上で梁成があげられない場合等に用いられる。すなわち、合わせ梁30Cで撓みを抑える。
【0026】
梁受金物1の立板部2の先端には、第1の梁30Aの先端に前記スリット31を貫通して設けられた複数のピン挿通孔34に挿通された固定ピン4を挿通させる複数(ここでは6つ)の固定ピン挿通孔5および複数(ここでは2つ)の固定ピン挿通切り欠き6が設けられている。複数のピン挿通孔34およびその並びの上下に位置する上向きおよび下向きの固定ピン挿通切り欠き6は、互いに立板部2の同じ幅方向位置で1列に上下に並べて設けられている。梁30Aに設けられるピン挿通孔34は、第2〜第4の梁30B〜30Dにも設けられる。また、梁受金物1の接合板部3における立板部2の存在する幅方向位置には、柱20と接合する梁受金物取付用のボルト7(図5)を挿通する複数(ここでは4つ)のボルト挿通孔8(図1)が設けられている。さらに、梁受金物1の立板部2には、前記ボルト7の柱20からの突出部分が立板部2と干渉することを回避するための複数(ここでは4つ)の切り欠き9が、立板部2の基端から先端側へ延びて設けられている。この切り欠き9の先端位置は、第1の梁30Aの端部の側面に先端が当接された合わせ梁30Cの端面へ、第1の梁30Aを貫通して進入する合わせ梁接合用のボルト10が貫通可能な位置まで広げられている。具体的には、前記切り欠き9の先端位置は、立板部2の横幅の中央位置よりも先端側とされている。
【0027】
さらに、梁受金物1の立板部2における前記切り欠き9の先端付近には、他の梁受金具1と接合する金物相互接合部材11を挿通する複数(ここでは3つ)の相互接合部材挿通孔12が設けられている。金物相互接合部材11として、ここではボルトが用いられるが、ピンであっても良い。
【0028】
梁受金物1の接合板部3は、立板部2の基端から折れ曲がって一側方に延びる接合板部主部3aと、前記切り欠き9の形成により生じて接合板部主部3aと同一平面で延びる切り起こし片3bとでなる。このように切り欠き9の形成で生じる切り起こし片3bを接合板部3の一部とすることで、溶接などの接続処理を要することなく、1枚の板から梁受金物1を形成でき、加工が容易である。
【0029】
次に、前記梁受金物1を用いて、図2に示す柱・梁接合構造を構築する手順を以下に説明する。図5のように、上記した梁受金物1における接合板部3を、第1の梁30Aの端面が突き合わされる柱20の側面に沿って配置し、接合板部3のボルト挿通孔8に、柱20に挿通した梁受金物取付用のボルト7を挿通させて、このボルト7により接合板部3を柱20に固定する。なお、柱20には、前記ボルト7を挿通させるボルト挿通孔21(図3、図4)が予め設けられている。図4のように、柱20の側面に座彫り22が設けられている場合には、その座彫り22の底面に沿って接合板部3を配置し、その接合板部3をボルト7で固定する。このようにして柱20に固定した梁受金物1の立板部2を、第1の梁30Aの端面に設けられた上下方向に延びるスリット31内に挿入し、この梁30Aのピン挿通孔34に固定ピン4(図3,図4)を挿通し、この固定ピン4を梁受金物1の立板部2の固定ピン挿通孔5に挿通して、第1の梁30Aを梁受金物1に受けさせる。このとき、最下部の固定ピン4は、梁30Aのピン挿通孔34に先に通しておき、その固定ピン4を梁受金物1の固定ピン挿通切り欠き6に載せる。その後、他の固定ピン4を固定ピン挿通孔5する。これより、作業時に梁30Aを作業者が支えておく必要がなくなり、施工性が向上する。
【0030】
第1の梁30Aに対して直角方向に延びて、前記柱20の他の側面に突き合わせ状態となる第2の梁30Bについても、第1の梁30Aと同様に第2の梁受金物1を介して柱20の側面に接合する。すなわち、第2の梁受金物1における接合板部3を、第2の梁30Bの端面が突き合わされる柱20の側面に沿って配置し、接合板部3のボルト挿通孔8に、柱20に挿通した梁受金物取付用のボルト7を挿通させて、このボルト7により接合板部3を柱20に固定する。このようにして柱20に固定した第2の梁受金物1の立板部2を、第2の梁30Bの端面に設けられた上下方向に延びるスリット31内に挿入し、この梁30Bのピン挿通孔34に固定ピン4(図3,図4)を挿通し、この固定ピン4を第2の梁受金物1の立板部2の固定ピン挿通孔5や固定ピン挿通切り欠き6に挿通して、第2の梁30Bを第2の梁受金物1に受けさせる。
【0031】
この第2の梁30Bに重ねて配置されて、端面が前記第1の梁30Aの側面に突き合わせ状態となる第3の梁である合わせ梁30Cについては、第1の梁30Aの側面に固定した第3の梁受金物1に受けさせる。すなわち、第3の梁受金物1における接合板部3を、第1の梁30Aの側面に沿って配置し、第1の梁30Aを貫通して進入する合わせ梁接合用のボルト10を、梁30Aを受ける前記第1の梁受金物1における立板部2の切り欠き9に挿通して合わせ梁30Cの端面へ進入させる。この合わせ梁接合用のボルト10を、第1の梁30Aの側面に配置した第3の梁受金物1における接合板部3のボルト挿通孔8に挿通させて、このボルト10により接合板部3を第1の梁30Aの側面に固定する。なお、第1の梁30Aには、前記ボルト10を挿通させるボルト挿通孔35(図3、図4)が予め設けられている。図4のように、第1の梁30Aの側面に座彫り33が設けられている場合には、その座彫り33の底面に沿って接合板部3を配置し、ボルト10で固定する。このようにして第1の梁30Aの側面に固定した第3の梁受金物1の立板部2を、合わせ梁30Cの端面に設けられた上下方向に延びるスリット31内に挿入し、この梁30Cのピン挿通孔34に固定ピン4を挿通し、この固定ピン4を第3の梁受金物1の立板部2の固定ピン挿通孔5や固定ピン挿通切り欠き6に挿通して、合わせ梁30Cを第3の梁受金物1に受けさせる。なお、図5では、固定ピン4を図示していない。
【0032】
第2の梁30Bおよび合わせ梁30Cの先端には、上記した金物相互接合部材11を挿通させる複数の相互接合部材挿通孔36が設けられている。この2つの梁30B,30Cの前記相互接合部材挿通孔36に、金物相互接合部材11を挿通し、この金物相互接合部材11をさらに第2および第3の梁受金物1における立板部2の相互接合部材挿通孔12に渡って挿通することで、第2および第3の梁受金物1が接合される。なお、図6(A)は図5におけるVIa−VIa矢視断面図を示し、図6(B)は図5におけるVIb−VIb矢視断面図を示す。
【0033】
このように構成した柱・梁接合構造では、合わせ梁30Cにかかる鉛直荷重は、図7および図8に矢印で示す伝達経路で柱20に伝達される。すなわち、合わせ梁30Cに入った鉛直荷重は、金物相互接合部材11を通じて、直接柱20に取り合う第2の梁受金物1に伝達される。これとは別に、合わせ梁30Cを受ける第3の梁受金物1から、第1の梁30Aを受ける第1の梁受金物1を通じても、鉛直荷重を柱20に伝達することができ、荷重の伝達効率が向上する。
【0034】
また、この梁受金物1によると、梁30Aのスリット31に挿入される立板部2と柱20に固定する接合板部3とを有し、柱20へ接合するボルト7が立板部2と干渉することを回避する切り欠き9を前記立板部2に設けたため、1スリットタイプでありながら、柱20への接合用のボルト7の干渉が回避できる。また、この切り欠き9の先端位置を、合わせ梁30Cの接合用のボルト10が貫通可能な位置まで広げたため、合わせ梁30Cの接合用ボルト10との干渉も回避できる。しかも、柱20への接合用のボルト7の干渉を回避するための切り欠き9の先端位置を広げただけで、合わせ梁30Cの接合用のボルト10との干渉も回避でき、前記切り欠き9を2種のボルト7,10の干渉回避に兼用できる。そのため、それぞれのボルト7,10に対する専用の干渉回避部分を形成する必要がなく、梁受金物1が簡素な構成となる。切り欠き9の先端位置を広げたことに伴い、その切り欠き9をボルト締め作業に利用できて、図18と共に後述するように、ボルト7の締め付け用の工具種類の選択や、締め付け方法の選択の自由度も高まる。
【0035】
図11(A),(B),(C),(D)は、前記梁受金物1の他の構成例の正面図,左側面図,右側面図,および底面図を示す。この構成例では、ボルト挿通孔8および切り欠き9がそれぞれ1つとされ、固定ピン挿通孔5は一つ、固定ピン挿通切り欠き6は上下の2つとされており、相互接合部材挿通孔12は省略されている。図12(A)はその梁受金物1の正使いの場合の正面図を示し、図12(B)はその梁受金物1の逆使いの場合の正面図を示している。
【0036】
図13(A),(B),(C),(D)は、前記梁受金物1のさらに他の構成例の正面図,左側面図,右側面図,および底面図を示す。この構成例では、ボルト挿通孔8および切り欠き9がそれぞれ3つ、固定ピン挿通孔5が4つ、固定ピン挿通切り欠き6が2つとされており、相互接合部材挿通孔12は省略されている。図14(A)はその梁受金物1の正使いの場合の正面図を示し、図14(B)はその梁受金物1の逆使いの場合の正面図を示している。
【0037】
図15(A),(B),(C),(D)は、前記梁受金物1のさらに他の構成例の正面図,左側面図,右側面図,および底面図を示す。この構成例では、ボルト挿通孔8および切り欠き9がそれぞれ2つ、固定ピン挿通孔5および固定ピン挿通切り欠き6がそれぞれ2つとされており、さらに2つの相互接合部材挿通孔12が設けられている。図16(A)はその梁受金物1の正使いの場合の正面図を示し、図16(B)はその梁受金物1の逆使いの場合の正面図を示している。
【0038】
図5では、図2〜図4における第4の梁30Dが無い場合の接合構造を示したので、第2の梁30Bを受ける第2の梁受金物1を柱20の側面に固定するのに、梁受金物取付用のボルト7を、第2の梁30Bの配置側とは反対側から柱20に設けたボルト挿通孔21に挿通させた。しかし、第4の梁30Dも柱20の側面に接合する場合には、図17に示すように、柱20を挟んで直線上に並ぶ第2の梁30Bと第4の梁30Dを受ける第2および第4の梁受金物1は、柱20の互いに背面合わせとなる側面に固定されることになる。この場合、ここで用いられる梁受金物1は、接合板部3の各ボルト挿通孔8に対応して、立板部2にその基端から先端側に延びる切り欠き9が設けられているので、図18に示すように梁受金物取付用のボルト7として片引きボルトを使用することにより、柱20における梁受金物1の配置側から、立板部2と干渉することなく接合板部3のボルト挿通孔8にボルト7を挿入して接合板部3を柱20の側面に固定することができる。ボルト7の締付けにおいては、ボルト7の頭部にユニバーサルジョイント40を取付け、インパクトで施工することができる。
【0039】
このように、上記構成の梁受金物1によると、木造建物の柱20の側面に接合される梁30Aと、その梁30Aの側面に先端を突き合わせて接合される合わせ梁30Cとを備える木造柱・梁の接合を、同一の1スリットタイプの梁受金物1を複数用いて行うことができる。
【0040】
なお、この実施形態では、柱20を挟んで互いに直角方向に延びる第1および第2の梁30A,30Bのほか、第2の梁30Bに重ねて配置され端面が第1の梁30Aの側面に突き合わせ状態となる合わせ梁30Cを接合する場合の柱・梁接合構造について示した。しかし、上記梁受金物1を用いた柱・梁接合構造は、これに限らず他の接合構造にも適用できる。その例を以下に説明する。
【0041】
図19,図20は、さらに他の実施形態に係る木造柱・梁の接合構造を示す。この例は木造建物の木質の柱20の上端面に木質の柱上梁30Eを固定し、この柱上梁30Eに対して第1の梁30Aを梁受金物1で固定した例を示す。図1〜図5と共に説明した例とは、第1の梁30Aを柱20に接合するか、柱上梁30Eに接合するかの点の他は同様であり、一応説明するが、対応部分は同一符号を付して説明を省略する場合がある。合わせ梁30Cは柱上梁30Eに沿って配置される。柱20の上端面へ柱上梁30Eを固定する構造は、いずれの構造であっても良く、ここでは説明を省略する。この例では2個の梁受金物1を用いるが、この梁受金物1は、上記いずれの構成のものであっても良い。
【0042】
柱上梁30Eと第1の梁30Aとの接合については、梁受金物1における接合板部3を柱上梁30Eの側面に沿って配置する。なお、柱上梁30Eの側面に座彫り(図示せず)を設けて底面に沿って配置しても良い。立板部2を第1の梁30Aの端面に設けられた上下方向に延びるスリット31内に挿通する。梁受金物1の接合板部3の挿通孔8(図1)に、柱上梁30Eに挿通したボルト7(図20)を挿通させ、このボルト7により接合板部3を柱上梁30Eに固定する。第1の梁30Aのピン挿通孔34に固定ピン4を挿通し、この固定ピン4を梁受金物1の固定ピン挿通孔5に挿通して第1の梁30Aを梁受金物1に受けさせる。
【0043】
合わせ梁30Cは柱上梁30Eに沿って配置し、他の梁受金物1によって第1の梁30Aに接合する。この場合に、第1の梁30Aを貫通して進入する合わせ梁接合用のボルト10は、柱上梁30Eに対して第1の梁30Aを固定する梁受金物1の切り欠き9(図1)に挿通して、合わせ梁30Cの端面へ進入させ、前記他の梁受金物1に固定する。
【0044】
このように、柱上梁30Eに第1の梁30Aを接合する場合も、1スリットタイプ梁受金物1で、合わせ梁30Cの接合用のボルト10との干渉を回避し、簡素な構成で行うことができる。
【0045】
図21,図22は、前記接合金物1を利用する造柱・梁の接合構造の応用例を示す。この例は、木質の柱20と、この柱20の上に木質の柱上梁30E′を設け、この柱上梁30E′に対して直角方向に延びて柱上梁30E′の側面に端面が突き合わせ状態となる直交側の梁30Fを設け、かつ合わせ梁30Gを設けた木造柱・梁の接合構造である。これら直交側の梁30Fおよび合わせ梁30Gは、いずれも、一端の端面が柱上梁30E′に突き合わせ状態とされ、図1または前記いずれかの実施形態に係る梁受金物1で柱上梁30E′に接合される。直交側の梁30Fおよび合わせ梁30Gの下方には、前記柱20とその隣の柱20Aとの間で、耐力壁45が設けられている。耐力壁45は、例えば合板等からなる。耐力壁45の柱20と反対側の端部には、別の柱20′が設けられている。
【0046】
各梁受金物1は、その接合板部3(図1)を、柱上梁30E′の側面またはこの側面に設けられた座彫りの底面に沿って配置し、直交側の梁30Fおよび合わせ梁30Gの端面に設けられた上下方向に延びるスリット31内に挿通する。また、接合板部3の前記ボルト挿通孔8(図1)に、柱上梁30Eに挿通したボルト10を挿通させてこのボルト10により接合板部3を柱上梁30E′に固定する。直交側の梁30Fおよび合わせ梁30Gには、ピン挿通孔34が設けられ、このピン挿通孔34と梁受金物1の固定ピン挿通孔5とに渡って固定ピン4を挿通し、これら直交側の梁30Fおよび合わせ梁30Gを梁受金物1に受けさせる。
【0047】
また、直交側の梁30Fおよび合わせ梁30Gには、合わせ梁接合用のボルト10を挿通するボルト挿通孔35が設けられ、これら2本の梁30F,30Gと、各梁受金物1の立板部2に設けられた相互接合部材挿通孔12とに渡ってピンからなる金物相互接合部材11を挿通し、2つの梁受金物1,1を相互に接合する。
【0048】
このように、上記実施形態の梁受金物1は、柱上梁30Eとこれに突き合わせられる直交側の梁30Fおよび合わせ梁30Gの接合にも利用することができる。
【0049】
以上のように、この発明の各実施形態により、次の効果を得ることができる。
・ 梁受金物1の柱20への固定において、梁受金物取付用のボルト7として片引きボルトを挿入できるので、柱20の互いに背面合わせとなる両側面に梁受金物1を固定する場合でも、無理なく固定することができる。この場合に、ユニバーサルジョイント40を用いてボルト・ナットを取り付けることができるので、施工が簡単になる。
・ 梁受金物1における立板部2の切り欠き9の大きさをコントロールすることで、地震時に金属部分である立板部2を変形させて潰すことができる。したがって、木部である梁で破壊させるよりも性状が安定する。
・ 施工現場などへ梁受金物1を搬入するとき、梁受金物1を重ねやすいので、梱包が小さくて済む。
・ 同一構面に壁線を2つ設けることができ、少ない壁長で効率良く有効な耐力壁を形成できる。
・ 鉛直荷重を受けるために梁せいが上がる場合、合わせ梁を使うことで、建物の階高を抑えることができ、コストダウンできる。
・ 合わせ梁30Cの場合に、梁端部同士を接続することができるので、梁端部にかかる鉛直せん断力を効率良く柱20に伝達できる。
【符号の説明】
【0050】
1…梁受金物
2…立板部
3…接合板部
3a…接合板部主部
3b…切り起こし片
4…固定ピン
5…固定ピン挿通孔
6…固定ピン挿通切り欠き
7…梁受金物取付用のボルト
8…ボルト挿通孔
9…切り欠き
10…合わせ梁接合用のボルト
11…金物相互接合部材
12…相互接合部材挿通孔
20…柱
22…座彫り
30A…第1の梁
30B…第2の梁
30C…合わせ梁
30E…柱上梁
31…スリット
33…合わせ梁の座彫り
34…ピン挿通孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立板部と、この立板部の基端となる側縁から折れ曲がって前記立板部の両側方または一側方に延びる接合板部とでなり、前記接合板部が、木造建物の柱およびこの柱上の柱上梁のいずれかの側面またはこの側面に設けられた座彫りの底面に沿って配置され、前記立板部が、前記柱または前記柱上梁の前記側面に対して突き合わせ状態となる第1の梁の端面に設けられた上下方向に延びるスリット内に挿入される梁受金物であって、
前記立板部の先端に、前記第1の梁の先端に前記スリットを貫通して設けられたピン挿通孔に挿通された固定ピンを挿通させる固定ピン挿通孔および固定ピン挿通切り欠きのいずれか一方または両方を有し、
前記接合板部における前記立板部の存在する幅方向位置に、前記柱と接合するボルトを挿通する梁受金物取付用のボルトの挿通孔を設けると共に、
このボルトの突出部分が前記立板部と干渉することを回避する切り欠きを、前記立板部に基端から先端側へ延びて設け、
この切り欠きの先端位置を、前記第1の梁の端部の側面に先端が当接された合わせ梁の端面へ前記第1の梁を貫通して進入する合わせ梁接合用のボルトが貫通可能な位置まで広げたことを特徴とする、
木造建物の梁受金物。
【請求項2】
請求項1において、前記切り欠きの先端は、前記立板部の横幅の中央位置よりも先端側である木造建物の梁受金物。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記立板部における前記切り欠きの先端付近に、他の梁受金物と接合する金物相互接合部材を挿通する相互接合部材挿通孔を設けた木造建物の梁受金物。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記接合板部は、前記立板部の基端から折れ曲がって一側方に延びる接合板部主部と、前記切り欠きの形成により生じて前記接合板部主部と同一平面で延びる切り起こし片とでなる木造建物の梁受金物。
【請求項5】
木造建物の木質の柱と、この柱の前記側面に対して端面が突き合わせ状態となる第1の梁と、この第1の梁に対して直角方向に延びて前記柱の側面に隣合う側面に端面が突き合わせ状態となる合わせ梁とを接合する木造柱・梁の接合構造であって、
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の梁受金物における前記接合板部を、前記の柱の側面またはこの側面に設けられた座彫りの底面に沿って配置し、前記立板部を前記第1の梁の端面に設けられた上下方向に延びるスリット内に挿通し、
前記梁受金物の接合板部の前記挿通孔に、前記柱に挿通したボルトを挿通させてこのボルトにより前記接合板部を前記柱に固定し、
前記第1の梁の前記ピン挿通孔に固定ピンを挿通しこの固定ピンを前記梁受金物の前記固定ピン挿通孔に挿通して前記第1の梁を前記梁受金物に受けさせ、
前記第1の梁を貫通して進入する合わせ梁接合用のボルトを、前記梁受金物の前記切り欠きに挿通して前記合わせ梁接合用のボルトを前記合わせ梁の端面へ進入させた、
木造柱・梁の接合構造。
【請求項6】
請求項5において、前記梁受金物の他に、請求項3記載の梁受金物と同一形状の第2および第3の梁受金物を用い、
第2の梁受金物は、前記柱の第2の梁側を向く側面またはこの側面に設けられた座彫りの底面に沿って配置し、第2の梁受金物の立板部を第2の梁の端面に設けられた上下方向に延びるスリット内に挿入し、第2の梁受金物の接合板部の挿通孔に、前記柱に挿通したボルトを挿通させてこのボルトにより第2の梁受金物の接合板部を前記柱に固定し、前記第2の梁の前記固定ピン挿通孔に固定ピンを挿通しこの固定ピンを前記第2の梁受金物の固定ピン挿通孔および固定ピン挿通切り欠きのいずれか一方または両方に挿通して前記第2の梁を前記梁受金物に受けさせ、
第3の梁受金物は、第1の梁の第2の梁側を向く側面またはこの側面に設けられた座彫りの底面に沿って配置し、第3の梁受金物の立板部を前記合わせ梁の端面に設けられた上下方向に延びるスリット内に挿入し、第3の梁受金物の接合板部の挿通孔に、前記第1の梁に挿通したボルトを挿通させてこのボルトにより第3の梁受金物の接合板部を前記第1の梁に固定し、前記合わせ梁の前記ピン挿通孔に固定ピンを挿通しこの固定ピンを前記第3の梁受金物の前記固定ピン挿通孔および固定ピン挿通切り欠きのいずれか一方または両方に挿通して前記合わせ梁を前記第3の梁受金物に受けさせ、
前記第2の梁受金物の相互接合部材挿通孔と第3の梁受金物の相互接合部材挿通孔とに渡って金物相互接合部材を挿通させた、
木造柱・梁の接合構造。
【請求項7】
木造建物の柱と、この柱の上端面に下面が固定された木質の柱上梁と、この柱上梁の側面における前記柱の上方に位置する部分に対して端面が突き合わせ状態となる第1の梁と、前記柱上梁に沿い前記第1の梁に対して直角方向に延びて端面が前記第1の梁の側面突き合わせ状態となる合わせ梁とを接合する木造柱・梁の接合構造であって、
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の梁受金物における前記接合板部を、前記の柱上梁の側面またはこの側面に設けられた座彫りの底面に沿って配置し、前記立板部を前記第1の梁の端面に設けられた上下方向に延びるスリット内に挿通し、
前記梁受金物の接合板部の前記挿通孔に、前記柱上梁に挿通したボルトを挿通させてこのボルトにより前記接合板部を前記柱上梁に固定し、
前記第1の梁の前記ピン挿通孔に固定ピンを挿通しこの固定ピンを前記梁受金物の前記固定ピン挿通孔に挿通して前記第1の梁を前記梁受金物に受けさせ、
前記第1の梁を貫通して進入する合わせ梁接合用のボルトを、前記梁受金物の前記切り欠きに挿通して前記合わせ梁接合用のボルトを前記合わせ梁の端面へ進入させた、
木造柱・梁の接合構造。
【請求項1】
立板部と、この立板部の基端となる側縁から折れ曲がって前記立板部の両側方または一側方に延びる接合板部とでなり、前記接合板部が、木造建物の柱およびこの柱上の柱上梁のいずれかの側面またはこの側面に設けられた座彫りの底面に沿って配置され、前記立板部が、前記柱または前記柱上梁の前記側面に対して突き合わせ状態となる第1の梁の端面に設けられた上下方向に延びるスリット内に挿入される梁受金物であって、
前記立板部の先端に、前記第1の梁の先端に前記スリットを貫通して設けられたピン挿通孔に挿通された固定ピンを挿通させる固定ピン挿通孔および固定ピン挿通切り欠きのいずれか一方または両方を有し、
前記接合板部における前記立板部の存在する幅方向位置に、前記柱と接合するボルトを挿通する梁受金物取付用のボルトの挿通孔を設けると共に、
このボルトの突出部分が前記立板部と干渉することを回避する切り欠きを、前記立板部に基端から先端側へ延びて設け、
この切り欠きの先端位置を、前記第1の梁の端部の側面に先端が当接された合わせ梁の端面へ前記第1の梁を貫通して進入する合わせ梁接合用のボルトが貫通可能な位置まで広げたことを特徴とする、
木造建物の梁受金物。
【請求項2】
請求項1において、前記切り欠きの先端は、前記立板部の横幅の中央位置よりも先端側である木造建物の梁受金物。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記立板部における前記切り欠きの先端付近に、他の梁受金物と接合する金物相互接合部材を挿通する相互接合部材挿通孔を設けた木造建物の梁受金物。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記接合板部は、前記立板部の基端から折れ曲がって一側方に延びる接合板部主部と、前記切り欠きの形成により生じて前記接合板部主部と同一平面で延びる切り起こし片とでなる木造建物の梁受金物。
【請求項5】
木造建物の木質の柱と、この柱の前記側面に対して端面が突き合わせ状態となる第1の梁と、この第1の梁に対して直角方向に延びて前記柱の側面に隣合う側面に端面が突き合わせ状態となる合わせ梁とを接合する木造柱・梁の接合構造であって、
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の梁受金物における前記接合板部を、前記の柱の側面またはこの側面に設けられた座彫りの底面に沿って配置し、前記立板部を前記第1の梁の端面に設けられた上下方向に延びるスリット内に挿通し、
前記梁受金物の接合板部の前記挿通孔に、前記柱に挿通したボルトを挿通させてこのボルトにより前記接合板部を前記柱に固定し、
前記第1の梁の前記ピン挿通孔に固定ピンを挿通しこの固定ピンを前記梁受金物の前記固定ピン挿通孔に挿通して前記第1の梁を前記梁受金物に受けさせ、
前記第1の梁を貫通して進入する合わせ梁接合用のボルトを、前記梁受金物の前記切り欠きに挿通して前記合わせ梁接合用のボルトを前記合わせ梁の端面へ進入させた、
木造柱・梁の接合構造。
【請求項6】
請求項5において、前記梁受金物の他に、請求項3記載の梁受金物と同一形状の第2および第3の梁受金物を用い、
第2の梁受金物は、前記柱の第2の梁側を向く側面またはこの側面に設けられた座彫りの底面に沿って配置し、第2の梁受金物の立板部を第2の梁の端面に設けられた上下方向に延びるスリット内に挿入し、第2の梁受金物の接合板部の挿通孔に、前記柱に挿通したボルトを挿通させてこのボルトにより第2の梁受金物の接合板部を前記柱に固定し、前記第2の梁の前記固定ピン挿通孔に固定ピンを挿通しこの固定ピンを前記第2の梁受金物の固定ピン挿通孔および固定ピン挿通切り欠きのいずれか一方または両方に挿通して前記第2の梁を前記梁受金物に受けさせ、
第3の梁受金物は、第1の梁の第2の梁側を向く側面またはこの側面に設けられた座彫りの底面に沿って配置し、第3の梁受金物の立板部を前記合わせ梁の端面に設けられた上下方向に延びるスリット内に挿入し、第3の梁受金物の接合板部の挿通孔に、前記第1の梁に挿通したボルトを挿通させてこのボルトにより第3の梁受金物の接合板部を前記第1の梁に固定し、前記合わせ梁の前記ピン挿通孔に固定ピンを挿通しこの固定ピンを前記第3の梁受金物の前記固定ピン挿通孔および固定ピン挿通切り欠きのいずれか一方または両方に挿通して前記合わせ梁を前記第3の梁受金物に受けさせ、
前記第2の梁受金物の相互接合部材挿通孔と第3の梁受金物の相互接合部材挿通孔とに渡って金物相互接合部材を挿通させた、
木造柱・梁の接合構造。
【請求項7】
木造建物の柱と、この柱の上端面に下面が固定された木質の柱上梁と、この柱上梁の側面における前記柱の上方に位置する部分に対して端面が突き合わせ状態となる第1の梁と、前記柱上梁に沿い前記第1の梁に対して直角方向に延びて端面が前記第1の梁の側面突き合わせ状態となる合わせ梁とを接合する木造柱・梁の接合構造であって、
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の梁受金物における前記接合板部を、前記の柱上梁の側面またはこの側面に設けられた座彫りの底面に沿って配置し、前記立板部を前記第1の梁の端面に設けられた上下方向に延びるスリット内に挿通し、
前記梁受金物の接合板部の前記挿通孔に、前記柱上梁に挿通したボルトを挿通させてこのボルトにより前記接合板部を前記柱上梁に固定し、
前記第1の梁の前記ピン挿通孔に固定ピンを挿通しこの固定ピンを前記梁受金物の前記固定ピン挿通孔に挿通して前記第1の梁を前記梁受金物に受けさせ、
前記第1の梁を貫通して進入する合わせ梁接合用のボルトを、前記梁受金物の前記切り欠きに挿通して前記合わせ梁接合用のボルトを前記合わせ梁の端面へ進入させた、
木造柱・梁の接合構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2013−79542(P2013−79542A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220686(P2011−220686)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】
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