説明

木造構造物の仕口金物及び仕口部構造

【課題】取付孔の配置を改善して、仕口金物自体を適正な外形寸法に設定することが可能であって、これら取付孔を介して構造材に固定される固定部材の干渉を防止し得ると共に、構造材に容易に割れが発生することを防止し得る木造構造物の仕口金物及び仕口部構造を提供する。
【解決手段】木造構造物の仕口部3を構成する少なくとも2つの構造材、例えば柱1及び梁2それぞれに取付固定するための2つの固定部5b,5cを有する木造構造物の仕口金物5において、2つの固定部のうち、一方の第1固定部5bには、複数の取付孔7を、当該第1固定部の幅方向に、一定間隔Dを隔てる偶数の列に並べると共に、当該第1固定部の長さ方向に、隣り合う列で位置をずらして一定ピッチPで並べて、千鳥配置で形成すると共に、他方の第2固定部5cには、複数の取付孔を、千鳥配置を幅方向で反転させた反転千鳥配置で形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取付孔の配置を改善して、仕口金物自体を適正な外形寸法に設定することが可能であって、これら取付孔を介して構造材に固定される固定部材の干渉を防止し得ると共に、構造材に容易に割れが発生することを防止し得る木造構造物の仕口金物及び仕口部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
木造構造物において、互いに接合される柱と梁や土台との仕口部には、補強を目的として、またブレースを取り付けるための取付部品として、仕口金物が設けられる。仕口金物としては例えば、特許文献1〜3に開示されている。
【0003】
特許文献1の「筋かい用固定金具」は、柱に釘着する第一固定部片と土台等の横架材に釘着する第二固定部片を互いに直交方向に連設する。各固定部片の長手方向に沿う一端には、各固定部片に対して直交する方向に筋かいを取付ける取付部片を連設して互いに重合させる。また、筋かい止着用の釘などの止着杆を貫通させる透孔を各取付部片に互いに一致させて設けている。
【0004】
特許文献2の「建築物の耐震補強金物」は、鉄板からなり一角に直角をもつ二等辺三角形状の三角板部を有し、この三角板部の直角を挟む2辺からそれぞれ折り曲げられ且つ角部を溶着により一体に接続した側板部を有し、この側板部の外面にゴム板を設置して形成し、前記各側板部に建物の入隅部に取り付けるラグリューボルト用の複数の透孔及びスクリュウくぎ用の複数の小孔を穿設し、前記三角板部には筋かいを締結するためのボルト用の1個の貫通孔とくぎ用の多数の小孔を一組として穿設してなっている。
【0005】
特許文献3の「仕口補強用具」は、水平部材と垂直部材を略直角に接合する仕口部に取付ける仕口補強用具を両側の取付部とそれらの取付部を連結する連結部とから構成し、その連結部に設ける変形部を、仕口部の内側の隅部を中心としてほぼ放射状に延びる複数の屈曲線に沿って交互に屈曲して蛇腹状に形成し、かつ各屈曲部の高さが隅部に近い方から外側へ向けて漸増するように構成する。変形部の幅を狭くして外力による変形を変形部に集中させたり、隣接して設置した対をなす仕口補強用具の間からブレースをとるように構成してもよいものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−319671号公報
【特許文献2】特開平9−78694号公報
【特許文献3】特開2010−31630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
仕口金物を柱などの構造材にビスや釘等の固定部材で取り付ける場合、仕口金物がその性能を発揮する前に固定部材が構造材から抜け出さないように、固定部材を構造材にしっかりと止着する必要がある。近年、大荷重や大規模な変形を受けても性能を発揮し得る仕口金物のニーズが高まりつつあり、このような仕口金物に使用するビス等の固定部材についても、首下長さが長いものを用いたり、本数を増やすなどの対策が必要である。
【0008】
仕口金物には、構造材への取り付けのために、固定部材を挿通する取付孔を形成した固定部が設けられていて、固定部材の本数を増やす場合、固定部の取付孔を増設する必要がある。単に直線状に縦に並べて増設すると、固定部が大きくなってしまって、仕口金物も大型化し、不経済なものとなってしまう。従って、取付孔の配置について、改善が望まれる。
【0009】
他方、木造構造物の木製構造材から見た場合、仕口金物が前後二方向から取付固定される場合、あるいはさらに左右方向からも取り付けられて三方向、さらには四方向から固定される場合があり、構造材内部で固定部材が複雑に錯綜する。錯綜する固定部材同士で干渉が生じると、仕口金物を構造材に適切に取付固定することができなかったり、取付固定することができたとしても、大荷重や大規模変形を受けることで容易に構造材に割れが発生するおそれがあるなどの不具合があり、この面からも、取付孔の配置に対し、改善が望まれる。
【0010】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、取付孔の配置を改善して、仕口金物自体を適正な外形寸法に設定することが可能であって、これら取付孔を介して構造材に固定される固定部材の干渉を防止し得ると共に、構造材に容易に割れが発生することを防止し得る木造構造物の仕口金物及び仕口部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかる木造構造物の仕口金物は、木造構造物の仕口部を構成する少なくとも2つの構造材それぞれに取付固定するための2つの固定部を有する木造構造物の仕口金物において、2つの上記固定部のうち、一方の第1固定部には、複数の取付孔を、当該第1固定部の幅方向に、一定間隔を隔てる偶数の列に並べると共に、当該第1固定部の長さ方向に、隣り合う列で位置をずらして一定ピッチで並べて、千鳥配置で形成すると共に、他方の第2固定部には、複数の取付孔を、上記千鳥配置を幅方向で反転させた反転千鳥配置で形成したことを特徴とする。
【0012】
前記第1及び第2固定部に形成される取付孔の前記千鳥配置及び前記反転千鳥配置は、これら千鳥配置及び反転千鳥配置のいずれか一方が、他方に対して、当該固定部の長さ方向に位置をずらして形成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明にかかる木造構造物の仕口部構造は、上記木造構造物の仕口金物が取り付けられる木造構造物の仕口部構造であって、前記仕口部を構成するいずれか一方の構造材周りに配置された第1及び第2の上記仕口金物が、一方の上記第1の仕口金物は前記第1固定部で、他方の上記第2の仕口金物は前記第2固定部で当該構造材に接合されることを特徴とする。
【0014】
前記第1及び第2の仕口金物を、前記構造材を前後方向から挟む配置で接合すると共に、追加の前記仕口金物を、該構造材の左右方向から接合し、追加の前記仕口金物の前記第1及び第2固定部に形成される取付孔の前記千鳥配置及び前記反転千鳥配置は、上記第1及び第2の仕口金物の取付孔の前記千鳥配置及び前記反転千鳥配置に対して、長さ方向に位置をずらして形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる木造構造物の仕口金物及び仕口部構造にあっては、取付孔の配置を改善することにより、仕口金物自体を適正な外形寸法に設定することができ、これら取付孔を介して構造材に固定される固定部材の干渉を防止することができると共に、構造材に容易に割れが発生することを防止でき、仕口部の耐力を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明にかかる木造構造物の仕口金物の好適な一実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明にかかる木造構造物の仕口部構造に適用される追加の仕口金物を示す斜視図である。
【図3】本発明にかかる木造構造物の仕口部構造の好適な一実施形態を示す概略斜視図である。
【図4】図3の木造構造物の仕口部構造を構成する柱に仕口金物を取付固定した様子を示す平面断面図である。
【図5】図3の木造構造物の仕口部構造の変形例を示す概略斜視図である。
【図6】図5の木造構造物の仕口部構造に追加の仕口金物を適用した変形例を示す概略斜視図である。
【図7】本発明にかかる木造構造物の仕口金物の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明にかかる木造構造物の仕口金物及び木造構造物の仕口部構造の好適な実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。図1には、木製構造材である柱1と梁2や土台等の横架材とを接合して構成した仕口部3が示されている。仕口部3の入隅部4は、互いに面する柱1の一側面と梁2の一側面とによって形成され、これら側面が仕口金物5を柱1及び梁2それぞれに取付固定するための2つの取付面1a,2aとなる。
【0018】
まず、本実施形態にかかる木造構造物の仕口金物5について説明する。図1に示すように、仕口金物5は板材を加工して形成され、柱1から梁2にわたる大きさの支持板部5aと、柱1及び梁2の2つの取付面1a,2aそれぞれに面して、支持板部5aから折り曲げて形成された2つの固定部5b,5cとを備える。支持板部5aは、背景技術で紹介したように、平板状であっても、屈曲板状であってもよい。
【0019】
固定部5b,5cには、仕口金物5を柱1や梁2に取付固定するためのコーチボルトやビス、釘などの固定部材6(図3及び図4参照)を挿通する取付孔7が複数形成される。取付孔7は、穿孔によって形成される。
【0020】
2つの固定部5b,5cのうち、一方の第1固定部5bに形成される取付孔7は、当該第1固定部5bの短い寸法に設定された幅方向に一定間隔Dを隔てて、列をなすように並べて形成される。列は、2列や4列など、偶数列に設定される。また取付孔7は、各列において、第1固定部5bの長い寸法に設定された長さ方向に一定ピッチPで、並べて形成される。さらに、取付孔7は、隣り合う列同士において、互いに位置をずらして並べて形成される。これにより、第1固定部5bの複数の取付孔7は、いわゆる千鳥配置で形成される。
【0021】
隣り合う列同士で取付孔7をずらす量Xは、一方の列の1つの取付孔7が、隣接する他方の列の2つの取付孔7間に位置すれば、どのように設定してもよい。ずらす量Xは、ピッチPの半分(1/2・P)とすれば、取付孔7をバランスよく配置することができ、当該取付孔7に挿通されて柱1や梁2に固定される固定部材6も、バランスよく配置することができる。
【0022】
2つの固定部5b,5cのうち、他方の第2固定部5cに形成される複数の取付孔7は、支持板部5aに鏡を置いて第1固定部5bを映し出したときに反転して映る様子から理解されるように、千鳥配置を幅方向で反転させた反転千鳥配置で、第1固定部5bとは異なる配列で形成される。
【0023】
さらに、後述する追加の仕口金物5Zは、取付孔7の形成位置が異なる他は、図1に示した仕口金物5と同一構成を備える。図2に示すように、追加の仕口金物5Zの第1及び第2固定部5d,5eに形成される取付孔7zの千鳥配置及び反転千鳥配置は、図1に示している仕口金物5の取付孔7(図2中、仮想線で示す)の千鳥配置及び反転千鳥配置に対し、それら固定部5d,5eの長さ方向に位置をずらして形成されている。すなわち、これら固定部5d,5eの長さ方向において、千鳥配置及び反転千鳥配置の領域が位置ずれされている。
【0024】
ずらし量Yは、図1の仕口金物5と図2の追加の仕口金物5Zの第1固定部5b,5d同士または第2固定部5c,5e同士をそれぞれ重ね合わせたとき、取付孔7,7zの位置が一致しないように設定されている。
【0025】
次に、本実施形態にかかる木造構造物の仕口部構造について説明する。図3及び図4には、仕口部3を構成する木製構造材のいずれか一方、例えば柱1周りに2つの仕口金物5,5を配置する例が示されている。図示例は、支持板部5aを柱1の幅方向中央に設定して、柱1の前後方向から仕口金物5,5を配置した状態に対応するもので、前方の第1の仕口金物5の取付孔7位置が白抜き四角形で、後方の第2の仕口金物5の取付孔7位置が梨地四角形で示されている。
【0026】
これら第1及び第2の仕口金物5,5を同一の柱1の前方及び後方から取付固定する場合、第1の仕口金物5は第1固定部5bで、第2の仕口金物5は第2固定部5cで柱1に接合される。反対に、第1の仕口金物5を第2固定部5cで、第2の仕口金物5を第1固定部5bで接合するようにしてもよい。要するに、千鳥配置の取付孔7と反転千鳥配置の取付孔7により、これらに挿通される固定部材6によって接合されて、2つの仕口金物5,5が柱1に取り付けられる。
【0027】
図4は柱1の平断面を示していて、相対的に柱1の高さ方向上方に位置する固定部材6に対し、それよりも下に位置する固定部材6を破断した細い二点鎖線で示していて、上下左右方向に、互いに避けた位置に固定部材6が配置される。
【0028】
本実施形態にかかる木造構造物の仕口金物5及び木造構造物の仕口部構造にあっては、千鳥配置と反転千鳥配置の取付孔7によって、複数の固定部材6をこれらが干渉することなく柱1に接合することができる。
【0029】
また、千鳥配置及び反転千鳥配置は、一方が他方の空所を埋めて補い合う関係であって、これら配置に従って取付孔7から打ち込まれる固定部材6は、柱1内部で均等に分散配置され、柱1に容易に割れが生じるなど柱強度を損なうことなく、仕口金物5を取付固定することができる。従って、仕口部3の耐力を向上できる。
【0030】
また、千鳥配置及び反転千鳥配置により、取付孔7をスペース的に効率よく形成することができ、取付孔7を増設しても、仕口金物5自体を適正な外形寸法に設定することができる。
【0031】
図5には、上記実施形態の変形例が示されている。図5では、柱1周りに3つの仕口金物5を配置する例を示している(柱1後方の仕口金物は図示省略)。図示例は、支持板部5aを柱1の幅方向中央に設定して、柱1の前後方向から2つ、柱1の右方から一つの仕口金物5を配置した状態に対応するもので、前方の第1の仕口金物5の取付孔7位置が白抜き四角形で、右方の第2の仕口金物5の取付孔7位置が梨地四角形で示されている。
【0032】
これら第1及び第2の仕口金物5,5を同一の柱1の前方や後方及び右方から取付固定する場合、図5中、破線で示した支持板部5aの向きから理解されるように、第1の仕口金物5は第1固定部5bで、第2の仕口金物5は第2固定部5cで柱1に接合される。反対に、第1の仕口金物5を第2固定部5cで、第2の仕口金物5を第1固定部5bで接合するようにしてもよい。この例にあっても、千鳥配置の取付孔7と反転千鳥配置の取付孔7により、これらに挿通される固定部材6によって接合されて、仕口金物5が3方から柱1に取り付けられる。
【0033】
図5に示した例では特に、柱1の前面の取付面1aと右側面の取付面1aとにおける取付孔7の配置が、柱1の端縁1bを挟んで粗密を繰り返す(図中、3つ→2つ→3つ→2つ)ものとなる。第1及び第2の仕口金物5,5を同じ固定部(例えば第1固定部5b,5b)で接合すると、柱1の端縁1bで密になり、端縁1bから離れた位置で疎になるというアンバランスを生じてしまうが、図示したように、異なる固定部5b,5cで接合することによりこのようなアンバランスを生じることがなく、固定部材6も取付孔7の配置に従って柱1内部で均等に分散配置され、柱強度を損なうことなく、仕口金物5を取り付けることができる。
【0034】
図5にあっても、上記図3及び図4で説明した例と同様の作用効果を奏することはもちろんである。
【0035】
図5では、仕口金物5を3方向から取り付ける場合を例にとって説明したが、前後方向いずれか一方及び左右方向いずれか一方の2方向や、前後左右4方向から取り付けることで仕口部構造を構成してもよいことはもちろんである。
【0036】
図6には、上記実施形態の他の変形例として、特に、上述した追加の仕口金物5Zを用いる場合が示されている。図6では、図5と同様に、柱1周りに3つの仕口金物5,5Zを配置する例を示している(柱1後方の仕口金物は図示省略)。
【0037】
図示例は、支持板部5aを柱1の幅方向中央に設定して、柱1の前後方向から2つの仕口金物(第1及び第2の仕口金物)5を、柱1の右方から一つの追加の仕口金物5Zを配置した状態に対応するもので、前方の仕口金物5の取付孔7位置が白抜き四角形で、右方の追加の仕口金物5Zの取付孔7z位置が梨地四角形で示されている。
【0038】
これら前方の仕口金物5及び追加の仕口金物5Zを同一の柱1の前方及び右方から取付固定する場合も、前方の仕口金物5は第1固定部5b(千鳥配置)で、追加の仕口金物5Zは第2固定部5e(反転千鳥配置)で柱1に接合される。反対に、前方の仕口金物5を第2固定部5c(反転千鳥配置)で、追加の仕口金物5Zを第1固定部5d(千鳥配置)で接合するようにしてもよい。この例にあっても、千鳥配置の取付孔7と反転千鳥配置の取付孔7zもしくは反対配置の取付孔7,7zにより、これらに挿通される固定部材6によって接合されて、仕口金物5,5Zが3方から柱1に取り付けられる。
【0039】
右方の追加の仕口金物5Zは、前方および後方の仕口金物5に対し、ずらし量Yをもって千鳥配置及び反転千鳥配置がずらされているので、さらに固定部材6同士の干渉を防止して、仕口金物5,5Zを柱1に接合することができる。特に、首下長さが長い固定部材6を用いる必要があって、柱1内部での干渉を避け得ない場合に、追加の仕口金物5Zを用いることで、適切に仕口部構造を構成することができる。
【0040】
また、前後方向の2つの仕口金物5の千鳥配置と反転千鳥配置の関係において、スペース的にまだ余地があり、追加の仕口金物5Zの位置ずれされた千鳥配置もしくは反転千鳥配置の取付孔7zは、この余地を埋める関係にあり、これら配置に従って取付孔7,7zから打ち込まれる固定部材6は、柱1内部でさらに密に均等に分散配置され、柱1に容易に割れが生じるなど柱強度を損なうことなく、仕口金物5,5Zを取付固定することができる。
【0041】
追加の仕口金物5Zにあっても、千鳥配置及び反転千鳥配置により、取付孔7zをスペース的に効率よく形成することができ、取付孔7zを増設しても、当該追加の仕口金物5Z自体を適正な外形寸法に設定することができる。
【0042】
図6では、仕口金物5及び追加の仕口金物5Zを3方向から取り付ける場合を例にとって説明したが、前後方向いずれか一方の仕口金物5及び左右方向いずれか一方の追加の仕口金物5Zによる2方向からの取り付けや、前後方向2つの仕口金物5及び左右方向2つの追加の仕口金物5Zによる4方向からの取り付けによって仕口部構造を構成してもよいことはもちろんである。
【0043】
図7には、上記実施形態にかかる木造構造物の仕口金物5の変形例が示されている。図1に示した仕口金物5に対し、図2に示した追加の仕口金物5Zでは、第1及び第2固定部5d,5e双方で千鳥配置及び反転千鳥配置の領域を位置ずれさせているが、図7に示した仕口金物5Pのように、いずれか一方の固定部(図示例にあっては、第1固定部5f)でのみ、位置ずれさせるようにしてもよい。すなわち、この変形例では、第1及び第2固定部5f,5gに形成される取付孔7,7zの千鳥配置及び反転千鳥配置に関し、これら千鳥配置及び反転千鳥配置のいずれか一方が、他方に対して、固定部5fの長さ方向に位置をずらして形成されている。このような仕口金物5Pを形成することで、構造材への取付のバリエーションを増やすことができ、さらに、取付孔7,7zを介して構造材に固定される固定部材6の干渉を防止できると共に、構造材に容易に割れが発生することを防止することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 柱
2 梁(横架材)
3 仕口部
5 仕口金物
5Z 追加の仕口金物
5b〜5e 第1及び第2固定部
7 仕口金物の取付孔
7z 追加の仕口金物の取付孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木造構造物の仕口部を構成する少なくとも2つの構造材それぞれに取付固定するための2つの固定部を有する木造構造物の仕口金物において、
2つの上記固定部のうち、一方の第1固定部には、複数の取付孔を、当該第1固定部の幅方向に、一定間隔を隔てる偶数の列に並べると共に、当該第1固定部の長さ方向に、隣り合う列で位置をずらして一定ピッチで並べて、千鳥配置で形成すると共に、
他方の第2固定部には、複数の取付孔を、上記千鳥配置を幅方向で反転させた反転千鳥配置で形成したことを特徴とする木造構造物の仕口金物。
【請求項2】
前記第1及び第2固定部に形成される取付孔の前記千鳥配置及び前記反転千鳥配置は、これら千鳥配置及び反転千鳥配置のいずれか一方が、他方に対して、当該固定部の長さ方向に位置をずらして形成されていることを特徴とする請求項1に記載の木造構造物の仕口金物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の木造構造物の仕口金物が取り付けられる木造構造物の仕口部構造であって、
前記仕口部を構成するいずれか一方の構造材周りに配置された第1及び第2の上記仕口金物が、一方の上記第1の仕口金物は前記第1固定部で、他方の上記第2の仕口金物は前記第2固定部で当該構造材に接合されることを特徴とする木造構造物の仕口部構造。
【請求項4】
前記第1及び第2の仕口金物を、前記構造材を前後方向から挟む配置で接合すると共に、追加の前記仕口金物を、該構造材の左右方向から接合し、
追加の前記仕口金物の前記第1及び第2固定部に形成される取付孔の前記千鳥配置及び前記反転千鳥配置は、上記第1及び第2の仕口金物の取付孔の前記千鳥配置及び前記反転千鳥配置に対して、長さ方向に位置をずらして形成されていることを特徴とする請求項3に記載の木造構造物の仕口部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−132258(P2012−132258A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286659(P2010−286659)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000000446)岡部株式会社 (277)
【Fターム(参考)】