説明

【課題】ガススプリングの後端を支持する横連結杆の強度を向上させ、天板を安定して昇降させうるようにする。
【解決手段】脚体より前方に延出し、かつ後端が脚体の前端部に枢着された左右1対の平行リンク機構の前端部により、天板を昇降可能に支持するとともに、脚体における左右の平行リンク機構の枢着部同士を、中空状の横連結杆4により連結し、この横連結杆4の中間部と、天板の左右方向の中間部とに、天板昇降用ガススプリング21の前後の端部を連結し、かつ横連結杆4におけるガススプリング21の連結部近傍の中空孔内に、補強部材27を嵌入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脚体の前方に延出する左右1対の平行リンク機構の前端部により、天板を昇降可能に支持してなる机に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の机としては、例えば特許文献1に記載されているように、脚体に後端が枢着された左右1対の前方を向く平行リンク機構の前端を、天板(副卓板)の後端部に枢着するとともに、下位のリンク杆同士を横連結杆により連結し、下位のリンク杆と脚体との間に設けたガススプリングを作動させることにより、天板を昇降させうるようにしたものがある。
【特許文献1】実開昭62ー48233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献に記載されている机のように、脚体の前方に延出する平行リンク機構により天板を支持し、この天板をガススプリングにより昇降させると、天板の荷重が、ガススプリングを介して、横連結杆に大きな曲げ荷重となって作用し、そのガススプリングの取付部が変形したり、全体が撓んだりして、天板を安定して昇降させることができなくなる恐れがある。
【0004】
これを防止するためには、横連結杆の断面形状を大としたり、強度の高い材料を使用するなどして、横連結杆の剛性を高める必要があり、このようにすると、横連結杆が大型化して、重量が増大するとともに、コストも上昇する。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、ガススプリングの後端を支持する横連結杆の強度を、簡単かつ安価な手段により向上させ、天板を安定して昇降させうるようにした机を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1)脚体より前方に延出し、かつ後端が脚体の前端部に枢着された上下1対のリンクアームよりなる左右1対の平行リンク機構の前端部により、天板を昇降可能に支持するとともに、前記脚体における前記左右の平行リンク機構の枢着部同士を、中空状の横連結杆により連結し、この横連結杆の左右方向の中間部と、前記天板の下面の左右方向の中間部とに、天板昇降用ガススプリングの前後の端部を連結し、かつ前記横連結杆におけるガススプリングの連結部近傍の中空孔内に、補強部材を嵌入する。
【0007】
(2)上記(1)項において、左右の平行リンク機構における下位のリンクアームの後端同士を、横連結杆の中空孔に挿通した左右方向を向く連結軸の両側端に連結するとともに、前記連結軸の左右方向の中間部を、補強部材に形成した挿通孔に、密接させて、相対回動可能に嵌合する。
【0008】
(3)上記(1)または(2)項において、横連結杆の中空孔と補強部材との断面形状を、互いにほぼ補形をなすものとする。
【0009】
(4)上記(1)〜(3)項のいずれかにおいて、補強部材の外周面に、横連結杆の中空孔の内面に接触する突条を、左右方向に向かって複数突設する。
【0010】
(5)上記(1)〜(4)項のいずれかにおいて、横連結杆に、ガススプリングの後端を枢着するブラケットを、横連結杆の中空孔内に突出するようにしたボルトにより固定し、このボルトの先端部に、補強部材の側面を当接させる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、横連結杆における天板昇降用ガススプリングの連結部近傍の中空孔内に、補強部材を嵌入しているため、横連結杆の左右方向の中央部付近の曲げ強度が向上する。
従って、脚体の前方に延出する平行リンク機構の前端部により天板を支持し、この天板をガススプリングにより昇降させる際において、ガススプリングを介して横連結杆の中央部に大きな荷重が加わっても、横連結杆におけるガススプリングの連結部が変形したり、全体が撓むなどする恐れは小さく、天板を安定して昇降させることができる。
また、横連結杆を強度の高い高価な材料により形成したり、断面形状を大きくしたりする必要がないので、横連結杆のコストを低減しうるとともに、小型軽量化が図れる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、横連結杆の中空孔に挿通された、左右のリンク機構における下位のリンクアーム同士を連結している連結軸を、補強部材の挿通孔に、密接させて嵌合しているので、連結軸も補強部材として機能し、横連結杆の強度はより高まる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、横連結杆の中空孔に、補強部材を適正に嵌入しうるので、横連結杆は、前後及び上下のいずれの方向にも変形しにくくなる。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、横連結杆の中空孔と、補強部材の外周面との摺動抵抗が小さくなるので、補強部材を横連結杆の中空孔内に容易に嵌入することができる。
【0015】
請求項5記載の発明によれば、横連結杆の中空孔におけるガススプリングの連結部近傍に、補強部材を、容易に位置決めして嵌入することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の机の一実施形態の斜視図、図2は、同じく側面図、図3は、同じく天板と補助天板とを取り除いた支持フレームの斜視図である。
【0017】
支持フレーム(1)は、側面視倒立T字状をなす左右1対の脚体(2)(2)と、各脚体(2)の上端に固着され、脚体(2)の一部をなす前後方向を向く支持杆(3)(3)と、左右の支持杆(3)(3)の前端部同士および後端部同士を連結する前後の横連結杆(4)(5)と、左右の支持杆(3)(3)の前部に、前方(以下、図1および図2の斜め左下方を前として説明する)を向くように取付けられた天板支持体(6)とを備えている。
【0018】
脚体(2)は、前後方向を向くベース脚(2a)と、その中央よりも若干後部側において起立する、平面視概ね楕円形断面の脚柱(2b)とからなっている。ベース脚(2a)の前後の端部の下面には、高さ調整用のアジャスタ(2c)が設けられている。
【0019】
図2及び図3に示すように、上記天板支持体(6)は、左右1対の支持杆(3)(3)の前端部に、上下方向に回動可能に装着された、前方を向く左右1対の平行リンク機構(7)(7) を備えている。
【0020】
左右の平行リンク機構(7)(7)は、左右の支持杆(3)(3)の前端部に一体的に形成した軸受部(8)(8)により回動自在に枢支され、かつ前方の横連結杆(4)内に挿通された、後記する連結軸(30)の両端に後端部が固嵌された前方を向く第1リンクアーム(9)と、その内方において、後端が支持杆(3)の前端上部に設けられた上向突部(10)に、左右方向を向く枢軸(11)をもって回動自在に枢支された、第1リンクアーム(9)よりも上位に位置する段違いの第2リンクアーム(12)と、第1、第2リンクアーム(9)(12)が互いに平行をなすようにして、その前端部に左右方向を向く軸(13)(第2リンクアーム側の軸は図示略)をもって連結された側面視ほぼT字状をなす昇降体(14)とを備えている。
【0021】
左右の昇降体(14)(14)の上端後部同士は、左右方向を向く連結杆(15)をもって互いに連結されている。
左右の昇降体(14)(14)の上端前部には、天板(16)の下面両側部に固着した前後方向を向くブラケット(17)(17)の前端部が、天板(16)の重心より前方において、左右方向を向く軸(18)をもって枢着されている。
【0022】
天板(16)の後方には、横長の補助天板(19)が、その左右両側部下面に設けた1対の脚杆(20)(20)を、左右の支持杆(3)(3)を貫通して、脚体(2)(2)内に高さ調節可能として嵌合することにより、上下位置調節可能に支持されている。
【0023】
連結杆(15)の中央部と、横連結杆(4)の中央部とには、連結杆(15)を介して、天板(16)を上昇する方向に付勢する昇降用の油圧ロック付きガススプリング(21)の各端部が、側面視においてガススプリング(21)が第1、第2リンクアーム(9)(12)に対して交差する方向を向くようにして連結されている。
また、ガススプリング(21)の側方において、横連結杆(4)と、天板(16)における重心より後方の部分とには、天板(16)の後部を上向きに付勢する天板傾斜用の油圧ロック付きガススプリング(22)の前後の端部が、ブラケット(23)(23)及び左右方向を向く軸(図示略)をもって枢着されている。
【0024】
天板昇降用のガススプリング(21)の後端は、図4及び図5にも示すように、横連結杆(4)の前面中央部に左右2本のボルト(24)をもって固着されたブラケット(25)に、左右方向を向く枢軸(26)により枢着されている。
上記前部側の横連結杆(4)は、図4及び図5に示すように、アルミニウム合金等により、両側端が開口する角管状に形成され、その両側端は、左右の第1リンクアーム(9)の後端の枢着部である左右1対の支持杆(3)における前端の対向面に固着されている。
【0025】
横連結杆(4)の中空孔内における左右方向の中央部、すなわち天板昇降用ガススプリング(21)の後端の取付部付近には、横連結杆(4)の中空孔の断面形状とほぼ補形をなす例えばポリアセタール等よりなる硬質の補強部材(27)が嵌合されている。
【0026】
補強部材(27)は、横連結杆(4)に螺合されたブラケット(25)取付用の一方(右方)のボルト(24)における先端部、すなわち横連結杆(4)内への突出端部に当接する位置まで、横連結杆(4)の側端よりその内部に嵌入されている。なお、補強部材(27)における前後及び上下の外周面には、横連結杆(4)の中空孔の内面に接触する左右方向を向く複数の突条(28)が形成され、横連結杆(4)の中空孔と、補強部材の外周面との摺動抵抗を小さくすることにより、補強部材(27)を横連結杆(4)内に容易に嵌合しうるようにしてある。
【0027】
補強部材(27)には、左右方向を向く挿通孔(29)が穿設され、この挿通孔(29)により、横連結杆(4)に挿通された、上記左右の第1リンクアーム(9)同士を連結している連結軸(30)の左右方向の中央部が、相対回動可能に支持されている。
【0028】
以上説明したように、上記実施形態の机においては、角管状をなす前部側の横連結杆(4)の中央部に、補強部材(27)を嵌入しているため、特に、横連結杆(4)の中央部の曲げ強度が大となる。従って、脚体(2)の前方に延出する平行リンク機構(7)の前端部により天板(16)を支持し、この天板(16)をガススプリング(21)により昇降させる際において、ガススプリング(21)を介して横連結杆(4)の中央部に大きな荷重が加わっても、その部分が変形したり、横連結杆(4)全体が撓んだりする恐れは小さくなる。
その結果、天板(16)を安定よく昇降させることができる。
【0029】
また、補強部材(27)の挿通孔(29)により、左右の第1リンクアーム(9)に両端が連結された連結軸(30)が、相対回動可能に支持されているので、連結軸(30)も補強部材として機能し、横連結杆(4)の中央部の強度はより高まる。
このように、角管状とした横連結杆(4)内の中央部に、短寸の補強部材(27)を嵌入するのみの簡単な手段で横連結杆(4)の強度を大としうるので、それを強度の高い高価な材料により形成したり、断面形状を大きくしたりする必要はなく、横連結杆(4)のコストを低減しうるとともに、小型軽量化が図れる。
【0030】
なお、上記実施形態では、補強部材(27)の嵌合位置を、横連結杆(4)の中央よりもやや右方としているが、図5の2点鎖線で示すように、ブラケット(25)の取付部の中央部としてもよく、このようにすれば、補強部材(27)は、横連結杆(4)のほぼ中央に位置し、ガススプリング(21)の荷重を効果的に受けることができる。
この際、補強部材(27)の左右寸法を、ブラケット(25)取付用の左右のボルト(24)(24)間の寸法とほぼ等しくすれば、補強部材(27)の左右位置を、2本のボルト(24)により容易に位置決めすることができ、かつ左右方向に移動するのも防止される。
【0031】
上記実施形態では、横連結杆(4)を角管状としているが、円形、楕円形、もしくは四角形以上の多角形断面等の管状としてもよく、この際にも、それらの中空孔と、補強部材(27)との断面形状を補形をなすようにすればよい。
【0032】
また、上記実施形態では、短寸の1個の補強部材(27)を横連結杆(4)に嵌入しているが、ブラケット(25)の取付部近傍の左方にも、上記と同様の補強部材を、左方のボルト(24)と当接するように嵌入したり、上記補強部材(27)よりも長寸とした補強部材を嵌入したりしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の机の一実施形態の斜視図である。
【図2】同じく、側面図である。
【図3】同じく、天板と補助天板とを取り除いた支持フレームの斜視図である。
【図4】図3のIV−IV線拡大縦断側面図である。
【図5】図4のV−V線縦断平面図である。
【符号の説明】
【0034】
(1)支持フレーム
(2)脚体
(2a)ベース脚
(2b)脚柱
(2c)アジャスタ
(3)支持杆
(4)(5)横連結杆
(6)天板支持体
(7)平行リンク機構
(8)軸受部
(9)第1リンクアーム
(10)上向突部
(11)枢軸
(12)第2リンクアーム
(13)軸
(14)昇降体
(15)連結杆
(16)天板
(17)ブラケット
(18)軸
(19)補助天板
(20)脚杆
(21)(21)ガススプリング
(23)ブラケット
(24)ボルト
(25)ブラケット
(26)枢軸
(27)補強部材
(28)突条
(29)挿通孔
(30)連結軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚体より前方に延出し、かつ後端が脚体の前端部に枢着された上下1対のリンクアームよりなる左右1対の平行リンク機構の前端部により、天板を昇降可能に支持するとともに、前記脚体における前記左右の平行リンク機構の枢着部同士を、中空状の横連結杆により連結し、この横連結杆の左右方向の中間部と、前記天板の下面の左右方向の中間部とに、天板昇降用ガススプリングの前後の端部を連結し、かつ前記横連結杆におけるガススプリングの連結部近傍の中空孔内に、補強部材を嵌入したことを特徴とする机。
【請求項2】
左右の平行リンク機構における下位のリンクアームの後端同士を、横連結杆の中空孔に挿通した左右方向を向く連結軸の両側端に連結するとともに、前記連結軸の左右方向の中間部を、補強部材に形成した挿通孔に、密接させて、相対回動可能に嵌合してなる請求項1記載の机。
【請求項3】
横連結杆の中空孔と補強部材との断面形状を、互いにほぼ補形をなすものとした請求項1または2記載の机。
【請求項4】
補強部材の外周面に、横連結杆の中空孔の内面に接触する突条を、左右方向に向かって複数突設してなる請求項1〜3のいずれかに記載の机。
【請求項5】
横連結杆に、ガススプリングの後端を枢着するブラケットを、横連結杆の中空孔内に突出するようにしたボルトにより固定し、このボルトの先端部に、補強部材の側面を当接させてなる請求項1〜4のいずれかに記載の机。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−61859(P2008−61859A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−243820(P2006−243820)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】