説明

板状建材の乾式施工方法

【目的】 板状建材を躯体表面に張付施工するに際して、その施工性を良好なものとする。
【構成】 先端側に板状建材22の荷重受けのための係止片部34を備えた係止具を躯体18側から延び出させておく一方、該係止片部34に対応する被係止片部30を備えた被係止具26を該板状建材22の裏面に予め取り付けておき、該被係止片部30を前記係止片部34に引掛けるようにして該板状建材22を躯体18に張り付けていく。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は板状建材の乾式施工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】タイル等の板状建材の乾式施工方法として、従来、図7に示す施工方法が知られている。
【0003】この施工方法では、板状建材100の裏面から突出させたボルト102に対するナット104の締込みによって金具片106を取り付ける一方、躯体108に設けたアンカーボルト110へのナット112の締込みによって、別途の金具片114を躯体108側から延び出させ、そしてそれら一対の金具片106,114をボルト116,ナット118の締込みによって連結するようにしている。
【0004】この施工方法では、一対の金具片106,114によって板状建材100の重量を支持するとともに、一方の金具片114に設けた長穴120を利用して板状建材100の出入調整、即ち板状建材100の前後方向の位置調整を行うようにしている。
【0005】尚上側の板状建材100にはボルト102,ナット104により別途の金具片122が取り付けられ、この金具片122が上記金具片106に設けられた上向きの係合片124に係合させられ、以て上側の板状建材100の下端の位置決めが行われる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながらこの施工方法の場合、板状建材100の出入調整を行った状態でボルト116とナット118とを締め込んで一対の金具片106,114同士を締結しなければならず、施工の簡易性の点で十分でない問題があった。
【0007】加えてこの施工方法による場合、施工後において壁面を構成する板状建材100の内の1枚に損傷が生じた場合、当該板状建材100を完全に壊して除去することは可能であるものの、補修用の新たな板状建材100の取付けが困難であるといった問題があった。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、その要旨は、先端側に係止片部を備えた係止具を躯体側から延び出させておく一方、該係止片部に対応する被係止片部を備えた被係止具を板状建材の裏面に予め取り付けておき、該被係止片部を前記係止片部に引掛けるようにして該板状建材を前記躯体に張り付けていくことにある。
【0009】
【作用及び発明の効果】本発明によれば、板状建材に予め取り付けてある被係止具の被係止片部を、躯体側に取り付けてある係止具の係止片部に引掛けることで板状建材の取付けを行うことができる。
【0010】これにより板状建材の施工性が向上し、躯体への張付けを容易に行うことができる。
【0011】本発明は、前述の図7に示す従来の施工方法のように板状建材に予め取り付けた金具片を、躯体側から延び出させた金具片に締結する必要がなく、板状建材に予め取り付けた被係止具を単に躯体側の係止具に引掛けるだけで建材の張付けができるので、施工後において板状建材の1枚が損傷したときに容易にこれを新しいものと取り替えられる利点を有する。
【0012】本発明においては、上記係止片部として前記板状建材の荷重支持のための係止片部を含むようにすることができ(請求項2)、この場合には板状建材の被係止片部をかかる係止片部に引掛けるだけで荷重支持を行わせることができ、板状建材の荷重支持のために別途の手段を講じなくて良い利点が得られる。
【0013】本発明においては、更に、前記係止片部として前記板状建材との相対位置決めのための係止片部を含むようにするとともに、該位置決用係止片部の前記躯体表面と直角方向の出入調整のための調整機構を前記係止具に設ける一方、前記被係止片部として該位置決用係止片部に対応する位置決用の被係止片部を含むようにし、該調整機構により予め該位置決用の係止片部の出入調整を行った後、対応する該被係止片部を該位置決用係止片部に係合させるようにして前記板状建材の張付けを行うことができる(請求項3)。
【0014】かかる請求項3の発明によれば、板状建材側の被係止片部を係止具側の係止片部に引掛けるだけで板状建材の位置出しを行うことができる。
【0015】尚、係止具における荷重支持用の係止片部と位置決用の係止片部とは別々に構成されていても良いし、それらを兼用させることもできる。
【0016】また板状建材側における荷重支持用の被係止片部と位置決用の被係止片部も、それらを別々に構成しても良いし、同一片部を以てそれらを兼用させることも可能である。
【0017】
【実施例】次に本発明の実施例を図面に基づいて詳しく説明する。図1において10は横方向(水平方向)に長尺状を成す断面L字状の金具片で、上下方向の長穴12において、アンカーボルト14及びナット16により躯体18に固定されている。
【0018】この金具片10には雌ねじ穴が形成されていて、これら雌ねじ穴に調整ボルト20が螺合されている。
【0019】調整ボルト20は、先端面が躯体18の表面に当接させられており、これらボルト20の回転操作によってL字状金具片10の出入方向の調整、つまり躯体表面と直角方向の位置調整が行われる。
【0020】尚アンカーボルト14へのナット16の最終的な締込みは、その位置調整が終了した段階で行われる。
【0021】22はタイル等大型(例えば30cm角以上)の板状建材であって、裏面にボルト24が固定され、これらボルト24によって上端部と下端部とにそれぞれ第一及び第二金具片26,28が取り付けられている。
【0022】各金具片26,28は下向きの被係止片部30,32を有しており、これら被係止片部30,32が上記L字状金具片10に形成された上向きの係止片部34に係合させられている。
【0023】これらのうち被係止片部30は板状建材22の荷重支持と位置決めのためのものであって、この被係止片部30が金具片10の上向きの係止片部34に係合することによって、板状建材22の荷重が金具片10により受けられ、また板状建材22上端部の出入方向の位置が規定される。
【0024】一方第二金具片28の被係止片部32は、単に板状建材22の出入方向の位置決めのためのものであって、この部分が上向きの係止片部34に係合することにより、板状建材22下端部の位置が規定される。
【0025】第二の金具片28の被係止片部32は、図2R>2に示しているように二股に分かれており、そこに形成された凹所36内に上記第一金具片26の被係止片部30が位置させられている。そしてこれら被係止片部30,32の各端面の当接作用により、板状建材22の横ずれ、つまり躯体18表面と平行且つ水平方向のずれが防止されている。
【0026】上記ボルト24の板状建材22への取付構造が図3に示されている。図において38は板状建材22に形成された固定穴で、奥側端部に開口よりも大径の被係合凹部40が形成されている。
【0027】42は筒状の拡開部材であって軸方向にすり割溝44が設けられ、このすり割溝44によって全体的に軸直角方向に拡開可能とされている。
【0028】この拡開部材42は、一端側にフランジ部46を有するとともに他端側に係止凸部48を有し、図3R>3(B)に示しているようにこの係止凸部48が固定穴38の被係止凹部40に係止され、それらの係合作用に基づいて固定穴38から抜止めされる。
【0029】拡開部材42の内周面は係止凸部48の側に進むにつれて径が漸次小となるようなテーパ面50とされるとともに、このテーパ面50に雌ねじ52が刻設され、ここにボルト24がねじ込まれるようになっている。
【0030】この取付構造においては、拡開部材42を固定穴38に挿入した状態でボルト24を拡開部材42の雌ねじ52にねじ込むと、拡開部材42が強制的に拡開され、その外周面が固定穴38の内周面に密着するとともに係止凸部48が固定穴38の被係止凹部40に係止する。これにより拡開部材42及びボルト24が板状建材22にしっかりと固定される。
【0031】尚、長さの短いボルトを拡開部材42にねじ込んでこれを固定穴38に固定した後、別途にボルトを拡開部材42にねじ込み、このボルトを板状建材22の裏面に突出させるようにすることもできる。つまり板状建材22の裏面から突出させるボルトと拡開部材42固定用のボルトとを別体構成とすることも可能である。
【0032】またリベット状の部材を拡開部材内周面に打ち込むことによってこれを固定することも可能である等、かかる拡開部材の固定手段、拡開部材へのボルトの固定手段として他の様々な手段を採用することが可能である。
【0033】本例の施工方法では、L字状の金具片10を躯体18に取り付けて前後方向の位置調整(出入調整)及び上下方向の位置調整を行う。
【0034】そしてその調整後に、裏面側に第一及び第二金具片26,28が取り付けられた板状建材22をL字状金具片10の上向きの係止片部34に係合する。
【0035】即ち第一金具片26の下向きの被係止片部30を上向きの係止片部34に係合し、荷重支持と板状建材22上端部の位置決めとを行う。
【0036】次に上段側の板状建材22を所定位置に配置して、裏面下端側の第二金具片28の被係止片部32をL字状金具片10の上向きの係止片部34に係合し、板状建材22下端部の位置決めを行う。
【0037】以下同様の操作を繰り返し行うことにより、板状建材22を次々に躯体18に張り付けていくことができる。
【0038】本例の施工方法では、板状建材22の裏面に予め取り付けてある第一及び第二金具片26,28を、単にL字状金具片10の係止片部34に係合していくだけで、板状建材22の位置決め及び荷重支持を行うことができ、容易に板状建材22の張付施工を行うことができる。
【0039】図4は本発明の他の実施例を示したもので、この例ではL字状の金具片54が、上下方向の長穴56においてアンカーボルト14及びナット16により躯体18に固定され、またそのL字状金具片54に対して、上向き及び下向きの係止片部58,60を備えた金具片62が水平方向の長穴64においてボルト66,ナット68により締結されている。
【0040】一方板状建材22の裏面上端部と下端部とには、ボルト24により第一の金具片70及び第二の金具片72が取り付けられ、そして第一の金具片70の上向きの被係止片部74が下向きの係止片部60に係合され、また第二の金具片72の下向きの被係止片部76が金具片62の上向きの係止片部58に係合されている。
【0041】ここで上向きの被係止片部74は、単に板状建材22の上端部を位置決めするためだけのものであり、また下向きの被係止片部76は、板状建材22の下端部を位置決めすると同時に荷重を金具片62に伝えて支持させるためのものである。
【0042】本例の施工方法の場合、長穴56,64を利用して躯体18側の金具片における上向き及び下向きの係止片部58,60の前後及び上下方向の位置を予め定めておくことより、図5に示すようにこれら係止片部に対して板状建材22側の被係止片部76,74を係合させるだけで、板状建材22を躯体18に張り付けていくことができる。
【0043】図6は施工後において複数の板状建材22の内の1枚が損傷した場合の補修方法の例を示したものである。図に示しているように本例の施工方法の場合、第二の金具片72の固定穴を上下方向の長穴78としておいて、ボルト24による第二の金具片72の固定位置を若干上側にずらせることで、損傷した板状建材22を除いた後、補修用の新たな板状建材22を金具片62に引掛けて張り付けることができる。尚、このとき板状建材22の荷重支持は、荷重受部材80にて行うのが良い。
【0044】以上本発明の実施例を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明は石材その他材質から成る板状建材の張付施工に際して適用可能であるなど、その主旨を逸脱しない範囲において、当業者の知識に基づき様々な変更を加えた態様で実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例方法の説明図である。
【図2】図1における金具片と周辺部とを示す図である。
【図3】図1におけるボルトの取付構造の説明図である。
【図4】本発明の他の実施例方法の説明図である。
【図5】図4の施工方法の作業手順の説明図である。
【図6】図4及び図5に示す方法で施工した場合の板状建材の補修方法の例を示す図である。
【図7】従来の施工方法の例を示す図である。
【符号の説明】
10,26,28,54,62,70,72 金具片
12,56,64 長穴
18 躯体
20 調整ボルト
22 板状建材
30,32,74,76 被係止片部
34,58,60 係止片部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 先端側に係止片部を備えた係止具を躯体側から延び出させておく一方、該係止片部に対応する被係止片部を備えた被係止具を板状建材の裏面に予め取り付けておき、該被係止片部を前記係止片部に引掛けるようにして該板状建材を前記躯体に張り付けていくことを特徴とする板状建材の乾式施工方法。
【請求項2】 前記係止片部として、前記板状建材の荷重支持のための係止片部を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の板状建材の乾式施工方法。
【請求項3】 前記係止片部として、前記板状建材との相対位置決めのための係止片部を含むようにするとともに、該位置決用係止片部の前記躯体表面と直角方向の出入調整のための調整機構を前記係止具に設ける一方、前記被係止片部として該位置決用係止片部に対応する位置決用の被係止片部を含むようにし、該調整機構により予め該位置決用係止片部の出入調整を行った後、対応する該被係止片部を該位置決用係止片部に係合させるようにして前記板状建材の張付けを行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の板状建材の乾式施工方法。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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