説明

板状部に対する部材取付用具

【課題】より単純な構成により、板状部の厚さに対する適応性がよく、しかも強固かつ安定的な挟着状態が得られ、製造コストの削減にも有効であって、使い勝手のきわめて良好な板状部に対する部材取付用具を提供する。
【解決手段】板状部8に嵌着可能な略コ字状の挟着部3を構成する一方の挟着片9の挟着面を板状部8に対して平面的に当接し得るように形成するとともに、他方の挟着片10の挟着面の両側を中央部より挟着側へ向けて突出するように形成することにより、それらの対向する挟着片9,10相互間の間隔が中央部より両側が狭くなるように構成する。挟着部3を板状部8に嵌着する際には、挟着片10の両側から板状部8との当接が始まり、その板状部8の厚さに応じて前記板状部8との当接部近傍部分が部分的に外側へ変形し、板状部8の厚さの変化に適応する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば土留め用の矢板を利用してコンクリート地下壁を構築する場合や、H形鋼を用いた鉄骨鉄筋コンクリート構造物の建造において、それらの形鋼等からなる板状部を利用して型枠を所定の間隔を保持して取付ける場合、あるいは他の適宜の部材を取付ける場合に好適な板状部に対する部材取付用具に関する。とりわけ、厚さの異なる板状部に対する適応性がよく、使い勝手がきわめて良好な、板状部に対する部材取付用具の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の板状部を利用した部材の取付用具に関しては、パイプ状の中間部材の一方の端部に形鋼等からなる板状部に嵌着可能なコ字状の挟着部を備えるとともに、他方の端部に部材取付用の雌ネジ部を備えた部材取付用具が知られている(引用文献1参照)。しかしながら、この従来技術の場合には、コ字状からなる挟着部の適応能力が小さく、板状部の厚さが薄い場合には挟着部との間にガタが生じ、厚い場合には口部が大きく拡開してしまい、挟着状態が不安定化するだけでなく、中間部材が傾斜しやすいといった技術的欠点があった。そこで、板状部の厚さに対する適応性を改善すべく、一方の挟着片に板バネを用いて略コ字状の挟着部を構成するしたもの(引用文献2参照)や、一方の挟着片に傾斜状の切り起し部を形成したもの(引用文献3参照)が知られている。しかしながら、これらの従来技術の場合にも、板状部の厚さに対する適応性の改善は可能なものの、板バネや傾斜状の切り起し部の採用に伴う構成の複雑化によって製造コストが高くつくといった技術的欠点があった。
【特許文献1】実開平1−98863号公報
【特許文献2】特公平6−63368号公報
【特許文献3】特開2000−257262号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、以上のような従来の技術的状況に鑑みて開発したもので、より単純な構成により、板状部の厚さに対する適応性がよく、しかも強固かつ安定的な挟着状態が得られ、製造コストの削減にも有効であって、使い勝手のきわめて良好な板状部に対する部材取付用具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するため、請求項1の発明では、中間部材の一方の端部に形鋼等からなる板状部に嵌着可能な略コ字状の挟着部を備えるとともに、他方の端部に部材取付用の雌ネジ部を備えた、板状部に対して適宜部材を取付けるための部材取付用具において、前記略コ字状の挟着部を構成する一方の挟着片の挟着面を前記板状部に対して少なくとも一部が平面的に当接し得るように形成するとともに、他方の挟着片の挟着面の両側を中央部より挟着側へ向けて突出するように形成することにより、それらの対向する挟着片相互間の間隔が中央部より両側が狭くなるように構成し、挟着部を前記板状部に嵌着する際には、前記他方の挟着片の両側から板状部との当接が始まり、その板状部の厚さに応じて前記板状部との当接部近傍部分が部分的に外側へ変形して、前記板状部の厚さの変化に適応し得るように構成した。前記挟着部を構成する他方の挟着片の挟着面は、その挟着面上の両側が中央部より挟着側へ向けて徐々に突出するように一部又は全長を曲面状に形成してもよいし(請求項2)、中央部を境に対称的な傾斜面に形成することも可能である。また、前記挟着部を構成する他方の挟着片を、その断面形状において先端部側すなわち自由端側が両側の挟着片をつなぐ連結辺側より挟着側へ向けて突出した状態に形成し、該挟着片の先端部側において前記板状部と当接するように構成してもよい(請求項3)。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、上述のように、略コ字状の挟着部を構成する片方の挟着片の挟着面の両側を中央部より挟着側へ向けて突出するように形成して、対向する挟着片相互間の間隔が中央部より両側が狭くなるように構成するというきわめて単純な構成により、板状部の厚さの変化に適応することができる。したがって、その構成の単純化によって製造コストの削減が可能であるとともに、板状部はその厚さに応じた前記挟着片との当接部において押圧された状態で挟着されることから、ガタを生じることなく、強固で安定的な挟着状態が得られる。しかも、板状部の厚さが変化した場合には、その厚さに応じて挟着片の板状部との当接部近傍部分が外方へ部分的に変形することによって、前記板状部の厚さの変化の大部分が吸収されることから、挟着片相互間の拡開の程度が従来より縮小され、挟着部に固着された中間部材の設置状態に対する影響も縮小される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明に係る部材取付用具は、形鋼等からなる板状部を利用して型枠を所定の間隔を保持して取付ける場合や、他の適宜の部材を取付ける場合に広く適用することができる。前記中間部材は、パイプや中実状の軸体でも、板状のものでもよい。要は一方の端部に略コ字状の挟着部を備えることが可能であり、他方の端部に部材取付用の雌ネジ部を備えることが可能なものであれば、その長さや具体的形状に関しては自由な選択が可能である。また、中間部材と略コ字状の挟着部とは一体的に形成されたものでもよいし、別個に形成された各部材を溶接等に固着して形成したものでもよい。雌ネジ部に関しても、中間部材自体の端部に直接雌ネジを形成したものでもよいし、別個に形成された雌ネジ部材を後から溶接したものでもよい。前述のように、略コ字状の挟着部を構成する一方の挟着片の挟着面は、少なくとも一部が板状部に対して平面的に当接して板状部を安定的に支持するように構成される。また、他方の挟着片は、挟着面の両側が中央部より挟着側へ向けて突出するように形成され、対向した挟着片相互間の間隔が中央部より両側が狭くなるように構成される。因みに、この略コ字状の挟着部は、例えば先ず平板状の素材を折曲げて対応する両側の挟着片が平行なコ字状の挟着部を形成し、さらにその片方の挟着片の挟着面の両側を内側へ曲げることにより、簡単に製造することができる。なお、この場合、挟着側へ向けて突出する突出量の最も大きい最大突出部は、挟着片の挟着面上の両側の最外端部に設定してもよいし、それらの両側の最外端部より内側に入った位置に設定してもよい。また、その最大突出部と中央部とをつなぐ面は、前述のように一部又は全長を曲面状に形成してもよいし、中央部を境に対称的な傾斜面に形成してもよい。さらに、前記挟着片の断面形状を、その先端部側が両側の挟着片をつなぐ連結辺側より挟着側へ向けて突出した状態に形成して、挟着片の先端部側において板状部と当接するように構成してもよい。要は、略コ字状の挟着部を構成する対向した両側の挟着片の間に板状部を嵌入する際に、片方の挟着片の両側から板状部との当接が始まり、その板状部との当接部近傍部分が板状部の厚さに応じて部分的に外側へ変形し、その変形復元力により板状部を圧着することによって、前記板状部の厚さの変化に適応できるものであればよい。因みに、板状部の厚さに応じて挟着片と板状部との当接部近傍部分が外側へ部分的に変形する結果、当接部が中央部へ向けて徐々に移動する場合も含む。
【実施例】
【0007】
図1〜図3は本発明に係る部材取付用具に関する一実施例を示したものであり、図1は本実施例の全体構成図、図2は本実施例における挟着部を示した拡大断面図、図3は図2に示したA方向からみたA矢視図である。図示のように、本実施例に係る板状部に対する部材取付用具1は、パイプ状の中間部材2と、その中間部材2の一方の端部に溶接により固着された略コ字状の挟着部3と、他方の端部に形成された部材取付用の雌ネジ部4とを主要素として構成されている。なお、本実施例では、中間部材2を挟着部3に対して固着するに際して、挟着部3の板状部への嵌着に伴う傾斜を吸収するため、予め逆方向に少し傾斜させた状態に固着している。因みに、この中間部材2の傾斜に関しては、従来技術の場合には、その板状部への嵌着に伴う傾斜量が板状部の厚さにより大きく変化するため、的確な対応が困難であったが、本発明の場合には、板状部への嵌着に伴う傾斜の程度が縮小され、比較的小さい修正量で済むことから、容易かつ的確に対応することができる。なお、図中5は中間部材2の端部に固着した取付部材に対する支持部材であり、その当板部6には、雌ネジ部4に対応した雄ネジの挿通孔7が形成されている。しかして、本部材取付用具1を用い、板状部8を利用して例えば型枠を所定量離して取付ける場合には、略コ字状の挟着部3を目的の板状部8に嵌着した後、前記支持部材5の当板部6に型枠の内面を当接させて支持した上、挿通孔7を介して図示しない雄ネジを前記雌ネジ部4に螺入して締付けることにより、簡便に型枠を所定位置に設置することができる。さらに、逆に前記支持部材5の当板部6に型枠の内面を当接させて本部材取付用具1側に型枠を固着してから、略コ字状の挟着部3を目的の板状部8に嵌着するという手順も可能である。
【0008】
次に本発明の特徴部分に関して説明する。図2及び図3に示したように、本実施例に係る部材取付用具1の挟着部3は、挟着面が板状部8に対して平面的に当接し得るように形成された一方の挟着片9と、この挟着片9に対向した他方の挟着片10と、それらの挟着片9,10をつなぐ連結辺11とから略コ字状に形成されている。図3に示したように、本実施例における一方の挟着片9は、板状部8が平面的に当接し得るように連結辺11側を平坦状に形成している。また、他方の挟着片10は、挟着面の両側12,13が中央部14より挟着側へ向けて徐々に突出するように一部に曲面状を採用し、対向した挟着片9,10相互間の間隔が中央部14より両側12,13が狭くなるように構成されている。因みに、この略コ字状の挟着部3は、例えば前述のように先ず平板状の素材を折曲げて対応する両側の挟着片が平行なコ字状の挟着部を形成し、さらにその片方の挟着片10の挟着面の両側12,13を内側へ曲げることにより、簡単に製造することができる。なお、図2の拡大断面図に示したように、本実施例における他方の挟着片10は、その断面形状において先端部側(図2において下方の自由端側)が連結辺11側より挟着側へ向けて突出した状態に形成されている。とりわけ、図示のように先端部より少し内側へ入った部分が、突出量の最も大きい最大突出部15とされ、前記断面形状の上で挟着片9との間隔が最も狭い領域を形成している。因みに、本実施例の場合には、連結辺11側の約半分が挟着片9,10相互間の間隔が広い領域を形成している。なお、図2に示したように、必要に応じて挟着片9の先端部側に外側へ拡がった傾斜案内部16を形成してもよい。また、その傾斜案内部16の傾斜角や設置長さを変更することも可能である。
【0009】
しかして、部材取付用具1の挟着部3を目的の板状部8に嵌着する際には、挟着片9,10相互間の間隔が最も狭い最小間隔の部分、すなわち図3に示した挟着片10の挟着面の両側12,13の部分であって、かつ図2に示した断面上の最大突出部15の部分から当接が始ることになる。そして、当該板状部8の厚さが挟着片9,10相互間の前記最小間隔より厚い場合には、挟着部3を板状部8に対して押込むと、板状部8と当接している挟着片10の両側12,13の部分が外側へ変形することになる。その結果、板状部8と挟着片10との当接部は、挟着片9,10相互間の間隔の広い中央部14側へ徐々に移動し、前記挟着片10の両側12,13部分の変形復元力によって、板状部8の厚さに応じた間隔の部分で挟着されることになる。以上のように、本発明に係る部材取付用具1の場合には、主に挟着片10側の当接部近傍部分が部分的に外側に変形することによって、挟着片9,10相互間の間隔が板状部8の厚さに適応するように構成されているので、きわめて単純な構成により挟着部3の板状部8への嵌着に伴う挟着片9,10相互間の拡開の程度を大幅に縮小できる。したがって、挟着片9と板状部8との平面的な当接状態が安定的に維持され、ガタを生じることなく強固で安定的な挟着状態が的確に得られる。しかも、その挟着部3の板状部8への嵌着に伴う挟着片10の傾斜の程度も縮小されるので、その吸収のために逆方向へ傾斜させておく中間部材2の傾斜量も少ない、使い勝手の良好な板状部に対する部材取付用具を提供することができる。因みに、本実施例の場合には、図3に示した挟着片10の中央部14の位置で、図2に示した連結辺11側の挟着片9,10相互間の間隔が最も広い領域において、適応可能な板状部8の厚さが規制されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例を示した全体構成図である。
【図2】同実施例における挟着部を示した拡大断面図である。
【図3】図2に示したA方向からみたA矢視図である。
【符号の説明】
【0011】
1…部材取付用具、2…中間部材、3…挟着部、4…雌ネジ部、5…支持部材、6…当板部、7…挿通孔、8…板状部、9,10…挟着片、11…連結辺、12,13…挟着面の両側、14…挟着面の中央部、15…断面上の最大突出部、16…傾斜案内部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間部材の一方の端部に形鋼等からなる板状部に嵌着可能な略コ字状の挟着部を備えるとともに、他方の端部に部材取付用の雌ネジ部を備えた、板状部に対して適宜部材を取付けるための部材取付用具において、前記略コ字状の挟着部を構成する一方の挟着片の挟着面を前記板状部に対して少なくとも一部が平面的に当接し得るように形成するとともに、他方の挟着片の挟着面の両側を中央部より挟着側へ向けて突出するように形成することにより、それらの対向する挟着片相互間の間隔が中央部より両側が狭くなるように構成し、挟着部を前記板状部に嵌着する際には、前記他方の挟着片の両側から板状部との当接が始まり、その板状部の厚さに応じて前記板状部との当接部近傍部分が部分的に外側へ変形して、前記板状部の厚さの変化に適応し得るように構成したことを特徴とする板状部に対する部材取付用具。
【請求項2】
前記挟着部を構成する他方の挟着片の挟着面を、その挟着面上の両側が中央部より挟着側へ向けて徐々に突出するように、少なくとも一部を曲面状に形成したことを特徴とする請求項1に記載の板状部に対する部材取付用具。
【請求項3】
前記挟着部を構成する他方の挟着片を、その断面形状において先端部側が両側の挟着片をつなぐ連結辺側より挟着側へ向けて突出した状態に形成し、該挟着片の先端部側において前記板状部と当接するように構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の板状部に対する部材取付用具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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