説明

枚葉印刷機

【課題】安全に検紙作業を行うことのできる枚葉印刷機を提供することをその課題とする。
【解決手段】一時紙受板22が進出してから所定時間が経過(本実施例では5秒)しても進出位置にある場合(ステップS3)、排紙制御部80の指示により報知手段33が操作者に報知を行う(ステップS4)。この報知は、ブザーによる警告音や、排紙部付近に設けられたランプを点滅させることにより行われる。
その後更に所定時間が経過(本実施例では3秒)しても一時紙受板22が未だ進出位置にある場合(ステップS5)、排紙制御部80から中枢制御部90を介し、給紙制御部80‘の指示により、給紙部Aの給紙が止まる(ステップS6)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷部で印刷した枚葉紙を搬送して排紙部に排紙する枚葉印刷機に関するものであり、より具体的には、排紙部に設けられ、枚葉紙の検紙を行うための検紙排出装置を備えた枚葉印刷機に関する。
【背景技術】
【0002】
枚葉印刷機の排紙部には検紙排出装置が設けられている。これは、完了した印刷の状態を検査するためのもので、これを使用して適宜のタイミングで枚葉紙を抜き取ることができるように構成されている。検紙排出装置は大きく分けて、フロントガイド(紙当て)と一時紙受板とで構成される。
【0003】
フロントガイドはチェーン搬送機構から解放され、排紙部に積載される枚葉紙の搬送方向前端が当接する、垂直に起立した板体である。フロントガイドは下方を軸支されることにより、通常の起立位置から枚葉紙の搬送方向前方への倒伏位置まで略90度回動可能に構成されている。フロントガイドが倒伏位置にある時、排紙部に積載される枚葉紙は搬送方向前方へ抜き取り可能となる。
【0004】
一時紙受板は枚葉紙が載置可能な板体であり、通常の退避位置から枚葉紙の搬送方向後方への進出位置に移動自在に構成されている。一時紙受板が退避位置から進出位置に移動すると、これに連動してフロントガイドが起立位置から倒伏位置に回動するように構成されている。進出位置ではチェーン搬送機構から解放され、排紙部に排紙される枚葉紙が一時紙受板に支持され、一時紙受板より下方に積載された枚葉紙が抜取り可能となる。そして、一時紙受板が進出位置から退避位置に移動すると、これに連動してフロントガイドが倒伏位置から起立位置に回動するように構成されている。特許文献1にはこのような検紙排出装置の技術の開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−156813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の検紙排出装置によると、一時紙受板の進出操作をして枚葉紙の抜取り作業等を行った後、復帰釦を押して復帰させる必要がある。この復帰操作を忘れてしまった場合、進出した状態の一時紙受板にチェーン搬送機構から解放され、排紙される枚葉紙が積載し、チェーン搬送機構と干渉する可能性があった。また、フロントガイドが倒伏位置のままでいると、積載された枚葉紙が意図せず外方に流出する可能性もあった。特にこの検紙作業において、操作者は枚葉紙の印刷品質等に注意を惹かれるので、復帰操作忘れの可能性が高く、改善が求められていた。
【0007】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的は、安全に検紙作業を行うことのできる枚葉印刷機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するため、印刷部と、該印刷部で印刷された枚葉紙を排紙積載する排紙部と、該排紙部に進退自在に設けられ、進出時に枚葉紙を一時的に載置可能な一時紙受板と、該一時紙受板の進退を制御する制御部とを備えた枚葉印刷機において、該一時紙受板が進出して所定時間経過した時に、該制御部の指示により操作者へ報知する報知手段を設けたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、該印刷部へ枚葉紙を給紙する給紙部を備え、該一時紙受板が進出して所定時間経過した時に、該制御部は給紙部による給紙を止めることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、該一時紙受板が進出して所定時間経過した時に、該制御部は該一時紙受板を退避位置に退避させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の枚葉印刷機においては、安全な検紙作業を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る印刷機の概略側面図である。
【図2】本発明に係る印刷機の排紙部の概略斜視図である。
【図3】本発明に係る印刷機の排紙部の一部側面図である。
【図4】本発明に係る印刷機の排紙部の一部側面図である。
【図5】本発明に係る印刷機の制御部のブロック図である。
【図6】本発明に係る印刷機の検紙排出作業のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図1は本発明に係る検紙排出装置を供えた印刷機の一例である。図1の概略側面図に示す通り、本実施例に係る印刷機は枚葉オフセット印刷機である。この印刷機は、紙積み台からフィーダ装置や用紙分離装置等により一枚ずつ印刷用紙としての枚葉紙Pを送り出すための給紙部Aと、この給紙部Aからの枚葉紙Pに印刷を行うための印刷部Bと、枚葉紙Pを排紙するための排紙装置Cを備えている。ここで印刷部Bは、5色の印刷が行えるように5台の印刷ユニット5を備えた印刷部Bとしているが、5色以外の色、つまり1色又は2色以上の印刷が行える印刷部であってもよい。又、前記排紙装置Cは、グリッパを備えるチェーン搬送装置12にて構成しているが、この排紙装置Cのない印刷機であってもよい。又、印刷機を構成する各部の具体的な構成は図に示されるものに限定されるものではない。
【0015】
前記印刷ユニット5は、版胴1とゴム胴2とインキローラ群4、そして圧胴3と渡し胴6とを備えている。図示していないが、前記胴3、6のそれぞれには、送り出されてきた枚葉紙Pを爪台と爪とで把持するグリッパを円周方向の2箇所(1箇所又は3箇所以上でもよい)に備えている。符号7は給紙胴であり、フィーダーボード8、口板9上を搬送される枚葉紙Pをスイングアーム10から受け取り、圧胴3に渡す役割を果たす。給紙胴7、スイングアーム10にも前記の爪台と爪が設けられている。
【0016】
最終の印刷ユニット5と排紙装置Cとの間には乾燥部が設けられている。すなわち、最終の印刷ユニット5の圧胴3により搬送された枚葉紙Pは渡し胴6に受け渡される。そして枚葉紙Pは渡し胴6から乾燥用胴11に受け渡される。乾燥用胴11の上部には乾燥装置Dが設けられている。なお、乾燥用胴11にも前記の爪台と爪が設けられている。
【0017】
印刷部Bにて印刷された枚葉紙Pは最終の印刷ユニット5の圧胴3から渡し胴6に渡され、枚葉紙Pの印刷面が渡し胴6に当接してインキが用紙に十分馴染むこととなる。そして渡し胴6から乾燥用胴11に受け渡された枚葉紙Pは乾燥装置Dにて乾燥され、排紙装置Cのチェーン搬送装置12に受け渡される。このようにして印刷される枚葉紙Pは光沢を損なうことがなく、良好な仕上がりとなる。
【0018】
図2〜図5は排紙部Cの、特に検紙排出装置20付近を示している。検紙排出装置20は主にフロントガイド21と一時紙受板22から構成されている。フロントガイド21は軸21aを中心に、図3、4に実線で示す起立位置と図4に二点鎖線で示す倒伏位置との間を、図示しないエアシリンダの駆動により回動可能に構成されている。
【0019】
一時紙受板22はチェーン搬送装置12から解放された枚葉紙Pを一時的に支持するものであり、紙載置部22aと、これに接続されたエアシリンダ22bとで構成される。一時紙受板22はエアシリンダ22bの駆動により、図3、4に実線で示す退避位置と、図4に二点鎖線で示す進出位置との間を移動可能に構成されている。なお、一時紙受板22の紙載置部22aのみを二点鎖線で示し、他は二点鎖線の図示を省略している。
【0020】
なお、後述する制御部80により、一時紙受板22が進出するとフロントガイド21が倒伏し、一時紙受板22が退避するとフロントガイド21が起立するように制御されている。
【0021】
図中符号31は紙落とし板であり、排紙される枚葉紙Pを下方へ誘導する。符号32は、排紙ジャム検知センサであり、チェ−ン搬送装置12の不具合等により、紙落とし板31で落とせなかった枚葉紙Pがチェーン搬送装置12によって搬送方向後側へ戻ってしまうのを検知する。
【0022】
図5は本発明に係る検紙排出装置の制御部の構成を示す概略ブロック図であり、大きく、排紙制御部80と給紙制御部80‘と中央制御部90により構成されている。排紙制御部80は、前述のフロントガイド21、一時紙受板22、一時紙受板22の進出状態を操作者へ報知する報知手段33が接続されている。排紙制御部80は演算処理等を行うマイクロプロセッサ81(シーケンサでもよい)、データ及び所定のプログラム(演算式あるいはテーブル等)を記憶するROM82、機械回転数等に関する種々の情報を記憶可能なRAM83、マイクロプロセッサ81と排紙制御部80外部に設けられた装置との間における各種信号のやりとりを仲介するインターフェイス84等を用いて構成されている。
【0023】
給紙制御部80‘は、給紙部Aに設けられ、印刷部Bの駆動装置と駆動伝達のオン、オフが可能なフィーダクラッチ91、枚葉紙Pを吸着してフィーダーボード8に搬送する図示しないフィーダヘッドに設けられたバキュームバルブ92が接続されている。排紙制御部80’も給紙制御部80と同様、演算処理等を行うマイクロプロセッサ81‘(シーケンサでもよい)、データ及び所定のプログラム(演算式あるいはテーブル等)を記憶するROM82’、機械回転数等に関する種々の情報を記憶可能なRAM83‘、マイクロプロセッサ81’と給紙制御部80‘外部に設けられた装置との間における各種信号のやりとりを仲介するインターフェイス84’等を用いて構成されている。
【0024】
そして排紙制御部80、給紙制御部80‘は、それぞれのマイクロプロセッサ81、81’が中央制御部90に接続されていることにより、3者が連絡していることになる。
【0025】
次に、図6のフローチャートを用い、このように構成された印刷機の動作について説明する。給紙部Aから給紙された枚葉紙Pは印刷部Bにて印刷が行われ、乾燥装置Dによって乾燥された後に排紙部Cへ排紙される。
【0026】
操作者が印刷状態を確認したい時、排紙部Cの検紙排出装置20を操作して検紙作業を行うこととなる。操作者は印刷機に設けられた図示しないタッチパネルの操作ボタンを押す(ステップS1)。すると、排紙制御部80は一時紙受板22のエアシリンダ22bを駆動させ、一時紙受板22が図4の二点鎖線のように退避位置から進出位置に進出する。同時に排紙制御部80はフロントガイド21の図示しないエアシリンダを駆動させ、フロントガイド21が図4の二点鎖線のように起立位置から倒伏位置に位置することとなる(ステップS2)。
【0027】
この状態で、チェーン搬送装置12により排紙される枚葉紙Pは一時紙受板22上に蓄積され、フロントガイド21は倒伏しているので、操作者は一時紙受板22よりも下に積載された枚葉紙Pを取り出し、検紙作業を行うことが可能となる。
【0028】
一時紙受板22が進出してから所定時間が経過(本実施例では5秒)しても進出位置にある場合(ステップS3)、排紙制御部80の指示により報知手段33が操作者に報知を行う(ステップS4)。この報知は、ブザーによる警告音や、排紙部付近に設けられたランプを点滅させることにより行われる。
【0029】
その後更に所定時間が経過(本実施例では3秒)しても一時紙受板22が未だ進出位置にある場合(ステップS5)、排紙制御部80から中枢制御部90を介し、給紙制御部80‘の指示により、給紙部Aの給紙が止まる(ステップS6)。具体的には、印刷部Bの駆動装置と連動している給紙部Aのフィーダクラッチ91を解除するか、枚葉紙Pを吸着してフィーダーボード8に搬送する図示しないフィーダヘッドに設けられたバキュームバルブ92をOFFするか、機械全体を停止することにより行う。
【0030】
その後更に所定時間が経過(本実施例では3秒)しても一時紙受板22が未だ進出位置にある場合(ステップS7)、排紙制御部80は一時紙受板22のエアシリンダ22bを駆動させ、一時紙受板22が図3、4の実線のように退避位置に退避する。同時に排紙制御部80はフロントガイド21の図示しないエアシリンダを駆動させ、フロントガイド21が図3、4の実線のように起立位置に復帰する(ステップS8)。
【0031】
このように、一時紙受板22の進出状態とフロントガイド21の倒伏状態とが継続した場合、排紙される枚葉紙が一時紙受板22に積載し、チェーン搬送機構と干渉したり、倒伏状態のフロントガイド21付近から積載された枚葉紙Pが意図せず外方に流出したりする可能性があるが、所定時間が経過したら、報知、給紙OFF、一時紙受板22、フロントガイド22の強制復帰など、安全制御を施しているので、安全かつ安定した印刷作業を行うことが可能となる。前記強制復帰以外の場合、すなわち、報知、給紙OFFがされた場合、操作者は図示しない前記タッチパネルの復帰ボタンを押して一時紙受板22とフロントガイド21とを元の位置に復帰させるのである。
【0032】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば前述の実施形態では、報知→給紙OFF→強制復帰という3段階の制御を行ったが、これらのうち、いずれか一つだけの制御としてもよいし、あるいは二つの組合せ制御としてもよい。これら制御の順番を変更してもよいが、強制復帰作業はやむを得ない最後の制御とした方がよい。
【0033】
また、前述の実施形態では、所定時間が経過すると各制御部が指示を出すように構成していたが、枚葉紙が所定枚数排出されると各制御部が指示を出すように構成することも可能である。
【0034】
また、一時紙受板22は退避位置のままにしておき、フロントガイド21のみ移動させることも可能である。これは、枚葉紙Pに両面印刷が施された場合、進出した一時紙受板22に印刷面が当たって品質に影響を及ぼすことを防止するためであるが、操作者は操作ボタンを押してフロントガイド21を倒伏させ、落下・蓄積される枚葉紙Pの上端部付近に指を出し、指に載った枚葉紙Pを抜き出して検紙作業を行うこととなる。そして所定時間が経過すると、前述のように、安全制御機能を働かせるのである。
【0035】
また、操作ボタンの操作方法によって一時紙受板22等の動作を変更させてもよい。例えば、操作ボタンを通常に押すと、前述の通り、一時紙受板22とフロントガイド21が進出、倒伏状態を保ち、復帰ボタンを押すと退避、起立状態に復帰するが、操作ボタンを素早く2回押すと、一時紙受板22とフロントガイド21が進出、倒伏し、1秒経過すると自動復帰するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明に係る印刷機は、検紙排出装置を備えた搬送胴を有する印刷機において極めて有用である。
【符号の説明】
【0037】
12 チェーン搬送装置、 20 検紙排出装置、 21 フロントガイド、 21a 軸、 22 一時紙受板、 22a 紙載置部、 22b エアシリンダ、 33 報知手段、 80 排紙制御部、 80‘ 給紙制御部、 90 中枢制御部、 91 フィーダクラッチ、 92 バキュームバルブ、 A 給紙部、 B 印刷部、 C 排紙部、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷部と、該印刷部で印刷された枚葉紙を排紙積載する排紙部と、該排紙部に進退自在に設けられ、進出時に枚葉紙を一時的に載置可能な一時紙受板と、該一時紙受板の進退を制御する制御部とを備えた枚葉印刷機において、
該一時紙受板が進出して所定時間経過した時に、該制御部の指示により操作者へ報知する報知手段を設けたことを特徴とする枚葉印刷機。
【請求項2】
該印刷部へ枚葉紙を給紙する給紙部を備え、該一時紙受板が進出して所定時間経過した時に、該制御部は給紙部による給紙を止めることを特徴とする請求項1記載の枚葉印刷機。
【請求項3】
該一時紙受板が進出して所定時間経過した時に、該制御部は該一時紙受板を退避位置に退避させることを特徴とする請求項1又は2記載の枚葉印刷機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−111932(P2013−111932A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262275(P2011−262275)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000006943)リョービ株式会社 (471)
【Fターム(参考)】