果菜茎等支持具
【課題】トマト、キュウリ等の果菜類の茎や蔓を折り返し栽培する際に、熟練を要する捻枝作業をする必要がなく、作業性が良く、嵩張らず、コストも低減できる果菜茎等支持具を提供する。
【解決手段】果菜茎等支持具1の茎保持部2は、幅方向の断面がU字状となっており、葉を載せ掛ける茎保持部2の底面の両端部2aは、下方向へ曲がりを設けて、茎が下方向に折り返すときに茎を傷めずに曲がるようにしている。茎保持部2の両側中央部には、上方向にフック部3が一体に形成されており、フック部3の誘引線出し入れ開口部4の上部には外方向に向かって斜め下方向に延出するガイド部3aが設けられている。誘引線出し入れ開口部4の下部には、誘引線離脱防止用の突出部3bが設けられている。さらに、誘引線出し入れ開口部4とは反対側の基部近くに、枝等保持用の凹部3cが設けられている。
【解決手段】果菜茎等支持具1の茎保持部2は、幅方向の断面がU字状となっており、葉を載せ掛ける茎保持部2の底面の両端部2aは、下方向へ曲がりを設けて、茎が下方向に折り返すときに茎を傷めずに曲がるようにしている。茎保持部2の両側中央部には、上方向にフック部3が一体に形成されており、フック部3の誘引線出し入れ開口部4の上部には外方向に向かって斜め下方向に延出するガイド部3aが設けられている。誘引線出し入れ開口部4の下部には、誘引線離脱防止用の突出部3bが設けられている。さらに、誘引線出し入れ開口部4とは反対側の基部近くに、枝等保持用の凹部3cが設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トマト、キュウリ、ナス、メロン、花類、果樹等の果菜類の茎や蔓(以下、「茎等」と略称することがある。)が成長する際に、茎等を、誘引線の高さ近くで自然に曲がった状態で支持し、茎や蔓の先端を下方に曲げて生長させることにより、収率を上げるようにした果菜茎等支持具に関する。
【背景技術】
【0002】
トマト、キュウリ、メロン、ナス、花類、果樹等の植物の茎や苗、蔓、幹は、成長するにつれ、上に伸びていこうとするが、支えがないと、その自重で垂れ下がり、地面に付いてそこから虫が付いて食べられたり、病気が発生したりする。そのため、茎や苗が倒れたり折れたりしないように、茎等を人為的に誘引して果菜類の生長を助け、収率を上げるようにしている。
【0003】
たとえばトマトの場合、さまざまな誘引方法があるが、誘引の省力化と、通気性を良くし、茎が病気等に罹りにくくするため、誘引方法の一つとして図7および図8に示す方法がある。これは、図7に示すように、ビニールハウス内の上部に張られている誘引線10に上部が結びつけられた誘引紐11と誘引用クリップ12とを用いて、茎等を直立に上向きに誘引し、誘引線10の高さより30cm前後、茎が生長した時点で、図8に示すように誘引線10の位置から茎を誘引線10に載せ掛けて、下方向に折り返して誘引するものである。
【0004】
この誘引方法の場合、茎を誘引線10の位置から下方向に折り返すとき、図8のaに示すように、茎を鋭角に曲げる形となるので、茎が完全に折れて生長が止まったり、果房の着きが悪くなったりする。それを防いで茎が柔軟に下方向へ曲がりやすくするために、茎の折り返す箇所の一部をペンチで軽く挟んで潰したり、折り返す箇所の茎の一部を手で捻ったりして(捻枝)、茎が下方向へ曲がりやすくなるようにしている。この捻枝作業は、素人が行うと茎が完全に折れてしまって生長が止まったり、果房の着きが悪くなったりし、収率に重大な影響が生じるので、捻枝の技術を習得した特定の人が細心の注意を払いながら捻枝作業を行い、折り返し栽培を行っている。
【0005】
しかし、この捻枝作業は、1本1本すべての茎を捻枝する必要があり手間が掛かる上、捻枝の技術を習得した特定の人が行う必要があるので、捻枝作業を担当する人にとって重労働になっている。
【0006】
他の折り返し栽培方法として、図9および図10に示す方法がある。これは、図9に示すように誘引線10に上部が結びつけられた誘引紐11と誘引用クリップ12を用い、茎を直立に上向きに誘引し、誘引線10の手前まで茎を生長させる。茎が誘引線10の高さよりも生長した時点で、図10に示すように誘引線10の位置より下から茎を誘引線10の高さまで斜めに誘引し、捻枝を行わずに茎を誘引線10に載せ掛けて、誘引線10に載せ掛けた茎を誘引線10と一緒に誘引用クリップ12等で留める方法である。このように、茎が一箇所から鋭角に折れ曲がらないように誘引線10の位置で留めることにより、さらに茎が生長し、果房を着ける。その果房の重みで茎が大きな曲線で下方向に曲がり、折り返し栽培の特徴を呈する。
【0007】
しかし、この折り返し栽培方法では、1本の茎を、誘引線10の下方の誘引紐11の位置と、誘引線10の2箇所の、全3箇所で誘引用クリップ12等で留めて徐々に曲げるので、捻枝を行わなくても茎が生長して果房の重みで茎が大きな曲線で曲がり、下方向へ折り返して誘引できるが、直立に上向きに誘引してきた茎を誘引線10の位置より下で一度斜めに誘引線10の高さの位置まで誘引し、さらに茎が生長したら誘引線10に載せ掛けた茎と誘引線10を誘引用クリップ12等で留めなければならず、手間が掛かる。
【0008】
図11はさらに他の折り返し栽培方法を示すものである。前述の栽培方法では、直立に上向きに誘引した茎を誘引線10よりも高く生長させ、1本の誘引線10に茎を載せ掛けて下方向へ折り返して栽培すると、茎を鋭角に180度折り曲げて折り返して下げることになるので、捻枝をしていても茎の折り曲げている部分に傷が深く入ることがある。そこで、図11に示すように、誘引線を2本張り、誘引紐11と誘引用クリップ12により直立に上向きに誘引した茎を1本目の誘引線10の位置で茎を捻枝し、2本目の誘引線13に茎を載せ掛けて下方向へ90度折り曲げることにより、茎を深く傷付けるのを最小にするものである。
【0009】
この栽培方法では、捻枝をする手間が1本の茎に対して2度も行う必要があり、捻枝する作業回数が多くなり、重労働となる。また、誘引線も通常の2倍の数を張る必要があり、誘引スペースもとってしまう。
【0010】
このような捻枝作業や誘引作業の問題を解決するため、直立に上方向に誘引した茎を大きな曲線で折り返しを行う折り返し誘引用の茎曲げ具が特許文献1に記載されている。この茎曲げ具は、図12に示すように、基板21の上部中央に提手22を有し、基板21に回動体23を取り付け、回動体23に、先端に引っ掛け部25を備えたレバー24を設け、基板21に保持爪26を設けた構成となっている。この茎曲げ具20を用いて茎を誘引するには、誘引線10に茎曲げ具20の提手22を引っ掛けて茎曲げ具20を吊しておき、茎が誘引線10の位置より高く生長したときに、茎曲げ具20の保持爪26に茎をセットすると同時に茎の保持爪26から茎が外れないようにレバー24で茎を押さえ、さらに茎が生長したときに下方向に茎を押さえながらレバー24を回転させ、茎を折り返して誘引するようにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11−266715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前掲の特許文献1の折り返し誘引用の茎曲げ具は、捻枝を行わなくても、基板21周面の曲面で茎を傷付けずに直立に上向きに誘引された茎を下方向に折り返すことはできるが、茎曲げ具20自体、数多くの部品を使って組み立てられているため、コストが高く、生産者が購入するには金銭的な負担が大きくなる。また、保持爪26やレバー24が大きく突起しているため、誘引作業中に茎や葉が絡まることがあり、作業性が良くない。さらに、収穫後、器具を回収するときに、器具の茎保持爪やレバー、フック部が絡まって、嵩張る。
【0013】
トマトの場合、生産者は通常、複数のハウスを営農しており、1棟のビニールハウスだけで、約2000本の茎を育成している。トマトを折り返し栽培するために、1茎毎に捻枝を行うのは重労働であり、また捻枝を行わずに折り返し栽培をするためには茎を留める箇所を増やしたりしなければならない。また、既存の茎曲げ具等の器具も複雑な構造で茎を保持するための手間が掛かり、さらに高価なために、生産者の資材費負担が大きくなる。
【0014】
そこで本発明は、トマト、キュウリ等の果菜類の茎や蔓を折り返し栽培する際に、熟練を要する捻枝作業をする必要がなく、作業性が良く、嵩張らず、コストも低減できる果菜茎等支持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するため、本発明の果菜茎等支持具は、長手方向に沿って弧状に曲がり幅方向の断面がU字状の茎保持部の幅方向の両側部に、誘引線出し入れ開口部を有するフック部を一体に設けたことを特徴とする。
【0016】
本発明においては、誘引線に吊している誘引紐により垂直に支持されている茎が誘引線の位置より所定の長さ上へ達したら、誘引線の近くの茎の一部分に果菜茎等支持具の茎保持部を当て、そのまま果菜茎等支持具の2つのフック部を誘引線に掛けることで茎を保持することができる。本発明の果菜茎等支持具は一体成形品であるので、茎を挟み込む工程時に組み立てる手間が掛からない。
【0017】
フック部の誘引線出し入れ開口部の上部に、外方向に向かって斜め下方向に延出するガイド部を形成することにより、誘引線が高い位置に張られている場合でも、確実にフック部を誘引線に掛けることができる。
【0018】
フック部の誘引線出し入れ開口部の下部に、誘引線離脱抑止用の突出部を形成することにより、誘引線が上下左右に振れた場合でも、フック部が誘引線から不用意に離脱しにくくなる。
【0019】
フック部における茎保持部との連設基部であって誘引線出し入れ開口部とは反対側に、枝等保持用の凹部を形成することにより、茎から出た枝が凹部に保持され、茎のずり落ちを抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、果菜類の茎や蔓を折り返し栽培する際に、熟練を要する捻枝作業をする必要がなく、作業性が良く、嵩張らず、コストも低減できる果菜茎等支持具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態に係る果菜茎等支持具の斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る果菜茎等支持具を誘引線に装着する状態の側面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る果菜茎等支持具を誘引線に装着する前の状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る果菜茎等支持具を誘引線に装着した状態の斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る果菜茎等支持具を用いたときの茎が伸びた状態の斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る果菜茎等支持具を多数積み重ねて収納する時の正面図である。
【図7】従来の折り返し栽培方法の説明図である。
【図8】従来の折り返し栽培方法の説明図である。
【図9】従来の折り返し栽培方法の説明図である。
【図10】従来の折り返し栽培方法の説明図である。
【図11】従来の折り返し栽培方法の説明図である。
【図12】従来の折り返し栽培方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を、図1〜図6を用いて説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る果菜茎等支持具の斜視図、図2は誘引線に装着する状態の側面図、図3は誘引線に装着する前の状態を示す斜視図、図4は誘引線に装着した状態の斜視図、図5は茎が伸びた状態の斜視図、図6は多数積み重ねて収納する時の正面図である。
【0023】
図1及び図2に示すように、本実施の形態の果菜茎等支持具1の茎保持部2は、幅方向の断面がU字状となっており、茎を載せ掛ける茎保持部2の底面の両端部2aは、下方向へ曲がりを設け、茎が下方向に折り返すときに茎を傷めずに曲がるようにしている。なお、茎保持部2の長手方向の全体が円弧状に曲がっていても良い。また、両端上部の角は、茎が生長して果房が着き、自重で下方向に曲がるときに茎に傷が入りにくいように丸くしている。茎保持部2の両側中央部には、上方向にフック部3が一体に形成されており、フック部3の誘引線出し入れ開口部4の上部には外方向に向かって斜め下方向に延出するガイド部3aが設けられている。誘引線出し入れ開口部4の下部には、誘引線離脱防止用の突出部3bが設けられている。さらに、誘引線出し入れ開口部4とは反対側の基部近くに、枝等保持用の凹部3cが設けられている。果菜茎等支持具1全体は、耐候性のポリプロピレン等の熱可塑性プラスチックで一体成形されている。
【0024】
次に、本実施の形態の果菜茎等支持具1の使用方法について説明する。
茎が真っ直ぐ上に生長するまでは、誘引線10に結んだ誘引紐11に誘引用クリップ12等を用いて誘引するまでは図7に示した従来例と同じである。
【0025】
茎が誘引線の位置より30cmほど上へ達したら、図2、図3に示すように、誘引線10の近くの茎Aの一部分に果菜茎等支持具1の茎保持部2を当て、茎Aを両フック部3の開いた方向から茎保持部2に入れ、2つのフック部3を誘引線10に掛けることによって、茎Aを保持することができる。このとき、誘引線10がフック部3の上部方向に対しての茎外れ防止となる。フック部3の誘引線出し入れ開口部4の上部にはガイド部3aが設けられているので、両ガイド部3aの先端部が誘引線10に引っ掛かれば、フック部3は容易にかつ確実に誘引線10に装着される。また、フック部3が一旦誘引線10に装着されると、突出部3bが誘引線出し入れ開口部4を狭くしている状態になるので、誘引線10が上下左右に揺れても、不用意にフック部3が離脱して果菜茎等支持具1が外れることを抑制できる。
【0026】
果菜茎等支持具1の茎保持部2はU形になっており、両側面より延長して上方向の両側にフック部3が形成されているので、茎Aが両側面から外れることがない。
【0027】
果菜茎等支持具1の茎保持部2で茎Aを保持して誘引線10にセットしたときは、図4に示すように、茎Aの生長部が上方向に向いている。
また、茎Aから出ている葉の枝が誘引線10に掛かるため、下方向に茎が抜け落ちないようになっている。さらに、2つのフック部3の後部には、茎Aから出ている葉の枝を引っ掛ける凹部3cが設けられているため、この凹部3cに枝が掛かって、茎Aがずり落ちないようになる。
【0028】
さらに茎Aが生長すると、図5に示すように、茎Aの先端部が果房の重みで果菜茎等支持具1の茎保持部2の位置から大きな曲線で下方向に曲がるが、茎保持部2の長手方向の端部は曲がりを有するので、茎が折れることなく、折り返し栽培を行うことができる。
【0029】
本発明の果菜茎等支持具は、製造時も一体成形で製品となり、組み立てや部品等が不要なので、製品コストも安くなり、本品を梱包するときに、図6に示すように、茎保持部2の内側に別の果菜茎等支持具の茎保持部2の外側を上部のフック部3側から差し込み、さらにその上に別の果菜茎等支持具の茎保持部2の外側を重ねて束ねることができるので、小さくまとめることができる。また、段ボール箱の中に多くの果菜茎等支持具を梱包できるので、輸送コストも安くなり、生産者に低価格で提供できるので、折り返し栽培を行うための資材費が軽減できる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、熟練を要する捻枝作業をする必要がなく、作業性が良く、嵩張らず、コストも低減できる果菜茎等支持具として、トマト、キュウリ等の果菜類の茎等の折り返し栽培に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0031】
A 茎
1 果菜茎等支持具
2 茎保持部
2a 両端部
3 フック部
3a ガイド部
3b 突出部
3c 凹部
4 誘引線出し入れ開口部
10 誘引線
11 誘引紐
12 誘引用クリップ
13 誘引線
【技術分野】
【0001】
本発明は、トマト、キュウリ、ナス、メロン、花類、果樹等の果菜類の茎や蔓(以下、「茎等」と略称することがある。)が成長する際に、茎等を、誘引線の高さ近くで自然に曲がった状態で支持し、茎や蔓の先端を下方に曲げて生長させることにより、収率を上げるようにした果菜茎等支持具に関する。
【背景技術】
【0002】
トマト、キュウリ、メロン、ナス、花類、果樹等の植物の茎や苗、蔓、幹は、成長するにつれ、上に伸びていこうとするが、支えがないと、その自重で垂れ下がり、地面に付いてそこから虫が付いて食べられたり、病気が発生したりする。そのため、茎や苗が倒れたり折れたりしないように、茎等を人為的に誘引して果菜類の生長を助け、収率を上げるようにしている。
【0003】
たとえばトマトの場合、さまざまな誘引方法があるが、誘引の省力化と、通気性を良くし、茎が病気等に罹りにくくするため、誘引方法の一つとして図7および図8に示す方法がある。これは、図7に示すように、ビニールハウス内の上部に張られている誘引線10に上部が結びつけられた誘引紐11と誘引用クリップ12とを用いて、茎等を直立に上向きに誘引し、誘引線10の高さより30cm前後、茎が生長した時点で、図8に示すように誘引線10の位置から茎を誘引線10に載せ掛けて、下方向に折り返して誘引するものである。
【0004】
この誘引方法の場合、茎を誘引線10の位置から下方向に折り返すとき、図8のaに示すように、茎を鋭角に曲げる形となるので、茎が完全に折れて生長が止まったり、果房の着きが悪くなったりする。それを防いで茎が柔軟に下方向へ曲がりやすくするために、茎の折り返す箇所の一部をペンチで軽く挟んで潰したり、折り返す箇所の茎の一部を手で捻ったりして(捻枝)、茎が下方向へ曲がりやすくなるようにしている。この捻枝作業は、素人が行うと茎が完全に折れてしまって生長が止まったり、果房の着きが悪くなったりし、収率に重大な影響が生じるので、捻枝の技術を習得した特定の人が細心の注意を払いながら捻枝作業を行い、折り返し栽培を行っている。
【0005】
しかし、この捻枝作業は、1本1本すべての茎を捻枝する必要があり手間が掛かる上、捻枝の技術を習得した特定の人が行う必要があるので、捻枝作業を担当する人にとって重労働になっている。
【0006】
他の折り返し栽培方法として、図9および図10に示す方法がある。これは、図9に示すように誘引線10に上部が結びつけられた誘引紐11と誘引用クリップ12を用い、茎を直立に上向きに誘引し、誘引線10の手前まで茎を生長させる。茎が誘引線10の高さよりも生長した時点で、図10に示すように誘引線10の位置より下から茎を誘引線10の高さまで斜めに誘引し、捻枝を行わずに茎を誘引線10に載せ掛けて、誘引線10に載せ掛けた茎を誘引線10と一緒に誘引用クリップ12等で留める方法である。このように、茎が一箇所から鋭角に折れ曲がらないように誘引線10の位置で留めることにより、さらに茎が生長し、果房を着ける。その果房の重みで茎が大きな曲線で下方向に曲がり、折り返し栽培の特徴を呈する。
【0007】
しかし、この折り返し栽培方法では、1本の茎を、誘引線10の下方の誘引紐11の位置と、誘引線10の2箇所の、全3箇所で誘引用クリップ12等で留めて徐々に曲げるので、捻枝を行わなくても茎が生長して果房の重みで茎が大きな曲線で曲がり、下方向へ折り返して誘引できるが、直立に上向きに誘引してきた茎を誘引線10の位置より下で一度斜めに誘引線10の高さの位置まで誘引し、さらに茎が生長したら誘引線10に載せ掛けた茎と誘引線10を誘引用クリップ12等で留めなければならず、手間が掛かる。
【0008】
図11はさらに他の折り返し栽培方法を示すものである。前述の栽培方法では、直立に上向きに誘引した茎を誘引線10よりも高く生長させ、1本の誘引線10に茎を載せ掛けて下方向へ折り返して栽培すると、茎を鋭角に180度折り曲げて折り返して下げることになるので、捻枝をしていても茎の折り曲げている部分に傷が深く入ることがある。そこで、図11に示すように、誘引線を2本張り、誘引紐11と誘引用クリップ12により直立に上向きに誘引した茎を1本目の誘引線10の位置で茎を捻枝し、2本目の誘引線13に茎を載せ掛けて下方向へ90度折り曲げることにより、茎を深く傷付けるのを最小にするものである。
【0009】
この栽培方法では、捻枝をする手間が1本の茎に対して2度も行う必要があり、捻枝する作業回数が多くなり、重労働となる。また、誘引線も通常の2倍の数を張る必要があり、誘引スペースもとってしまう。
【0010】
このような捻枝作業や誘引作業の問題を解決するため、直立に上方向に誘引した茎を大きな曲線で折り返しを行う折り返し誘引用の茎曲げ具が特許文献1に記載されている。この茎曲げ具は、図12に示すように、基板21の上部中央に提手22を有し、基板21に回動体23を取り付け、回動体23に、先端に引っ掛け部25を備えたレバー24を設け、基板21に保持爪26を設けた構成となっている。この茎曲げ具20を用いて茎を誘引するには、誘引線10に茎曲げ具20の提手22を引っ掛けて茎曲げ具20を吊しておき、茎が誘引線10の位置より高く生長したときに、茎曲げ具20の保持爪26に茎をセットすると同時に茎の保持爪26から茎が外れないようにレバー24で茎を押さえ、さらに茎が生長したときに下方向に茎を押さえながらレバー24を回転させ、茎を折り返して誘引するようにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11−266715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前掲の特許文献1の折り返し誘引用の茎曲げ具は、捻枝を行わなくても、基板21周面の曲面で茎を傷付けずに直立に上向きに誘引された茎を下方向に折り返すことはできるが、茎曲げ具20自体、数多くの部品を使って組み立てられているため、コストが高く、生産者が購入するには金銭的な負担が大きくなる。また、保持爪26やレバー24が大きく突起しているため、誘引作業中に茎や葉が絡まることがあり、作業性が良くない。さらに、収穫後、器具を回収するときに、器具の茎保持爪やレバー、フック部が絡まって、嵩張る。
【0013】
トマトの場合、生産者は通常、複数のハウスを営農しており、1棟のビニールハウスだけで、約2000本の茎を育成している。トマトを折り返し栽培するために、1茎毎に捻枝を行うのは重労働であり、また捻枝を行わずに折り返し栽培をするためには茎を留める箇所を増やしたりしなければならない。また、既存の茎曲げ具等の器具も複雑な構造で茎を保持するための手間が掛かり、さらに高価なために、生産者の資材費負担が大きくなる。
【0014】
そこで本発明は、トマト、キュウリ等の果菜類の茎や蔓を折り返し栽培する際に、熟練を要する捻枝作業をする必要がなく、作業性が良く、嵩張らず、コストも低減できる果菜茎等支持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するため、本発明の果菜茎等支持具は、長手方向に沿って弧状に曲がり幅方向の断面がU字状の茎保持部の幅方向の両側部に、誘引線出し入れ開口部を有するフック部を一体に設けたことを特徴とする。
【0016】
本発明においては、誘引線に吊している誘引紐により垂直に支持されている茎が誘引線の位置より所定の長さ上へ達したら、誘引線の近くの茎の一部分に果菜茎等支持具の茎保持部を当て、そのまま果菜茎等支持具の2つのフック部を誘引線に掛けることで茎を保持することができる。本発明の果菜茎等支持具は一体成形品であるので、茎を挟み込む工程時に組み立てる手間が掛からない。
【0017】
フック部の誘引線出し入れ開口部の上部に、外方向に向かって斜め下方向に延出するガイド部を形成することにより、誘引線が高い位置に張られている場合でも、確実にフック部を誘引線に掛けることができる。
【0018】
フック部の誘引線出し入れ開口部の下部に、誘引線離脱抑止用の突出部を形成することにより、誘引線が上下左右に振れた場合でも、フック部が誘引線から不用意に離脱しにくくなる。
【0019】
フック部における茎保持部との連設基部であって誘引線出し入れ開口部とは反対側に、枝等保持用の凹部を形成することにより、茎から出た枝が凹部に保持され、茎のずり落ちを抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、果菜類の茎や蔓を折り返し栽培する際に、熟練を要する捻枝作業をする必要がなく、作業性が良く、嵩張らず、コストも低減できる果菜茎等支持具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態に係る果菜茎等支持具の斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る果菜茎等支持具を誘引線に装着する状態の側面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る果菜茎等支持具を誘引線に装着する前の状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る果菜茎等支持具を誘引線に装着した状態の斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る果菜茎等支持具を用いたときの茎が伸びた状態の斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る果菜茎等支持具を多数積み重ねて収納する時の正面図である。
【図7】従来の折り返し栽培方法の説明図である。
【図8】従来の折り返し栽培方法の説明図である。
【図9】従来の折り返し栽培方法の説明図である。
【図10】従来の折り返し栽培方法の説明図である。
【図11】従来の折り返し栽培方法の説明図である。
【図12】従来の折り返し栽培方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を、図1〜図6を用いて説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る果菜茎等支持具の斜視図、図2は誘引線に装着する状態の側面図、図3は誘引線に装着する前の状態を示す斜視図、図4は誘引線に装着した状態の斜視図、図5は茎が伸びた状態の斜視図、図6は多数積み重ねて収納する時の正面図である。
【0023】
図1及び図2に示すように、本実施の形態の果菜茎等支持具1の茎保持部2は、幅方向の断面がU字状となっており、茎を載せ掛ける茎保持部2の底面の両端部2aは、下方向へ曲がりを設け、茎が下方向に折り返すときに茎を傷めずに曲がるようにしている。なお、茎保持部2の長手方向の全体が円弧状に曲がっていても良い。また、両端上部の角は、茎が生長して果房が着き、自重で下方向に曲がるときに茎に傷が入りにくいように丸くしている。茎保持部2の両側中央部には、上方向にフック部3が一体に形成されており、フック部3の誘引線出し入れ開口部4の上部には外方向に向かって斜め下方向に延出するガイド部3aが設けられている。誘引線出し入れ開口部4の下部には、誘引線離脱防止用の突出部3bが設けられている。さらに、誘引線出し入れ開口部4とは反対側の基部近くに、枝等保持用の凹部3cが設けられている。果菜茎等支持具1全体は、耐候性のポリプロピレン等の熱可塑性プラスチックで一体成形されている。
【0024】
次に、本実施の形態の果菜茎等支持具1の使用方法について説明する。
茎が真っ直ぐ上に生長するまでは、誘引線10に結んだ誘引紐11に誘引用クリップ12等を用いて誘引するまでは図7に示した従来例と同じである。
【0025】
茎が誘引線の位置より30cmほど上へ達したら、図2、図3に示すように、誘引線10の近くの茎Aの一部分に果菜茎等支持具1の茎保持部2を当て、茎Aを両フック部3の開いた方向から茎保持部2に入れ、2つのフック部3を誘引線10に掛けることによって、茎Aを保持することができる。このとき、誘引線10がフック部3の上部方向に対しての茎外れ防止となる。フック部3の誘引線出し入れ開口部4の上部にはガイド部3aが設けられているので、両ガイド部3aの先端部が誘引線10に引っ掛かれば、フック部3は容易にかつ確実に誘引線10に装着される。また、フック部3が一旦誘引線10に装着されると、突出部3bが誘引線出し入れ開口部4を狭くしている状態になるので、誘引線10が上下左右に揺れても、不用意にフック部3が離脱して果菜茎等支持具1が外れることを抑制できる。
【0026】
果菜茎等支持具1の茎保持部2はU形になっており、両側面より延長して上方向の両側にフック部3が形成されているので、茎Aが両側面から外れることがない。
【0027】
果菜茎等支持具1の茎保持部2で茎Aを保持して誘引線10にセットしたときは、図4に示すように、茎Aの生長部が上方向に向いている。
また、茎Aから出ている葉の枝が誘引線10に掛かるため、下方向に茎が抜け落ちないようになっている。さらに、2つのフック部3の後部には、茎Aから出ている葉の枝を引っ掛ける凹部3cが設けられているため、この凹部3cに枝が掛かって、茎Aがずり落ちないようになる。
【0028】
さらに茎Aが生長すると、図5に示すように、茎Aの先端部が果房の重みで果菜茎等支持具1の茎保持部2の位置から大きな曲線で下方向に曲がるが、茎保持部2の長手方向の端部は曲がりを有するので、茎が折れることなく、折り返し栽培を行うことができる。
【0029】
本発明の果菜茎等支持具は、製造時も一体成形で製品となり、組み立てや部品等が不要なので、製品コストも安くなり、本品を梱包するときに、図6に示すように、茎保持部2の内側に別の果菜茎等支持具の茎保持部2の外側を上部のフック部3側から差し込み、さらにその上に別の果菜茎等支持具の茎保持部2の外側を重ねて束ねることができるので、小さくまとめることができる。また、段ボール箱の中に多くの果菜茎等支持具を梱包できるので、輸送コストも安くなり、生産者に低価格で提供できるので、折り返し栽培を行うための資材費が軽減できる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、熟練を要する捻枝作業をする必要がなく、作業性が良く、嵩張らず、コストも低減できる果菜茎等支持具として、トマト、キュウリ等の果菜類の茎等の折り返し栽培に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0031】
A 茎
1 果菜茎等支持具
2 茎保持部
2a 両端部
3 フック部
3a ガイド部
3b 突出部
3c 凹部
4 誘引線出し入れ開口部
10 誘引線
11 誘引紐
12 誘引用クリップ
13 誘引線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿って弧状に曲がり幅方向の断面がU字状の茎保持部の幅方向の両側部に、誘引線出し入れ開口部を有するフック部を一体に設けた果菜茎等支持具。
【請求項2】
前記フック部の前記誘引線出し入れ開口部の上部に、外方向に向かって斜め下方向に延出するガイド部を形成した請求項1記載の果菜茎等支持具。
【請求項3】
前記フック部の前記誘引線出し入れ開口部の下部に、誘引線離脱抑止用の突出部を形成した請求項1または2記載の果菜茎等支持具。
【請求項4】
前記フック部における前記茎保持部との連設基部であって前記誘引線出し入れ開口部とは反対側に、枝等保持用の凹部を形成した請求項1から3のいずれかの項に記載の果菜茎等支持具。
【請求項1】
長手方向に沿って弧状に曲がり幅方向の断面がU字状の茎保持部の幅方向の両側部に、誘引線出し入れ開口部を有するフック部を一体に設けた果菜茎等支持具。
【請求項2】
前記フック部の前記誘引線出し入れ開口部の上部に、外方向に向かって斜め下方向に延出するガイド部を形成した請求項1記載の果菜茎等支持具。
【請求項3】
前記フック部の前記誘引線出し入れ開口部の下部に、誘引線離脱抑止用の突出部を形成した請求項1または2記載の果菜茎等支持具。
【請求項4】
前記フック部における前記茎保持部との連設基部であって前記誘引線出し入れ開口部とは反対側に、枝等保持用の凹部を形成した請求項1から3のいずれかの項に記載の果菜茎等支持具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−213491(P2009−213491A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−155454(P2009−155454)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3127656号
【原出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(598139852)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3127656号
【原出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(598139852)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]