柄付き刃物
【解決手段】口金6において中子の両側面16に対し隣接する両側面26,27には、それぞれ、刃板3の両側面12と中子の両側面16との境界線9に対し中子の両側面16側へ10mm以下の範囲で離間する麓線28,29から中子の端縁側へ延びる指掛面30,31を形成し、これらの指掛面30,31は中子の側面16との境界縁部30a,31aから中子の端縁側へ離間するに従い中子の側面16から次第に離間するように傾斜している。口金において刃板の両側面に対し隣接する両側面には、それぞれ、刃板の両側面と中子の両側面との境界線、または、その境界線に対し刃板の両側面側へ離間する麓線から中子側へ延びる指掛面を形成し、これらの指掛面は刃板の側面との境界縁部から中子側へ離間するに従い刃板及び中子の側面から次第に離間するように傾斜している。
【効果】利用者が包丁等の柄付き刃物を所定配置の各指で握り易くなる。
【効果】利用者が包丁等の柄付き刃物を所定配置の各指で握り易くなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は刀身の中子を挿着した口金を柄に設けた包丁等の柄付き刃物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1では、特にその図11,12に示すように、刀身において刃板の先端にある刃先に対し反対側になる刃板の基端から延設された中子が柄の口金にその端面部から挿着され、刃板の腹側で刃先から刃板の基端にある顎部まで刃縁が延設されているとともに、刃縁に対し刃板の顎部で交差して刃板の基端にある中子との境界線まで顎縁が連続している。顎縁に対し中子の腹側で段差状をなして連続する腹縁と、刃板の背側で刃先から中子との境界線まで延びる背縁に対し中子の背側で連続する背縁との間で、中子の両側面が露出している。
【特許文献1】特開平5−212162号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、利用者は、包丁により皮むきなどの細かい手作業をする際に必要に応じて、口金及び把持部の背側を右手の平に当てがうとともに親指と人差し指とが口金の端面部に面した状態で親指と人差し指とにより顎部を挟持するとともに中指と薬指と小指とを口金及び把持部の腹側に当てがうように、各指を配置して包丁を握る。
【0004】
しかし、口金の端面部から露出する中子の両側面の長さが大き過ぎたり、口金の端面部が角張っていたりすると、親指と人差し指とにより顎部を挟持する際、包丁が握りにくくなる。
【0005】
この発明は、利用者が包丁等の柄付き刃物を前述した各指の配置で握り易くすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
後記実施形態の図面(図1〜18)の符号を援用して本発明を説明する。
請求項1〜2の発明にかかる柄付き刃物は、下記の共通構成を有している。
この柄付き刃物1は、刃板3の先端にある刃先4に対し反対側になる刃板3の基端から中子5を延設した刀身2と、この中子5を挿着した口金6を有する柄23とを備えている。この刀身2は、刃板3の腹側で刃先4から刃板3の基端にある顎部7まで延びる刃縁8と、この刃縁8に対し刃板3の顎部7で交差して刃板3の基端にある中子5との境界線9まで連続する顎縁10と、この顎縁10に対し中子5の腹側で段差状をなして連続する腹縁13と、刃板3の背側で刃先4から中子5との境界線9まで延びる背縁11と、この刃板3の背縁11に対し中子5の背側で連続する背縁14と、この中子5で腹縁13と背縁14との間にある端縁15と、この刃板3で刃縁8と顎縁10と背縁11と中子5との境界線9とにより囲まれる両側面12と、この中子5で刃板3の基端にある刃板3との境界線9と腹縁13と背縁14と端縁15とにより囲まれる両側面16とを有している。
【0007】
さらに、請求項1の発明においては、図11,12,13または図14,15,16に示すように、前記口金6において前記刃板3の両側面12に対し隣接する両側面26,27には、それぞれ、刃板3の両側面12と中子5の両側面16との境界線9、または、その境界線9に対し刃板3の両側面12側へ離間する麓線46,47から中子5側へ延びる指掛面30,31を形成し、これらの指掛面30,31は刃板3の側面12との境界縁部30a,31aから中子5側へ離間するに従い刃板3及び中子5の側面12,16から次第に離間するように傾斜している。ちなみに、前記麓線46,47は境界線9に対し刃板3の両側面12側へ10mm以下の範囲で離間している。
【0008】
さらに、請求項2の発明においては、図6,7,8,9,10に示すように、前記口金6において前記中子5の両側面16に対し隣接する両側面26,27には、それぞれ、刃板3の両側面12と中子5の両側面16との境界線9に対し中子5の両側面16側へ10mm以下の範囲で離間する麓線28,29から中子5の端縁15側へ延びる指掛面30,31を形成し、これらの指掛面30,31は中子5の側面16との境界縁部30a,31aから中子5の端縁15側へ離間するに従い中子5の側面16から次第に離間するように傾斜している。
【0009】
請求項1または請求項2の発明を前提とする請求項3の発明においては、前記口金6の両指掛面30,31のうち、図6,7,8や図11や図14に示すように両方(指掛面30,31)が共に凹状に凹んで傾斜しているか、または、図9や図12や図15に示すように一方(指掛面31)が凹状に凹んで傾斜しているとともに他方(指掛面30)が凸状に膨らんで傾斜しているか、または、図10や図13や図16に示すように両方(指掛面30,31)が共に凸状に膨らんで傾斜している。
【0010】
請求項1〜3の発明では、利用者が口金6及び柄23の背側を手の平に当てがい親指41が口金6の指掛面31に面するとともに人差し指42が口金6の指掛面30に面した状態で親指41と人差し指42とにより顎部7を挟持して刃物1を握る場合、両指掛面30,31が傾斜しているために親指41と人差し指42とを両指掛面30,31に当てがい易くなるとともに、その両指掛面30,31が刃板3の顎部7に対し適切な距離Sにあるために親指41と人差し指42とにより顎部7を挟持し易くなる。
【0011】
請求項1または請求項2の発明を前提とする請求項4の発明において、前記柄23は頭部側にある前記口金6から尻部側へ延びる把持部24を有し、図6,7,8や図11や図14に示すように、この口金6の両側面26,27で両指掛面30,31が共に凹状に凹んで傾斜しているとともに、この両指掛面30,31と前記把持部24との間には両指掛面30,31から連続する指当面32,33を設けている。
【0012】
請求項4の発明では、中指43と薬指44と小指45とを口金6の指当面32,33及び柄23の把持部24に当てがって刃物1の把持状態を安定させることができる。
請求項4の発明を前提とする請求項5の発明において、前記把持部24で前記口金6の両指当面32,33に隣接する両側面36,37のうち一方の側面36には、図6,7,8や図11や図14に示すように、柄23の頭部側と尻部側とを結ぶ長手方向Xに沿って延びる稜線38を設け、前記口金6の両指当面32,33のうち一方の指当面32にはこの把持部24の側面36の稜線38から連続する稜線39を設けている。
【0013】
請求項5の発明を前提とする請求項6の発明において、前記口金6の指当面32,33の稜線39は、図6,7,8や図11や図14に示すように、前記把持部24の側面36の稜線38から連続して柄23の長手方向Xに沿って延びる第一の稜線39aと、この第一の稜線39aからこの口金6の指掛面30に向けて二股状に延びる第二の稜線39b,39cとを有している。
【0014】
請求項5〜6の発明では、これらの稜線38及び稜線39(各稜線39a,39b,39c)が手の平や親指41以外の各指(人差し指42や中指43や薬指44や小指45)の柔らかい部分にくい込み易くなって刃物1の把持状態を安定させることができる。
【0015】
請求項4または請求項5または請求項6の発明を前提とする請求項7の発明(図6,7参照)において、前記口金6の両側面26,27の指掛面30,31で柄23の長手方向Xに沿った最大寸法L30,L31については、この口金6の両側面26,27のうち一方の側面27における指掛面31の最大寸法L31が他方の側面26における指掛面30の最大寸法L30よりも大きくなっているとともに、前記口金6の両側面26,27の指当面32,33で柄23の長手方向Xに沿った最小寸法L32,L33については、この口金6の両側面26,7のうち前記一方の側面27における指当面33の最小寸法L33が前記他方の側面26における指当面32の最小寸法L32より小さくなっている。
【0016】
請求項7の発明では、親指41を指掛面31に当てがい易くなるとともに人差し指42を指掛面30に当てがい易くなる。
請求項1から請求項7のうちいずれかの請求項の発明を前提とする請求項8の発明において、前記口金6の両指掛面30,31は、図6,7,8,9,10または図11,12,13または図14,15,16に示すように、その境界縁部30a,31aで刃板3の側面12または中子5の側面16に対し面一で連続している。
【0017】
請求項8の発明では、親指41と人差し指42とを両指掛面30,31に当てがい易くなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、利用者が包丁等の柄付き刃物1を所定配置の各指41,42,43,44,45で握り易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
まず、本発明の第1実施形態にかかる刃物について図1〜7を参照して説明する。
図6に示す包丁である刃物1を製造する過程を概説する。
まず、母材から刀身素材を形取り、その刀身素材を加工して図1(a)に示す刀身2とする。この刀身2においては、三層鋼からなる刃板3の先端にある刃先4に対し反対側になる刃板3の基端から中子5が延設されている。また、図1(a)に示すように、この中子5を挿着する口金6を成形する。この口金6はSUS430からなる。なお、この中子5を口金6に挿着する際にそれらの間でがた付きが生じないように、刀身素材の加工時に中子5を母材の厚みのまま残す。
【0020】
前記刀身2の刃板3は、刃板3の腹側で刃先4から刃板3の基端にある顎部7まで延びる刃縁8と、この刃縁8に対し刃板3の顎部7で交差して刃板3の基端にある中子5との境界線9まで連続する顎縁10と、刃板3の背側で刃先4から中子5との境界線9まで延びる背縁11と、この刃板3で刃縁8と顎縁10と背縁11と中子5との境界線9とにより囲まれる両側面12とを有している。この刀身2の中子5は、この顎縁10に対し中子5の腹側で段差状をなして連続する腹縁13と、この刃板3の背縁11に対し中子5の背側で連続する背縁14と、この中子5で腹縁13と背縁14との間にある端縁15と、この中子5で刃板3の基端にある刃板3との境界線9と腹縁13と背縁14と端縁15とにより囲まれる両側面16とを有している。この口金6においては、図1(b)及び図3(b)に示すように、先端部側で中子挿着溝17が基端部側へ向けて形成され、その中子挿着溝17を挟む両腕部18,19が二股状に形成されているとともに、この両腕部18,19の先端部にはそれぞれ傾斜部20,21が形成されている。
【0021】
次に、図2に示すように、前記口金6の中子挿着溝17に前記刀身2の中子5を挿入する。
次に、図3(a)(b)に示すように、前記口金6の両腕部18,19における傾斜部20,21の先端部と前記中子5及び刃板3とが互いに接触する部分を溶接する。
【0022】
次に、図4に示すように、上記の溶接により生じた中子5と口金6との連結部22においてその溶接部分の外側を削り取る。
次に、図5に示すように、中子5と口金6との連結部22や両腕部18,19の傾斜部20,21を含む口金6の表面全体を研削及び研磨する。その後、刀身2の露出表面に対しTiCN(炭ちっ化チタン)により黒色のコーティングを施す。
【0023】
次に、図6(a)に示すように、柄23を刀身2に取着する。この柄23においては、頭部側にある口金6に把持部24を連結して尻部側へ延設するとともにこの把持部24の尻部に尻金25を連結する。この把持部24は積層強化木からなり、この尻金25はSUS430からなる。その後、刀身2の刃縁8に仕上げ刃付けを行う。さらに、刀身2において前記黒色コーティング面に対しレーザー照射処理を施して型番や品質管理番号などを表示する。柄23の頭部側と尻部側とを結ぶ長手方向Xに沿った口金6の長さは約20mmであり、同じく尻金25の長さは約12mmであり、この口金6と尻金25とにより柄23の全体重量を大きくして刀身2との重量バランスを良くしている。
【0024】
このようにして製造された刃物1においては、図7(a)(b)(c)に示すように、口金6で中子5の両側面16に対し隣接する両側面26,27には、それぞれ、刃板3の両
側面12と中子5の両側面16との境界線9に対し中子5の両側面16側へ距離Sだけ離間する麓線28,29から中子5の端縁15側へ延びる指掛面30,31が形成されている。この距離Sは、10mm以下の範囲であり、好ましくは0.5mm以上6mm以下の範囲、さらに好ましくは1mm以上3mm以下に設定することができる。これらの指掛面30,31は、共に、中子5の側面16との境界縁部(麓線28,29上の縁部30a,31a)から中子5の端縁15側へ離間するに従い中子5の側面16から次第に離間するように凹状に凹んで傾斜し、それらの境界縁部30a,31aで中子5の側面16に対し面一で連続している。また、この口金6の両側面26,27にはこの両指掛面30,31と前記把持部24との間で両指掛面30,31から連続する指当面32,33が形成されている。この両指当面32,33は、前記刃板3の背縁11と把持部24との間で延びる口金6の腹面34と背面35とにより互いに連続している。
【0025】
前記口金6の両側面26,27の指掛面30,31で柄23の頭部側と尻部側とを結ぶ長手方向Xに沿った最大寸法L30,L31については、この口金6の両側面26,27のうち一方の側面27における指掛面31の最大寸法L31が他方の側面26における指掛面30の最大寸法L30よりも大きくなっている。前記口金6の両側面26,27の指当面32,33で柄23の長手方向Xに沿った最小寸法L32,L33については、この口金6の両側面26,27のうち前記一方の側面27における指当面33の最小寸法L33が前記他方の側面26における指当面32の最小寸法L32より小さくなっている。また、前記口金6の両側面26,27の指掛面30,31及び指当面32,33で刃板3の厚み方向Yの中心線Cに対する最大寸法W30,W31,W32,W33については、一方の側面27における指掛面31の最大寸法W31が他方の側面26における指掛面30の最大寸法W30よりも小さくなっているとともに、一方の側面27における指当面33の最大寸法W33が他方の側面26における指当面32の最大寸法W32よりも小さくなっている。さらに、一方の側面27において指当面33の最大寸法W33が指掛面31の最大寸法W31よりも大きくなっているとともに、他方の側面26において指当面32の最大寸法W32が指掛面30の最大寸法W30よりも大きくなっている。
【0026】
図6,7に示すように、前記柄23の把持部24及び尻金25において前記口金6の両指当面32,33に隣接する両側面36,37のうち一方の側面36には、柄23の長手方向Xに沿って延びる稜線38が把持部24及び尻金25の長手方向X全体にわたり形成されている。前記口金6の両指当面32,33のうち指当面32には前記把持部24の側面36の稜線38から連続する稜線39が形成されている。この口金6の指当面32の稜線39は、前記把持部24の側面36の稜線38から連続して柄23の長手方向Xに沿って延びる第一の稜線39aと、この第一の稜線39aからこの口金6の指掛面30に向けて二股状に延びる第二の稜線39b,39cとを有している。この口金6の指当面32にはこの第二の稜線39b,39cと指掛面30との間で前記刃板3の厚み方向Yの中心線Cに対し傾斜する区画面40が形成されている。なお、これらの稜線38,39については若干の丸みを持たせてもよい。
【0027】
図6(b)に示すように、利用者は、包丁により皮むきなどの細かい手作業をする際に必要に応じて、口金6及び把持部24の背側を右手の平に当てがい、親指41が口金6の指掛面31に面するとともに人差し指42が口金6の指掛面30に面し、中指43が指当面32の区画面40に面した状態で、親指41と人差し指42とにより顎部7を挟持するとともに、中指43を口金6の腹側に当てがい、薬指44と小指45とを把持部24の腹側に当てがうように、各指41,42,43,44,45を配置して刃物1を握る。
【0028】
図8に示すように、本発明の第1実施形態の別例にかかる刃物1については、第1実施形態(図7参照)と比較して、稜線38,39が形成されていない点と、指掛面31の最大寸法L31と指掛面30の最大寸法L30とが互いに等しくなっているとともに、指当面33の最小寸法L33と指当面32の最小寸法L32とが互いに等しくなっている点で、第1実施形態と異なる。
【0029】
図9に示すように、本発明の第2実施形態にかかる刃物1については、第1実施形態(図7参照)と比較して、稜線38,39が形成されていない点と、口金6の両指掛面30,31のうち指掛面31が凹状に凹んで傾斜しているとともに指掛面30が凸状に膨らんで傾斜している点で、第1実施形態と異なる。
【0030】
図10に示すように、本発明の第3実施形態にかかる刃物1については、第1実施形態(図7参照)と比較して、稜線38,39が形成されていない点と、口金6の両指掛面30,31が共に凸状に膨らんで傾斜している点で、第1実施形態と異なる。
【0031】
図11に示すように本発明の第4実施形態にかかる刃物1については第1実施形態の別例(図8参照)と比較して、また、図12に示すように本発明の第5実施形態にかかる刃物1については第2実施形態(図9参照)と比較して、また、図13に示すように本発明の第6実施形態にかかる刃物1については第3実施形態(図10参照)と比較して、それぞれ、下記の点で異なる。
【0032】
口金6の両指掛面30,31は、刃板3の両側面12と中子5の両側面16との境界線9(距離S=0mm)から中子5側へ延び、刃板3の側面12との境界縁部(境界線9上の縁部30a,31a)から中子5側へ離間するに従い刃板3及び中子5の側面12,16から次第に離間するように傾斜している。
【0033】
図14に示すように本発明の第7実施形態にかかる刃物1については第1実施形態の別例(図8参照)と比較して、また、図15に示すように本発明の第8実施形態にかかる刃物1については第2実施形態(図9参照)と比較して、また、図16に示すように本発明の第9実施形態にかかる刃物1については第3実施形態(図10参照)と比較して、それぞれ、下記の点で異なる。
【0034】
口金6の両指掛面30,31は、刃板3の両側面12と中子5の両側面16との境界線9に対し刃板3の両側面12側へ距離Sだけ離間する麓線46,47から中子5側へ延び、刃板3の側面12との境界縁部(麓線46,47上の縁部30a,31a)から中子5側へ離間するに従い刃板3及び中子5の側面12,16から次第に離間するように傾斜している。この距離Sは、10mm以下の範囲であり、好ましくは0.5mm以上8mm以下の範囲、さらに好ましくは1mm以上6mm以下に設定することができる。
【0035】
図17に示すように本発明の第10実施形態では、図6(a)に示す第1実施形態の刃物1において背縁11に保護部材48が着脱可能に取り付けられ、砥石49によりこの刃物1の刃縁8を研ぐ際に砥石49に面する保護部材48により、刃物1の側面12が砥石49に接触しないようにしてTiCNコーティングの剥離を防止している。
【0036】
図18に示すように本発明の第11実施形態では、図6(a)に示す第1実施形態の刃物1の刃板3を収容するケース50内にその刃板3を吸着する磁石51が嵌め込まれている。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】(a)は第1実施形態にかかる柄付き刃物の製造過程において刀身と口金とを互いに分解して示す正面図であり、(b)はその口金を示す斜視図である。
【図2】図1(a)で刀身の中子を口金に挿入した状態を示す正面図である。
【図3】(a)は図2で刀身の中子と口金とを互いに溶接した連結状態を示す正面図であり、(b)はその中子と口金との連結部分を平面側から見た部分断面図である。
【図4】図3(a)で示す中子と口金との連結部分において溶接部分を削り取った状態を示す正面図である。
【図5】図4で示す中子と口金との連結部分を研削及び研磨した状態を示す正面図である。
【図6】(a)は図5で示す口金に把持部を連結した柄を備えた刃物を示す正面図であり、(b)は同じく背面図であり、(c)はこの刃物の右側面図であり、(d)はこの刃物の左側面図である。
【図7】(a)は図6(a)に示す刃物において中子と口金との連結部分を示す部分正面図であり、(b)は(a)の連結部分を示す部分平面図であり、(c)は(a)の連結部分を示す部分背面図である。
【図8】(a)は第1実施形態の別例にかかる刃物において中子と口金との連結部分を示す部分正面図であり、(b)は(a)の連結部分を示す部分平面図であり、(c)は(a)の連結部分を示す部分背面図である。
【図9】(a)は第2実施形態にかかる刃物において中子と口金との連結部分を示す部分正面図であり、(b)は(a)の連結部分を示す部分平面図であり、(c)は(a)の連結部分を示す部分背面図である。
【図10】(a)は第3実施形態にかかる刃物において中子と口金との連結部分を示す部分正面図であり、(b)は(a)の連結部分を示す部分平面図であり、(c)は(a)の連結部分を示す部分背面図である。
【図11】(a)は第4実施形態にかかる刃物において中子と口金との連結部分を示す部分正面図であり、(b)は(a)の連結部分を示す部分平面図であり、(c)は(a)の連結部分を示す部分背面図である。
【図12】(a)は第5実施形態にかかる刃物において中子と口金との連結部分を示す部分正面図であり、(b)は(a)の連結部分を示す部分平面図であり、(c)は(a)の連結部分を示す部分背面図である。
【図13】(a)は第6実施形態にかかる刃物において中子と口金との連結部分を示す部分正面図であり、(b)は(a)の連結部分を示す部分平面図であり、(c)は(a)の連結部分を示す部分背面図である。
【図14】(a)は第7実施形態にかかる刃物において中子と口金との連結部分を示す部分正面図であり、(b)は(a)の連結部分を示す部分平面図であり、(c)は(a)の連結部分を示す部分背面図である。
【図15】(a)は第8実施形態にかかる刃物において中子と口金との連結部分を示す部分正面図であり、(b)は(a)の連結部分を示す部分平面図であり、(c)は(a)の連結部分を示す部分背面図である。
【図16】(a)は第9実施形態にかかる刃物において中子と口金との連結部分を示す部分正面図であり、(b)は(a)の連結部分を示す部分平面図であり、(c)は(a)の連結部分を示す部分背面図である。
【図17】(a)は第10実施形態にかかる刃物において砥石用背部材を取り付けた状態を示す正面図であり、(b)はその刃物を砥石により研ぐ状態を示す説明図である。
【図18】(a)は第11実施形態にかかるケース付き刃物を示す正面図であり、(b)はその刃物を平面側から見た部分断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1…刃物、2…刀身、3…刃板、4…刃先、5…中子、6…口金、7…刃板の顎部、8…刃板の刃縁、9…刃板と中子との間の境界線、10…刃板の顎縁、11…刃板の背縁、12…刃板の側面、13…中子の腹縁、14…中子の背縁、15…中子の端縁、16…中子の側面、23…柄、24…把持部、26,27…口金の側面、28,29…中子側の麓線、30,31…口金の側面の指掛面、30a,31a…境界縁部、32,33…口金の側面の指当面、36,37…把持部の側面、38…把持部の側面の稜線、39…口金の指当面の稜線、39a…第一の稜線、39b,39c…第二の稜線、46,47…刃板側の麓線、S…境界線から麓線までの距離、X…長手方向、L30,L31…指掛面の長手方向最大寸法、L32,L33…指当面の長手方向最小寸法。
【技術分野】
【0001】
本発明は刀身の中子を挿着した口金を柄に設けた包丁等の柄付き刃物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1では、特にその図11,12に示すように、刀身において刃板の先端にある刃先に対し反対側になる刃板の基端から延設された中子が柄の口金にその端面部から挿着され、刃板の腹側で刃先から刃板の基端にある顎部まで刃縁が延設されているとともに、刃縁に対し刃板の顎部で交差して刃板の基端にある中子との境界線まで顎縁が連続している。顎縁に対し中子の腹側で段差状をなして連続する腹縁と、刃板の背側で刃先から中子との境界線まで延びる背縁に対し中子の背側で連続する背縁との間で、中子の両側面が露出している。
【特許文献1】特開平5−212162号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、利用者は、包丁により皮むきなどの細かい手作業をする際に必要に応じて、口金及び把持部の背側を右手の平に当てがうとともに親指と人差し指とが口金の端面部に面した状態で親指と人差し指とにより顎部を挟持するとともに中指と薬指と小指とを口金及び把持部の腹側に当てがうように、各指を配置して包丁を握る。
【0004】
しかし、口金の端面部から露出する中子の両側面の長さが大き過ぎたり、口金の端面部が角張っていたりすると、親指と人差し指とにより顎部を挟持する際、包丁が握りにくくなる。
【0005】
この発明は、利用者が包丁等の柄付き刃物を前述した各指の配置で握り易くすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
後記実施形態の図面(図1〜18)の符号を援用して本発明を説明する。
請求項1〜2の発明にかかる柄付き刃物は、下記の共通構成を有している。
この柄付き刃物1は、刃板3の先端にある刃先4に対し反対側になる刃板3の基端から中子5を延設した刀身2と、この中子5を挿着した口金6を有する柄23とを備えている。この刀身2は、刃板3の腹側で刃先4から刃板3の基端にある顎部7まで延びる刃縁8と、この刃縁8に対し刃板3の顎部7で交差して刃板3の基端にある中子5との境界線9まで連続する顎縁10と、この顎縁10に対し中子5の腹側で段差状をなして連続する腹縁13と、刃板3の背側で刃先4から中子5との境界線9まで延びる背縁11と、この刃板3の背縁11に対し中子5の背側で連続する背縁14と、この中子5で腹縁13と背縁14との間にある端縁15と、この刃板3で刃縁8と顎縁10と背縁11と中子5との境界線9とにより囲まれる両側面12と、この中子5で刃板3の基端にある刃板3との境界線9と腹縁13と背縁14と端縁15とにより囲まれる両側面16とを有している。
【0007】
さらに、請求項1の発明においては、図11,12,13または図14,15,16に示すように、前記口金6において前記刃板3の両側面12に対し隣接する両側面26,27には、それぞれ、刃板3の両側面12と中子5の両側面16との境界線9、または、その境界線9に対し刃板3の両側面12側へ離間する麓線46,47から中子5側へ延びる指掛面30,31を形成し、これらの指掛面30,31は刃板3の側面12との境界縁部30a,31aから中子5側へ離間するに従い刃板3及び中子5の側面12,16から次第に離間するように傾斜している。ちなみに、前記麓線46,47は境界線9に対し刃板3の両側面12側へ10mm以下の範囲で離間している。
【0008】
さらに、請求項2の発明においては、図6,7,8,9,10に示すように、前記口金6において前記中子5の両側面16に対し隣接する両側面26,27には、それぞれ、刃板3の両側面12と中子5の両側面16との境界線9に対し中子5の両側面16側へ10mm以下の範囲で離間する麓線28,29から中子5の端縁15側へ延びる指掛面30,31を形成し、これらの指掛面30,31は中子5の側面16との境界縁部30a,31aから中子5の端縁15側へ離間するに従い中子5の側面16から次第に離間するように傾斜している。
【0009】
請求項1または請求項2の発明を前提とする請求項3の発明においては、前記口金6の両指掛面30,31のうち、図6,7,8や図11や図14に示すように両方(指掛面30,31)が共に凹状に凹んで傾斜しているか、または、図9や図12や図15に示すように一方(指掛面31)が凹状に凹んで傾斜しているとともに他方(指掛面30)が凸状に膨らんで傾斜しているか、または、図10や図13や図16に示すように両方(指掛面30,31)が共に凸状に膨らんで傾斜している。
【0010】
請求項1〜3の発明では、利用者が口金6及び柄23の背側を手の平に当てがい親指41が口金6の指掛面31に面するとともに人差し指42が口金6の指掛面30に面した状態で親指41と人差し指42とにより顎部7を挟持して刃物1を握る場合、両指掛面30,31が傾斜しているために親指41と人差し指42とを両指掛面30,31に当てがい易くなるとともに、その両指掛面30,31が刃板3の顎部7に対し適切な距離Sにあるために親指41と人差し指42とにより顎部7を挟持し易くなる。
【0011】
請求項1または請求項2の発明を前提とする請求項4の発明において、前記柄23は頭部側にある前記口金6から尻部側へ延びる把持部24を有し、図6,7,8や図11や図14に示すように、この口金6の両側面26,27で両指掛面30,31が共に凹状に凹んで傾斜しているとともに、この両指掛面30,31と前記把持部24との間には両指掛面30,31から連続する指当面32,33を設けている。
【0012】
請求項4の発明では、中指43と薬指44と小指45とを口金6の指当面32,33及び柄23の把持部24に当てがって刃物1の把持状態を安定させることができる。
請求項4の発明を前提とする請求項5の発明において、前記把持部24で前記口金6の両指当面32,33に隣接する両側面36,37のうち一方の側面36には、図6,7,8や図11や図14に示すように、柄23の頭部側と尻部側とを結ぶ長手方向Xに沿って延びる稜線38を設け、前記口金6の両指当面32,33のうち一方の指当面32にはこの把持部24の側面36の稜線38から連続する稜線39を設けている。
【0013】
請求項5の発明を前提とする請求項6の発明において、前記口金6の指当面32,33の稜線39は、図6,7,8や図11や図14に示すように、前記把持部24の側面36の稜線38から連続して柄23の長手方向Xに沿って延びる第一の稜線39aと、この第一の稜線39aからこの口金6の指掛面30に向けて二股状に延びる第二の稜線39b,39cとを有している。
【0014】
請求項5〜6の発明では、これらの稜線38及び稜線39(各稜線39a,39b,39c)が手の平や親指41以外の各指(人差し指42や中指43や薬指44や小指45)の柔らかい部分にくい込み易くなって刃物1の把持状態を安定させることができる。
【0015】
請求項4または請求項5または請求項6の発明を前提とする請求項7の発明(図6,7参照)において、前記口金6の両側面26,27の指掛面30,31で柄23の長手方向Xに沿った最大寸法L30,L31については、この口金6の両側面26,27のうち一方の側面27における指掛面31の最大寸法L31が他方の側面26における指掛面30の最大寸法L30よりも大きくなっているとともに、前記口金6の両側面26,27の指当面32,33で柄23の長手方向Xに沿った最小寸法L32,L33については、この口金6の両側面26,7のうち前記一方の側面27における指当面33の最小寸法L33が前記他方の側面26における指当面32の最小寸法L32より小さくなっている。
【0016】
請求項7の発明では、親指41を指掛面31に当てがい易くなるとともに人差し指42を指掛面30に当てがい易くなる。
請求項1から請求項7のうちいずれかの請求項の発明を前提とする請求項8の発明において、前記口金6の両指掛面30,31は、図6,7,8,9,10または図11,12,13または図14,15,16に示すように、その境界縁部30a,31aで刃板3の側面12または中子5の側面16に対し面一で連続している。
【0017】
請求項8の発明では、親指41と人差し指42とを両指掛面30,31に当てがい易くなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、利用者が包丁等の柄付き刃物1を所定配置の各指41,42,43,44,45で握り易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
まず、本発明の第1実施形態にかかる刃物について図1〜7を参照して説明する。
図6に示す包丁である刃物1を製造する過程を概説する。
まず、母材から刀身素材を形取り、その刀身素材を加工して図1(a)に示す刀身2とする。この刀身2においては、三層鋼からなる刃板3の先端にある刃先4に対し反対側になる刃板3の基端から中子5が延設されている。また、図1(a)に示すように、この中子5を挿着する口金6を成形する。この口金6はSUS430からなる。なお、この中子5を口金6に挿着する際にそれらの間でがた付きが生じないように、刀身素材の加工時に中子5を母材の厚みのまま残す。
【0020】
前記刀身2の刃板3は、刃板3の腹側で刃先4から刃板3の基端にある顎部7まで延びる刃縁8と、この刃縁8に対し刃板3の顎部7で交差して刃板3の基端にある中子5との境界線9まで連続する顎縁10と、刃板3の背側で刃先4から中子5との境界線9まで延びる背縁11と、この刃板3で刃縁8と顎縁10と背縁11と中子5との境界線9とにより囲まれる両側面12とを有している。この刀身2の中子5は、この顎縁10に対し中子5の腹側で段差状をなして連続する腹縁13と、この刃板3の背縁11に対し中子5の背側で連続する背縁14と、この中子5で腹縁13と背縁14との間にある端縁15と、この中子5で刃板3の基端にある刃板3との境界線9と腹縁13と背縁14と端縁15とにより囲まれる両側面16とを有している。この口金6においては、図1(b)及び図3(b)に示すように、先端部側で中子挿着溝17が基端部側へ向けて形成され、その中子挿着溝17を挟む両腕部18,19が二股状に形成されているとともに、この両腕部18,19の先端部にはそれぞれ傾斜部20,21が形成されている。
【0021】
次に、図2に示すように、前記口金6の中子挿着溝17に前記刀身2の中子5を挿入する。
次に、図3(a)(b)に示すように、前記口金6の両腕部18,19における傾斜部20,21の先端部と前記中子5及び刃板3とが互いに接触する部分を溶接する。
【0022】
次に、図4に示すように、上記の溶接により生じた中子5と口金6との連結部22においてその溶接部分の外側を削り取る。
次に、図5に示すように、中子5と口金6との連結部22や両腕部18,19の傾斜部20,21を含む口金6の表面全体を研削及び研磨する。その後、刀身2の露出表面に対しTiCN(炭ちっ化チタン)により黒色のコーティングを施す。
【0023】
次に、図6(a)に示すように、柄23を刀身2に取着する。この柄23においては、頭部側にある口金6に把持部24を連結して尻部側へ延設するとともにこの把持部24の尻部に尻金25を連結する。この把持部24は積層強化木からなり、この尻金25はSUS430からなる。その後、刀身2の刃縁8に仕上げ刃付けを行う。さらに、刀身2において前記黒色コーティング面に対しレーザー照射処理を施して型番や品質管理番号などを表示する。柄23の頭部側と尻部側とを結ぶ長手方向Xに沿った口金6の長さは約20mmであり、同じく尻金25の長さは約12mmであり、この口金6と尻金25とにより柄23の全体重量を大きくして刀身2との重量バランスを良くしている。
【0024】
このようにして製造された刃物1においては、図7(a)(b)(c)に示すように、口金6で中子5の両側面16に対し隣接する両側面26,27には、それぞれ、刃板3の両
側面12と中子5の両側面16との境界線9に対し中子5の両側面16側へ距離Sだけ離間する麓線28,29から中子5の端縁15側へ延びる指掛面30,31が形成されている。この距離Sは、10mm以下の範囲であり、好ましくは0.5mm以上6mm以下の範囲、さらに好ましくは1mm以上3mm以下に設定することができる。これらの指掛面30,31は、共に、中子5の側面16との境界縁部(麓線28,29上の縁部30a,31a)から中子5の端縁15側へ離間するに従い中子5の側面16から次第に離間するように凹状に凹んで傾斜し、それらの境界縁部30a,31aで中子5の側面16に対し面一で連続している。また、この口金6の両側面26,27にはこの両指掛面30,31と前記把持部24との間で両指掛面30,31から連続する指当面32,33が形成されている。この両指当面32,33は、前記刃板3の背縁11と把持部24との間で延びる口金6の腹面34と背面35とにより互いに連続している。
【0025】
前記口金6の両側面26,27の指掛面30,31で柄23の頭部側と尻部側とを結ぶ長手方向Xに沿った最大寸法L30,L31については、この口金6の両側面26,27のうち一方の側面27における指掛面31の最大寸法L31が他方の側面26における指掛面30の最大寸法L30よりも大きくなっている。前記口金6の両側面26,27の指当面32,33で柄23の長手方向Xに沿った最小寸法L32,L33については、この口金6の両側面26,27のうち前記一方の側面27における指当面33の最小寸法L33が前記他方の側面26における指当面32の最小寸法L32より小さくなっている。また、前記口金6の両側面26,27の指掛面30,31及び指当面32,33で刃板3の厚み方向Yの中心線Cに対する最大寸法W30,W31,W32,W33については、一方の側面27における指掛面31の最大寸法W31が他方の側面26における指掛面30の最大寸法W30よりも小さくなっているとともに、一方の側面27における指当面33の最大寸法W33が他方の側面26における指当面32の最大寸法W32よりも小さくなっている。さらに、一方の側面27において指当面33の最大寸法W33が指掛面31の最大寸法W31よりも大きくなっているとともに、他方の側面26において指当面32の最大寸法W32が指掛面30の最大寸法W30よりも大きくなっている。
【0026】
図6,7に示すように、前記柄23の把持部24及び尻金25において前記口金6の両指当面32,33に隣接する両側面36,37のうち一方の側面36には、柄23の長手方向Xに沿って延びる稜線38が把持部24及び尻金25の長手方向X全体にわたり形成されている。前記口金6の両指当面32,33のうち指当面32には前記把持部24の側面36の稜線38から連続する稜線39が形成されている。この口金6の指当面32の稜線39は、前記把持部24の側面36の稜線38から連続して柄23の長手方向Xに沿って延びる第一の稜線39aと、この第一の稜線39aからこの口金6の指掛面30に向けて二股状に延びる第二の稜線39b,39cとを有している。この口金6の指当面32にはこの第二の稜線39b,39cと指掛面30との間で前記刃板3の厚み方向Yの中心線Cに対し傾斜する区画面40が形成されている。なお、これらの稜線38,39については若干の丸みを持たせてもよい。
【0027】
図6(b)に示すように、利用者は、包丁により皮むきなどの細かい手作業をする際に必要に応じて、口金6及び把持部24の背側を右手の平に当てがい、親指41が口金6の指掛面31に面するとともに人差し指42が口金6の指掛面30に面し、中指43が指当面32の区画面40に面した状態で、親指41と人差し指42とにより顎部7を挟持するとともに、中指43を口金6の腹側に当てがい、薬指44と小指45とを把持部24の腹側に当てがうように、各指41,42,43,44,45を配置して刃物1を握る。
【0028】
図8に示すように、本発明の第1実施形態の別例にかかる刃物1については、第1実施形態(図7参照)と比較して、稜線38,39が形成されていない点と、指掛面31の最大寸法L31と指掛面30の最大寸法L30とが互いに等しくなっているとともに、指当面33の最小寸法L33と指当面32の最小寸法L32とが互いに等しくなっている点で、第1実施形態と異なる。
【0029】
図9に示すように、本発明の第2実施形態にかかる刃物1については、第1実施形態(図7参照)と比較して、稜線38,39が形成されていない点と、口金6の両指掛面30,31のうち指掛面31が凹状に凹んで傾斜しているとともに指掛面30が凸状に膨らんで傾斜している点で、第1実施形態と異なる。
【0030】
図10に示すように、本発明の第3実施形態にかかる刃物1については、第1実施形態(図7参照)と比較して、稜線38,39が形成されていない点と、口金6の両指掛面30,31が共に凸状に膨らんで傾斜している点で、第1実施形態と異なる。
【0031】
図11に示すように本発明の第4実施形態にかかる刃物1については第1実施形態の別例(図8参照)と比較して、また、図12に示すように本発明の第5実施形態にかかる刃物1については第2実施形態(図9参照)と比較して、また、図13に示すように本発明の第6実施形態にかかる刃物1については第3実施形態(図10参照)と比較して、それぞれ、下記の点で異なる。
【0032】
口金6の両指掛面30,31は、刃板3の両側面12と中子5の両側面16との境界線9(距離S=0mm)から中子5側へ延び、刃板3の側面12との境界縁部(境界線9上の縁部30a,31a)から中子5側へ離間するに従い刃板3及び中子5の側面12,16から次第に離間するように傾斜している。
【0033】
図14に示すように本発明の第7実施形態にかかる刃物1については第1実施形態の別例(図8参照)と比較して、また、図15に示すように本発明の第8実施形態にかかる刃物1については第2実施形態(図9参照)と比較して、また、図16に示すように本発明の第9実施形態にかかる刃物1については第3実施形態(図10参照)と比較して、それぞれ、下記の点で異なる。
【0034】
口金6の両指掛面30,31は、刃板3の両側面12と中子5の両側面16との境界線9に対し刃板3の両側面12側へ距離Sだけ離間する麓線46,47から中子5側へ延び、刃板3の側面12との境界縁部(麓線46,47上の縁部30a,31a)から中子5側へ離間するに従い刃板3及び中子5の側面12,16から次第に離間するように傾斜している。この距離Sは、10mm以下の範囲であり、好ましくは0.5mm以上8mm以下の範囲、さらに好ましくは1mm以上6mm以下に設定することができる。
【0035】
図17に示すように本発明の第10実施形態では、図6(a)に示す第1実施形態の刃物1において背縁11に保護部材48が着脱可能に取り付けられ、砥石49によりこの刃物1の刃縁8を研ぐ際に砥石49に面する保護部材48により、刃物1の側面12が砥石49に接触しないようにしてTiCNコーティングの剥離を防止している。
【0036】
図18に示すように本発明の第11実施形態では、図6(a)に示す第1実施形態の刃物1の刃板3を収容するケース50内にその刃板3を吸着する磁石51が嵌め込まれている。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】(a)は第1実施形態にかかる柄付き刃物の製造過程において刀身と口金とを互いに分解して示す正面図であり、(b)はその口金を示す斜視図である。
【図2】図1(a)で刀身の中子を口金に挿入した状態を示す正面図である。
【図3】(a)は図2で刀身の中子と口金とを互いに溶接した連結状態を示す正面図であり、(b)はその中子と口金との連結部分を平面側から見た部分断面図である。
【図4】図3(a)で示す中子と口金との連結部分において溶接部分を削り取った状態を示す正面図である。
【図5】図4で示す中子と口金との連結部分を研削及び研磨した状態を示す正面図である。
【図6】(a)は図5で示す口金に把持部を連結した柄を備えた刃物を示す正面図であり、(b)は同じく背面図であり、(c)はこの刃物の右側面図であり、(d)はこの刃物の左側面図である。
【図7】(a)は図6(a)に示す刃物において中子と口金との連結部分を示す部分正面図であり、(b)は(a)の連結部分を示す部分平面図であり、(c)は(a)の連結部分を示す部分背面図である。
【図8】(a)は第1実施形態の別例にかかる刃物において中子と口金との連結部分を示す部分正面図であり、(b)は(a)の連結部分を示す部分平面図であり、(c)は(a)の連結部分を示す部分背面図である。
【図9】(a)は第2実施形態にかかる刃物において中子と口金との連結部分を示す部分正面図であり、(b)は(a)の連結部分を示す部分平面図であり、(c)は(a)の連結部分を示す部分背面図である。
【図10】(a)は第3実施形態にかかる刃物において中子と口金との連結部分を示す部分正面図であり、(b)は(a)の連結部分を示す部分平面図であり、(c)は(a)の連結部分を示す部分背面図である。
【図11】(a)は第4実施形態にかかる刃物において中子と口金との連結部分を示す部分正面図であり、(b)は(a)の連結部分を示す部分平面図であり、(c)は(a)の連結部分を示す部分背面図である。
【図12】(a)は第5実施形態にかかる刃物において中子と口金との連結部分を示す部分正面図であり、(b)は(a)の連結部分を示す部分平面図であり、(c)は(a)の連結部分を示す部分背面図である。
【図13】(a)は第6実施形態にかかる刃物において中子と口金との連結部分を示す部分正面図であり、(b)は(a)の連結部分を示す部分平面図であり、(c)は(a)の連結部分を示す部分背面図である。
【図14】(a)は第7実施形態にかかる刃物において中子と口金との連結部分を示す部分正面図であり、(b)は(a)の連結部分を示す部分平面図であり、(c)は(a)の連結部分を示す部分背面図である。
【図15】(a)は第8実施形態にかかる刃物において中子と口金との連結部分を示す部分正面図であり、(b)は(a)の連結部分を示す部分平面図であり、(c)は(a)の連結部分を示す部分背面図である。
【図16】(a)は第9実施形態にかかる刃物において中子と口金との連結部分を示す部分正面図であり、(b)は(a)の連結部分を示す部分平面図であり、(c)は(a)の連結部分を示す部分背面図である。
【図17】(a)は第10実施形態にかかる刃物において砥石用背部材を取り付けた状態を示す正面図であり、(b)はその刃物を砥石により研ぐ状態を示す説明図である。
【図18】(a)は第11実施形態にかかるケース付き刃物を示す正面図であり、(b)はその刃物を平面側から見た部分断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1…刃物、2…刀身、3…刃板、4…刃先、5…中子、6…口金、7…刃板の顎部、8…刃板の刃縁、9…刃板と中子との間の境界線、10…刃板の顎縁、11…刃板の背縁、12…刃板の側面、13…中子の腹縁、14…中子の背縁、15…中子の端縁、16…中子の側面、23…柄、24…把持部、26,27…口金の側面、28,29…中子側の麓線、30,31…口金の側面の指掛面、30a,31a…境界縁部、32,33…口金の側面の指当面、36,37…把持部の側面、38…把持部の側面の稜線、39…口金の指当面の稜線、39a…第一の稜線、39b,39c…第二の稜線、46,47…刃板側の麓線、S…境界線から麓線までの距離、X…長手方向、L30,L31…指掛面の長手方向最大寸法、L32,L33…指当面の長手方向最小寸法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
刃板の先端にある刃先に対し反対側になる刃板の基端から中子を延設した刀身と、この中子を挿着した口金を有する柄とを備えた柄付き刃物において、この刀身は、刃板の腹側で刃先から刃板の基端にある顎部まで延びる刃縁と、この刃縁に対し刃板の顎部で交差して刃板の基端にある中子との境界線まで連続する顎縁と、この顎縁に対し中子の腹側で段差状をなして連続する腹縁と、刃板の背側で刃先から中子との境界線まで延びる背縁と、この刃板の背縁に対し中子の背側で連続する背縁と、この中子で腹縁と背縁との間にある端縁と、この刃板で刃縁と顎縁と背縁と中子との境界線とにより囲まれる両側面と、この中子で刃板の基端にある刃板との境界線と腹縁と背縁と端縁とにより囲まれる両側面とを有し、
前記口金において前記刃板の両側面に対し隣接する両側面には、それぞれ、刃板の両側面と中子の両側面との境界線、または、その境界線に対し刃板の両側面側へ離間する麓線から中子側へ延びる指掛面を形成し、これらの指掛面は刃板の側面との境界縁部から中子側へ離間するに従い刃板及び中子の側面から次第に離間するように傾斜している
ことを特徴とする柄付き刃物。
【請求項2】
刃板の先端にある刃先に対し反対側になる刃板の基端から中子を延設した刀身と、この中子を挿着した口金を有する柄とを備えた柄付き刃物において、この刀身は、刃板の腹側で刃先から刃板の基端にある顎部まで延びる刃縁と、この刃縁に対し刃板の顎部で交差して刃板の基端にある中子との境界線まで連続する顎縁と、この顎縁に対し中子の腹側で段差状をなして連続する腹縁と、刃板の背側で刃先から中子との境界線まで延びる背縁と、この刃板の背縁に対し中子の背側で連続する背縁と、この中子で腹縁と背縁との間にある端縁と、この刃板で刃縁と顎縁と背縁と中子との境界線とにより囲まれる両側面と、この中子で刃板の基端にある刃板との境界線と腹縁と背縁と端縁とにより囲まれる両側面とを有し、
前記口金において前記中子の両側面に対し隣接する両側面には、それぞれ、刃板の両側面と中子の両側面との境界線に対し中子の両側面側へ10mm以下の範囲で離間する麓線から中子の端縁側へ延びる指掛面を形成し、これらの指掛面は中子の側面との境界縁部から中子の端縁側へ離間するに従い中子の側面から次第に離間するように傾斜している
ことを特徴とする柄付き刃物。
【請求項3】
前記口金の両指掛面のうち、両方が共に凹状に凹んで傾斜しているか、または、一方が凹状に凹んで傾斜しているとともに他方が凸状に膨らんで傾斜しているか、または、両方が共に凸状に膨らんで傾斜していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の柄付き刃物。
【請求項4】
前記柄は頭部側にある前記口金から尻部側へ延びる把持部を有し、この口金の両側面において、両指掛面が共に凹状に凹んで傾斜しているとともに、この両指掛面と前記把持部との間には両指掛面から連続する指当面を設けていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の柄付き刃物。
【請求項5】
前記把持部において前記口金の両指当面に隣接する両側面のうち一方の側面には柄の頭部側と尻部側とを結ぶ長手方向に沿って延びる稜線を設け、前記口金の両指当面のうち一方の指当面にはこの把持部の側面の稜線から連続する稜線を設けていることを特徴とする請求項4に記載の柄付き刃物。
【請求項6】
前記口金の指当面の稜線は、前記把持部の側面の稜線から連続して柄の長手方向に沿って延びる第一の稜線と、この第一の稜線からこの口金の指掛面に向けて二股状に延びる第二の稜線とを有していることを特徴とする請求項5に記載の柄付き刃物。
【請求項7】
前記口金の両側面の指掛面で柄の長手方向に沿った最大寸法については、この口金の両側面のうち一方の側面における指掛面のものが他方の側面における指掛面のものよりも大きくなっているとともに、前記口金の両側面の指当面で柄の長手方向に沿った最小寸法については、この口金の両側面のうち前記一方の側面における指当面のものが前記他方の側面における指当面のものより小さくなっていることを特徴とする請求項4または請求項5または請求項6に記載の柄付き刃物。
【請求項8】
前記口金の両指掛面はその境界縁部で刃板の側面または中子の側面に対し面一で連続していることを特徴とする請求項1から請求項7のうちいずれかの請求項に記載の柄付き刃物。
【請求項1】
刃板の先端にある刃先に対し反対側になる刃板の基端から中子を延設した刀身と、この中子を挿着した口金を有する柄とを備えた柄付き刃物において、この刀身は、刃板の腹側で刃先から刃板の基端にある顎部まで延びる刃縁と、この刃縁に対し刃板の顎部で交差して刃板の基端にある中子との境界線まで連続する顎縁と、この顎縁に対し中子の腹側で段差状をなして連続する腹縁と、刃板の背側で刃先から中子との境界線まで延びる背縁と、この刃板の背縁に対し中子の背側で連続する背縁と、この中子で腹縁と背縁との間にある端縁と、この刃板で刃縁と顎縁と背縁と中子との境界線とにより囲まれる両側面と、この中子で刃板の基端にある刃板との境界線と腹縁と背縁と端縁とにより囲まれる両側面とを有し、
前記口金において前記刃板の両側面に対し隣接する両側面には、それぞれ、刃板の両側面と中子の両側面との境界線、または、その境界線に対し刃板の両側面側へ離間する麓線から中子側へ延びる指掛面を形成し、これらの指掛面は刃板の側面との境界縁部から中子側へ離間するに従い刃板及び中子の側面から次第に離間するように傾斜している
ことを特徴とする柄付き刃物。
【請求項2】
刃板の先端にある刃先に対し反対側になる刃板の基端から中子を延設した刀身と、この中子を挿着した口金を有する柄とを備えた柄付き刃物において、この刀身は、刃板の腹側で刃先から刃板の基端にある顎部まで延びる刃縁と、この刃縁に対し刃板の顎部で交差して刃板の基端にある中子との境界線まで連続する顎縁と、この顎縁に対し中子の腹側で段差状をなして連続する腹縁と、刃板の背側で刃先から中子との境界線まで延びる背縁と、この刃板の背縁に対し中子の背側で連続する背縁と、この中子で腹縁と背縁との間にある端縁と、この刃板で刃縁と顎縁と背縁と中子との境界線とにより囲まれる両側面と、この中子で刃板の基端にある刃板との境界線と腹縁と背縁と端縁とにより囲まれる両側面とを有し、
前記口金において前記中子の両側面に対し隣接する両側面には、それぞれ、刃板の両側面と中子の両側面との境界線に対し中子の両側面側へ10mm以下の範囲で離間する麓線から中子の端縁側へ延びる指掛面を形成し、これらの指掛面は中子の側面との境界縁部から中子の端縁側へ離間するに従い中子の側面から次第に離間するように傾斜している
ことを特徴とする柄付き刃物。
【請求項3】
前記口金の両指掛面のうち、両方が共に凹状に凹んで傾斜しているか、または、一方が凹状に凹んで傾斜しているとともに他方が凸状に膨らんで傾斜しているか、または、両方が共に凸状に膨らんで傾斜していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の柄付き刃物。
【請求項4】
前記柄は頭部側にある前記口金から尻部側へ延びる把持部を有し、この口金の両側面において、両指掛面が共に凹状に凹んで傾斜しているとともに、この両指掛面と前記把持部との間には両指掛面から連続する指当面を設けていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の柄付き刃物。
【請求項5】
前記把持部において前記口金の両指当面に隣接する両側面のうち一方の側面には柄の頭部側と尻部側とを結ぶ長手方向に沿って延びる稜線を設け、前記口金の両指当面のうち一方の指当面にはこの把持部の側面の稜線から連続する稜線を設けていることを特徴とする請求項4に記載の柄付き刃物。
【請求項6】
前記口金の指当面の稜線は、前記把持部の側面の稜線から連続して柄の長手方向に沿って延びる第一の稜線と、この第一の稜線からこの口金の指掛面に向けて二股状に延びる第二の稜線とを有していることを特徴とする請求項5に記載の柄付き刃物。
【請求項7】
前記口金の両側面の指掛面で柄の長手方向に沿った最大寸法については、この口金の両側面のうち一方の側面における指掛面のものが他方の側面における指掛面のものよりも大きくなっているとともに、前記口金の両側面の指当面で柄の長手方向に沿った最小寸法については、この口金の両側面のうち前記一方の側面における指当面のものが前記他方の側面における指当面のものより小さくなっていることを特徴とする請求項4または請求項5または請求項6に記載の柄付き刃物。
【請求項8】
前記口金の両指掛面はその境界縁部で刃板の側面または中子の側面に対し面一で連続していることを特徴とする請求項1から請求項7のうちいずれかの請求項に記載の柄付き刃物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2006−254967(P2006−254967A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−73081(P2005−73081)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(000001454)株式会社貝印刃物開発センター (123)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(000001454)株式会社貝印刃物開発センター (123)
【Fターム(参考)】
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