説明

核酸増幅用のマイクロ流体高速サーマルサイクラー

熱サイクルされる物質(115)を熱サイクルするためのシステム(100)は、マイクロ流体熱交換器(101)と、マイクロ流体熱交換器(101)中の多孔質媒体(113)と、マイクロ流体熱交換器(101)に動作可能なように接続され、熱サイクルを行う物質(115)を含むマイクロ流体熱サイクルチャンバ(103)と、第1の温度にある作動流体と、第1の温度にある作動流体をマイクロ流体熱交換器(101)に伝達するための第1のシステムと、第2の温度にある作動流体(104)と、第2の温度にある作動流体(104)を前記マイクロ流体熱交換器(101)に伝達するための第2のシステムと、第1の温度にある作動流体(102)を、多孔質媒体(113)を通って第1のシステムからマイクロ流体熱交換器(101)へと流し、第2の温度にある作動流体(104)を、多孔質媒体(113)を通って第2のシステムからマイクロ流体熱交換器(101)へと流すポンプ(110)と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2008年1月22日に出願された「核酸増幅用のマイクロ流体高速サーマルサイクラー」という名称の米国特許法119条(e)の下での米国仮特許出願第61/022647号に基づく利益を主張する。この出願の開示の内容全体を、あらゆる目的に対して参照によって本願明細書に援用する。2008年11月13日に出願された「超高速核酸増幅用の携帯用マイクロ流体高速サーマルサイクラー」という名称の米国特許出願第12/270030号には、関連する発明が開示および請求されている。「超高速核酸増幅用の携帯用マイクロ流体高速サーマルサイクラー」という名称の米国特許出願の開示は、参照によって本願明細書に援用する。
【0002】
(連邦政府による資金提供を受けた研究開発の下で創られた発明の権利に関する記載)
アメリカ合衆国エネルギー省とローレンス・リバモア国立研究所を運営するローレンス・リバモア・ナショナル・セキュリティLLCとの契約番号DE−AC52−07NA27344番に従って、本発明の権利はアメリカ合衆国政府が有する。
【技術分野】
【0003】
(努力傾注分野)
本発明は、熱サイクル、より具体的にはマイクロ流体高速サーマルサイクラーに関する。
【0004】
(技術水準)
PCR用のサーマルサイクラーに関する米国特許第7133726号には、以下のように記載されている。「一般にPCRの場合、サイクルに要求される温度間でできるだけ素早くサンプルの温度を変化させるのが望ましい。それにはいくつかの理由がある。第1に、化学反応にはPCRの各ステップごとに至適温度がある。そのため、非至適温度でできるだけ時間を費やさないことによって、よりよい化学的結果を達成することができる。第2に、どんな設定点においても、各プロトコールに対して最小限のサイクル時間を設定する最小時間が通常必要である。また、設定点間の移行に費やされるあらゆる時間がこの最小時間に加えられる。通常サイクル数は非常に多い。そのため、この移行時間は増幅を完了するのに必要な合計時間を著しく増大させてしまう可能性がある。」米国特許第7133726号には、以下の追加の技術水準の情報が含まれる。
【0005】
PCRプロセスを用いてDNA(デオキシリボ核酸)を増幅するためには、特別に構成した液体の反応混合物を、温度の異なる複数のインキュベート期間を通して循環させる必要がある。反応混合物は様々な成分から構成される。成分には、増幅されるDNAと、増幅されるDNAの伸長産物を形成することができるようにサンプルDNAに対して十分に相補的な少なくとも2つのプライマーとが含まれる。PCRのカギは熱サイクルの概念である。つまり、DNAを融解させるステップ、融解によって生じた1本鎖DNAへ短いプライマーをアニーリングさせるステップ、およびそれらのプライマーを伸長させ2本鎖DNAの新たなコピーを形成させるステップを交互に行うことである。熱サイクルでは、PCRの反応混合物はDNAを融解させるための約90℃の高温からプライマーをアニーリングし伸長を行うための約40℃〜70℃の低温まで、繰り返しサイクルされる。一般に、できるだけ素早くサイクル中の次の温度へとサンプルの温度を変えるのが望ましい。化学反応は各ステップごとに至適温度がある。したがって、非至適温度でできるだけ時間を費やさないことによって、よりよい化学的結果を達成することができる。また、各インキュベーション温度に達した後、反応混合物を各インキュベーション温度で必要最低限の時間だけ持続させることも必要である。それらの必要最低限のインキュベーション時間によって、サイクルを完了するのに要する必要最低限の時間を達成することができる。サンプルのインキュベーション温度間の移行にひつようなあらゆる時間がこの最小限のサイクル時間に加えられる。サイクル数がかなり多いので、このように時間が追加されてしまうことによって、増幅を完了するために必要な合計時間が不必要に増加してしまう。
【0006】
従来の自動PCR装置の中には、金属ブロック上のサンプル用ウェルの中にサンプル用チューブを挿入するものもある。PCRプロセスを実行するためには、ユーザによってPCRプロトコールファイル中に特定された所定の温度および回数にしたがって、金属ブロックの温度が循環される。その循環はコンピュータおよび関連する電子技術によって制御される。金属ブロックによって温度が変わるにつれて、種々のチューブ中のサンプルの温度も同じように変化する。しかし、それらの従来の装置では、同一の金属ブロック内で場所によって温度が不均一であることによって、サンプルの温度の違いが生じてしまう。金属ブロックの材料中に温度勾配が存在することによって、サイクル中の特定の時間に他のサンプルと温度が異なってしまうサンプルが生じてしまう。さらに、サンプルブロックからサンプルへの熱伝達に遅れが生じてしまう。しかもそれらの遅れはサンプルブロック間で異なる。それらの温度の違いおよび熱伝達の遅れによって、サンプルのバイアル間でPCRプロセスの収率に違いが生じてしまう。PCRプロセスをうまく効率的に実行するため、およびいわゆる定量PCRを可能にするためには、それらの熱伝達の時間の遅れおよび温度の誤差を可能な限り最小限に抑える必要がある。サンプルブロック上の様々な地点で温度が不均一であることを最小限にするという課題、およびサンプルへの/からの熱伝導に必要な時間および熱伝導の遅れは、サンプルを含む領域の大きさが標準的な8×12マイクロリットルプレートのように大きくなった場合に特に深刻となる。
【0007】
現在の自動PCR装置に関する別の問題は、温度サイクル中に反応混合物の実際の温度を正確に予測することである。化学反応または混合物にはPCRの各ステップごとに至適温度がある。そのため、良い結果を得るためには、実際の温度を実現することが非常に重要である。各バイアル中の混合物の温度を実際に測定することは非現実的である。それは、各バイアルの容積が小さく、バイアルの数が多いためである。」
【0008】
公開された米国特許出願公開第2005/0252773号は、熱反応装置およびそれを使用する方法に関するが、以下の技術情報を含む。
【0009】
「核酸増幅を行う性能を備えた装置は様々な用途を有するであろう。たとえば、そのような装置を解析ツールとして使用することによって、興味のある特定の標的核酸がサンプル中に存在するかしないかを決定することができる。したがって、それらの装置は、特定の病原体(例えばウイルス、バクテリア、菌類)の存在をテストするために利用することができるし、同定目的(例えば父子鑑定や法医学的応用)に使用することができる。それらの装置は、特定の病気、つまり遺伝病と既に関連付けられている特定の核酸を検出または特定するために利用することもできる。解析ツールとして使用された場合、それらの装置は遺伝子型解析および遺伝子発現解析(例えばディファレンシャルな遺伝子発現研究)を行うために利用することもできる。または、それらのデバイスは、増幅産物のシークエンシング、細胞のタイピング、DNAフィンガープリンティングなどの続く解析の準備用に、十分量の核酸を増幅するために使用することができる。所望のタンパク質産物を生産する目的で、次に細胞を形質転換するために使用可能なベクター中に挿入することのように、増幅産物は遺伝子工学のさまざまな用途にも使用することができる。
【0010】
複合混合物中の核酸のサブ配列の選別、増幅、検出、および同定を行うための、ネイル・レジナルド・ビアーによる米国特許出願公開第2008/0166793号は、以下の技術水準の情報を提供する。
【0011】
「標的核酸または無傷な各粒子205(たとえばウイルス粒子)をバックグランドから(つまり細胞内および細胞外RNA/DNAを宿主細胞、花粉、埃などから)抽出し分離するために、複雑な環境または臨床のサンプル201が、物理的技術(超遠心分離法、ろ過、拡散分離、電気泳動、サイトメトリーなど)、化学的技術(pH)、および生物学的技術(選択的酵素分解)など既知の技術を用いて準備される。このサンプルは、比較的精製された核酸または核酸を含む粒子(ウイルスなど)を含むが、多数の並列的な流路(channels)に分け、逆転写および続くPCRに必要となる適切な試薬(プライマー/プローブ/dNTP/酵素/緩衝液)と混合させることができる。次にこれらの各混合物は、どのマイクロリアクター中にも統計的にわずか1分子のRNA/DNAしか存在しないように、システム中に導入される。たとえば、1分子のRNA/DNAしか分配されないようにするためには、106の標的RNA/DNAを含むサンプルでは、数100万のマイクロリアクターが必要となる。
【0012】
増幅部207は核酸増幅を提供する。核酸増幅はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プロセスによって実現されてもよい。このプロセスが指数関数的なプロセスであることによって、標的DNAの量が各反応サイクルを通じて2倍になる。各反応サイクルは、ポリメラーゼ酵素、過剰な核酸塩基、プライマー、触媒(MgCl)などを使用する。この反応は、プライマーが1本鎖DNA(ssDNA)に結合するアニーリング温度から、相補鎖が完全となるまで核酸塩基を付加することによってポリメラーゼがプライマーから伸長する伸長温度を経て、新たに作られた2本鎖DNA(dsDNA)が2つの別々の鎖へと変性する融解温度まで、温度をサイクルさせることによって機能する。反応混合物をアニーリング温度へと戻すことによって、プライマーが露出した鎖に付着する。そして次のサイクルが開始する。
【0013】
増幅装置207上のPCR化学に供給する熱の加減は、以下の関係で説明される。
Q=hA(Twall−T)・・・・(式1)
【0014】
増幅部207は生物206を増幅する。核酸208は生物206から放出され、核酸208は増幅部207を用いて増幅される。たとえば、増幅部207はサーマルサイクラー(thermocycler)であってもよい。配置する前に、核酸208を一列で増幅することができる。増幅が起きるときに、蛍光標識されたTaqMan型のプローブの検出を必要に応じて行う。増幅に続き、このシステムは化学反応体の除去による汚染除去を必要としない。」
【0015】
ペルチェ効果ヒートポンプに関する米国特許第3635037号は、以下の状況の技術情報を提供する。
【0016】
「ヒートポンプでは、冷却流体サイクルが不都合な領域や物質の加熱や冷却を行うために、ペルチェ効果が従来より使用されてきた。たとえば、小型で軽量な冷却装置、コンプレッサー、蒸発器、および蒸気/液体の冷却サイクルに関連する構成部品は不便である可能性がある。したがって、ペルチェ電堆(Peltier pile)のヒートポンプ作用を使用することが提案されてきた。ペルチェ効果は熱電現象であって、電流がかけられた場合、異種金属または他の伝導体の接合部位で熱が生成されたり取り除かれたりするものとして説明されるかもしれない。顕著な熱効果を引き起こすためには、ほとんどの場合、多数の接合部位が必要となる。したがって、ペルチェ接合部位は、電気エネルギーの供給源が接続されてもよい電堆(pile)またはバッテリを形成する。ペルチェ伝導体(Peltier conductors)およびそれらの接合部位は、並列的または直並列的な立体配置をとってもよく、実質的に任意の形状をとってもよい。たとえば、ペルチェバッテリまたは電堆は細長くてもよいし、または平面的もしくは3次元的な配置(立方体状または円筒形状)であってもよい。ペルチェ効果がヒートポンプ中に使用される場合、ペルチェバッテリまたは電堆は、熱伝導が促進される放熱板または熱交換被覆(jacket)に関連する。熱交換器には、リブ(ribs)や流路などが設けられることにより、熱伝導性の高い広い表面領域にわたって、ペルチェ電堆への、またはペルチェ電堆からの熱伝導を促進する。アルミニウムまたは熱伝導性の高い他の金属の被覆がこの目的に役立つ可能性がある。」
【0017】
2008年6月12日に公開されたカリフォルニア工科大学による国際特許出願第WO2008070198号は、「熱サイクルシステム」という名称であるが、以下の状況の技術情報を提供する。
【0018】
「[0002]1983年にキャリー・マリスによって発明されたPCRは、20世紀で最も重要な科学的発展のうちの1つであると認識されている。PCRは、DNAなどの遺伝物質を同定および複製する能力を大きく拡張することを通じて、分子生物学に革命をもたらした。今日では、PCRは、医学の研究室や生物学の研究室において、様々な目的に対して日常的に実施されている。そのような目的には、たとえば遺伝病の検出、遺伝子指紋の同定、感染病の診断、遺伝子のクローニング、父子テスト、およびDNA計算などがある。PCRは、熱安定性DNAポリメラーゼおよび通常「サーマルサイクラー」と呼ばれる装置を使用することによって自動化されている。」
【0019】
[0003]従来のサーマルサイクラーには、いくつかの本質的な制約があった。一般に従来のサーマルサイクラーは、金属のヒートブロックを含むことによって、反応サンプルの熱サイクルを実行する。この装置は高い熱量を有するが、サンプル管(sample vessels)の熱電導率は低い。そのため、要求されるレベルの温度でサイクルするのは非効率である。従来のサーマルサイクラーの傾斜時間(ramp time)は通常あまり高速ではない。そのため、標的配列の望ましくない非特異的な増幅が必然的に起きてしまう。従来のサーマルサイクラーの性能が最適とまでは言えないのは、当技術分野で広く認められているように、熱の均一性が欠如していることにも原因がある。さらに、従来のリアルタイム・サーマルサイクラーシステムは、大きく高価な光学検出部品を有する。三橋ら(米国特許第6533255号)は、液体金属PCRサーマルサイクラーを開示する。
【0020】
[0004]したがって、これに取ってかわるサーマルサイクラーの設計に対しては、かなりの需要がある。望ましい装置が可能にするのは、(a)高速かつ均一に熱を伝達することによって、核酸のより特異的な増幅反応をもたらすこと、および/または(b)増幅反応の進行状況をリアルタイムにモニタリングすること、である。本発明はこれらの需要を充足すると同時に、関連する長所をも提供する。
【0021】
[0042]ある実施態様では、サーマルサイクラー本体(101;151)は、ファン(103;153)および取り外し可能なヒートブロックアセンブリ、または交換ブロック(swap block)(105;155)を含む(図1)。交換ブロック(105;155)は、任意的に交換熱ブロックを滑りレール(113;163)上でスライドさせることによって、サーマルサイクラー本体(103;153)に挿入され、サーマルサイクラー本体(103;153)から取り除かれる。サーマルサイクラー本体(103;153)に交換ブロック(105;155)が挿入された後、サーマルサイクラー(115;165)のドアが閉じられてもよい。交換熱ブロック(105;155)は、液体組成の容器(111;161)、放熱板(107;157)、および任意的にキャップをされたサンプル(109;159)を含む。ある実施態様では、交換熱ブロック(図2)は、ウェルを有する容器を含む。その容器が液体組成を封じ込めることによって、サンプル管が液体(金属、金属合金、または金属スラリー)と接触しないようにすることができる。別の実施態様では、交換ブロック(105;155)は、液体組成の容器の筐体(311;411)に対して密封されたウェルを備えた容器の障壁(receptacle barrier)(307;407)を含む。その場合、密封は液密によるものであり、任意的に詰め物(gasket)(309;409)を含んでいてもよい(図3および図4)。さらに、液体組成の容器の筐体(311;411)は底板(313;413)に対して密封されている。底板(313;413)は金属板(銅またはアルミニウムなど)であってもよい。その場合、密封は液密によるものであり、任意的に詰め物(gasket)(312;412)を含んでいてもよい。同様に、底板(313;413)は熱的にペルチェ素子(315;415)に接続され、液体組成を加熱し冷却する。同様に、底板(313;413)は放熱板(417)に接続されている。任意的に、熱散布器(heat spreader)(銅、アルミニウム、その他の金属、熱伝導性の高い金属合金など)が底板(313;413)とペルチェ素子(315;415)との間に挟まれている。実施態様によっては、交換ブロック(105;155)はネジ(301;401)のような留め具に結合している。ある実施態様では、交換ブロックは48個のウェルを有する容器(307;407)などの第1の部品を含む。容器(307;407)はサンプル管などの第2の部品によって占められている。サンプル管にはサンプルプレート(305;405)、単一のサンプル管、または一片のサンプル管が含まれるが、これらに限られない。サンプル管の内部には、透明な帽板(cap plate)(303;403)、単一のキャップもしくは一片のキャップなどの第3の部品が挿入される。ある実施態様では、透明な帽板(303;403)、単一のキャップもしくは一片のキャップは、任意的に導光部(light guide)のような突出部を含む。」
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】米国特許第7133726号
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0252773号
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0166793号
【特許文献1】米国特許第3635037号
【特許文献1】国際特許出願第WO2008070198号
【発明の概要】
【0023】
本発明の特徴および利点は以下の説明から明らかであろう。出願人は、図および特定の実施態様の例を含むこの説明を提供することによって、本発明を幅広く説明する。この説明から、および本発明を実行することによって、本発明の精神および範囲において、様々な変更や修正を行うことが当業者には明らかであろう。本発明の範囲は、開示された特定の形態に制限されることを意図するものではない。また、請求項に規定されたとおり、本発明は、本発明の精神および範囲に含まれるすべての改良物、均等物、および代替物に及ぶ。
【0024】
ある実施態様では、本発明は熱サイクルされる物質の熱サイクルを行うための装置を提供する。この装置は、マイクロ流体(microfluidic)熱交換器と、マイクロ流体熱交換器中の多孔質媒体と、熱サイクルされる物質を含むマイクロ流体熱サイクルチャンバと、作動可能なようにマイクロ流体熱交換器に接続されたマイクロ流体熱サイクルチャンバと、第1の温度にある作動流体(working fluid)と、第1の温度にある作動流体をマイクロ流体熱交換器へと伝達するための第1のシステムと、第2の温度にある作動流体と、第2の温度にある作動流体をマイクロ流体熱交換器へと伝達するための第2のシステムと、第1の温度にある作動流体を第1のシステムから多孔質媒体を通ってマイクロ流体熱交換器へと流し、第2の温度にある作動流体を第2のシステムから多孔質媒体を通って熱交換器へと流すポンプと、を含む。
【0025】
ある実施態様では、第1の温度にある作動流体をマイクロ流体熱交換器へと伝達するための第1のシステムは、第1の温度にある作動流体を収容するための第1の容器である。また、第2の温度にある作動流体をマイクロ流体熱交換器へと伝達するための第2のシステムは、第2の温度にある作動流体を収容するための第2の容器である。別の実施態様では、第1の温度にある作動流体をマイクロ流体熱交換器へと伝達するための第1のシステム、および第2の温度にある作動流体をマイクロ流体熱交換器へと伝達するための第2のシステムは、単一の容器および加熱器または冷却器を備えた独立した経路(separate line)を含む。単一の容器および独立した経路は、第1の温度にある作動流体をマイクロ流体熱交換器に供給し、第2の温度にある作動流体をマイクロ流体熱交換器に供給するために接続されている。
【0026】
ある実施態様では、本発明が提供するのは、熱サイクルされる物質の熱サイクルを行うための装置である。この装置は、マイクロ流体熱交換器と、マイクロ流体熱交換器中の多孔質媒体と、熱サイクルされる物質を含むマイクロ流体熱サイクルチャンバと、作動可能なようにマイクロ流体熱交換器に接続されたマイクロ流体熱サイクルチャンバと、第1の温度にある作動流体と、第1の温度にある作動流体を収容するための第1の容器と、第2の温度にある作動流体と、第2の温度にある作動流体を収容するための第2の容器と、第1の温度にある作動流体を第1の容器から多孔質媒体を通ってマイクロ流体熱交換器へと流し、第2の温度にある作動流体を第2の容器から多孔質媒体を通って熱交換器へと流すポンプと、を含む。ある実施態様では、多孔質媒体は空隙率(porosity)が均一な多孔質媒体である。別の実施態様では、多孔質媒体は浸透性(permeability)が均一な多孔質媒体である。別の実施態様では、熱サイクル用の本装置は、第3の温度の作動流体と、第3の温度にある作動流体を収容するための第3の容器と、を含み、ポンプは第3の温度にある作動流体を第3の容器から多孔質媒体を通ってマイクロ流体熱交換器へと流す。
【0027】
本発明はまた、熱サイクルされる物質に対して作動できるように配置されたマイクロ流体熱交換器を用いて、複数の異なる温度間で熱サイクルされる物質の熱サイクルを行う方法も提供する。この方法は、第1の温度にある作動流体を供給するステップと、第1の温度にある作動流体をマイクロ流体熱交換器に流すことによって、熱サイクルされる物質を第1の温度において保持するステップと、第2の温度にある作動流体を供給するステップと、第2の温度にある作動流体を熱交換器に流すことによって、熱サイクルされる物質を第2の温度において熱サイクルするステップと、を含む。第1の温度にある作動流体をマイクロ流体熱交換器へと流すステップと、第2の温度にある作動流体をマイクロ流体熱交換器へと流すステップとが所定の回数繰り返される。この熱サイクル方法のある実施態様には、多孔質媒体をマイクロ流体熱交換器に供給するステップが含まれる。第1の温度にある作動流体をマイクロ流体熱交換器へと流すステップには、第1の温度にある作動流体を多孔質媒体に通すことを含む。また、第2の温度にある作動流体をマイクロ流体熱交換器へと流すステップには、第2の温度にある作動流体を多孔質媒体に通すことを含む。
【0028】
本発明には多くの有用な用途がある。たとえば、本発明には細菌戦争を検出する用途がある。本発明は、胞子やバクテリアのように、核酸の痕跡を有し生命に脅威を及ぼす病原体の特定、検出、監視に用途を有する。本発明は生物医学的な用途に使用することができる。本発明には、感染病を追跡し、同定し、モニタリングする用途がある。本発明には、医療目的の体液中の宿主または微生物のDNAを自動的に処理し、増幅し、検出する用途がある。本発明には、ゲノム解析、ゲノム検査、癌の検出、遺伝子指紋法における用途がある。本発明は法医学的応用にも使用することができる。本発明には、法医学的な目的で体液中のDNAを自動的に処理し、増幅し、検出する用途がある。本発明には、食物および飲料の安全性に対する用途がある。本発明には、バクテリアまたはウイルスの汚染に対して自動的に食物の検査をする用途がある。本発明には、環境モニタリングおよび修復モニタリングにおける用途がある。
【0029】
本発明は、改良したり代替の形態を作製したりしやすい。ここでは例として、特定の実施態様が示されている。当然のことながら、本発明は開示された特定の実施態様に限定されるものではない。本発明は、請求項に規定された本発明の精神と範囲に含まれるあらゆる改良物、均等物、および代替物にまで及ぶ。
【0030】
添付の図は、明細書に組み込まれ、明細書の一部をなすが、本発明の特定の実施態様を説明する。また、添付の図は、上述した本発明の一般的な説明および特定の実施態様の詳細な説明とともに、本発明の原理を説明する手助けとなる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明のある実施態様を示す。
【図2】本発明の別の実施態様を示す。
【図3】本発明のある実施態様を示すフローチャートである。
【図4A】本発明の別の実施態様を示す。
【図4B】本発明の別の実施態様を示す。
【図5】熱サイクルにかけられる物質がマルチウェル・プレート内に入れられた本発明の実施態様を示す。
【図6】熱サイクルにかけられる物質がマイクロアレイ上に載せられた本発明のある実施態様を示す。
【図7】本発明の別の実施態様を示す。
【図8】本発明のさらに別の実施態様を示す。
【0032】
(特定の実施態様の詳細な説明)
図、以下の詳細な説明、および組み込まれた構成要素を参照して、特定の実施態様の説明を含む、本発明に関する詳細な情報を提供する。詳細な説明は、本発明の原理を説明する手助けとなる。本発明は、改良したり代替の形態を作製したりしやすい。本発明は開示された特定の実施態様に限定されるものではない。本発明は、請求項に規定された本発明の精神と範囲に含まれるあらゆる改良物、均等物、および代替物にまで及ぶ。
【0033】
ここで図、特に図1を参照して本発明に従って構成された熱サイクルシステムのある実施態様を説明する。本システムは参照数字100によって通常指定される。システム100はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)システムとして説明される。しかし、システム100は当然のことながら他の熱サイクルシステムとしても使用することができる。
【0034】
PCRは素早く効率的に核酸を解析するための代表的な存在である。遺伝学的解析、科学捜査、シークエンシング、および他の重大な用途に対して、PCRは最もよい方法である。それは特異性と感度において他の追随を許さないからである。まさにその性質上、PCRはシグナルの指数関数的な増大を利用する。それによって、複雑な実際の環境中の単一コピーの核酸でさえも検出が可能となる。これにより、PCRシステムはどこにでもある。また、より高速な熱サイクル方法の市場は重要である。マイクロ流体工学における最近の進歩によって、オンチップ処理の小型化とハイスループットが可能になった。しかし、オンチップ処理には依然として本分野に革命をもたらすような速度や温度の正確性が不足している。
【0035】
マイクロ流体工学システムを用いて、コストのかかる試薬の体積を減らしたり、拡散距離を減少させたり、検出プローブの光学濃度、大規模並列処理用で安価なマイクロ流体の解析チップ、およびそのようなチップの拡張性のある大量生産などにおいて、PCRシステムを進歩させることができる。しかし、この装置を用いて各サイクルを実行する時間を2桁減少させることによって、長い核酸に対して作動させる場合でさえ、PCRの解析時間を数時間(Cepheid社から市販されているSmartCyclerなど)から1分未満にまで減少させることもできる。さらに、高熱容量の流体を熱エネルギー源として利用することにより、ペルチェ素子、抵抗トレースヒータ(resistive trace heaters)、抵抗テープヒータ(resistive tape heaters)などの既存の電気加熱および冷却に基づく方法に比べ、はるかに精密で正確な熱制御をマイクロ流体工学システムに獲得させることができる。
【0036】
サンプルの処理能力において、本発明の技術と張り合うことができる技術があるとしたら、それは主にロボットによるシステムである。しかし、そのようなシステムは、本発明よりも反応速度がはるかに遅いため張り合うことができず、複雑すぎるためコストまたは簡素性で張り合うことができず、また使用する加熱技術の精密性および正確性がはるかに低い。それらの装置は、通常自動ピペットをロボットマニピュレータに結合することによって、測定、混合、およびサンプルや試薬の搬送を行う。それらの装置は複雑で、高価で、小型化が困難である。
【0037】
再び図1を参照する。システム100は、熱サイクルされる物質115に関して操作可能に配置されたマイクロ流体熱交換器101を用いて、温度TとTの間で熱サイクルされる物質115の熱サイクルを提供する。温度Tの作動流体102が供給され、温度Tの作動流体102がマイクロ流体熱交換器101へと流される。温度Tの作動流体104が供給され、温度Tの作動流体104がマイクロ流体熱交換器101へと流される。温度TとTの作動流体をマイクロ流体熱交換器101へと流すステップが所定回数繰り返される。多孔質媒体113がマイクロ流体熱交換器101の中に置かれている。温度TとTの作動流体がマイクロ流体熱交換器101を通って流れるステップの間に、温度TとTの作動流体が多孔質媒体113を通って流れる。
【0038】
温度TとTの作動流体をマイクロ流体熱交換器101へと繰り返し流すステップによって、PCRによる高速で効率的な核酸の解析を提供することができる。マイクロ流体のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の熱サイクル方法100は、極めて高速なサイクルを行うことができ、それによって、長いアンプリコン(amplicons:増幅された核酸)でさえ、極めて高速な検出時間をもたらすこともできる。方法100は、試薬と検体の混合;必要ならば、細胞、ウイルス粒子またはカプシドの溶解による標的DNAの放出;ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を通じた核酸増幅および光学手段またはその他の手段を用いた核酸の検出と評価、の1つまたは組み合わせを可能にする。本システムの利点は、本システムがマイクロ流体のプラットホーム上で完全に一体化していること、および極めて高速な熱サイクルにある。
【0039】
システム100には、以下の構成部品を含む:マイクロ流体熱交換器101、マイクロ流体熱交換器筺体112、多孔質媒体113,マイクロ流体の流路(channel)116、流体117、マイクロポンプ110、経路111、チャンバ103、温度Tの作動流体102、チャンバ105、温度Tの作動流体104、経路108、三方弁107、および経路109。
【0040】
システム100の構成部品を説明してから、システム100の働きを説明する。三方弁107が作動することによって、チャンバ103からマイクロ流体熱交換器101に温度Tの作動流体102の流れを提供する。マイクロポンプ110が作動することによって、温度Tの作動流体102をチャンバ103からマイクロ流体熱交換器101へと進める。温度Tの作動流体102がマイクロ流体熱交換器101中の多孔質媒体113を通過することによって、熱サイクルされる物質115の温度を温度Tに上げる。マイクロ流体熱交換器101中の多孔質媒体113の表面積がかなり増大し、流体の流路のねじれ(tortuosity)が強まる。これら双方によって、熱伝導および結果として生じる作動流体と多孔質マトリックスとの熱流束(heat flux)が強められる。
【0041】
次に、三方弁107が作動することによって、チャンバ105からマイクロ流体熱交換器101に温度Tの作動流体102の流れを提供する。マイクロポンプ110が作動することによって、温度Tの作動流体104をチャンバ105からマイクロ流体熱交換器101へと進める。温度Tの作動流体102がマイクロ流体熱交換器101中の多孔質媒体113を通過することによって、熱サイクルされる物質115の温度を温度Tに下げる。温度TとTの作動流体をマイクロ流体熱交換器101に流すステップが所定回数繰り返されることによって、所望のPCRが提供される。マイクロ流体熱交換器101中の多孔質媒体113の表面積がかなり増大し、流体の流路のねじれ(tortuosity)が強まる。これら双方によって、熱伝導および結果として生じる作動流体と多孔質マトリックスとの熱流束(heat flux)が強められる。
【0042】
水の流路117は、増幅および検出の準備として様々なアッセイ用の成分(つまり、検体、オリゴヌクレオチド、プライマー、TaqManのプローブなど)を混合するために使用することができる。流路の配置によって、多数の流れと連続してまたは並行して、続く解析のために、サンプルを多数の一定分量(aliquots)に分割することが可能となる。連続する流れの中で、サンプルを希釈し、小塊(slugs)に分割し、または小滴へと乳化することができる。さらに、所望のアッセイに応じて、核酸が溶液中に存在してもよいし、磁性ビーズにハイブリダイズしていてもよい。この構造の拡張性によって、同じサンプルから得られた一定分量に対して、検査されるべき複数の異なる反応を行うことが可能となる。一連の稼働後の流路の汚染除去は、流路に次亜塩素酸ナトリウムの希釈溶液、続いて脱イオン水を流すことにより、簡単に実行することができる。
【0043】
システム100は、すべての関連層(pertinent layers)から構成されるPCRマイクロチップユニット100内部の均一な温度を実現し維持するために、多孔質挿入物113を利用する高速な熱サイクルに対する、革新的で包括的な方法論を提供する。このPCRに対する設計によって、高速で一時的で安定した周期的な熱管理アプリケーションを提供することができる。システム100は、かなり高い加熱/冷却温度の傾斜を有し、温度の収束(convergence)が改善され、従来技術に比べて要求電力が低い。その結果、各時間ステップにおいて、基質の温度分布が非常に均一であり、現在のシステムよりもサイクル時間が桁違いに速い。PCRシステム100の様々な適切な熱伝導パラメータの広範な調査が行われてきた。
【0044】
システム100の熱交換器101は、流入流路および流出流路を利用する。流入流路および流出流路において、加熱/冷却流体102および104が筐体(enclosure)およびPCRマイクロチップに取り付けられた伝導板の層を通過する。筐体は、均一な空隙率および浸透性を有する伝導性の多孔質媒体113で充填されている。別の実施態様では、筐体は、勾配のある空隙率を有する伝導性の多孔質媒体113で充填されている。多孔質マトリックスの浸透性および空隙率の公称値は、それぞれ3.74×10−10および0.45と考えられている。多孔質媒体113は、流入流路を通過する加熱/冷却流体102および104によって飽和状態にされている。流入流路は、温冷供給タンク103および105に接続される。温タンク103と冷タンク105の間で加熱と冷却のサイクルを切り替えるために、切り替え式の三方弁107が使用される。外側壁のすべてと多孔質媒体の頂部は、ロスが最小限になるように絶縁されている。マイクロポンプ110は、作動流体1020および104をマイクロ流体熱交換器101の内部に直接入れることができるように配置されている。マイクロポンプ110を温冷供給タンク103および105、ならびにマイクロ流体熱交換器101に通じる経路の外側に配置することによって、マイクロポンプ110を変更のたびに新たな温度に到達させるために必要となる時間を省略する。
【0045】
熱サイクルされる物質115は、マイクロ流体熱交換器101に接続されたPCRチャンバ116中にある。熱サイクルされる物質115を含むPCRチャンバの例は、複合混合物中の核酸のサブ配列の選別、増幅、検出、および同定を行うための、米国特許出願公開第2008/0166793号に示されている。核酸のサブ配列の選別、増幅、検出、および同定を行うための、米国特許出願公開第2008/0166793号の開示は、参照によって本明細書中に援用される。
【0046】
ここで図2を参照する。図2には、本発明にしたがって構成された熱サイクルシステムの別の実施態様が示されている。このシステムは、参照数字200によって通常指定される。システム300は、熱サイクルされる物質207に関して動作できるように配置されたマイクロ流体熱交換器201を用いて、温度TとTの間で熱サイクルされる物質207の熱サイクルを提供する。温度Tの作動流体102が供給され、温度Tの作動流体102がマイクロ流体熱交換器201へと流される。温度Tの作動流体が供給され、温度Tの作動流体がマイクロ流体熱交換器201へと流される。温度TとTの作動流体をマイクロ流体熱交換器201へと流すステップが所定回数繰り返される。多孔質媒体202がマイクロ流体熱交換器201の中に置かれている。温度TとTの作動流体がマイクロ流体熱交換器201を通って流れるステップの間に、温度TとTの作動流体が多孔質媒体202を通って流れる。システム200は、以下の構成部品を含む:マイクロ流体熱交換器201、多孔質媒体202、注入口203、排出口205、および熱サイクルチャンバ209。
【0047】
システム200の構成部品を説明してから、システム200の働きを説明する。弁が作動することによって、チャンバからマイクロ流体熱交換器201に温度Tの作動流体の流れを提供する。マイクロポンプが作動することによって、温度Tの作動流体をチャンバからマイクロ流体熱交換器201へと進める。温度Tの作動流体がマイクロ流体熱交換器201中の多孔質媒体202を通過することによって、熱サイクルされる物質207の温度を温度Tに上げる。マイクロ流体熱交換器201中の多孔質媒体202の表面積がかなり増大し、流体の流路のねじれが強まる。これら双方によって、熱伝導および結果として生じる作動流体と多孔質マトリックスとの熱流束が強められる。
【0048】
次に、弁が作動することによって、チャンバからマイクロ流体熱交換器201に温度Tの作動流体の流れを提供する。マイクロポンプが作動することによって、温度Tの作動流体をチャンバからマイクロ流体熱交換器201へと進める。温度Tの作動流体がマイクロ流体熱交換器201中の多孔質媒体202を通過することによって、熱サイクルされる物質207の温度を温度Tに下げる。温度TとTの作動流体をマイクロ流体熱交換器201に流すステップが所定回数繰り返されることによって、所望のPCRが提供される。マイクロ流体熱交換器201中の多孔質媒体202の表面積がかなり増大し、流体の流路のねじれが強まる。これら双方によって、熱伝導および結果として生じる作動流体と多孔質マトリックスとの熱流束が強められる。
【0049】
水の流路は、増幅および検出の準備として、様々なアッセイ用の成分(つまり、検体、オリゴヌクレオチド、プライマー、TaqManプローブなど)を混合するために使用することができる。流路の配置によって、多数の流れと連続してまたは並行して、続く解析のために、サンプルを多数の一定分量(aliquots)に分割することが可能となる。連続する流れの中で、サンプルを希釈し、小塊(slugs)に分割し、または小滴へと乳化することができる。さらに、所望のアッセイに応じ、核酸は溶液中に存在してもよいし、磁性ビーズにハイブリダイズされてもよい。構造の拡張性によって、同一サンプル由来の一定分量に対して検査される、多数の異なる反応を行うことが可能となる。一連の稼働後の流路の汚染除去は、流路に次亜塩素酸ナトリウムの希釈液を流し、次に脱イオン水を流すことによって容易に行うことができる。
【0050】
システム200は、すべての関連層から構成されるPCRマイクロチップユニット200内部の均一な温度を実現し維持するために、多孔質挿入物202を利用する高速な熱サイクルに対する、革新的で包括的な方法論を提供する。このPCRに対する設計によって、高速で一時的で安定した周期的な熱管理アプリケーションを提供することができる。システム200は、かなり高い加熱/冷却温度の傾斜を有し、温度の収束が改善され、従来技術に比べて要求電力が低い。その結果、各時間ステップにおいて、基質の温度分布が非常に均一であり、現在のシステムよりもサイクル時間が桁違いに速い。PCRシステム200の様々な適切な熱伝導パラメータの広範な調査が行われてきた。
【0051】
システム200の熱交換器201は、流入流路および流出流路を利用する。流入流路および流出流路において、加熱/冷却流体が筐体およびPCRマイクロチップまたはマイクロアレイに取り付けられた伝導板の層を通過する。筐体は、均一な空隙率および浸透性を有する伝導性の多孔質媒体202で充填されている。多孔質マトリックスの浸透性および空隙率の公称値は、それぞれ3.74×10−10および0.45と考えられている。多孔質媒体202は、流入流路を通過する加熱/冷却流体によって飽和状態にされている。流入流路は、温冷供給タンクに接続される。温冷タンク間で加熱と冷却のサイクルを切り替えるために、切り替え式の弁が使用される。外側壁のすべてと多孔質媒体の頂部は、ロスが最小限になるように絶縁されている。
【0052】
次に図3を参照する。図3は、本発明の熱サイクルシステムの他の実施態様を説明するフローチャートである。このシステムは、参照数字300によって通常指定される。システム300は、熱サイクルされる物質に関して動作できるように配置されたマイクロ流体熱交換器を用いて、温度TとTの間で熱サイクルされる物質の熱サイクルを提供する。
【0053】
ステップ1では、弁を作動させることによって、温度Tの作動流体を流す。これは参照数字302で指定される。
【0054】
ステップ2では、ポンプを作動させることによって、温度Tの作動流体を、制御された速度で多孔質媒体を備えたマイクロ流体熱交換器へと流す。これは参照数字304で指定される。
【0055】
ステップ3では、弁を作動させることによって、温度Tの作動流体を流す。これは参照数字306で指定される。
【0056】
ステップ4では、ポンプを作動させることによって、温度Tの作動流体を、制御された速度で多孔質媒体を備えたマイクロ流体熱交換器へと流す。これは参照数字308で指定される。
【0057】
ステップ5では、ステップ1、2、3、および4が必要回数繰り返される。これは参照数字310で指定される。
【0058】
温度TとTの作動流体をマイクロ流体熱交換器101へと繰り返し流すステップによって、PCRによる高速で効率的な核酸の解析を提供することができる。マイクロ流体のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の熱サイクル方法300は、極めて高速なサイクルを行うことができ、それによって、長いアンプリコン(増幅された核酸)でさえ、極めて高速な検出時間をもたらすこともできる。方法300は、試薬と検体の混合;必要ならば、細胞、ウイルス粒子またはカプシドの溶解による標的DNAの放出;ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を通じた核酸増幅および光学手段またはその他の手段を用いた核酸の検出と評価、の1つまたは組み合わせを可能にする。本システムの利点は、本システムがマイクロ流体のプラットホーム上で完全に一体化していること、および極めて高速な熱サイクルにある。
【0059】
(別の実施態様)
ここで図4Aを参照する。図4Aには、本発明にしたがって構成された熱サイクルシステムの別の実施態様が示されている。本システムは、参照数字400aによって通常指定される。システム400aは、熱サイクルされる物質415aに関して動作可能なように配置されたマイクロ流体熱交換器401aを用いて、異なる温度間で物質415aの熱サイクルを提供する。
【0060】
温度Tの作動流体402aが「タンクA」(403a)中に供給される。作動流体402aは、適切な加熱/冷却装置によってタンクA(403a)中で温度Tで維持されている。温度Tの作動流体402aはタンクA(403a)からマイクロ流体熱交換器401aへと流される。
【0061】
温度Tの作動流体404aが「タンクB」(405a)中に供給される。作動流体404aは、適切な加熱/冷却装置によってタンクB(405a)中で温度Tで維持されている。温度Tの作動流体404aはタンクB(405a)からマイクロ流体熱交換器401aへと流される。
【0062】
温度Tの作動流体419aが「タンクC」(420a)中に供給される。作動流体419aは、適切な加熱/冷却装置によってタンクC(420a)中で温度Tで維持されている。温度Tの作動流体419aはタンクC(420a)からマイクロ流体熱交換器401aへと流される。システム400aは、以下の追加的な構成部品を含む:マイクロ流体熱交換器筐体412a、多孔質媒体413a、マイクロ流体の流路416a、流体417a、マイクロポンプ410a、経路411a、経路406a、経路408a、多位置弁407a、経路409a、および供給タンク421a。
【0063】
システム400aの構成部品を説明してから、システム400aの働きを説明する。システム400aはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)システムとして説明する。しかし、当然のことながらシステム400aは他の熱サイクルシステムとしても使用可能である。たとえば、システム400aはマルチウェルプレートまたはガラスのマイクロアレイの熱サイクルを行うために使用可能である。
【0064】
PCRに使用した場合、システム400aは、熱サイクルされる物質415aに関して操作可能に配置されたマイクロ流体熱交換器401を用いて、温度TとTの間でサイクルされる物質415aの熱サイクルを提供する。温度Tの作動流体402aが「タンクA」(403a)中に供給される。温度Tの作動流体402aはタンクA(403a)からマイクロ流体熱交換器401aへと流される。温度Tの作動流体404aが「タンクB」(405a)中に供給される。温度Tの作動流体404aはタンクB(405a)からマイクロ流体熱交換器401aへと流される。温度Tの作動流体419aが「タンクC」(420a)中に供給される。温度Tの作動流体419aはタンクC(420a)からマイクロ流体熱交換器401aへと流される。
【0065】
多位置弁(multiposition valves)407aが作動することによって、タンクA(403a)からマイクロ流体熱交換器401aに、温度Tの作動流体402aの流れを提供する。マイクロポンプ410aが作動することによって、温度Tの作動流体402aをタンクA(403a)からマイクロ流体熱交換器401aへと進める。温度Tの作動流体402aがマイクロ流体熱交換器401a中の多孔質媒体413aを通過することによって、熱サイクルされる物質415aの温度を温度Tに上げる。マイクロ流体熱交換器401a中の多孔質媒体413aの表面積がかなり増大し、流体の流路のねじれが強まる。これら双方によって、熱伝導および結果として生じる作動流体と多孔質マトリックスとの熱流束が強められる。次に、多位置弁407aが作動することによって、タンクB(405a)からマイクロ流体熱交換器401aに温度Tの作動流体404aの流れを提供する。マイクロポンプ410aが作動することによって、温度Tの作動流体404aをチャンバ405aからマイクロ流体熱交換器401aへと進める。温度Tの作動流体402aがマイクロ流体熱交換器401a中の多孔質媒体413aを通過することによって、熱サイクルされる物質415aの温度を温度Tに下げる。マイクロ流体熱交換器401a中の多孔質媒体413の表面積がかなり増大し、流体の流路のねじれが強まる。これら双方によって、熱伝導および結果として生じる作動流体と多孔質マトリックスとの熱流束が強められる。
【0066】
また、多位置弁407aを作動させることによって、タンクC(420a)からマイクロ流体熱交換器401aへと温度Tの作動流体419aの流れを供給することもできる。マイクロポンプ410aが作動することによって、温度Tの作動流体419aをタンクC(420a)からマイクロ流体熱交換器401aへと進める。温度Tの作動流体402aがマイクロ流体熱交換器401a中の多孔質媒体413aを通過することによって、熱サイクルされる物質415aの温度を温度Tに変える。マイクロ流体熱交換器401a中の多孔質媒体413。
【0067】
核酸のPCRを行う場合に、本システム400aは、増幅および検出の準備として様々なアッセイ用の成分(つまり、検体、オリゴヌクレオチド、プライマー、TaqManのプローブなど)を混合するために使用することができる。温度TとTの作動流体をマイクロ流体熱交換器401aへと流すステップを所定回数繰り返すことによって、所望のPCRを提供することができる。流路の配置によって、多数の流れと連続してまたは並行して、続く解析のために、サンプルを多数の一定分量(aliquots)に分割することが可能となる。連続する流れの中で、サンプルを希釈し、小塊(slugs)に分割し、または小滴へと乳化することができる。さらに、所望のアッセイに応じて、核酸が溶液中に存在してもよいし、磁性ビーズにハイブリダイズしていてもよい。この構造の拡張性によって、同じサンプルから得られた一定分量に対して、検査されるべき複数の異なる反応を行うことが可能となる。一連の稼働後の流路の汚染除去は、流路に次亜塩素酸ナトリウムの希釈溶液、続いて脱イオン水を流すことにより、簡単に実行することができる。
【0068】
システム401aは、PCR以外の熱サイクルにも使用することができる。システム400aの熱交換器401aは、流入流路および流出流路を利用する。流入流路および流出流路において、加熱/冷却流体402a、404aおよび419aが多孔質媒体413aを通過する。ある実施態様では、多孔質媒体413aは均一な空隙率および浸透性を有する。多孔質マトリックスの浸透性および空隙率の公称値は、それぞれ3.74×10−10および0.45と考えられている。他の実施態様では、多孔質媒体413aは勾配のある空隙率を有する。システム400aによって、熱交換器401aが熱サイクルされる物質415の温度を異なる温度間で、および異なる温度に変えることが可能となる。多位置弁407aの設定の様々な組み合わせによって、作動流体をタンクA、B、およびCからほぼ無限の異なる温度で供給することが可能となる。これによって、T、T、およびTの組み合わせと冷却剤の流速によって、熱伝導の制御を全範囲において行うことができる。
【0069】
本発明の熱機関は、PCR以外の熱サイクルにも使用することができる。たとえば、本発明の実施態様は以下の形態/用途のすべてにおいて機能するであろう:(a)マイクロ流路の開閉、(b)開いた構造(平面基板上の微液滴:核酸のサブ配列の選別、増幅、検出、および同定に関する米国特許出願第2008/0166793号で説明されているように、「同一平面上で複合混合物中の核酸のサブ配列の選別、増幅、検出、および同定を行うためのマイクロチップを用いた装置」を参照)、(c)Affymetrix GeneChip、NimbleGen、およびそれ以外のマイクロアレイ(アレイの表面にプライマーが結合している場合、マイクロアレイ上でPCRを行うことができる)、(d)ウェルを有するPCR用プレート(96ウェル、384ウェル、1536ウェルなど)、および(e)個々のキュベット(たとえばCepheid SmartCycler)。本発明の方法/装置は、PCRのみに限定される必要はない。(a)リアルタイムの光学的検出を備えたPCR、(b)リアルタイムの非光学的検出(電荷)を備えたPCR、(c)終点検出(リアルタイムでない)を備えたPCR、(d)最後にパイロシークエンシング、4色のシークエンシング、または他のシークエンシングを備えたPCR、(e)シークエンシングのみ(PCRなし)、および(f)化学合成(結晶学を含む)に対する熱サイクルであってもよい。
【0070】
ここで図4Bを参照する。本発明にしたがって構成された熱サイクルシステムの別の実施態様が示されている。本システムは、参照数字400bによって通常指定される。システム400bは、熱サイクルされる物質415bに関して動作可能なように配置されたマイクロ流体熱交換器401bを用いて、異なる温度間で物質415bの熱サイクルを提供する。
【0071】
温度Tの作動流体402bが「タンクA」(403b)中に供給される。作動流体402bは、適切な加熱/冷却装置によってタンクA(403b)中で温度Tで維持されている。温度Tの作動流体402bはタンクA(403b)からマイクロ流体熱交換器401bへと流れる。
【0072】
温度Tの作動流体404bが「タンクB」(405b)中に供給される。作動流体404bは、適切な加熱/冷却装置によってタンクB(405b)中で温度Tで維持されている。温度Tの作動流体404bはタンクB(405b)からマイクロ流体熱交換器401bへと流れる。
【0073】
システム400bは、以下の追加的な構成部品を含む:マイクロ流体熱交換器筐体412b、多孔質媒体413b、マイクロ流体の流路416b、流体417b、マイクロポンプ410b、経路411b、経路406b、経路408b、多位置弁407b、経路409b、および供給タンク421b。
【0074】
システム400bの構成部品を説明してから、システム400bの働きを説明する。システム400bはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)システムとして説明する。しかし、当然のことながらシステム400bは他の熱サイクルシステムとしても使用可能である。たとえば、システム400bはマルチウェルプレートまたはガラスのマイクロアレイの熱サイクルを行うために使用可能である。
【0075】
PCRに使用した場合、システム400bは、熱サイクルされる物質415bに関して操作可能に配置されたマイクロ流体熱交換器401bを用いて、温度TとTの間でサイクルされる物質415bの熱サイクルを提供する。温度Tの作動流体402bが「タンクA」(403b)中に供給される。温度Tの作動流体402bはタンクA(403b)からマイクロ流体熱交換器401bへと流される。温度Tの作動流体404bが「タンクB」(405b)中に供給される。温度Tの作動流体404bはタンクB(405b)からマイクロ流体熱交換器401bへと流される。
【0076】
多位置弁407bが作動することによって、タンクA(403b)からマイクロ流体熱交換器401bに、温度Tの作動流体402bの流れを提供する。マイクロポンプ410bが作動することによって、温度Tの作動流体402bをタンクA(403b)からマイクロ流体熱交換器401bへと進める。温度Tの作動流体402bがマイクロ流体熱交換器401b中の多孔質媒体413bを通過することによって、熱サイクルされる物質415bの温度を温度Tに上げる。マイクロ流体熱交換器401b中の多孔質媒体413bの表面積がかなり増大し、流体の流路のねじれが強まる。これら双方によって、熱伝導および結果として生じる作動流体と多孔質マトリックスとの熱流束が強められる。
【0077】
次に、多位置弁407bが作動することによって、タンクB(405b)からマイクロ流体熱交換器401bに、温度Tの作動流体404bの流れを提供する。マイクロポンプ410bが作動することによって、温度Tの作動流体404bをタンクB(405b)からマイクロ流体熱交換器401bへと進める。温度Tの作動流体402bがマイクロ流体熱交換器401b中の多孔質媒体413bを通過することによって、熱サイクルされる物質415bの温度を温度Tに下げる。マイクロ流体熱交換器401b中の多孔質媒体413の表面積がかなり増大し、流体の流路のねじれが強まる。これら双方によって、熱伝導および結果として生じる作動流体と多孔質マトリックスとの熱流束が強められる。
【0078】
核酸のPCRを行う場合に、本システム400bは、増幅および検出の準備として様々なアッセイ用の成分(つまり、検体、オリゴヌクレオチド、プライマー、TaqManのプローブなど)を混合するために使用することができる。温度TとTの作動流体をマイクロ流体熱交換器401bへと流すステップを所定回数繰り返すことによって、所望のPCRを提供することができる。流路の配置によって、多数の流れと連続してまたは並行して、続く解析のために、サンプルを多数の一定分量(aliquots)に分割することが可能となる。連続する流れの中で、サンプルを希釈し、小塊(slugs)に分割し、または小滴へと乳化することができる。さらに、所望のアッセイに応じて、核酸が溶液中に存在してもよいし、磁性ビーズにハイブリダイズしていてもよい。この構造の拡張性によって、同じサンプルから得られた一定分量に対して、検査されるべき複数の異なる反応を行うことが可能となる。一連の稼働後の流路の汚染除去は、流路に次亜塩素酸ナトリウムの希釈溶液、続いて脱イオン水を流すことにより、簡単に実行することができる。
【0079】
システム401bは、PCR以外の熱サイクルにも使用することができる。システム400bの熱交換器401bは、流入流路および流出流路を利用する。それらにおいて、加熱/冷却流体402bおよび404bは多孔質媒体413bを通過する。ある実施態様では、多孔質媒体413bは均一な空隙率および浸透性を有する。多孔質マトリックスの浸透性および空隙率の公称値は、それぞれ3.74×10−10および0.45と考えられている。別の実施態様では、多孔質媒体413bは勾配のある空隙率を有する。システム400bによって、熱交換器401bに熱サイクルされる物質415の温度を様々な異なる温度まで、および温度間で変化させることが可能となる。多位置弁407bの設定の様々な組み合わせによって、作動流体をタンクAおよびBから無限に近い多様な異なる温度で供給することが可能となる。これによって、T、T、およびTの組み合わせと冷却剤の流速によって、熱伝導の制御を全範囲において行うことができる。
【0080】
(マルチウェル・プレート)
ここで図5を参照する。図5には本発明にしたがって構成された熱サイクルシステムの別の実施態様が示されている。このシステムは、参照数字500によって通常指定される。システム500は、熱サイクルされる物質515に関して動作できるように配置されたマイクロ流体熱交換器501を用いて、温度TとTの間で熱サイクルされる物質515の熱サイクルを提供する。熱サイクルされる物質515は、マルチウェル・プレート116中に含まれる。マルチウェル・プレート116の例は、マルチウェル・プレートに関する米国特許第7410618号に示されている。本特許には「先行技術では、バイオアッセイによく使用されるマルチウェル・プレートが知られている。各マルチウェル・プレートには、マルチウェル・プレート本体が含まれる。マルチウェル・プレート本体は、本体に形成され、ずらりと並んだウェルを有する。ウェルは通常96個、384個、または1536個である。」と記載されている。マルチウェル・プレートに関する米国特許第7410618号は、参照によって本明細書中に援用される。
【0081】
システム500は、以下の追加的な構成部品を含む:マイクロ流体熱交換器筐体512、多孔質媒体513、マイクロポンプ510、経路511、チャンバ503、温度Tの作動流体502、チャンバ505、温度Tの作動流体504、経路508、多位置弁507、および経路509。
【0082】
システム500の構成部品を説明してから、システム500の働きを説明する。多位置弁507が作動することによって、チャンバ503からマイクロ流体熱交換器501に、温度Tの作動流体502の流れを提供する。マイクロポンプ510が作動することによって、温度Tの作動流体502をチャンバ503からマイクロ流体熱交換器501へと進める。温度Tの作動流体502がマイクロ流体熱交換器501中の多孔質媒体513を通過することによって、熱サイクルされる物質515の温度を温度Tに上げる。マイクロ流体熱交換器501中の多孔質媒体513の表面積がかなり増大し、流体の流路のねじれが強まる。これら双方によって、熱伝導および結果として生じる作動流体と多孔質マトリックスとの熱流束が強められる。
【0083】
次に、多位置弁507が作動することによって、チャンバ505からマイクロ流体熱交換器501に、温度Tの作動流体504の流れを提供する。マイクロポンプ510が作動することによって、温度Tの作動流体504をチャンバ505からマイクロ流体熱交換器501へと進める。温度Tの作動流体502がマイクロ流体熱交換器501中の多孔質媒体513を通過することによって、熱サイクルされる物質515の温度を温度Tに下げる。
【0084】
システム500の熱交換器501は、流入流路および流出流路を利用する。流入流路および流出流路において、加熱/冷却流体502および504が筐体および熱サイクルする物質を含むマルチウェル・プレート516を通過する。熱交換部501は、均一な空隙率および浸透性を有する伝導性の多孔質媒体513で充填されている。別の実施態様では、筐体は、勾配のある空隙率を有する伝導性の多孔質媒体513で充填されている。多孔質マトリックスの浸透性および空隙率の公称値は、それぞれ3.74×10−10および0.45と考えられている。多孔質媒体513は、流入流路を通過する加熱/冷却流体502および504によって飽和状態にされている。流入流路は、温冷供給タンク503および505に接続される。温タンク503と冷タンク505の間で加熱と冷却のサイクルを切り替えるために、切り替え式の多位置弁507が使用される。外側壁のすべてと多孔質媒体の頂部は、ロスが最小限になるように絶縁されている。マイクロポンプ510は、作動流体502および504をマイクロ流体熱交換器501の内部に直接入れることができるように配置されている。マイクロポンプ510を温冷供給タンク503および505、ならびにマイクロ流体熱交換器501に通じる経路の外側に配置することによって、マイクロポンプ510を変更のたびに新たな温度に到達させるために必要となる時間を省略する。
【0085】
(マイクロアレイ)
ここで図6を参照する。図6には、本発明にしたがって構成された熱サイクルシステムの別の実施態様が示されている。このシステムは、参照数字600によって通常指定される。システム600は、熱サイクルされる物質615に関して動作可能に配置されたマイクロ流体熱交換器601を用いて、異なる温度間で熱サイクルされる物質615の熱サイクルを提供する。熱サイクルされる物質615は、マイクロアレイ116上に収容されている。マイクロアレイの例は、マイクロアレイの検出器および方法に関する米国特許第7354389号に示されている。この特許には、「本発明が対象にするのは、バイオチップに結合された複数の検体を検出するための分析システムである。ここでは、光学検出器が第1の光源によって照射された登録マーカー(registration markers)を利用することによって、検体を検出するための焦点の位置を決定する。検体は、第2の光源によって照射される。」と記載されている。マイクロアレイの検出器および方法に関する米国特許第7354389号は、本明細書中に参照によって援用する。
【0086】
システム600は、以下の追加的な構成部品を含む:マイクロ流体熱交換器筐体612、多孔質媒体613、マイクロポンプ610、経路611、チャンバ603、温度Tの作動流体602、チャンバ606、温度Tの作動流体604、経路608、多位置弁607、および経路609。
【0087】
システム600の構成部品を説明してから、システム600の働きを説明する。多位置弁607が作動することによって、チャンバ603からマイクロ流体熱交換器601bに、温度Tの作動流体602の流れを提供する。マイクロポンプ610が作動することによって、温度Tの作動流体602をチャンバ603からマイクロ流体熱交換器601へと進める。温度Tの作動流体602がマイクロ流体熱交換器601中の多孔質媒体613を通過することによって、熱サイクルされる物質615の温度を温度Tに上げる。マイクロ流体熱交換器601中の多孔質媒体613の表面積がかなり増大し、流体の流路のねじれが強まる。これら双方によって、熱伝導および結果として生じる作動流体と多孔質マトリックスとの熱流束が強められる。
【0088】
次に、多位置弁607が作動することによって、チャンバ605からマイクロ流体熱交換器601に、温度Tの作動流体604の流れを提供する。マイクロポンプ610が作動することによって、温度Tの作動流体604をチャンバ605からマイクロ流体熱交換器601へと進める。温度Tの作動流体602がマイクロ流体熱交換器601中の多孔質媒体613を通過することによって、熱サイクルされる物質615の温度を温度Tに下げる。
【0089】
システム600の熱交換器601は、流入流路および流出流路を利用する。流入流路および流出流路において、加熱/冷却流体602および604が筐体および熱サイクルする物質を含むマイクロアレイ616を通過する。熱交換部601は、均一な空隙率および浸透性を有する伝導性の多孔質媒体613で充填されている。別の実施態様では、筐体は、勾配のある空隙率を有する伝導性の多孔質媒体613で充填されている。多孔質マトリックスの浸透性および空隙率の公称値は、それぞれ3.74×10−10および0.45と考えられている。多孔質媒体613は、流入流路を通過する加熱/冷却流体602および604によって飽和状態にされている。流入流路は、温冷供給タンク603および605に接続される。温タンク602と冷タンク605の間で加熱と冷却のサイクルを切り替えるために、切り替え式の多位置弁607が使用される。外側壁のすべてと多孔質媒体の頂部は、ロスが最小限になるように絶縁されている。マイクロポンプ610は、作動流体602および605をマイクロ流体熱交換器601の内部に直接入れることができるように配置されている。マイクロポンプ610を温冷供給タンク603および605、ならびにマイクロ流体熱交換器601に通じる経路の外側に配置することによって、マイクロポンプ610を変更のたびに新たな温度に到達させるために必要となる時間を省略する。
【0090】
(結果)
テストおよび解析が行われ、本発明の装置および方法の予想外で優れた結果と性能が得られた。本発明の装置および方法のいくつかは、International Journal of Heat and Mass Transferの51巻(2008年)P.2109〜2122に掲載されたシャディ・マハジョーブ、カンビズ・ヴァファイ、N.レジナルド・ビアーによる「核酸増幅用のポリメラーゼ連鎖反応を行うためのマイクロ流体高速サーマルサイクラー」という論文に記載されている。この論文の「結論」の節には、「PCRマイクロチップの内部で均一な温度を維持するためのすべての関連層(pertinent layers)から構成される、多孔質挿入物を利用した高速熱サイクルのための革新的で総合的な方法論が提示されている。高速で一時的で安定した周期的な熱管理アプリケーションを提供するための、分子生物学で広く使用されているPCRの最適な設計が提示されている。文献から得られる技術に比べ、提示されたPCR設計は、かなり高い加熱/冷却温度の傾斜を有し、従来技術に比べて要求電力が低い。その結果、各時間ステップにおいて、基質の温度分布が非常に均一である。PCRシステムの物理特性に対し、様々な適切な熱伝導パラメータの広範な調査が示された。すべての適切なパラメータが同時に考慮されることにより、最適な設計を実現した。」と記載されている。International Journal of Heat and Mass Transferの51巻(2008年)P.2109〜2122に掲載されたシャディ・マハジョーブ、カンビズ・ヴァファイ、N.レジナルド・ビアーによる「核酸増幅用のポリメラーゼ連鎖反応を行うためのマイクロ流体高速サーマルサイクラー」という論文は、その全体を参照によって本明細書中に援用する。
【0091】
ここで図7を参照する。図7では、本発明にしたがって構成された熱サイクルシステムの別の実施態様を説明する。このシステムは、参照数字700によって通常指定される。システム700は、熱サイクルされる物質706に関して動作可能に配置されたマイクロ流体熱交換器701を用いて温度TとTの間で熱サイクルされる物質の熱サイクルを提供する。熱サイクルされる物質は、上述の図のようにマイクロ流体熱交換器701に接触して配置される。
【0092】
温度Tの作動流体が供給され、温度Tの作動流体が入口(inlet)702を通ってマイクロ流体熱交換器701へと流される。温度Tの作動流体が供給され、温度Tの作動流体がマイクロ流体熱交換器701へと流される。温度Tの作動流体とTの作動流体をマイクロ流体熱交換器701に流すステップが所定回数繰り返される。多孔質媒体がマイクロ流体熱交換器701中に配置される。温度Tの作動流体とTの作動流体をマイクロ流体熱交換器701を通して流すステップにおいて、温度Tの作動流体とTの作動流体が多孔質媒体を通って流れる。多孔質媒体は勾配浸透性および空隙率を有する多孔質媒体である。多孔質媒体は、第1の多孔質媒体703、第2の多孔質媒体704、および第3の多孔質媒体705で構成されている。第1の多孔質媒体703、第2の多孔質媒体704、および第3の多孔質媒体705は、異なる浸透性および空隙率を有する。第1の多孔質媒体703、第2の多孔質媒体704、および第3の多孔質媒体705は、勾配浸透性および空隙率を供給するように配置されている。
【0093】
システム700の構成部品を説明してから、システム700の働きを説明する。弁が作動することによって、チャンバからマイクロ流体熱交換器701に、温度Tの作動流体の流れを提供する。マイクロポンプが作動することによって、温度Tの作動流体をチャンバからマイクロ流体熱交換器701へと進める。温度Tの作動流体がマイクロ流体熱交換器701中の多孔質媒体を通過することによって、熱サイクルされる物質の温度を温度Tに上げる。マイクロ流体熱交換器701中の勾配浸透性および空隙率703、704、705を有する多孔質媒体によって、マイクロ流体スケールの層流(laminar flow)、誘導された乱流、および熱混合が生じることによって、熱伝導が大幅に強化される。
【0094】
次に、弁が作動することによって、チャンバからマイクロ流体熱交換器701に、温度Tの作動流体の流れを提供する。マイクロポンプが作動することによって、温度Tの作動流体をチャンバからマイクロ流体熱交換器701へと進める。温度Tの作動流体がマイクロ流体熱交換器701中の多孔質媒体702を通過することによって、熱サイクルされる物質の温度を温度Tに下げる。温度TとTの作動流体をマイクロ流体熱交換器701に流すステップが所定回数繰り返されることによって、所望のPCRが提供される。マイクロ流体熱交換器701中の勾配浸透性および空隙率703、704、705を有する多孔質媒体の表面積がかなり増大し、流体の流路のねじれが強まる。これら双方によって、熱伝導および結果として生じる作動流体と多孔質マトリックスとの熱流束が強められる。
【0095】
水の流路708は、増幅および検出の準備として様々なアッセイ用の成分(つまり、検体、オリゴヌクレオチド、プライマー、TaqManのプローブなど)を混合するために使用することができる。流路の配置によって、多数の流れと連続してまたは並行して、続く解析のために、サンプルを多数の一定分量(aliquots)に分割することが可能となる。連続する流れの中で、サンプルを希釈し、小塊(slugs)に分割し、または小滴へと乳化することができる。さらに、所望のアッセイに応じて、核酸が溶液中に存在してもよいし、磁性ビーズにハイブリダイズしていてもよい。この構造の拡張性によって、同じサンプルから得られた一定分量に対して、検査されるべき複数の異なる反応を行うことが可能となる。一連の稼働後の流路の汚染除去は、流路に次亜塩素酸ナトリウムの希釈溶液、続いて脱イオン水を流すことにより、簡単に実行することができる。
【0096】
システム700の熱交換器701は、流入流路および流出流路を利用する。加熱/冷却流体は、流入流路および流出流路においてPCRマイクロチップまたはマイクロアレイに取り付けられた伝導板の筐体(enclosure)および層を通過する。筐体は、勾配のある空隙率を有する伝導性の多孔質媒体で充填されている。多孔質媒体は、流入流路702を通過する加熱/冷却流体およびによって飽和状態にされている。流入流路702は、温冷供給タンクに接続される。温タンクと冷タンクの間で加熱と冷却のサイクルを切り替えるために、切り替え式の弁が使用される。外側壁のすべてと多孔質媒体の頂部は、ロスが最小限になるように絶縁されている。
【0097】
ここで図、特に図8を参照する。図8では、本発明にしたがって構成された単一のタンクを利用するシステムの実施態様を説明する。このシステムは、参照数字800によって通常指定される。システム800は、小型で携帯式のマイクロ流体に互換性があるプラットフォームにおける、極度に高速な連続する流れまたは標的核酸のバッチ式PCR増幅を提供する。システム800は、単一のタンク802が一定の温度に維持され、チップ818からの戻り経路814および806によって供給される1タンクだけのバージョンをユーザに提供する。同じ戻り経路814および806は、タンク802だけでなく別のタンクのバイパス経路805にも供給する。バイパス経路805は、本質的にはバイパス経路805を冷却する放熱板およびファンを備えたり備えなかったりするコイルであり、チップ入力のすぐ上流の可変弁に接続されている。サーミスタまたは熱電対(thermocouple)804を可変弁807の上流に配置することによって、温度TまたはTまたは任意の中間温度の作動流体を送ることが可能となり、タンクおよび加熱システムが1つしか要らなくなる。
【0098】
熱サイクルされる物質815がDNAを含むチップ818上に収容されている。DNAサンプル815は、DNAサンプルを含むチップ818上に収容されている。伝導性の高い伝導板816は、チップ818を熱交換器801に接続する。伝導性のグリース817が使用されることによって、チップ818と熱交換器801との間に熱伝導性が提供される。チップ818と熱交換器801との間の伝導性のグリース817のかわりに、他の接続方法が使用されてもよい。たとえば、チップ818と熱交換器801との間に、圧入による接触や温度伝導性のテープが使用されてもよい。
【0099】
システム800は、熱サイクルされる物質815に関して動作可能に配置されたマイクロ流体熱交換器801を用いて、温度T、T、または任意の中間温度で熱サイクルされる物質815(DNAサンプル)の熱サイクルを提供する。温度TとTの作動流体をマイクロ流体熱交換器801へと繰り返し流すステップによって、PCRによる高速で効率的な核酸の解析を提供することができる。マイクロ流体のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の熱サイクル方法800は、極めて高速なサイクルを行うことができ、それによって、長いアンプリコン(増幅された核酸)でさえ、極めて高速な検出時間をもたらすこともできる。方法800は、試薬と検体の混合;必要ならば、細胞、ウイルス粒子またはカプシドの溶解による標的DNAの放出;ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を通じた核酸増幅および光学手段またはその他の手段を用いた核酸の検出と評価、の1つまたは組み合わせを可能にする。本システムの利点は、本システムがマイクロ流体のプラットホーム上で完全に一体化していること、および極めて高速な熱サイクルにある。
【0100】
システム800は、以下の構成部品を含む:マイクロ流体熱交換器801、マイクロ流体熱交換器筐体812、多孔質媒体813、マイクロポンプ810、経路805、806、808、809、814、多位置弁807、伝導性の高い伝導板816、熱グリース817、DNAサンプルを含むチップ818、およびDNAサンプル815。
【0101】
システム800の構成部品を説明してから、システム800の働きを説明する。弁807が作動することによって、タンク802からマイクロ流体熱交換器801に、温度Tの作動流体の流れを提供する。システム800は、1タンクだけのバージョンをユーザに提供する。そこでは単一のタンク802は一定の温度に維持され、チップ818からの戻り経路814および806によって供給される。しかし、同じ戻り経路814および806は、タンク802だけでなく別のタンクのバイパス経路805にも供給する。バイパス経路805は、本質的にはバイパス経路805を冷却する放熱板およびファンを備えたり備えなかったりするコイルであり、チップ入力のすぐ上流の可変弁に接続されている。サーミスタまたは熱電対804を可変弁807の上流に配置することによって、温度TまたはTまたは任意の中間温度の作動流体を送ることが可能となり、タンクおよび加熱システムが1つしか要らなくなる。
【0102】
マイクロ流体熱交換器801中の多孔質媒体813の表面積がかなり増大し、流体の流路のねじれが強まる。これら双方によって、熱伝導および結果として生じる作動流体と多孔質マトリックスとの熱流束が強められる。システム800の熱交換器801は、流入流路および流出流路を利用する。流入流路および流出流路において、加熱/冷却流体が筐体およびPCRマイクロチップに取り付けられた伝導板の層を通過する。筐体は、均一または勾配のある空隙率および浸透性を有する伝導性の多孔質媒体813で充填されている。多孔質媒体813は、流入流路を通過する加熱/冷却流体によって飽和状態にされている。温冷間で加熱と冷却のサイクルを切り替えるために、切り替え式の弁807が使用される。外側壁のすべてと多孔質媒体の頂部は、ロスが最小限になるように絶縁されている。マイクロポンプ810は、作動流体をマイクロ流体熱交換器801の内部に直接入れることができるように配置されている。マイクロポンプ810を温冷供給タンクの外側に配置することによって、マイクロポンプ810を変更のたびに新たな温度に到達させるために必要となる時間を省略する。
【0103】
上述のシステムは、再プログラム可能な中間ステップを含みうる。以下で述べる再プログラム可能な中間ステップは、図1〜8に関連して説明したシステムとともに使用することができる。
(ステップA)2つのタンクと可変式の電子制御弁を用いて、閉ループ制御の下で稼働している弁の上流の熱センサによって、温度Tの容器と温度Tの容器からの流れの体積比を調節する能力が提供される。それらの比を調節することによって、温度TとTの間(およびそれら自身を含む)いかなる温度も達成可能である。そのため、仮に温度Tに対する設定点がユーザに知られているなら、ユーザはT、T、およびTをキー操作部、PC、ペンダント(pendant)などに入力すれば、装置は温度TとTの間で熱サイクルを行い、所望により温度Tで停止することができる。それに関して、「温度T」はTとTの間である限り、多数の異なる値をとりうる。
(ステップB)この性能は、PCRにとって非常に望ましい。それは、ほとんどのプロトコールが3ステップであり、それらのプロトコールでは、(低い)アニーリング温度(〜50℃)から、DNAポリメラーゼ酵素が最適に機能する伸長温度(〜70℃)、2本鎖が分離する高い温度(〜94℃)へとサイクルが行われるからである。次に、サンプルがアニーリング温度(〜50℃)まで下げられ、サイクルが繰り返される。1回の逆転写(RNAをDNAに変換する)と酵素の活性化(「ホットスタート」)を含む完全な熱サイクルの一例が、Analytical Chemistryの第80巻(第6号)P.1854〜1858(2008年3月15日)のN.レジナルド・ビアー、エリザベス・K.ホイーラー、ロレンナ・リー・ヒューストン、ニコラス・ワトキンス、シャナヴァズ・ナサラバディ、ニコル・ヒーバート、パトリック・レオン、ドン・W.アーノルド、クリストファー・G.ベイリー、およびビル・W.コルストンによる出版物「分離されたピコリットル液滴におけるオン・チップの単一コピーのリアルタイム逆転写PCR」の実験の節(P.1855)に示されている。Analytical Chemistryの第80巻(第6号)P.1854〜1858(2008年3月15日)のN.レジナルド・ビアー、エリザベス・K.ホイーラー、ロレンナ・リー・ヒューストン、ニコラス・ワトキンス、シャナヴァズ・ナサラバディ、ニコル・ヒーバート、パトリック・レオン、ドン・W.アーノルド、クリストファー・G.ベイリー、およびビル・W.コルストンによる出版物「分離されたピコリットル液滴におけるオン・チップの単一コピーのリアルタイム逆転写PCR」は、本明細書中に参照により援用する。
(ステップC)この性能によって、サイクル中に繰り返す多数の温度ステップを有する、小分子の増幅に動力を供給するための能力を提供することもできる。時間の経過とともに、ますます多くのそれらの分子の増幅(必ずしもDNAを使用する必要はない)がその技術に入るであろう。
(ステップD)これは通常の化学反応または複雑な合成反応に有用であってもよい。このサーマルサイクラーに取り付けられたアレイまたはマルチウェル・プレートにピペットを用いて(ロボットまたは手動で)反復サイクル中の異なる温度で新たな試薬を中に入れるために、それらの反応では、吸熱ステップおよび発熱ステップが必要となる。
【0104】
本発明は、様々な改良を行ったり、代替の形態を作製したりしやすいが、ここでは例として、図には特定の実施態様が示され、明細書中で詳細に説明した。しかし、当然のことながら、本発明は開示された特定の実施態様に限定されるものではない。本発明は、以下の添付の請求項に規定された本発明の精神と範囲に含まれるあらゆる改良物、均等物、および代替物にまで及ぶ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ流体熱交換器と、
前記マイクロ流体熱交換器中の多孔質媒体と、
前記マイクロ流体熱交換器に動作可能なように接続され、熱サイクルを行う物質を含むマイクロ流体熱サイクルチャンバと、
第1の温度にある作動流体と、
前記第1の温度にある作動流体を前記マイクロ流体熱交換器に伝達するための第1のシステムと、
第2の温度にある作動流体と、
前記第2の温度にある作動流体を前記マイクロ流体熱交換器に伝達するための第2のシステムと、
前記第1の温度にある作動流体を、前記多孔質媒体を通って前記第1のシステムからマイクロ流体熱交換器へと流し、前記第2の温度にある作動流体を、前記多孔質媒体を通って前記第2のシステムからマイクロ流体熱交換器へと流すポンプと、を含むことを特徴とする熱サイクルされる物質の熱サイクル用装置。
【請求項2】
前記第1の温度にある作動流体を前記マイクロ流体熱交換器へと伝達するための前記第1のシステムは、前記第1の温度にある作動流体を収容するための第1の容器であって、
前記第2の温度にある作動流体を前記マイクロ流体熱交換器へと伝達するための前記第2のシステムは、前記第2の温度にある作動流体を収容するための第2の容器であることを特徴とする請求項1に記載の熱サイクル用装置。
【請求項3】
前記第1の温度にある作動流体を前記マイクロ流体熱交換器に伝達するための第1のシステムと、前記第2の温度にある作動流体を前記マイクロ流体熱交換器に伝達するための第2のシステムとは、
前記第1の温度にある作動流体を前記マイクロ流体熱交換器に供給し、前記第2の温度にある作動流体を前記マイクロ流体熱交換器に供給するために接続された加熱器または冷却器を備えた、単一の容器および分離経路を含むことを特徴とする請求項1に記載の熱サイクル用装置。
【請求項4】
前記多孔質媒体が、空隙率または浸透性が均一な多孔質媒体であることを特徴とする請求項1に記載の熱サイクル用装置。
【請求項5】
前記多孔質媒体が、勾配のある空隙率または浸透性を有する多孔質媒体であることを特徴とする請求項1に記載の熱サイクル用装置。
【請求項6】
熱サイクルを行う物質が、前記マイクロ流体熱交換器に接続されたPCRチャンバ中に入れられていることを特徴とする請求項1に記載の熱サイクル用装置。
【請求項7】
熱サイクルを行う物質が、前記マイクロ流体熱交換器に接続されたマルチウェル・プレート中に入れられていることを特徴とする請求項1に記載の熱サイクル用装置。
【請求項8】
熱サイクルを行う物質が、前記マイクロ流体熱交換器に接続されたマイクロアレイ上に載せられていることを特徴とする請求項1に記載の熱サイクル用装置。
【請求項9】
前記第1の温度にある作動流体が液体の作動流体であることを特徴とする請求項1に記載の熱サイクル用装置。
【請求項10】
前記第1の温度にある作動流体が気体の作動流体であることを特徴とする請求項1に記載の熱サイクル用装置。
【請求項11】
前記第1の温度にある作動流体が液体金属の作動流体であることを特徴とする請求項1に記載の熱サイクル用装置。
【請求項12】
前記第2の温度にある作動流体が液体の作動流体であることを特徴とする請求項1に記載の熱サイクル用装置。
【請求項13】
前記第2の温度にある作動流体が気体の作動流体であることを特徴とする請求項1に記載の熱サイクル用装置。
【請求項14】
前記第2の温度にある作動流体が液体金属の作動流体であることを特徴とする請求項1に記載の熱サイクル用装置。
【請求項15】
第3の温度にある作動流体と、
前記第3の温度にある作動流体を収容するための第3の容器と、を含み、
前記ポンプは、前記第3の温度にある作動流体を、前記多孔質媒体を通って前記第3の容器から前記マイクロ流体熱交換器へと流すことを特徴とする請求項1に記載の熱サイクル用装置。
【請求項16】
熱サイクルされる物質を温度TとTの間で熱サイクルするための熱サイクル用装置であって、
マイクロ流体熱交換器と、
前記マイクロ流体熱交換器中の多孔質媒体と、
前記マイクロ流体熱交換器に動作可能なように接続され、熱サイクルを行う物質を含むマイクロ流体熱サイクルチャンバと、
温度Tにある作動流体と、
前記温度Tにある作動流体を前記マイクロ流体熱交換器に伝達するための第1のシステムと、
温度Tにある作動流体と、
前記温度Tにある作動流体を前記マイクロ流体熱交換器に伝達するための第2のシステムと、
前記温度Tにある作動流体を、前記第1のシステムからマイクロ流体熱交換器へと流し、前記温度Tにある作動流体を、前記多孔質媒体を通って前記第2のシステムから前記熱交換器へと流すポンプと、を含むことを特徴とする熱サイクルされる物質の熱サイクル用装置。
【請求項17】
前記温度Tにある作動流体を前記マイクロ流体熱交換器へと伝達するための前記第1のシステムは、前記第1の温度にある作動流体を収容するための第1の容器であって、
前記温度Tにある作動流体を前記マイクロ流体熱交換器へと伝達するための前記第2のシステムは、前記第2の温度にある作動流体を収容するための第2の容器であることを特徴とする請求項16に記載の熱サイクル用装置。
【請求項18】
前記温度Tにある作動流体を前記マイクロ流体熱交換器に伝達するための前記第1のシステムと、前記温度Tにある作動流体を前記マイクロ流体熱交換器に伝達するための前記第2のシステムとは、
前記温度Tにある作動流体を前記マイクロ流体熱交換器に供給し、前記温度Tにある作動流体を前記マイクロ流体熱交換器に供給するために接続された加熱器または冷却器を備えた、単一の容器および分離線を含むことを特徴とする請求項16に記載の熱サイクル用装置。
【請求項19】
前記多孔質媒体が、空隙率または浸透性が均一な多孔質媒体であることを特徴とする請求項16に記載の熱サイクル用装置。
【請求項20】
前記多孔質媒体が、勾配のある空隙率または浸透性を有する多孔質媒体であることを特徴とする請求項16に記載の熱サイクル用装置。
【請求項21】
熱サイクルされる物質に関して動作可能なように接続されたマイクロ流体熱交換器を用いて、複数の異なる温度間で熱サイクルされる物質を熱サイクルするための方法であって、
第1の温度にある作動流体を供給するステップと、
前記第1の温度にある作動流体をマイクロ流体熱交換器に流すことによって、熱サイクルされる物質を前記第1の温度で保持するステップと、
第2の温度にある作動流体を供給するステップと、
前記第2の温度にある作動流体を熱交換器に流すことによって、熱サイクルされる物質を前記第2の温度で保持するステップと、を含むことを特徴とする熱サイクルするための方法。
【請求項22】
多孔質媒体をマイクロ流体熱交換器に供給するステップを含み、
前記第1の温度にある作動流体をマイクロ流体熱交換器に流すステップは、前記第1の温度にある作動流体を前記多孔質媒体を通して流すことを含み、
前記第2の温度にある作動流体をマイクロ流体熱交換器に流すステップは、前記第2の温度にある作動流体を前記多孔質媒体を通して流すことを含むことを特徴とする請求項21に記載の熱サイクルするための方法。
【請求項23】
前記第1の温度にある作動流体をマイクロ流体熱交換器に流す前記ステップおよび前記第2の温度にある作動流体をマイクロ流体熱交換器に流す前記ステップが、所定回数繰り返されることを特徴とする請求項21に記載の熱サイクルするための方法。
【請求項24】
第3の温度にある作動流体を供給するステップと、
前記第3の温度にある作動流体を前記熱交換器に流すことによって、前記第3の温度において物質の熱サイクルを行い、熱サイクルする物質を前記第3の温度で維持することを特徴とする請求項21に記載の熱サイクルするための方法。
【請求項25】
熱サイクルされる物質に関して動作可能なように接続されたマイクロ流体熱交換器を用いて、温度TとTの間で熱サイクルされる物質を熱サイクルするための方法であって、
温度Tにある作動流体を供給するステップと、
前記温度Tにある作動流体をマイクロ流体熱交換器に流すステップと、
温度Tにある作動流体を供給するステップと、
前記温度Tにある作動流体を熱交換器に流すステップと、を含むことを特徴とする熱サイクルするための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−523345(P2011−523345A)
【公表日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−543103(P2010−543103)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【国際出願番号】PCT/US2008/083728
【国際公開番号】WO2009/094061
【国際公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(507410009)ローレンス リヴァーモア ナショナル セキュリティ,エルエルシー (14)
【Fターム(参考)】