説明

梨地状農業用ポリオレフィン系フィルム

【課題】従来の農業用梨地フィルムのもつ欠点を克服し、ゲルの発生のない、かつ、ヘイズの大きいハウス栽培用、トンネル栽培用として好適な農業用梨地フィルムを提供すること。
【解決手段】少なくとも3層からなる梨地状農業用ポリオレフィン系多層フィルムにおいて、内層が、メルトフローレート1.2〜10g/10分のエチレン−酢酸ビニル共重合体からなるポリオレフィン(A)75〜95質量部と、該ポリオレフィン(A)よりメルトフローレートが0.2g/10分以上小さい高圧法低密度ポリエチレンおよび線状低密度ポリエチレンから選ばれる少なくとも一種からなるポリオレフィン(B)5〜25質量部とからなり、前記内層の表面に、熱可塑性樹脂からなるバインダーと無機質コロイドゾルとからなる防曇性塗膜を有する梨地状農業用ポリオレフィン系多層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防曇性塗膜を有する梨地状農業用フィルムに関し、簡単な構成で、かつ光の高透過性・高散乱性をもつ防曇性塗膜を有する梨地状農業用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
梨地状農業用フィルムとしては、農業用塩化ビニル樹脂フィルムの場合、カレンダー法やTダイ法でフィルムが製造され、エンボスロールにより表面が梨地状に形成されたものが製造されている。このようなフィルムは、光の透過性が高く、しかも光拡散性も高いので、農業用として使用された場合に、太陽光線の直射による葉焼け現象を防止し、農業用ハウスやトンネル内の光の拡散が必要な用途に用いられている。
【0003】
一方、近年オレフィン系樹脂からなる農業用フィルムが改良され、利用がすすんでいる。しかし、塩化ビニル樹脂製のフィルムと比較した場合、オレフィン系樹脂製フィルムはエンボス成形性が悪いため、梨地フィルムを製造することは困難であった。
【0004】
そこでエンボスの代わりに、相容性の低い2種類以上の異なる樹脂からなる組成物を用いる方法が提案されている。たとえば、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、及び変性ポリオレフィン樹脂からなる組成物から成形されるもの(特許文献1)や、エチレン−酢酸ビニル共重合体層の両面に特定のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物及びアイオノマーからなる樹脂層を積層した農業用梨地フィルム(特許文献2)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−60838号公報
【特許文献2】特開平11−318228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した農業用梨地フィルムでは、配合している各樹脂の軟化温度が異なるため、成形加工時軟化温度の低い樹脂にヤケが生じ、ゲルが多量に発生してしまうという欠点があった。
本発明は、このような従来の農業用梨地フィルムのもつ欠点を克服し、ゲルの発生のない、かつ、ヘイズの大きいハウス栽培用、トンネル栽培用として好適な農業用梨地フィルムを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、少なくとも3層からなる多層フィルムにおいて、内層に用いられる樹脂、すなわちエチレン−酢酸ビニル共重合体、ならびに高圧法低密度ポリエチレンおよび/または線状低密度ポリエチレンの組成物において、そのメルトフローレート値に一定の差をつけることにより、無機充填剤の添加も微細なエンボス加工を施すこともなく良好なヘイズを示し、かつ、上記課題を解決することを発見し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、少なくとも3層からなる梨地状農業用ポリオレフィン系多層フィルムにおいて、内層が、メルトフローレート1.2〜10g/10分のエチレン−酢酸ビニル共重合体からなるポリオレフィン(A)75〜95質量部と、該ポリオレフィン(A)よりメルトフローレートが0.2g/10分以上小さい高圧法低密度ポリエチレンおよび線状低密度ポリエチレンから選ばれる少なくとも一種からなるポリオレフィン(B)5〜25質量部とからなり、前記内層の表面に、熱可塑性樹脂からなるバインダーと無機質コロイドゾルとからなる防曇性塗膜を有することを特徴とする梨地状農業用ポリオレフィン系多層フィルムを提供するものである。
【0009】
また、本発明は、前記バインダーが水性ウレタン樹脂エマルションおよび/または水性アクリル樹脂エマルションからなることを特徴とする梨地状農業用ポリオレフィン系多層フィルムを提供する。
【0010】
また、本発明は、前記外層が、線状低密度ポリエチレン75〜95質量部と、該線状低密度ポリエチレンよりもメルトフローレートが0.5g/10分以上異なる高圧法低密度ポリエチレン5〜25質量部からなる梨地状農業用ポリオレフィン系多層フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の梨地状農業用ポリオレフィン系多層フィルムは、良好な曇り度を示す内層の表面に防曇性塗膜を設けたものであって、梨地による光拡散性も高く、透明性を低下させることなく、長期間にわたって防曇性を持続し、ハウス栽培用やトンネル栽培用、あるいはタバコの乾燥用資材として好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の梨地状農業用ポリオレフィン系多層フィルムにおいて、内層に使用されるポリオレフィン(A)は、メルトフローレート1.2〜10g/10分のエチレン−酢酸ビニル共重合体からなる。メルトフローレートが1.2g/10分以上であれば、ポリオレフィン(B)としてメルトフローレートの高いものを使用することができ、成形速度を上げられるため、効率よく生産することができる。一方、メルトフローレートが10g/10分を超えるとフィルムの形状維持が困難になり、製膜性が悪くなってしまう。
【0013】
前記ポリオレフィン(B)のメルトフローレートは、0.2g/10分以上であることが好ましい。メルトフローレートが0.2g/10分以上であれば、押出機内における過負荷がなく問題なく押し出しすることが可能である。
【0014】
ポリオレフィン(A)として用いるエチレン−酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニル含有量5〜30質量%のものが好ましく、さらに、10〜25質量%であるとより好ましい。酢酸ビニル含有量が5質量%以上であれば防曇性塗膜との密着性が良好である。また、30質量%以下であると得られるフィルムの強度が十分であり、透明性も良好である。
【0015】
ポリオレフィン(B)として用いる高圧法低密度ポリエチレンは、たとえば密度が0.935g/cm以下、好ましくは0.910〜0.935g/cmのものを用いることができる。また、線状低密度ポリエチレンは、たとえばメタロセン触媒、シングルサイト触媒で製造され、エチレンとα−オレフィン、たとえばプロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、ペンテン−1、3−メチルペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1などとのランダム共重合体やブロック共重合体を用いることができる。前記α−オレフィンは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
前記内層に配合されるポリオレフィン(A)の割合は、75〜95質量部であるが、75〜90質量部であればさらに好ましい。ポリオレフィン(A)の割合が75質量部以上であれば、防曇性塗膜との密着性が良好である。また、ポリオレフィン(A)の割合が95質量部以下であれば、所望の梨地度を得ることができる。該内層の厚さは、10〜40μmが好ましく、15〜30μmであれば、さらに好ましい。
【0017】
本発明の梨地状農業用ポリオレフィン系多層フィルムの構成は、前記内層、中間層、外層の3層とすることができる。また、中間層を2ないし3層とし、全体として4層または5層とすることも可能である。
【0018】
該外層としては、たとえば線状低密度ポリエチレンを主成分とし、従成分としてメルトフローレートが0.5〜2.0g/10分程度異なる高圧法低密度ポリエチレンを配合する組成物を用いることができる。メルトフローレートが0.5〜2.0g/10分程度異なる樹脂を配合することによって、多層フィルムの梨地度がさらに高めることができる。外層が、線状低密度ポリエチレン75〜95質量部と、該線状低密度ポリエチレンよりもメルトフローレートが0.5g/10分以上異なる高圧法低密度ポリエチレン5〜25質量部からなる組成とすることが好ましい。また、該外層の厚さは、10〜40μmが好ましく、15〜30μmであれば、さらに好ましい。厚さが10μm以上であれば、防塵効果が十分され、40μm以下であれば光透過性が良好である。
【0019】
前記中間層は、1層ないし3層で構成される。この中間層は、フィルムの強度や柔軟性を出すために、線状低密度ポリエチレンやエチレン−酢酸ビニル共重合体の層で構成することが好ましい。また、製造工程中に発生する端材等の、いわゆるレタンを、中間層の少なくとも1層に、30質量%を超えない範囲で配合することができる。
【0020】
さらに、中間層には、フィルムの保温性を向上させる無機系保温剤を配合することも可能である。たとえば、一般式[AlLi(OH)X・mHO(I)(式中のXは無機又は有機アニオン、nはアニオンXの価数、mは3以下の数である)で表わされるリチウムアルミニウム化合物及び一般式M2+1−xAl(OH)(Ap−x/p・qHO(II)(M2+はMg2+、Ca2+及びZn2+の中から選ばれた1種以上の二価金属イオンを示し、Ap−はp価のアニオン、x及びqは、それぞれ0<x<0.5、0≦q≦2を満たす数である)で表わされるハイドロタルサイト類の中から選ばれた少なくとも1種であることが重要である。これらの保温剤は、中間層の樹脂成分100質量部に対し、1〜20質量部、好ましくは3〜10質量部の割合で配合することができる。この配合量が1質量部未満では保温性の向上効果が十分に発揮されないし、20質量部を超えるとフィルムの引張強度や引裂強度などの機械物性が低下する。また、中間層において、上記保温剤は上記樹脂成分と相容性よく均一にブレンドされ、特にリチウムアルミニウム化合物は透明性がよく好ましい。
【0021】
前記一般式(I)で表わされるリチウムアルミニウム化合物において、Xは無機又は有機のアニオンであり、具体例としては、炭酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、亜リン酸イオン、メタリン酸イオンなどの無機アニオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、シュウ酸イオン、アジピン酸イオン、安息香酸イオン、フタル酸イオンなどの有機アニオンを挙げることができる。このものは一般に粒径5μm以下、特に0.1〜3μmの六角板状の結晶として入手しうる公知の無機充てん剤である(特開平5―179052号公報)。
【0022】
前記一般式(II)で表わされるハイドロタルサイト類において、Aは無機又は有機のアニオンであり、具体例としては、炭酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオンなどの無機アニオン、酢酸イオン、サリチル酸イオンなどの有機アニオンを挙げることができる。
【0023】
前記中間層は、農業用梨地ポリオレフィン系フィルムの基材層であり、その厚さは、通常30〜100μm、好ましくは40〜80μmの範囲で選ばれる。中間層の厚さが30μm以上であれば、多層フィルムの引張強度、コシなどの物性が十分得られる。また、100μm以下であれば、光透過性が十分得られる。中間層の厚さは、多層フィルムの良好な物性を得るためには、フィルム全体の厚さに対し、50〜80%の範囲が好ましく、特に55〜75%の範囲が好ましい。
【0024】
本発明のポリオレフィン系多層フィルムにおいては、前記内層の表面に、熱可塑性樹脂バインダーと無機質コロイドゾルとからなる防曇性塗膜を設けることが必要である。該防曇性塗膜に用いられる熱可塑性樹脂バインダーとしては、該内層との間で良好な接着性を示す熱可塑性樹脂であればよく、それ以外の制限は特にない。たとえば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂などが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂バインダーは、通常水又は水とアルコールなどの水性溶剤に分散させた、水系エマルションとして用いられる。
【0025】
前記熱可塑性樹脂バインダーの中では、水性ウレタン樹脂、特に水性アクリル変性ウレタン樹脂が好適である。この水性アクリル変性ウレタン樹脂としては、ポリエステル系アニオン性のものが好ましく、たとえば(イ)ポリエステル系アニオン性の水性ウレタン樹脂の存在下に、(ロ)ヒドロキシ基含有アクリル系化合物を重合させたのち、(ハ)活性イソシアネート化合物を反応させることにより、製造することができる。
【0026】
一方、防曇性塗膜の他の成分として用いられる無機質コロイドゾルとしては、たとえばコロイド状シリカ粒子やコロイド状アルミナ粒子などが挙げられる。コロイド状シリカ粒子は、球状でもアスペクト比の大きなもの、たとえば細長い形状のものでもよい。球状のコロイド状シリカ粒子としては、平均粒径5〜90nm、好ましくは20〜80nmのコロイド状シリカ粒子を用いることができる。また、細長い形状のコロイド状シリカ粒子としては、動的光散乱法による測定粒子径(Dミリミクロン)と窒素ガス吸着法による測定粒子径(Dミリミクロン)の比D/Dが5以上であって、Dが40〜500nm、電子顕微鏡観察による短径5〜40nmのものを使用することが可能である。このような細長い形状のコロイド状シリカ粒子は公知であり(特開平4−65314号公報)、市販品として入手することができる。また、上記のほか、コロイド状リチウムシリケート粒子などを用いることができる。一方、コロイド状アルミナ粒子としては、平均粒径が5〜70nm、好ましくは20〜60nmのものが好適である。これらの無機質コロイドゾルは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
前記熱可塑性樹脂バインダーと無機質コロイドゾルとの割合は、固形分重量比で1:9ないし7:3の範囲にあるのが望ましい。熱可塑性樹脂バインダーと無機質コロイドゾルとの割合がこの範囲であれば、防曇性塗膜と内層との接着力が十分得られ、良好な防曇性を発揮することができる。
【0028】
前記防曇性塗膜を形成するには、次に示す方法を用いるのが好ましい。まず、熱可塑性樹脂バインダーと無機質コロイドゾルとを所定の割合で含有する水性エマルション組成物を調製し、グラビアコーター、リバースロールコーター、エアナイフコーターなどによるコーティング法を用いて、該組成物を梨地状農業用多層フィルムの内層の表面に塗布したのち、50〜150℃程度の温度で熱風乾燥して、膜厚0.2〜5μm、好ましくは0.5〜2μm程度の塗膜を形成させればよい。厚さが0.2μm以上であれば、防曇性の効果が十分に発揮され、また5μm以下であれば光透過性が良好である。
【0029】
塗膜形成の際、前記水性エマルション組成物には、所望に応じ塗布性を向上させる目的でシリコーン系界面活性剤やフッ素系界面活性剤を含有させることができる。シリコーン系界面活性剤としては、たとえばポリエーテル変性シリコーンオイルが好ましく、またフッ素系界面活性剤としては、たとえばフルオロアルキル基やフルオロアルケニル基を含有する界面活性剤が用いられる。これらの界面活性剤の配合量は、通常水性エマルション組成物全量に対し、0.01〜1質量%の範囲で選ばれる。
【0030】
また、本発明の目的が損なわれない範囲で、従来慣用されている乳化剤、分散剤、安定剤、架橋剤などの各種添加成分を含有させることができる。さらに、塗膜の耐候性を高めるためにヒンダードアミン系の光安定剤や紫外線吸収剤などを含有させることができる。架橋剤を配合すれば、特に塗膜の耐水性を向上させる効果が得られる。架橋剤としてはエポキシ系やアジリジン系のものが例示される。
【0031】
本発明の梨地状農業用ポリオレフィン系多層フィルムにおいては、内層、中間層、外層の各層に、従来農業用ポリオレフィン系フィルムに慣用されている各種添加剤、たとえばヒンダードアミン系の光安定剤や紫外線吸収剤などの耐候剤、酸化防止剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤などを添加することができる。
【0032】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、たとえば2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−4−ベンゾエート、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)ホスファイト、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)テレフタレート、1,3,8−トリアザ−7,7,9,9−テトラメチル−2,4−ジオキソ−スピロ[4,5]デカン、トリ−(4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン)−アミン、1,2,3,4−テトラ(4−カルボニルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン)ブタン、4−(フェニルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン)−4−スピロ−2′−(6′,6′−ジメチルピペリジン)−4′−スピロ−5″−ヒダントイン、4−(p−トルエンスルホニルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,3,8−トリアザ−7,7,9,9−テトラメチル−3−n−オクチル−スピロ[4,5]デカン−2,4−ジオン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどを挙げることができる。
【0033】
紫外線吸収剤としては、たとえばベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチル酸系のものなどが挙げられ、ベンゾトリアゾール系のものの例としては、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−アミル−5′−イソブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−イソブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−イソブチル−5′−プロピルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(1,1,3,3−テトラメチル)フェニル]ベンゾトリアゾールなどがある。
【0034】
また、ベンゾフェノン系のものの例としては、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノンなどがある。
【0035】
また、サリチル酸系のものとしては、フェニルサリチレート、p−オクチルフェニルサリチレートなどがある。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系、リン系、硫黄系のものなどが用いられる。滑剤としては、たとえば、ポリエチレンワックス、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、リシノール酸バリウム、有機亜リン酸エステルのようなキレーター、エポキシ樹脂、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、エチレンビスステアロアミドなどの脂肪酸アミドや、固体状の高級アルコール、グリセリン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0036】
本発明において、内層、中間層及び外層からなる積層フィルムを成形するには、まず各層を形成しうる樹脂配合を混合し、ペレットをそれぞれ調製したのち、公知の方法、たとえば、共押出インフレーション成形法などにより、各層が所定の厚さになるように製膜すればよい。上記したペレットは、樹脂成分と各種配合成分とをそれぞれ所定の割合で用い、リボンブレンダー、バンバリミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、単軸又は二軸押出機、ロールなどの配合機や混練機を用いて均質に配合した組成物を、常法によりペレット加工することにより調製することができる。
【0037】
その後、上記にて説明した方法によって防曇性塗膜を設ける。梨地状フィルムを共押出インフレーション成形法によって成形する場合、防曇性塗膜は偏平に折り畳んだ筒状フィルムの外表面に設け、偏平に折り畳んだ筒状フィルムの一端を切断することによって、2つ折りの防曇性塗膜を有する梨地状フィルムを得る。
【0038】
本発明の防曇性塗膜を有する梨地状フィルムは、防曇性塗膜がハウスの内側となるよう農業用ハウスに張設する。そうすることによって、ハウス内の高湿度条件下において、ハウスの内側のフィルム表面が結露しても、水滴が速やかに膜状に広がることにより、ぼた落ちを防ぐことができる。
【0039】
また、農業用ハウスの外表面は、通常土、砂などの微粒子が付着することによって、経時的に汚れがひどくなってしまうが、本発明の梨地状フィルムは、エンボス加工することなく製造することが可能であるため、フィルム表面の平滑性がよく、微粒子等の付着を防ぐ防塵効果も期待できる。さらに、本発明の梨地状農業用ポリオレフィン系多層フィルムは、必要に応じて、外層の表面に防塵塗料からなる防塵層を設けることができる。
【実施例】
【0040】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、防曇性塗膜形成特性及び梨地状農業用多層フィルムの性能は次のようにして求めた。
【0041】
(1)防曇性塗膜の防曇性:水温20℃の水槽にフィルムを展張し、外気温5℃にて防曇性を評価した。
○: 塗膜が均一で、防曇性が良好。
△: 塗膜がやや不均一で、部分的に水滴の付着あり。
×: 塗膜が不均一で、に水滴の付着が多い。
【0042】
(2)梨地度:フィルム試料のヘイズ値をヘーズメータHGM−2DP(スガ試験機製)で測定し、次の基準で評価した。
○: ヘイズ値40%以上
△: ヘイズ値30%以上、40%未満
×: ヘイズ値30%未満
【0043】
次に、梨地状農業用フィルムの作成に使用した材料を以下に示す。
(a)LLDPE−1:線状低密度ポリエチレン、密度0.916g/cm、MFR1.5g/10分
(b)LLDPE−2:線状低密度ポリエチレン、密度0.916g/cm、MFR2.3g/10分
(c)EVA5:酢酸ビニル単位含有量5重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体、MFR0.5g/10分
(d)EVA18:酢酸ビニル単位含有量18重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体、MFR1.5g/10分
(e)LDPE−1:高圧法低密度ポリエチレン、密度0.926g/cm、MFR1.5g/10分
(f)LDPE−2:高圧法低密度ポリエチレン、密度0.923g/cm、MFR0.8g/10分
(g)LDPE−3:高圧法低密度ポリエチレン、密度0.919g/cm、MFR0.25g/10分
(h)リチウムアルミニウム化合物:[AlLi(OH)CO・1.6HO、平均粒径0.2μm
(h)ハイドロタルサイト:Mg0.67Al0.33(OH)(CO3)0.165・0.5HO(商品名:アルカマイザー1)、平均粒径0.5μm
(i)アクリル樹脂系エマルション:「A−614」、ICI社製、固形分30重量%
(j)アクリル変性ウレタン樹脂系エマルション:「HUX‐401」、ADEKA製、固形分37重量%
【0044】
[実施例1]
EVA18を80質量部とLDPE−2を20質量部からなる内層用ペレット、LLDPE−1を100質量部にハイドロタルサイト5質量部を配合してなる中間層用ペレット及びLLDPE−1を80質量部とLDPE−2を20質量部からなる外層用ペレットを用い、共押出インフレーション成形法により、外側から、内層、中間層及び外層の順となるよう配置し、各層の厚さが、それぞれ20μm、100μm及び30μmである3層構造のチューブ状積層フィルムを得た。
【0045】
次に、アクリル樹脂系エマルション50質量部、アルミナゾル50質量部及びポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤0.5質量部からなる防曇性塗膜形成用塗工液を調製し、前記チューブ状積層フィルムの外表面(すなわち内層の表面)に、グラビアコーター(グラビアロール:160メッシュ)により塗工し、120℃で乾燥して厚さ約2μmの防曇性塗膜を形成させ、梨地状農業用フィルムを作成した。
【0046】
得られた梨地状農業用フィルムの防滴性及び梨地度を測定した。その結果を表1に示す。なお、フィルムの各層には、樹脂成分100質量部に対し、耐候剤として、チヌビン622(チバ・ジャパン製、ヒンダードアミン系光安定剤)0.3質量部及びベンゾフェノン系紫外線吸収剤0.1質量部を添加した。以下の例においても同様である。
【0047】
【表1】

【0048】
[実施例2および3]
実施例1において、各層の樹脂組成を表1記載のとおりとした以外は、実施例1と同様にして防曇性塗膜を有する梨地状農業用フィルムを得た。得られた梨地状農業用フィルムの防滴性及び梨地度を測定した。その結果を表1に示す。
【0049】
[実施例4〜6]
実施例1において、各層の樹脂組成を表2記載のとおりとした以外は、実施例1と同様にして防曇性塗膜を有する梨地状農業用フィルムを得た。得られた梨地状農業用フィルムの防滴性及び梨地度を測定した。その結果を表2に示す。
【0050】
【表2】

【0051】
[実施例7〜10]
実施例1において、各層の樹脂組成を表3記載のとおりとした以外は、実施例1と同様にして防曇性塗膜を有する梨地状農業用フィルムを得た。得られた梨地状農業用フィルムの防滴性及び梨地度を測定した。その結果を表3に示す。
【0052】
【表3】

【0053】
[比較例1〜4]
実施例1において、各層の樹脂組成を表4記載のとおりとした以外は、実施例1と同様にして防曇性塗膜を有する梨地状農業用フィルムを得た。得られた梨地状農業用フィルムの防滴性及び梨地度を測定した。その結果を表4に示す。
【0054】
【表4】

【0055】
[実施例11および12]
実施例1において、梨地状農業用多層フィルムを5層とし、各層の樹脂組成を表5記載のとおりとした以外は、実施例1と同様にして防曇性塗膜を有する梨地状農業用フィルムを得た。得られた梨地状農業用フィルムの防滴性及び梨地度を測定した。その結果を表5に示す。
【0056】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の防曇性塗膜を有する梨地状農業用フィルムは、簡単な構成で、かつヘイズが大きく、散乱光成分が多いため、強い直射光を嫌う植物の温室ハウス栽培やトンネル栽培用などに好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外層、中間層および内層の少なくとも3層からなる梨地状農業用ポリオレフィン系多層フィルムにおいて、
該内層が、メルトフローレート1.2〜10g/10分のエチレン−酢酸ビニル共重合体からなるポリオレフィン(A)75〜95質量部と、該ポリオレフィン(A)よりメルトフローレートが0.2g/10分以上小さい高圧法低密度ポリエチレンおよび線状低密度ポリエチレンから選ばれる少なくとも一種からなるポリオレフィン(B)5〜25質量部とからなり、
前記内層の表面に、熱可塑性樹脂からなるバインダーと無機質コロイドゾルとからなる防曇性塗膜を有することを特徴とする梨地状農業用ポリオレフィン系多層フィルム。
【請求項2】
前記バインダーが水性ウレタン樹脂エマルションおよび/または水性アクリル樹脂エマルションからなることを特徴とする請求項1に記載の梨地状農業用ポリオレフィン系多層フィルム。
【請求項3】
該外層が、線状低密度ポリエチレン75〜95質量部と、該線状低密度ポリエチレンよりもメルトフローレートが0.5g/10分以上異なる高圧法低密度ポリエチレン5〜25質量部からなる請求項1又は2に記載の梨地状農業用ポリオレフィン系多層フィルム。

【公開番号】特開2011−109991(P2011−109991A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270880(P2009−270880)
【出願日】平成21年11月28日(2009.11.28)
【出願人】(000106726)シーアイ化成株式会社 (267)
【Fターム(参考)】