説明

棒状化粧材繰出容器

【課題】別体のストッパー部材を設ける必要が無く、かつ、芯チャック部材とメネジ筒とを組み立て可能な棒状化粧材繰出容器を得ること。
【解決手段】棒状化粧材αが内挿される先筒10と、先筒10に回転自在に組み付けられる基筒20と、内周にメネジ43が形成される上部円筒部45aを有し基筒20の内周に一体化して同期回転するメネジ筒40と、メネジ43と螺合するオネジ35が外周に形成され先筒10と基筒20との相対回転によって移動する芯チャック部材30と、を備え、芯チャック部材30は、内周面45aaの内径より大径に形成されメネジ筒40と当接したときに棒状化粧材αの上昇限を規定するストッパー部36を有し、メネジ筒40は、内周面45aaにおける周の一部が切断されて切断部47が形成され、芯チャック部材30との組み付け時に上部円筒部45aにストッパー部36が挿入されて拡開する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状化粧材の繰出機構に関する発明で、棒状化粧材繰出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、アイブロー,アイライナー,リップライナー等の細径の棒状化粧材の繰出容器において、棒状化粧材を保持する爪片式の芯チャックが用いられている。
【0003】
特許文献1には、四本の爪片によって化粧料を保持する芯チャックを備える化粧材容器が開示されている。
【0004】
特許文献2には、押棒の端部にストッパー部材が組み付けられ、押棒と螺合する螺旋筒の下端面がストッパー部材と当接することによって、押棒のストローク上限を定める棒状化粧材繰出容器が開示されている。この棒状化粧材繰出容器では、ストッパー部材と押棒とを別体に形成し、メネジ筒を押棒に組み付けた後でストッパー部材を嵌着することによって、メネジ筒と押棒とを組み立て可能としている。
【0005】
また、特許文献2には、押棒の端部近傍から外周に向けて突設されるベンド片を有し、螺旋筒の下端面がベンド片と当接することによって、押棒のストローク上限を定める構成が開示されている。このベンド片は、螺旋筒を押棒に組み付ける際には、螺旋筒の内壁に押されて内周側に折れ曲がることで、螺旋筒と押棒とを組み立て可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭60−33919号公報
【特許文献2】特許第3029834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載の棒状化粧材繰出容器において、棒軸が細径である場合には、棒軸に形成されるベンド片も微かな突起しか形成できない。そのため、棒軸が細径である場合には、ベンド片の強度が確保できず、ベンド片の代わりに別体のストッパー部材を設ける必要があった。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、棒状化粧材が細径である場合にも別体のストッパー部材を必要とせず、かつ、任意の繰り出しリードで棒状化粧材を進退させる芯チャック部材とメネジ筒とを容易に組み立て可能な棒状化粧材繰出容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、先端に先端開口孔が形成され、棒状化粧材が内挿される先筒と、前記先筒に回転自在に組み付けられる基筒と、内周にメネジが形成される小径部を有し、前記基筒の内周に一体化して同期回転するメネジ筒と、前記メネジと螺合するオネジが外周に形成され、前記先筒と前記基筒との相対回転によって前記棒状化粧材を前記先端開口孔から進退させる芯チャック部材と、を備える棒状化粧材繰出容器であって、前記芯チャック部材は、前記小径部の内径より大径に形成され前記メネジ筒と当接したときに前記棒状化粧材の上昇限を規定するストッパー部を有し、前記メネジ筒は、前記小径部における周の一部が切断されて切断部が形成され、前記芯チャック部材との組み立て時に前記小径部に前記ストッパー部が挿入されて拡開することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、芯チャック部材は、メネジ筒と当接したときに棒状化粧材の上昇限を規定するストッパー部を有し、メネジ筒は、ストッパー部より小径に形成される小径部を有する。小径部は、周の一部が切断された切断部を有する。メネジ筒と芯チャック部材との組み立て時には、ストッパー部が小径部に挿入されると、切断部が拡開することによってメネジ筒の内径が拡げられる。これにより、ストッパー部は小径部を通過することができるため、メネジ筒と芯チャック部材との組み立てが容易である。
【0011】
したがって、棒状化粧材が細径である場合にも別体のストッパー部材が不要であり、かつ、芯チャック部材とメネジ筒とを容易に組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(A)は、本発明の実施の形態に係る棒状化粧材繰出容器において棒状化粧材が下降限にある状態を示す断面図であり、(B)は、棒状化粧材が上昇限にある状態を示す断面図である。
【図2】図1の棒状化粧材繰出容器に使用される各部材を示し、(C)は先筒、(D)は基筒、(E)は芯チャック部材及びメネジ筒を示す図である。(D’)は、図2(D)におけるB−B断面図である。
【図3】(F)は、メネジ筒の斜視図、斜視図におけるP矢視図、S拡大図、及びC−C断面図である。(F’)は、図3(F)におけるメネジ筒の側面からの斜視図、及び斜視図におけるD−D断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る棒状化粧材繰出容器1について説明する。
【0014】
まず、図1を参照して、棒状化粧材繰出容器1の全体構成について説明する。
【0015】
図1(A)は、棒状化粧材繰出容器1において棒状化粧材αが下降限にある状態を断面で示す図であり、図1(B)は、棒状化粧材αが上昇限にある状態を断面で示す図である。
【0016】
棒状化粧材繰出容器1は、先端に先端開口孔11が形成され棒状化粧材αが内挿される先筒10と、先筒10に回転自在に組み付けられる基筒20とを備える。棒状化粧材αは、アイブロー,アイライナー,リップライナー等の比較的径の細い棒状化粧材である。
【0017】
また、棒状化粧材繰出容器1は、内周にメネジ43が形成され基筒20の内周に係合して同期回転するメネジ筒40と、メネジ43と螺合するオネジ35が外周に形成され先筒10と基筒20との相対回転によって軸方向に移動する芯チャック部材30とを備える。棒状化粧材αは、芯チャック部材30によって保持され、芯チャック部材30が軸方向に移動することで、先端開口孔11から進退する。
【0018】
次に、図2を参照して、棒状化粧材繰出容器1を構成する各部材について詳細に説明する。
【0019】
図2は、棒状化粧材繰出容器1の各部材を示す図で、図2(C)は先筒10、図2(D)は基筒20、図2(E)は芯チャック部材30及びメネジ筒40を示す。
【0020】
図2(C)に示す先筒10は、先端開口孔11に向けて外径が小さくなるように軸方向に形成される摘部14と、摘部14における最も外径が大きな端部から軸方向に延設され、組み立てられた状態では基筒20の内周に挿入される嵌入部15とを有する。
【0021】
嵌入部15には、後述する基筒20の嵌合凹部22に回動可能に嵌合する嵌合凸部18が突設される。嵌入部15には、Oリング溝16が設けられ、Oリング(図示省略)が巻装される。Oリングは、先筒10と基筒20との相対回動の際に、基筒20の内周に当接して適度な抵抗を与える。
【0022】
先筒10の先端に形成される先端開口孔11は、貫通孔12として穿設される。先筒10の内周には、貫通孔12に沿って、軸方向に四本の摺動溝13が形成される(図2(C’)参照)。
【0023】
図2(D)に示す基筒20は、先端開口孔21と底面23とを有する有底円筒状に形成される。基筒20の内周には、先筒10の嵌合凸部18と嵌合する嵌合凹部22と、メネジ筒40を固定するローレット24と、メネジ筒40の軸方向の位置決めをする段部25とが形成される。
【0024】
図2(E)に示す芯チャック部材30は、先筒10の摺動溝13を摺動する先端に四本の爪片31によって形成されて棒状化粧材αを保持する保持部32と、各々の爪片31から軸方向に延設される四本の係合条部33とを備える。
【0025】
保持部32は、90°間隔で形成された四本の爪片31の内周に棒状化粧材αを保持し、爪片31の外周が摺動溝13を摺動するものである。
【0026】
係合条部33は、先筒10の摺動溝13に係合して、芯チャック部材30と先筒10との相対回転を規制する回転止機構を構成する。本実施形態においては、係合条部33は長めに設定されているが、爪片31の下部に回転止めとして形成されていればよい。
【0027】
芯チャック部材30は、係合条部33から更に延設される棒軸34と、棒軸34の後端に形成されるストッパー部36とを更に備える。
【0028】
棒軸34は、係合条部33とストッパー部36との間に形成される。棒軸34の外径は、爪片31及び係合条部33の外径より小径であり、かつ、後端のストッパー部36の外径より小径である。棒軸34の外周には、凸条又は突起状のオネジ35が形成される。
【0029】
オネジ35は、棒軸34の全周に形成されるのではなく、棒軸34の円周上の対向する二箇所のみに形成される。オネジ35は、円周上の複数の箇所に列状に形成されればよいため、二箇所ではなく、例えば三箇所であってもよい。
【0030】
芯チャック部材30は、中心軸を含む平面をPL(Parting Line:パーティングライン)として分割される割金型を用いたプラスチックの射出成形によって成形される。棒軸34の全周にオネジ35を螺刻しようとする場合、オネジ35のうちPL近傍の部分がアンダーカットとなる。オネジ35のリード角が比較的大きい場合には、アンダーカット部が引っ掛かって芯チャック部材30が割金型から抜けなくなるおそれや、無理に抜くことでオネジ35が破損するおそれがある。
【0031】
また、オネジ35のリード角が比較的小さい場合には、アンダーカット部が小さいため、割金型による成形が可能である。よって、棒軸34の全周にオネジ35を螺刻使用とする場合には、オネジ35は、リード角が比較的小さいものに限定される。
【0032】
そこで、オネジ35を、棒軸34の全周に形成されない凸条もしくは突起状とし、PL付近にオネジ35が形成されていない部分が位置するようにしている。これにより、芯チャック部材30にはアンダーカット部が形成されず、オネジ35は、任意のリード角に設定可能である。
【0033】
もちろん、棒軸34の全周にオネジ35を螺刻したものに、メネジ筒40の一部を切断して切断部47を形成すると同時にメネジ43とオネジ35を螺合させても、本発明の範疇に属するものである。
【0034】
ストッパー部36は、端部から外径が徐々に大きくなるテーパー面36aを有する略円錐状に形成される。ストッパー部36は、テーパー面36aの外径が最も大きな端部から上端面36cにかけて、外径が一定であり棒軸34の外径寸法より大径に形成される大径部36bを備える。なお、テーパー面36aの外径が最も小さな端部は、棒軸34の外形寸法より小径に形成される。
【0035】
ストッパー部36は、図1(B)に示すように、芯チャック部材30が軸方向に移動して棒状化粧材αが繰り出されたときに、メネジ筒40は先筒10の下端面17と基筒20の段部25との間に挟持されるため、上端面36cが、メネジ筒40の段部44(図3(F)参照)と当接する。これにより、棒状化粧材αが繰り出されたときの上昇限が規定される。
【0036】
なお、棒状化粧材αが繰り戻されたときの下降限は、図1(A)に示すように、芯チャック部材30の下端部33a(図2(E)参照)が、メネジ筒40の天面49(図3(F)参照)と当接することによって規定される。
【0037】
次に、主に図3を参照して、メネジ筒40について説明する。
【0038】
図3(F)及び(F’)は、メネジ筒40を詳細に示した図である。
【0039】
メネジ筒40は、図3(F’)のD−D断面図に示すように、軸方向に延設される上部円筒部45aと、上部円筒部45aに連続して形成される下部円筒部45bとを備える。
【0040】
上部円筒部45aは、内周面45aaに形成されるメネジ43と、外周壁48から突設される三本の縦リブ41a,41b,41cとを備える。上部円筒部45aの内径は、芯チャック部材30におけるストッパー部36の大径部36bの外径と比較して小径に、かつ、テーパー面36aの最も径の小さな部分の外径と比較して大径に形成される。上部円筒部45aが、小径部に該当する。
【0041】
メネジ43は、メネジ筒40における上部円筒部45aと下部円筒部45bとの境界付近の一部のみに形成される。メネジ43を、上部円筒部45aの内周面45aaの全長に渡って形成してもよい。
【0042】
図3(F)のP矢視図に示すように、上部円筒部45a及び下部円筒部45bの上端の一部は、外周から内周に向けてV字状に形成される割溝46を有する。
【0043】
メネジ筒40は、金型を用いたプラスチックの射出成形によって成形される。メネジ筒40が射出成型によって成形されたときには、上部円筒部45aは、割溝46の内周の一部に、メネジ筒40の他の部分より薄く形成される薄膜部47aを有する。メネジ筒40が芯チャック部材30に組み付けられる前の状態では、メネジ筒40の内周は、薄膜部47aとメネジ43とによって全周に連続して形成されている。
【0044】
メネジ筒40は、軸方向に芯チャック部材30と組み付けられる。具体的には、メネジ筒40は、芯チャック部材30のストッパー部36が天面49から軸方向に挿入されて、芯チャック部材30と組み付けられる。
【0045】
ここで、ストッパー部36の大径部36bは、メネジ筒40における上部円筒部45aの内径より大径に形成される。そのため、ストッパー部36が挿入されると、メネジ筒40には、薄膜部47aと、薄膜部47aの内周に位置するメネジ43の一部とが切断された切断部47が形成される。メネジ筒40に切断部47が形成されることによって、ストッパー部36は、メネジ筒40における上部円筒部45aの内径を拡げながら軸方向に通過することができる。メネジ筒40が芯チャック部材30に組み付けられると、メネジ筒40のメネジ43と芯チャック部材30のオネジ35とが螺合する。
【0046】
上述したように、メネジ筒40が射出成形によって成形されたときには、メネジ筒40の内周は薄膜部47a及びメネジ43によって連続して形成されている。メネジ筒40にストッパー部36が挿入されると、ストッパー部36によって上部円筒部45aの径が拡げられるため、上部円筒部45aの周の一部が切断されて切断部47が形成される。
【0047】
これに限らず、メネジ筒40が射出成形によって成形されたときには既に切断部47が形成されているようにしてもよい。また、メネジ筒40を芯チャック部材30に組み付ける前に、テーパが形成された治具を挿入することによって切断部47を形成するようにしてもよい。
【0048】
このように、切断部47がいつ形成されるかに関わらず、ストッパー部36が挿入されることによって、切断部47が拡開して上部円筒部45aの内径が拡げられるため、ストッパー部36が上部円筒部45aを通過可能となる。よって、芯チャック部材30へのメネジ筒40の組み付けが容易である。
【0049】
また、ストッパー部36によって上部円筒部45aの径が一度拡げられることによって、上部円筒部45aは拡径しやすくなる。これにより、メネジ筒40を、メネジ43がオネジ35と螺合しないように上部円筒部45aを拡径したままスライドさせて棒軸34に組み付けることが可能となる。
【0050】
メネジ43は、メネジ筒40における上部円筒部45aと下部円筒部45bとの境界付近の一部のみに形成されるため、メネジ43が上部円筒部45aにおける内周面45aaの全長に渡って形成される場合と比較してメネジ43の周数が少ない。よって、ストッパー部36が挿入されて割られる部分の断面積を小さくできるため、容易に切断部47を形成できる。
【0051】
なお、メネジ筒40にはV字状の割溝46が形成されるため、応力集中によって薄膜部47aとその内周に位置するメネジ43の一部とが割れて切断部47が形成されるが、割溝46の形状はV字状に限らず、ストッパー部36の挿入によってメネジ筒40の周上の任意の箇所を割って切断部を形成する構成であれば、本発明の範疇に属する。
【0052】
縦リブ41a〜41cは、その下端面が基筒20内周の段部25に当接するとともに、ローレット24と係合することで基筒20と一体化される。縦リブ41a〜41cは、単数であっても複数であってもよく、三本に限られるものではない。
【0053】
下部円筒部45bは、内径がストッパー部36の外径と比べて大径に形成される。これにより、下部円筒部45bと上部円筒部45aとの間には、ストッパー部36の外径より大径な部分と、ストッパー部36の外径より小径な部分とを連結する段部44が形成される。
【0054】
下部円筒部45bは、周の一部が切断されたスリット42を有するC字状断面に形成され、このスリット42と上部円筒部45aの割溝46とは、軸方向に連続して形成される。下部円筒部45bは、ストッパー部36の軸方向長さと比較して軸方向に長く形成される。
【0055】
また、下部円筒部45bから外周に向けて縦リブを突設し、この縦リブに対応するローレットを基筒20の内周に形成することによって基筒20とメネジ筒40とを一体化してもよい。この場合、上部円筒部45aの縦リブ41a〜41cは不要となる。
【0056】
ここで、ストッパー部36が上部円筒部45aの内周を通過して切断部47を形成した後、ストッパー部36が完全に通過するまでは、メネジ筒40と芯チャック部材30との組み付けは完了しない。そこで、下部円筒部45bをストッパー部36と比べて長く形成することで、ストッパー部36が切断部47を形成した後、ストッパー部36が上部円筒部45aの内周を完全に通過できるようにしている。これにより、例えば、メネジ筒40が平らな面上に垂直に載置された状態であっても、芯チャック部材30を組み付けることが可能である。
【0057】
また、メネジ筒40を、下部円筒部45bを設けずに上部円筒部45aのみによって構成することも可能である。この場合、例えば、ストッパー部36が挿入可能な垂直な孔が形成された台状の組み付け補助具を用い、組み付け補助具の上にメネジ筒を垂直に載置して上からストッパー部36を挿入することによって、芯チャック部材30との組み付けが可能である。メネジ筒40が上部円筒部45aのみによって構成される場合には、上部円筒部45aの下端面が、ストッパー部36の上端面36cと当接して、芯チャック部材30の繰り出し上昇限を規定することとなる。
【0058】
以下、棒状化粧材繰出容器1の組み立て手順について説明する。
【0059】
まず、メネジ筒40の天面49から、芯チャック部材30のストッパー部36を挿入する。このとき、ストッパー部36の大径部36bによって、割溝46の内周に形成される薄膜部47aとメネジ43とが切断され、メネジ筒40には、切断部47が形成される。
【0060】
そのまま芯チャック部材30を挿入すると、メネジ筒40のメネジ43と芯チャック部材30のオネジ35とが螺合する。
【0061】
ストッパー部36は、メネジ筒40と芯チャック部材30とを組み立てるときに、メネジ筒40の周の一部に形成された薄膜部47aとメネジ43の一部とを割って切断部47を形成し、メネジ筒40と芯チャック部材30とを組み立て可能としている。したがって、芯チャック部材30とは別体のストッパー部材を設ける必要が無く、かつ、芯チャック部材30とメネジ筒40とを容易に組み立てることができる。
【0062】
メネジ筒40には、周の一部が切断されて切断部47が形成されているため、メネジ筒40の径を拡げることが可能である。メネジ筒40は、オネジ35とメネジ43とが螺合しなくなる程度まで径が拡げられた状態で、軸方向にスライドさせることによって棒軸34に組み付けることが可能である。このように、芯チャック部材30の棒軸34の下端側よりスライドしながら組付け可能であるため、オネジ35のピッチに沿ってメネジ筒40を回転させる必要がなく、組み付けが容易である。これにより、芯チャック部材30とメネジ筒40との組み付けが完了する。
【0063】
なお、メネジ筒40が棒軸34に組み付けられた状態、つまり、オネジ35とメネジ43とが螺合した状態では、後述するクラッチ機構が作動した場合を除いて、メネジ筒40における切断部47は閉じられている。このため、オネジ35が凸条や突起である場合にも、オネジ35とメネジ43との螺合状態を良好なものにでき、棒状化粧材αのスムーズな繰り出し及び繰り戻しが可能である。
【0064】
次に、組み立てられた芯チャック部材30とメネジ筒40とを、先筒10の下端面17から挿入し、芯チャック部材30の爪片31が摺動溝13に位置するように挿入する。そのまま挿入を続けると、爪片31に延設される係合条部33もまた摺動溝13に係合し、回転止め機構が構成される。
【0065】
そして、先筒10の下端面17とメネジ筒40の天面49とが当接するまで挿入を続ける。これにより、先筒10,芯チャック部材30,及びメネジ筒40の組み付けが完了する。
【0066】
最後に、組み付けられた先筒10,芯チャック部材30,及びメネジ筒40を、基筒20内に挿入する。芯チャック部材30のストッパー部36が、基筒20の先端開口孔21に挿入され、そのまま挿入を続けると、メネジ筒40の縦リブ41a,41b,及び41cが、基筒20の内周に形成されるローレット24に係合する。
【0067】
そして、縦リブ41a〜41cの下端面が、基筒20の段部25に当接するまで挿入を続け、先筒10の嵌合凸部18と基筒20の嵌合凹部22とを回動可能に嵌合する。これにより、メネジ筒40と基筒20とは一体化され、棒状化粧材繰出容器1の組み立てが完了する。
【0068】
次に、図1(A)及び図1(B)を参照して、棒状化粧材繰出容器1の作動について説明する。
【0069】
芯チャック部材30が繰り出し下降限に位置する状態(図1(A)に示す状態)から、先筒10と基筒20を相対回転させると、芯チャック部材30の係合条部33が先筒10の摺動溝13に係合して回転止機構を構成し、基筒20と一体化されたメネジ筒40のメネジ43と芯チャック部材30のオネジ35とが螺合機構を構成する。これにより、芯チャック部材30は、オネジ35のリードに従って先筒10内を上昇して棒状化粧材αを繰り出し、先端開口孔11から棒状化粧材αが突出することで、化粧が可能となる。また、先筒10と基筒20とを逆方向に相対回転させると、芯チャック部材30が先筒10内を下降して、棒状化粧材αは先筒10内に繰り戻される。
【0070】
芯チャック部材30が繰り出し上昇限に至ると(図1(B)に示す状態)、芯チャック部材30におけるストッパー部36の上端面36cが、メネジ筒40内周の段部44に当接する。これにより、芯チャック部材30の繰り出し上昇限が規定され、芯チャック部材30は、これ以上上昇することができなくなる。
【0071】
従来、棒軸の外周の一部からベンド片を突設し、このベンド片によって繰り出し上昇限や下降限を規定する場合があった。棒軸が細径である場合には、ベンド片の突起も微かな突起しか形成できず、芯チャック部材の上昇限及び下降限を規定するための強度が確保できないおそれがあった。また、芯チャック部材の上昇限を使用者に知らせることができないため、更なる回動負荷をかけて部材を損傷するおそれがあった。
【0072】
これに対して、ストッパー部36は、全周に渡って棒軸34から外周に突設して形成される。よって、棒軸34が細径であっても、芯チャック部材30の上昇限及び下降限を規定するための強度を確保できる。
【0073】
芯チャック部材30が繰り出し上昇限に位置する状態で、更に棒状化粧材αを繰り出す方向の回動負荷がかかると、オネジ35の山がメネジ43の山に乗り上げることで、メネジ筒40の切断部47が開き、棒軸34がメネジ筒40から抜けようとする。このように、オネジ35とメネジ43とは、螺合解除される。
【0074】
続いて、オネジ35の山がメネジ43の山を乗り越えると、棒軸34は、切断部47付近の外周壁48によって押し戻されてメネジ筒40の内周に戻ろうとする。このように、オネジ35とメネジ43とは、螺合復帰する。
【0075】
このように、棒状化粧材αの繰り出し上昇限において更に棒状化粧材αを繰り出そうとする回動負荷がかかった場合には、クラッチ機構が作動する。このとき、螺合復帰するときにオネジ35とメネジ43とが接触することによってパチパチと音がして、使用者に繰り出し上昇限を知らせる。また、棒状化粧材αの繰り出し下降限において更に棒状化粧材αを繰り戻そうとする回動負荷がかかった場合にも同様に、クラッチ機構が作動する。
【0076】
以上より、メネジ筒40は、棒状化粧材αの繰り出し上昇限及び繰り出し下降限にて更なる回動負荷がかかった場合に、切断部47が開くことによってオネジ35との間で螺合解除と螺合復帰とを繰り返す。これにより、各部材の損傷が防止される。また、繰出リードが比較的小さい場合には、螺合力が強いため、上昇限で更なる負荷回動がかかった場合に、先筒10と基筒20の嵌合が外れるおそれがあるが、これも、クラッチ機構によって防止される。
【0077】
以上の実施の形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0078】
芯チャック部材30は、メネジ筒40と当接したときに棒状化粧材αの上昇限を規定するストッパー部36を有する。ストッパー部36は、メネジ筒40と芯チャック部材30とを組み立てるときに、メネジ筒40の周の一部に形成された薄膜部47aとメネジ43の一部とを割って切断部47を形成する。これにより、メネジ筒40と芯チャック部材30とを組み立て可能としている。
【0079】
したがって、芯チャック部材30とは別体のストッパー部材を設ける必要が無く、かつ、芯チャック部材30とメネジ筒40とを容易に組み立てることができる。
【0080】
また、芯チャック部材30の繰出リードは、芯チャック部材30のオネジ35を凸条又は突起状とし、射出成形に用いられる割金型のPL付近にオネジ35が形成されたいない部分を位置させることによって、任意のリードに設定可能である。
【0081】
なお、オネジ35とメネジ43とを、棒軸34の全周に螺刻した微動なリード角に設定することも可能である。微動なリード角に設定する場合には、オネジ35とメネジ43との螺合力が強くなる。そのため、繰り出し上昇限で更なる回動負荷がかかった場合には、先筒10と基筒20との嵌合が外れて離脱するおそれがあるが、クラッチ機構が作動することによって、先筒10と基筒20との離脱を防止することが可能である。また、クラッチ機構が作動した場合には、パチパチという音によって使用者に繰り出し上昇限を知らせることができる。
【0082】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の棒状化粧材繰出容器は、棒状化粧材などの化粧材を繰り出して使用するための容器として利用することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 棒状化粧材繰出容器
10 先筒
11 先端開口孔
20 基筒
30 芯チャック部材
31 爪片
33 係合条部
34 棒軸
35 オネジ
36 ストッパー部
40 メネジ筒
43 メネジ
45a 上部円筒部(小径部)
46 割溝
47 切断部
47a 薄膜部
48 外周壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に先端開口孔が形成され、棒状化粧材が内挿される先筒と、
前記先筒に回転自在に組み付けられる基筒と、
内周にメネジが形成される小径部を有し、前記基筒の内周に一体化して同期回転するメネジ筒と、
前記メネジと螺合するオネジが外周に形成され、前記先筒と前記基筒との相対回転によって前記棒状化粧材を前記先端開口孔から進退させる芯チャック部材と、を備える棒状化粧材繰出容器であって、
前記芯チャック部材は、前記小径部の内径より大径に形成され前記メネジ筒と当接したときに前記棒状化粧材の上昇限を規定するストッパー部を有し、
前記メネジ筒は、前記小径部における周の一部が切断されて切断部が形成され、前記芯チャック部材との組み立て時に前記小径部に前記ストッパー部が挿入されて拡開することを特徴とする棒状化粧材繰出容器。
【請求項2】
前記切断部は、前記芯チャック部材との組み立て時に前記小径部に前記ストッパー部が挿入されることによって切断されて形成されることを特徴とする請求項1に記載の棒状化粧材繰出容器。
【請求項3】
前記切断部は、前記メネジ筒の周の一部に当該メネジ筒の他の部分より薄く形成された薄膜部と、前記薄膜部の内周に位置する前記メネジの一部とが切断されることによって形成されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の棒状化粧材繰出容器。
【請求項4】
前記メネジ筒は、前記小径部を有する上部円筒部と、前記上部円筒部に連続して形成される下部円筒部とを有し、
前記下部円筒部は、内径が前記ストッパー部の外径と比較して大径に形成され、
前記薄膜部は、前記上部円筒部の外周からV字状に形成される割溝によって形成され、
前記下部円筒部は、前記割溝から連続して形成されるスリットを有することを特徴とする請求項3に記載の棒状化粧材繰出容器。
【請求項5】
前記メネジ筒は、前記棒状化粧材の上昇限及び下降限にて更なる回動負荷がかかると、前記切断部が開くことによって前記オネジとの間で螺合解除と螺合復帰とを繰り返すことを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の棒状化粧材繰出容器。
【請求項6】
前記先筒は、その内周の軸方向に形成される摺動溝を有し、
前記芯チャック部材は、
先端に形成され前記棒状化粧材を保持する爪片と、
前記爪片から延設され、前記摺動溝と係合して前記先筒との相対回転を規制する係合条部と、
前記係合条部と前記ストッパー部との間に形成され、当該係合条部及び前記ストッパー部と比較して小径に形成され、外周に前記オネジが形成される棒軸と、を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の棒状化粧材繰出容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−65771(P2012−65771A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211886(P2010−211886)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【特許番号】特許第4663032号(P4663032)
【特許公報発行日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000252090)鈴野化成株式会社 (32)