説明

棒状部材の洗浄装置及び洗浄方法

【課題】コンパクトな装置で効率良く棒状部材の洗浄を行うことができる洗浄装置を提供すること。
【解決手段】内部にワーク1を収容可能な収容部5を有するケース10a,11Aと、収容部5への洗浄液の給排を行う洗浄液給排装置2Aとを備え、ケース10a,11Aは、収容部5へのワーク1の出し入れを行うことができるよう開閉可能に分割して構成され、ワーク1は、収容部5内へ供給されて排出される洗浄液によって洗浄されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状部材の洗浄装置及び洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
円柱状や円筒状等の棒状部材を洗浄する従来の装置としては、複数の棒状部材を同時に洗浄液に浸漬することによって洗浄するのが一般的であった(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−290724号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、複数の棒状部材を洗浄液に浸漬することによって洗浄する場合、複数の棒状部材を浸漬させるための洗浄槽を必要とするため、装置が大掛かりとなる。
【0004】
また、長さの異なる棒状部材を同一の洗浄槽を用いて洗浄する場合には、洗浄液の深さを長い棒状部材に合わせる必要があるため、洗浄液の使用量が多くなってしまう。このように、浸漬による洗浄の場合には、効率良く洗浄を行うことができない。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、コンパクトな装置で効率良く棒状部材の洗浄を行うことができる洗浄装置及び洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、棒状部材の洗浄を行う棒状部材の洗浄装置であって、内部に棒状部材を収容可能な収容部を有するケースと、前記収容部への洗浄液の給排を行う洗浄液給排装置と、を備え、前記ケースは、前記収容部への棒状部材の出し入れを行うことができるよう開閉可能に分割して構成され、棒状部材は、前記収容部内へ供給されて排出される洗浄液によって洗浄されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、棒状部材は、ケースの収容部に収容され、その収容部を流れる洗浄液によって洗浄される。したがって、洗浄槽を必要としないため、装置をコンパクトに構成することができる。また、棒状部材の洗浄は、棒状部材の表面積等に応じて洗浄に最低限必要な量の洗浄液を収容部に流すことによって行うことができるため、洗浄液を無駄に消費することが防止され、効率良く洗浄を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0009】
まず、図1〜図3を参照して、本発明の実施の形態に係る洗浄装置100の全体構成について説明する。図1は洗浄装置100の平面図であり、図2は図1の矢印Aの方向から見た洗浄装置100の正面図であり、図3は図1の矢印Bの方向から見た洗浄装置100の側面図である。
【0010】
洗浄装置100は、円柱状や円筒状等の棒状部材の表面に付着した油等の汚れを洗浄液によって洗浄する装置であり、付帯設備として洗浄を行った後に棒状部材の表面に圧縮空気をブローすることによって棒状部材の表面に残った水分を除去する水分除去装置を備える。なお、本実施の形態では、被洗浄部材である棒状部材は、中実の円柱状部材であり、ワーク1と称する。
【0011】
洗浄装置100は、ワーク1を洗浄する洗浄液及びワーク1にブローする圧縮空気の供給及び排出を行う流体給排装置2と、ワーク1を支持して流体給排装置2の各所定位置へと搬送する搬送装置3とを備える。
【0012】
流体給排装置2は、内部にワーク1を収容可能な収容部5を有するケース6に接続され、収容部5内への洗浄液及び圧縮空気の給排を行う。具体的には、流体給排装置2は、洗浄液の給排を行う洗浄液給排装置2Aと、圧縮空気の給排を行う空気給排装置2Bとからなる。
【0013】
図2に示すように、搬送装置3は、複数のケース6を支持するインデックステーブル7と、インデックステーブル7を軸中心に回転するインデックスモータ8とを備える。ケース6は、インデックステーブル7の回転軸を中心とする同一円周上に配置され、インデックスモータ8の駆動及び停止によって所望の位置へと搬送される。なお、図3においては、搬送装置3の図示を省略している。
【0014】
搬送装置3は、ケース6を洗浄液給排装置2Aに対応する洗浄位置3Aと空気給排装置2Bに対応する水分除去位置3Bへと搬送する(図1参照)。ケース6は、洗浄位置3A及び水分除去位置3Bの他、搬送装置3によって、ケース6へのワーク1のセットが自動で行われるセット位置3C、及びケース6からワーク1の取り外しが自動で行われる取外位置3Dにも搬送される。このように、搬送装置3は、ワーク1を4つの所定位置へと順次に搬送する。具体的には、セット位置3C、洗浄位置3A、水分除去位置3B、及び取外位置3Dの順番に搬送する。
【0015】
セット位置3C、洗浄位置3A、水分除去位置3B、及び取外位置3Dの各位置は90度間隔で配置される。また、ケース6も同様に、インデックステーブル7に90度間隔で4つ支持される。したがって、インデックステーブル7が停止した際には、全てのケース6がいずれかの位置3A〜3Dに対応して配置された状態となり、ワーク1のセット、ワーク1の洗浄、ワーク1の水分除去、及びワーク1の取り外しのいずれかの工程が行われる。
【0016】
ケース6は、ワーク1を支持する支持ケース10と、支持ケース10と開放可能に連結され収容部5を画成する上部ケース11とからなる。このように、ケース6は、収容部5へのワーク1の出し入れを行うことができるよう開閉可能に分割して構成される。なお、以下では、ワーク1の洗浄工程に用いられるケースを洗浄工程用ケース、また、ワーク1の水分除去工程に用いられるケースを水分除去用ケースと称する。
【0017】
図2に示すように、支持ケース10は、略円筒状の部材であり、インデックステーブル7に90度間隔で支持された治具15の中空部を挿通し、端部に設けられた環状のフランジ部10dと治具15との間に介装されたスプリング16によって支持される。スプリング16は、支持ケース10の自重によって圧縮され、支持ケース10を治具15から抜ける方向に付勢する。
【0018】
支持ケース10は、収容部5内の洗浄液又は圧縮空気を外部へと排出するための排出通路10aと、排出通路10aに連通し内周がワーク1よりも大径の大径部10bとを有する。排出通路10aと大径部10bは、支持ケース10の軸方向に沿って直列に形成される。支持ケース10は、排出通路10aの開口部が鉛直下方に開口すると共に、大径部10bの開口部が鉛直上方に開口するように、インデックステーブル7に支持される。
【0019】
排出通路10aは、大径部10bよりも小径であるため、排出通路10aと大径部10bとの境界には段差部10cが形成され、この段差部10cにワーク1が係止される。このようにしてワーク1は支持ケース10に支持される。
【0020】
支持ケース10は、インデックステーブル7の回転によって、4つの各位置3A〜3Dに順次に搬送され、4つの工程で共通に用いられる。
【0021】
インデックステーブル7の下部には、支持ケース10が洗浄位置3Aに位置した際に、支持ケース10の排出通路10aと連通し、洗浄液をタンク(図示せず)へと排出する洗浄液給排装置2Aの洗浄液排出管27が設けられる。洗浄液排出管27は、下部が洗浄装置100の基台20に固定される。このように、洗浄液給排装置2Aは、支持ケース10に対して着脱可能に構成される。
【0022】
また、インデックステーブル7の下部には、支持ケース10が水分除去位置3Bに位置した際に、支持ケース10の排出通路10aと連通し、圧縮空気を外部へと排出する空気給排装置2Bの圧縮空気排出管(図示せず)が設けられる。圧縮空気排出管も、洗浄液排出管27と同様に、下部が洗浄装置100の基台20に固定される。このように、空気給排装置2Bも、支持ケース10に対して着脱可能に構成される。
【0023】
上部ケース11は、略円筒状の部材であり、洗浄位置3Aの鉛直上方に配置されワーク1の洗浄工程に用いられる洗浄ケース11Aと、水分除去位置3Bの鉛直上方に配置されワーク1の水分除去工程に用いられるブローケース11Bとからなる。
【0024】
洗浄ケース11A及びブローケース11Bは、基台20に立設するL字型の支柱21を介して支持される長板状のテーブル22に結合される。テーブル22は、インデックステーブル7の上方に平行に配置される。
【0025】
支柱21の端部には、エアシリンダ23を鉛直方向に支持するシリンダケース24が結合され、テーブル22は、エアシリンダ23内を摺動自在に移動するピストンロッド(図示せず)の先端に結合される。したがって、エアシリンダ23を駆動することによって、テーブル22は鉛直方向に移動し、それに伴い洗浄ケース11A及びブローケース11Bは、一体にインデックステーブル7と近づく又は離れる方向へと移動する。エアシリンダ23及びテーブル22が移動手段に該当する。
【0026】
洗浄ケース11Aは、洗浄液を収容部5内へと供給するための供給通路11Aaと、供給通路11Aaに連通し内周がワーク1よりも大径の大径部11Abとを有する。供給通路11Aaと大径部11Abは、洗浄ケース11Aの軸方向に沿って直列に形成される。洗浄ケース11Aは、供給通路11Aaの開口部が鉛直上方に開口すると共に、大径部11Abの開口部が鉛直下方に開口するように、テーブル22に支持される。
【0027】
同様に、ブローケース11Bも、圧縮空気を収容部5内へと供給するための供給通路11Baと、供給通路11Baに連通し内周がワーク1よりも大径の大径部11Bbとを有する。供給通路11Baと大径部11Bbは、ブローケース11Bの軸方向に沿って直列に形成される。ブローケース11Bは、供給通路11Baの開口部が鉛直上方に開口すると共に、大径部11Bbの開口部が鉛直下方に開口するように、テーブル22に支持される。
【0028】
テーブル22には、洗浄液供給源(図示せず)からの洗浄液を導く洗浄液給排装置2Aの洗浄液供給管25が結合され、洗浄液供給管25は洗浄ケース11Aの供給通路11Aaに接続される。このように、洗浄ケース11Aは、洗浄液給排装置2Aに連結して設けられ、洗浄液給排装置2Aからの洗浄液が供給されるものであり、ワーク1の洗浄工程のみに用いられる。なお、洗浄液供給源と洗浄液供給管25とは、図示しないフレキシブルホース等を介して接続される。
【0029】
また、テーブル22には、圧縮空気供給源(図示せず)からの圧縮空気を導く空気給排装置2Bの圧縮空気供給管26が結合され、圧縮空気供給管26はブローケース11Bの供給通路11Baに接続される。このように、ブローケース11Bは、空気給排装置2Bに連結して設けられ、空気給排装置2Bからの圧縮空気が供給されるものであり、ワーク1の水分除去工程のみに用いられる。なお、圧縮空気供給源と圧縮空気供給管26とは、図示しないフレキシブルホース等を介して接続される。
【0030】
洗浄ケース11Aは洗浄位置3Aの鉛直上方に配置されるため、支持ケース10がインデックステーブル7によって洗浄位置3Aに搬送された際には、洗浄ケース11Aと支持ケース10とは同軸上に配置されることになる。このとき、支持ケース10の大径部10bにおける開口端と洗浄ケース11Aの大径部11Abにおける開口端とは対峙した状態となる。したがって、エアシリンダ23を駆動しテーブル22を下降させることによって、互いの開口端が接触して、支持ケース10と洗浄ケース11Aとによって内部に収容部5が密閉画成される。このとき、支持ケース10は、スプリング16を圧縮しながら下方へと移動するため、下端が洗浄液排出管27の上端に接触し、支持ケース10の排出通路10aと洗浄液排出管27とが連通する。スプリング16は、圧縮された状態となるため、支持ケース10を洗浄ケース11Aと密着する方向に付勢し、収容部5が密閉される。
【0031】
また、ブローケース11Bは、水分除去位置3Bの鉛直上方に配置されるため、支持ケース10がインデックステーブル7によって水分除去位置3Bに搬送された際には、ブローケース11Bと支持ケース10とは同軸上に配置されることになる。したがって、エアシリンダ23を駆動しテーブル22を下降させることによって、互いの開口端が接触して、支持ケース10とブローケース11Bとによって内部に収容部5が密閉画成される。このとき、支持ケース10は、スプリング16を圧縮しながら下方へと移動するため、下端が圧縮空気排出管の上端に接触し、支持ケース10の排出通路10aと圧縮空気排出管とが連通する。スプリング16は、圧縮された状態となるため、支持ケース10をブローケース11Bと密着する方向に付勢し、収容部5が密閉される。
【0032】
以上のように、ワーク1を支持する支持ケース10は、洗浄位置3Aから水分除去位置3Bへと搬送され、それぞれの位置3A、3Bにて洗浄ケース11A及びブローケース11Bのそれぞれによって密閉される。そして、洗浄位置3Aでは、洗浄液給排装置2Aによる洗浄液の給排によってワーク1の洗浄が行われ、水分除去位置3Bでは、空気給排装置2Bによる圧縮空気の給排によってワーク1の表面の水分除去が行われる。
【0033】
このように、支持ケース10は、洗浄工程及び水分除去工程で共通に用いられるのに対して、洗浄ケース11A及びブローケース11Bは、それぞれ洗浄工程及び水分除去工程で専用に用いられる。つまり、洗浄工程用ケースは、支持ケース10と洗浄ケース11Aとから構成され、水分除去工程用ケースは、支持ケース10とブローケース11Bとから構成される。
【0034】
ここで、テーブル22に結合された洗浄ケース11Aとブローケース11Bとの間隔は、インデックステーブル7に支持された隣合う支持ケース10の間隔と同一である。したがって、エアシリンダ23を駆動しテーブル22を下降させることによって、洗浄位置3A及び水分除去位置3Bに配置された支持ケース10は、洗浄ケース11Aとブローケース11Bのそれぞれによって同時に密閉される。
【0035】
次に、図4を参照して、収容部5内の構成について詳しく説明する。図4(a)は洗浄工程用ケースの収容部5に洗浄液を給排し、ワーク1の洗浄を行っている状態の模式図であり、図4(b)は図4(a)におけるb−b断面を示す断面図である。なお、図4(a)中に示す矢印は洗浄液の流れ方向を示すものである。
【0036】
支持ケース10と洗浄ケース11Aとが一体の状態では、それぞれの大径部10bと大径部11Abによって収容部5が画成される。
【0037】
ワーク1の外径は、支持ケース10の排出通路10aの内径よりも大きいため、ワーク1は、背面1aが排出通路10aと大径部10bとの境界である段差部10cに当接した状態で収容部5内に配置される。
【0038】
このように、ワーク1は、その自重及び洗浄ケース11Aの供給通路11Aaから収容部5内へと供給される洗浄液の圧力によって、背面1aが排出通路10aを閉塞するように収容部5内に配置される。
【0039】
大径部10b及び大径部11Abの内周、つまり収容部5の内周には、90度間隔で4つの溝が形成され、この溝は供給通路11Aaに連通し洗浄液が通過する溝通路30として構成される。
【0040】
また、段差部10c上には、図4(b)に示すように、ワーク1の背面1aに臨み、収容部5と排出通路10aとを連通する溝状の連通路31が形成される。このように、連通路31は、段差部10cの表面とワーク1の背面1aとの間に画成される。したがって、収容部5と排出通路10aは、連通路31を介して常時連通され、連通路31を通過する洗浄液の圧力は、ワーク1の背面1aに作用することになる。具体的には、連通路31は、それぞれの溝通路30と排出通路10aとを連通して形成される。
【0041】
段差部10cには、溝通路30と連続する窪み部32が形成される。窪み部32は、収容部5内の洗浄液の圧力がワーク1の背面1aに作用するように、ワーク1の背面1aに臨んで形成される。
【0042】
以上のように、収容部5内に各通路が形成されることによって、供給通路11Aaから収容部5内へと供給された洗浄液は、収容部5の内周とワーク1の外周との間の隙間33及び溝通路30を流れ、連通路31を通過して排出通路10aへと排出される。洗浄液が連通路31を通過する際、洗浄液の流体力がワーク1の背面1aに作用し、ワーク1は軸方向に上昇する力を受ける。ここで、ワーク1が段差部10cに載置されている状態では、連通路31の開口面積は小さく、連通路31を流れる洗浄液の流速は大きいため、ワーク1の背面1aには大きな流体力が作用し、ワーク1は収容部5内を軸方向に上昇する。また、連通路31を流れる洗浄液による流体力の他、窪み部32に導かれる洗浄液の圧力によってもワーク1は上向きの力を受ける。なお、図4(a)において、中心線より右側は、ワーク1が上昇した際の図である。
【0043】
ワーク1が軸方向に上昇すると、ワーク1の背面1aが段差部10cから離れ、連通路31は開放されるため、排出通路10aへと流れる洗浄液の流速が小さくなる。これにより、ワーク1の背面1aに作用する流体力は小さくなり、ワーク1は自重で軸方向へ下降し、再び段差部10cに当接し連通路31を画成する。
【0044】
このように、ワーク1は、連通路31を通過する洗浄液の流体力による上昇と、自重による下降とを繰り返し、軸方向へ揺動しながら洗浄される。ワーク1を軸方向へ揺動させて洗浄することによって、洗浄効果が促進され、短時間でワーク1の洗浄を行うことができる。
【0045】
なお、ワーク1の外径と収容部5の内径との寸法差が小さく、両者の隙間33が小さい場合には、隙間33を流れる洗浄液の流量が少なくなるため、連通路31を通過する洗浄液の流体力が小さくなってしまう可能性がある。しかし、洗浄液は、収容部5の内周に形成された溝通路30をも流れて流量が確保されるため、隙間33が小さい場合でも、連通路31を通過する洗浄液の流体力が確保され、ワーク1は軸方向へと揺動する。
【0046】
以上では、ワーク1の洗浄工程に用いられる洗浄工程用ケースの場合について説明したが、ワーク1の水分除去工程に用いられる水分除去工程用ケースについても同様の構成である。したがって、水分除去工程用ケースに圧縮空気を供給してワーク1の表面の水分を除去する場合でも、ワーク1は、自重及び連通路31を通過する圧縮空気の流体力によって、軸方向へ揺動しながら水分が除去される。
【0047】
次に、以上のように構成される洗浄装置100の動作について説明する。
【0048】
まず、インデックステーブル7に支持された4つの支持ケース10のうち、セット位置3Cに位置する支持ケース10にワーク1をセットする。
【0049】
次に、ワーク1がセットされた支持ケース10を、搬送装置3によって洗浄位置3Aへと搬送する。洗浄位置3Aでは、洗浄液供給管25、洗浄ケース11A、支持ケース10、及び洗浄液排出管27が同軸上に配置される。
【0050】
エアシリンダ23を駆動することによって、洗浄ケース11Aを支持ケース10に向けて下降させる。洗浄ケース11Aと支持ケース10は、互いの開口端が接触することによって一体となり、洗浄工程用ケースを構成する。
【0051】
洗浄ケース内の密閉された収容部5内に、洗浄液給排装置2Aの洗浄液供給管25を通じて洗浄液を供給する。
【0052】
収容部5内のワーク1は、収容部5を通過する洗浄液によって洗浄される。また、ワーク1は、自重及び連通路31を通過する洗浄液の流体力によって、軸方向へ揺動しながら洗浄される。
【0053】
ワーク1の洗浄工程終了後、エアシリンダ23を駆動することによって、洗浄ケース11Aを上昇させ、支持ケース10から分離させる。
【0054】
次に、支持ケース10を、搬送装置3によって水分除去位置3Bへと搬送する。水分除去位置3Bでは、圧縮空気供給管26、ブローケース11B、支持ケース10、及び圧縮空気排出管が同軸上に配置される。
【0055】
エアシリンダ23を駆動することによって、ブローケース11Bを支持ケース10に向けて下降させる。ブローケース11Bと支持ケース10は、互いの開口端が接触することによって一体となり、水分除去工程用ケースを構成する。
【0056】
水分除去工程用ケース内の密閉された収容部5内に、空気給排装置2Bの圧縮空気供給管26を通じて圧縮空気を供給する。
【0057】
収容部5内のワーク1は、表面に圧縮空気がブローされることによって水分が除去される。また、ワーク1は、自重及び連通路31を通過する圧縮空気の流体力によって、軸方向へ揺動しながら表面の水分が除去される。
【0058】
ワーク1の水分除去工程終了後、エアシリンダ23を駆動することによって、ブローケース11Bを上昇させ、支持ケース10から分離させる。
【0059】
次に、支持ケース10を、搬送装置3によって取外位置3Dへと搬送し、取外位置3Dにて支持ケース10からワーク1を取り外す。
【0060】
以上のようにして、ワーク1の洗浄工程及び水分除去工程が行われる。なお、下部ケースは、インデックステーブル7に4つ支持されているため、ワーク1のセット、洗浄、水分除去、及び取り外しの各工程は、同時に行われる。
【0061】
本実施の形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0062】
ワーク1は、収容部5内に収容され、収容部5を流れる洗浄液によって洗浄される。したがって、ワーク1を浸漬するための洗浄槽を必要としないため、装置をコンパクトに構成することができる。
【0063】
また、ワーク1は、加圧された洗浄液がワーク1表面の全体に当たることによって洗浄されるため、短時間で効率良く洗浄を行うことができる。
【0064】
また、ワーク1の洗浄は、一つ一つ個別に行われるため、ワーク1の表面積や汚れ具合に応じて洗浄に最低限必要な量の洗浄液を収容部5に流すことによって行うことができる。したがって、洗浄液を無駄に消費することが防止され、効率良く洗浄を行うことができる。
【0065】
また、ワーク1は、自重及び連通路31を通過する洗浄液の流体力によって、軸方向へ揺動しながら洗浄されるため、洗浄効果が促進され、より短時間でワーク1の洗浄を行うことができる。
【0066】
さらに、洗浄装置100では、ワーク1の洗浄後に、洗浄と同様の要領によって、つまりケース6内に供給する媒体を洗浄液から圧縮空気に代えることによって、ワーク1の表面の水分除去が行われる。このように、簡便な装置で洗浄及び水分除去の双方を行うことができる。
【0067】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【0068】
例えば、以上の実施の形態では、支持ケース10は、搬送装置3によって搬送されることによって洗浄工程及び水分除去工程で共通に用いられ、洗浄ケース11A及びブローケース11Bは、それぞれ洗浄工程及び水分除去工程で専用に用いられると説明した。しかし、支持ケース10も、洗浄工程及び水分除去工程のそれぞれで専用に用いるように2つ備えるようにしてもよい。つまり、洗浄工程用ケースと水分除去工程用ケースを全く別のケースにて構成するようにしてもよい。その場合には、ワーク1のみが洗浄工程用ケースから水分除去工程用ケースへと搬送されることになる。
【0069】
また、洗浄工程用ケースと水分除去工程用ケースを全く同一のケースにて構成するようにしてもよい。その場合には、ケース6の収容部5内に洗浄液を供給しワーク1の洗浄を行った後、ケース6を開放することなく収容部5内に圧縮空気を供給しワーク1の水分除去を行う。
【0070】
また、以上の実施の形態では、ケース6は、支持ケース10と上部ケース11とから構成され、両者によって収容部5が画成されると説明したが、収容部5を支持ケース10のみに形成し、上部ケース11はキャップ状の部材に構成するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明に係る洗浄装置は、油等にて汚れたワークを洗浄する装置として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施の形態に係る洗浄装置を示す平面図である。
【図2】図1の矢印Aの方向から見た洗浄装置の正面図である。
【図3】図1の矢印Bの方向から見た洗浄装置の側面図である。
【図4】(a)洗浄工程用ケースの収容部に洗浄液を給排し、ワークの洗浄を行っている状態の模式図である。(b)図4(a)におけるb−b断面を示す断面図である。
【符号の説明】
【0073】
100 洗浄装置
1 ワーク
2A 洗浄液給排装置
2B 空気給排装置
3 搬送装置
3A 洗浄位置
3B 水分除去位置
3C セット位置
3D 取外位置
5 収容部
7 インデックステーブル
10 支持ケース
10c 段差部
11A 洗浄ケース
11B ブローケース
16 スプリン
22 テーブル
23 エアシリンダ
25 洗浄液供給管
26 圧縮空気供給管
27 洗浄液排出管
30 溝通路
31 連通路
32 窪み部
33 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状部材の洗浄を行う棒状部材の洗浄装置であって、
内部に棒状部材を収容可能な収容部を有するケースと、
前記収容部への洗浄液の給排を行う洗浄液給排装置と、を備え、
前記ケースは、前記収容部への棒状部材の出し入れを行うことができるよう開閉可能に分割して構成され、
棒状部材は、前記収容部内へ供給されて排出される洗浄液によって洗浄されることを特徴とする棒状部材の洗浄装置。
【請求項2】
前記ケースは、
棒状部材を支持する支持ケースと、
前記支持ケースと開放可能に連結され、前記収容部を画成する洗浄ケースと、を備え、
前記収容部は、前記支持ケースと前記洗浄ケースの互いの開口端が接触することによって密閉されることを特徴とする請求項1に記載の棒状部材の洗浄装置。
【請求項3】
前記支持ケースは、インデックステーブルに支持され、
前記洗浄ケースは、前記洗浄液給排装置に設けられ、
前記洗浄液給排装置は、前記支持ケースに対して着脱可能であり、
前記支持ケースは、前記インデックステーブルによって前記洗浄ケースが配置される洗浄位置へと搬送されることを特徴とする請求項2に記載の棒状部材の洗浄装置。
【請求項4】
前記支持ケースは、前記収容部内の洗浄液を外部へと排出するための排出通路を有し、
前記洗浄ケースは、前記洗浄液給排装置からの洗浄液を前記収容部へと供給するための供給通路を有し、
前記棒状部材は、その外径が前記排出通路の内径と比較して大きく形成され、前記収容部内周と前記排出通路との境界の段差部に載置されて前記支持ケースに支持されることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の棒状部材の洗浄装置。
【請求項5】
棒状部材は、中実部材であり、
前記段差部には、前記収容部と前記排出通路とを連通し、通過する洗浄液の圧力が棒状部材の背面に作用する連通路が設けられ、
前記棒状部材は、自重及び前記連通路を通過する洗浄液の流体力によって、軸方向へ揺動しながら洗浄されることを特徴とする請求項4に記載の棒状部材の洗浄装置。
【請求項6】
前記段差部には、前記収容部内の洗浄液の圧力が棒状部材の背面に作用するように窪み部が形成されることを特徴とする請求項5に記載の棒状部材の洗浄装置。
【請求項7】
前記収容部の内周には、前記供給通路と前記連通路とをつなぐ溝通路が形成されることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の棒状部材の洗浄装置。
【請求項8】
棒状部材の洗浄を行った後、棒状部材に圧縮空気をブローし棒状部材の表面の水分を除去する水分除去装置をさらに備えることを特徴とする請求項3から請求項7のいずれか一つに記載の棒状部材の洗浄装置。
【請求項9】
前記水分除去装置は、前記支持ケースに対して着脱可能であり、前記収容部への圧縮空気の給排を行う空気給排装置を備え、
棒状部材は、前記収容部内へ供給されて排出される圧縮空気によって水分が除去されることを特徴とする請求項8に記載の棒状部材の洗浄装置。
【請求項10】
前記空気給排装置には、前記支持ケースと開放可能に連結され前記収容部を画成するブローケースが設けられることを特徴とする請求項9に記載の棒状部材の洗浄装置。
【請求項11】
前記支持ケースは、前記インデックステーブルによって棒状部材の洗浄を行う洗浄位置から棒状部材の水分の除去を行う水分除去位置へと搬送され、当該水分除去位置にて前記ブローケースによって密閉されることを特徴とする請求項10に記載の棒状部材の洗浄装置。
【請求項12】
前記洗浄ケース及び前記ブローケースを一体に、前記インデックステーブルと近づく又は離れる方向へと移動させる移動手段をさらに備え、
前記支持ケースは、前記インデックステーブルに複数支持され、
前記洗浄ケースと前記ブローケースとの間隔は、前記インデックステーブルに支持された支持ケースの間隔と同一であり、
前記移動手段によって、前記インデックステーブルの2つの前記支持ケースは、前記洗浄ケース及び前記ブローケースのそれぞれによって同時に密閉されることを特徴とする請求項11に記載の棒状部材の洗浄装置。
【請求項13】
棒状部材の洗浄を行う棒状部材の洗浄方法であって、
洗浄液を供給するための供給通路と洗浄液を排出するための排出通路とを有するケース内の収容部に棒状部材を収容し、
洗浄液を前記供給通路から前記収容部内へ供給して前記排出通路から排出することによって、棒状部材の洗浄を行うことを特徴とする棒状部材の洗浄方法。
【請求項14】
前記棒状部材は、自重及び前記収容部と前記排出通路とを連通する連通路を通過する洗浄液の流体力によって、軸方向へ揺動しながら洗浄されることを特徴とする請求項13に記載の棒状部材の洗浄方法。
【請求項15】
棒状部材の洗浄を行った後、
圧縮空気を供給するための供給通路と圧縮空気を排出するための排出通路とを有するケース内の収容部に棒状部材を収容し、
圧縮空気を前記供給通路から前記収容部内へ供給して前記排出通路から排出することによって、棒状部材の表面の水分の除去を行うことを特徴とする請求項13又は請求項14に記載の棒状部材の洗浄方法。
【請求項16】
前記棒状部材は、自重及び前記収容部と前記排出通路とを連通する連通路を通過する圧縮空気の流体力によって、軸方向へ揺動しながら水分が除去されることを特徴とする請求項15に記載の棒状部材の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−214050(P2009−214050A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−61596(P2008−61596)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】