説明

椅子の背凭れ装置

【課題】 ランバーサポートを背枠にねじ等を用いることなく、短時間で簡単に取付けできる椅子の背凭れ装置を提供する。
【解決手段】 背枠12の前面側に表皮材13を張設した椅子の背凭れ装置において、背枠12における左右のフレーム12Aの前面に、前方に開口する係合溝18を形成し、ランバーサポートの取付部材15の左右端に設けた係合部15aを、前記係合溝18に係合させるとともに、前記表皮材13を、前記係合部15aに前側から当接ないし近接させて背枠12の前面側に張設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランバーサポートを取付けた椅子の背凭れ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、椅子の背凭れにランバーサポートを取付けたものとしては、たとえば特許文献1のほか、本願出願人に係る特許文献2に記載されたものが公知である。
【0003】
【特許文献1】特表平8−507935号公報
【特許文献2】特開2004−49656号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1および2に記載されている従来のランバーサポートは、ランバーサポート支持部を背枠に固定する手段として、複数のねじを使用しているため、背枠へのランバーサポート支持部の取付け構造が複雑で、取付けに時間がかかるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、ランバーサポートを、ねじ等を用いることなく、短時間で簡単に背枠に取付けることができる、組立性に優れた椅子の背凭れ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、特許請求の範囲における各請求項に示すように、下記の構成を備える発明によって解決される。
(1) 背枠の前面側に表皮材を張設した椅子の背凭れ装置において、背枠における左右のフレームの前面に、前方に開口する上下方向の係合溝を形成し、ランバーサポートの取付部材の左右両端に設けた係合部を、前記係合溝に係合させるとともに、前記表皮材を、前記係合部に前側から当接ないし近接させて、背枠の前面側に張設する。
【0007】
(2) 上記(1)項において、ランバーサポートにおける取付部材の係合部の後面に、後方に開口する係合溝を設け、この係合溝における左右方向の外側の外壁を、背枠における左右のフレームの係合溝内に係合させるとともに、前記左右のフレームの係合溝における左右方向の内側の内壁を、前記取付部材における係合部の係合溝内に係合させる。
【0008】
(3) 上記(2)項において、ランバーサポートにおける取付部材の係合部の前面が、背枠における左右のフレームの前面とほぼ同一面、またはフレームの前面より若干後方になるようにする。
【0009】
(4) 上記(1)〜(3)項のいずれかにおいて、背枠の左右1対のフレームを、相互に平行をなす部分と、この下端部から下方に連続する左右方向の内向きに傾斜をなす部分とにより形成し、ランバーサポートの取付部材における係合部を、左右それぞれ上下に少なくとも2箇所設け、これら係合部の一部を、フレームの前記平行をなす部分に、同じく残部の係合部を、内向きに傾斜をなす部分にそれぞれ係合させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、次のような効果が奏せられる。
請求項1記載の発明によれば、ランバーサポートを、その取付部材における左右端の係合部を、背枠における左右のフレームの係合溝に係合させるだけで、ランバーサポートを、極めて簡単に短時間で背枠に取付けることができるとともに、背枠の前面側に張設された表皮材を、前記係合部に前側から当接ないし近接させてあるため、ランバーサポートが、背枠から脱落することもない。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、ランバーサポートにおける取付部の係合部と、背枠における左右のフレームの係合溝との係合が強固になされるため、ランバーサポートの背枠への取付強度が向上する。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、表皮材が係合部で前方に押し出されて突出し、背中に当たったり、美観を損なうことを防止することができる。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、ランバーサポートにおける取付部材の上下方向の動きが阻止され、ランバーサポートを背枠に安定して取付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の背凭れ装置を備えた椅子の正面図、図2は、その側面図である。椅子は、先端部にキャスタ(1)が設けられた放射状をなす5本の脚杆(2)を有する脚体(3)を備え、脚体(3)の中央には、ガススプリング(図示せず)を備える伸縮性の脚柱(4)が立設されており、脚柱(4)の上端には、支基(5)の後部が固着されている。支基(5)の前部両側面には、左右に延出する腕部(5a)が一体的に形成されている。
【0015】
支基(5)の前後方向のほぼ中央には、左右方向を向く六角軸よりなる枢軸(6)が貫通しており、枢軸(6)の両端には、背凭れ(7)を支持する左右1対の背凭れ支持杆(8)(8)における前方を向く下部の前端部に形成された左右方向を向く筒部(8a)(8a)が固嵌され、枢軸(6)と背凭れ支持杆(8)(8)と背凭れ(7)とは、枢軸(6)を中心として、互いに一体となって支基(5)に対して回動し得るようになっている。
【0016】
左右の背凭れ支持杆(8)(8)における枢軸(6)より若干後方の部分には、短寸の起立腕(8b)(8b)が上向きに突設されており、各起立腕(8b)(8b)の上端部には、座(9)の両側を支持する前後方向を向く1対の座受けフレーム(10)(10)の後端部が、左右方向を向く軸(11)をもって、それぞれ連結されている。背凭れ(7)は、背枠(12)と、その表面に張設されたネット部材や多孔性シート部材などからなる表皮材(13)とを有し、表皮材(13)の内側には、後述するランバーサポート(R)が設けられている。各背凭れ支持杆(8)には、肘掛け(14)が取付けられている。
【0017】
図3は、表皮材を除いた背凭れの正面図、図4は、図1のIV-IV線断面端面図、図5は、要部の分解断面図である。
図3〜図5に示すように、ランバーサポート(R)は、硬質の取付部材(15)と、サポート杆(16)と、軟質のカバー部材(17)とよりなっている。
【0018】
背枠(12)における左右のフレーム(12A)(12A)の前面には、前方に開口する上下方向の係合溝(18)(18)が形成されている。図5に示すように、この係合溝(18)の内壁(19a)の前端(19b)は、外壁(19c)の前面(12a)より距離(L)だけ後退している。ランバーサポート(R)における取付部材(15)の両側端の係合部(15a)の後面には、後方に開口する上下方向の係合溝(21)が設けられている。左右のフレーム(12A)の係合溝(18)内に係合部(15a)の外壁(20)が係合されるとともに、係合部(15a)の係合溝(21)内に、左右のフレーム(12A)の内壁(19)が係合されている。
【0019】
なお、ランバーサポート(R)の取付部材(15)の係合部(15a)を、左右のフレーム(12A)(12A)の係合溝(18)に係合させる際には、前記係合部(15a)を平面視後向き凸状に少しばかり湾曲させることにより、容易に係合させることができるが、左右のフレーム(12A)(12A)を、左右方向における外側端縁より内側端縁に後傾するように形成しておけば、前記係合は一層容易になる。
【0020】
図4に示すように、ランバーサポート(R)における係合部(15a)の前面(15b)は、背枠(12)における左右のフレーム(12A)の前面(12a)とほぼ同一面、または若干後方に位置する構成となっている。背枠(12)における左右のフレーム(12A)の左右外側端面に形成されたスリット(12b)には、背凭れ(7)の表皮材(13)の端部が取付けられている。ランバーサポート(R)における取付部材(15)の係合部(15a)は、背枠(12)における左右のフレーム(12A)の前側に張設された表皮材(13)に当接しており、これにより、ランバーサポート(R)の背枠(12)からの脱落が防止されている。
【0021】
図6および図7は、それぞれ図1のVI-VI線およびVII-VII線断面端面図である。
図4、図6および図7に示すように、取付部材(15)の前面における左右方向中央部には、浅い凹凸部(22a)が高さ方向に連続して形成されている樹脂製の係止部材(22)が設けられ、かつ、その左右両側には、高さ方向に延びる左右外側向きのレール部材(23)(23)が、ねじ(24)(24)により取付けられている。
【0022】
サポート杆(16)の後面には、レール部材(23)によりガイドされるガイド部(26)が形成され、かつ、中央には、平面視前向広幅コ字状の弾性係止部材(27)が設けられている。弾性係止部材(27)の後面中央部には、前記凹凸部(22a)に弾性係止する係止凸部(27a)が形成されている。サポート杆(16)の前面に設けられた左右方向の凸条(29)の前面には、多数のリブ(28)が突設され、かつ、サポート杆(16)の左右両端には、取っ手(30)(30)が設けられている。なお、リブ(28)を設けることにより、クッション作用が発揮され、かつ材料が節減されるが、サポート杆(16)の前面をリブのない弧状の形状としてもよい。
【0023】
図6および図7に示すように、取付部材(15)の上下端縁の取付部(31)には、カバー部材(17)が取付けられている。このカバー部材(17)は、軟質のもので、上記リブ(29)の前面から若干離間して、サポート杆(16)の前方および上下を覆うように、上記表皮材(13)の後方に設けられている。
【0024】
ランバーサポート(R)の背枠(12)への組付けは、次のようにして行う。背枠(12)には、予め表皮材(13)が張設されている。サポート杆(16)およびカバー部材(17)が組付けられている取付部材(15)の係合部(15a)を、表皮材(13)の後面を押しながら背枠(12)の前方に位置させ、ランバーサポート(R)の係合部(15a)を、背枠(12)における左右のフレーム(12A)の係合溝(18)に係合させる。これにより、図4に示すように、表皮材(13)の張力で係合部(15a)の前面が後方向きに押圧され、ランバーサポート(R)の背枠(12)からの脱落が防止される。
【0025】
また、図3に示すように、背枠(12)の左右のフレーム(12A)(12A)は、相互に平行をなす部分(12A1)(12A1)と、この下端部から下方に連続する左右方向の内向きに傾斜をなす部分(12A2)(12A2)とにより形成され、この平行をなす部分(12A1)と、傾斜をなす部分(12A2)の2箇所において係合部(15a)が係合されているため、この傾斜をなす部分(12B)の係合により、取付部材(15)の上下移動が阻止される。したがって、取付部材(15)は、ねじ等の固定手段を使用することなく、確実に背枠(12)に固定される。
【0026】
図8は、サポート杆(16)の作動状態を示すもので、図8(a)は、サポート杆(16)を最上部に移動させた状態、図8(b)は、サポート杆(16)を最下部に移動させた状態をそれぞれ示している。なお、実線(32)は、座(9)に着座した人の背中を表している。サポート杆(16)を移動させるときは、取っ手(30)を持って上下に移動させることにより、サポート杆(16)のガイド部(26)がレール部材(23)に沿ってスライドするとともに、弾性係止部材(27)の係止凸部(27a)が係止部材(22)の凹凸部(22a)に当接した状態でスライドし、係止部材(22)の任意の位置に係止して保持される。これにより、サポート杆(16)を、着座した人に最も適した位置に保持することができる。
【0027】
なお、レール部材(23)をサポート杆(16)に、ガイド部(26)を取付部材(15)に設けた構成、あるいは、係止部材(22)をサポート杆(16)に、弾性係止部材(27)を取付部材(15)に設けた構成としてもよい。
以上のように、背枠(12)の左右両側の係合溝(18)に、ランバーサポート(R)の取付部材(15)の両端の係合部(15a)を係合させることにより、ねじ等の固定部品を使用することなく、かつ、背枠(12)に表皮材(13)を張設した状態で、短時間で取付部材(15)を背枠(12)に容易に取付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の背凭れ装置を備えた椅子の正面図である。
【図2】同じく、側面図である。
【図3】本発明の椅子の背凭れ装置の一実施形態を示す正面図である。
【図4】同じく、図3のIV-IV線断面端面図である。
【図5】同じく、背枠と取付部材の分解断面図である。
【図6】同じく、図3のVI-VI線断面端面図である。
【図7】同じく、図3のVII-VII線断面端面図である。
【図8】同じく、(a)はサポート部材の上限位置、(b)は下限位置を、それぞれ示す断面端面図である。
【符号の説明】
【0029】
(1)キャスタ
(2)脚杆
(3)脚体
(4)脚柱
(5)支基
(5a)腕部
(6)枢軸
(7)背凭れ
(8)支持杆
(8a)筒部
(8b)起立腕
(9)座
(10)座受けフレーム
(11)軸
(12)背枠
(12a)前面
(12b)スリット
(12A)左右のフレーム
(12A1)平行をなす部分
(12A2)傾斜をなす部分
(13)表皮材
(14)肘掛け
(15)取付部材
(15a)係合部
(15b)前面
(16)サポート杆
(17)カバー部材
(18)係合溝
(19a)内壁
(19b)前端
(19c)外壁
(20)外壁
(21)係合溝
(22)係止部材
(22a)凹凸部
(23)レール部材
(24)ねじ
(26)ガイド部
(27)弾性係止部材
(27a)弾性係止部材
(28)リブ
(29)凸条
(30)取っ手
(31)取付部
(32)実線
(R)ランバーサポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背枠の前面側に表皮材を張設した椅子の背凭れ装置において、背枠における左右のフレームの前面に、前方に開口する上下方向の係合溝を形成し、ランバーサポートの取付部材の左右両端に設けた係合部を、前記係合溝に係合させるとともに、前記表皮材を、前記係合部に前側から当接ないし近接させて、背枠の前面側に張設したことを特徴とする椅子の背凭れ装置。
【請求項2】
ランバーサポートにおける取付部材の係合部の後面に、後方に開口する係合溝を設け、この係合溝における左右方向の外側の外壁を、背枠における左右のフレームの係合溝内に係合させるとともに、前記左右のフレームの係合溝における左右方向の内側の内壁を、前記取付部材における係合部の係合溝内に係合させたことを特徴とする請求項1記載の椅子の背凭れ装置。
【請求項3】
ランバーサポートにおける取付部材の係合部の前面が、背枠における左右のフレームの前面とほぼ同一面、またはフレームの前面より若干後方になるようにしたことを特徴とする請求項2記載の椅子の背凭れ装置。
【請求項4】
背枠の左右1対のフレームを、相互に平行をなす部分と、この下端部から下方に連続する左右方向の内向きに傾斜をなす部分とにより形成し、ランバーサポートの取付部材における係合部を、左右それぞれ上下に少なくとも2箇所設け、これら係合部の一部を、フレームの前記平行をなす部分に、同じく残部の係合部を、内向きに傾斜をなす部分にそれぞれ係合させたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の椅子の背凭れ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−110014(P2006−110014A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−299345(P2004−299345)
【出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】