説明

椅子の脚柱及び脚柱へのオプション部材の取付構造

【課題】オプション部材が上下方向に位置ずれするのを防止しうるようにするとともに、外周面に設けた表示部が、オプション部材によって摩滅することのないようにした椅子の脚柱を提供する。
【解決手段】外周面にオプション部材18を取付け可能な椅子の脚柱4であって、外周面に、前記オプション部材18を上下に選択的に係合可能な水平方向を向く上下複数の係合溝13を設け、かつ前記外周面における係合溝13の非形成部分に、上下方向を向く凹溝12を設け、この凹溝12の底面を、オプション部材18の取付け高さを示すための表示部14とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば足載せ台等のオプション部材を高さ調節可能に取付けるための椅子の脚柱及び脚柱へのオプション部材の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば家庭で学習用に使用する子供用の椅子の中には、着座した子供の足が床に届かない場合に備えて、座を支持する脚柱に足載せ台を取付けたものがあり、また、このような足載せ台を、子供の成長に合わせて高さを調節可能としたり、不要となった際には取り外したりしうるようにしたものが種々提案されている(例えば特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−181614号公報
【特許文献2】実用新案登録第3097290号公報
【特許文献3】実用新案登録第3143021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1〜3に記載されている椅子の脚柱は、いずれも、外周面が滑らかな円柱状をなしており、この脚柱に足載せ台を取付ける際には、足載せ台の中心部に形成された上下方向と後方に開口する係合凹部を嵌合し、係合凹部の開口端部に設けたねじ受け部材を、それに取付けた締付手段をもって締め付けることにより、係合凹部の内面を脚柱の外周面に圧接させて、脚柱に足載せ台を固定するようにし、また締付手段を緩めることにより、足載せ台の高さを調節しうるようになっている。
【0005】
上記特許文献に記載されているような脚柱及び足載せ台の取付構造においては、足載せ台は、その係合凹部の内面と脚柱の外周面との摩擦力のみで、上下方向に移動するのが防止されているので、子供等が不用意に締付手段を緩めたり、椅子の使用中に締付手段が多少でも緩んだりすると、足載せ台が、それに載せた足の荷重や自重により下方に移動し、脚柱への取付位置がずれる恐れがある。
また、脚柱に対し、足載せ台を回転方向に位置決めしたり、回り止めするための手段を備えていないので、足載せ台を所定の向きに位置決めして脚柱に取付ける際の位置決め作業が面倒であり、かつ締付手段が多少でも緩むと、足載せ台が脚柱回りに回動して位置ずれする恐れがある。
【0006】
また、子供等が足載せ台の高さを調節する際の目安とするために、例えば脚柱の外周面に、足載せ台の上下位置を確認しうる目盛りや、目盛り付きのシール等の表示部を設けることが望ましいが、このような目盛り等の表示部を、単に上記のような脚柱の外周面に直接設けると、足載せ台の高さ調節時に表示部が擦れて摩滅し、目盛りが見えにくくなる恐れがある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、締付手段に緩みが生じたとしても、オプション部材が上下方向に移動したり、回動したりするなど、脚柱に対し位置ずれするのを防止しうるようにするとともに、脚柱にオプション部材を安定よく取り付けうるようにし、さらに、オプション部材取付時の位置決めが容易で、かつ脚柱の外周面に設けた表示部が、オプション部材によって摩滅することのないようにした、椅子の脚柱及び脚柱への足載せ台の取付構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、上記課題は、次の各項のようにして解決される。
(1)外周面にオプション部材を取付け可能とした椅子の脚柱であって、外周面に、前記オプション部材を上下に選択的に係合可能な水平方向を向く上下複数の係合溝または係合突条を設け、かつ前記外周面における前記係合溝または係合突条の非形成部分に、上下方向を向く凹溝を設け、この凹溝の底面を、前記オプション部材の取付け高さを示すための表示部とする。
【0009】
このような構成とすると、脚柱の外周面に、オプション部材を、高さ調節可能に、かつ上下方向の位置ずれを防止して取付けることができる。
また、外周面に設けた凹溝の底面を、オプション部材の取付け高さを示す表示部としているので、オプション部材の高さを調節する際に、オプション部材が表示部と接触することはなく、従って、表示部が摩滅して見えにくくなるのを防止することができる。
さらに、凹溝にオプション部材の一部を係合させることにより、凹溝を、オプション部材の回転方向の位置決めや、回り止め手段として使用することができる。
【0010】
(2)上記(1)項において、係合溝または係合突条の長さ方向の両端を、凹溝の両側縁において終端させる。
【0011】
このような構成とすると、幅広の凹溝を設けたとしても、この凹溝を挟んで、係合溝または係合突条にオプション部材を広範囲に係合させることができる。
【0012】
(3)上記(1)または(2)項において、係合溝と凹溝との底面を同一面に連続させる。
【0013】
このような構成とすると、係合溝と凹溝とが連続する部分に段差が生じないので、脚柱の成形や溝の加工が容易となるとともに、表示部も外部から視認し易くなる。
【0014】
(4)上記(1)〜(3)項のいずれかに記載の椅子の脚柱へのオプション部材の取付構造であって、上下方向の厚さを脚柱の外周面に設けた凹溝の上下寸法よりも小とした前記オプション部材の取付部に、上下方向と一側方とに開口する係合凹部を設け、この係合凹部を椅子の脚柱に嵌合し、かつ前記係合凹部内に配設した押圧部材と、それに対向する前記係合凹部の内面とにより前記脚柱を挟み、前記押圧部材と前記係合凹部との対向面の少なくともいずれか一方に設けた係合突条または係合溝を、前記脚柱の係合溝または係合突条に選択的に係合し、前記オプション部材に設けた締付手段をもって、前記押圧部材を前記係合凹部の奥部に向かって締め付け、この押圧部材と前記係合凹部との互いに対向する押圧面を前記脚柱の外周面に圧接させることにより、オプション部材を脚柱に取付けるようにする。
【0015】
このような構成とすると、脚柱の外周面に設けた係合溝または係合突条に、押圧部材の内面と係合凹部の内面とのいずれか一方に設けた係合突条または係合溝を係合させた状態で、締付手段をもって脚柱の外周面にオプション部材を取付けることにより、締付手段に緩みが生じたとしても、オプション部材が上下方向に移動する恐れはない。
また、押圧部材と係合凹部との対向面の押圧面を、脚柱の外周面に圧接させているので、脚柱に、オプション部材を、安定よく強固に取付けることができる。
【0016】
(5)上記(4)項において、押圧部材と前記係合凹部との対向面のいずれか一方に、脚柱の凹溝の両側縁に係合する係合突部を設ける。
【0017】
このような構成とすると、簡単な構成で、脚柱に、オプション部材を、回転方向に位置決めして容易に取り付けることができ、かつ締付手段に緩みが生じても、オプション部材が脚柱回りに回動するのが防止される。
【0018】
(6)上記(4)または(5)項において、係合凹部または押圧部材に設けた係合突条の突出寸法を、脚柱の係合溝及び凹溝の深さよりも小とする。
【0019】
このような構成とすると、係合凹部または押圧部材に設けた係合突条の先端が、脚柱の係合溝及び凹溝の底面と当接して、薄肉となった脚柱の係合溝及び凹溝の底面を強く押圧することがないので、脚柱が変形するのが防止される。
【0020】
(7)上記(4)〜(6)項のいずれかにおいて、押圧部材に設けた係合突条または係合溝を、少なくとも上下2個とし、それらを、脚柱における互いに隣接する上下2個の係合溝または係合突条に選択的に係合するようにし、かつ上下2個の係合溝または係合突条との間に、脚柱の外周面に圧接する押圧面を有する押圧突部を設ける。
【0021】
このような構成とすると、脚柱の外周面に、オプション部材を上下方向の位置ずれを防止して、より安定よく取り付けうるとともに、互いに隣接する上下2個の係合溝または係合突条間において、脚柱の外周面に、押圧突部の押圧面が広範囲に圧接するので、互いの接触面積を大として、摩擦力を大きくすることができる。
【0022】
(8)上記(4)〜(7)項のいずれかにおいて、オプション部材を足載せ台とする。
【0023】
このような構成とすると、締付手段に緩みが生じても、足の荷重が加わる足載せ台が下方へ移動する恐れはなく、足載せ台を脚柱に安定よく取付けることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の脚柱によれば、脚柱の外周面に、オプション部材を、高さ調節可能に、かつ上下方向の位置ずれを防止して取付けることができる。
また、外周面に設けた凹溝の底面を、オプション部材の取付け高さを示す表示部としているので、オプション部材の高さを調節する際に、オプション部材が表示部と接触することはなく、従って、表示部が摩滅して見えにくくなるのを防止することができる。
さらに、凹溝にオプション部材の一部を係合させることにより、凹溝を、オプション部材の回転方向の位置決めや、回り止め手段として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施形態を備える椅子の前方斜視図である。
【図2】同じく、足載せ台取付け時の椅子の要部の拡大斜視図である。
【図3】同じく、足載せ台取付け前の椅子の要部の分解斜視図である。
【図4】押圧部材の前方拡大斜視図である。
【図5】足載せ台取付部の拡大中央縦断側面図である。
【図6】図5のVI-VI線に沿う横断面図である。
【図7】図5のVII-VII線に沿う横断面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態における図6と同部位の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態を備える椅子の斜視図で、この椅子は、先端部にキャスタ1を有する放射方向を向く5本の脚杆2よりなる脚体3と、その中央に立設された脚柱4と、脚柱4の上端部に水平回転可能に取付けた支基(図示略)により支持された座体5と、支基の後端部の両側部より起立する背杆6、6の上端部に、左右1対の下方を向く背枠7、7を介して取付けられた背凭れ8とを備えている。
【0027】
図5に示すように、脚柱4は、上端に支基が取付けられた伸縮脚9と、下端部が脚体3の中央に固着され、内部に収容した伸縮脚9を伸長させるガススプリング10と、ガススプリング10を覆うようにして、脚体3の中央に下端部が固着された合成樹脂よりなる円筒形のカバー脚11とからなっている。
【0028】
図3及び図6に示すように、カバー脚11における後部の外周面には、縦長長方形状の凹溝12が、ほぼ全長に亘って形成されている。
また、カバー脚11における凹溝12を除いた外周面には、水平方向を向く円弧状の上下複数の係合溝13が、凹溝12と連なるように、すなわち係合溝13の円周方向の両端が凹溝12の両側縁において終端するように、かつ凹溝12と各係合溝13との底面とが、互いに同一面に連続するようにして、一定間隔おきに形成されている。
【0029】
凹溝12の底面は、後記する足載せ台18の取付け高さを示すための表示部14とされ、本実施形態では、この表示部14に、足載せ台18の高さを段階的に調節する際の目安とする目盛り15を付した目盛りシール16を貼着してある。目盛り15は、各係合溝13と等高をなす位置に付してある。なお、このような目盛りシール16の代わりに、例えばカバー脚11の成形時において、凹溝12の底面に目盛りを直接設けてもよい。
【0030】
図6に示すように、カバー脚11の前面には、上下方向を向くスリット17が、上端部付近から下端まで形成され、カバー脚11は、このスリット14の溝幅分だけ縮径方向に弾性変形しうるようになっている。
【0031】
カバー脚11には、オプション部材としての足載せ台18が、次のようにして取付けられている。
図2〜図7に示すように、足載せ台18は、その中心部に形成され、かつ上下方向の厚さを上記カバー脚11に設けた凹溝12の上下寸法より小とした、カバー脚11に固定可能な取付部19と、その外周面より、椅子の前方(図5の左方)と両側方に向かって放射状に延出する3本の連結杆20と、各連結杆20の先端に接続された、取付部19を中心とする平面視ほぼC字形の足載せ部21と、取付部19をカバー脚11の外周面に締め付ける締付手段22とを備えている。
【0032】
取付部19は、互いにほぼ平行をなして後方を向く左右1対の挟持片19a、19aを有し、内側には、後方と上下両方向に開口する平面視後向きU字状の係合凹部23が形成され、この係合凹部23の前部側の半円状の内周面は、カバー脚11の前半部の外周面と面接触しうるようになっている。
係合凹部23における前下部の内面には、カバー脚11の前側の上下複数の係合溝13に前方より選択的に係合可能な水平かつ円弧状をなす係合突条24が突設されている。なお、この係合突条24の突出寸法は、係合溝13の深さよりも若干小とされ、係合突条24を係合溝13に係合させた際に、係合突条24の先端が係合溝13の底面に当接しないようにしてある。
【0033】
係合凹部23の開口端部、すなわち取付部19における両挟持片19aの後端部の対向面には、内向突部25、25が対向状に突設され、両内向突部25における脚柱4と対向する前面には、上下方向を向く係止突部26、26が、前向きに突設されている。なお、両内向突部26、26の対向面間の寸法は、脚柱4の伸縮脚9の外径よりも若干大とされ、取付部19を、伸縮脚9に、それと直交するいずれの方向からでも嵌合しうるようにしてある。
【0034】
取付部19の係合凹部23には、前面が開口された縦断及び横断面形がコ字状をなす合成樹脂製の箱状の押圧部材27が、カバー脚11の後面と対向するようにして収容されている。
【0035】
締付手段22は、係合凹部23の後方の開口端部内に、その部分を塞ぐようにして嵌合された合成樹脂製のねじ受け部材28と、その内部の後述するナット35に螺合される締付ねじ29とからなり、押圧部材27の後部は、ねじ受け部材28の前面に設けた凹部28bに相対移動可能に嵌合されている。なお、押圧部材27とねじ受け部材28の上下寸法は、それらを係合凹部23に嵌合した際に、取付部19の上下両面から突出しないように、その上下寸法よりも若干小としてある。
【0036】
図4の拡大斜視図に示すように、押圧部材27におけるカバー脚11の後面との対向部には、左右1対の押圧突部30、30が前向きに突設され、両押圧突部30の前面は、カバー脚11の後面における凹溝12を挟む外周面に面接触可能な円弧状押圧面30aとされている。なお、左右の押圧突部30を、後記するE型リング40の挿入に必要な空間を残して連続するものとし、左右に連続する押圧突部30の全面を、円弧状押圧面30aとすることもできる。
【0037】
押圧部材27の上縁と下縁には、上下1対の前向片31、31が、左右の押圧突部30を上下から挟むようにしてこれと一体的に形成され、両前向片31における押圧突部30の円弧状押圧面30aより若干前方に突出する前端部は、カバー脚11の後面の上下に隣接する2個の係合溝13に後方より選択的に係合可能な、水平かつ円弧状の係合突条31a、31aとされている。この両係合突条31aの円弧状押圧面30aからの突出寸法は、係合溝13の深さよりも若干小としてあり、押圧突部30の円弧状押圧面30aをカバー脚11の外周面に当接させた際に、係合突条31aの先端が、凹溝12と係合溝13の底面に当接しないようになっている。
また、下部の係合突条31aと、係合凹部23の前下部の内周面に突設した係合突条24とは、同一高さに整合するようになっている。
【0038】
締付ねじ29は、回動操作用の合成樹脂製の操作ノブ32と、インサート成形により後部が操作ノブ32の中心部に固定された前方を向くボルト33とからなり、ボルト33は、ねじ受け部材28の中央部に穿設された前後方向を向く通孔34に後方より挿入され、ねじ受け部材28の内部にインサート成形により固定されたナット35に螺合されるようになっている。なお、ナット35の代わりに、ねじ受け部材28に、ボルト33が螺合されるめねじ孔を穿設してもよい。
ボルト33の先端は、小径軸33aとなっている。
【0039】
押圧部材27の両側部後面に形成された後方に開口する上下方向の長孔36、36には、平面視コ字状の押圧金具37における左右両側の前向片37a、37aが後方より嵌合され、押圧金具37の前面は、押圧部材27の後面に当接するようになっている。なお、このような押圧金具37は省略することもある。
【0040】
押圧部材27の後面と押圧金具37との中央部に形成された通孔38、38には、上記ボルト33の小径軸33aが後方より回動可能に嵌合され、嵌合後において、小径軸33aの先端部の環状溝39にE型リング40を止着することにより、締付ねじ29は、後方に抜け止めされるようになっている。
【0041】
ねじ受け部材28の両側面の中間部に突設された外向突部28a、28aには、上記係止突部26と反対方向である後方に開口する係合孔41、41が形成され、両係合孔41を、取付部19の後端部の前方を向く係止突部26、26に嵌合することにより、ねじ受け部材28は、取付部19の係合凹部23内において、上下方向への移動と、脱落するのが阻止されている(図6参照)。
また、左右の外向突部28a、28aの後面が、左右の内向突部25、25の前面に当接することにより、ねじ受け部材28は、係合凹部23の開口端部に、後方に抜け止めされて嵌合されている。
【0042】
足載せ台18を脚柱4に取付けるには、まず伸縮脚9に、取付部19の係合凹部23を、椅子の前方より嵌合する。
【0043】
ついで、この状態において、伸縮脚9の後方に形成される係合凹部23に、予め組み付けられた、押圧部材27、押圧金具37、ねじ受け部材28、及び締付ねじ29を、カバー脚11の後面と対向するように嵌合する。この際に、係合凹部23の開口端部の左右の係止突部26、26に、ねじ受け部材28の両側部の係合孔41、41を嵌合することにより、押圧部材27、ねじ受け部材28及び締付ねじ29全体が、係合凹部23より脱落するのが防止され、係合凹部23内に仮保持される。
【0044】
ついで、締付ねじ29を緩めて、押圧部材27を後限付近まで後方に移動させてから、足載せ台18を下降させ、取付部19における係合凹部23の奥面と押圧部材27の前面とにより、カバー脚11の外周面を前後より挟持する。
【0045】
ついで、係合凹部23の内面の係合突条24と、押圧部材27の前端部の上下の係合突条31a、31aとを、それぞれ、カバー脚11の外周面の上下複数の係合溝13のいずれかに、前方及び後方より選択的に係合させる。なお、押圧部材27の上下1対の係合突条31aは、凹溝12を横切るようにして、上下に隣接する係合溝13に係合される。
【0046】
この状態で、締付ねじ29を締め込むと、図5〜図7に示すように、ボルト33の先端面により、押圧金具37及び押圧部材27が前方に押動されることにより、係合凹部23の前部側の円弧状をなす押圧面がカバー脚11の前面側の外周面に、押圧部材27における左右の押圧突部30、30の円弧状押圧面30a、30aが、カバー脚11の後面側の外周面に、それぞれ強く面接触し、足載せ台18は、カバー脚11の任意の高さに強固に固定される。
この際、係合突条24、31aの突出寸法は、係合溝13の深さよりも若干小とされているので、係合突条24、31aの先端が係合溝13の底面に圧接することはなく、それらの対向面に若干の隙間が形成されるようになる(図5、図7参照)。従って、係合溝13と係合突条24、31aは、足載せ台18の高さを段階的に調節するための上下方向の位置決め手段と落ち止め手段としての機能を有している。
【0047】
カバー脚11の外周面には、上下方向を向くスリット17が設けられ、締付ねじ29の締付時の押圧荷重がスリット17により逃がされるので、カバー脚11の締付部が局部的に楕円形等に変形するのが防止される。
【0048】
足載せ台18の高さを調節する際は、締付ねじ29を緩めて、前後の係合突条24、31aを係合溝13より離脱させ、それらを、別の任意の係合溝13に嵌合させて、再度締付ねじ29を締め込めばよく、これにより、足載せ台18の高さを段階的に調節することができる。
【0049】
以上説明したように、上記実施形態においては、脚柱4の一部をなすカバー脚11の外周面に、円周方向を向く係合溝13を、上下複数設け、それらの任意の係合溝13に、足載せ台18の係合凹部23の内面に突設した円弧状の係合突条24と、押圧部材27の前端部に設けた上下1対の円弧状の係合突条31a、31aとを係合させて、カバー脚11に足載せ台18を固定しているので、締付ねじ29に多少の緩みが生じたとしても、足載せ台18が上下方向に位置ずれする恐れはない。特に、足載せ台18に載せた足の荷重や自重により下方に移動するのが確実に防止される。
【0050】
また、足載せ台18は、その係合凹部23の前部側の内面をカバー脚11の前面側の外周面に面接触させるとともに、押圧部材27における左右の押圧突部30、30の円弧状押圧面30a、30aを、カバー脚11の後面側の外周面に面接触させて、カバー脚11を前後から挟圧しているので、カバー脚11に対する足載せ台18と押圧部材27との接触面積が比較的大きく、従って、足載せ台18をカバー脚11に強固に固定することができる。
しかも、この際に、係合凹部23の内面に突設した係合突条24と、押圧部材27の上下の係合突条31a、31aとの先端は、係合溝13の底面に圧接せず、それらの間に隙間が形成されるようにしてあるので、カバー脚11における薄肉となった凹溝12や係合溝13の底面が、係合突条24、31aの先端により強圧されることはなく、カバー脚11における係合溝13の形成部が変形するのが防止される。
【0051】
さらに、カバー脚11の外周面における係合溝13の非形成部分に、上下方向を向く凹溝12を設け、この凹溝12の底面を表示部14として、この表示部14に、足載せ台18を段階的に調節する際の目安とする目盛りシール16を貼着してあるので、足載せ台18の高さを調節する際に、押圧部材27におけるカバー脚11との対向面等が、目盛りシール16の表面に摺接することがなく、従って、足載せ台18の高さを繰り返し何度調節しても、目盛りシール16に付した目盛り15が擦れて摩滅し、それが見えにくくなるという問題の生じる恐れはない。なお、表示部14に直接目盛りを設けた際にも同じ効果が得られる。
【0052】
図8は、本発明の第2の実施形態の横断平面図で、この第2の実施形態においては、押圧部材27におけるカバー脚11の凹溝12と対向する前面に、1個または上下複数の係合突部42を前向きに突設し、この係合突部42の先端部を、凹溝12に後方より着脱可能、かつ上下方向に摺動可能に係合させるようにしたものである。この際、係合突部42の先端部の両側縁が、凹溝13の両側縁に係合するようにし、係合突部42の先端が凹溝12の底面と当接しないようにするのが好ましい。
【0053】
このように、係合突部42の先端部を、凹溝12の両側縁に係合させると、カバー脚11に足載せ台18を取付ける際に、これを位置決めしうるとともに、締付ねじ29が緩んだとしても、足載せ台18がカバー脚11回りに回動するのを防止することができる。すなわち、押圧部材27に係合突部42を設けることにより、凹溝12を、上記第1の実施形態の表示部14に代えて、足載せ台18の回転方向の位置決めや、回り止め手段として使用することができる。なお、凹溝12を位置決めや回り止め手段として使用した際でも、その底面に目盛りシール16を貼着して表示部14とすることができる。この際にも、足載せ台18の高さを調節する際に、係合突部42の先端が表示部14と接触して、表示部14が摩滅するのを防止することができる。
【0054】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
上記実施形態では、凹溝12を、カバー脚11の後面に設けているが、カバー脚11の外周面の任意の箇所に設けることができる。例えば、凹溝12をカバー脚11の前面に設けた際には、それと対向する係合凹部23の内面に上記のような係合突部42を設け、この係合突部42を凹溝12に係合することにより、足載せ台18を回り止めすることができる。
【0055】
また、上記実施形態では、係合溝13を、凹溝12と連通する欠円形をなすものとしたが、少なくとも係合突条24、31aが係合可能な不連続の円弧状とすることもある。
【0056】
さらに、上記実施形態では、足載せ台18の係合凹部23の内面と押圧部材27とに係合突条24、31aを設け、それらを係合溝13に係合させているが、係合突条24、31aのいずれか一方を省略することもある。
【0057】
上記実施形態とは反対に、カバー脚11の係合溝13を係合突条とし、これに、係合凹部23の内面及び押圧部材27の押圧突部30の前面に設けた係合突条を係合させるようにすることもできる。
【0058】
足載せ台18の係合凹部23の内面に設けた係合突条24を、上下2個またはそれ以上、押圧部材27の先端に設けた係合突条31aを、2個以上とすることもある。
【0059】
上記実施形態では、脚柱であるカバー脚11を、円筒形をなすものとしたが、楕円や角形断面等の非円形をなす脚柱にも本発明を適用することができる。
また、上記実施形態では、オプション部材を足載せ台18とした例を説明したが、他のオプション部材、例えば小物の物品を載置したり、収容したりする物品載置台やトレー等のオプション部材を取付ける際にも、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 キャスタ
2 脚杆
3 脚体
4 脚柱
5 座体
6 背杆
7 背枠
8 背凭れ
9 伸縮脚
10 ガススプリング
11 カバー脚
12 凹溝
13 係合溝
14 表示部
15 目盛り
16 目盛りシール
17 スリット
18 足載せ台(オプション部材)
19 取付部
19a挟持片
20 連結杆
21 足載せ部
22 締付手段
23 係合凹部
24 係合突条
25 内向突部
26 係止突部
27 押圧部材
28 ねじ受け部材
28a外向突部
28b凹部
29 締付ねじ
30 押圧突部
30a円弧状押圧面
31 前向片
31a係合突条
32 操作ノブ
33 ボルト
33a小径軸
34 通孔
35 ナット
36 長孔
37 押圧金具
37a前向片
38 通孔
39 環状溝
40 E型リング
41 係合孔
42 係合突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面にオプション部材を取付け可能とした椅子の脚柱であって、
外周面に、前記オプション部材を上下に選択的に係合可能な水平方向を向く上下複数の係合溝または係合突条を設け、かつ前記外周面における前記係合溝または係合突条の非形成部分に、上下方向を向く凹溝を設け、この凹溝の底面を、前記オプション部材の取付け高さを示すための表示部としたことを特徴とする椅子の脚柱。
【請求項2】
係合溝または係合突条の長さ方向の両端を、凹溝の両側縁において終端させてなる請求項1記載の椅子の脚柱。
【請求項3】
係合溝と凹溝との底面を同一面に連続させてなる請求項1または2記載の椅子の脚柱。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の椅子の脚柱へのオプション部材の取付構造であって、
上下方向の厚さを脚柱の外周面に設けた凹溝の上下寸法よりも小とした前記オプション部材の取付部に、上下方向と一側方とに開口する係合凹部を設け、この係合凹部を椅子の脚柱に嵌合し、かつ前記係合凹部内に配設した押圧部材と、それに対向する前記係合凹部の内面とにより前記脚柱を挟み、前記押圧部材と前記係合凹部との対向面の少なくともいずれか一方に設けた係合突条または係合溝を、前記脚柱の係合溝または係合突条に選択的に係合し、前記オプション部材に設けた締付手段をもって、前記押圧部材を前記係合凹部の奥部に向かって締め付け、この押圧部材と前記係合凹部との互いに対向する押圧面を前記脚柱の外周面に圧接させることにより、オプション部材を脚柱に取付けるようにしたことを特徴とする椅子の脚柱へのオプション部材の取付構造。
【請求項5】
押圧部材と係合凹部との対向面のいずれか一方に、脚柱の凹溝の両側縁に係合する係合突部を設けてなる請求項4記載の椅子の脚柱へのオプション部材の取付構造。
【請求項6】
係合凹部または押圧部材に設けた係合突条の突出寸法を、脚柱の係合溝及び凹溝の深さよりも小としてなる請求項4または5記載の椅子の脚柱へのオプション部材の取付構造。
【請求項7】
押圧部材に設けた係合突条または係合溝を、少なくとも上下2個とし、それらを、脚柱における互いに隣接する上下2個の係合溝または係合突条に選択的に係合するようにし、かつ上下2個の係合溝または係合突条との間に、脚柱の外周面に圧接する押圧面を有する押圧突部を設けてなる請求項4〜6のいずれかに記載の椅子の脚柱へのオプション部材の取付構造。
【請求項8】
オプション部材を足載せ台としてなる請求項4〜7のいずれかに記載の椅子の脚柱へのオプション部材の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−22071(P2013−22071A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157028(P2011−157028)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)