説明

椅子カバー

【課題】十分な表示領域を確保することで広告宣伝機能を確保し、ある一定の大きさに収まる幅であれば、ボタンや紐を用いることなく、容易に背もたれ部に取り付け可能な、頭巾と一体型の椅子カバーであって、さらにはより効果的な防災機能を具備した椅子カバーを提供する。
【解決手段】椅子の背もたれ部に着脱可能に装着され、背もたれ部の前面側を前カバーが、後面側を後カバーが覆い、前後カバーは上部及び左右側部が互いに閉じられて下部に開口する袋状を形成し、後カバーは前記袋状の下方開放端よりもさらに下方に延長形成され、該延長形成部の裏面周囲に保護カバーを形成し、
前記袋状を形成する前カバー若しくは後カバーのうち少なくとも一方が伸縮性素材を用い、
難燃素材からなる層、防炎素材からなる層、耐熱素材からなる層のいずれか2以上の異なる素材の層を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、背もたれ付き椅子の椅子カバーに関し、特に遊戯場において使用される椅子カバーであって、平時には広告媒体として、そして災害発生時には頭巾として使用可能な椅子カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、常時、椅子の背もたれ部分に取り付けておき、非常時に防災頭巾として利用する「背当クッション兼用防災頭巾」が知られている(特許文献1参照)。
当該考案は、頭巾の下部をチャック又はボタンで留めることによって袋状となし、背当クッションとして椅子に使用できる構造としたことを特徴とするものである。
【0003】
また、非常時に、防災頭巾を簡単に取り出すことができ、どのような種類の椅子にも、背部又は座部に確実に取り付けることができるとする「防災頭巾カバー」が知られている(特許文献2参照)。
当該考案は、カバーとは別体の防災頭巾を当該防災頭巾カバーへ収納すべく縫製した収納部と、先端にスナップホック等の結合手段を設けた引掛紐を具備し、さらには当該カバーとは別体の弾性紐を予め準備し、椅子の背部又は座部に取り付けて使用することを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭59−061236号公報
【特許文献2】実用新案登録第3112924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1及び特許文献2に開示された技術は、当該考案に広告宣伝機能を果たすことが予定されていないため、当該機能を発揮せしめるためには異なる観点に基づいた更なる工夫が望まれるところであった。
【0006】
また、特許文献1に開示された技術では、当該考案を使用する椅子の背もたれ部の幅と、頭巾の開口部幅とを予め一致させておく必要がある点で汎用性に欠ける。
そして、特許文献2に開示された技術では、当該考案と別体の頭巾の取り扱いに注意が必要である。即ち、パチンコホールなどの遊戯場において長時間に亘って多くの人々が出入りする環境では収納した頭巾の盗難対策が必要となる。さらに、当該考案に係るカバーの構成では椅子への取付けが煩雑であり、多数の椅子が並ぶ遊戯場等においては作業効率が悪く、更なる工夫が望まれていた。
【0007】
また、特許文献1に開示された技術には、難燃・防炎・耐熱といった機能はないことから、当該機能を付与した技術の開発が待ち望まれていた。
そして、特許文献2に開示された技術では、カバーには防災機能はなく、頭巾についても外側に難燃素材を用いたに留まることから、一層の防災機能を付与することが望ましい。
【0008】
以上の課題に鑑みて、本発明は、広告等の十分な表示領域を確保することで広告宣伝機能を付与し、多少背もたれ部の大きさに差がある場合であっても、ボタンや紐といった椅子へ取付けのためだけに用いる要素を必要とすることなく背もたれ部に容易に取り付け可能な頭巾と一体型とした椅子カバーであって、さらには、防災機能を強化した、椅子カバーを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の、椅子の背もたれ部に着脱可能に装着される椅子カバーは、背もたれ部の前面側を覆う前カバーと、背もたれ部の後面側を覆う後カバーとからなり、前後カバーは上部及び左右側部が互いに閉じられて下部に開口する袋状の背もたれ収納部を形成し、後カバーは該背もたれ収納部の下方開放端よりもさらに下方に延長形成され、該延長形成部の裏面周囲に保護カバーを形成したことを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に記載の椅子カバーは、請求項1に記載の構成において、前記背もたれ収納部を形成する前カバー若しくは後カバーのうち少なくとも一方が伸縮性素材を用いてなることを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に記載の椅子カバーは、請求項1又は請求項2のいずれかに記載の構成において、難燃素材からなる層、防炎素材からなる層、耐熱素材からなる層のいずれか2以上の異なる素材の層を具備することを特徴とする。
【0012】
また、請求項4に記載の椅子カバーは、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の構成において、前記保護カバーの周囲に緊締手段支持部及び該支持部に支持された緊締手段を備え、及び/又は、前記保護カバーには折畳部を形成したことを特徴とする。
【0013】
また、請求項5に記載の椅子カバーは、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の構成において、前記保護カバー端部周囲の全部又は一部においてワイヤを内包したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
後カバーが袋状の下方開放端よりもさらに下方に延長形成された構成により、広告の表示領域が格段に広がることから、有効な広告宣伝媒体としてその機能の発揮が期待できるものとなった。
【0015】
前カバー若しくは後カバーのうち少なくとも一方が伸縮性素材を用いてなる構成としたことにより、背もたれ収納部に伸縮性が生まれ、多少、背もたれ幅に違いがあっても椅子カバーの装着、取り外しは極めて容易に行える。特に、脚数の多い遊戯場などにおける椅子カバーの着脱は、チャックやスナップボタン、紐を用いることがないため、作業効率の大幅な向上がみられた。
【0016】
難燃素材からなる層、防炎素材からなる層、耐熱素材からなる層のいずれか2以上の異なる素材の層により椅子カバーを構成することで、防災機能を一層強化することが可能となった。
【0017】
保護カバーの周囲に緊締手段支持部及び緊締手段を備えることで、頭巾として使用する際には確実に着用することができ、保護カバーに折畳部を形成した場合には、着用時の頭部へのフィット感が一層高まることとなった。
【0018】
保護カバー端部周囲の全部又は一部においてワイヤを内包した構成によれば、折り畳む際の操作性や、平時の形態安定性の向上がみられた。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る椅子カバーを椅子へ装着する様子を示す説明図である。
【図2】同椅子カバーの正面図である。
【図3】同椅子カバーの背面図である。
【図4】使用状態(平時)を示す説明図である。
【図5】使用状態(災害時)を示す説明図である。
【図6】同椅子カバーの層構造を示す説明図である。
【図7】同椅子カバーの異なる実施例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔第一の実施形態〕
以下、本発明の第一の実施形態につき図1乃至図6(a)を参照しながら説明する。
本実施の形態は、遊戯場の椅子に用いられる椅子カバーであって、平時には広告媒体として、そして災害時には頭巾として使用可能な椅子カバーに関する。
【0021】
図1は、椅子カバー1を椅子2へ装着する様子を示す。前カバー10と後カバー11とから形成される袋状の背もたれ収納部13を椅子2の座部21に垂設される背もたれ部20へ被せて装着するものである。
【0022】
まず、本実施形態における椅子カバー1の全体構成について説明する。
椅子カバー1は、椅子2の背もたれ部20の前面側(着座者の背中が接する面側)を覆う前カバー10と、背もたれ部20の後面側(遊戯場における通路側に面する側)を覆う後カバー11とからなり、前カバー10と後カバー11は、上部及び左右側部が互いに閉じられて下部に開口する袋状の背もたれ収納部13(図1)を形成する。
【0023】
そして、後カバー11は、該背もたれ収納部13の下方開放端よりもさらに下方に延長形成され、該延長形成部の裏面周囲に災害時に頭巾として使用される保護カバー12(図1)を形成してなる。
また、後カバー11には、広告掲載面110として各種広告、例えば、「新台登場」「女性専用台」「甘釘台」「会員専用台」といった文字情報その他デザインなどを表示する(図3)。
【0024】
保護カバー12は、開口部周縁121にバイアステープ(t)を配し、緊締手段支持部122に緊締手段123(本実施形態においては紐状体)を通してなる(図2)。緊締手段123は弾性を伴う素材又は構成のものでもよく、使用目的に適うものであれば、素材、構成は問わない。なお、緊締手段支持部122を設ける位置や数は図示されたものに限られず、適宜変更することは妨げない。
また、図2(b)に示すように、保護カバー12にはステッチ(s)により形成したV字の折畳部124を2箇所設けた。
【0025】
本実施形態における椅子カバー1の生地、構成について説明する。
前カバー(10)、後カバー(11)、保護カバー(12)は、それぞれ表地(x)と裏地(y)の二層構造(図6(a))となっており、表地(x)は、ストレッチ性を備えたポリエステル100%の生地に防炎加工を施した生地を使用する。
【0026】
裏地(y)は、難燃性を具備したウレタンフォームを5mm厚に加工したシート状の伸縮自在のスポンジ生地である。摩擦係数の大きな生地を裏地に使用することで、防滑裏面を形成した。
なお、前カバー(10)、後カバー(11)のうちいずれか一方のみにストレッチ性を持たせることとしてもよい。
【0027】
なお、使用目的に適った弾性を具備し、本発明に必要な加工が可能な他の素材の使用は排除しない。
【0028】
本実施形態における椅子カバーの生地素材には、LOI(Limited Oxygen Index:限界酸素指数)値21以下の合成繊維の使用は避け、ポリ塩化ビニル、難燃ポリエステルなど、LOI値の高い合成繊維を素材として用いることが望ましい。さらに、表裏面の生地は、ともに帯電防止加工を施すこととしてもよい。
【0029】
表地(x)と裏地(y)は各周囲を縫い合わせ(図3)、前カバー(10)、後カバー(11)、保護カバー(12)を一体に形成する。後カバー(12)の周囲(図3)と、保護カバーの周囲(図2)においては、バイアステープ(t)を介して縫製する。
なお、縫製以外にも、接着剤や圧着加工、溶着加工を妨げるものではない。
【0030】
本実施形態における椅子カバー1の使用方法を説明する。
平常時は、遊戯場の各椅子2の背もたれ部分に椅子カバー1を装着し(図1)、椅子カバーとしての機能を発揮させつつ、広告掲載面110に各種広告等を掲載し、広告宣伝機能とを発揮させる(図4)。
一方、災害発生時においては、椅子カバー1を背もたれ部から抜き取り、平常時とは椅子カバーの天地を逆にして保護カバー12を開き、頭巾として使用する(図2、図5)。このとき、必要に応じて緊締手段123を締め付ける。
【0031】
本実施形態によれば、平時は、広告宣伝機能を十分に発揮し、椅子の背もたれ部への着脱が容易な椅子カバーとして、災害時には、防災機能を強化して安全性を重視しつつ、確実に着用でき、着用時のフィット感も向上させた頭巾として優れた椅子カバーの発明といえる。
【0032】
〔第二の実施形態〕
以下、本発明の第二の実施形態につき、図6を参照しながら説明する。
本実施の形態は、図6(b)乃至図6(d)に示すように、前記第一の実施形態の椅子カバーにおいて、中地を層構成に追加した形態に係るものである。
以下、第一の実施形態と異なる構成について詳述する。
【0033】
本実施形態における椅子カバーの層構成は、表地(x)、裏地(y)に加え、中地(z1)/「防炎アルミ生地」、中地(z2)/「アラミドフェルト」を選択的に、若しくは両方を使用してなる。
【0034】
防炎アルミ生地とは、ポリ塩化ビニルに難燃アルミ加工を施した生地をいう。防炎アルミ生地は伸び縮みが少ないため、これを使用する場合には、表地、裏地とは縫製せず、表裏地に内包して使用することで、椅子カバー全体としての伸縮性を損なうことなく、当該生地の機能を享受することができる。
【0035】
一方、アラミドフェルトとは、有機繊維のなかでも高度な難燃性能をもつアラミド繊維をフェルト加工したものである。アラミド繊維は、メタ系アラミド繊維とパラ系アラミド繊維とに分かれ、メタ系は耐熱や耐薬品性に優れ、パラ系は引っ張り強度に優れているとされる。
メタ系アラミド繊維は、ポリエステルなどの汎用繊維と同等の強度をもち、熱分解点が400℃以上と高い耐熱性があり、パラ系アラミド繊維は、剛直な分子構造から、メタ系アラミド繊維に比べ、強度、弾性率などの力学的性質で優れた繊維である。
本実施形態においては、メタ系、パラ系のいずれのアラミド繊維の使用も妨げない。
但し、上記防炎アルミ同様、使用する場合には、表地、裏地とは縫製せず、表裏地に内包して使用することで、椅子カバー全体としての伸縮性を損なうことなく、当該生地の機能を享受することができる。
【0036】
図6(b)は、表地(x)−中地(z1)−裏地(y)とした構成を示す。
【0037】
図6(c)は、表地(x)−中地(z2)−裏地(y)とした構成を示す。
【0038】
図6(d)は、表地(x)−中地(z1)−中地(z2)−裏地(y)とした構成を示す。
【0039】
本実施形態によれば、求められる効果に見合った構成をとることができ、防災機能をさらに強化した椅子カバーを得ることが可能となる。
【0040】
〔第三の実施形態〕
以下、本発明の第三の実施形態につき、主に図7を参照しながら説明する。
本実施の形態は、前記第一の実施形態の椅子カバーにおいて、保護カバー端部周囲の全部又は一部においてワイヤを内包した構成とした椅子カバーに係るものである。
以下、第一の実施形態と異なる構成について詳述する。
【0041】
本実施形態の椅子カバーは、保護カバー12の端部周囲において折畳部124の周囲を除き、バイアステープ(t)の内側に樹脂性ワイヤ(w)を内包して縫製した。
【0042】
このような構成とすることで、緊締手段を締めた際に保護カバー12部分が収まりよく閉じられ、折畳時の操作性、形態安定性が向上する。頭巾として使用する際には、緊締手段123で締めると顔方向へ布地を均等に寄せる効果もあり、好ましい。また、常時では、布地の収まりがよくなり、脚数を多く取り扱う遊戯場においては椅子カバーの取り替え時の作業効率も大幅に向上する。
【0043】
このワイヤは使用目的に適う許容応力があれば、特定の素材に限られず、樹脂、金属及びこれらの併用を妨げるものではない。
【0044】
この発明は上述した実施形態に限定されるわけではなく、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内で様々な変形を加えてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 椅子カバー
10 前カバー
11 後カバー
12 保護カバー
121 開口部周縁
122 緊締手段支持部
123 緊締手段
124 折畳部
13 背もたれ収納部
2 椅子
20 背もたれ部
21 座部
3 遊技台
s ステッチ
t バイアステープ
x 表地
y 裏地
z 中地

【特許請求の範囲】
【請求項1】
椅子の背もたれ部に着脱可能に装着される椅子カバーであって、
背もたれ部の前面側を覆う前カバーと、背もたれ部の後面側を覆う後カバーとからなり、
前後カバーは上部及び左右側部が互いに閉じられて下部に開口する袋状の背もたれ収納部を形成し、
後カバーは該背もたれ収納部の下方開放端よりもさらに下方に延長形成され、
該延長形成部の裏面周囲に保護カバーを形成した椅子カバー。
【請求項2】
前記背もたれ収納部を形成する前カバー若しくは後カバーのうち少なくとも一方が伸縮性素材を用いてなる請求項1の椅子カバー。
【請求項3】
難燃素材からなる層、防炎素材からなる層、耐熱素材からなる層のいずれか2以上の異なる素材の層を具備する請求項1又は請求項2のいずれかに記載の椅子カバー。
【請求項4】
前記保護カバーの周囲に緊締手段支持部及び該支持部に支持された緊締手段を備え、
及び/又は、
前記保護カバーには折畳部を形成した
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の椅子カバー。
【請求項5】
前記保護カバー端部周囲の全部又は一部においてワイヤを内包した請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の椅子カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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