説明

椅子

【課題】背凭れに取付孔を穿設することなく、オプション部材を背凭れに容易かつ強固に取付けることができるとともに、オプション部材の取り付け作業効率が良好な椅子を提供する。
【解決手段】背凭れ2と、この背凭れ2に取付支持体4を介して取り付けられたハンガー1とを備える椅子において、取付支持体4は、前部に、背凭れ2への取付部を有し、かつ後部に、前後方向に弾性変形可能であって、ハンガー1を、弾性的に挾持することによって上下位置調節可能に支持する支持部29を有する第1取付部材11と、後部が第1取付部材11の支持部29の一部に当接して、その一部をハンガー1に向かって押動するようにして、第1取付部材11に取り付けられた第2取付部材12とを備えるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンガーやヘッドレスト等のオプション部材を背凭れに取付けた椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
本願出願人は、椅子の背凭れにオプション部材としてのハンガーを取付ける構造の発明について、特許出願を行った(特開2006−280455)。
この発明は、背凭れフレームにおけるハンガー取付部に設けた取付孔に、前方から左右1対のボスを備えるねじ座を、ボスを前記取付孔に貫挿させることにより取付けるとともに、後方に突出したボスを利用して、第1部材を取付け、この第1部材の後方から第2部材を、第1部材と第2部材間に、ハンガーの支持杆を挾持させた状態で、取付ねじを前記ボスのねじ孔に螺合することにより、ハンガーを背凭れフレームに取付けるものである。
【0003】
しかし、ねじ座と第1、2部材の3個の部品を、嵌合等により、簡易に位置決めしているため、取付作業中に、これらの部品が分離しないように十分に注意して作業を行う必要があり、作業効率の向上が望まれるとともに、背凭れフレームに取付孔を穿設しなければならないという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−280455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来の技術が有する上記のような問題点に鑑みてなされたもので、背凭れに取付孔を穿設することなく、オプション部材を背凭れに容易かつ強固に取付けることができるとともに、オプション部材の取り付け作業効率が良好な椅子を提供することを目的としている。
【0006】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1)背凭れと、この背凭れに取付支持体を介して取り付けられたオプション部材とを備える椅子において、前記取付支持体は、前部に、前記背凭れへの取付部を有し、かつ後部に、前後方向に弾性変形可能であって、前記オプション部材を、弾性的に挾持することによって上下位置調節可能に支持する支持部を有する第1取付部材と、後部が前記第1取付部材の支持部の一部に当接して、その一部を前記オプション部材に向かって押動するようにして、前記第1取付部材に取り付けられた第2取付部材とを備えるものとする。
【0007】
このような構成によると、第2取付部材の後部が第1取付部材の支持部の一部に圧接し、この圧接により、第1取付部材の支持部の一部がオプション部材に向かって押されて、オプション部材は、位置安定よく取付支持体に支持される。
【0008】
(2)上記(1)項において、第2取付部材を、第1取付部材に、取付ねじをもって締め付けて固定し、かつ第2取付部材の後部と第1取付部材の支持部との対向面を、前記取付ねじの締め付けに伴って、前記第2取付部材の後部が、前記支持部を、オプション部材に向かって押圧するような傾斜面とする。
【0009】
このような構成によると、取付ねじの締め付けに伴って、第1取付部材と第2取付部材との傾斜面同士が、互いに圧接して、第2取付部材の後部により、第1取付部材の支持部がオプション部材に向かって漸次押圧され、オプション部材は、一層位置安定よく背凭れに強固に取り付けられる。
【0010】
(3)上記(1)または(2)項において、支持部が、第1取付部材の後部に設けた後面板と、その前方に設けた弾性変形可能とした弾性突片とを備え、前記後面板と弾性突片とをもって、オプション部材における上下方向を向く部分を弾性力により把持するようにする。
【0011】
このような構成によると、オプション部材における上下方向を向く部分を、後面板と弾性突片とをもって、弾性突片の弾性復元力により把持して、オプション部材を安定よく保持することができる。
【0012】
(4)上記(1)〜(3)項のいずれかにおいて、第1取付部材の前部に、左右方向を向く枢軸を設け、第2取付部材の前部に、前記枢軸に回動可能に嵌合する嵌合部を設け、前記嵌合部を枢軸に嵌合させた状態で、第2取付部材における前記枢軸または嵌合部から離れた部分を、前記第1取付部材に螺締することにより、第2取付部材の後端に設けた突出部を、支持部の前面に当接させるようにする。
【0013】
このような構成によると、第1取付部材と第2取付部材との取り付け作業効率を高めることができるので、背凭れへのオプション部材の取り付け作業効率を高めることができる。
【0014】
(5)上記(1)〜(4)項のいずれかにおいて、背凭れにおける左右方向を向く上部フレームを、第1取付部材の前部と第2取付部材の前部とにより上下から挟んで締め付けることにより、両取付部材を前記背凭れに取付ける。
【0015】
このような構成によると、背凭れに取付孔を穿設する必要が無くなるとともに、オプション部材を、背凭れに、作業効率よく、強固に取り付けることができる。
【0016】
(6)上記(5)項において、第1取付部材の前部下面に左右方向を向く凹溝を設け、この凹溝を背凭れにおける上部フレームに上方より嵌合し、かつ前記凹溝の下部開口を、前記第2取付部材12の前部をもって閉塞させた状態で、前記第2取付部材を第1取付部材に取付ねじをもって螺締する。
【0017】
このような構成によると、第1取付部材を、凹溝をもって背凭れの上部フレームに上方より嵌合させるだけで、背凭れに取り付けることができるとともに、背凭れに保持させることができるので、組付け作業性がよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、背凭れフレームに取付孔を穿設することなく、オプション部材を背凭れに容易かつ強固に取付けることができるとともに、オプション部材の取り付け作業効率が良好な椅子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】オプション部材としてのハンガーを、背凭れに取付けた本発明の椅子の一実施形態を示す要部後方傾斜視図である。
【図2】図1に示した本発明の一実施形態の正面図である。
【図3】同じく、側面図である。
【図4】ハンガーの前方斜視図である。
【図5】第1取付部材の前方斜視図である。
【図6】同じく、第1取付部材の後方斜視図である。
【図7】同じく、第1取付部材の正面図である。
【図8】同じく、第1取付部材の平面図である。
【図9】同じく、第1取付部材の底面図である。
【図10】同じく、第1取付部材の側面図である。
【図11】第2取付部材の前方斜視図である。
【図12】同じく、第2取付部材の後方斜視図である。
【図13】同じく、第2取付部材の正面図である。
【図14】同じく、第2取付部材の平面図である。
【図15】同じく、第2取付部材の側面図である。
【図16】第1取付部材と第2取付部材とを用いて、ハンガーを背凭れの上部フレームに取付ける手順を示す断面図である。
【図17】図2におけるXVII〜XVII線断面図である。
【図18】同じく、図2におけるXVIII〜XVIII線断面図である。
【図19】同じく、図2におけるXIX〜XIX線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、オプション部材としてのハンガーを、背凭れに取付けた本発明の椅子の一実施形態を示す要部後方斜視図、図2、図3は、それぞれ同じく要部の正面図、側面図である。図4は、ハンガーの前方斜視図である。
【0021】
オプション部材としてのハンガー1が、椅子の背凭れ2における左右方向の上部フレーム3に、取付支持体4により取付けられている。上部フレーム3は、平面視において後向きに突出する緩やかな湾曲をなしている(図19参照)。
【0022】
ハンガー1は、ハンガー本体5と、このハンガー本体5を支持する左右1対の支持杆6、6とにより構成されている。
【0023】
ハンガー本体5は、背広等が掛けられる程度の長さに左右方向に延びている。ハンガー本体5を支持する左右1対の支持杆6、6は、互いに平行な下部支持杆7、7と、各下部支持杆7、7の上端から上方に向けて互いに離間する方向に湾曲しつつ、ハンガー本体5の左右両端部へと至り、かつ断面積が下部支持杆7側からハンガー本体5側に向けて漸次減少していく上部支持杆8、8と、下部支持杆7、7の下端から下方に向かうに従って、互いに接近する方向に湾曲された連結杆9、9とよりなり、両下部支持杆7、7は、両連結杆9、9を介して、その下端において、相互に連結されている。
【0024】
上部支持杆8、8の上端を、図示を省略したビスをもってハンガー本体5の下面における左右端近傍に止着することにより、支持杆6、6はハンガー本体5に取付けられている。図4に示すように、下部支持杆7、7の前面には、側面視において複数の山形部10aが上下方向に連続する波形面部10が設けられている。
【0025】
取付支持体4は、第1取付部材11と第2取付部材12とより構成されている。
【0026】
図5〜図10は、それぞれ第1取付部材11の前方斜視図、後方斜視図、正面図、平面図、底面図、側面図である。図11〜図15は、それぞれ第2取付部材12の前方斜視図、後方斜視図、正面図、平面図、側面図である。
【0027】
第1取付部材11は、本体部13と後面板14と前面版15とより構成されている。
【0028】
本体部13は、左右方向に長い、四辺形状の天板17の下面における左右端近傍に、側面版18、18が設けられ、天板17の下面には、左右1対のねじ孔19、19が設けられている(図9参照)。
【0029】
後面板14は、その左右端14a、14aが、本体部13の天板17よりも左右にはみ出した状態で、本体部13の後面に一体化されている。
【0030】
本体部13における天板17の前端縁には、前部が下向きに湾曲した前面版15が一体的に設けられている。
【0031】
前面板15の上面15aと、本体部13における天板17の上面17aと、後面板14の上端縁14bは、同一平面上に一体化されている。
【0032】
前面板15における前板15aは、平面視において、前方に凹状に緩やかに湾曲している。前面板15の内面と本体部13の前面とにより、左右方向に下向きの凹溝20が形成されている。この凹溝20は、後記するように、第1取付部材11を上方から、背凭れ2の上部フレーム3におけるオプション部材取付部3aに嵌合させて第1取付部材11を上部フレーム3に取付けるためのものである。
【0033】
第1取付部材11における前板15aが前方に凹状に緩やかに湾曲しているため、同様に湾曲した上部フレーム3に、第1取付部材11を良好に取付けることができる。
【0034】
前記前板15aの前面における左右端近傍には、それぞれ左右1対の側面視ほぼ三角形状の取付片21、21が突設されており、これら1対の取付片21、21間に左右方向の枢軸22が設けられている。
【0035】
本体部13における左右側面板18、18の左右方向の外側面には、前後方向に弾性変形可能に弾性突片23が突設されている。図10に示すように、弾性突片23の後端縁は、後向きV字状の凹状面23aをなし、前端縁は、前方に傾斜する傾斜面23bをなしている。
【0036】
図11〜図15に示すように、第2取付部材12は、基板部24と嵌合部25と取付部26とより構成されている。基板部24は、後方に傾斜するとともに、後方に凸状に緩やかに湾曲した縦片24aと、この縦片24aの下端から前向きに延設された横片24bとより形成されている。基板部24における横片24bの前端縁には、左右1対の下向きに開口するフック状の嵌合部25、25が設けられている。縦片24aの後面における左右端近傍には、側面視ほぼ三角形状の突出部27が設けられており、この突出部27の後面上半部は、前方に傾斜する傾斜面27aをなしている。
【0037】
基板部24における縦片24aの後面中央には、側面視下向きコ字状の取付部26が設けられ、この取付部26には、左右1対の上下方向の通孔28、28が穿設されている。
【0038】
次に、これら第1取付部材11と第2取付部材12とを用いて、ハンガー1を、背凭れ2の上部フレーム3に取付ける手順について説明する。
【0039】
図16は、前記手順を示す図であり、図2におけるXVI〜XVI線断面図である。
【0040】
図17〜図19は、それぞれ図2におけるXVII〜XVII線断面図、XVIII〜XVIII線断面図、XIX〜XIX線断面図である。
【0041】
まず、オプション部材1を、第1取付部材11に支持させる。第1取付部材11において、前面板15と後面板14との間に形成されている左右方向の外側向きに開口する左右1対の凹嵌部29、29が、オプション部材1の支持部となっている。
【0042】
第1取付部材11を、オプション部材1における左右の上部支持杆8、8間に位置させて、下方に向けて移動させ、第1取付部材11における前記左右の凹嵌部29、29を下部支持杆7、7に嵌合させるとともに下部支持杆7の波形面部10における山形部10aを、第1取付部材11における弾性突片23の凹状面23aに嵌合させる(図16(a)参照)。
【0043】
弾性突片23は、前後方向に弾性変形可能となっているため、この弾性力と、前記山形部10aと凹状面23との嵌合により、ハンガー1は、第1取付部材11に位置を安定よく支持される。
【0044】
次いで、図16(a)に示すように、第1取付部材11における凹溝20を、背凭れ2における上部フレーム3のオプション部材取付部3aに上方から嵌合させることにより、第1取付部材11を上部フレーム3に取付ける。
【0045】
次に、第2取付部材12を、天地逆にして、その嵌合部25を、第1取付部材11の枢軸22に下方から嵌合させて、第2取付部材12を第1取付部材11に取付ける。
【0046】
次に、図16(b)に示すように、第2取付部材12を矢印Aの向きに回動させて、図16(c)に示すように、第1取付部材11における凹溝20の下部開口を、第2取付部材12を持って閉塞する。第2取付部材12における基板部24の横片24bと、突出部27とが閉塞部として機能している。
【0047】
次に、図17に示すように、取付ねじ30を、第2取付部材12における取付部26の通孔28を貫挿させて、第1取付部材11における天板17の下面に設けられたねじ孔19に螺合して、第2取付部材12を第1取付部材11に螺締する。
【0048】
これによって、第1取付部材11における弾性突片23の傾斜面23bと、第2取付部材12における突出部27の傾斜面27aとは、相互に圧接し(図16(c)参照)、第1取付部材11と第2取付部材12同士が強固に固着されるとともに、この圧接により、第1取付部材11の弾性突片23が後方に押されて、ハンガー1が一層位置安定よく取付支持体4に支持される。
なお、実施例においては、オプション部材として、ハンガーを例にとり説明したが、その他、ヘッドレスト等の任意のオプション部材の取付に本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0049】
1 ハンガー(オプション部材)
2 背凭れ
3 上部フレーム
3a オプション部材取付部
4 取付支持体
5 ハンガー本体
6 支持杆
7 下部支持杆
8 上部支持杆
9 連結杆
10 波形面部
10a 山形部
11 第1取付部材
12 第2取付部材
13 本体部
14 後面板
15 前面板
17 天板
18 側面板
19 ねじ孔
20 凹溝
21 取付片
22 枢軸
23 弾性突片
23a 凹状面
23b 傾斜面
24 基板部
24a 縦片
24b 横片
25 嵌合部
26 取付部
27 突出部
27a 傾斜面
28 通孔
29 凹嵌部(支持部)
30 取付ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背凭れと、この背凭れに取付支持体を介して取り付けられたオプション部材とを備える椅子において、
前記取付支持体は、前部に、前記背凭れへの取付部を有し、かつ後部に、前後方向に弾性変形可能であって、前記オプション部材を、弾性的に挾持することによって上下位置調節可能に支持する支持部を有する第1取付部材と、後部が前記第1取付部材の支持部の一部に当接して、その一部を前記オプション部材に向かって押動するようにして、前記第1取付部材に取り付けられた第2取付部材とを備えていることを特徴とする椅子。
【請求項2】
第2取付部材を、第1取付部材に、取付ねじをもって締め付けて固定し、かつ第2取付部材の後部と第1取付部材の支持部との対向面を、前記取付ねじの締め付けに伴って、前記第2取付部材の後部が、前記支持部を、オプション部材に向かって押圧するような傾斜面としたことを特徴とする請求項1記載の椅子。
【請求項3】
支持部が、第1取付部材の後部に設けた後面板と、その前方に設けた弾性変形可能とした弾性突片とを備え、前記後面板と弾性突片とをもって、オプション部材における上下方向を向く部分を弾性力により把持するようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載の椅子。
【請求項4】
第1取付部材の前部に、左右方向を向く枢軸を設け、第2取付部材の前部に、前記枢軸に回動可能に嵌合する嵌合部を設け、前記嵌合部を枢軸に嵌合させた状態で、第2取付部材における前記枢軸または嵌合部から離れた部分を、前記第1取付部材に螺締することにより、第2取付部材の後端に設けた突出部を、支持部の前面に当接させるようにしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の椅子。
【請求項5】
背凭れにおける左右方向を向く上部フレームを、第1取付部材の前部と第2取付部材の前部とにより上下から挟んで締め付けることにより、両取付部材を前記背凭れに取付けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の椅子。
【請求項6】
第1取付部材の前部下面に左右方向を向く凹溝を設け、この凹溝を背凭れにおける上部フレームに上方より嵌合し、かつ前記凹溝の下部開口を、前記第2取付部材12の前部をもって閉塞させた状態で、前記第2取付部材を第1取付部材に取付ねじをもって螺締したことを特徴とする請求項5記載の椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−210509(P2012−210509A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−175498(P2012−175498)
【出願日】平成24年8月8日(2012.8.8)
【分割の表示】特願2007−80212(P2007−80212)の分割
【原出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】