説明

植物の菌類病害防除剤および菌類病害防除方法

【課題】 植物の菌類病害防除剤および菌類病害防除方法を提供する。
【解決手段】 単糖を有効成分とすることを特徴とする植物の菌類病害防除剤および単糖を植物体に施用する植物の菌類病害防除方法。単糖が、D−タロース、L−フルクトース、D-アロース、D-プシコース、およびD−ガラクトースからなる群から選ばれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の菌類病害防除剤および菌類病害防除方法に関する.
より詳細には、単糖を有効成分として含有する、菌類による各種植物病害に対して高い防除効果を有する植物の菌類病害防除剤および菌類病害防除方に関する。
【背景技術】
【0002】
農業生産において、植物病害防除剤すなわち、農薬は、殺虫剤、殺菌剤などのように病害虫の防除を目的として、農作業の省力化や、農業生産物の品質や収穫量を安定させる目的に使用され、安心安全な農業生産物を確保する上で現在の農業には不可欠な物である。従来、植物病害防除剤の中で、同じ作用性を有する数多くの薬剤を特定の植物病害防除対象に、頻繁かつ、時には過剰に使用されることにより、対象の植物病原菌が、その作用性を有する農薬に対して耐性化する現象が顕著になってきている。
【0003】
一方では昨今、減農薬作物に対する消費者の関心、合成化学植物病害防除剤による環境影響の低減化に対する社会的な関心も高まりを見せている。このような状況の下、従来の合成化学植物病害防除剤と比較して環境影響が少なく、各種病害に対し広いスペクトラムを有し、かつ、既存の病害防除剤に効かなくなった耐性菌に対しても効果が高い植物病害防除剤および植物病害防除方法が望まれている。
【0004】
植物に病気を引き起こす病原体として、主に、菌類、細菌類、ウィルス等が挙げられるが、植物病害の約80%は、菌類による病害である。菌類病を引き起こす病原菌類として、子のう菌類、担子菌類、鞭毛菌類、接合菌類、卵菌類および不完全菌類が挙げられる。例えば、イネいもち病菌、うどんこ病菌などは子のう菌類、さび病菌、黒穂病菌、紋枯病菌などは担子菌類、根こぶ病は鞭毛菌類、リゾプス属(Rhizopus)菌は接合菌類、疫病菌、べと病菌、ピシウム属(Pythium)菌は卵菌類、アルターナリア属(Alternaria)菌は不完全菌類に属している。一般的に、菌類によって引き起こされる病害が多く、難防除病害も多く含まれていることから、植物の新規の菌類病害防除剤および菌類病害防除方法が望まれている。
【0005】
菌類病に対する植物病害防除剤として、テブコナゾール、プロチオコナゾールおよびシメコナゾールなどのエルゴステロール合成阻害剤、アゾキシストロビン、ピラクロストロビン、ボスカリド、ペンチオピラド、シアゾファミドおよびフルアジナムなどの呼吸阻害剤、チオファネートメチル、ベノミル、フルオピコリド、ペンシクロン、ゾキサミドなどの細胞分裂阻害剤、メタラキシル、ベナラキシル、ヒメキサゾールなどの核酸合成阻害剤、シプロジニル、メパニピリムなどのアミノ酸・タンパク質合成阻害剤、フルジオキソニル、イプロジオンなどのシグナル伝達阻害剤、プロパモカルブ、イプロバリカルブ、マンジピプロパミドなどの脂質膜合成阻害剤、バリダマイシン、ポリオキシンBなどのグルカン合成阻害剤、フラサイド、カルプロパミド、ピロキロンなどのメラニン合成阻害剤、プロベナゾール、アシベンゾラル‐S-メチル、イソチアニルなどの抵抗性誘導剤、水酸化第二銅、塩基性塩化銅、塩基性硫酸銅などの銅剤、キャプタン、マンゼブ、ジチアノン、イミノクタジンアルベシル酸塩などの保護剤によって防除されている。菌類病を防除可能な植物病害防除剤が多数、開発されているが、同じ作用を有する同系統の化合物が大半であり、作用性の異なる植物病害防除剤を組み合わせて防除体系を構築しようとしても、その選択肢が少ないのが現状である。一方、環境負荷が少ないとされている生物農薬については、処理方法・処理時期等が前述の植物病害防除剤と同様には使用できず、効果も十分でない場合が多く、対象病害も限定されており、使用できる場面が限られている。したがって、環境負荷が少なく、かつ、十分な効果を示す、菌類病に対する植物病害防除剤が極めて少ないのが現状である。
【0006】
単糖には、DおよびL−アルドースとして、グルコース、マンノース、アロース、アルトロース、タロース、ガラクトース、イドース、グロース、リボース、リキソース、キシロース、アラビノース、エリトロース、トレオース、グリセルアルデヒド、DおよびL−ケトースとして、フルクトース、プシコース、タガトース、ソルボース、キシルロース、リブロース、エルトルロース、ジヒドロキシアセトン、DおよびL−ポリトールとして、グルシトール、マンニトール、アルトリトール、イディトール、アラビトール、トレイトール、ポリトールとして、アリトール、ガラクチトール、キシリトール、リビトール、エリトリトール、グリセリン、イノシトール、クエルシトールが挙げられるが、病害防除剤として効果が明らかにされているのはD−タガトースのみである。D−タガトースは、菌類病に対する植物病害防除剤として、特に、べと病、うどんこ病、さび病およびピシウムによる病害に対し高い防除効果を示すことが明らかにされている(特許文献1)。一方、D-アロースについては、細菌病の一つであるイネ白葉枯病に対する抵抗性を誘導することが明らかにされているが、菌類病に対する効果は明確にされていない(非特許文献1)。しかしながら、他の単糖の菌類病に対する防除効果、他の菌類病に対する効果、その実用性についてはこれまで不明であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】PCT/JP2009/003925(WO2010/021121)
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】日本植物病理学会報 2009 75巻3号261-262.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、既存の植物病害防除剤の中には、菌類病に対して効果が不十分なもの、あるいは環境影響のために使用が制限されるもの、同じ作用性の植物病害防除剤を長期間、頻繁に使用することにより、耐性菌の発生が問題となってきているものなどがある。そのため、既存の植物病害防除剤とは作用が異なると考えられる、新規な、そして天然に存在し、環境負荷が少ないと考えられる植物病害防除剤の開発が望まれている。本発明は、以上のような技術背景の下になされたものであり、菌類による各種病害に対して高い防除効果を有し、従来の植物病害防除剤と比較して環境負荷が少ない植物病害防除剤および植物病害防除方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、単糖類、特にD−タロース、L−フルクトース、D-アロース、D-プシコース、D−ガラクトースなどが各種菌類による植物病害に対し高い防除効果を示すことを見出し、本発明を完成させるに至った。
以下の(発明1)ないし(発明3)に記載の植物病害防除剤に係るものである。
(発明1)単糖を有効成分とすることを特徴とする植物の菌類病害防除剤。
(発明2)単糖が、D−タロース、L−フルクトース、D-アロース、D-プシコース、およびD−ガラクトースからなる群から選ばれる発明1に記載の植物の菌類病害防除剤。
(発明3)菌類病が、子のう菌類、担子菌類、鞭毛菌類、接合菌類、卵菌類および不完全菌類からなる群より選ばれる菌類による病害である発明1に記載の植物の菌類病害防除剤。
【0011】
また、本発明は、以下の(発明4)、(発明5)ないし(発明6)に記載の植物の菌類病害防除方法に係るものである。
(発明4)発明1ないし3のいずれかに記載の植物の菌類病害防除剤を植物、土壌および水耕培養液へ施用することを特徴とする植物の菌類病害防除方法。
(発明5)植物への施用が、菌類病害防除剤を植物体または種子と接触させる、または栽培土壌に含有させることにより植物の根または地下茎に接触させる発明4に記載の植物の菌類病害防除方法。
(発明6)土壌または水耕培養液へ施用は、土壌の場合、植物病害防除剤の土壌表面への処理、土壌への潅注、または土壌に混和、水耕培養液の場合は、植物病害防除剤を水耕培養液に希釈する発明4に記載の植物の菌類病害防除方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、単糖が、植物の菌類病害防除剤として利用できることを明らかにしたものである。単糖は、茎葉散布剤、土壌処理剤、種子処理剤、または水耕培養液処理剤として用いることができ、植物に薬害を与えることなく、薬剤耐性菌を含む菌類による各種病害に対して卓効を示し、茎葉散布剤、土壌処理剤、種子処理剤、または水耕培養液処理剤として優れた効果を有する。本発明は、これまで植物の菌類病害防除剤として未知であった単糖が菌類による植物病害に対する新規の防除剤として利用できることを見出したことにより、従来の問題を解決し、より安定した高い効果を提供するばかりではなく、より少ない労力で、より薬害の少ない、効果的な防除方法を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明における単糖とは、DおよびL−アルドースとして、グルコース、マンノース、アロース、アルトロース、タロース、ガラクトース、イドース、グロース、リボース、リキソース、キシロース、アラビノース、エリトロース、トレオース、グリセルアルデヒド、DおよびL−ケトースとして、フルクトース、プシコース、タガトース、ソルボース、キシルロース、リブロース、エルトルロース、ジヒドロキシアセトン、DおよびL−ポリトールとして、グルシトール、マンニトール、アルトリトール、イディトール、アラビトール、トレイトール、ポリトールとして、アリトール、ガラクチトール、キシリトール、リビトール、エリトリトール、グリセリン、イノシトール、クエルシトールが挙げられるが、好ましい単糖として、D−タロース、L−フルクトース、D-アロース、D-プシコース、およびD−ガラクトースからなる群から選ばれる単糖が例示されるが、これらに限定されるものではない。
これらに限定されるものではない。
【0014】
単糖は、各種の農園芸における菌類病に対する植物病害防除剤として、茎葉散布剤、土壌処理剤、種子処理剤、または水耕培養液処理剤として有用である。例えば、茎葉散布剤、土壌処理剤、種子処理剤、または水耕培養液処理剤として処理することにより、土壌伝染性、種子伝染性の菌類病に対し優れた防除効果を示す。
【0015】
本発明の菌類病に対する植物病害防除剤である単糖は、そのまま使用してもかまわないが、通常は担体と混合して用いられ、必要に応じて界面活性剤、湿潤剤、固着剤、増粘剤、防腐剤、着色剤、安定剤等の製剤用補助剤を添加して、水和剤、フロアブル剤、顆粒水和剤、粉剤、乳剤等一般的に知られた方法によって適時製剤化して用いられる。また、いわゆる超高濃度少量散布法により施用することもできる。この方法においては、有効成分を100%含有することが可能である。
【0016】
前記製剤化に際して用いられる担体は、例えば、澱粉、活性炭、大豆紛、小麦粉、木紛、魚粉、粉乳等の動植物性粉末、及び、タルク、カオリン、ベントナイト、炭酸カルシウム、ゼオライト、珪藻土、ホワイトカーボン、クレー、アルミナ等の鉱物性粉末のような固体担体;又は、水、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール等のアルコール類、シクロヘキサン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ケロシン、軽油等の脂肪族炭化水素類、キシレン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼンメチルナフタレン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素類、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、ジメチルアセトアミド等の酸アミド類、脂肪酸のグリセリンエステル等のエステル類、アセトニトリル等のニトリル類及びジメチルスルホキシド等の含硫化合物類のような液体担体であり得、好適には、固体担体又は液体担体である。
【0017】
更に、本発明の菌類病に対する植物病害防除剤である単糖の効力を増強するために、製剤の剤型、処理方法等を考慮して目的に応じてそれぞれ単独に、または組み合わせて次のような補助剤を使用することもできる。補助剤として通常農薬製剤に乳化、分散、拡展、湿潤等の目的で使用される界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸金属塩、ジナフチルメタンジスルホン酸金属塩、アルコール硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、リグニンスルホン酸塩、ポリオキシエチレングリコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル又はポリオキシエチレンソルビタンモノアルキレートであり得、好適には、アルキルベンゼンスルホン酸金属塩、リグニンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル又はポリオキシエチレンソルビタンモノアルキレートであるがこれらに限定されるものではない。
【0018】
その他の補助剤は、例えば、カルボキシジメチルセルロース、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、グアーガム、トラガントガム及びポリビニルアルコール等の固着剤又は増粘剤;金属石鹸等やシリコーン系化合物の消泡剤;又は、脂肪酸、アルキルリン酸塩、シリコーン及びパラフィン等の物性向上剤着色剤であり得、好適には、グアーガム又はキサンタンガムである。 安定剤としてはヒンダードフェノール系の酸化防止剤やベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系の紫外線吸収剤等があげられる。pH調整剤としてリン酸、酢酸、水酸化ナトリウムを用いたり、防菌防黴のために1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン等の工業用殺菌剤、防菌防黴剤等を添加することもできる。消泡剤としてシリコーン系化合物、凍結防止剤としてプロピレングリコール、エチレングリコール等を必要に応じて使用しても良い。しかし、これらの成分は以上の例示したものに限定されるものではない。
【0019】
本発明の菌類病に対する植物病害防除剤の施用方法としては、植物個体への茎葉散布処理、苗箱処理、土壌表面への散布処理、土壌表面への散布処理後の土壌混和、土壌中への注入処理、土壌中での注入処理後の土壌混和、土壌潅注処理、土壌潅注処理後の土壌混和、水耕培養液への混和、植物種子への吹き付け処理、植物種子への塗沫処理、植物種子への浸漬処理または植物種子への粉衣処理等があげられるが、通常当業者が利用するどの様な施用方法にても十分な効力を発揮する。
【0020】
本発明の菌類病に対する植物病害防除剤である単糖の施用量および施用濃度は対象作物、対象病害、病害の発生程度、化合物の剤型、施用方法および各種環境条件等によって変動するが、散布または潅注する場合には有効成分量としてヘクタール当たり50〜1,000,000gが適当であり、望ましくはヘクタール当り100〜500,000gである。また、種子処理の場合の使用量は、種子1kg当たり0.001から50g、好ましくは0.01から10gである。本発明の菌類病に対する植物病害防除剤である単糖を植物個体への茎葉散布処理、土壌表面への散布処理、土壌中への注入処理、土壌潅注処理、水耕培養液へ混和する場合は、適当な担体に適当な濃度に希釈した後、処理を行っても良い。本発明の菌類病に対する植物病害防除剤である単糖を植物種子に接触させる場合は、そのまま植物種子を単糖の水溶液に浸漬してもかまわない。また、使用する菌類病に対する植物病害防除剤である単糖を適当な担体に適当な濃度に希釈した後、植物種子に浸漬、粉衣、吹き付け、塗沫処理して用いても良い。粉衣・吹き付け・塗沫処理する場合の製剤使用量は、通常、乾燥植物種子重量の0.05〜50%程度、さらに望ましくは0.1〜30%が適当であるが、このような使用量は、これら範囲に限定されるものではなく、製剤の形態や処理対象となる植物種子の種類により変わりうる。適当な担体とは、水またはエタノール等の有機溶媒の液体担体やベントナイト、モンモリロナイト、カオリナイト、珪藻土、白土、タルク、クレー、バーミキュライト、石膏、炭酸カルシウム、非晶質シリカ、硫安等の無機物質、大豆粉、木粉、鋸屑、小麦粉、乳糖、ショ糖、ぶどう糖等の植物性有機物質および尿素等の固体担体が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0021】
本発明において、植物体とは従来から栽培される農園芸用作物全般を意味し、例えば、野菜、果樹、花卉、観葉植物を挙げることができる。具体的には、稲、小麦、大麦、トウモロコシ、ブドウ、リンゴ、ナシ、モモ、オウトウ、カキ、カンキツ、大豆、インゲン、イチゴ、ジャガイモ、キャベツ、レタス、トマト、キュウリ、ナス、スイカ、テンサイ、ホウレンソウ、サヤエンドウ、カボチャ、サトウキビ、タバコ、ピーマン、サツマイモ、サトイモ、コンニャク、綿、ヒマワリ、チューリップ、キク、芝等の農園芸作物が挙げられるがこれらに限定されるものではない。また、植物体とは、植物個体、その植物個体を構成しうる全ての種類、形態の細胞、植物固体の一部である組織や器官ならびに生殖細胞を含む。さらに、また植物個体の一部としては、その繁殖媒体(茎、葉、根、種子、花、果実、切穂等)も包含する。なお、植物体は種子を包含するが、特に種子の形態は、植物個体とは別の市場(取引ルート)を有するので、植物体と種子を区別して記述することもある。
【0022】
本発明において、種子とは、幼植物が発芽するための栄養分を蓄え農業上繁殖に用いられるものをいう。具体的にはトウモロコシ、大豆、綿、稲、テンサイ、小麦、大麦、ヒマワリ、トマト、キュウリ、ナス、ホウレンソウ、サヤエンドウ、カボチャ、サトウキビ、タバコ、ピーマンおよびセイヨウアブラナ等の種子やサトイモ、ジャガイモ、サツマイモ、コンニャク等の種芋、食用ゆり、チューリップ等の球根やラッキョウ等の種球等、さらに遺伝子等を人工的に操作することにより生み出された植物であり自然界に元来存在するものではない遺伝子組み換え作物、例えば除草剤耐性を付与した大豆、トウモロコシ、綿等、寒冷地適応したイネ、タバコ等、殺虫物質生産能を付与したトウモロコシ、綿等の種子、バレイショの塊茎が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0023】
本発明の菌類病に対する植物病害防除剤である単糖は、必要に応じて他の農薬、例えば、殺菌剤、殺虫剤、殺ダニ剤、殺線虫剤、除草剤および植物成長調節剤等の農薬、土壌改良剤または肥効物質との混用又は併用することができる。
【0024】
本発明において、菌類病は高等植物(植物体)に菌類(カビ)が寄生して発生する病気をいう。
本発明において、細菌病は植物(植物体)に細菌が感染して発生する病気(細菌性植物病害)をいう。本発明の単糖を有効成分とする植物の菌類病害防除剤、および植物の菌類病害防除剤である単糖を用いた防除方法は、下記の種類の菌類病に対して有効である。以下に、子のう菌類、担子菌類、鞭毛菌類、接合菌類、卵菌類および不完全菌類による具体的病害及びその病原菌を示すが、これらに限定されるものではない。
イネのいもち病(Pyricularia oryze)、紋枯病(Thanatephorus cucumeris)、ごま葉枯病(Cochliobolus miyabeanus)、ばか苗病(Gibberella fujikurol)、苗立枯病(Pythium spp.、Fusarium spp.、Trichoderma spp.、Rhizopus spp.、Rhizoctonia solani等)、稲こうじ病(Claviceps virens)、黒穂病(Tilletia barclayana)、黄化萎縮病(Sclerophthora macrospora);
【0025】
ムギ類のうどんこ病(Erysiphe graminis f.sp.hordei; f.sp.tritici)、さび病(Puccinia striiformis; Puccinia graminisPuccinia reconditaPuccinia hordei)、斑葉病(Pyrenophora graminea)、網斑病(Pyrenophora teres)、赤かび病(Fusarium graminearumFusarium culmorumFusarium avenaceumMicrodochium nivale)、雪腐病(Typhula incarnataTyphula ishikariensisMicronectriella nivalis)、裸黒穂病(Ustilago nudaUstilago triticiUstilago nigraUstilago avenae)、なまぐさ黒穂病(Tilletia cariesTilletia pancicii)、眼紋病(Pseudocercosporella herpotrichoides)、株腐病(Rhizoctonia cerealis)、雲形病(Rhynchosporium secalis)、葉枯病(Septoria tritici)、ふ枯病(Leptosphaeria nodorum)、苗立枯病(Fusarium spp.、Pythium spp.、Rhizoctonia spp.、Septoria nodorumPyrenophora spp.)、立枯病(Gaeumannomyces graminis)、炭疽病(Colletotrichum graminicola)、麦角病(Claviceps purpurea)、斑点病(Cochliobolus sativus);
【0026】
トウモロコシの赤かび病(Fusarium graminearum等)、苗立枯病(Fusarium avenaceum Penicillium spp、 Pythium spp.、Rhizoctonia spp.)、さび病(Puccinia sorghi)、ごま葉枯病(Cochliobolus heterostrophus)、黒穂病(Ustilago maydis)、炭疽病(Colletotrichum graminicola)、北方斑点病(Cochliobolus carbonum);ブドウのべと病(Plasmopara viticola)、さび病(Phakopsora ampelopsidis)、うどんこ病(Uncinula necator)、黒とう病(Elsinoe ampelina)、晩腐病(Glomerella cingulata)、黒腐病(Guignardia bidwellii)、つる割病(Phomopsis viticola)、すす点病(Zygophiala jamaicensis)、灰色かび病(Botrytis cinerea)、芽枯病(Diaporthe medusaea)、紫紋羽病(Helicobasidium mompa)、白紋羽病(Rosellinia necatrix);
【0027】
リンゴのうどんこ病(Podosphaera leucotricha)、黒星病(Venturia inaequalis)、斑点落葉病(Alternaria mali)、赤星病(Gymnosporangium yamadae)、モニリア病(Monilinia mali)、腐らん病(Valsa ceratosperma)、輪紋病(Botryosphaeria berengeriana)、炭疽病(Colletotrichum acutatum)、すす点病(Zygophiala jamaicensis)、すす斑病(Gloeodes pomigena)、黒点病(Mycosphaerella pomi)、紫紋羽病(Helicobasidium mompa)、白紋羽病(Rosellinia necatrix)、胴枯病(Phomopsis maliDiaporthe tanakae)、褐斑病(Diplocarpon mali);ナシの黒斑病(Alternaria kikuchiana)、黒星病(Venturia nashicola)、赤星病(Gymnosporangium haraeanum)、輪紋病(Physalospora piricola)、胴枯病(Diaporthe medusaeaDiaporthe eres)、セイヨウナシの疫病(Phytophthora cactorum);モモの黒星病(Cladosporium carpophilum)、フォモプシス腐敗病(Phomopsis sp.)、疫病(Phytophthora sp.)、炭疽病(Gloeosporium laeticolor)、縮葉病(Taphrina deformans);オウトウの炭疽病(Glomerella cingulata)、幼果菌核病(Monilinia kusanoi)、灰星病(Monilinia fructicola);カキの炭疽病(Gloeosporium kaki)、落葉病(Cercospora kaki; Mycosphaerella nawae)、うどんこ病(Phyllactinia kakikora);カンキツの黒点病(Diaporthe citri)、緑かび病(Penicillium digitatum)、青かび病(Penicillium italicum)、そうか病(Elsinoe fawcettii)、褐色腐敗病(Phytophthora citrophthora);
【0028】
トマト、キュウリ、豆類、イチゴ、ジャガイモ、キャベツ、ナス、レタス等の灰色かび病(Botrytis cinerea);トマト、キュウリ、豆類、イチゴ、ジャガイモ、ナタネ、キャベツ、ナス、レタス等の菌核病(Sclerotinia sclerotiorum);トマト、キュウリ、豆類、ダイコン、スイカ、ナス、ナタネ、ピーマン、ホウレンソウ、テンサイ等各種野菜の苗立枯病(Rhizoctonia spp.、Pythium spp.、Fusarium spp.、Phythophthora spp.、Sclerotinia sclerotiorum等);ウリ類のべと病(Pseudoperonospora cubensis)、うどんこ病(Sphaerotheca fuliginea)、炭疽病(Colletotrichum lagenarium)、つる枯病(Mycosphaerella melonis)、つる割病(Fusarium oxysporum)、疫病(Phytophthora parasiticaPhytophthora melonisPhytophthora nicotianaePhytophthora drechsleriPhytophthora capsici等);トマトの輪紋病(Alternaria solani)、葉かび病(Cladosporium fulvum)、疫病(Phytophthora infestans)、萎凋病(Fusarium oxysporum)、根腐病(Pythium myriotylumPythium dissotocum)、炭疽病(Colletotrichum phomoides);ナスのうどんこ病(Sphaerotheca fuliginea等)、すすかび病(Mycovellosiella nattrassii)、疫病(Phytophthora infestans)、褐色腐敗病(Phytophthora capsici);
【0029】
ナタネの黒斑病(Alternaria brassicae)、アブラナ科野菜の黒斑病(Alternaria brassicae等)、白斑病(Cercosporella brassicae)、根朽病(Leptosphaeria maculans)、根こぶ病(Plasmodiophora brassicae)、べと病(Peronospora brassicae);キャベツの株腐病(Rhizoctonia solani)、萎黄病(Fusarium oxysporum);ハクサイの尻腐病(Rhizoctonia solani)、黄化病(Verticillium dahliae);ネギのさび病(Puccinia allii)、黒斑病(Alternaria porri)、白絹病(Sclerotium rolfsii)、白色疫病(Phytophthora porri);ダイズの紫斑病(Cercospora kikuchii)、黒とう病(Elsinoe glycines)、黒点病(Diaporthe phaseololum)、リゾクトニア根腐病(Rhizoctonia solani)、茎疫病(Phytophthora megasperma)、べと病(Peronospora manshurica)、さび病(Phakopsora pachyrhizi)、炭疽病(Colletotrichum truncatum);
【0030】
インゲンの炭疽病(Colletotrichum lindemuthianum);ラッカセイの黒渋病(Mycosphaerella personatum)、褐斑病(Cercospora arachidicola);エンドウのうどんこ病(Erysiphe pisi)、べと病(Peronospora pisi);ソラマメのべと病(Peronospora viciae)、疫病(Phytophthora nicotianae);ジャガイモの夏疫病(Alternaria solani)、黒あざ病(Rhizoctonia solani)、疫病(Phytophthora infestans)、銀か病(Spondylocladium atrovirens)、乾腐病(Fusarium oxysporumFusarium solani)、粉状そうか病(Spongospora subterranea);テンサイの褐斑病(Cercospora beticola)、べと病(Peronospora schachtii)、黒根病(Aphanomyces cochioides)、じゃのめ病(Phoma betae);
【0031】
ニンジンの黒葉枯病(Alternaria dauci);イチゴのうどんこ病(Sphaerotheca humuli)、疫病(Phytophthora nicotianae)、炭疽病(Glomerella cingulata)、果実腐敗病(Pythium ultimum);チャの網もち病(Exobasidium reticulatum)、白星病(Elsinoe leucospila)、炭疽病(Colletotrichum theae-sinensis)、輪紋病(Pestalotiopsis longiseta);タバコの赤星病(Alternaria alternata)、うどんこ病(Erysiphe cichoracearum)、炭疽病(Colletotrichum tabacum)、疫病(Phytophthora parasitica);ワタの立枯病(Fusarium oxysporum);ヒマワリの菌核病(Sclerotinia sclerotiorum);バラの黒星病(Diplocarpon rosae)、うどんこ病(Sphaerotheca pannosa)、疫病(Phytophthora megasperma)、べと病(Peronospora sparsa);キクの褐斑病(Septoria chrysanthemi-indici)、白さび病(Puccinia horiana)、疫病(Phytophthora cactorum);シバのブラウンパッチ病(Rhizoctonia solani)、ダラースポット病(Sclerotinia homoeocarpa)、カーブラリア葉枯病(Curvularia geniculata)、さび病 (Puccinia zoysiae)、ヘルミントスポリウム葉枯病(Cochliobolus sp.)、雲形病(Rhynchosporium secalis)、立枯病(Gaeumannomyces graminis)、炭疽病(Colletotrichum graminicola)、雪腐褐色小粒菌核病(Typhula incarnata)、雪腐黒色小粒菌核病(Typhula ishikariensis)、雪腐大粒菌核病(Sclerotinia borealis)、フェアリーリング病(Marasmius oreades等)、ピシウム病(Pythium aphanidermatum等)、いもち病(Pyricularia oryzae)。
【0032】
本発明の詳細を実施例で説明する。 本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0033】
本実施例では、イネいもち病防除試験を行った。
供試植物(イネ品種:幸風)を播種後、本葉が3枚展開するまで栽培した。試験では、D−タロース、D-アロースおよびD-プシコースが所定の濃度となるように蒸留水で希釈した希釈液(10ml)を散布した。散布3日後の苗に、1×10個/mlのイネいもち病菌(Pyricularia oryze)の分生胞子を噴霧接種した後、室温が20〜23℃の接種室に約18時間放置し、発病を促した。接種10日後の発病程度を調査し、その効果を評価した。
なお、試験では1区10本の苗を対象として、発病程度を評価した。なお、試験は2連制で行い、発病度から防除価を算出した。
[発病度]
0:無発病
1:発病面積が無処理区の40%未満
2:発病面積が無処理区の40%以上〜80%未満の発病
3:発病面積が無処理区の80%以上
[防除価]
防除価=100{1−(n/N)}
N=無処理区の発病度, n=各区の発病度
【0034】
【表1】

【0035】
本試験の結果、D−タロース散布区(50000、10000、5000および1000ppm)の防除価は96.7、96.7、96.7、58.3、D−アロース散布区(50000および10000ppm)の防除価は100および60、D−プシコース散布区(50000ppm)の防除価は53.3であった。
【実施例2】
【0036】
本実施例では、キュウリ炭そ病防除試験を行った。
供試植物(キュウリ品種:相模半白)を播種後、本葉が1枚展開するまで栽培した。試験では、D−タロース、D-アロース、D-プシコースおよびL−フルクトースが所定の濃度となるように蒸留水で希釈した希釈液(10ml)を散布した。散布3日後の苗に、1×10個/mlのキュウリ炭疽病菌(Colletotrichum lagenarium)の分生胞子を噴霧接種した後、室温が20〜23℃の接種室に約18時間放置し、発病を促した。接種10日後の発病程度を調査し、その効果を評価した。
1区8本の苗を対象として、発病程度を評価した。なお、試験は2連制で行い、発病度から防除価を算出した。なお、発病程度および判定は、実施例1と同様に行った。
【0037】
【表2】

【0038】
本試験の結果、D−タロース散布区(50000ppm)の防除価は66.7、D−アロース散布区(50000ppm)の防除価は80.0、D−プシコース散布区(50000ppm)の防除価は66.7、L−フルクトース散布区(50000ppm)の防除価は83.3であった
【実施例3】
【0039】
本実施例では、キャベツ黒すす病防除試験を行った。
供試植物(キャベツ品種:四季穫)を播種後、子葉が展開するまで栽培した。試験では、D−タロース、D-アロースおよびL−フルクトースが所定の濃度となるように蒸留水で希釈した希釈液(10ml)を散布した。散布3日後の苗に、1×10個/mlのキャベツ黒すす病菌(Alternaria brassicicola)の分生胞子を噴霧接種した後、室温が20〜23℃の接種室に約48時間放置し、発病を促した。接種2日後の発病程度を調査し、その効果を評価した。
1区2本の苗を対象として、発病程度を評価した。なお、試験は2連制で行い、発病度から防除価を算出した。なお、発病程度および判定は、実施例1と同様に行った。
【0040】
【表3】

【0041】
本試験の結果、D−タロース散布区(50000、10000ppm)の防除価は100、60、D−アロース散布区(50000、10000ppm)の防除価は73.3、50、L−フルクトース散布区(50000、10000ppm)の防除価は100、60であった。
【実施例4】
【0042】
本実施例では、イネごま葉枯病防除試験を行った。
供試植物(イネ品種:幸風)を播種後、本葉が3枚展開するまで栽培した。試験では、D−タロースが所定の濃度となるように蒸留水で希釈した希釈液(10ml)を散布した。散布3日後の苗に、1×10個/mlのイネごま葉枯病菌(Cochliobolus miyabeanus)の分生胞子を噴霧接種した後、室温が20〜23℃の接種室に約18時間放置し、発病を促した。接種4日後の発病程度を調査し、その効果を評価した。
1区10本の苗を対象として、発病程度を評価した。なお、試験は2連制で行い、発病度から防除価を算出した。なお、発病程度および判定は、実施例1と同様に行った。
【0043】
【表4】

【0044】
本試験の結果、D−タロース散布区(50000ppm)の防除価は50であった。
【実施例5】
【0045】
本実施例では、リンゴ黒星病防除試験を行った。
供試植物(リンゴ品種:王林)を播種後、本葉が4枚展開するまで栽培した。試験では、D−タロースが所定の濃度となるように蒸留水で希釈した希釈液(10ml)を散布した。散布3日後の苗に、1×10個/mlのリンゴ黒星病菌(Venturia inaequalis)の分生胞子を噴霧接種した後、室温が20〜23℃の接種室に約18時間放置し、発病を促した。接種10日後の発病程度を調査し、その効果を評価した。
1区2本の苗を対象として、発病程度を評価した。なお、試験は2連制で行い、発病度から防除価を算出した。なお、発病程度および判定は、実施例1と同様に行った。
【0046】
【表5】

【0047】
本試験の結果、D−タロース散布区(50000ppm)の防除価は83.3であった。
【実施例6】
【0048】
本実施例では、オオムギうどんこ病防除試験を行った。
供試植物(オオムギ品種:赤神力)を播種後、本葉が1枚展開するまで栽培した。試験では、D−タロース、D−プシコースが所定の濃度となるように蒸留水で希釈した希釈液(10ml)を散布した。散布3日後の苗に、1×10個/mlのオオムギうどんこ病菌(Erysiphe graminis f.sp.hordei)の分生胞子を噴霧接種した後、7日後の発病程度を調査し、その効果を評価した。
1区10本の苗を対象として、発病程度を評価した。なお、試験は2連制で行い、発病度から防除価を算出した。なお、発病程度および判定は、実施例1と同様に行った。
【0049】
【表6】

【0050】
本試験の結果、D−タロース散布区(50000、10000ppm)の防除価は100、96.7、D−プシコース散布区(50000ppm)の防除価は66.7であった。
【実施例7】
【0051】
本実施例では、キュウリうどんこ病防除試験を行った。
供試植物(キュウリ品種:相模半白)を播種後、本葉が1枚展開するまで栽培した。試験では、D−タロース、D−アロース、D−プシコースが所定の濃度となるように蒸留水で希釈した希釈液(10ml)を散布した。散布3日後の苗に、1×10個/mlのキュウリうどんこ病菌(Sphaerotheca fuliginea)の分生胞子を噴霧接種した後、10日後の発病程度を調査し、その効果を評価した。
1区2本の苗を対象として、発病程度を評価した。なお、試験は2連制で行い、発病度から防除価を算出した。なお、発病程度および判定は、実施例1と同様に行った。
【0052】
【表7】

【0053】
本試験の結果、D−タロース散布区(50000、10000ppm)の防除価は93.3、50、D−アロース散布区(50000ppm)の防除価は83.3、D−プシコース散布区(50000ppm)の防除価は50であった。
【実施例8】
【0054】
本実施例では、イネ紋枯病防除試験を行った。
供試植物(イネ品種:幸風)を播種後、本葉が3枚展開するまで栽培した。試験では、D−ガラクトースが所定の濃度となるように蒸留水で希釈した希釈液(10ml)を散布した。散布3日後の苗に、イネ紋枯病菌(Thanatephorus cucumeris;Rhizoctonia solani AG-I)を培養したエンバク種子を接種した後、室温が28℃の接種室に約48時間放置し、発病を促した。接種10日後の発病程度を調査し、その効果を評価した。
1区10本の苗を対象として、発病程度を評価した。なお、試験は2連制で行い、発病度から防除価を算出した。なお、発病程度および判定は、実施例1と同様に行った。
【0055】
【表8】

【0056】
本試験の結果、D−ガラクトース散布区(50000ppm)の防除価は50であった。
【実施例9】
【0057】
本実施例では、トマト疫病防除試験を行った。
供試植物(トマト品種:大型福寿)を播種後、本葉が5枚展開するまで栽培した。試験では、D−アロースが所定の濃度となるように蒸留水で希釈した希釈液(10ml)を散布した。散布3日後の苗に、1×10個/mlのトマト疫病菌(Phytophthora infestans)の遊走子のう懸濁液を噴霧接種した後、室温が20℃の接種室に約18時間放置し、発病を促した。接種7日後の発病程度を調査し、その効果を評価した。
1区1本の苗を対象として、発病程度を評価した。なお、試験は2連制で行い、発病度から防除価を算出した。なお、発病程度および判定は、実施例1と同様に行った。
【0058】
【表9】

【0059】
本試験の結果、D−アロース散布区(50000ppm)の防除価は50であった。
【実施例10】
【0060】
本実施例では、キュウリべと病防除試験を行った。
供試植物(キュウリ品種:相模半白)を播種後、本葉が1枚展開するまで栽培した。試験では、D−アロースが所定の濃度となるように蒸留水で希釈した希釈液(10ml)を散布した。散布3日後の苗に、1×10個/mlのキュウリべと病菌(Pseudoperonospora cubensis)の遊走子のう懸濁液を噴霧接種した後、室温が20℃の接種室に約18時間放置し、発病を促した。接種7日後の発病程度を調査し、その効果を評価した。
1区1本の苗を対象として、発病程度を評価した。なお、試験は2連制で行い、発病度から防除価を算出した。なお、発病程度および判定は、実施例1と同様に行った。
【0061】
【表10】

【0062】
本試験の結果、D−アロース散布区(50000、10000ppm)の防除価は86.7、66.7であった。
【実施例11】
【0063】
本実施例では、キュウリ苗立枯病防除試験を行った。
土壌1Lにキュウリ苗立枯病菌(Pythium aphanidermatum)の菌糸(100g)を混和し、汚染土壌を作成した。汚染土壌を含む5×5cmのポットにキュウリ種子(相模半白)5粒を播種し、覆土した後、10mLのD−タガトース希釈液を潅注した。1区5本の苗を対象として、2週間後に発病の有無を調査し、発病率を算出した。なお、試験は2連制で行い、防除価は発病率から算出した。
【0064】
【表11】

【0065】
本試験の結果、D−アロース処理区(50000、10000ppm)の防除価は66.7、90、D−ガラクトース処理区(50000ppm)の防除価は83.3、L−フルクトース処理区(50000、10000ppm)の防除価は83.3、66.7であった。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、単糖が、菌類病に対する植物病害防除剤として利用可能であることを明らかにしたものである。単糖は、茎葉散布剤、土壌処理剤、種子処理剤、あるいは水耕培養液処理剤として用いることができ、宿主植物に薬害を与えることなく、種々の菌類による植物病害を防除することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単糖を有効成分とすることを特徴とする植物の菌類病害防除剤。
【請求項2】
単糖が、D−タロース、L−フルクトース、D-アロース、D-プシコース、およびD−ガラクトースからなる群から選ばれる請求項1に記載の植物の菌類病害防除剤。
【請求項3】
菌類病が、子のう菌類、担子菌類、鞭毛菌類、接合菌類、卵菌類および不完全菌類からなる群より選ばれる菌類による病害である請求項1に記載の植物の菌類病害防除剤。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の植物の菌類病害防除剤を植物、土壌および水耕培養液へ施用することを特徴とする植物の菌類病害防除方法。
【請求項5】
植物への施用が、菌類病害防除剤を植物体または種子と接触させる、または栽培土壌に含有させることにより植物の根または地下茎に接触させる請求項4に記載の植物の菌類病害防除方法。
【請求項6】
土壌または水耕培養液へ施用は、土壌の場合、植物病害防除剤の土壌表面への処理、土壌への潅注、または土壌に混和、水耕培養液の場合は、植物病害防除剤を水耕培養液に希釈する請求項4に記載の植物の菌類病害防除方法。

【公開番号】特開2012−188367(P2012−188367A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51440(P2011−51440)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(303020956)三井化学アグロ株式会社 (70)
【出願人】(304028346)国立大学法人 香川大学 (285)
【出願人】(000144991)株式会社四国総合研究所 (116)
【Fターム(参考)】