説明

植物や藻へ施用する炭酸ガス溶解水および炭酸ガス溶解の育成水の効率的な供給装置および供給方法

【課題】本発明はハウス栽培や植物工場の植物や、バイオリアクター等の藻へ施用する炭酸ガス溶解水や炭酸ガス溶解の育成水の効率的な供給装置および供給方法を提供する。
【解決手段】密閉できる蓋または供給用コックのついた炭酸ガス溶解槽で、外部への送液用の切り換えコック付の給液循環及び送液の兼用ポンプとアスピレータやマイクロバブル発生用ノズルを用い、炭酸ガス溶解槽内に炭酸ガスを供給し、炭酸ガスと水または育成液を循環させ、炭酸ガスの面積式フローメーターやバブルカウンターで炭酸ガス溶解槽の炭酸ガスの飽和状態を検出し、炭酸ガス供給を止め、切り替えコックを送液側にし、外部に送液することにより、炭酸ガス溶解水または炭酸ガス溶解の育成液を供給する供給装置と供給方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハウス栽培や植物工場の植物やバイオリアクター等の藻へ施用する炭酸ガス溶解水や炭酸ガス溶解の育成水の効率的な供給方法および供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
植物を栽培するハウスや植物工場では、収量アップのためハウスや植物工場内の炭酸ガス濃度を上げる方法がとられるが、炭酸ガスが高価なため選択的に炭酸ガスを施用する方法として、インラインミキサーに炭酸ガスと水を供給する方法や、炭酸ガス溶解槽に炭酸ガスをあらかじめ決められたPHとなるまでバブリングして炭酸水を製造し、この炭酸水をハウス内へスプレーし、ファンで炭酸水をハウス内の植物の葉面へ付着させる炭酸ガスの供給方法が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
また、水または植物の育成液を循環させるポンプの配管に炭酸ガスボンベから供給される炭酸ガスを溶解させる溶解ミキサーを使用し、PH指示計で指定されたPHとなると当該の水または育成液を噴霧、または供給する装置が提案されている。(例えば、特許文献2参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−199920号 公報
【特許文献2】特開2010−22号 公報
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の製造方法は、インラインミキサーでの1回のみの炭酸ガスとの混合や、密閉状態の炭酸ガス溶解槽内に炭酸ガスを炭酸ガス供給装置からあらかじめ決められたPHとなるまでバブリングするだけであり、十分高濃度な炭酸ガスの溶解水が製造されないこと、また、PHメーターを使用する場合、使用時にPHメーターのPH校正を行う必要やPH電極の更新が必要となるため、操作が複雑であり、ランニングコストも高くなる。また、特許文献2の装置も、同様に使用時にPHメーターのPH校正を行う必要やPH電極の更新が必要となることと、本装置では育成液収納タンク内で分離した炭酸ガスを育成液に再度溶解させるようになっておらず、肥料の投入口であるタンクの蓋部分からの炭酸ガス流出が起り、炭酸ガスのロスとなってしまう欠点があった。
【0006】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、高価な炭酸ガスの損失なく、かつ、ランニングコストを抑え、メンテナンスも簡単で、効率的に炭酸ガスの溶解水および炭酸ガス溶解の育成液を製造供給する供給方法および安価な供給装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するため、水または水と液肥原液や粉末液肥を入れるための炭酸ガス溶解槽を密閉できる蓋または供給用コックのついたものとし、炭酸ガス溶解槽の液層部に気液混合できるアスピレータの吐出口やマイクロバブル発生用ノズルの吐出口またはその配管口を設置し、その給液口には、外部への送液用の切り換えコック付の給液循環及び送液の兼用ポンプからの送液配管を接続し、その吸気口には、炭酸ガス溶解槽の気層部に設置された吸気口につながる配管を接続し、また、兼用ポンプへ給液する配管の給液口は炭酸ガス溶解槽の液層部に設置する。炭酸ガス溶解槽に供給する炭酸ガスの供給口は、溶解槽の気層部、または液層部に設置する。気層部の場合は、そのまま吸気口より、液層部の場合は炭酸ガスのバブリング後に吸気される。また、炭酸ガス溶解槽の気層部には外部とつながった炭酸ガスの面積式フローメーターやバブルカウンターを設置する。
【0008】
まず、兼用ポンプの切替えコックを給液循環用にセットし、蓋または供給用コックから水または水や液肥原液や粉末液肥の粉体肥料を所定量入れ密閉し、兼用ポンプを稼動させ、炭酸ガス溶解槽内に炭酸ガスを供給し、炭酸ガス溶解槽内の炭酸ガスと水または育成液を循環させる。循環により、育成液内の肥料成分が均一化されるとともに気層部にある炭酸ガスが吸気口より吸気され、バブルやマイクロバブルとなり育成液に溶解する。また、バブルのままや溶解後再度分離し気層部に流出した炭酸ガスは再度、吸気口より吸気されて液層部にて溶解する。炭酸ガスが飽和状態となると、炭酸ガス溶解槽が加圧状態となり、炭酸ガスの面積式フローメーターやバブルカウンターに炭酸ガスが流出し、炭酸ガスが過剰となったことが確認できるので、炭酸ガスの供給を止め、切り替えコックを送液側に切り替え、製造した炭酸ガス溶解水または炭酸ガス溶解の育成液をポンプで外部に送液することにより、炭酸ガスが十分に溶解した炭酸ガス溶解水または炭酸ガス溶解の育成液を供給することができる。
【0009】
また、外部への送液用の切り換えコック付の給液循環及び送液の兼用ポンプの代わりに、給液循環専用ポンプをつけ、炭酸ガス溶解槽に、別途液を取り出すための密閉できる蓋または排出用コックをつけることにより、蓋または供給用コックから水または水と液肥原液や粉末液肥の粉体肥料を所定量入れ密閉し、ポンプを稼動させ、炭酸ガス溶解槽内に炭酸ガスを供給し、炭酸ガス溶解槽内の炭酸ガスと水または育成液を循環させ、炭酸ガスの飽和状態を検出すると炭酸ガスの供給を止め、ポンプを停止し、製造した炭酸ガス溶解水または炭酸ガス溶解の育成液を蓋や排出用コックから、外部に取り出すことにより、炭酸ガスが十分に溶解した炭酸ガス溶解水または炭酸ガス溶解の育成液を供給することができる。
【0010】
また、初期投資がかかるが、炭酸ガスの面積式フローメーターやバブルカウンターを検知器付の流量計とし、一定量の流出を検知したら炭酸ガスの供給バルブを閉じるシーケンサをつけることができる。
【発明の効果】
【0011】
以上の説明から明らかなように本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
【0012】
炭酸ガス溶解槽に水や液肥原液や粉末液肥の粉体肥料を所定量入れ密閉し、炭酸ガス溶解槽内に炭酸ガスを供給し、炭酸ガス溶解槽内の炭酸ガスと育成液を循環させることにより、育成液内の肥料成分を均一化させることができる。
【0013】
密閉できる炭酸ガス溶解槽を使用して、炭酸ガス溶解槽内に炭酸ガスを供給し、炭酸ガス溶解槽内の炭酸ガスと水または育成液を循環させることにより、気層部にある炭酸ガスが吸気口より吸気され、バブルやマイクロバブルとなり育成液に溶解させ、バブルのままや溶解後再度分離し気層部に流出した炭酸ガスは再度、吸気口より吸気されて液層部にて溶解させることにより、高濃度の炭酸ガス溶解水または炭酸ガス溶解の育成水を製造できる。
【0014】
上記の方法で炭酸ガスが飽和状態となると、炭酸ガス溶解槽が加圧状態となり、炭酸ガスの面積式フローメーターやバブルカウンターに炭酸ガスが流出し、炭酸ガスが過剰となったことが確認できるので、水や液肥原液や粉末液肥の影響による育成液のPHに関係なく、炭酸ガスが飽和状態となったことがメンテナンスの簡単な炭酸ガスの面積式フローメーターやバブルカウンターで確認できる。
【0015】
ト記の方法にすることによりPHメーターのPH標準液による補正や、PH電極の更新が不要となり、ランニングコストの削減ができる。
【0016】
上記の方法にすることにより、炭酸ガス溶解槽の蓋部分等から、炭酸ガスが外部に流出することなく、炭酸ガスを飽和状態とすることができ、高価な炭酸ガスのロスをなくすことができる。
【0017】
上記の方法にすることにより、水や液肥原液や粉末液肥を入れる時以外は、本装置の内部は、外気に触れることがなく、この時点での藻等の混入に注意した上、仕込み後直ぐに炭酸ガスを溶解させ、育成液を酸性化とすることにより、不要な藻等の繁殖を抑えることができる。
【0018】
装置が単純なためいろいろな大きさの装置を設計できる。スケールを大きくする場合は、炭酸ガス溶解槽を大きくしアスピレータやマイクロバブル発生用ノズルとその配管を増設し、ポンプの能力をアップするだけでよく、また小スケールのものも作成でき、例えばショールーム用の植物工場や小型バイオリアクターで使用する小型装置も可能であり、効率的である。
【0019】
ショールーム用での炭酸ガス供給を考えた場合、屋外や換気のよい場所で、別途、本溶解水を製造し屋内へ持ち込み供給する等が可能であり、直接炭酸ガスを供給するより安全である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】炭酸ガス溶解液製造装置全体図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の形態を図1に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0022】
図1において、1は密閉された炭酸ガス溶解槽であり、2は水や液肥原液や粉末液肥を入れるための炭酸ガス溶解槽1を密閉できる蓋である。3は炭酸ガス溶解槽1の気層部、4は液層部である。液層部4の下部にアスピレータ5を設置し、その給液口6には外部への送液用の切り換えコック7付の給液循環及び送液の兼用ポンプ8からの送液配管9を接続、また、アスピレータ5の吸気口10には、気層部3に設置された吸気口11につながる配管12を接続し、また、上記兼用ポンプ8の給液する配管13の給液口14は液層部4に設置する。炭酸ガス溶解槽1に供給する炭酸ガスの供給口15は、気層部3に設置する。また、気層部3には外部とつながった炭酸ガスの面積式フローメーター16を設置する。炭酸ガスの溶解した水または育成液を製造するときは、まず、兼用ポンプ8の切替えコック7を給液循環用にセットし、蓋2から水や液肥原液や粉末液肥の粉体肥料を所定量入れ密閉し、兼用ポンプ8を稼動させ、炭酸ガスを炭酸ガスボンベ17から配管18と調整バルブ19を通して供給口15に供給し、本育成液をアスピレータ5で循環させれば、育成液内の肥料成分が均一化されるとともに、アスピレータ5の吸気口10へ気層部3にある炭酸ガスが吸気口11を通して吸気され、バブルとなり育成液に溶解する。また、バブルのままや溶解後再度分離して気層部3に流出した炭酸ガスは再度、吸気口11より吸気されて液層部4にて溶解される。炭酸ガスが飽和状態となると、炭酸ガス溶解槽が加圧状態となり、炭酸ガスの面積式フローメーター16から、炭酸ガスが流出し、炭酸ガスが過剰となったことが確認できるので、炭酸ガスボンベ17からの炭酸ガス供給を止め、切替えコック7を送液側にし、送液口20より、水または育成液を送液することにより、炭酸ガスが高濃度に溶解した炭酸ガス溶解水または炭酸ガス溶解の育成液を供給することができる。
【実施例】
【0023】
以下に本発明の炭酸ガス溶解水の製造装置、及びの製造時の炭酸ガス濃度の実測値について説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものでない。
【0024】
実施例−1
密閉できる蓋つきの内容量150Lのタンクで液等を入れたとき液層部となる場所にアスピレータを設置し、その給液口には送液用の切り換えコック付の給液循環及び送液の兼用ポンプからの送液配管を接続し、また、アスピレータの吸気口はタンク上部の気層部となる場所にその吸気口を設置し配管で接続した。また、上記兼用ポンプの給液する配管の給液口をタンクの液層部となる場所に設置した。タンクに供給する炭酸ガスの供給口をタンク上部に設置し、タンク上部には外部とつながった炭酸ガスの面積式フローメーターを設置した。まず、兼用ポンプの切替えコックを給液循環用にセットし、蓋から水を120L入れ密閉し、兼用ポンプを稼動させ、炭酸ガスを炭酸ガスボンベから供給口にゲージ圧0.15Mpa、流量7L/minで、気層部に供給し、本液をアスピレータで循環させた。約17分経過したころ、炭酸ガスの面積式フローメーターのフロートが上昇し、炭酸ガスが過剰となったことが確認できたので、炭酸ガスボンベからの炭酸ガス供給を止め、切替えコックを送液側にし、送液口より液を送液し、炭酸ガスの溶解量を確認したところ、水温21℃、PH4.9であった。また、炭酸ガス供給前の水は水温21℃、PH7.0であった。
【符号の説明】
【0025】
1 炭酸ガス溶解槽
2 炭酸ガス溶解槽を密閉できる蓋
3 炭酸ガス溶解槽の気層部
4 炭酸ガス溶解槽の液層部
5 アスピレータ
6 アスピレータの給液口
7 切り換えコック
8 給液循環及び送液の兼用ポンプ
9 送液配管
10 スピレータの吸気口
11 吸気口
12 配管
13 兼用ポンプ給液配管
14 給液配管給液口
15 炭酸ガス供給口
16 炭酸ガスの面積式フローメーター
17 炭酸ガスボンベ
18 炭酸ガスボンベ配管
19 炭酸ガスボンベ調整バルブ
20 送液口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水または水と液肥原液や粉末液肥を入れるため、密閉できる蓋または供給用コックの付いた炭酸ガス溶解槽と、炭酸ガス溶解槽の液層部に気液混合できるアスピレータの吐出口やマイクロバブル発生用ノズルの吐出口またはその配管口が設置され、その給液口には外部への送液用の切り換えコック付の給液循環及び送液の兼用ポンプからの送液配管が接続され、その吸気口には炭酸ガス溶解槽の気層部に設置された吸気口につながる配管が接続され、また、上記兼用ポンプへ給液する配管の給液口は炭酸ガス溶解槽の液層部に設置され、炭酸ガス溶解槽に供給する炭酸ガスの供給口は、溶解槽の気層部、または液層部に設置され、また、炭酸ガス溶解槽の気層部には外部とつながった炭酸ガスの面積式フローメーターやバブルカウンターが設置されたことを特徴とする炭酸ガス溶解水または炭酸ガス溶解の育成液の供給装置。
【請求項2】
水または水と液肥原液や粉末液肥を入れるため、密閉できる蓋または供給用コック、及び、液を取り出すための密閉できる蓋、または排出用コックの付いた炭酸ガス溶解槽と、炭酸ガス溶解槽の液層部に気液混合できるアスピレータの吐出口やマイクロバブル発生用ノズルの吐出口またはその配管口が設置され、その給液口には給液循環専用ポンプから配管が接続され、その吸気口には炭酸ガス溶解槽の気層部に設置された吸気口につながる配管が接続され、また、上記ポンプへ給液する配管の給液口は炭酸ガス溶解槽の液層部に設置され、炭酸ガス溶解槽に供給する炭酸ガスの供給口は、溶解槽の気層部、または液層部に設置され、また、炭酸ガス溶解槽の気層部には外部とつながった炭酸ガスの面積式フローメーターやバブルカウンターが設置されたことを特徴とする炭酸ガス溶解水または炭酸ガス溶解の育成液の供給装置。
【請求項3】
請求項1、2の炭酸ガスの面積式フローメーターやバブルカウンターを検知器付の流量計とし、一定量の流出を検知したら炭酸ガスの供給バルブを閉じるシーケンサをつけることを特徴とする炭酸ガス溶解水または炭酸ガス溶解の育成液の供給装置。
【請求項4】
請求項1の供給装置を用いて、兼用ポンプの切替えコックを給液循環用にセットし、蓋または供給用コックから水または水と液肥原液や粉末液肥の粉体肥料を所定量入れ密閉し、兼用ポンプを稼動させ、炭酸ガス溶解槽内に炭酸ガスを供給し、炭酸ガス溶解槽内の炭酸ガスと水または育成液を循環させ、炭酸ガスの飽和状態を検出すると炭酸ガスの供給を止め、切り替えコックを送液側に切り替え、製造した炭酸ガス溶解水または炭酸ガス溶解の育成液をポンプで外部に送液することを特徴とする炭酸ガス溶解水または炭酸ガス溶解の育成液の供給方法。
【請求項5】
請求項2の供給装置を用いて、蓋または供給用コックから水または水と液肥原液や粉末液肥の粉体肥料を所定量入れ密閉し、ポンプを稼動させ、炭酸ガス溶解槽内に炭酸ガスを供給し、炭酸ガス溶解槽内の炭酸ガスと水または育成液を循環させ、炭酸ガスの飽和状態を検出すると炭酸ガスの供給を止め、ポンプを停止し、製造した炭酸ガス溶解水または炭酸ガス溶解の育成液を蓋や排出用コックから、外部に取り出すことを特徴とする炭酸ガス溶解水または炭酸ガス溶解の育成液の供給方法。

【図1】
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