説明

植物性廃材の有効利用方法

【課題】刈草、刈葉茎、つる、ワラ、針葉樹皮、剪定枝、樹枝、樹幹等の植物性廃材の新規有効利用方法を提供する。
【解決手段】破砕機の回転ドラムに取り付けられたハンマー部台座に超硬特殊鋼製の針状もしくはくし状の刃を取り付け、これによって極細の植物性短繊維ファイバーを得る、これにアルミニウムもしくはアルミニウム化合物、あるいは人工ゼオライトを混合あるいは共用する植物生育基材、土壌改良剤ならびに敷設材、および屋上、ベランダ、壁面等の緑化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はこれまでその多くが廃棄埋立てあるいは焼却処分されていた有機性廃棄物、中でも刈草、刈葉茎、つる、茎、針葉樹皮、剪定枝、未利用樹枝、樹幹、間伐材、根株等の植物性廃棄物の有効利用方法を提案するものであり、特にかかる植物性廃材を植生基材(植物育成用資材、基盤材)ならびに土壌改良剤(土質改良資材)ならびにマルチ材、敷設資材として有効活用する技術を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
刈草、刈葉茎、つる、針葉樹皮、剪定枝、未利用樹枝、樹幹、間伐材、根株等の植物性廃材はその多くが難分解性とされるセルローズ、ヘミヤルローズ、リグニン等を主成分としており、一部が堆肥化されてリサイクル活用されているが、その大部分は埋立て処分もしくは焼却処分されておりこの様なバイオマス資源の有効活用技術が求められており、これらバイオマス資源有効活用の手法を拡大する事によって、循環型社会形成の一助となると共に、焼却処分による二酸化炭素の排出量を縮減し、地球温暖化の進行を抑制あるいは遅延する一手法を提供するものである。
【特許文献1】特許第3075648号
【特許文献2】特許第3103394号
【特許文献3】特許第3327880号
【特許文献4】特許第3040800号
【非特許文献1】日本土壌肥料学会誌第57巻第2号「ヒドロキシアルミニウムによる堆肥の分解抑制」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これまで刈草や剪定枝葉等の植物性廃棄物はチッパーと称される受け刃とカッター刃と称せられる数枚の板状刃を回転軸に取り付けて回転させて、これを固定された受け刃で切断する手法やシュレッダーといわれる数枚の刃の取り付けられた2本の軸を互いに逆転させて、そのかん合部で切断する手法で裁断されていた。
【0004】
又、根株や端木材等の木質系材料を破砕する手法としてはハンマーミルといわれる回転ドラムに取り付けられた斧状のハンマーを回転させて打撃し破砕していた。この破砕された植物材料(破砕チップ)をさらにスクリーン部分で圧砕する等の手法で一定形状に裁断、破砕されていた。
【0005】
この様な破砕や裁断の手法では、一定形状の細い繊維状物すなわち植物性の短繊維ファイバーを得る事は困難であった。すなわちシュレッダーでは最小でも3mm程度の細切物を得る事が限界であり、ハンマーミルの手法ではスクリーンの径が最小でも5mm程度が限界であった。
【0006】
さらに製材工場等で用いられるスギ、ヒノキ等の針葉樹の樹皮を剥ぎ取る装置はリングバーカといわれる樹木の円周にそって樹皮をリング状に剥ぎ取る装置や水圧を用いて樹皮を剥ぎ取るジェットバーカ等が用いられるが、いずれも細切状あるいはカールした羽毛状のものが産出される。
【0007】
刈草、刈茎、ワラ、針葉樹皮等の植物性廃材は、径(幅)2mm以下、長さ100mm以下の植物性短繊維ファイバー状に加工する事によって土壌の物理的性質を改善する土壌改良材、すなわち繊維と繊維の間に遊離水を抱持する保水機能や余分な水分を繊維に沿って排出する排水機能、繊維間に空気を保持し、弾力性を持ち通気性を改善する機能等の土壌の改質材やその機能を用いて、土壌改良剤植物生育基盤材料あるいはマルチ材等としての利用範囲は大きく拡大される。
【0008】
しかしながらこの様に細くあるいは薄く短い短繊維ファイバー状物として加工すると当然微生物による分解が促進されやすくなり、難分解性とされるセルローズやヘミセルローズ等でも数ヶ月で分解されてしまい堆肥化して土壌改良剤としての保水性、通気性、透水性等の機能は失われてしまう。これはテルペン類を含み抗菌性を持つと言われるスギ、ヒノキ等の針葉樹皮であっても同様である。
【0009】
微生物による分解(腐植)が進むと土壌改良機能が失われるばかりでなく、土壌菌等の微生物が有機物を分解する際、窒素を大量に消費するため窒素飢餓を生じたり、有機酸やガスを発生させたり、発酵熱を発生して植物を枯死させる等植物の生育基材としては不適な障害を発生させるという問題もある。
【0010】
すなわち植物性材料を、径2mm以下、長さ100mm以下の短繊維ファイバー状に加工する事によって撥水性は失われ、微生物による分解が促進される。特許第3040800号では、スギ、ヒノキ、ヒバ等の樹皮を切削して羽毛状に形成し、この羽毛状処理物が撥水性を持ち、保水性が充分得られないためこれを補う手段として界面活性剤を散布するが界面活性剤を多孔性粒子に吸着保持させるが、あるいは保水剤やバーミキュライトを添加する手法を提案している。又、特許第3075648号では、スギ、ヒノキ、ヒバ等の樹木の寸断物やこれらの皮層を破砕して得られる皮層チップあるいは皮層細切片、皮層含有木質細切片、皮層含有木質チップ等を用いた歩行および走行設備敷設緩衝材添加物が提案されているが、いずれも分解(腐植)を防ぐため寸断物、チップ材、細切片等比較的形状、寸法が大きく分解されにくい大きさのものを用いている。
【0011】
同様に特許第3103394号においてもスギ、ヒノキ等の抗菌性樹皮を細切物に加工し、競馬場ダートの土壌改良用人工土や該人工土を砂に重量比0.3%以上混入する土壌改良方法や該細切物からなる傾斜地用人工土が開示されているがいずれも前述の如く比較的大きな細切物を用いている。又、特許第3327880号では同様にスギ皮層切削物および/またはヒノキ皮層切削物を含有する人工培土組成物を使用する雑草防止方法や切削物の形状が羽毛状物である事、あるいはスギ、ヒノキ細切物からなるマルチ材や断熱材用組成物、スギ、ヒノキ切削物にバーミキュライトおよび/または保水材を含有する組成物や培土等が開示されているが、これも切削物や羽毛状物であり必ずしも形状は一定ではない。特に羽毛状物は製材工場におけるスギ、ヒノキ等の樹皮切削に用いられるリングバーカやジェットバーカの機械的特徴によって形成される形状である。
【0012】
すなわちいずれの特許も寸断物や細切片、破砕チップ切削物あるいは羽毛状物等であり、一定形状の短繊維ファイバー形状のものではなく、従ってその保水能を補う為に界面活性剤やバーミキュライト、保水材等を混入して用いている。これは短繊維ファイバー状に加工して土壌や砂に混入すると土壌菌といわれる微生物群の働きによって急速に分解され、その物理的機能が急速に失われると共に前述の如く分解時に発生するガスや熱、有機酸等の障害を発生し、培土や植物生育基材としては適さないためである。
【0013】
本発明では刈草、刈葉茎、つる、ワラ、針葉樹皮等の植物性廃材を径(幅)2mm以下、長さ100mm以下となる一定形状、寸法に切削加工して土壌改良剤や、土質改良剤、植生基材、マルチ材、敷設材等として長期間安定的に機能させると共に、短繊維ファイバーの遊離水の抱水機能を利用して保水剤を別途加えることなく、充分に保水機能を発揮させると共に、併せて通気性、透水性を改善し、長期間安定した植生基材ならびに土壌改良剤あるいは敷設、マルチ材を提供しようとするものである。
【0014】
以上、本発明の目的は植物性廃材を一定形状の細い短繊維ファイバー状に加工する技術を提供すると共に、加工された短繊維ファイバーを植生基材、土壌改良剤ならびにマルチ材あるいは敷設材として長期間安定して利用する事を可能にする技術を提供し、これによって植物性廃材の有効利用手法の枠を拡大することでバイオマス資源を有効に活用しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
植物性材料の切断あるいは破砕の手段としては、従来製紙原料を製造する為に用いられていたチッパーと言われる一定形状寸法に木質材料を切断する方法があり、回転軸に板状のカッター刃を取り付け、固定された受け刃とカッター刃回転軸の回転によって一定形状寸法のチップを製造する装置とシュレッダーと称される二軸の回転刃を相異なる方向に回転させて、そのかん合部で破砕する手法やハンマーミルと称される回転ドラムに取り付けられた略斧状あるいは四角錘状のハンマーを回転させて破砕するものがある。この装置で製造される破砕チップの形状寸法は一定ではないが破砕室の出口に取り付けられたスクリーンによってある程度の範囲に制限している。
【0016】
しかしいずれのタイプの破砕機も短繊維状の破砕物を得る為のものはではなく、スクリーンも微細なものは製造されていない。
【0017】
本発明ではドラムに取り付けられるハンマーあるいは台座部に針状あるいはくし状もしくは歯型状の超硬特殊鋼をろう付けによって取り付け、この針状もしくはくし状もしくは歯型の突起の付いたハンマーあるいは台座が取り付けられたドラムを回転させる事によって、植物性材料を一定形状寸法の短繊維ファイバー状に加工しようとするものである。針状あるいはくし状もしくは歯型の突起部はタングステンガバイト鋼等の超硬特殊鋼で製造されるため磨耗が少なく、なおかつ植物性廃材を所望の径、長さの細い繊維ファイバー状に切削加工することができる。
【0018】
こうして得られた植物性短繊維ファイバーはクッション性に富み、通気性、透水性に優れ、なおかつ繊維と繊維の間に水分を保持する抱水機能を持っているため保水性にも優れており、植物の生育基材や土壌改良剤としては優れた材料であり、その利用範囲は広い。しかし残念ながら土壌や砂等に混入あるいは共用した場合、繊維が細く、薄く、短く加工されている為、土壌菌等の微生物による分解が促進されその植生基材や土壌改良剤としての機能は分解の進行に伴なって急速に失われてしまい、数ヶ月後には発酵分解して堆肥化してしまう。この発酵分解の過程で微生物が急激に増殖する際、酸素を大量に消費し酸欠となる可能性がある他、中温菌や高温菌の働きが活発になると、60℃〜75℃の高熱を発したり、嫌気発酵の場合メタンガスを発生する他有機酸を発生させる。又、窒素を大量に消費するため植物の成長に欠かせない窒素分をうばわれて窒素飢餓を発生させる為、植物生育基材や培土としては好ましくない。
【0019】
本発明では植物性廃材を極細な短繊維ファイバー状に加工しても急速な発酵分解によって植物に悪影響を及ぼす事無く土壌改良剤としてもその機能を長期間安定的に発揮する手法として、発酵分解の速度を遅延し超遅速分解を可能とするものである。
その一つの手法として、非特許文献1.日本土壌肥料学会誌第57巻第2号にて久保田・箱石等が研究発表した「ヒドロキシアルミニウム処理による堆肥の分解抑制」に示される、Al++イオンが腐植酸と配位化合物を形成する事、PH3以下よりPH9の範囲で腐植酸とAl++イオンが複合体を形成する事、PH5以上ではHydoroxyAl複合体になる事、すなわち0.5ないし1個のHydoroxyAlイオンが腐植酸の持つ陰イオン吸着基と結合し、非交換態となってCECを滅する事が示されている。
堆肥中間物をAl処理堆肥、HydoroxyAL処理堆肥、無処理堆肥を比較すると、無処理区では腐植分解が進行し黒色を呈し、まり状に固まっていたのに対し、Al堆肥区、HydoroxyAl堆肥区では、褐色膨軟な繊維状を示し、3年間放置しても処理堆肥の形状はほとんど変化していなかったという。すなわち未分解の有機性植物繊維の形状はほとんど変化していなかった事が示されている。
【0020】
本発明は上記の堆肥の分解抑制の機能に着目してなされたものであり、未分解の有機性廃棄物の粉砕物や短繊維ファイバー状物の分解もアルミニウムあるいはアルミニウム化合物の添加によって、その腐植分解は抑制され、その土壌改良剤としての保水性や通気性、透水性等の物理的機能は長期間にわたって維持される。又、分解の進行が抑制的にゆっくりと進行する為、植物生育基材、土壌改良剤としてこれらの未分解材料を使用しても窒素飢餓による植物の生育不良、枯死を防ぎ、微生物の活発な働きによる酸欠を防ぎ、嫌気発酵等によって発生する硫化水素等の有毒ガスの発生を防ぎ、フェノール酸や酢酸等の有機酸の発生を抑制し、植物性破砕チップ材や短繊維ファイバー状物の腐植分解を抑制し、超遅速分解を可能にする事が確認された。
【0021】
すなわちアルミニウムやアルミニウム化合物あるいはアルミニウム化合物を主成分とする組成物堆肥や堆肥中間物に添加する事によって、その腐植分解が抑制されるのと同様に分解し易い形状に加工された植物性短繊維ファイバーや破砕チップ等はその分解進行が長期間に亘って抑制され、土壌改良剤や植生基材、マルチ材、敷設材等としての物理的機能は安定的に維持されることが確認された。
又、その配合量は重量比0.1%〜30%程度の範囲で使用されるが、至適には未分解の植物性材料の場合は1〜10%である。
【0022】
さらに本発明による分解抑制の異なる手法として、前掲の植物性短繊維ファイバーや未利用枝葉、樹幹、根株、間伐材等を粉砕して得た植物性破砕チップ材に、製紙スラッジ焼却灰あるいは石炭灰(フライアッシュ)を原料とする人工ゼオライトを混合することができる。フライアッシュは火力発電所で石炭を燃焼した後に生ずる燃焼灰であって、その主成分はケイ素(Si)及びアルミニウム(Al)であり、シリカ(SiO4)及びアルミナ(Al2O3)の化学形態で存在する。これを水酸化ナトリウム水溶液中で加熱処理する事によってアルカリ反応によってゼオライトが形成される。このゼオライトは三次元網目状構造を持つテクトアルミナケイ酸塩であり、連続した微細な孔隙からなる多孔質の構造を持ち、この孔隙中に水分を保持する機能を有すると共にSi四面体あるいはAl四面体を持ち、その構造から表面電荷イオン交換機能、吸着機能を持っている。
【0023】
本発明はこの人工ゼオライトのイオン交換性によるイオン結合機能に着目したものであり、微細な孔隙構造は水分を吸収保持し、アルミニウムあるいはアルミニウム化合物同様に腐植酸とイオン結合して分解の進行を抑制する。珪酸質(ガラス質)の微細な孔隙は土壌菌等の微生物のハビタットとはならずに抗菌性を持ちイオン結合によって腐植酸を結合し、発酵分解抑制機能を高めると共に、その保水機能によって植生基材としては有効な保水機能を持つと共に、分離吸着機能によって肥料分の溶出を防ぎ、肥料分の長期安定供給機能をもあわせ持つことができる。
【0024】
さらに本発明では発酵分解抑制の異なる手法として、撥水剤の散布によって極細なあるいは極薄な短繊維ファイバーに撥水効果を持たせる事によってその分解を抑制する手法を提供する。すなわち有機物を微生物が分解する為には、酸素、温度、水分が必要条件であり、その一つの要件である水分を撥水させる事によって分解の進行を抑制するものである。微生物が有機物を分解するためには通常60〜65%程度の水分含量が必要であるとされており、40%以下の水分含量では微生物の増殖は停止し、分解は進行しないといわれている。しかしながら短繊維ファイバーは撥水性を持つ事によって吸水、含水を抑制されても繊維間に抱水する為にその保水機能は損なわれず、繊維と繊維の間に遊離水を抱水する。このメカニズムは人の髪の毛と同様であり、髪の毛も撥水性を持ち、吸水しないが、毛髪と毛髪の間に抱水して洗髪した後、なかなか乾かない事は良く知られている。撥水剤としてはワックス系、シリコン系あるいはフッ素系等各種のものがあるが、シリコン系のものが一般的であり、使用法も簡便であり、スプレーや散布によって撥水効果を高めることができる。
【0025】
さらに本発明では、アクリル樹脂や酢酸ビニール樹脂等の造膜作用を有する樹脂の水溶液を請求項1からせ位急行5記載の短繊維ファイバーおよび/もしくは植物性破砕チップ材を散布あるいは敷設した上からスプレーあるいは散布することができる。この方法によれば、これらの合成樹脂が請求項1記載の短繊維ファイバー敷設物の上に造膜して雨水等の浸透を抑制し、効果的に水分の浸透を抑制し、撥水剤と同様の機能を発揮する。さらにアクリル樹脂や酢酸ビニール樹脂等は接着性を有し、からみ合った短繊維ファイバー敷設物を固定し、風雨や小動物等による飛散や移動を防止する。このためマルチ剤や敷設材は撥水性を持ち、分解の進行を抑制し、長期間安定して保持され、マルチ材、敷設材としての機能を発揮する。又、これらの短繊維ファイバーや植物性破砕チップ材は、タンク内やノズル部で合成樹脂水溶液と混合して吹き付ける事もできる。
【0026】
さらに本発明では未利用の樹枝、樹幹、根株、剪定枝葉、間伐材等の植物性廃材を破砕機によって径50mm以下長200mm以下となる様、破断チップ化して木質破砕チップを製造し、該木質破砕チップ材に請求項1から請求項5記載の植物性短繊維ファイバーを混入して植生基材を得る。この植生基材は木質破砕チップが粒径が大きく空隙率が高く、疎の状態であるところに植物性短繊維ファイバーを混入する事によって保水性を付与し、これによって植物の発芽・生育可能なハビタットを造成すると共に、木質破砕チップ材の発酵・分解を遅延し、発酵の進行によって発生する窒素飢餓や有機酸の発生等を抑制し、植物の生育環境を維持改善すると共に、道路の新設や開発に伴なって発生する植物性廃材の現地での有効利用方法を提供し、かかる工事におけるゼロエミッション化を実現することができる。
【0027】
さらに本発明では植物性破砕チップ等の粒径15mm以上の粗粒な組成物よりなる層と、請求項1〜請求項6記載の植物性短繊維ファイバーで構成される層および粒径5mm以下の細粒物からなる細粒層のうち少なくとも2層以上の複層構造を持つ屋上、屋根、ベランダ、壁面等の緑化に用いられる植生基盤を提供する。屋上やベランダ等の比較的緩勾配箇所においては排水性に優れた径15mm以上で、比重1.5以下の軽量粗粒物で透水性に優れた粗粒な材料を下層材として用いる。
この下層に用いられる粗粒な材料としては、植物性破砕チップ材あるいは粗粒パーライト、珪石、発泡廃ガラス材等が用いられ、雨水を排水口にスムーズに排出する。中層として用いられる植物性短繊維ファイバー層は、水分を短繊維間で抱水し保水層としての機能を発揮すると共に、その網目構造によって上層の5mm以下の細粒層の流出による排水層の目詰まりや排水機能の低下を防止する。上層の細粒層はバーク堆肥やピートモス、人工ゼオライト、パーライトあるいは土壌等によって構成され、これらの細粒物は使用される植物によって適宜調整され、保肥や植物体の保持のために用いられる。屋根等の急傾斜の箇所や壁面等の特に保水性を要求される箇所においては下層を省略し、中層と上層の2層構造で用いることができる。
又、この各層の構造体を高分子系樹脂やセメント系の接合剤を用いて固着成型して一定形状寸法とし、これに芝種子、芝苗、地被植物、つた類、小木等を植栽して搬送し、この成型複層構造体を屋上やベランダに張付ける事によって簡便に屋上緑化や壁面緑化を実現することができる。壁面緑化においては該成型複層構造体を直接あるいは透水性袋状物に入れて網状プランター等に保持させて壁面や網状体張設面に取り付ける事ができる。
【0028】
さらに本発明では植物性短繊維ファイバーに粒径5mm以下の粉状細粒物を容積比5〜60%混合して、植物生育基盤を得る。この粉状粗粒物はバーク堆肥、ピートモス、バーミキュライト、土壌等が用いられる。こうして得た植生基盤の上面、あるいは間に網目5mm以上の合成樹脂ネットを敷設し、この上に芝種子、芝苗、地被植物苗等を播種あるいは植え付ける。こうして出来上がった植生基盤をハウス内で10日間から90日間養生する。
【0029】
こうして養生された植生基盤は、芝苗の根系や地被植物の根系が合成樹脂ネットと絡み合って一体化して、植物体マットを形成する。この植物体マットをロール状にして輸送し、これを現地で広げて敷設し、串等を用いて固定する。養生、育成された芝苗や地被植物苗は短繊維ファイバーの保水機能によって輸送や敷設までの間枯死する事も無く、且つ軽量で運送、敷設も容易である。さらに根系が合成樹脂ネットに絡み合って一体化している為、従来品に比べ大きく作業性に優れ、安定した植生を実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明によって、これまで埋立てや焼却処分されていた植物性廃材の有効な活用方法を拡大し、バイオマス資源といわれるこの様な資源を有効活用して循環型社会の構築の為の一助となると共に、焼却処分によるCO2の発生を抑制し、地球温暖化を抑制し、道路新設や開発に伴って発生する植物性廃材を活用する事によってかかる土木工事におけるゼロエミッション化を促進する事ができる。
【実施例1】
【0031】
請求項1記載の方法によって得た刈草由来の短繊維ファイバーをF1とし、スギ樹皮由来の短繊維ファイバーをF2、根株由来の植物性破砕チップ材をC1とし、それぞれにHydoroxyAlを重量比1%加えて混合した区を実施例1とし、無処理区を比較例として厚さ10cmに敷設して、直後、12ヶ月後、24ヵ月後、36ヵ月後、48ヵ月後に各区のC/N比を測定した。C/N比は微生物による分解の進捗率を示す指標として用いられており、日本バーク堆肥協会では、C/N比40以下を堆肥化の基準としている。結果を表1に示す。
【実施例2】
【0032】
請求項1記載の方法で得た刈草由来の短繊維ファイバーをF1とし、スギ樹皮由来の短繊維ファイバーをF2とし、根株由来の破砕チップ材をC1とし、それぞれに石炭灰を原料とする人工ゼオライトCa型を重量比5%添加し、混合した区を実施例2とし、無処理区を比較例とし、それぞれ10cm厚に敷設し、敷設直後、12ヶ月後、24ヵ月後、36ヵ月後、48ヵ月後のC/N比を測定した結果を表2に示す。
【実施例3】
【0033】
請求項1記載の方法で得た刈草由来の植物性短繊維ファイバーをF1とし、スギ樹皮由来の植物性短繊維ファイバーをF2とし、それぞれにシリコン系撥水剤を散布した区を実施例3とし、無処理区を比較例として、それぞれ10cm厚に敷設し、敷設直後、12ヵ月後、24ヵ月後、36ヵ月後のC/N比を測定した結果を表3に示す。
【実施例4】
【0034】
請求項1記載の方法で得た刈草由来の植物性短繊維ファーバーをF1とし、スギ樹皮由来の植物性短繊維ファイバーをF2とし、それぞれ10cm厚に敷設し、アクリル樹脂50%水溶液を5リットル/m2の割合で散布した区を実施例4とし、無処理区を比較例として、敷設直後、12ヵ月後、24ヵ月後に、その飛散状況を調査した結果を表4に示す。
【実施例5】
【0035】
図1は本発明による根株、未利用樹枝等をハンマーミル破砕機によって破砕した植物性破砕チップ材1と、請求項1から請求項5記載の植物性短繊維ファイバー2で構成される植物生育基盤の断面図である。植物性破砕チップ材1は粒径が粗であり、30mmから150mm程度に破砕されたものがランダムに空気輸送装置によって散布吹付けられる。短繊維ファイバー2は、このランダムに形成された破砕チップ材1の空隙を埋め、その保水性によって植物種子等の発芽、生育を促進する。ランダムに散布吹付けられた植物性破砕チップ1は摩擦抵抗が大きく、1:1.0(45°)程度の勾配であれば接合剤を使用しなくても安定した基盤を形成する。
【実施例6】
【0036】
図2は本発明による屋上あるいはベランダ用植生基盤の断面形状を示す図であり、3は粒径15mm以上で比重1.5以下の粗粒組成物よりなる下層部であり、雨水等の遊離水の排水機能を持ち、植物性破砕チップ材や珪石、粗粒パーライト、発泡廃ガラス材等が用いられる。2は請求項1から請求項5記載の植物性短繊維ファイバーで構成される中層であり、保水機能を果たすとともにその網目状の構造によって上層の細粒(粉粒)物の流失を防止し、下層の排水層の機能を維持する。4は5mm以下の粉状細粒組成物よりなる上層部であり、保肥機能や植物体の保持機能を果たす。
この細粒層に使用される材料はバーク堆肥、ピートモス、ココピート、細粒パーライト土壌等が用いられる。この植生基盤は吹付機等を用いて形成する事もできるが、接合材によって一定形状寸法に接着成型する事もできる。さらに屋根等の傾斜のある箇所で用いられる場合は、下層の排水層を省き、中層、上層の2層構造とする事ができる。
【実施例7】
【0037】
図3は本発明による壁面あるいは網状体張設面緑化用植生基盤保持具であり、5は前記接合材を用いて一定形状に成型された複層構造の成型植生基盤であり、6は植栽された植物苗であり、7はその成型植生基盤を収納する網状収納容器であり、この収納容器のフック部8等を用いて壁面やフェンス、網状体張設面に取り付けられる。この網状体を動物その他の形状に成形し、その内部にこの収納容器を取り付け、つる植物を植栽する事もできる。
【実施例8】
【0038】
図4は本発明による大型張芝マットの断面形状を示す図であり、10は請求項1から請求項5記載の植物性短繊維ファイバーに5mm以下の細粒組成物を3%以上混合した植生基材であり、11はその植物生育基材の上面あるいは間に敷設されたある程度の剛性を持つ合成樹脂ネットであり、9は芝苗あるいは地被植物である。この根系が前記合成樹脂ネットと絡み合って一体構造となり、幅1m、長さ3〜5mのロール状として搬送し敷設する事ができる。
【0039】
【表1】

植物性短繊維ファイバーにおいても植物性破砕チップ材においても実施例1による処理区は比較例区である無処理区に比して充分に分解抑制効果があることが確認できた。なおF1比較例区は24ヶ月でバーク堆肥の基準値40を下回り、分解されたものとして測定を中止した。
【0040】
【表2】

植物性短繊維ファイバーについては、刈草由来のもの、スギ、樹皮由来のもの、いずれも効果があることが確認された。又、根株由来の破砕チップについても同様の結果であった。
【0041】
【表3】

刈草由来の短繊維ファイバーについては、顕著な効果が確認されたが、スギ樹皮由来ファイバーでは差異は少なかった。
【0042】
【表4】

比較例区が12ヶ月以内で飛散し、実施例4とは顕著な差が見られた。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】植物性短繊維ファイバー混入植物性破砕チップ材植生基盤の断面を示した説明図である。(実施例1)
【図2】屋上、ベランダ用植生基盤の断面を示した説明図である。(実施例2)
【図3】壁面や網状体張設面植生基盤保持具を示した説明図である。(実施例3)
【図4】大型張芝マット断面を示した説明図である。(実施例4)
【符号の説明】
【0044】
1 植物性破砕チップ材
2 植物性短繊維ファイバー
3 粗粒組成物下層部
4 粉状細粒組成物上層部
5 複層構造成型植生基盤
6 植栽された植物苗
7 網状収納容器
8 取付け用フック
9 芝苗・地被植物苗
10 植物性短繊維ファイバーと細粒組成物でなる植生基盤
11 合成樹脂ネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈草、刈葉茎、つる、ワラ、針葉樹皮等の植物性廃材を上部もしくは側面部に投入口を有し該投入口に連接して設けられた破砕室の回転ドラムに取付けられる略四角錘あるいはハンマー状の台座に略針状あるいは略くし状もしくは略歯型形状の超硬特殊鋼刃を取付け、該ドラムを回転させて切削する事を特徴とする植物性短繊維ファイバーの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の植物性短繊維ファイバーおよび/もしくは植物性破砕材にアルミニウムもしくはアルミニウム化合物もしくはアルミニウム化合物を主成分とする組成物を混入あるいは共用する事を特徴とする植物生育基材および土壌改良剤および敷設材。
【請求項3】
請求項2記載のアルミニウムもしくはアルミニウム化合物もしくはアルミニウム化合物を主成分とする組成物を重量比0.1%以上30%以下添加する事を特徴とする植物生育基材ならびに土壌改良剤ならびに敷設材。
【請求項4】
請求項1記載の植物性短繊維ファイバーおよび/もしくは植物性破砕材に石炭灰および製紙スラッジ焼却灰を原料とする人工ゼオライトを混入する事を特徴とする植物生育基材および土壌改良剤および敷設材。
【請求項5】
請求項1記載の植物性短繊維ファイバーにワックス系あるいはシリコン系もしくはフッ素系撥水剤あるいは該撥水剤水溶液を散布してなることを特徴とする植物生育基材および土壌改良剤。
【請求項6】
請求項1から請求項5記載の植物性短繊維ファイバーおよび/もしくは植物性破砕材を散布あるいは敷設し、これにアクリル系樹脂、酢酸ビニール系樹脂、ウレタン系樹脂等の造膜機能を有する合成樹脂および該合成樹脂水溶液を散布するか、もしくは短繊維ファイバーあるいは植物性破砕材と該合成樹脂および該合成樹脂水溶液とを混合して吹付ける事を特徴とする植生基材ならびにマルチ材および敷設材の造成方法。
【請求項7】
剪定枝葉、未利用樹枝、樹幹、間伐材、根株等を木材破砕機で粉砕する事によって、径50mm以下、長さ200mm以下に破砕裁断し、これによって得られた未分解破砕チップ材にアルミニウム又はアルミニウム化合物あるいはアルミニウム化合物を主成分とする組成物あるいは人工ゼオライトを重量比0.1%以上40%以下混入あるいは共用する事を特徴とするマルチ材および敷設材および土砂混合改質材ならびに該マルチ剤、敷設材、土砂混合改資材を用いた歩径路ならびに敷設路およびマルチングの造成方法。
【請求項8】
剪定枝、未利用樹枝、樹幹、根株等を破砕機によって径50mm以下、長さ200mm以下となるよう破砕し、該木質破砕チップ材に請求項1から請求項5記載の植物性短繊維ファイバーを混入あるいは共用する事を特徴とする植生基材および該植生基材を吹付機を用いて吹付けて植生基盤を造成する事を特徴とする植生基盤の造成方法。
【請求項9】
粒径15mm以上で比重1.5以下の粗なる組成物よりなる下層と請求項1〜請求項6記載の植物性短繊維ファイバーよりなる中層ならびに粒径5mm以下の粉粒物からなる細粒上層のうち少なくとも2層以上の複層構造を持つことを特徴とする屋上、屋根、壁面等用の植生基盤材および該基盤を吹付けあるいは接合剤によって一定形状、寸法に接合、成型し、該成型物に播種あるいは植栽してなる事を特徴とする屋上、屋根、植生基盤造成方法および該植生基盤を直接あるいは透水性袋状物に入れて網状収納容器に収納して、壁面あるいは網状体張設面に取り付けてなる事を特徴とする壁面および網状体張設面の緑化植生方法。
【請求項10】
請求項1から請求項5記載のいずれかの植物性短繊維ファイバーに容積比5〜60%の粒径5mm以下の粉状細粒物を混合して植物生育基盤を造成し、該基盤の上面あるいは間に5mm以上の目合いの合成樹脂製ネットを敷設し、これに芝種子、芝苗あるいは地被植物苗を播種あるいは植え付けてなる事を特徴とする緑化用植生マット及び該緑化用植生マットを用いるグランドカバーの造成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−314217(P2006−314217A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−137946(P2005−137946)
【出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【出願人】(392010533)株式会社水戸グリーンサービス (3)
【Fターム(参考)】