説明

植物栽培照明・空調ユニットおよび植物栽培設備

【課題】気温の不均一性を防ぎ、省エネルギーを実現しながら植物の生育に適した環境とすることができる植物栽培照明・空調ユニット等を提供する。
【解決手段】植物栽培ユニット1は空調装置5の給気チャンバー13と、照明装置3と、植物体9が配置される栽培ベッド7とを具備する。照明装置3は栽培ベッド7の上方に配置され、光源として複数の照明管11を有し、平面において複数の照明管11が間隙を空けて配置されている。また、給気チャンバー13の吹出口14が照明装置3の上方に配置され、空気が上記間隙を通じて吹出口14から下方に吹き出され、照明装置3が給気チャンバー13と独立して上下移動可能である。照明管11は、LEDを光源として用いた、蛍光管タイプもしくはライン状のLED照明器具である。植物栽培ユニット1は、植物栽培設備10の室内で鉛直方向や水平方向に複数配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は人工照明装置と空調設備を用いて植物を栽培する植物栽培照明・空調ユニット、およびこれを含む植物栽培設備に関する。
【背景技術】
【0002】
人工照明装置と空調設備を用いて栽培環境を調整することにより植物を栽培する設備が、閉鎖型植物工場などとして従来知られている。このように人工照明で植物を栽培する場合には、蛍光灯(蛍光管)を光源とした照明装置を使用した栽培棚が多く利用されている。
【0003】
このような植物栽培設備の例を図7に示す。図7の植物栽培設備200では、室内に植物栽培ユニット100が鉛直方向や水平方向に複数配置される。植物栽培ユニット100では、照明装置103が栽培ベッド107の上方に配置される。照明装置103は、光源として蛍光管111を有する。栽培ベッド107には植物体109が配置されてこれが栽培される。また、植物栽培設備200では室内に空調装置105の給気チャンバー113が設置される。
【0004】
蛍光管111は360°全体に発光するので、このような植物栽培ユニット100では、植物への照射効率を高めるため、照明装置103として蛍光管111の上方に反射板112を設置する。このように、植物体109の上方の大部分は照明装置103に占有される。
【0005】
このため、空調装置105は、植物体109と照明装置103の間を気流が通過するように設計される。即ち、給気チャンバー113が植物栽培ユニット100の側方に配置され、水平方向に空気が吹き出される。この種の栽培設備の例が、特許文献1に示されている。その他、空調装置105としては、部屋の天井面や床面から空気を吹出す方式もある。植物体109の上方は遮られているので、この場合も、気流は植物体109と照明装置103の間を通過する。
【0006】
なお、照明装置103の光源としては、蛍光管111のほか、メタルハライドランプやナトリウムランプなどの高輝度ランプが使用される場合もある。さらに近年、植物栽培用のLED照明装置も多く製品化され利用されており、面状の基盤にLEDを配置したパネルが植物栽培に利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平1−225420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
照明装置103からの発熱は植物体109の生育や空調負荷に影響を与える。図7に示すように、植物栽培ユニット100において植物体109の上方を照明装置103で占有し、空調装置105を照明装置103と植物体109の間を気流が通過するように設計する場合、当該気流により照明装置103等により発生する熱が移動し、気流の下流側で気温が高くなる。
【0009】
このため、従来の栽培設備においては、気流の上流側(例えば、図7の左側)に位置する植物体109付近では気温が低くなるが、気流の下流側(例えば図7の右側)に位置する植物体109付近ではより気温が高くなる傾向にある。このように、設備内で植物体109の位置により気温が不均一となり、この気温の不均一性が植物の生育や品質に影響を与える問題があった。
【0010】
加えて、この種の栽培設備においては、植物の生育のため効率よくエネルギーを使用し、消費するエネルギーを削減することが望まれている。
【0011】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、気温の不均一性を防ぎ、省エネルギーを実現しながら植物の生育に適した環境とすることができる植物栽培照明・空調ユニット等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達するための第1の発明は、空調装置の給気部と、照明装置と、植物体が配置される栽培ベッドとを具備し、前記照明装置は光源を備え、前記栽培ベッドの上方に配置されるとともに平面において間隙が設けられ、前記給気部の吹出口が前記照明装置の上方に配置され、空気が前記吹出口から前記間隙を通じて下方に前記栽培ベッドに向かって吹き出され、前記照明装置が前記給気部と独立して上下移動可能であることを特徴とする植物栽培照明・空調ユニットである。
【0013】
前記光源は、下方に配光される、LEDを用いた複数の照明管であり、前記照明菅が平面において間隙を空けて並べられることが望ましい。
また、前記光源の鉛直方向断面は略円形であることも望ましい。
【0014】
さらに、複数の前記光源が枠体により一体化され、複数の前記光源が一体として上下移動可能であることも望ましい。
加えて、前記吹出口にルーバーを設けることも望ましい。
【0015】
前述した目的を達するための第2の発明は、第1の発明の植物栽培照明・空調ユニットを室内で鉛直方向および/または水平方向に複数配置したことを特徴とする植物栽培設備である。
【0016】
以上の構成により、植物体(栽培ベッド)の上方に照明装置を設置し、さらにその上方に給気部を配置し、照明装置に設けた間隙を通して空調設備により温度、湿度の調整がなされた空気を下方の植物体に給気する照明・空調システムとする。従来は側面から給気するため、植物に対する風環境や空気温度などの環境条件が給気口との水平距離により異なり不均一になるが、照明装置の上方から給気することで吹出口から植物体までの距離を栽培ベッド内で一様にし、風環境や空気温度を均一とすることができる。
【0017】
また、植物の生育に適した条件になるよう空調空気を直接上方から給気するので、植物栽培に必要な空調の範囲は照明と植物体の周辺に設定すればよく、栽培室内全体の空気を空調する必要がない。これにより、栽培室の室内全体を空調する場合と比較して、空調エネルギーを抑制することができる。
【0018】
さらに、照明装置を上下させる機構を設けることで、植物の大きさ、種類、生育状況等に応じて上下させることで近接照射が可能であり最小限の光量で済む。従って、光源を固定した場合と比較して光強度を抑制することでエネルギー消費を最小限に抑えることが可能であり、省エネルギー効果が期待できる。また、照明装置のみが独立に上下するので、装置構成が簡易であり低コストである。
【0019】
本発明の植物栽培照明・空調ユニットでは、上記の構成によりユニットごとに植物体の空気環境が均一化される。従って植物栽培設備において、本ユニットを室内で多段多列に配置し、上下左右の空間に拡張しても、植物体にあたる気流により室内でほぼ一様な風環境や気温等の環境条件を作り出すことが可能である。
【0020】
照明装置の平面に、空調空気をスムーズに通過させ空気環境の均一化が実現できる程度に必要な間隙が設けられれば、光源を蛍光灯に反射笠を取り付けたもの、あるいは面状の基盤に複数LEDを配置したもの等とすることも可能であるが、LEDを用いた下方配光の照明管、具体的にはライン状の照明管あるいは蛍光灯タイプの照明管を用いれば、照射面は個々の基盤の下方半分のみであり、上面は放熱板となっていて、空気の流れが反射板等により妨げられることがなく、空気環境の均一化を達成することが容易である。一方、例えば蛍光灯を用いる場合では反射板あるいは反射板間に間隙を設けるなども可能であるが、必要な光量を得るためには反射板の面積等を確保する必要があるなど、その構成的要求から間隙の大きさが制限されうる。
LEDを用いた照明装置において、背面からの発熱処理は課題であるが、本発明のシステムでは上方から空調空気を通過させることで、過剰な照明発熱を抑制し、給気による空冷効果が期待できる。これによりLED照明の劣化を防ぎ寿命確保にも貢献する。また、LEDによる照明装置とすることで、光源からの発熱が蛍光灯やメタルハライドランプより少なくでき、照明装置の上下移動による植物体への近接照射がさらに有効なものとなる。
【0021】
また、従来のパネル状のLED照明装置では基盤の不具合等により照明装置全体を交換する必要があったが、照明装置にライン状のLEDや蛍光灯タイプのLEDなどの照明管を使用すると、照明管単体ごとに着脱可能であり、寿命に伴う交換や故障時の取り扱いなどのメンテナンスも部分的に行うことができる。特に蛍光灯タイプのLEDは従来の蛍光灯器具の利用が可能であり、低コスト化が図れる。
【0022】
さらに光源の鉛直方向断面を略円形とすることで、略円形の断面に伴う付着効果により上方からの気流が光源の断面に沿って回りこんでスムーズに下方に達するので、気流が光源により阻害されにくく、空気環境の均一化が促進される。特に、LEDを用いた照明管を使用した場合には、反射板等も不要であり、その効果等が顕著である。
また、光源は枠体などにより数本単位でモジュール化することで、ユニット毎の一体的な上下移動その他の取り扱いが可能になり作業性が向上する。
加えて、給気部の吹出口にルーバーを設けることにより、空気環境の更なる均一化を実現することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、気温の不均一性を防ぎ、省エネルギーを実現しながら植物の生育に適した環境とすることができる植物栽培照明・空調ユニット等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】植物栽培ユニット1の例について示す図
【図2】植物栽培ユニット1の例について示す図
【図3】枠体15について示す図
【図4】照明装置3の昇降について示す図
【図5】植物栽培ユニット1の例について示す図
【図6】植物栽培ユニット1aの例について示す図
【図7】植物栽培ユニット100の例について示す図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明の植物栽培照明・空調ユニット(植物栽培ユニット)等の実施形態について説明する。
まず、図1、図2を参照して、本実施形態の植物栽培ユニット1について説明する。図1は本実施形態の植物栽培ユニット1の例を示す側面図であり、植物栽培設備10内に植物栽培ユニット1が配置された状態を示す図である。図2は本実施形態の植物栽培ユニット1の例を示す図であり、植物栽培ユニット1の前面が示される。
【0026】
図1、図2に示すように、植物栽培ユニット1は、光源として照明管11が設けられる照明装置3、および、空調装置5の給気チャンバー(給気部)13等がフレーム(不図示)等に取り付けられて構成される。植物栽培ユニット1には植物体9を配置しこれを栽培する栽培ベッド7が配置され、給気チャンバー13および照明装置3は栽培ベッド7の上方に配置される。また、植物栽培設備10においては、栽培室内に植物栽培ユニット1が垂直方向および/または水平方向に複数配置されている。
【0027】
照明装置3は複数の照明管11を備える。照明管11は、LEDを用いた、蛍光管タイプもしくはライン状のLED照明器具であり、略円形の鉛直方向断面を有する。照明管11の管内には基盤が設けられ、当該基盤の下面にLEDの発光素子が配置され下方に配光する。また、その上部には放熱板が設けられ、これにより放熱を行なう。照明管11は電源(不図示)による電力供給を受けて発光する。
【0028】
複数の照明管11は、図3に示すように、照明装置3の平面において、照明管11の軸方向に直交する方向に間隙を空けて並べられた状態で、枠体15に軸方向の両端が固定されて一体に構成される。
【0029】
空調装置5は給気チャンバー13の他、ダクトや空気調整機(不図示)を備える。給気チャンバー13は空気調整機やダクトと接続し、空気調整機により温度や湿度等の調整がなされた空気がファン等によりダクトを介して供給される。また、植物栽培設備10には空調装置5に通じる吸込口(不図示)等も設けられ、空気調整が空気を循環させつつ行なわれる。
【0030】
給気チャンバー13は植物栽培ユニット1のフレーム等に固定され、照明装置3に対応する平面位置で、照明装置3の上方に配置される。給気チャンバー13は下面に吹出口14を有する。給気チャンバー13内には、給気チャンバー13から吹き出される風量を吹出口14の平面各位置で一定とするための風量調整機構(不図示)や、照明装置3および栽培ベッド7の植物体9に向かって下方へ風向を調整するための風向調整機構(不図示)等を必要に応じて備える。風量調整機構や、風向調整機構としては既知のものを適宜用いることができる。また、吹出口14にフィルターやパンチングメタルを取り付け、空気の清浄化や気流の均一化を図ることもできる。
【0031】
栽培ベッド7は植物体9を栽培するため配置するもので、本実施形態では養液を供給、排出しつつ植物体9の水耕を行う水耕栽培ベッドである。このため、植物栽培設備10には管路や養液タンク、循環ポンプ等による養液の循環機構(不図示)が設けられる。但し、栽培ベッド7は植物の種類等に応じて適切なものが用いられ、これに限ることはない。
【0032】
植物栽培ユニット1には、複数の照明管11を取り付けた枠体15を昇降させるためのチェーンや滑車、モータおよびこれを制御する制御装置等による昇降部(不図示)がさらに設けられる。これにより照明装置3が空調装置5(給気チャンバー13)とは独立に上下移動可能となっている。図4に示すように、植物体9の種類や生育状況に合わせて照明装置3を上下させることにより、植物体9に照射される光の量(照度)を調節することができ、照明装置3を植物体9に近接させた場合には植物体9の生育に必要な光の量を得るために必要なエネルギーを削減することができる。
【0033】
本実施形態の植物栽培ユニット1では、給気チャンバー13の吹出口14から下方に(図1、図2のA方向で示す)空気が吹き出される。吹き出された空気は、照明管11の間に設けられた間隙を通過して栽培ベッド7(植物体9)へと向かう。
【0034】
本実施形態の植物栽培ユニット1では、給気チャンバー13の吹出口14から栽培ベッド7までの距離が栽培ベッド7内の各平面位置(各植物体9)で一定であるので、栽培ベッド7の平面位置により温度環境等が変化することがない。上記の空気は照明管11より発生する熱を奪い、空気の移動に伴い熱が移動するが、空調の制御の際には植物体9付近に温度や湿度のセンサーを設置し、そこからの信号により空調の運転制御を行うことで、照明管11から移動した熱の影響も反映した空調が行われるので問題はなく、使用者の設定した植物生育に適した条件での空調が可能である。
【0035】
なお、本実施形態で、照明装置3の光源は蛍光管タイプもしくはライン状のLED照明管であるが、照明装置3の平面に、空調空気をスムーズに通過させ空気環境の均一化が実現できる程度に必要な間隙が設けられれば、光源としてはこれに限ることはなく、例えば蛍光灯や面状の基盤に複数LEDを配置したものなどでもよい。ただし、本実施形態のようにLEDを光源とする照明管11を用いることは、これにより反射板や面状のLED基盤等が不要となり、空気の流れが妨げられることがなく空気環境の均一化が容易である点などで有利である。
【0036】
本実施形態の植物栽培ユニット1では、図5に示すように、必要に応じてその側部に照明管11aを複数鉛直方向に間隔を空けて配置してもよい。これにより、タバコ、イネやダイズ、トマト、果樹など、大型の植物の人工照明栽培に対しても利用が可能である。この場合、植物栽培設備10としては、植物栽培ユニット1の側方から水平方向に空気を吹き出す給気チャンバー13aをさらに設けておき、照明管11aの間の間隙を介して空調空気を植物体9に給気してもよい。タバコ、イネ等の大型の植物では上方からの給気が枝葉に遮られ、特に根元に近い部分での温度分布の均一化が難しく、光量も減少してしまう。そこで、側部に照明管11aを設けつつ補助的に側部から照明管11a間を通じて給気することで、根元に近い部分に空気を滞留させず空気環境の均一性向上が図れ、側方からの照明で光強度を補うことが出来る。
【0037】
また、本発明の植物栽培照明・空調ユニットの別の例が図6に示す植物栽培ユニット1aであり、前述した植物栽培ユニット1に加え、給気チャンバー13の下面の吹出口14に可動式のルーバー17を設けている。植物栽培ユニット1aでは、ルーバー17の自動回転等により風環境の更なる均一化が可能であり、さらに風のゆらぎの効果なども期待しうる。
さらに、可動ルーバー17は可動開閉可能とする他、これを平面上適宜各部分に分割し、部分的に可動開閉可能としてもいい。これにより、同一植物栽培ユニット1a内でも、部分的な使用もしくは不使用、植物の生育状況に合わせた吹出口14の平面各部分での給気量の調整が可能となる。なお、給気量を部分的に調整する方法はこれに限らず、吹出口14を平面上分割した各部分ごとに、対応する流路をそれぞれ設けておき、この流路を開閉してもよい。
【0038】
以上説明したように、本実施形態の植物栽培ユニット等によれば、植物体9(栽培ベッド7)の上方に照明装置3を設置し、さらにその上方に給気チャンバー13を配置し、照明装置3に設けた間隙を通して空調設備5により温度、湿度の調整がなされた空気を下方の植物体9に給気する照明・空調システムとする。従来は側面から給気するため、植物に対する風環境や空気温度などの環境条件が給気口との水平距離により異なり不均一になるが、照明装置3の上方から給気することで吹出口14から植物体9までの距離を栽培ベッド7内で一様にし、風環境や空気温度を均一とすることができる。
【0039】
また、植物の生育に適した条件になるよう空調空気を直接上方から給気するので、植物栽培に必要な空調の範囲は照明と植物体9の周辺に設定すればよく、栽培室内全体の空気を空調する必要がない。これにより、栽培室の室内全体を空調する場合と比較して、空調エネルギーを抑制することができる。
【0040】
さらに、照明装置3が上下移動可能に設けられているので、植物の大きさ、種類、生育状況等に応じて上下させることで近接照射が可能であり最小限の光量で済む。従って、光源を固定した場合と比較して光強度を抑制することでエネルギー消費を最小限に抑えることが可能であり、省エネルギー効果が期待できる。また、照明装置3のみが独立に上下するので、装置構成が簡易であり低コストである。
【0041】
本実施形態の植物栽培ユニット1では、上記の構成によりユニットごとに植物体9の空気環境が均一化される。従って植物栽培設備10において、本ユニットを室内で多段多列に配置し、上下左右の空間に拡張しても、植物体9にあたる気流により室内でほぼ一様な風環境や気温等の環境条件を作り出すことが可能である。
【0042】
照明装置3の平面に、空調空気をスムーズに通過させ空気環境の均一化が実現できる程度に必要な間隙が設けられれば、光源を蛍光灯に反射笠を取り付けたもの、あるいは面状の基盤に複数LEDを配置したもの等とすることも可能であるが、本実施形態の植物栽培ユニット1では、LEDを用いた下方配光の照明管11、具体的にはライン状の照明管あるいは蛍光灯タイプの照明管を用いているので、照射面は個々の基盤の下方半分のみであり、上面は放熱板となっていて、空気の流れが反射板等により妨げられることがなく、空気環境の均一化を達成することが容易である。一方、例えば蛍光灯を用いる場合では反射板あるいは反射板間に間隙を設けるなども可能であるが、必要な光量を得るためには反射板の面積等を確保する必要があるなど、その構成的要求から間隙の大きさは制限されうる。
LEDを用いた照明装置において、背面からの発熱処理は課題であるが、本システムでは上方から空調空気を通過させることで、過剰な照明発熱を抑制し、給気による空冷効果が期待できる。これによりLED照明の劣化を防ぎ寿命確保にも貢献する。また、LEDによる照明装置とすることで、光源からの発熱が蛍光灯やメタルハライドランプより少なくでき、照明装置3の上下移動による植物体9への近接照射がさらに有効なものとなる。
【0043】
また、従来のパネル状のLED照明装置では基盤の不具合等により照明装置全体を交換する必要があったが、照明装置3にライン状のLEDや蛍光灯タイプのLEDなどの照明管11を使用するので、照明管単体ごとに着脱可能であり、寿命に伴う交換や故障時の取り扱いなどのメンテナンスも部分的に行うことができる。特に蛍光灯タイプのLEDは従来の蛍光灯器具の利用が可能であり、低コスト化が図れる。
【0044】
さらに光源である照明管11の鉛直方向断面が略円形であるので、略円形の断面に伴う付着効果により上方からの気流が照明管11の断面に沿って回りこんでスムーズに下方に達するので、気流が照明管11により阻害されにくく、空気環境の均一化が促進される。特に、LEDを用いた照明管11を使用しているので、反射板等も不要であり、その効果は顕著である。
また、照明管11は枠体15などにより数本単位でモジュール化しているので、ユニット毎の一体的な上下移動その他の取り扱いが可能になり作業性が向上する。
【0045】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る植物栽培照明・空調ユニット等の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0046】
1、1a、100………植物栽培ユニット
3、103………照明装置
5、105………空調装置
7、107………栽培ベッド
9、109………植物体
10、200………植物栽培設備
11、11a、111………照明管
13、13a、113………給気チャンバー
14………吹出口
15………枠体
17………ルーバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調装置の給気部と、照明装置と、植物体が配置される栽培ベッドとを具備し、
前記照明装置は光源を備え、前記栽培ベッドの上方に配置されるとともに平面において間隙が設けられ、
前記給気部の吹出口が前記照明装置の上方に配置され、
空気が前記吹出口から前記間隙を通じて下方に前記栽培ベッドに向かって吹き出され、
前記照明装置が前記給気部と独立して上下移動可能であることを特徴とする植物栽培照明・空調ユニット。
【請求項2】
前記光源は、下方に配光される、LEDを用いた複数の照明管であり、
前記照明菅が平面において間隙を空けて並べられることを特徴とする請求項1記載の植物栽培照明・空調ユニット。
【請求項3】
前記光源の鉛直方向断面は略円形であることを特徴とする請求項1または2記載の植物栽培照明・空調ユニット。
【請求項4】
複数の前記光源が枠体により一体化され、複数の前記光源が一体として上下移動可能であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の植物栽培照明・空調ユニット。
【請求項5】
前記吹出口にルーバーを設けることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の植物栽培照明・空調ユニット。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の植物栽培照明・空調ユニットを、室内で鉛直方向および/または水平方向に複数配置したことを特徴とする植物栽培設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−125196(P2012−125196A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280060(P2010−280060)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、経済産業省、戦略的技術開発委託研究(植物機能を活用した高度モノ作り基盤技術開発/植物利用高付加価値物質製造基盤技術開発に係るもの)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】