説明

植物栽培装置

【課題】栽培効率および使い勝手を向上させる植物栽培装置を提供する。
【解決手段】植物栽培装置100は、植物が収容されている栽培ユニット110が培地ユニット111として格納される栽培棚Sを備える棚ユニット120と、案内レール149により規定される水平移動経路上を移動するとともに培地ユニット111の搬送および栽培棚Sに対する培地ユニット111の搬入出を行う移送装置とを備える。複数の栽培棚Sは、上下方向に多段に配置された1列の栽培棚列Cを構成する。棚ユニット120は、複数の栽培棚列Cから構成される栽培庫121と、植物が収容されていない栽培ユニット110の保持フレーム115が空ユニットとして保管されるストック棚列170を有する入出庫ステーション122とを備える。移送装置130は、ストック棚列170に対する保持フレーム115の搬入出を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栽培対象である植物を収容可能な栽培ユニットが移送装置により移送されて格納される複数の栽培棚を備える植物栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
植物栽培装置が、栽培対象である植物を収容可能な複数の栽培ユニットと、栽培ユニットを格納可能な複数の栽培棚を備える栽培庫と、栽培ユニットを搬送するとともに栽培棚に対して搬入出を行う移送装置とを備え、植物が収容された栽培ユニットが、移送装置により複数の栽培棚にそれぞれ格納されるものは知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−209970号公報
【特許文献2】特開2001−78568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の植物栽培装置においては、栽培される植物が収容されている栽培ユニット(以下、「培地ユニット」という。)が栽培庫を構成する複数の栽培棚に格納されている割合(以下、「格納率」という。)が高い状態で植物栽培装置を稼働させることが、栽培効率を高めるうえで望ましい。
【0005】
しかしながら、植物栽培装置での栽培が終了した培地ユニットが、生育した植物を収穫するために、そのまま植物栽培装置の外部に搬出される場合、または、植物栽培装置での栽培が終了して植物が植えられていない栽培ユニット(以下、「空ユニット」という。)が植物栽培装置の外部で保管される場合には、培地ユニットまたは空ユニットを、植物栽培装置の外部へ搬出したり植物栽培装置の内部へ搬入するのに手間がかかり、また、空ユニットに植物を収容した後の培地ユニットを、植物栽培装置の外部からその内部に搬送するのに手間がかかるため、格納率が低い状態での時間が長くなり、栽培効率が低下し、植物栽培装置の使い勝手が低下するという問題があった。
【0006】
さらに、培地ユニットと空ユニットとが、別々の搬送装置により搬送されるのでは、栽培ユニットに植物が収容されてから栽培棚に格納されるまでに時間がかかるうえ、別々の搬送装置が必要になって、植物栽培装置のコストが増加するという問題があった。
【0007】
一方で、空ユニットが栽培棚に格納されるのでは、格納率が低下すること、さらに空ユニットに植物を植え付けるために、空ユニットを栽培棚から搬出する手間がかかることから、栽培効率が低下するという問題があった。
【0008】
また、栽培ユニットは、植物栽培装置での移送装置による扱いを容易にするために、強度が高められていることから、その重量が大きくなることが多い。
しかしながら、栽培ユニット自体の重量が大きいと、該栽培ユニットに植物が植えられた培地ユニットの重量は一層大きくなるため、培地ユニットの搬送が手作業で行われる場合には、搬送作業が重労働になって、植物栽培装置の使い勝手が低下するという問題があった。
【0009】
また、複数の栽培棚が上下方向に多段に配置された栽培棚列から栽培庫が構成される場合に、植物栽培装置での栽培が終了して、収穫のために栽培庫から培地ユニットが出庫されるときには、栽培終了期にある培地ユニットが格納されている栽培棚からの搬出に手間がかかるのでは、植物栽培装置の使い勝手が低下する。
【0010】
さらに、複数の栽培棚が上下方向に多段に配置された栽培棚列から栽培庫が構成される場合に、1列の栽培棚列における各栽培棚に格納された培地ユニットに対して、栽培水を栽培水供給装置から栽培棚毎に独立して供給するのでは、栽培水の供給系統および排出系統の構造が複雑化して栽培庫が大型化するうえ、植物栽培装置のコストが増大するという問題があった。
【0011】
本発明は、前述した問題を解決するものであって、本発明の目的は、栽培効率および使い勝手を向上させる植物栽培装置を提供することである。
そして、本発明の他の目的は、さらに、小型化が可能な植物栽培装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明は、栽培対象である植物を収容可能な複数の栽培ユニットと、前記植物が収容されている前記栽培ユニットが培地ユニットとして格納される複数の栽培棚を備える棚ユニットと、移動経路上を移動するとともに前記培地ユニットの搬送および前記栽培棚に対する前記培地ユニットの搬入出を行う移送装置とを備え、複数である所定数の前記栽培棚が上下方向に多段に配置された1列の栽培棚列を構成する植物栽培装置において、前記棚ユニットが、1以上の所定列数の前記栽培棚列から構成される栽培庫と、前記植物が収容されていない前記栽培ユニットが空ユニットとして保管されるストック部を有する作業ステーションとを備え、前記移送装置が、前記ストック部に対する前記空ユニットの搬入出を行うことにより、前述した課題を解決したものである。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の構成に加えて、前記ストック部が、上下方向に多段に配置された前記所定列数以上の数のストック棚から構成されるストック棚列であり、前記ストック棚列が、前記栽培棚列である特定栽培棚列に隣接して配置されるとともに前記特定栽培棚列に一体化されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に係る発明の構成に加えて、前記作業ステーションが、前記栽培棚に入庫される前記培地ユニットが前記移動経路での入庫位置で停止した前記移送装置により載置される入庫部を有し、前記ストック部が、前記移送装置が入庫位置から前記移動経路上で移動することなく、前記ストック部から前記空ユニットを搬出可能で、かつ前記入庫部に搬入可能な位置にあることにより、前述した課題を解決したものである。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか1つに係る発明の構成に加えて、前記栽培ユニットが、前記植物が植えられた被収容物を収容する収容部材と、前記収容部材を着脱可能に保持するとともに前記移送装置により操作される保持部材とから構成され、前記空ユニットが、前記収容部材が取り外された状態の前記保持部材であることにより、前述した課題を解決したものである。
【0016】
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれか1つに係る発明の構成に加えて、前記各栽培棚列が、前記移送装置により前記栽培庫に入庫された直後の前記培地ユニットが格納される入庫用栽培棚または最上段栽培棚と、前記移送装置により前記栽培庫から出庫される直前の前記培地ユニットが格納される出庫用栽培棚または最下段栽培棚とを有し、前記作業ステーションが、前記移送装置により前記出庫用栽培棚または前記最下段栽培棚から搬出された前記培地ユニットが前記移送装置により搬送されて載置される出庫部を有し、前記出庫部が、前記各栽培棚列において、前記入庫用栽培棚または前記最上段栽培棚よりも前記出庫用栽培棚または前記最下段栽培棚に近い位置にあることにより、前述した課題を解決したものである。
【0017】
請求項6に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれか1つに係る発明の構成に加えて、前記栽培棚列の前記所定数の前記栽培棚が、1以上の前記栽培棚を含む複数である所定区数の区域に分けられ、下方に位置する前記区域ほど、棚の高さが高い前記栽培棚が含まれ、前記作業ステーションが、前記移送装置により最下部の前記区域の前記栽培棚から搬出された前記培地ユニットが前記移送装置により搬送されて載置される出庫部を有し、前記出庫部が、前記所定区数の前記区域において、前記最下部の前記区域に最も近い位置にあることにより、前述した課題を解決したものである。
【0018】
請求項7に係る発明は、請求項1から請求項6のいずれか1つに係る発明の構成に加えて、前記各栽培棚列には、上下方向で隣接する前記栽培棚同士において、上段側に位置する前記栽培棚に格納された前記培地ユニットである上段側培地ユニットに供給された栽培水の余剰分を、下段側に位置する前記栽培棚に格納された前記培地ユニットである下段側培地ユニットに、前記上段側培地ユニットから導くための導水路が設けられることにより、前述した課題を解決したものである。
【0019】
請求項8に係る発明は、請求項1から請求項6のいずれか1つに係る発明の構成に加えて、前記各栽培棚列のすべての前記栽培棚が、最上段の最上段栽培棚と、最下段の最下段栽培棚と、前記最上段栽培棚と前記最下段栽培棚との間の複数の中間段栽培棚とに分けられ、前記最上段栽培棚には、栽培水供給源からの栽培水が供給される第1給水口と、ドレンに余剰の栽培水を排出する第1排水口とが設けられ、前記最下段栽培棚には、前記栽培水供給源からの栽培水が供給される第2給水口と、前記ドレンに余剰の栽培水を排出する第2排水口とが設けられ、前記中間段栽培棚のうち、前記最上段栽培棚の直下の上部中間段栽培棚には、前記栽培水供給源からの栽培水が供給される第3給水口と、前記最下段栽培棚の直上の下部中間段栽培棚には、前記ドレンに余剰の栽培水を排出する第3排水口とが設けられ、上下方向で隣接する前記中間段栽培棚同士において、上段側に位置する前記中間段栽培棚に格納された前記培地ユニットである上段側培地ユニットに供給された栽培水を、下段側に位置する前記中間段栽培棚に格納された前記培地ユニットである下段側培地ユニットに、前記上段側培地ユニットから導く導水路が設けられ、前記第3給水口からの栽培水が前記導水路を通って順次下段側の前記培地ユニットに導かれて前記下部中間段栽培棚に格納された前記培地ユニットに供給された後、前記第3排水口から排出されることにより、前述した課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0020】
そこで、本発明の植物栽培装置は、栽培対象である植物を収容可能な複数の栽培ユニットと、植物が収容されている栽培ユニットが培地ユニットとして格納される複数の栽培棚を備える棚ユニットと、移動経路上を移動するとともに培地ユニットの搬送および栽培棚に対する前記培地ユニットの搬入出を行う移送装置とを備え、複数である所定数の栽培棚が上下方向に多段に配置された1列の栽培棚列を構成することにより、培地ユニットが格納される複数の栽培棚が上下方向に多段の栽培棚列を構成するので、上下方向でのスペースを利用して栽培棚を増やすことで、植物栽培装置を水平方向で小型化しながら、栽培される植物を増産することができるほかに、以下のような本発明に特有の効果を奏する。
【0021】
すなわち、請求項1に係る発明の植物栽培装置によれば、棚ユニットが、1以上の所定列数の栽培棚列から構成される栽培庫と、植物が収容されていない栽培ユニットが空ユニットとして保管されるストック部を有する作業ステーションとを備えることにより、栽培された植物の収穫後などのために植物が植えられていない空ユニットが保管されるストック部が、植物が植えられている培地ユニットが格納される栽培庫を備える棚ユニットの一部として植物栽培装置に組み込まれるので、空ユニットを植物栽培装置の外部に搬出する必要がなく、培地ユニットを得るための空ユニットの搬送の作業効率が向上する結果、栽培庫での格納率が高い状態で植物栽培装置を稼働させることができて、植物栽培装置の栽培効率を向上させることができる。
【0022】
しかも、移送装置が、ストック部に対する空ユニットの搬入出を行うことにより、ストック部への空ユニットの搬送は、栽培庫において栽培棚同士の間での培地ユニットの搬送および栽培棚に対する培地ユニットの搬入出を行う移送装置を利用して行われるので、ストック部に対して空ストックの搬入出を行うための専用の移送装置が不要になって、植物栽培装置のコストを削減することができ、さらにストック部に対する空ストックの搬入出を、栽培棚に対する培地ユニットの搬入出と同じ搬入出形態で行うことで、植物栽培装置の使い勝手を向上させることができるうえ、移送装置の構造を簡素化することができ、植物栽培装置のコストを削減することができる。
【0023】
請求項2に係る発明の植物栽培装置によれば、請求項1に係る発明が奏する効果に加えて、次の効果が奏される。
ストック部が、上下方向に多段に配置された所定列数以上の数のストック棚から構成されるストック棚列であることにより、ストック棚列には、栽培庫のすべての栽培棚列のそれぞれに対して、空ユニットが保管されるストック棚が少なくとも1つ確保されるので、各栽培棚列のための空ユニットおよび培地ユニットの搬送の作業効率を向上させることができて、栽培効率を向上させることができる。
ストック棚列が、栽培棚列である特定栽培棚列に隣接して配置されるとともに特定栽培棚列に一体化されていることにより、栽培棚列とストック棚を備える棚ユニットを小型化することができ、ひいては植物栽培装置を小型化することができる。
【0024】
請求項3に係る発明の植物栽培装置によれば、請求項1または請求項2に係る発明が奏する効果に加えて、次の効果が奏される。
作業ステーションが、栽培棚に入庫される培地ユニットが移動経路での入庫位置で停止した移送装置により載置される入庫部を有し、ストック部が、移送装置が入庫位置から移動経路上で移動することなく、ストック部から空ユニットを搬出可能で、かつ入庫部に搬入可能な位置にあることにより、栽培ユニットを空ユニットから培地ユニットにするために、空ユニットが移送装置によりストック部から搬出されるとき、移送装置は入庫位置から移動経路上を移動することなくストック部から空ユニットを搬出することができるので、培地ユニットを得るための空ユニットの搬送時間が短縮されて、空ユニットの搬送の作業効率が向上し、ひいては空ユニットから得られる培地ユニットの栽培棚への搬送時間が短縮されて、植物栽培装置の使い勝手を向上させることができる。
【0025】
請求項4に係る発明の植物栽培装置によれば、請求項1から請求項3のいずれか1つに係る発明が奏する効果に加えて、次の効果が奏される。
栽培ユニットが、植物が植えられた被収容物を収容する収容部材と、収容部材を着脱可能に保持するとともに移送装置により操作される保持部材とから構成されることにより、移送装置に操作される保持部材の強度を高めることで、移送装置による培地ユニットの取扱いの容易性が確保されるとともに、保持部材が、植物が収容される収容部材を補強する補強部材ともなることで収容部材の軽量化が可能になるので、植物栽培装置からの植物の搬出の際には、植物が収容された収容部材のみを培地ユニットから取り出して移送することが可能になるめ、植物栽培装置からの植物の搬出の際に植物が収容された収容部材の運搬作業を容易化することができる。
また、空ユニットが、収容部材が取り外された状態の保持部材であることにより、収容部材が取り外された保持部材は、空ユニットとして、ストック部に保管されるなどして、植物栽培装置の内部に留まるので、栽培が開始される植物が収容された収容部材との合体による培地ユニットの作成を容易化することができる。
【0026】
請求項5に係る発明の植物栽培装置によれば、請求項1から請求項4のいずれか1つに係る発明が奏する効果に加えて、次の効果が奏される。
各栽培棚列が、移送装置により栽培庫に入庫された直後の培地ユニットが格納される入庫用栽培棚または最上段栽培棚と、移送装置により栽培庫から出庫される直前の培地ユニットが格納される出庫用栽培棚または最下段栽培棚とを有し、作業ステーションが、移送装置により出庫用栽培棚または最下段栽培棚から搬出された培地ユニットが移送装置により搬送されて載置される出庫部を有し、出庫部が、各栽培棚列において、入庫用栽培棚または最上段栽培棚よりも出庫用栽培棚または最下段栽培棚に近い位置にあることにより、栽培棚列の栽培棚のうちで、出庫部と出庫用栽培棚または最下段栽培棚との間の距離は、出庫部と入庫用栽培棚または最上段栽培棚との間の距離よりも短いので、栽培庫から出庫される培地ユニット、代表的には、植物栽培装置での栽培が終了して収穫時期に達した植物が収容された培地ユニットを、出庫部まで搬送する時間が短くなり、培地ユニットを出庫させるための搬送の作業効率を向上させることができ、植物栽培装置の使い勝手を向上させることができる。
【0027】
請求項6に係る発明の植物栽培装置によれば、請求項1から請求項4のいずれか1つに係る発明が奏する効果に加えて、次の効果が奏される。
栽培棚列の前記所定数の栽培棚が、1以上の栽培棚を含む複数である所定区数の区域に分けられ、下方に位置する区域ほど、棚の高さが高い栽培棚が含まれ、作業ステーションが、移送装置により最下部の区域の栽培棚から搬出された培地ユニットが移送装置により搬送されて載置される出庫部を有し、出庫部が、前記所定区数の前記区域において、最下部の区域に最も近い位置にあることにより、栽培棚列の栽培棚のうちで、出庫部と最下部の区域との間の距離は、出庫部と最下部の区域以外の区域との間の距離よりも短いので、栽培庫から出庫される培地ユニット、代表的には、生長して背丈が高くなった植物が収容された培地ユニットを出庫部まで搬送する時間が短くなり、培地ユニットを出庫させるための搬送の作業効率を向上させることができ、植物栽培装置の使い勝手を向上させることができる。
【0028】
請求項7に係る発明の植物栽培装置によれば、請求項1から請求項6のいずれか1つに係る発明が奏する効果に加えて、次の効果が奏される。
各栽培棚列には、上下方向で隣接する栽培棚同士において、上段側に位置する栽培棚に格納された培地ユニットである上段側培地ユニットに供給された栽培水の余剰分を、下段側に位置する栽培棚に格納された培地ユニットである下段側培地ユニットに、上段側培地ユニットから導くための導水路が設けられることにより、上段側培地ユニットに供給された栽培水の余剰分は、導水路を通じて下段側培地ユニットに供給されるので、栽培水の供給および排出が培地ユニット毎に独立して行われる場合に比べて、栽培水の供給系統および排出系統の構造(例えば配管)が簡素化されて、植物栽培装置を小型化することができ、また植物栽培装置のコストを削減することができる。
【0029】
請求項8に係る発明の植物栽培装置によれば、請求項1から請求項6のいずれか1つに係る発明が奏する効果に加えて、次の効果が奏される。
各栽培棚列のすべての栽培棚が、最上段の最上段栽培棚と、最下段の最下段栽培棚と、最上段栽培棚と最下段栽培棚との間の複数の中間段栽培棚とに分けられ、最上段栽培棚には、栽培水供給源からの栽培水が供給される第1給水口と、ドレンに余剰の栽培水を排出する第1排水口とが設けられ、最下段栽培棚には、栽培水供給源からの栽培水が供給される第2給水口と、ドレンに余剰の栽培水を排出する第2排水口とが設けられ、中間段栽培棚のうち、最上段栽培棚の直下の上部中間段栽培棚には、栽培水供給源からの栽培水が供給される第3給水口と、最下段栽培棚の直上の下部中間段栽培棚には、ドレンに余剰の栽培水を排出する第3排水口とが設けられ、上下方向で隣接する中間段栽培棚同士において、上段側に位置する中間段栽培棚に格納された培地ユニットである上段側培地ユニットに供給された栽培水を、下段側に位置する中間段栽培棚に格納された培地ユニットである下段側培地ユニットに、上段側培地ユニットから導く導水路が設けられ、第3給水口からの栽培水が導水路を通って順次下段側の培地ユニットに導かれて下部中間段栽培棚に格納された培地ユニットに供給された後、第3排水口から排出されることにより、各栽培棚列において、最上段栽培棚、最下段栽培棚および中間段栽培棚の三区分で、栽培水の供給および排出を互いに独立して制御できるので、各栽培棚に対する培地ユニットの搬入出が行われる際に、栽培水の供給停止の及ぶ範囲を制限することが可能になって、構造の簡素化を実現しながら、植物栽培装置の栽培効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例である植物栽培装置の全体斜視図。
【図2】図1のII矢視での植物栽培装置の栽培庫の図。
【図3】図1の植物栽培装置の栽培ユニットの分解斜視図。
【図4】図2のIV部分の要部拡大図断面図。
【図5】培地ユニットの入庫準備工程および入庫工程を説明するための、図1の植物栽培装置の要部斜視図であり、(a)は、移送装置が、保持フレームをストック部から入出庫部に移送するために、入出庫位置に位置している状態を示す図、(b)は、保持フレームが、ストック部から移送装置により移送されて、入出庫部に載置された状態を示す図、(c)は、入出庫部において、保持フレームに培地トレーが保持されて培地ユニットが作成された状態を示す図、(d)は、入出庫部の培地ユニットが、移送装置により移送されて、栽培庫の1つの最上段栽培棚に格納された状態を示す図。
【図6】培地ユニットの出庫工程を説明するための図5と同様の図であり、(a)は、ストック部のすべての保持フレームが培地ユニットにされて栽培棚に格納された栽培庫において、1つの最下段栽培棚に格納された培地ユニットが、移送装置により移送されて、入出庫部に載置された状態を示す図、(b)は、入出庫部において、保持フレームから培地トレーが取り外された状態を示す図、(c)は、保持フレームが、入出庫部から移送装置により移送されて、ストック部に載置された状態を示す図、(d)は、栽培庫のすべての最下段栽培棚の培地ユニットが出庫され、ストック部に保持フレームが保管された状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の植物栽培装置は、栽培対象である植物を収容可能な複数の栽培ユニットと、前記植物が収容されている前記栽培ユニットが培地ユニットとして格納される複数の栽培棚を備える棚ユニットと、移動経路上を移動するとともに前記培地ユニットの搬送および前記栽培棚に対する前記培地ユニットの搬入出を行う移送装置とを備え、複数である所定数の前記栽培棚が上下方向に多段に配置された1列の栽培棚列を構成し、前記棚ユニットが、1以上の所定列数の前記栽培棚列から構成される栽培庫と、前記植物が収容されていない前記栽培ユニットが空ユニットとして保管されるストック部を有する作業ステーションとを備え、前記移送装置が、前記ストック部に対する前記空ユニットの搬入出を行い、栽培効率および使い勝手を向上させるものであれば、その具体的な態様は如何なるものであっても何ら構わない。
【0032】
例えば、本発明の植物栽培装置における植物は、野菜、穀物、豆類、果実、観賞用植物等のいかなる植物であってもよく、また種、苗等のいかなる状態から生育を開始するもののでもよく、いかなる状態で生育を完了するものであってもよい。
本発明の植物栽培装置は、ビニールハウスや建物などの屋内および屋外のいずれに設置されるものであってもよい。
本発明の植物栽培装置の栽培ユニットは、培地を直接収容するものでもよく、培地が収容されている容器を収容するものであってもよい。
【実施例】
【0033】
本発明の実施例を、図1〜図6を参照して説明する。
本発明の実施例である植物栽培装置100の全体斜視図である図1を参照すると、植物栽培装置100は、設置部としての平面状の床101に設置される立体型植物栽培装置である。
併せて、植物栽培装置100の栽培庫121の図である図2、および、栽培ユニット110の分解斜視図である図3を参照すると、植物栽培装置100は、栽培対象である植物102(図3参照)を収容可能な複数の栽培ユニット110と、植物102が収容された栽培ユニット110を培地ユニット111としてそれぞれ格納可能な複数の栽培棚Sを備える棚ユニット120と、培地ユニット111を自動的に搬送するとともに任意の栽培棚Sに対して自動的に搬入出を行う移送装置130と、各栽培棚Sに格納された培地ユニット111の植物102を生育させるための栽培環境を設定する栽培環境設定装置(図2には、栽培環境設定装置を構成する装置の1つである栽培水供給装置150が示されている。)と、操作者が操作する制御盤(図示されず)および各種センサ(図示されず)からの入力信号に応じて移送装置130および前記栽培環境設定装置を制御する制御装置105(図1に模式的に示されている。)とを備えている。
なお、図1,図2においては、図の繁雑化を避けるために、培地ユニット111に収容された植物102が省略されている。
【0034】
棚ユニット120は、1以上の所定列数の、本実施例では、複数としての12の栽培棚列Cから構成される栽培庫121と、栽培庫121に入庫される培地ユニット111(すなわち、植物102が収容された状態の栽培ユニット110である。)が移送装置130により栽培庫121に搬送されるとともに栽培庫121から出庫された培地ユニット111が移送装置130により搬送されてくる作業ステーションとしての入出庫ステーション122と、各栽培棚Sおよび入出庫ステーション122の後述する棚161,171を支持する枠体123とを備えている。
【0035】
栽培庫121は、複数の栽培棚Sを有する1以上の所定ブロック数の、本実施例では複数としての2つの第1,第2棚列ブロック125,126を有する。
各棚列ブロック125,126は、1以上の、本実施例では6つの栽培棚列Cから構成されている。
【0036】
前記栽培環境設定装置には、各栽培棚Sに格納された培地ユニット111に栽培水を供給する栽培水供給装置150、植物102に光を照射する光源装置(図示されず)、温度や湿度を調整すると共に送風機能を有する空調装置(図示されず)などが含まれる。
ここで、栽培水は、培養液のほかに、肥料を含有していない水などを含み、植物102の生育に必要な液体を意味する。
【0037】
図3および図2の一部の要部拡大図断面図である図4を参照すると、栽培ユニット110は、作業者により植物102が植えられた培地を収容する容器であるプランター103を収容可能な収容部材としての合成樹脂製の培地トレー112と、作業者により運搬される培地トレー112を着脱可能に保持するとともに移送装置130により操作される保持部材としての金属製の保持フレーム115とから構成されている。
【0038】
被収容物としてのプランター103を収容して保持する培地トレー112は、1以上の、本実施例では複数のプランター103が載置される底壁112aを有する。底壁112aには、培地トレー112に供給された栽培水が流入する導水溝113と、導水溝113の底部に位置するとともに導水溝113に流入した栽培水を後述する導水路154aに排出するための導出口114とが設けられている。
このため、栽培水供給装置150から培地トレー112に供給された栽培水のうち、その一部分は各プランター103に与えられ、余剰分は導水溝113および導出口114を順次流れて、導水路154aに流入する。
【0039】
保持フレーム115は、プランター103を収容している状態の培地トレー112を補強する補強部材である。保持フレーム115は、上下方向で導出口114に対向する位置を含む領域で上下方向に開口する窓116が設けられた底壁115aと、移送装置130により移載されるときの保持フレーム115(したがって、培地ユニット111でもある。)の移載方向(図1,図2参照)で対向する1対の側壁115bとを備える。各側壁115bには、移送装置130と係合可能な係合部117が設けられている。
【0040】
図2を参照すると、移送装置130は、培地ユニット111および保持フレーム115を各栽培棚Sに対して搬入出する移載機構131と、該移載機構131により移載される培地ユニット111を移載機構131とともに水平方向および上下方向に搬送する搬送機構141とを備える。移載機構131および搬送機構141は、制御装置105により制御されて自動的に作動する。なお、本実施例では、搬送機構141は保持フレーム115を上下方向に搬送する。
【0041】
搬送機構141に搭載されている移載機構131は、搬送機構141の移載棚142に設けられるとともに水平面上で移載方向に直交する方向(本実施例では、後述する水平移動方向である。)で離隔する1対のローラ列132と、移載棚142に移動可能に設けられるとともに移載方向に一直線上で往復運動可能な可動体133と、該可動体133に設けられるとともに、栽培棚Sに対して培地ユニット111を搬入出可能とするために保持フレーム115の係合部117と係合可能な操作部134とを備えている。
【0042】
可動体133は、駆動部材(図示されず)により駆動されて、移載方向での移載棚142の両端部の間で移動可能である。図2には、移載棚142の一方の端部に位置することで第1位置を占めるときの可動体133が実線で示され、移載棚142の他方の端部に位置することで第2位置を占めるときの可動体133が二点鎖線で示されている。
1対のローラ列132の間に位置する操作部134は、アクチュエータ(図示されず)により駆動されて係合部117と係合する係合位置と、係合部117との係合が解除される係合解除位置との間で、可動体133に対して上下方向に移動可能な可動式の係合部である。
【0043】
可動体133が前記第1位置を占めていて、操作部134と係合部117とが係合状態にあるとき、可動体133は移載方向での一方向(図2において左方)に移動することで、第1棚列ブロック125の栽培棚Sから培地ユニット111を搬出して、移載棚142に移載する一方、移載棚142に載置されている培地ユニット111を第2棚列ブロック126の栽培棚Sに搬入して、格納する。
【0044】
同様に、可動体133が前記第2位置を占めていて、操作部134と係合部117とが係合状態にあるとき、可動体133は移載方向での他方向(図2において右方)に移動することで、第2棚列ブロック125の栽培棚Sから培地ユニット111を搬出して、移載棚142に移載する一方、移載棚142に載置されている培地ユニット111を第1棚列ブロック126の栽培棚Sに搬入して、格納する。
【0045】
搬送機構141は、移載機構131により栽培棚Sとの間で移載される培地ユニット111が載置される移載棚142と、移載棚142を移載機構131とともに上下方向に平行に移動させる昇降部143と、移載棚142および昇降部143を移載機構131とともに水平方向である水平移動方向に移動させる水平移動部146とを備えている。
【0046】
昇降部143は、昇降案内部材である4つの支柱144と、各支柱144に沿って上下方向に延びて設けられたチェーン(図示されず)と、移載棚142に設けられて該チェーンに噛合するスプロケット145とを有する。そして、スプロケット145が回転駆動部材(図示されず)により回転駆動されることによって、移載棚142が、栽培棚Sに対して移載機構131による搬入出が可能になる位置で停止可能に上下に移動する。
【0047】
水平移動部146は、支持板148と協働して支柱144を支持するとともに回転駆動部材(図示されず)により駆動される基台147と、基台147(したがって、搬送機構141)の移動経路である水平移動経路を規定する案内部としての案内レール149とを備えている。
案内レール149は、床101および枠体123の上部にそれぞれ設けられた直線状の第1,第2案内レール149b,149aにより構成される。そして、水平移動経路は、上下方向から見て(以下、「平面視」という。)、移載方向に直交する方向に一直線状に延びている。
【0048】
図1,図2を参照すると、第1棚列ブロック125の各栽培棚列Cおよび第2棚列ブロック126の各栽培棚列Cは、搬送機構141の移動方向としての水平移動方向に直交する水平方向である移載方向で案内レール149を挟んで配置され、かつ移載方向で第1,第2棚列ブロック125,126の栽培棚S同士が互いに対向するように、しかも水平移動経路上または水平移動方向で同じ位置に配置されている。
【0049】
1列である各栽培棚列Cは、上下方向に多段に配置された、複数である所定数の、本実施例では、4以上の数である15の栽培棚Sから構成されて、同一の構造を有する。したがって、栽培庫121の1列毎の栽培棚列Cは、前記所定数の段である15段の棚であり、各栽培棚列Cにおける同一段での栽培棚Sの上下方向での位置は同じである。
別の例として、1列の栽培棚列Cを構成する栽培棚Sの個数は、複数の栽培棚列Cにおいて異なっていてもよい。
【0050】
各栽培棚列Cは、最上段の最上段栽培棚S1と、最下段の最下段栽培棚S2と、最上段栽培棚S1と最下段栽培棚S2との間の中間段である1以上の、本実施例では複数としての13段の中間段栽培棚S3とから構成されている。
中間段栽培棚S3は、最上段栽培棚S1の直下段である上部中間段栽培棚S3aと、最下段栽培棚S2の直上段である下部中間栽培棚S3bと、上部中間段栽培棚S3aと下部中間段栽培棚S3bとの間の中部中間段栽培棚S3cとから構成されている。
【0051】
そして、各栽培棚列Cにおいて、最上段栽培棚S1は、入出庫ステーション122から栽培庫121に搬入された(すなわち、入庫された)直後の培地ユニット111が栽培庫121において最初に格納される栽培開始用栽培棚または入庫用栽培棚であり、最下段栽培棚S2は、培地ユニット111が栽培庫121から入出庫ステーション122に搬出される(すなわち、出庫される)直前の培地ユニット111が格納される収穫用栽培棚または出庫用栽培棚である。
【0052】
各栽培棚列Cのすべての栽培棚Sは、最上段栽培棚S1から最下段栽培棚S2に至るまでの間で、1以上の設定数の栽培棚Sを含む複数である所定区数の区域Rに分けられ、該区域R毎に、棚の高さHが異なる栽培棚Sから構成されている。
本実施例では、各栽培棚列Cは、複数としての3つの区域R、具体的には、最上部の最上区域R1と、最下部の最下区域R2と、最上区域R1と最下区域R2との間の中間区域R3とに分けられる。
各区域R1〜R3は、いずれも等しい前記設定段数である複数としての5段の栽培棚Sを含む。
【0053】
各栽培棚列Cは、棚の高さHが複数の段階で異なる栽培棚Sから構成される。
具体的には、各区域R1〜R3毎の棚の高さHは、最上段栽培棚S1を含む最上区域R1から最下段栽培棚S2を含む最下区域R2に向かうにつれて高くなるように変化し、栽培棚S毎の棚の高さHは、最上段栽培棚S1から最下段栽培棚S2に向かって高くなる傾向を有する。
このため、下方に位置する区域Rほど、棚の高さHが高い栽培棚Sが含まれ、最下段栽培棚S2の棚の高さHは、最上段栽培棚S1の棚の高さHよりも高い。
【0054】
なお、各区域R1〜R3において、最上部に位置する栽培棚Sの高さは、上下方向で隣接する区域R1,R2;R2,R3の境界を分かり易くするために、各区域R1〜R3内の他の栽培棚Sの棚の高さHよりも高く設定されているが、別の例として、区域R1〜R3のそれぞれに含まれるすべての栽培棚Sの棚の高さHは、同一であってもよい。
そして、培地ユニット111は、植えられている植物102が生長して背丈が高くなるにつれて、棚の高さHが高い栽培棚Sに、したがってより下段側の栽培棚Sに、移送装置130により移送される。
【0055】
栽培水供給装置150が模式的に示されている図2および図4を参照すると、各栽培棚Sに格納された培地ユニット111に栽培水を供給する栽培水供給装置150は、栽培水供給源151と、栽培数供給源151からの栽培水を培地ユニット111に導くための給水路152aを形成する給水管152と、給水路152aに設けられるとともに制御装置105により制御されて栽培水の供給・停止を行う給水調整弁153と、導水路154aを形成する導水管154と、培地ユニット111からの余剰の栽培水を排出する排水路155aを形成する排水管155と、排水路155aを通じて余剰の栽培水が導かれるドレン156とを有する。
各栽培棚Sに設けられた導水路154aには、栽培ユニット110の培地トレー112の導出口114からの栽培水が流入する。そして、すべての導水路154aの入口154iおよび出口154oは、平面視で、重なる位置に配置されている。
【0056】
栽培水供給装置150において、各栽培棚列Cにおける特定栽培棚としての最上段栽培棚S1、最下段栽培棚S2および上部中間段栽培棚S3aに格納された培地ユニット111の培地トレー112に、給水路152aの給水口157から栽培水が供給され、最上段栽培棚S1、最下段栽培棚S2および特定栽培棚として下部中間段栽培棚S3bの培地ユニット111の培地トレー112から、排水路155aの排水口158に余剰の栽培水がドレン156に排出される。
なお、図1,図2において、最上段栽培棚S1には、培地ユニット11が格納されていない状態が示されている。
【0057】
具体的には、最上段栽培棚S1には、給水路152aからの栽培水が流出する第1給水口としての給水口157aと、該給水口157aから供給された栽培水の余剰分を排出する第1排水口としての排水口158aとが設けられる。排水口158aは、最上段栽培棚S1に設けられた第1導水路としての導水路154の出口154oである。
最下段栽培棚S2には、給水路152aからの栽培水が流出する第2給水口としての給水口157bと、該給水口157bから供給された栽培水の余剰分を排出する第2排水口としての排水口158bとが設けられる。排水口158bは、最下段栽培棚S2に設けられた第2導水路としての導水路154aの出口154oである。
【0058】
また、中間段栽培棚S3のうち、上部中間段栽培棚S3aには、ドレン156に連なる排水口158は設けられずに、第3給水口としての給水口157cのみが設けられ、下部中間段栽培棚S3bには、給水路152aに連なる給水口157は設けられずに、上下方向で上部中間段栽培棚S3aと下部中間段栽培棚S3bとの間に配置された中部中間段栽培棚S3cを導水路154aを通って上段側から下段側に順次通った栽培水を排水路155aに流出させる第3排水口である排水口158cのみが設けられる。排水口158cは、下部中間段栽培棚S3bに設けられた第3導水路としての導水路154aの出口154oである。
【0059】
中間段栽培棚S3に設けられた中間導水路としての導水路154aは、上下方向で隣接する栽培棚S同士である中間段栽培棚S3同士において、上段に位置する中間段栽培棚S3に格納された上段側培地ユニット111(例えば、図4の培地ユニット111a)に供給された栽培水の余剰分を、下段に位置する中間段栽培棚S3に格納された下段側培地ユニット111(例えば、培地ユニット111b)に、該上段側培地ユニット111から導く。
さらに、すべての導水路154aの出口154oは、平面視で、重なる位置に配置されることで、1以上の中間段栽培棚S3に培地ユニット111が格納されていない状態にあるときにも、培地ユニット111がない中間段栽培棚S3を飛ばして、より下段側の中間段栽培棚S3に、出口154oから水が供給される。
したがって、栽培水は、給水口157から最上段から2段目の上部中間段栽培棚S3aに供給され、該上部中間段栽培棚S3aから、中部中間段栽培棚S3cを上段側から下段側に、導水路154aを介して、順次、連続して流れ、最下段から2段目の下部中間段栽培棚S3bに達した後に、排水口158cから排水される。
【0060】
図1,図2を参照すると、入出庫ステーション122は、搬送機構141により搬送されて栽培庫121に入庫される培地ユニット111が載置される入庫部および移送装置130により栽培庫121から出庫された培地ユニット111が載置される出庫部を構成する入出庫部160と、植物102が収容されていない栽培ユニット110の保持フレーム115が空ユニットとして、移送装置130の移載機構131による搬入出が可能に保管されるストック部としての1以上の列数の、本実施例では1列のストック棚列170とを有する。
入出庫部160とストック棚列170とは、水平移動経路を挟んで、移載方向で対向する位置にあり、かつ水平移動経路上でまたは水平移動方向で同じ位置にある。
【0061】
入出庫ステーション122、したがって入出庫部160およびストック棚列170は、搬送機構141の水平移動方向で栽培庫121に隣接した位置に、該栽培庫121と一体化されて設けられている。
より具体的には、栽培庫121に対する入出庫ステーション122の位置は、搬送機構141が各棚列ブロック125,126での隣接する栽培棚列C同士間で水平移動経路上を移動するときの移動距離と同じ距離だけ、入出庫ステーション122に隣接する特定栽培棚列としての栽培棚列C1,C2に対して水平移動経路上を移動することで、入出庫部160およびストック棚列170に対する培地ユニット111または保持フレーム115の搬出または搬入が可能になる位置であり、換言すれば、水平移動方向で隣接する栽培棚列C間の間隔と同じ間隔で栽培庫121に水平移動方向で隣接した位置である。
【0062】
入出庫部160は、2つの棚列ブロック125,126のうちの1つの棚列ブロックである第2棚列ブロック126に水平移動方向で隣接して配置され、該第2棚列ブロック126の端部に位置する栽培棚列C2に隣接するとともに該栽培棚列C2に一体化されている。
一方、ストック棚列170は、2つの棚列ブロック125,126のうちの別の1つの棚列ブロックである第1棚列ブロック125に移動方向で隣接して配置され、第1棚列ブロック125の端部に位置する特定栽培列棚としての栽培棚列C1に隣接するとともに該栽培棚列C1に一体化されている。
したがって、移送装置130は、栽培庫121での培地ユニット111の水平方向および上下方向での搬送の形態および栽培棚Sに対する培地ユニット111の搬入出の形態と同じ搬送形態および搬入出形態で、入出庫ステーション122において培地ユニット111および保持フレーム115の搬送および搬入出を行う。
【0063】
入出庫部160は、上下方向に1以上の段の、本実施例では1段の載置棚である入出庫棚161から構成される。
入出庫棚161は、移送装置130により移送されて栽培庫121に入庫される前の培地ユニット111が載置される入庫棚であり、また、移送装置130により移送されて栽培庫121から出庫された後の培地ユニット111が載置される出庫棚でもある。
また、入出庫棚161は、各栽培棚列Cのすべての栽培棚Sのうちで、最上段栽培棚S1および中間段栽培棚S3よりも最下段栽培棚S2に近い位置にあり、また、下部区域R2に含まれる最下段栽培棚S2に最も近い位置にあり、また、前記所定区数の区域R1〜R3のうちで、最下区域R2に最も近い位置にある。
【0064】
ストック棚列170は、栽培庫121を構成する栽培棚列Cの数である前記所定列数以上の数の、本実施形態では該所定列数と同数の12のストック棚171から構成される。
最下段のストック棚171は、上下方向で、栽培棚列Cの最下段栽培棚S2と同じ位置にあり、最上段のストック棚171は、栽培棚列Cの同一段での栽培棚Sである中間段栽培棚S3と同じ位置にあり、各ストック棚171の棚の高さは、栽培棚列Cでの同一段での栽培棚Sの棚の高さHと同じであり、上下方向での位置に応じて異なる。
別の例として、すべてのストック棚171の棚の高さは同一であってもよく、また1以上のストック棚171の棚の高さが、栽培棚Sの棚の高さHとは異なっていてもよい。
【0065】
各ストック棚171には、栽培棚Sから搬出されて入出庫棚161に載置され培地ユニット111からプランター103を収容している培地トレー112が取り出された後、残った保持フレーム115が空ユニットとして、上下方向で最下段のストック棚171と同じ位置にある入出庫棚161から、移載機構131によりストック棚171に移載されて格納される。
なお、ストック棚171には、栽培棚Sにおいて必要となる栽培水供給装置150を含む前記栽培環境設定装置は備えられていない。
【0066】
入出庫棚161には、搬送機構141が水平移動経路での入出庫位置P(図5参照)を占めるときに、移載機構131によりストック棚171から移載された保持フレーム115が、該移載機構131により載置される。
そして、入出庫棚161に載置されている保持フレーム115に、作業者により植物102が植えられたプランター103(図3参照)を収容した培地トレー112が保持されることで、培地ユニット111が得られる。
【0067】
また、搬送機構141が入出庫位置P(図6参照)を占めるときに、栽培庫121から搬送されてきた培地ユニット111が移載機構131により入出庫棚161に載置された後、収穫のために培地トレー112が取り外されて残った保持フレーム115は、移載機構131により入出庫棚161から移載されてストック棚171に載置される。
このように、入出庫位置Pは、入庫位置であるとともに出庫位置でもある。
【0068】
次に、植物栽培装置100の栽培庫121に対する入出庫工程を説明するための図5および図6を中心に、必要に応じて図1,図2を参照して、ストック棚171に格納されている保持フレーム115から培地ユニット111が作成されて、該培地ユニット111が栽培庫121に入庫される入庫工程、および、培地ユニット111が栽培庫121から出庫される出庫工程を含む植物栽培装置における培地ユニットの格納方法について説明する。
なお、図5,図6では、図の繁雑化を避けるため、植物栽培装置100の一部が削除され、また簡略化されている。
【0069】
図1に示されるように、保持フレーム115がストック棚列170に保管されている状態で、第1,第2棚列ブロック125,126の各栽培棚列Cの最上段栽培棚S1に格納される予定の培地ユニット111を作成するための保持フレーム115がストック棚171に格納されている。
【0070】
図5(a)を参照すると、栽培庫121に入庫するための培地ユニット111を準備するための入庫準備工程において、案内レール149に沿って移動した搬送機構141の移動棚142および移載機構130(図2参照)が入出庫部160とストック棚列170との間の水平移動経路上で入出庫位置Pを占める。
【0071】
入出庫位置Pにおいて、移載機構130の可動体133が図2に実線で示される位置で、ストック棚列170の最下段のストック棚171から1つの保持フレーム115(すなわち、空フレーム)を、入出庫棚161に向かって移載棚142に搬出する。そして、可動体133が移載方向で入出庫棚161に向かって(図2での左方に)移動することにより、保持フレーム115の全体が所定位置で移載棚142に載せられた後に、操作部134が移載棚142上の保持フレーム115よりも下方まで移動して係合解除位置を占めた後、可動体133がストック棚列170に向かって(図2での右方に)所定距離だけ移動した後、停止して、その位置で操作部134が上方に移動して係合部117と係合する係合位置を占める。
【0072】
次いで、操作部134と係合部117とが係合した状態で、可動体134が入出庫棚161に向かって移動して、移載機構131が移載棚142から入出庫棚161に保持フレーム115を搬入し、保持フレーム115が入出庫棚161に載置される(図5(b)参照)。
その後、作業者により、植物102が植えられたプランター103(図3参照)を収容している培地トレー112が、入出庫棚161に載置されている保持フレーム115に載置されて、該保持フレーム115に収容され、入出庫部160において培地ユニット111が作成される(図5(c)参照)。
【0073】
これら一連の工程を含む入庫準備工程の終了後、入庫工程において、搬送機構141が入出庫位置Pを占める状態で、移載機構131が入出庫部160から培地ユニット111を搬出して移載棚142の所定位置に移載した後、搬送機構141が案内レール149に沿って水平移動経路上を移動して、水平移動方向で培地ユニット111が格納される第1棚列ブロック125の栽培棚列Cに対応する格納位置に停止する。
そして、昇降部143(図2参照)により移載棚142が上下方向で最上段栽培棚S1の位置まで上昇して停止し、移載機構131が移載棚142から培地ユニット111を最上段栽培棚S1に搬入して、培地ユニット111が最上段栽培棚S1に格納される(図5(d)参照)。
なお、水平移動経路上の前記格納位置は、第1,第2棚列ブロック125,126において移載方向で互いに対向する栽培棚S同士で同じである。
【0074】
その後、前述の入庫準備工程および入庫工程が繰り返されて、ストック棚171に格納されている保持フレーム115が、下段側から上段側に順次搬出された後、入出庫棚161上で培地ユニット111にされて、入出庫部160から搬送機構141および移載機構131により移送されて第1棚列ブロック125の各最上段栽培棚S1に順次格納されて、入庫される。
その後、第1棚列ブロック125と同様にして、第2棚列ブロック126の各栽培棚列Cの最上段栽培棚S1に、ストック棚列170のすべての保持フレーム115から作成された培地ユニット111が格納される(図6(a)参照)。
【0075】
次に、出庫工程について説明する。
第1棚列ブロック125の最下段栽培棚S2に格納されていた培地ブロック111が、移載機構131により搬出されて移載棚142に移載された後、搬送機構141により水平移動経路に沿って入出庫位置Pまで搬送され、該入出庫位置Pにおいて移載機構131により移載棚142から入出庫部160に移載されて載置される(図6(a)参照)。
次いで、作業者が入出庫部160の培地ユニット111から培地トレー112のみを取り出すことにより、入出庫棚161には、栽培ユニット110の保持フレーム115のみが残る(図6(b)参照)。
【0076】
その後、入出庫位置Pで、移載機構131により、保持フレーム115が入出庫棚161から搬出されて移載棚142に移載され、次いで移載方向で移載棚142を挟んで入出庫棚161とは反対側のストック棚列170における所定のストック棚171に搬入されて、ストック棚171に格納される(図6(c)参照)。
【0077】
その後、前述した工程と同様にして、第1棚列ブロック125の残りの各栽培棚列Cの最下段栽培棚S2から培地ユニット111が順次出庫され、次いで第2棚列ブロック126の各栽培棚列Cの最下段栽培棚S2から培地ユニット111が順次出庫さて、ストック棚列170の各ストック棚171には、栽培庫121の最下段栽培棚S2に格納されていた培地ユニット111の保持フレーム115がストック棚列170の各ストック棚171に格納される(図6(d)参照)。
【0078】
前述の出庫工程が終了した後における培地ユニット111の移替え工程において、図6(d)に示される植物栽培装置100の状態で、各棚列ブロック125,126において、移載機構131および搬送機構141により、下部中間段栽培棚S3bに格納されている培地ユニット111(図1,図2参照)が1つずつ搬出されて、最下段栽培棚S2に1つずつ搬入される。
同様にして、移載機構131および搬送機構141により、下部中間段栽培棚S3bよりも上段の各栽培棚Sに格納されている培地ユニット111が順次、1つ下方の段の栽培棚Sに移し替えられる。
【0079】
次に、前述のように構成された実施例の作用および効果について説明する。
植物栽培装置100が、植物102が収容されている栽培ユニット110が培地ユニット111として格納される複数の栽培棚Sを備える棚ユニット120と、水平移動経路上を移動するとともに培地ユニット111の搬送および栽培棚Sに対する培地ユニット111の搬入出を行う移送装置130とを備え、複数の栽培棚Sが上下方向に多段に配置された1列の栽培棚列Cを構成する。
この構成により、培地ユニット111が格納される複数の栽培棚Sが上下方向に多段の栽培棚列Cを構成するので、上下方向でのスペースを利用して栽培棚Sを増やすことで、植物栽培装置100を水平方向で小型化しながら、栽培される植物102を増産することができる。
【0080】
棚ユニット120が、複数の栽培棚列Cから構成される栽培庫121と、植物102が収容されていない栽培ユニット110の保持フレーム115が空ユニットとして保管されるストック棚列170を有する入出庫ステーション122とを備え、移送装置130が、ストック棚列170に対する保持フレーム115の搬入出を行う。
この構成により、栽培された植物102の収穫後などのために植物102が植えられていない保持フレーム115が保管されるストック棚部170が、植物102が植えられている培地ユニット111が格納される栽培庫121を備える棚ユニット120の一部として植物栽培装置100に組み込まれるので、保持フレーム115を植物栽培装置100の外部に搬出する必要がなく、培地ユニット111を得るための保持フレーム115の搬送の作業効率が向上する結果、栽培庫121での格納率が高い状態で植物栽培装置100を稼働させることができて、植物栽培装置100の栽培効率を向上させることができる。
【0081】
しかも、ストック棚列170への保持フレーム115の搬送は、栽培庫121において栽培棚S同士の間での培地ユニット111の搬送および栽培棚Sに対する培地ユニット111の搬入出を行う移送装置130を利用して行われるので、ストック棚列170に対して保持フレーム115の搬入出を行うための専用の移送装置が不要になって、植物栽培装置100のコストを削減することができる。さらに、ストック棚列170に対する保持フレーム115の搬入出を、栽培棚Sに対する培地ユニット111の搬入出と同じ搬入出形態で行うことで、植物栽培装置100の使い勝手を向上させることができるうえ、移送装置130の構造を簡素化することができ、植物栽培装置100のコストを削減することができる。
【0082】
ストック棚列170が、栽培庫121が有する栽培棚列Cと同数の多段のストック棚171から構成されることによりストック棚列170には、栽培庫121のすべての栽培棚列Cのそれぞれに対して、保持フレーム115が保管されるストック棚171が少なくとも1つ確保されるので、各栽培棚列Cのための保持フレーム115および培地ユニット111の搬送の作業効率を向上させることができて、栽培効率を向上させることができる。
【0083】
ストック棚列170および入出庫部160が、栽培庫121の特定栽培棚としての特定栽培棚列C1,C2にそれぞれ隣接して配置され、さらに該栽培棚列C1,C2にそれぞれ一体化されていることにより、栽培棚列Cを有する栽培庫121と、ストック棚171および入出庫部160を有する入出庫ステーション122とを備える棚ユニット120を小型化することができ、ひいては植物栽培装置100を小型化することができる。
【0084】
入出庫ステーション122は、栽培庫121の栽培棚Sに入庫される培地ユニット111が水平移動経路での入出庫位置Pで停止した移送装置130により載置される入出庫棚161を有し、ストック棚列170のストック棚171が、移送装置130が入出庫位置Pから水平移動経路上で移動することなく、ストック棚171から保持フレーム115を搬出可能で、かつ入出庫棚161に搬入可能な位置にある。
この構成により、保持フレーム115に植物102を収容した培地トレー112を保持させることで、栽培ユニット110を保持フレーム115から培地ユニット111にするために、保持フレーム115が移送装置130によりストック棚171から搬出されるとき、移送装置130は入出庫位置Pから水平移動経路上を移動することなくストック棚171から保持フレーム115を搬出することができるので、培地ユニット111を得るための保持フレーム115の搬送時間が短縮されて、保持フレーム115の搬送の作業効率が向上し、ひいては保持フレーム115から得られる培地ユニット111の栽培棚Sへの搬送時間が短縮されて、植物栽培装置100の使い勝手を向上させることができる。
【0085】
栽培ユニット110が、植物102が植えられたプランター103を収容する培地トレー112と、培地トレー112を着脱可能に保持するとともに移送装置130の移載機構131により操作される保持フレーム115とから構成されることにより、移載機構131に操作される保持フレーム115の強度を高めることで、移送装置130による培地ユニット111の取扱いの容易性が確保される。しかも、保持フレーム115が、植物102が収容される培地トレー112を補強する補強部材ともなることで、培地トレー112の軽量化が可能になるので、植物栽培装置100からの植物102の搬出の際には、植物102が収容された培地トレー112のみを培地ユニット111から取り出して搬送することが可能になるめ、植物栽培装置100からの植物102の搬出の際に植物102が収容された培地トレー112の運搬作業を容易化することができる。
【0086】
また、ストック棚列170に保管される空ユニットが、栽培ユニット110において、培地トレー112が取り外された状態の保持フレーム115であることにより、培地トレー112が取り外された保持フレーム115は、空ユニットとして、ストック棚列170に保管されるなどして、植物栽培装置100の内部に留まるので、栽培が開始される植物102が収容された培地トレー112との合体による培地ユニット111の作成を容易化することができる。
【0087】
各栽培棚列Cが、移送装置130により栽培庫121に入庫された直後の培地ユニット111が格納される最上段栽培棚S1と、移送装置130により栽培庫121から出庫される直前の培地ユニット111が格納される最下段栽培棚S2とを有し、入出庫ステーション122は、最下段栽培棚S2から搬出された培地ユニット111が載置される入出庫部160を有し、入出庫部160が、最上段栽培棚S1よりも最下段栽培棚S2に近い位置にある。
この構成により、栽培棚列Cの栽培棚Sのうちで、入出庫部160と最下段栽培棚S2との間の距離は、入出庫部160と最上段栽培棚S1との間の距離よりも短いので、栽培庫121から出庫される培地ユニット111、すなわち、植物栽培装置100での栽培が終了して収穫時期に達した植物102が収容された培地ユニット111を、入出庫部160まで搬送する時間が短くなり、培地ユニット111を出庫させるための搬送の作業効率を向上させることができて、植物栽培装置100の使い勝手を向上させることができる。
【0088】
栽培棚列Cのすべての栽培棚Sが複数の区域Rに分けられ、下方に位置する区域Rほど、棚の高さHが高い栽培棚Sが含まれ、入出庫ステーション122が、移送装置130により最下区域R2の最下部栽培棚S2から搬出された培地ユニット111が移送装置130により搬送されて載置される入出庫部160を有し、入出庫部160が、区域R1〜R3において、最下区域R2に最も近い位置にある。
この構成により、栽培棚列Cの栽培棚Sのうちで、入出庫部160と最下区域R2との間の距離は、入出庫部160と最下区域R2以外の区域R1,R3との間の距離よりも短いので、栽培庫121から出庫される培地ユニット111、すなわち、生長して背丈が高くなった植物102が収容された培地ユニット111を入出庫部160まで搬送する時間が短くなり、培地ユニット111を出庫させるための搬送の作業効率を向上させることができ、植物栽培装置100の使い勝手を向上させることができる。
【0089】
各栽培棚列Cには、上下方向で隣接する中間段栽培棚S3同士において、上段側に位置する中間段栽培棚S3に格納された上段側培地ユニット111aに供給された栽培水の余剰分を、下段側に位置する中間段栽培棚S3に格納された下段側培地ユニット111bに、上段側培地ユニット111aから導くための導水路154aが設けられる。
この構成により、上段側培地ユニット111aに供給された栽培水の余剰分は、導水路154aを通じて下段側培地ユニット111bに供給されるので、栽培水の供給および排出が培地ユニット111毎に独立して行われる場合に比べて、栽培水の供給系統および排出系統の構造(例えば配管)が簡素化されて、植物栽培装置100を小型化することができ、また植物栽培装置100のコストを削減することができる。
【0090】
各栽培棚列Cのすべての栽培棚Sが、最上段栽培棚S1と最下段栽培棚S2と複数の中間段栽培棚S3とに分けられ、最上段栽培棚S1には、栽培水供給源151からの栽培水が供給される給水口157aとドレン156に余剰の栽培水を排出する排水口158aとが設けられ、最下段栽培棚S2には、栽培水供給源151からの栽培水が供給される第2給水口157bとドレン156に余剰の栽培水を排出する第2排水口158bとが設けられ、中間段栽培棚S3のうち、上部中間段栽培棚S3aには、栽培水供給源151からの栽培水が供給される第3給水口157cと、最下段栽培棚S2の直上の下部中間段栽培棚S3bには、ドレン156に余剰の栽培水を排出する排水口158cとが設けられ、上下方向で隣接する中間段栽培棚S3同士において、上段側に位置する中間段栽培棚S3に格納された上段側培地ユニット111に供給された栽培水を、下段側に位置する中間段栽培棚S3に格納された下段側培地ユニット111に、上段側培地ユニット111から導く導水路154aが設けられ、給水口157cからの栽培水が導水路154aを通って順次下段側の培地ユニット111に導かれて下部中間段栽培棚S3に格納された培地ユニット111に供給された後、排水口158cから排出される。
【0091】
この構成により、各栽培棚列Cにおいて、最上段栽培棚S1、最下段栽培棚S2および中間段栽培棚S3の三区分で、栽培水の供給および排出を互いに独立して制御できるので、各栽培棚Sに対する培地ユニット111の搬入出が行われる際に、栽培水の供給停止の及ぶ範囲を制限することが可能になって、栽培水供給装置150の構造の簡素化を実現しながら、植物栽培装置100の栽培効率を向上させることができる。
そして、最上段栽培棚S1が、栽培庫121への入庫直後の培地ユニット111が格納される入庫用栽培棚であり、最下段栽培棚S2が、栽培庫121からの出庫直前の培地ユニット111が格納される出庫用栽培棚であることで、最上段栽培棚S1および最下段栽培棚S2に対する培地ユニット111の移送には、中間段栽培棚S3同士の間での培地ユニット111の移替えに要する時間に比べて多くの時間を要するために、栽培水の供給停止時間が長くなる最上段栽培棚S1および最下段栽培棚S2での栽培水の供給系統を、中間段栽培棚S3での栽培水の供給系統から独立させることで、植物栽培装置100の栽培効率を一層向上させることができる。
【0092】
以下、前述した実施例の一部の構成を変更した実施例について、変更した構成に関して説明する。
培地ユニット111は、生長による植物102の背丈の変化に応じての最適な棚の高さHの栽培棚Sに格納されるほかに、収容された植物102の生育期間・種類に応じて、最適な棚の高さHを有する栽培棚Sに格納されてもよい。
栽培棚列Cを構成するすべての栽培棚Sは、棚の高さHが同一であってもよい。
栽培棚列Cの数は、複数の棚列ブロックにおいて異なっていてもよい。
【0093】
栽培ユニットは、培地トレー112および保持フレーム115に分離可能な分割型部材ではなく、プランター103を収容可能であるとともに移載機構131と係合可能な1つの一体型部材により構成されてもよい。
培地トレー112は、被収容物としての培地を直接収容してもよい。
入出庫ステーション122において、入出庫部160が上下方向に配置された2または3以上の複数の入出庫棚161から構成されてもよく、また、入出庫部160およびストック棚171が水平方向に水平移動経路に平行に複数列配置されてもよい。さらに、入庫棚と出庫棚とが別個の棚または列として構成されてもよい。
【0094】
導水路154aは、培地トレー112とは別個の部材である導水管154により構成されたが、導水管が培地トレー112に一体成形されてもよく、また導水路154aが培地トレー112自体に設けられてもよい。
栽培棚列Cにおいて、入庫用栽培棚は、最上段栽培棚S1以外の栽培棚Sであってもよく、出庫用栽培棚は、最下段栽培棚S2以外の栽培棚Sであってもよい。
栽培水供給源151は、複数の培地ユニット111に栽培水をそれぞれ供給する複数の栽培水供給源の集合体であってもよく、同様に、ドレン156は、複数の培地ユニット111からの余剰の栽培水が導かれる複数のドレンの集合体であってもよい。
【符号の説明】
【0095】
100・・・植物栽培装置
102・・・植物
110・・・栽培ユニット
111・・・培地ユニット
112・・・培地トレー
115・・・保持フレーム
120・・・棚ユニット
121・・・栽培庫
122・・・入出庫ステーション
125,126・・・棚列ブロック
130・・・移送装置
131・・・移載機構
141・・・搬送機構
150・・・栽培水供給装置
154a・・・導水路
157・・・給水口
158・・・排水口
160・・・入出庫部
161・・・入出庫棚
170・・・ストック棚列
171・・・ストック棚
S,S1,S2,S3・・・栽培棚
C ・・・栽培棚列、
R ・・・区域
P ・・・入出庫位置
H ・・・棚の高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培対象である植物を収容可能な複数の栽培ユニットと、前記植物が収容されている前記栽培ユニットが培地ユニットとして格納される複数の栽培棚を備える棚ユニットと、移動経路上を移動するとともに前記培地ユニットの搬送および前記栽培棚に対する前記培地ユニットの搬入出を行う移送装置とを備え、複数である所定数の前記栽培棚が上下方向に多段に配置された1列の栽培棚列を構成する植物栽培装置において、
前記棚ユニットが、1以上の所定列数の前記栽培棚列から構成される栽培庫と、前記植物が収容されていない前記栽培ユニットが空ユニットとして保管されるストック部を有する作業ステーションとを備え、
前記移送装置が、前記ストック部に対する前記空ユニットの搬入出を行うことを特徴とする植物栽培装置。
【請求項2】
前記ストック部が、上下方向に多段に配置された前記所定列数以上の数のストック棚から構成されるストック棚列であり、
前記ストック棚列が、前記栽培棚列である特定栽培棚列に隣接して配置されるとともに前記特定栽培棚列に一体化されていることを特徴とする請求項1に記載の植物栽培装置。
【請求項3】
前記作業ステーションが、前記栽培棚に入庫される前記培地ユニットが前記移動経路での入庫位置で停止した前記移送装置により載置される入庫部を有し、
前記ストック部が、前記移送装置が入庫位置から前記移動経路上で移動することなく、前記ストック部から前記空ユニットを搬出可能で、かつ前記入庫部に搬入可能な位置にあることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の植物栽培装置。
【請求項4】
前記栽培ユニットが、前記植物が植えられた被収容物を収容する収容部材と、前記収容部材を着脱可能に保持するとともに前記移送装置により操作される保持部材とから構成され、
前記空ユニットが、前記収容部材が取り外された状態の前記保持部材であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の植物栽培装置。
【請求項5】
前記各栽培棚列が、前記移送装置により前記栽培庫に入庫された直後の前記培地ユニットが格納される入庫用栽培棚または最上段栽培棚と、前記移送装置により前記栽培庫から出庫される直前の前記培地ユニットが格納される出庫用栽培棚または最下段栽培棚とを有し、
前記作業ステーションが、前記移送装置により前記出庫用栽培棚または前記最下段栽培棚から搬出された前記培地ユニットが前記移送装置により搬送されて載置される出庫部を有し、
前記出庫部が、前記各栽培棚列において、前記入庫用栽培棚または前記最上段栽培棚よりも前記出庫用栽培棚または前記最下段栽培棚に近い位置にあることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の植物栽培装置。
【請求項6】
前記栽培棚列の前記所定数の前記栽培棚が、1以上の前記栽培棚を含む複数である所定区数の区域に分けられ、
下方に位置する前記区域ほど、棚の高さが高い前記栽培棚が含まれ、
前記作業ステーションが、前記移送装置により最下部の前記区域の前記栽培棚から搬出された前記培地ユニットが前記移送装置により搬送されて載置される出庫部を有し、
前記出庫部が、前記所定区数の前記区域において、前記最下部の前記区域に最も近い位置にあることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の植物栽培装置。
【請求項7】
前記各栽培棚列には、上下方向で隣接する前記栽培棚同士において、上段側に位置する前記栽培棚に格納された前記培地ユニットである上段側培地ユニットに供給された栽培水の余剰分を、下段側に位置する前記栽培棚に格納された前記培地ユニットである下段側培地ユニットに、前記上段側培地ユニットから導くための導水路が設けられることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1つに記載の植物栽培装置。
【請求項8】
前記各栽培棚列のすべての前記栽培棚が、最上段の最上段栽培棚と、最下段の最下段栽培棚と、前記最上段栽培棚と前記最下段栽培棚との間の複数の中間段栽培棚とに分けられ、
前記最上段栽培棚には、栽培水供給源からの栽培水が供給される第1給水口と、ドレンに余剰の栽培水を排出する第1排水口とが設けられ、
前記最下段栽培棚には、前記栽培水供給源からの栽培水が供給される第2給水口と、前記ドレンに余剰の栽培水を排出する第2排水口とが設けられ、
前記中間段栽培棚のうち、前記最上段栽培棚の直下の上部中間段栽培棚には、前記栽培水供給源からの栽培水が供給される第3給水口と、前記最下段栽培棚の直上の下部中間段栽培棚には、前記ドレンに余剰の栽培水を排出する第3排水口とが設けられ、
上下方向で隣接する前記中間段栽培棚同士において、上段側に位置する前記中間段栽培棚に格納された前記培地ユニットである上段側培地ユニットに供給された栽培水を、下段側に位置する前記中間段栽培棚に格納された前記培地ユニットである下段側培地ユニットに、前記上段側培地ユニットから導く導水路が設けられ、
前記第3給水口からの栽培水が前記導水路を通って順次下段側の前記培地ユニットに導かれて前記下部中間段栽培棚に格納された前記培地ユニットに供給された後、前記第3排水口から排出されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1つに記載の植物栽培装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−210185(P2012−210185A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77742(P2011−77742)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【出願人】(594156020)エスペックミック株式会社 (10)
【Fターム(参考)】