説明

検体処理システム

【課題】本発明の目的は、分注トレイを保冷することにより、規定数の分注を終了する時間の短い長いに関係なく、検体の蒸発量を抑制し、分析に必要な検体量を確保して、次工程の分析等の処理に正常に移行できるようにすることにある。
【解決手段】本発明は、親検体容器から分注容器に検体を分注する検体処理システムにおいて、前記分注容器を収納する分注トレイと、前記分注トレイに設けられる保冷手段としてのペルチェ素子を含む熱電素子と、前記分注トレイを着脱自在に載置する分注モジュールと、前記分注トレイより前記熱電素子に電力を供給するところの着脱自在なる電気接続手段と、前記熱電素子が発した冷熱を放熱する放熱手段を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査のために採取した血液や尿などの検体を搬送し、分注等の処理を行う検体処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検体処理システムでは、検査のために採取した血液や尿などの検体を検体処理システムにオンラインで接続されていないオフラインの自動分析装置で行なわれるものもある。
【0003】
オフラインの自動分析装置用に分注した子検体容器には蒸発に対する施策は施されていない。
【0004】
検体を保冷するサンプル保冷器としては、たとえば特開平7−140137号公報(特許文献1)に記載されたものが知られている。
【0005】
【特許文献1】特開平7−140137号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
オフラインの自動分析用に装置内に設置してある専用容器(分注トレイ)に規定数の検体を分注処理しないと、次工程の処理に移行しないようになっている。
【0007】
そのため、処理に時間がかかると、最初の方で分注した検体は蒸発し、検体量が不足して、正常な分析ができない可能性がある。
【0008】
本発明の目的は、分注トレイを保冷することにより、規定数の分注を終了する時間の短い長いに関係なく、検体の蒸発量を抑制し、分析に必要な検体量を確保して、次工程の分析等の処理に正常に移行できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、親検体容器から分注容器に検体を分注する検体処理システムにおいて、分注容器を収納する分注トレイ内に、冷媒を有する出し入れ自在な冷却容器を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、分注容器が冷たく保存されるので検体蒸発を抑えることができ、検体の正常な分析が行なわれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について、図を引用して説明する。
【0012】
図1は、分注トレイの1つの模式的な例で、分注トレイ1に冷媒による保冷手段を備えたカートリッジ式の冷却容器2を上部から装着し、その上に仕切り板3と検体を分注する分注容器4を取り外し自在に実装する。
【0013】
カートリッジ式の冷却容器2は分注トレイ1に形状を合わせて供給する。更に、搬送、保管時に使用する蓋5が備わる。
【0014】
図2は冷媒による保冷手段を備えたカートリッジ式の冷却容器2を装着した分注トレイ1の断面図(図1の断面図)を示した例である。
【0015】
分注トレイ1の中にカートリッジ式の冷却容器2を装着し、その上に仕切り板3と分注用容器4が取り外し自在に実装されている。
【0016】
カートリッジ式の冷却容器2と分注容器4は熱が良く伝わるように密着する構造になっており、分注容器4を保冷する。カートリッジ式の冷却容器2の中には、冷媒の保冷剤として保冷用ジェルを充填し使用する。
【0017】
また、カートリッジ式の冷却容器2は冷蔵庫などの冷却装置内に保存、保管し、再冷却することにより繰り返し再利用可能となる。
【0018】
図3は保冷手段としてペルチェ素子10(熱電素子)を備えた分注トレイ1の断面図を示した例である。
【0019】
分注トレイ1にペルチェ素子10(熱電素子)を取付け、ペルチェ素子10(熱電素子)の上に密着性を良くした熱伝導効率の良い金属板11を取り外し自在に実装する。
【0020】
さらに、金属板11の上に仕切り板3と分注容器4を密着する構造である。仕切り板3と分注容器4は取り外し自在に実装する。
【0021】
図中の太い実線50は、分注トレイ1側と分注モジュール(後述する)側が着脱される分割ラインである。
【0022】
また、ペルチェ素子10(熱電素子)の電力供給方法としては、着脱自在なる電気接続手段を介して行なわれる。電気接続手段は、電力供給用の接点12、13を有する。接点12は分注トレイ1側に、接点13は分注モジュール側に設けられる。
【0023】
電力供給は、電気接続手段を介して分注モジュール側からペルチェ素子10(熱電素子)に供給される。
【0024】
また、分注モジュールには放熱のためのヒートパイプやファン14(放熱手段)を実装する。
【0025】
図4は保冷手段としてのペルチェ素子10(熱電素子)を分注モジュール側に備えた分注トレイ1の断面図を示した例である。
【0026】
分注トレイ1は仕切り板3と分注容器4からなる構成である。分注トレイ1は分注モジュールに実装されているペルチェ素子10(熱電素子)の上に搭載することにより保冷可能となる。
【0027】
また、分注モジュール側のペルチェ素子10(熱電素子)には熱伝導効率の良い金属板11と放熱のためのヒートパイプやファン14(放熱手段)が実装されている。
【0028】
図5は検体処理システムの分注モジュールで、分注トレイ1を5個(101,102,103,104,105)実装した図である。
【0029】
分注モジュールの一般的な分注処理は、親ラックに搭載された親検体20からチップラックに実装されたチップ21を使用して検体を分注し、各分注トレイ101,102,103,104,105の指定された各ポジションに分注処理を行う。
【0030】
各分注トレイ101,102,103,104,105は、図6に示すスイッチ、またはセンサ201,202,203,204,205で認識さる。
【0031】
ペルチェ素子101C,102C,103C,104C,105Cを実装した各分注トレイ101,102,103,104,105はスイッチまたはセンサ201,202,203,204,205による実装の認識および分注トレイに分注されるポジションによってペルチェ素子に流す電流を制御することを可能とする。
【0032】
この電流制御により、保冷温度を適正に保つ。また、スイッチまたはセンサ201,202,203,204,205(分注トレイの分注モジュールへの載置の有無を検知する検知手段)により、分注トレイの実装されていないポジションへの給電はされない。
【0033】
ペルチェ素子への電源供給の制御について図6を引用して説明を加える。
【0034】
各分注トレイは、スイッチまたはセンサ201,202,203,204,205(検知手段)により検知される。検知手段は、分注トレイ101,102,103,104,105の実装状態信号をコントローラ(制御手段)に送る。
【0035】
コントローラ(制御手段)は入力信号により、分注トレイ101,102,103,104,105の有無を認識する。
【0036】
分注トレイの実装されたポジションには電源供給ユニット300に実装されている各電源供給スイッチ301,302,303,304,305に出力信号を送り制御することで各ペルチェ素子101C,102C,103C,104C,105Cに電源を供給する。
【0037】
図7はコントローラの処理フローを示した図である。
【0038】
コントローラ(制御手段)は最初に分注トレイ101の実装が有るか否かを判断する。実装がない場合はペルチェ素子101Cへの電源供給は行わない。
【0039】
分注トレイ101の実装が有る場合は分注トレイ101に分注処理中または分注処理完了か判断する。分注処理中または分注処理完了でない場合はペルチェ素子101Cへの電源供給は行わない。
【0040】
分注トレイ101に分注処理中または分注処理完了の場合はペルチェ素子101Cに電源の供給を行う。このときに分注されたポジションによってペルチェ素子に流す電流を制御することも可能である。
【0041】
同様の処理を分注トレイ102,103,104,105と順次繰り返す処理である。また、図示していないセンサにより、トレイ周囲の温度、湿度をコントローラ(制御手段)に取り込み、ペルチェ素子への給電を制御することで、検体の蒸発量の低減と省電力も図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施例に係わるもので、保冷手段を備えたカートリッジ式の容器を実装した分注トレイを示す斜視図である。
【図2】本発明の実施例に係わるもので、保冷手段を備えたカートリッジ式の容器を実装した分注トレイの断面図である。
【図3】本発明の他実施例に係わるもので、ペルチェ素子を実装した分注トレイの断面図である。
【図4】本発明の更なる他の実施例に係わるもので、ペルチェ素子を使用する分注トレイの断面図である。
【図5】本発明の実施例に係わるもので、分注モジュールを示す図である。
【図6】本発明の実施例に係わるもので、ペルチェ素子に電源を供給するコントローラの制御回路を示す図である。
【図7】本発明の実施例に係わるもので、ペルチェ素子に電源を供給する処理フローを示す図である。
【符号の説明】
【0043】
101,102,103,104,105…分注トレイ、2…保冷手段を備えたカートリッジ式の容器、3…仕切り板、4…分注用容器、5…蓋、11…熱伝導性金属板、12…ペルチェ素子側の電力供給用接点、13…分注モジュール側の電力供給用接点、14…ファン、10,101C,102C,103C,104C,105C…ペルチェ素子、201,202,203,204,205…スイッチまたはセンサ、300…電源供給ユニット、301,302,303,304,305…電源供給スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親検体容器から分注容器に検体を分注する検体処理システムにおいて、
前記分注容器を収納する分注トレイ内に、冷媒を有する出し入れ自在な冷却容器を備えることを特徴とする検体処理システム。
【請求項2】
請求項1記載の検体処理システムにおいて、
前記冷媒として保冷ジェルなどを使用することを特徴とする検体処理システム。
【請求項3】
親検体容器から分注容器に検体を分注する検体処理システムにおいて、
前記分注容器を収納する分注トレイを保冷する保冷手段としてペルチェ素子を含む熱電素子を使用することを特徴とする検体処理システム。
【請求項4】
親検体容器から分注容器に検体を分注する検体処理システムにおいて、
前記分注容器を収納する分注トレイと、
前記分注トレイに設けられる保冷手段としてのペルチェ素子を含む熱電素子と、
前記分注トレイを着脱自在に載置する分注モジュールと、
前記分注トレイより前記熱電素子に電力を供給するところの着脱自在なる電気接続手段と、
前記熱電素子が発した冷熱を放熱する放熱手段を有することを特徴とする検体処理システム。
【請求項5】
親検体容器から分注容器に検体を分注する検体処理システムにおいて、
前記分注容器を収納する分注トレイと、
前記分注トレイを着脱自在に載置する分注モジュールと、
前記分注モジュールに設けられる保冷手段としてのペルチェ素子を含む熱電素子と、
前記熱電素子が発した冷熱を放熱する放熱手段を有することを特徴とする検体処理システム。
【請求項6】
請求項3〜5の何れかに記載された検体処理システムにおいて、
前記熱電素子に供給する電流を制御する制御手段を有することを特徴とする検体処理システム。
【請求項7】
請求項1記載の検体処理システムにおいて、
前記冷媒または前記冷却容器を冷却装置等で冷却して繰り返し使用することを特徴とする検体処理システム。
【請求項8】
請求項5記載の検体処理システムにおいて、
前記分注モジュールは前記分注トレイを着脱自在に載置する載置部を複数備え、
各々の前記載置部に載置される前記分注トレイの有無を検知する検知手段を有し、
前記検知手段により前記分注トレイの載置が無いと検知されたところは前記載置部の熱電素子の通電を止めることを特徴する検体処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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