説明

業務用の複合加熱調理機

【課題】加熱皿に載せた被調理物を上下方向(表裏両側)から同時にすばやく複合加熱調理できるようにする。
【解決手段】加熱皿(10)に載せた状態の被調理物(M)を、調理庫(R)内の底面に挿入セットして、その加熱皿(10)の下方(裏側)から第1電磁誘導加熱器(H1)による伝導熱を与えると同時に、調理庫(R)内の天井面に設置された蒸気発生器(S)の加熱フィン(34a)から発生する過熱蒸気(A)を、シロッコファン(46)と邪魔板(48)の働きにより、調理庫(R)内の全体に対流・循環させて、その過熱蒸気(A)の対流熱を上記被調理物(M)の上方(表側)から与えるように定めた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はファミリーレストランやコンビニエンスストアー、その他の店舗で使う業務用の複合加熱調理機に関する。
【背景技術】
【0002】
ファミリーレストランやコンビニエンスストアー、その他の飲食店では来客の要望に応じて、ハンバーグやステーキ、グラタン、シューマイ、ギョーザなどの各種被調理物を、即席的にすばやく加熱調理する必要がある。特許文献1にはそのための有用なコンベアオーブン/トースターが記載されている。
【0003】
他方、通常のオーブン機能(天火焼き、焦げ目の付与)に加えて、被調理物を蒸気により焼いたり、蒸したりするスチームコンベクションオーブンは、例えば特許文献2〜6に広く開示されている。そのうち、特許文献5(特開2000−104924号公報)に記載のスチームコンベクションオーブンが、ヒーター(15)からの加熱により蒸気を発生するスチーム装置(17)と、熱風の強制循環用ファン(12)とを焼成室(7)内に装備している点で、本発明の複合加熱調理機と最も近似する公知技術であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−264550号公報
【特許文献2】特開平6−281147号公報
【特許文献3】特開平9−119642号公報
【特許文献4】特開平10−185200号公報
【特許文献5】特開2000−104924号公報
【特許文献6】特開2007−57144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記公知技術の蒸気を発生するスチーム装置(17)は、給水用の内管(40)とこれを包囲する外管(41)並びにこれらの内外相互間に介挿された複数の蓄熱部材(丸鋼)(44)とから成り、極めて複雑・特殊な構造であるため、被焼成物を焼成する処理量との関係上、製造コストが余りにも高価となり過ぎる。
【0006】
また、上記内管(40)の給水を加熱するためのヒーター(15)が、スチーム装置(17)とかなり離隔した片隅位置にあり、そのヒーター(15)の熱をたとえスチーム装置(17)の蓄熱部材(44)によって蓄熱し、その蓄熱により内管(40)の給水を加熱し、水蒸気又は熱湯として外管(41)の吐出孔(43)から、吸引開口(10)と熱風通路(11)へ吐出するとしても、「水蒸気とならなかった水もその温度は沸騰温度に近い温度となる」(公報の段落〔0041〕参照)と記載されているとおり、焼成室(7)の内部に100℃以上の過熱蒸気を生成することは不可能である。
【0007】
更に、焼成室内を循環する熱風によって、被焼成物を焼成すると共に、その焼成室内へ蒸気も供給し得るようになっているが、その被焼成物がクッキーやフランスパンなどの製菓・製パン生地であればともかく、例えばハンバーグやステーキ、ギョーザ、その他の加熱皿と一緒に焼き上げ直後、その加熱皿に載せた状態のままで来客の食卓へ提供する被調理物の場合には、これを加熱皿と接触している下方(裏側)からもすばやく、その上方(表側)からとの全体的な均一温度に加熱調理することができず、業務用としての即応性や効率、利便性などに劣る。
【0008】
しかも、上記したような各種被調理物の内部に蒸気が封じ込められたシットリ感やジューシー感に富む仕上がり状態を得ることは不可能であり、このことは特許文献1(特開平11−264550号公報)に開示のコンベアオーブン/トースターについても、同様に言える。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はこのような課題の改良を目的としており、その目的を達成するために、請求項1では被調理物の加熱皿を下方から電磁誘導加熱する第1電磁誘導加熱器が内蔵された据付け台と、
【0010】
その据付け台上へ固定状態に搭載された正面開閉扉付きの調理庫と、
【0011】
第2電磁誘導加熱器によって上方から電磁誘導加熱される加熱フィン付きの加熱板と、その加熱板の加熱フィンへ水を投射する1個又は複数のスプレーノズルとから成り、上記調理庫の天井面となるように設置された蒸気発生器と、
【0012】
その蒸気発生器の加熱フィンから発生する過熱蒸気を調理庫の内部全体へ拡散させるべく、その加熱フィンの下方位置に架設された多孔体の邪魔板と、
【0013】
同じく過熱蒸気を調理庫の内部全体へ強制的に対流・循環させるべく、上記蒸気発生器の加熱フィンと上記邪魔板との上下相互間に介挿設置されたシロッコファンとを備え、
【0014】
上記加熱皿に載せたハンバーグやステーキ、ギョーザ、シューマイなどの被調理物に対して、その下方から第1電磁誘導加熱器による伝導熱を与えると同時に、上方からシロッコファンにより上記過熱蒸気の対流熱を与えて加熱調理することを特徴とする。
【0015】
また、請求項2では蒸気発生器の加熱板から多数の加熱フィンを、底面視の全体的な放射対称配列型又は平行配列型として一体的に垂下させる一方、
【0016】
その加熱板の加熱フィンに向かうスプレーノズルが付属する給水管の1個又は複数を、調理庫の外部から導入配管すると共に、
【0017】
その各給水管の途中に介挿設置した給水弁を、自動間歇的に開閉制御することを特徴とする。
【0018】
請求項3では加熱皿の発熱温度をその加熱皿の底面と接触する温度センサーにより検知して、その出力電気信号に基き第1電磁誘導加熱器における励磁用高周波電源の加熱力を強弱調整することを特徴とする。
【0019】
更に、請求項4では蒸気発生器における加熱フィンの加熱温度を非接触式温度センサーにより検知して、その出力電気信号に基き第2電磁誘導加熱器における励磁用高周波電源の加熱力を強弱調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の上記構成によれば、ハンバーグやステーキ、ギョーザなどの被調理物が載置された状態にある加熱皿を、下方(裏側)から第1電磁誘導加熱器により発熱させ、その加熱皿からの伝導熱により上記被調理物の底面に適度な焦げ目が付くオーブン調理を行なえる。
【0021】
しかも、このような加熱皿を下方(裏側)から電磁誘導加熱する作用との同時進行として、調理庫の天井面に内蔵設置された蒸気発生器から発生する過熱蒸気を、シロッコファンと邪魔板との働きにより、調理庫の内部全体に対流・循環させ、その過熱蒸気の温度ムラがない対流熱により、上記加熱皿に載っている被調理物を上方(表側)からも焼き上げ調理するようになっているため、被調理物毎の独特な風味や香り、水分(蒸気)が封じ込められたジューシー感と柔らかいボリューム感に富む加熱調理状態を、頗る短時間での熱効率良く得られるのであり、特にファミリーレストランやコンビニエンスストアーなどの飲食店にとって、著しく有益となる。
【0022】
また、上記蒸気発生器は調理庫の天井面となる関係状態に内蔵設置されており、その加熱板の加熱フィンが上方から第2電磁誘導加熱器により加熱され、その加熱された加熱フィンへ給水管のスプレーノズルにより水を投射して、調理庫内へ過熱蒸気を発生するようになっているため、例えば調理庫の外部に設置した貯水タンクをガスバーナーにより加熱して、その貯水から発生させた蒸気を、調理庫の内部へ導入配管するような構成に比して、その必要な設備を著しく簡素化できる効果もある。
【0023】
特に、請求項2の構成を採用するならば、蒸気発生器の加熱板から多数の加熱フィンが下方から見て、全体的な放射対称配列型又は平行配列型として一体的に垂下しているため、その加熱表面積の増大により、瞬時に多量の過熱蒸気を調理庫の内部へ発生させることができるほか、各給水管の給水弁は自動間歇的に開閉制御されて、その給水管のスプレーノズルから水を投射するようになっているため、調理庫内の目標温度をいたずらに低下させる如く、その加熱温度制御の妨げとなるおそれはなく、被調理物の大きさや種類などに対応しやすい効果もある。
【0024】
更に、請求項3の構成を採用するならば、加熱皿とこれに載置される被調理物の大きさや種類などに応じて、その加熱皿と延いては被調理物の加熱温度を高く又は低く調整することができ、被調理物の過度な焦げ付き不良を予防し得る効果がある。
【0025】
他方、請求項4の構成を採用するならば、上記被調理物の大きさや種類などに応じて、調理庫内の目標温度を高く又は低く調整することができ、被調理物の希望する加熱調理状態を得られる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る業務用複合加熱調理機の正面図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】図2の3−3線断面図である。
【図4】図1の4−4線断面図である。
【図5】図1の5−5線断面図である。
【図6】図1の6−6線断面図である。
【図7】図1の7−7線断面図である。
【図8】図1の8−8線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図示の実施形態に基いて本発明の具体的構成を詳述すると、図1〜8は加熱皿(10)に載置したハンバーグやステーキ、シュウマイ、ギョーザなどの各種被調理物(M)に対して、蒸気発生器(S)により上方(表側)から供給される蒸気の対流熱と、第1電磁誘導加熱器(H1)により下方(裏側)から与えられる伝導熱とが同時作用する複合加熱調理機を示しており、これは作業床への据付け台(F)とその上面へ固定状態に搭載された調理庫(R)とを備え、ファミリーレストランやコンビニエンスストアーなどの飲食店にふさわしい大きさとして、例えば幅が約700mm×奥行が約720mm×高さが約1500mmである。
【0028】
先ず、上記複合加熱調理機の据付け台(F)は山形ステンレス鋼材から平面視の四角形に枠組み一体化されているが、その開口上面を有する限りでは、ステンレス鋼板から中空の竪型直方体(ボックス形態)に組み立てても良い。(11)はその据付け台(F)の角隅部に軸支されたブレーキ付きのキャスターであり、これによって据付け場所を変えることができる。(12)は上記据付け台(F)における枠内の中途高さ位置に架設された水平な仕切り板であり、その上面に第1電磁誘導加熱器(H1)の励磁用高周波電源(加熱用インバーター)(13)が搭載されている。
【0029】
茲に、第1電磁誘導加熱器(H1)は図2、3や図7、8のような全体のユニット体として、1本物の銅線(リッツ線)から加熱皿(10)の大きさとほぼ対応する正方形や円形の渦巻き状態に周回された電磁誘導加熱コイル(14)と、その電磁誘導加熱コイル(14)における巻き径が比較的小さい中央加熱コイル部(14a)の中心を垂直に貫通する強磁性体の芯軸(15)と、同じく巻き径が比較的大きい周辺加熱コイル部(14b)を受け持つため、平面視の全体的な放射対称分布型に配列された複数のコイル受け杆(16)と、その複数のコイル受け杆(16)や1本の上記芯軸(15)を支持する共通の水平なベース板(17)とから成り、そのベース板(17)が調理庫(R)の底面周辺部から複数のハンガーボルト(18)と固定ナット(19)を介して、設置高さの調整自在(昇降自在)に吊り下げられている。但し、調理庫(R)の底面周辺部からベース板(17)を吊り下げる代りに、そのベース板(17)を上記据付け台(F)の水平な仕切り板(12)へ受け持ち固定させても勿論良い。
【0030】
そして、何れにしても上記第1電磁誘導加熱器(H1)の電磁誘導加熱コイル(14)や芯軸(15)は、調理庫(R)の底面中央部に確保された第1電磁誘導加熱器用逃し口(20)を通じて、その調理庫(R)内の加熱皿(10)を下方(裏側)から加熱する。更に言えば、電磁誘導加熱コイル(14)の中央加熱コイル部(14a)がその芯軸(15)による磁束の集中的な浸透作用とも相俟って、加熱皿(10)における対応的な底面中央部の加熱を分担する一方、同じく電磁誘導加熱コイル(14)の周辺加熱コイル部(14b)が加熱皿(10)における対応的な底面周辺部の加熱を分担して、その加熱皿(10)の底面全体と延いては被調理物(M)の底面全体をすばやく均一に加熱できるようになっている。
【0031】
図示実施形態の加熱皿(10)は磁性体の鉄から成るが、そのフラットな底面へ鉄粉などの発熱皮膜(図示省略)を溶射することによって、導電性を与えても良く、その導電性を有する限りでは、上記加熱皿(10)の材質としてフェライト系ステンレス鋼や銅、鉄とアルミとのクラッド材、アルミとステンレスとのクラッド材などを採用することもできる。何れにしても、このような加熱皿(10)は被調理物(M)の調理でき次第、その被調理物(M)を載せたままで食卓へ提供されることになる。
【0032】
また、上記磁性体の芯軸(15)は一定な太さを有する角柱形や円柱形のフェライトから成り、これに電磁誘導加熱コイル(14)の中央加熱コイル部(14a)が巻き付けらた状態にある。そのため、中央加熱コイル部(14a)を流れる高周波電流によって起生される磁束が、その芯軸(フェライトコアー)(15)から加熱皿(10)に浸透して、その加熱皿(10)の底面中央部を即座にロスなく加熱することができる。
【0033】
更に、上記コイル受け杆(16)は一定な太さのステンレス鋼棒やアルミ棒、その他の非磁性体の金属材から、図2、3のようなほぼ倒立L字形に折り曲げ立体化されており、その水平な腕杆部(16a)に上記電磁誘導加熱コイル(14)が受け持ち固定されていると共に、垂直の脚杆部(16b)が上記ベース板(17)へ固定ナット(21)を介して取り付けられている。その固定ナット(21)は上記ハンガーボルト(18)や固定ナット(19)と同じく、アルミやステンレス鋼などの非磁性体から成る。上記ベース板(17)は芯軸(15)から下方に向かう磁束の遮断用として、その磁束を反射できる非磁性体のアルミ板やステンレス鋼板などから成る。
【0034】
尚、上記コイル受け杆(16)の金属材に被着一体化されたガラス繊維などの電気絶縁チューブや、同じく金属材へ電磁誘導加熱コイル(14)を取り付けた電気絶縁性の結束紐などは、図示省略してある。
【0035】
何れにしても、上記電磁誘導加熱コイル(14)における両端部の接続端子(22)を、その励磁用高周波電源(加熱用インバーター)(13)の出力端子と接続配線し、その高周波電源(13)から電磁誘導加熱コイル(14)へ高周波電流を供給して、上記加熱皿(10)と鎖交する磁束を発生させれば、その加熱皿(10)の底面に渦電流が流れ、ジュール熱により加熱皿(10)が発熱して、その伝導熱により被調理物(M)を下方(裏側)から効率良く加熱調理することができるのである。
【0036】
(23)は上記加熱皿(10)の底面と接触して、その発熱温度を検知する熱電温度計や抵抗温度計、その他の接触式温度センサーであり、上記第1電磁誘導加熱コイル(14)における中央加熱コイル部(14a)と周辺加熱コイル部(14b)との隣り合う相互間隙に介在する位置関係として、上記ベース板(17)に取り付け固定されている。
【0037】
そして、その接触式温度センサー(23)が加熱皿(10)の現在発熱温度を検知した出力電気信号により、上記高周波電源(加熱用インバーター)(13)の加熱力を強弱調整し、その加熱皿(10)を予じめ設定された目標温度よりも高く過熱せず、延いては被調理物(M)を焼け焦がさぬようになっている。
【0038】
次に、調理庫(R)はステンレス鋼板の内筐(24)と同じく外筐(25)とから、図1〜8のような二重構造の直方体又は立方体に造形されており、その内外相互間に厚肉な断熱材(26)が充填されている。(27)は調理庫(R)の正面(前面)開閉扉、(28)(29)はその蝶番と把手、(30)は同じく開閉扉(27)から調理庫(R)内を透視する点検窓である。
【0039】
調理庫(R)の底面中央部には第1電磁誘導加熱器用逃し口(20)が開設されている旨を上記したが、その逃し口(20)を施蓋する底絶縁板(31)が調理庫(R)の底面周辺部へ、上方からの搭載状態に取り付け固定されている。他方、上記調理庫(R)の天井面中央部には第2電磁誘導加熱器用逃し口(32)が開設されており、その逃し口(32)を施蓋する天井絶縁板(33)が、調理庫(R)の天井面周辺部へ下方からの張設状態に取り付け固定されている。上記底絶縁板(31)並びに天井絶縁板(33)としては非磁性体であれば足りるが、その何れも特にセラミックやその他の耐熱材を採用することが好ましい。
【0040】
(34)は上記調理庫(R)の天井絶縁板(33)へ下方から重合状態に固定された水平な加熱板であって、好ましくは裏層をなす磁性体の鉄板と、表層をなす非磁性体のアルミ板又はステンレス鋼板とのクラッド材から成り、導電性が与えられている。しかも、その加熱板(34)のアルミ板又はステンレス鋼板には加熱表面積を増大させるため、同じくアルミ板又はステンレス鋼板から成る多数の加熱フィン(34a)が、下方(底面)から見て図5のような平行配列型に押出成形されるか、又は放射対称配列型に固着一体化されており、その何れにしても加熱板(34)から垂下する状態にある。
【0041】
また、(H2)は上記加熱板(34)の加熱源となる第2電磁誘導加熱器であって、その加熱板(34)の上方に対応位置する渦巻き状態の電磁誘導加熱コイル(35)と、これを受け持ち固定する複数のコイル受け杆(36)と、そのコイル受け杆(36)を吊持する共通のハンガー板(37)とから成り、その水平なハンガー板(37)が上記調理庫(R)の天井面周辺部へ複数の支持ボルト(38)と固定ナット(39)を介して、設置高さの調整自在(昇降自在)に取り付けられている。
【0042】
その場合、第2電磁誘導加熱器(H2)のコイル受け杆(36)は図2、3のように、上記第1電磁誘導加熱器(H1)のそれと言わば向かい合うL字形に折り曲げ立体化されており、その水平な腕杆部(36a)から起立する垂直な脚杆部(36b)が上記ハンガー板(37)へ、やはり固定ナット(40)によって取り付けられている。1本物の銅線(リッツ線)から巻回された上記電磁誘導加熱コイル(35)の両端部は、そのハンガー板(37)上に搭載された励磁用高周波電源(加熱用インバーター)(41)の出力端子と接続配線してある。上記加熱フィン(34a)自身の加熱温度は一例として約400℃〜約500℃である。
【0043】
(42)は調理庫(R)の内筐(24)と外筐(25)を横断して、上記加熱板(34)の加熱フィン(34a)に向かい導入配管された複数の給水管であり、その各給水管(42)の先端部に付属するスプレーノズル(43)から、上記加熱板(34)の加熱フィン(34a)へ水を投射し、瞬時に大量の蒸気を発生し得るようになっている。
【0044】
つまり、上記第2電磁誘導加熱器(H2)の電磁誘導加熱コイル(35)と、これにより調理庫(R)の天井面中央部に開口する第2電磁誘導加熱器用逃し口(32)を通じて、上方(裏側)から加熱される加熱板(34)と、その加熱板(34)の加熱フィン(34a)へ水を投射するスプレーノズル(43)とから、蒸気発生器(S)が形作られており、しかもその蒸気発生器(S)は調理庫(R)の天井面となる位置に内蔵されているのである。
【0045】
図示実施形態の場合、給水管(42)とその先端部のスプレーノズル(43)を合計4個づつとして、図5のように調理庫(R)の4隅部へ全体的な放射対称分布型に配設しているが、その調理庫(R)内の中央部へ導入配管した1個のスプレーノズル(43)付き給水管(42)から、放射対称方向へ均等に水を投射し得るように定めても良い。(44)は各給水管(42)の途中に介挿設置された給水弁(開閉電磁弁)であり、タイマーによって自動間歇的に開閉されるようになっている。その給水管(42)の基端部は水道の就中浄水器(図示省略)へ接続配管される。
【0046】
また、(45)は上記蒸気発生器(S)における加熱フィン(34a)の加熱温度を検知する非接触式温度センサーであって、調理庫(R)の背面から導入状態に差し込み固定されており、これによって加熱フィン(34a)の現在加熱温度を検知し、その出力電気信号に基き上記高周波電源(過熱用インバーター)(41)の加熱力を強弱調整し、庫内温度を予じめ設定された目標温度よりも高く過熱せず、例えば約220℃〜約300℃の範囲内において、好ましくは約240℃の常時一定に保つことができるようになっている。
【0047】
(46)は上記蒸気発生器(S)を形作っている加熱板(34)の真下位置に臨まされたシロッコファン、(47)はそのファン駆動モーターであって、上記ハンガー板(37)の中央部へ固定状態に搭載されており、これによって縦軸線廻りに回転駆動されるシロッコファン(46)が、調理庫(R)の内部に気流を起し、上記蒸気発生器(S)により発生された過熱蒸気を、図2、3の矢印(A)で示す如く強制的に対流・循環させるようになっている。因みに、そのシロッコファン(46)の回転速度は1秒間当りに1〜3回程度の低速である。シロッコファン(46)の回転動作もタイマーによって停止させることができるようになっている。
【0048】
更に、(48)は上記シロッコファン(46)の真下位置を言わば水平に仕切る如く、その調理庫(R)の内部に架設された邪魔板であって、ステンレス鋼製の金網やパンチングメタル、セラミックス、その他の通気孔(49)が開口分布する多孔体から成り、蒸気発生器(S)により発生された過熱蒸気を拡散し、上記シロッコファン(46)とも相俟って、調理庫(R)の内部全体へ万遍なく対流・循環させることにより、温度ムラを無くすようになっている。尚、(50)は調理庫(R)のトップカバーであり、上記第2電磁誘導加熱器(H2)やそのハンガー板(37)、高周波電源(41)、シロッコファン駆動モーター(47)などを被覆している。
【0049】
上記のような業務用複合加熱調理機を運転して、来客が望む被調理物(例えばハンバーグ)(M)を加熱調理する場合について言えば、調理庫(R)の正面開閉扉(27)を開放して、被調理物(M)が載せられた状態にある加熱皿(10)を、その調理庫(R)内の底絶縁板(31)上へ挿入セットする。
【0050】
そして、上記加熱皿(10)の加熱源である第1電磁誘導加熱器(H1)の電磁誘導加熱コイル(14)へ、その励磁用高周波電源(13)から高周波電流を供給して、加熱皿(10)を下方(裏側)から発熱させ、その加熱皿(10)からの伝導熱により被調理物(M)を焼き上げ、被調理物(M)の底面に適度な焦げ目が付くオーブン調理を行なう。
【0051】
他方、このような下方(裏側)から行なうオーブン調理との同時進行として、調理庫(R)の天井面に蒸気発生器(S)を形作っている加熱板(34)の加熱フィン(34a)を、第2電磁誘導加熱器(H2)の電磁誘導加熱コイル(35)によってやはり加熱し、その加熱フィン(34a)へ給水管(42)のスプレーノズル(43)から自動間歇的に水を投射して、瞬時に大量の過熱蒸気を発生させる。
【0052】
しかも、その間にはシロッコファン(46)をゆっくり回転させ、邪魔板(48)での拡散作用とも相俟って、上記過熱蒸気を図2、3の矢印(A)に示す如く、調理庫(R)の内部全体に万遍なく対流・循環させて、その過熱蒸気の対流熱により上記被調理物(M)を上方(表側)から焼き上げるのである。
【0053】
そうすれば、上記加熱皿(10)に載置している被調理物(M)は上下方向(表裏両側)から同時に加熱調理されるため、その内部全体を短時間でのすばやく調理でき、これを加熱皿(10)と一緒に来客の食卓へ提供すれば良い。その結果、特にファミリーレストランやコンビニエンスストアーなどにふさわしく有効である。
【0054】
更に、上記加熱皿(10)に載置している被調理物(M)は、その下方(裏側)からの伝導熱により適度な焦げ目が付く焼き上がり状態としてオーブン調理されると同時に、上方(表側)から過熱蒸気の対流熱により、温度ムラなく焼き上げられることになるため、内部に本来の風味や香り、水分(蒸気)が封じ込められたジューシ感とシットリ感に富む加熱調理状態を得られる。
【符号の説明】
【0055】
(10)・加熱皿
(11)・キャスター
(12)・仕切り板
(13)(41)・高周波電源
(14)(35)・電磁誘導加熱コイル
(14a)・中央加熱コイル部
(14b)・周辺加熱コイル部
(15)・芯軸
(16)(36)・コイル受け杆
(16a)(36a)・腕杆部
(16b)(36b)・脚杆部
(17)・ベース板
(18)・ハンガーボルト
(19)(21)(39)(40)・固定ナット
(20)(32)・電磁誘導加熱器用逃し口
(22)・接続端子
(23)・温度センサー
(24)・内筐
(25)・外筐
(26)・断熱材
(27)・正面開閉扉
(28)・蝶番
(29)・把手
(30)・点検窓
(31)・底絶縁板
(33)・天井絶縁板
(34)・加熱板
(34a)・加熱フィン
(37)・ハンガー板
(38)・支持ボルト
(42)・給水管
(43)・スプレーノズル
(44)・給水弁
(45)・温度センサー
(46)・シロッコファン
(47)・ファン駆動モーター
(48)・邪魔板
(49)・通気孔
(50)・トップカバー
(F)・据付け台
(H1)・第1電磁誘導加熱器
(H2)・第2電磁誘導加熱器
(M)・被調理物
(R)・調理庫
(S)・蒸気発生器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被調理物の加熱皿を下方から電磁誘導加熱する第1電磁誘導加熱器が内蔵された据付け台と、
その据付け台上へ固定状態に搭載された正面開閉扉付きの調理庫と、
第2電磁誘導加熱器によって上方から電磁誘導加熱される加熱フィン付きの加熱板と、その加熱板の加熱フィンへ水を投射する1個又は複数のスプレーノズルとから成り、上記調理庫の天井面となるように設置された蒸気発生器と、
その蒸気発生器の加熱フィンから発生する過熱蒸気を調理庫の内部全体へ拡散させるべく、その加熱フィンの下方位置に架設された多孔体の邪魔板と、
同じく過熱蒸気を調理庫の内部全体へ強制的に対流・循環させるべく、上記蒸気発生器の加熱フィンと上記邪魔板との上下相互間に介挿設置されたシロッコファンとを備え、
上記加熱皿に載せたハンバーグやステーキ、ギョーザ、シューマイなどの被調理物に対して、その下方から第1電磁誘導加熱器による伝導熱を与えると同時に、上方からシロッコファンにより上記過熱蒸気の対流熱を与えて加熱調理することを特徴とする業務用の複合加熱調理機。
【請求項2】
蒸気発生器の加熱板から多数の加熱フィンを、底面視の全体的な放射対称配列型又は平行配列型として一体的に垂下させる一方、
その加熱板の加熱フィンに向かうスプレーノズルが付属する給水管の1個又は複数を、調理庫の外部から導入配管すると共に、
その各給水管の途中に介挿設置した給水弁を、自動間歇的に開閉制御することを特徴とする請求項1記載の業務用の複合加熱調理機。
【請求項3】
加熱皿の発熱温度をその加熱皿の底面と接触する温度センサーにより検知して、その出力電気信号に基き第1電磁誘導加熱器における励磁用高周波電源の加熱力を強弱調整することを特徴とする請求項1記載の業務用の複合加熱調理機。
【請求項4】
蒸気発生器における加熱フィンの加熱温度を非接触式温度センサーにより検知して、その出力電気信号に基き第2電磁誘導加熱器における励磁用高周波電源の加熱力を強弱調整することを特徴とする請求項1記載の業務用の複合加熱調理機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−17871(P2012−17871A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153743(P2010−153743)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000247247)有限会社ナカイ (22)
【Fターム(参考)】