説明

横編機の可動カム作動装置

【課題】モータの回転を長尺部材の出没方向の動作に変換する構造を簡単なものにすることができる横編機の可動カム作動装置を提供する。
【解決手段】鉄砲山カム用制御バー31又はゴム山カム用制御バー32の出没方向への動作に応じて第1及び第2作動部材19,20を介して鉄砲山カム及びゴム山カム12を前キャリッジ1Fの外方から作動させる可動カム作動装置Xに、ステッピングモータ35の軸351に連結されたピニオンギヤ36と、前キャリッジ1Fの走行方向へ延び、ピニオンギヤ36に噛合するラックギヤ37と、ラックギヤ37と各制御バー31,32とを連結するジョイント部38とを設ける。ジョイント部38に、ラックギヤ37に設けた軸部40と、各制御バー31,32の他端に設けられ、かつ各制御バー31,32の出没方向への動作時に当該各制御バー31,32の出没方向へ軸部40を移動自在に支持する長孔382,392とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリッジに設けられて針床の編針の駆動に供される鉄砲山カム、中山カム、ゴム山カム、又は度山カムなどの可動カムを、作動部材を介して作動させるようにした横編機の可動カム作動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、手袋や靴下などの筒状の編地は、例えば特許文献1に示すような構成の横編機で編成されている。この横編機は、一対の針床が歯口を挟んで対向するように設けられる。各針床の上方には、当該各針床の長手方向に往復走行するキャリッジをそれぞれ設けている。
【0003】
各キャリッジには、各針床に並設される針溝内を歯口に対して進退移動可能な編針の駆動に供される可動カムが搭載される。この可動カムには、各キャリッジの往復走行時に使用される鉄砲山カム、中山カム、ゴム山カム、又は度山カムなどがある。
【0004】
また、各キャリッジには、可動カムをそれぞれ個別に作動させる作動部材が設けられている。各可動カムの作動は、図14に示すように、可動カム作動装置9によって、キャリッジの外方から作動部材を介して行われる。
【0005】
可動カム作動装置9は、キャリッジの外方を当該キャリッジの走行方向へ延びるガイド部材に支持され、かつガイド部材に沿って延びて作動部材に対し摺接する長尺部材91を備え、この長尺部材91を作動部材に対し出没方向へ動作させることで、作動部材を介して可動カムを作動させるようにしている。また、可動カム作動装置9は、モータの軸90に回転一体に連結された偏芯カム92と、この偏芯カム92に設けられ、長尺部材91より突出する係合ピン93を摺動案内するように軸90付近を基端にして先端側が渦巻状に拡径された螺旋溝94とを備えている。軸90の先端は、長尺部材91の一端において作動部材側に向かって斜め方向(図14では斜め上方)に延びる案内溝95に係合している。そして、偏芯カム92を軸90回りに回転させて、螺旋溝94内を摺動する係合ピン93と、案内溝95内を移動する軸90との距離を変更して、当該軸90の先端を案内溝95内で移動させることで、長尺部材91を作動部材に対して出没方向へ動作させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−185161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記従来のものは、長尺部材91を作動部材に対し出没動作させる上で、偏芯カム92の軸90回りの回転により螺旋溝94内を摺動する係合ピン93と軸90との距離を変更して当該軸90の先端を案内溝95内で移動させる必要があった。
このため、モータの回転を長尺部材91の出没方向への動作に変換する可動カム作動装置9の構造が複雑なものとなる。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、モータの回転を長尺部材の出没方向への動作に変換する構造を簡単なものにすることができる横編機の可動カム作動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、針床の長手方向に沿って往復走行するキャリッジに、前記針床の編針の駆動に供される可動カムと、この可動カムに対する出没動作により当該可動カムを作動させる作動部材とを設ける一方、前記キャリッジの外方を当該キャリッジの走行方向へ延びるガイド部材に、このガイド部材に沿って延びかつ前記作動部材に対し摺接する長尺部材を支持するとともに、この長尺部材に、前記ガイド部材に設けられた支軸に沿って前記長尺部材を当該長尺部材の長手方向へ案内しつつ前記作動部材に対する出没方向へ案内する案内溝を設け、この案内溝により案内される前記長尺部材の動作に応じて前記作動部材を介して前記可動カムを前記キャリッジの外方から作動させるようにした横編機の可動カム作動装置を前提とする。そして、モータの回転により駆動するピニオンギヤと、前記キャリッジの走行方向へ延び、前記ピニオンギヤに噛合するラックギヤと、 前記ラックギヤと前記長尺部材とを連結するジョイント部と、を備える。更に、前記ジョイント部に、前記ラックギヤ及び前記長尺部材の一方に設けられた軸部と、他方に設けられ、前記案内溝による前記長尺部材の動作時に当該長尺部材の出没方向へ前記軸部を移動自在に支持する長孔と、を設けることを特徴としている。
【0010】
また、前記長尺部材を複数設けるとともに、前記ジョイント部に、前記ラックギヤの左右両側方に突出する軸部と、前記各長尺部材にそれぞれ設けられ、前記各長尺部材の動作時に出没方向へ前記軸部を移動自在に支持する長孔とを設ける。そして、前記各長尺部材を、それぞれの長孔を前記軸部に対してその軸線方向両側方から挿通させて前記ラックギヤの左右両側方に配置していてもよい。なお、ラックギヤの左右両側方とは、複数の長尺部材が配列される配列方向のことである。
【0011】
また、前記各長尺部材の案内溝に、それぞれ該当する前記各可動カムの作動量に応じた前記各長尺部材の出没方向への動作を保持した状態で当該各長尺部材の進退移動に伴い前記支軸を進退方向へ移動させる保持溝を連設させていてもよい。
【0012】
更に、前記各可動カムとして、鉄砲山カム又は中山カムとゴム山カムとを適用していてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る横編機の可動カム作動装置によれば、モータの駆動によるピニオンギヤの回転に伴ってラックギヤを長手方向へ移動させ、この移動に応じて長尺部材をジョイント部の長孔内での軸部の移動により案内溝に沿って出没方向へ動作させて、作動部材を介して可動カムを作動させている。これにより、可動カム作動装置の構造を簡単なものにすることができる。
【0014】
また、複数の長尺部材をラックギヤの左右両側方に配置することで、ラックギヤの左右両側方に作用する各長尺部材からの負荷が均衡し、ラックギヤの長手方向への移動力がその左右両側方の各長尺部材に対しブレることなく伝達され、ラックギヤの長手方向への移動に伴う各長尺部材の出没方向への動作を円滑に行うことができる。しかも、各可動カムの作動を単一のモータの回転によってそれぞれ作動部材を介して円滑に行うことができる。
【0015】
また、各長尺部材の出没方向への動作を保持した状態で支軸を進退方向へ移動させる保持溝を案内溝に連設することで、それぞれ作動タイミングが異なる各可動カムの作動が完了するまでの間、既に作動が完了している可動カムの作動量を保持溝によって保持することができる。
【0016】
更に、鉄砲山カム又は中山カムとゴム山カムとを各可動カムとして適用することで、互いに作動タイミングの異なる鉄砲山カム又は中山カムとゴム山カムとを単一のモータの回転によってそれぞれ作動部材を介して円滑に作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)は後キャリッジの各カムを後針床側から見た底面図であり、(b)は本発明の実施の形態に係る横編機の可動カム作動装置により作動する前キャリッジの各カムを前針床側から見た底面図である。
【図2】図1の可動カム作動装置及び前キャリッジを上方から見た平面図である。
【図3】図2の可動カム作動装置及び前キャリッジを前針床と共に切断した縦断側面図である。
【図4】図2の可動カム作動装置及び前キャリッジの第1作動部材を作動状態で上方から見た平面図である。
【図5】図4の可動カム作動装置及び第1作動部材を非作動状態で上方から見た平面図である。
【図6】図5の可動カム作動装置及び第1作動部材を側方から見た側面図である。
【図7】図2の可動カム作動装置及び前キャリッジの第2作動部材を非作動状態で上方から見た平面図である。
【図8】図7の可動カム作動装置及び第2作動部材を作動状態で上方から見た平面図である。
【図9】図8の可動カム作動装置及び第2作動部材を側方から見た側面図である。
【図10】図7の可動カム作動装置及び第2作動部材を側方から見た側面図である。
【図11】図2の可動カム作動装置及び前キャリッジの正面図である。
【図12】図2の可動カム作動装置の拡大図である。
【図13】図11のジョイント部付近の拡大図である。
【図14】従来例に係る可動カム作動装置を上方から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の横編機の可動カム作動装置の好適な実施の形態を図面と共に以下詳細に説明する。この横編機は、手袋や靴下などの筒状の編地の編成に供される。
【0019】
図1の(a)は後キャリッジの各カムを後針床側から見た底面図であり、(b)は本発明の実施の形態に係る横編機の可動カム作動装置により作動する前キャリッジの各カムを前針床側から見た底面図である。図2は可動カム作動装置及び前キャリッジを上方から見た平面図、図3は可動カム作動装置及び前キャリッジを前針床と共に切断した縦断側面図である。
【0020】
図1〜図3において、本発明の可動カム作動装置Xは、前針床10Fの上方をその長手方向に沿って往復移動する前キャリッジ1Fに搭載された可動カムとしての鉄砲山カム11、ゴム山カム12、中山カム13、度山カム14、ニードルレイジングカム15、プレッシャーカム16を前キャリッジ1Fの外方から作動させるために供される。なお、前キャリッジ1Fには、ニードルガイドカム17及び天山カム18も搭載されている。
【0021】
また、図1の(a)に示す後キャリッジ1Bは、図示しない後針床の上方をその長手方向に沿って往復移動し、可動カムとしてのゴム山カム12、中山カム13、度山カム14、ニードルレイジングカム15、プレッシャーカム16を搭載している。なお、後キャリッジ1Bにも、ニードルガイドカム17及び天山カム18が搭載される。
【0022】
ここで、前キャリッジ1Fの各カム11〜18についてのみ説明する。各カム11〜18は、前針床10Fと対向する底板100Fの前針床側面(図1では手前側面)に設けられている。各カム11〜18のうち、鉄砲山カム11、ゴム山カム12及び中山カム13は、それぞれ作動位置と非作動位置との2位置に切換えられる。また、度山カム14は、所望する度目に応じた作動位置に第3作動部材21によって調整される。
【0023】
前キャリッジ1Fは、各カム11,12,14,15をそれぞれ個別に作動させるように当該各カム11,12,14,15に対し出没動作する第1〜第3作動部材19,20,21(図2では鉄砲山カム11、ゴム山カム12、及び度山カム14を作動させるもののみ示す)を備えている。鉄砲山カム11は、指先編成時及び指股編成時に第1作動部材19によって作動位置に切換えられる。ゴム山カム12は、ゴム編時に作動位置に、非ゴム編時は非作動位置にそれぞれ第2作動部材20によって切換えられる。なお、図3においてSは前針床10Fに複数並設された編針としてのべら針である。
【0024】
図4は可動カム作動装置X及び前キャリッジ1Fの第1作動部材19を作動状態で上方から見た平面図、図5は可動カム作動装置X及び第1作動部材19を非作動状態で上方から見た平面図、図6は可動カム作動装置X及び第1作動部材19を非作動状態で側方から見た側面図である。
【0025】
図4〜図6にも示すように、第1作動部材19は、平面視で略逆J字状を呈し、その基端において略直線状に延びる基端部191の略中間位置が前キャリッジ1Fの底板100Fに枢支されている。この第1作動部材19の基端部191の略中間位置より延びる本体部192の先端には、鉄砲山カム11を作動位置(図4に示す位置)から非作動位置(図5及び図6に示す位置)に作動させる際に、鉄砲山カム11に設けられたローラ111に対する係合を円滑に行うための傾斜面193が設けられている。また、基端部191の一端(図4及び図5では左端)には、後述する鉄砲山カム用制御バー31の突出端面31aを転動するローラベアリング194が回転自在に支持されている。第1作動部材19は、本体部192の途中位置と底板100Fとの間に設けられた付勢スプリング195によって、ローラベアリング194を常時鉄砲山カム用制御バー31の突出端面31a側に押し付けるように基端部191の略中間位置の枢支点回りに付勢されている。
【0026】
図7は可動カム作動装置X及び前キャリッジ1Fの第2作動部材20を非作動状態で上方から見た平面図、図8は可動カム作動装置X及び第2作動部材20を作動状態で上方から見た平面図、図9は可動カム作動装置X及び第2作動部材20を作動状態で側方から見た側面図、図10は可動カム作動装置X及び第2作動部材20を非作動状態で側方から見た側面図である。
【0027】
図7〜図10にも示すように、第2作動部材20は、前キャリッジ1Fの底板100Fに取り付けられた支持枠部材205と、この支持枠部材205と底板100Fとの間に支持され、ゴム山カム12に対して出没自在な出没部材206とを備えている。この出没部材206は平面視で略I字状を呈し、その一端(図7及び図8では上端)には、ゴム山カム12を作動位置(図8及び図9に示す位置)から非作動位置(図7及び図10に示す位置)に作動させる際に、ゴム山カム12に設けられたローラ121に対する係合を円滑に行うための傾斜面201が設けられている。また、出没部材206の他端(図7及び図8では下端)には、後述するゴム山カム用制御バー32の突出端面32aを転動するローラベアリング202が回転自在に支持されている。出没部材206は、その一端と支持枠部材205の他端部(図7及び図8では下端部)との間に設けられた付勢スプリング203によって、ローラベアリング202をゴム山カム用制御バー32の突出端面32a側に常時押し付けるように付勢されている。
【0028】
第3作動部材21は、図2に示すように、度山カム14に取り付けられ、かつ前キャリッジ1Fの底板100Fを斜め方向に延びる溝101に沿って移動する移動部材211と、この移動部材211の一端(図2では下端)に他端(図2では上端)が枢支された略L字状の支持部材213とを備えている。この支持部材213は、後述する度山カム用制御バー33の突出端面33a向き(図2では下方)に延出し、その延出端より屈曲して一端(図2では左端)を第1作動部材19の基端部191向き(図2では左向き)に突出させている。支持部材213の一端は、第1作動部材19の基端部の略中間位置と共に前キャリッジ1Fの底板100Fに枢支されている。また、支持部材213の屈曲部には、後述する度山カム用制御バー33の突出端面33aを転動するローラベアリング212が回転自在に支持されている。そして、移動部材211は、その他端と溝101の一端側(図2では下端側)の側方位置との間に設けられた付勢スプリング214によって溝101の一端側に付勢され、支持部材213を介してローラベアリング212を度山カム用制御バー33の突出端面33a側に常時押し付けるように付勢されている。
【0029】
図11は可動カム作動装置X及び前キャリッジ1Fの正面図である。
この図11にも示すように、可動カム作動装置Xは、前キャリッジ1Fの走行方向へ延び、各作動部材19〜21のローラベアリング194,202,212にそれぞれ個別に摺接する長板状の長尺部材としての鉄砲山カム用制御バー31、ゴム山カム用制御バー32及び度山カム用制御バー33を備えている。これらの制御バー31〜33は、各作動部材19〜21をそれぞれ個別に介して鉄砲山カム11、ゴム山カム12及び度山カム14を作動させるように当該作動部材19〜21のローラベアリング194,202,212に対し出没動作自在となっている。各制御バー31〜33は、横編機本体(図示せず)に固定されて前キャリッジ1Fの走行方向へ延びるガイド部材34の凹状溝341内にそれぞれ支持され、それぞれの凹状溝341内での出没動作が両側方からガイドされている。
【0030】
図12は可動カム作動装置Xの拡大図である。
この図12にも示すように、可動カム作動装置Xの筺体X1は、ガイド部材34の一端(図12では左端)に固設されている。この筺体X1の底部略中央位置には、モータとしてのステッピングモータ35が固設され、このステッピングモータ35より筺体X1内に突出する軸351の先端にピニオンギヤ36が回転一体に連結されている。筺体X1内には、前キャリッジ1Fの走行方向へ延びるラックギヤ37が設けられ、このラックギヤ37がピニオンギヤ36に噛合している。ラックギヤ37の長手方向中央部よりも一端側(図12では右端側)寄りと鉄砲山カム用制御バー31及びゴム山カム用制御バー32の他端(図12では左端)との間には、ジョイント部38が設けられている。このジョイント部38は、ラックギヤ37の長手方向中央部よりも一端側寄りと、鉄砲山カム用制御バー31及びゴム山カム用制御バー32の他端とを連結している。このように、可動カム作動装置Xを構成する鉄砲山カム用制御バー31及びゴム山カム用制御バー32、ガイド部材34、ステッピングモータ35、ピニオンギヤ36、ラックギヤ37、及びジョイント部38によって、各作動部材19,20を介した鉄砲山カム11及びゴム山カム12の作動が前キャリッジ1Fの外方から行えるようにしている。
【0031】
図13はジョイント部38付近の拡大図である。
この図13に示すように、ジョイント部38は、ラックギヤ37の長手方向中央部よりも一端側寄りに設けられた軸部40と、鉄砲山カム用制御バー31及びゴム山カム用制御バー32の他端にそれぞれ設けられ、当該各制御バー31,32の出没方向(図13では紙面手前奥方向)に延びる長孔382,392とを備えている。軸部40は、基端(図13では上端)に頭部400を有して、ラックギヤ37に対しその左右両側面と直交する方向から貫通し、その軸線方向両側方より基端部401及び先端部402がそれぞれ突出している。この軸部40の基端部401及び先端部402には、それぞれラックギヤ37側から順にスペーサ403及びベアリング404が挿通されている。スペーサ403にはベアリング404側に突出する凸部405が設けられ、この凸部405がベアリング404のインナレースに対し当接している。軸部40の先端には、内径が拡径されたテーパー部406aを有するスペーサ406が外嵌され、軸部40の先端をかしめ具(図示せず)により先端面よりかしめて塑性変形させることでスペーサ406のテーパー部406aに充填し、当該スペーサ406を軸部40の先端に固定している。
【0032】
ゴム山カム用制御バー32の長孔392は軸部40の基端部401に対しベアリング404を介して挿通されている一方、鉄砲山カム用制御バー31の長孔382は軸部40の先端部402に対しベアリング404を介して挿通されて、両制御バー31,32がラックギヤ37の一端側の左右両側方に配置されている。これにより、ラックギヤ37の左右両側方に作用する各制御バー31,32からの負荷が均衡し、ラックギヤ37の進退方向への移動力がその左右両側方の各制御バー31,32に対しブレることなく伝達されて、ラックギヤ37の進退方向への移動に伴う各制御バー31,32の出没方向への動作を円滑に行うことができる。
【0033】
ジョイント部38は、ピニオンギヤ36の回転に伴いラックギヤ37が進退移動すると、鉄砲山カム用制御バー31及びゴム山カム用制御バー32の長孔382,392内での軸部40の進退方向への移動量が許容されることなく当該軸部40を介して各制御バー31,32に伝達され、当該各制御バー31,32を進退移動させるようにしている。一方、ジョイント部38は、各制御バー31,32の出没動作時に軸部40を長孔382,392内で出没方向へ移動させることで、長孔382,392内での軸部40の出没方向への移動量が許容されることになり、軸部40の出没方向への移動が各制御バー31,32に伝達されないようにしている。
【0034】
また、図3に示すように、ガイド部材34には、各凹状溝341内をそれぞれ貫通する支軸342が設けられている。一方、図4、図5、図7及び図8に示すように、鉄砲山カム用制御バー31及びゴム山カム用制御バー32には、両制御バー31,32の進退移動に応じて当該両制御バー31,32を第1及び第2作動部材19,20に対し出没動作させるように支軸342を案内する案内溝311,321が設けられている。この各案内溝311,321は、各制御バー31,32の複数箇所(例えば2箇所)に設けられ、それぞれ一端側(図4、図5、図7及び図8では右側)に行くに従い突出端面31a,32a側とは反対側(同各図では下側)に傾斜している。このように、ステッピングモータ35の駆動によるピニオンギヤ36の回転に伴ってラックギヤ37を進退方向へ移動させ、この移動に応じて支軸342を案内溝311,321で案内させるとともに、鉄砲山カム用制御バー31及びゴム山カム用制御バー32をジョイント部38の長孔382,392内での軸部40の移動により当該案内溝311,321に沿って出没方向へ動作させることで、第1及び第2作動部材19,20を介して鉄砲山カム11及びゴム山カム12を作動させている。これにより、可動カム作動装置Xの構造を簡単なものにすることができる。
【0035】
また、各案内溝311,321は、鉄砲山カム11及びゴム山カム12の互いに異なる作動タイミングに応じて設けられている。これにより、互いに作動タイミングが異なる鉄砲山カム11及びゴム山カム12の作動を単一のステッピングモータ35からの回転によってそれぞれ制御バー31,32および第1及び第2作動部材19,20を介して円滑に行うことができる。
【0036】
各案内溝311,321の両端には、鉄砲山カム用制御バー31及びゴム山カム用制御バー32の突出端面31a,32aに沿って進退方向に延びる保持溝312,322がそれぞれ連設されている。各保持溝312,322は、それぞれ該当する鉄砲山カム11及びゴム山カム12の作動量に応じた鉄砲山カム用制御バー31及びゴム山カム用制御バー32の出没方向への動作を保持した状態で支軸342を進退方向へ移動させている。この鉄砲山カム11及びゴム山カム12の作動タイミングは互いに異なっている。これにより、互いに作動タイミングが異なる鉄砲山カム11及びゴム山カム12の双方の作動が完了するまでの間、既に作動が完了している鉄砲山カム11又はゴム山カム12の作動量を保持溝312,322によって保持することができる。
【0037】
更に、図12に示すように、筺体X1には、ピニオンギヤ36の回転に伴い進退移動するラックギヤ37の背側面(図12では上面)を転動により案内する案内ローラ41と、ラックギヤ37の歯側面(図12では下面)を摺接により案内する案内面421を有するラックギヤ案内部材42とが設けられている。また、鉄砲山カム用制御バー31及びゴム山カム用制御バー32を案内するガイド部材34の凹状溝341同士の間には、当該両凹状溝341同士を区画する壁343を切除してラックギヤ37の一端側を案内する案内面45が形成されている。この案内面45には、ラックギヤ37の一端側が摺接している。更に、ラックギヤ37の先端側に対応する筺体X1の対応位置には、ラックギヤ37の先端位置を検出する検出センサ43が設けられている。この検出センサ43は、ラックギヤ37の先端が通過したか否かを検出している。
【0038】
一方、図2に示すように、度山カム用制御バー33の他端(図2では右端)は、図示しない度山カム作動装置に連結されている。この度山カム作動装置は、可動カム作動装置Xと基本的に同一構成であり、度山カム用制御バー33の他端に設けられた長孔(図示せず)とラックギヤに対しその左右両側面と直交する方向から貫通する軸部とを備えたジョイント部により度山カム用制御バー33の他端とラックギヤの一端とを連結している。また、度山カム用制御バー33には、この制御バー33の進退移動に応じて当該制御バー33を第3作動部材21に対し出没動作させるように支軸342を案内する案内溝331が設けられている。この案内溝331は、制御バー33の複数箇所(例えば2箇所)に設けられ、それぞれ一端側(図2では左側)に行くに従い第3作動部材21側(図2では上側)に傾斜している。この度山カム作動装置においても、第3作動部材21を介した度山カム14の作動が前キャリッジ1Fの外方から行える。
【0039】
なお、本実施の形態では、ラックギヤ37にジョイント部38を介して鉄砲山カム用制御バー31及びゴム山カム用制御バー32の他端を連結したが、作動部材を介して中山カムを作動させる中山カム用制御バーとゴム山カム用制御バーとがラックギヤにジョイント部を介して連結されていてもよい。また、ラックギヤにジョイント部を介して3つ以上の制御バーが連結されていてもよく、その場合には、複数の制御バーが3つであれば、軸部の基端部又は先端部の一方に2つの制御バーが、他方に1つの制御バーがそれぞれベアリングを介して支持され、2つの制御バー同士の間がスペーサによって確保されていればよい。
【0040】
また、本実施の形態では、軸部40をラックギヤ37に、長孔382,392を鉄砲山カム用制御バー31及びゴム山カム用制御バー32の他端にそれぞれ設けたが、軸部を各制御バーに、長孔をラックギヤにそれぞれ設けてジョイント部が構成されていてもよい。この場合、長孔内での各制御バーの軸部の出没方向への移動タイミングが異なることを配慮して、軸部が他の制御バーに対して干渉しないように、ラックギヤの長さを長く設定しておく必要がある。また、複数の制御バーがラックギヤの一側面に設けられる場合には、当該各制御バーの軸部の長さを変更しておく必要がある。
【0041】
更に、本実施の形態では、鉄砲山カム用制御バー31及びゴム山カム用制御バー32の他端をジョイント部38を介してラックギヤ37に連結したが、単一の制御バーがジョイント部を介してラックギヤに連結されていてもよいのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0042】
1F 前キャリッジ
1B 後キャリッジ
10F 前針床
11 鉄砲山カム
12 ゴム山カム
13 中山カム
14 度山カム
19 第1作動部材
20 第2作動部材
21 第3作動部材
31 鉄砲山カム用制御バー
311 案内溝
312 保持溝
32 ゴム山カム用制御バー
321 案内溝
322 保持溝
33 度山カム用制御バー
34 ガイド部材
342 支軸
35 ステッピングモータ
351 軸
36 ピニオンギヤ
37 ラックギヤ
38 ジョイント部
382 鉄砲山カム用制御バーの長孔
392 ゴム山カム用制御バーの長孔
40 軸部
S べら針
X 可動カム作動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
針床の長手方向に沿って往復走行するキャリッジに、前記針床の編針の駆動に供される可動カムと、この可動カムに対する出没動作により当該可動カムを作動させる作動部材とを設ける一方、前記キャリッジの外方を当該キャリッジの走行方向へ延びるガイド部材に、このガイド部材に沿って延びかつ前記作動部材に対し摺接する長尺部材を支持するとともに、この長尺部材に、前記ガイド部材に設けられた支軸に沿って前記長尺部材を当該長尺部材の長手方向へ案内しつつ前記作動部材に対する出没方向へ案内する案内溝を設け、この案内溝により案内される前記長尺部材の動作に応じて前記作動部材を介して前記可動カムを前記キャリッジの外方から作動させるようにした横編機の可動カム作動装置において、
モータの回転により駆動するピニオンギヤと、
前記キャリッジの走行方向へ延び、前記ピニオンギヤに噛合するラックギヤと、
前記ラックギヤと前記長尺部材とを連結するジョイント部と、
を備え、
前記ジョイント部は、
前記ラックギヤ及び前記長尺部材の一方に設けられた軸部と、
他方に設けられ、前記案内溝による前記長尺部材の動作時に当該長尺部材の出没方向へ前記軸部を移動自在に支持する長孔と、
を有していることを特徴とする横編機の可動カム作動装置。
【請求項2】
前記長尺部材は、複数設けられているとともに、
前記ジョイント部は、前記ラックギヤの左右両側方に突出する軸部と、前記各長尺部材にそれぞれ設けられ、前記各長尺部材の動作時に出没方向へ前記軸部を移動自在に支持する長孔とを有しており、
前記各長尺部材は、それぞれの長孔を前記軸部に対してその軸線方向両側方から挿通させて前記ラックギヤの左右両側方に配置されている請求項1に記載の横編機の可動カム作動装置。
【請求項3】
前記各長尺部材の案内溝には、それぞれ該当する前記各可動カムの作動量に応じた前記各長尺部材の出没方向への動作を保持した状態で当該各長尺部材の進退移動に伴い前記支軸を進退方向へ移動させる保持溝が連設されている請求項2に記載の横編機の可動カム作動装置。
【請求項4】
前記各可動カムとしては、鉄砲山カム又は中山カムとゴム山カムとが適用されている請求項2又は請求項3に記載の横編機の可動カム作動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2013−44077(P2013−44077A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185164(P2011−185164)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000151221)株式会社島精機製作所 (357)
【Fターム(参考)】